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(1)

との比較によるASEAN分析の手がかりを求めて

著者 鷲江 義勝

雑誌名 社会科学

巻 48

号 4

ページ 1‑23

発行年 2019‑02‑28

権利 同志社大学人文科学研究所

URL http://doi.org/10.14988/pa.2018.0000000385

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地域協力と地域統合の分析視座形成への序説

─ EU との比較による ASEAN 分析の手がかりを求めて ─

鷲 江 義 勝

本稿の目的は,東南アジア諸国連合(Association of Southeast Asian Nations:以 下ASEAN)をEuropean Union(以下 EU)と比較することによって,国際組織,特 に経済協力や政治・安全保障協力を目的とする国際組織と経済統合や政治統合を目指 す国際組織の比較研究のための視座を設定することである。

様々な比較のための序論として,まず,協力や統合の概念定義を行い,ASEANや EUがどの類型に属するのかを検討する。その際,それぞれの加盟国の主権の所在こそ が,組織の根本的な相違の源泉であり,それこそが協力と統合の大きな違いを生むこ とになるとの考え方を用いる。その上で,それぞれの設立条約あるいは行動計画書に 規定された組織的特徴を整理・比較することにしたい。さらに機構的特徴として,特 に政策決定過程を取り上げ,その比較によって,EUとASEANの相違を指摘したい。

そして最後にASEANの特徴として開放性・重層性・柔軟性に注目し,その組織的特 徴について考察する。

また,比較する分野については,経済分野,外交・安全保障分野,司法・内務分野,

社会文化分野など様々な切り口があるが,ここでは,経済分野を中心に据えつつ他の 分野へもできるだけ言及していきたい。

は じ め に

本稿の目的は,東南アジア諸国連合(Association of Southeast Asian Nations:以下 ASEAN)をEuropean Union(以下 EU)と比較することによって,国際組織,特に経 済協力や政治・安全保障協力を目的とする国際組織と経済統合や政治統合を目指す国際 組織の比較研究のための視座を設定することである。そのためには,様々な観点で比較 可能性を探る必要がある。その際には,経済分野の協力や統合の様相や,実際の経済統 計の分析あるいは,外交分野での協力の様態や組織自体の構造,政策決定過程の比較な ど様々な分野からのアプローチが可能である。

本稿では,様々な比較のための序論として,まず,協力や統合の概念定義を行い,

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ASEANやEUがどの類型に属するのかを検討する。その際,それぞれの加盟国の主権の 所在こそが,組織の根本的な相違の源泉であり,それこそが協力と統合の大きな違いを 生むことになるとの考え方を用いる。その上で,それぞれの設立条約あるいは行動計画 書に規定された組織的特徴を整理・比較することにしたい。さらに機構的特徴として,特 に政策決定過程を取り上げ,その比較によって,EUとASEANの相違を指摘したい。そ して最後にASEANの特徴として開放性・重層性・柔軟性に注目し,その組織的特徴に ついて考察する。

また,比較する分野については,経済分野,外交・安全保障分野,司法・内務分野,社 会・文化分野など様々な切り口があるが,ここでは,経済分野を中心に据えつつ他の分 野へもできるだけ言及していきたい。

それぞれの条約等については,EUに関しては,リスボン条約版EU条約およびEU運 営条約1)を利用し,ASEANに関しては,ASEAN憲章2)を利用するとともに 2015 年に 設立を宣言されたASEAN共同体,すなわち政治・安全保障共同体(ASEAN Political – Security Community:APSC),経済共同体(ASEAN Economic Community:AEC)お よび社会・文化共同体(ASEAN Socio – Cultural Community:ASCC)についての内容 を具体的に示したブループリント 20153)を参照していきたい。

1 ASEANと

EU

の比較の視点設定

EUの目指すものを,とりあえずは,「欧州合衆国」であると想定すれば,その主要な 機能は,対外的には統一的な外交と安全保障の設定と,対内的には域内の治安維持,経 済的には単一市場(単一通貨を含む)の維持が最低限求められる。より具体的には,EU の主要分野である「共同市場」の設立,「共通外交・安全保障政策」の設定,「自由,安 全および正義の領域」の設立を通じた連邦的枠組みの完成である。そのための方策とし て,EUは,加盟国の主権を漸進的にEUに移譲するという超国家的統合を行ってきた。

したがって,あえて大胆に言えば,EUは,3 分野の「統合」を深化させていくことに よって,最終的には,新たな統治組織としての政治共同体(おそらく連邦国家に近いも の)を新たに形成し,現在の形の主権国家の変容(もしくは消滅)をめざす存在である と言える。

他方,ASEANの場合は,機能的協力の拡大が経済共同体の中身であり4),主権の移譲 は,全く想定されていない。ASEANが目指すのは,ASEAN共同体の設立を通じて経済

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力を強化することで,主権国家であり国民国家でもある加盟国自身の国家体制の強化で ある。また,加盟国間の協力による「不戦共同体」の設定であり,教育・文化・環境な ど様々な分野における協力の推進による社会発展などを通じた主権国家体制の強化であ る。このことを経済共同体,政治・安全保障共同体,社会・文化共同体の 3 共同体を通 じて,展開していくことこそがASEAN共同体の目的である。したがって,できる限り の協力はするが,全ての分野で主権は維持され,全ての交渉は,常に国家間の外交交渉 である。協力分野は,多岐にわたり,様々な会議,委員会,センターが設置され,組織 化は進んでいる。しかし,それはあくまでも「協議の場」の充実のためであり,国際組 織であるASEAN自体が政策決定の主体になること,ましてや,ASEANが加盟国に取っ て代わるような新たな統治組織になることは,全く想定されていない。

ASEAN設立後 40 年たって作成されたASEAN憲章5)は,ASEANの本格的な設立条 約ともいうべきものである。このASEAN憲章については,2 つの特徴が指摘されてい る。第 1 の特徴は,ASEAN設立以来 40 年間,ASEAN諸国がASEANの運営に関して 蓄積してきたルールや慣行を改めて整理し,明文化したということである6)。特に,政策 決定方式に関しては,ASEAN憲章は,「コンセンサスと協議に基づく意思決定」を採用 することを規定し,ASEAN設立以来の原則を継承しているとされる7)

もう 1 つは,ASEANの政策決定や合意履行を効率化し,平和的紛争解決8)を徹底す るために採用した新たなルールや組織の導入である9)。ASEANは,その中心的活動が加 盟国の首脳や閣僚が集まる会議を定例開催することにある10)。ASEAN憲章により本格 的な制度化(機構化)をめざすASEANは,EUを部分的にせよ模倣しようとする意図が 指摘されている11)。今回のASEAN憲章においては,特に,首脳会議の定例化(年 2 回)

と役割の強化12),調整理事会(外相理事会)(ASEAN Coordinating Council),3 共同体 のそれぞれの共同体理事会(ASEAN Community Councils)や分野別閣僚機関(ASEAN Sectoral Ministerial Bodies),事務局の強化13) と加盟国の大使級で構成される常駐代表 委員会(Committee of Permanent Representatives to ASEAN)14) の設置あるいは,議 長国(the Chairmanship of ASEAN)制度(1 加盟国が全ての会議の議長国として 1 年 間統括し,毎年輪番制で交代する制度)15)など確かに,ASEAN憲章にはASEANとい う組織をEUに似せようとする努力の跡が窺える16)。このような組織的な強化は一定の 評価はできる。しかし,この制度的充実は,統治機構としてのASEANの充実ではなく,

協議機関としてのASEANの充実にすぎない。

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2 地域経済協力と地域経済統合,地域政治統合の類型化

ASEANを考察する場合,加盟国の格差の大きさ,歴史的・言語的・宗教的な多様性の 大きさ,加盟国の行政能力の水準という点で,大きな差が存在していると言われる17)。そ のことが,ASEANの組織化を阻んでいるとする見解は多く見られる。しかしながら,EU においても加盟国間の格差や多様さはかなり深刻であり,一概にこの点のみを強調して,

組織的特徴を決定づけるのは,適切ではないであろう。

本章では,比較検討の枠組みとして,まず,概念定義を明確にしておきたい。これま でも経済協力,経済統合,政治・安全保障協力,政治統合については,様々な定義が試 みられてきた。しかし,実際に数多く存在する協力枠組みについては,近年では,人に より様々な概念規定がなされすぎており,そもそもその表現自体が何を定義しているの か分からず,定義なのか単なる希望なのか見分けがつかない例も見うけられる。本章で は,経済協力,経済統合,政治・安全保障協力,政治統合などを定義し,ASEANとEU とは,いかなる試みとして捉えるべきかを明らかにしていきたい。

まず,よく知られている,関税と貿易に関する一般協定(GATT)24 条18)とベラ・バ ラッサ(Bela Balassa)19)の経済統合理論を整理しておきたい。GATT24 条 8 項には,関 税同盟(customs union)および自由貿易地域(Free Trade Area)の定義が示されてい る。自由貿易地域は,関税その他の制限的通商規則(いわゆる非関税障壁)が構成地域 間における「実質上すべての貿易(substantially all the trade)」について廃止されてい る 2 つ以上の関税地域の集団をいうと規定される20)(第 24 条 8 項⒝)。他方,関税同盟 は,これに加えて,同盟の各加盟国が「実質的に同一の(substantially the same)」関 税その他の通商規則を,その同盟に含まれない地域の貿易に適用する21)(第 24 条 8 項⒜)。

したがって,関税同盟は,自由貿易地域の形成に加えて,対域外共通関税を含む共通対 外通商政策を設定する必要がある。

また,地域統合の類型を提示したバラッサによれば22)

① 自由貿易地域は加盟国間の関税障壁を撤廃して,自由な貿易を域内で実現するもの で,域内の貿易は自由化するが,関税同盟との決定的な違いは共通対外通商政策を 持たないことである。

② 関税同盟は自由貿易地域と同様,域内で関税撤廃を行い,自由貿易を実現するが,そ れに留まらず,加盟国間で共通対外通商政策を持ち,対外共通関税など対域外通商 政策を設定するところに特徴がある。

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③ 共同市場は関税同盟をさらに一歩進めて,域内経済において様々な分野で共通政策 を樹立し,経済の統合を多元的に進めるものである。

④ 経済同盟は共同市場に通貨統合の要素を加えたものである。

⑤ 完全なる経済統合体はまだ理論上の存在でしかないが,経済同盟に共通の財政政策 が加わり,財源の共通化,税制の統一などが完了した段階がこれにあたる。

以上の点を踏まえて整理すると,まず,自由貿易地域は,加盟国間で関税と非関税障 壁(関税以外の制限的通商規則)の縮小もしくは撤廃を目指すが,必ずしも完全に廃止 する必要はない。したがって,関税と非関税障壁のできるだけの撤廃を目指せば一応の 自由貿易地域と称する地域は形成される。それに対して,関税同盟は,対外共通関税を 含む共通対外通商政策を設定する必要がある。そのためには,加盟国間で継続的に負担 の重い外交交渉を重ねるか,対外共通政策を策定する機関を設立して,その機関に加盟 国は共通の通商政策を策定する権限を移譲する必要がある。より現実的なのが後者であ ることは明らかであるが,主権の移譲を伴うため,容易ではない。自由貿易地域と関税 同盟の決定的相違は,この権限の移譲が生ずるかどうかにあるのである。したがって,主 権の移譲の有無を観察すれば自由貿易地域のみを目指すのか,さらに進めて共同市場や 経済統合を目指すのかがはっきりする。

共同市場を目指す場合,通常は,域内経済において様々な分野で共通政策を樹立し,共 同市場を域内市場として,通常の「国内市場」と同程度の共同市場化を進めることにな る。この段階になると各種の共通政策を立案・実施する必要性が増し,何らかの形の超 国家的機関の設立が不可避となり,主権の移譲がいっそう進み,経済統合のビジョンを 持って計画が進められるようになる。逆に言えば,何らかの統合というビジョンを持っ た共同体だけがこの段階に進む。ただし,レトリックとして,「共同市場を目指す」と表 明することは可能である。「共同市場を設立」することと「共同市場を目指す」こととの 違いも,主権の移譲があるかどうかを見れば明白である。

経済同盟は,共同市場内での単一通貨の流通を果たした段階である。通貨同盟を形成 しているEUを考えれば,この段階においては,金融・通貨政策は,新たに設置された 単一通貨の発行銀行である中央銀行(EUの場合は,欧州中央銀行)によって統一的に行 われるため,各国の持つ通貨主権が失われるだけでなく,金融政策に関する主権も新た な域内中央銀行に移譲される。

バラッサの言う完全なる経済統合体は,経済同盟に共通の財政政策が加わり,財源の 共通化,税制の統一などが完了した段階を指す。現在のEUは,経済統合分野だけを考

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えれば,この段階に近く,実際,EUの財政政策のあり方まで話が進んでいる。

昨今の議論においては,経済協力,経済統合,地域統合,地域協力などの用語が,か なり柔軟に用いられており,人によってイメージにずれが生じている23)。他方で,一般 的に言って,地域協力の形態は,実に多種多様であるとともに,経済分野のみの協力と は限らない。そのため,まず「地域」あるいは「地域主義」という表現を,ここでは,単 に地域限定型の枠組みと捉える。その意味では,ASEANもEUも地域限定型の枠組みで ある24)。他方,「経済協力」の協力方式は多岐にわたり,なおかつそれが経済統合に直結 するわけでもない,ここでは,将来の関税同盟への発展を意図していない経済協力を単 に「経済協力」とし,関税同盟あるいは,共同市場以上の段階を目指す経済協力を「経 済統合の前段階の経済協力」25)と定義することにする。さらにもう 1 つ,経済協力の類 型として,自由貿易地域の中に伝統的自由貿易地域(物品の貿易の自由化)と新世代自 由貿易地域(伝統的自由貿易地域に加え,サービス,投資,人の移動,知的財産権保護 などの幅広い要素を含む)を類型に加えて,現代の様々な自由貿易地域に対応させるこ とにしたい26)。これによって,「経済統合の前段階の経済協力」とそこまでを意図しない 自由貿易地域を明確に区別し,経済統合とはまた違った多様な自由貿易地域あるいは経 済連携協定を始めとする多様な経済協定の可能性を検討することができる。また,統合 という形式は取らないが,経済面に限らない多様な協力(たとえば安全保障)を模索す る多面的地域協力も類型に加えておきたい。

他方で,EUを分析する際,よく言及されてきた新機能主義を 1 つの指標として,経済 統合以外のあるいはそれを含む「政治統合」の概念を用いて,統合の概念の充実を図り たい。新機能主義では,その始祖であるE・ハースの概念がよく使われる。ここでは,特 に「統合(integration)」という概念定義についてそれを用いたい。新機能主義では,統 合は,「過程(process)」であると定義する27)。そして,その過程の最終形態は,政治共 同体もしくは,政治同盟とされる。したがって,新機能主義によれば統合とは,政治共 同体へと至る過程で有り,最終形態に至った際には,加盟国たる主権国家は,政策の重 要部分に関する自立的な政策決定単位としての活動を停止することになる。したがって,

統合という過程においては,長期間にせよ,短期間にせよ,漸進的にせよ,集中的にせ よ,主権国家の持つ主権を新たな中心(例えばEU)に譲り渡す作業が繰り返される。「経 済統合」にしろ「政治統合」にしろ「経済協力」と「政治・安全保障協力」の決定的違 いは,主権の移譲の有無に求められるのである。

以上の「経済協力」と「経済統合」さらには,「政治・安全保障協力」と「政治統合」

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の概念図を記すと以下のようになる。

図 1 経済協力と統合の類型 1,地域的限定の有無 地域的限定あり=地域主義あるいは

地域的=ASEANEU

地域的限定なし=普遍的(世界的)=世界貿易 機関(WTO)

2,分野別類型

経済協力と経済統合の類型 内容 政治・安全保障協力と政治統合の類型*2 経済統合を目

指さない協力

( 主 権 の 移 譲 なし)

関税同盟を 目指さない 経済協力

伝統的自由 貿 易 地 域

(FTA)

物品の貿易の自由化 政治統合を目 指さない協力

( 主 権 の 移 譲 なし)

政治・安全保障協力

経済連携協 定 *1 な ど の新世代自 由貿易地域

伝 統 的FTAに 加 え,

サービス,投資,人の移 動,知的財産権保護など の幅広い要素を含む。

経済統合を目 指す統合

( 主 権 の 移 譲 有り)

経済統合の前段階の自由 貿易地域

域外に対する共通関税 の設定

人や資本など生産要素 の移動制限の撤廃 共通経済政策の調整 超国家機関の設置,経済 政策の統一

政治統合を目 指す統合

( 主 権 の 移 譲 有り)

様々な分野での緊密な協力  ↓  (政治統合機関に主権

の移譲開始)

外交・安全保障の統合と自 由・安全・正義の領域の確立 の進展

 ↓  (加盟国との主権の連 邦的配分終了)

政治同盟(共同体)

関税同盟(主権の移譲開 始)

共同市場 経済同盟

完全な経済統合(加盟国 との主権の配分終了)

3.協力と統合の深化に関する類型 多面的協力

多面的協力は,経済や安全保障だけでなく社会や文化までを含む 多面的協力関係を示す。,

多面的協力は単に協力する範囲の広さを表現するだけで,必ずし も緊密な協力を意味しない。

政治統合

統合の場合は,その前提としてあらゆる側 面で,連邦国家的枠組みを目指す。

経済統合を伴わない政治統合は,かなり考 えずらい。そのため政治統合には,経済統 合が含まれる。

外交・安全保障の分野の統合に関しては,段 階的主権の移譲が,事実上不可能である。

主権の移譲は,政治同盟の成立に直結する ことになり,そのため主権国家の消滅を意 味する。

* 1 経済連携協定とは,貿易の自由化に加え,投資,人の移動,知的財産の保護や競争政策におけるルール作り,様々 な分野での協力の要素等を含む,幅広い経済関係の強化を目的とする協定

  以下の外務省HPより抜粋https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/index.html

* 2 政治協力に関してここでは,広く政治・安全保障協力と表記する。

本図表は,田辺智子,「東アジア経済統合をめぐる論点」国立国会図書館 ISSUE BRIEF NUMBER 489(JUL.28.2005),

p.1 を参考に加筆修正を行った。

(9)

そもそも,現在は,自由貿易地域を目指すASEANを経済統合の第 1 段階と捉えるこ とは,かなり困難である。経済協力は,あらゆる国家間関係に結ばれる可能性のあるい わゆる経済協定や貿易協定である。しかも,この協力関係がその後の関係発展を必ずし も予定しない。また,自由貿易地域と関税同盟は明確に区別する必要がある,今日多数 見られる自由貿易地域に対して,関税同盟はEUなどごく限られた事例しかないを見れ ば,このことは明らかである,最初から関税のできるだけの逓減や撤廃のみを目指す自 由貿易地域と関税同盟あるいはそれ以上の経済統合を目指す際に一時的に経由する自由 貿易地域との区分は,はっきりするべきである。関税の撤廃は,一見,加盟国による関 税自主制定権の移譲という主権の移譲に見えるが,関税の撤廃の主体は,主権国家たる 加盟国自体であり,関税以外の多様な非関税障壁の設定権限も,依然として加盟国の手 に握られている。関税同盟は,対外的な共通関税を設定するが,通常その主体は,加盟 国から関税設定権限を移譲された主体(例えばEU)となり,明確な主権の移譲が行われ る。共同市場に至っては,共同市場を運営・管理する主体としての超国家的機関の設立 が,言うまでもなく必要である。他方,自由貿易協定は,加盟国が交渉を通じて合意し た内容を蓄積していくことで,自由貿易を促進するが,加盟国の主権は完全に維持され た状態が保たれるのである。

本稿では,EUを地域的には欧州に限定され,新しい主体(現在はEU)に加盟国が経 済分野および政治分野に関する主権を漸進的に移譲するという「地域的政治・経済統合」

と規定する。他方で,ASEANは,主権の移譲を全く想定してはいないが,その時々に応 じて,経済に限らず可能な限り広い分野の協力の枠組みを構築していくという,地域的 には東南アジアに限定された「多面的地域協力」であると定義する。ただし,ASEANに 関しては,後の章で,ASEAN特有の地域協力の方式を改めて検討する。

3 目的に見る国際組織の性格

本章では,実際にEUとASEANの各基本条約等を分析することによって,それぞれ の組織的特徴を比較検証したい。その際には,国家主権がどのように制約されているの か,あるいは,堅持されているのかという視点で,分析することにしたい

EU条約では,Ⅰ編 共通規定 1 条で,「本条約により,締約国は相互の間に,加盟国 が共通の目的を達成するために権能を授与する,以下「EU」と呼ぶ,欧州同盟を設立す る。」と規定し,EUに基本条約28)により権限を与える「個別授権原則29)(権限付与の原

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則)」を採用していることを明記している。したがって,EUでは,個別授権原則によっ て,実際に加盟国からEUへ移譲される主権が規定されているのである。

2 条では,EUの基礎をおく価値として,「人の尊厳,自由,民主主義,平等,法の支 配の尊重,および少数者に属する人々の権利を含む人権の尊重」を挙げ,加盟国に共通 するものとして,「多元主義,非差別,寛容,公正,連帯および男女平等」を明記してい る。さらに,この価値を尊重してないと理事会によって認定された加盟国は,理事会に おける当該国の政府代表の投票権を含め,条約によって当該加盟国に適用される権利の いくつかを一時停止する決定を行うことができる30)と規定している。したがって,EU においては,EUに共通の価値を尊重していないと認定された加盟国への制裁もEUの行 為として可能となっており,その意味でも加盟国の主権に対する制約が存在している。

3 条では,EUの目的を,平和,EUの価値およびその人々の幸福を促進することとし た上で,「自由,安全および正義の領域」の設立31),域内市場の設立32),ユーロを通貨と する経済通貨同盟の設立,「共通外交・安全保障政策」の推進33)を行うために「EUは,

条約により授与される権限に則した適切な手段により目的を遂行する」としている。具 体的な授権内容については,EU運営条約Ⅰ編「EUの権能の範疇および分野」に規定さ れている。同編 2 条では,EUと加盟国の権限配分に関して,(a)関税同盟(b)域内市 場の運営に必要な競争法規の確立(c)ユーロを通貨とする加盟国の通貨政策(d)共通 漁業政策の下の海洋生物資源保護(e)共通通商政策及び国際協定の締結という34)EUの 排他的権限35)におけるEUによる立法権限の独占を規定している。

また,(a)域内市場(b)本条約により定められた側面に対する社会政策(c)経済的,

社会的および地域的結束(d)海洋生物資源保護を除く,農業および漁業(e)環境(f)

消費者保護(g)運輸(h)欧州横断ネットワーク(i)エネルギー(j)自由,安全および 正義の領域(k)本条約により定められた側面に対する,公衆衛生問題に関する共通の安 全,さらには,研究・技術開発と宇宙の分野36)及び開発協力および人道援助の分野37)は EUと加盟国の共有権限38)とされ,立法権は,加盟国とEUで分有されている。

さらに,EUは,基本条約に取り決められた範囲内での経済および雇用政策の調整,共 通外交・安全保障政策の決定とそれを実施すると共に,(a)人間の健康の保護と改善(b)

産業(c)文化(d)観光(e)教育,職業訓練,青年およびスポーツ(f)市民の保護(g)

行政協力の分野39)で加盟国の活動の支援,調整,補足活動の実施にあたることが規定さ れている40)。なお,EU条約 4 条および 5 条で,繰り返し,EUに条約によって授与され ていない権限は,加盟国に留まることを明記している。

(11)

したがって,EUが移譲されているのは,加盟国の主権の全てではなく,経済分野を中 心としたごく限られた範囲であること,加盟国とEUで共有された権限が多数存在する こと,EUが加盟国の活動の支援,調整,補足をおこなう分野が存在すること,それ以外 の領域においては,加盟国の主権が厳重に守られていることが明らかになる。経済以外 の 2 つの分野においては,EUへの主権の移譲が順調に進んでいるとは言いがたい。共通 外交・安全保障政策の分野においては,主権は原則全て加盟国の手に保持されており,そ の上で決定はEUの場(主に欧州理事会と理事会)においてコンセンサスに基づいて行 われ,実施もEUの名において行われるものの決定は主権国家によるコンセンサス方式 が維持されている41)。また,「自由,安全および正義の領域」として知られる刑事司法協 力及び警察協力の分野においても統合の程度は依然として低い42)

他方で,ASEAN憲章では,目的を定めた 1 条において,15 項目に及ぶ目的が設定さ れているが,具体的に設立が明記されたものは,5 項に「経済統合された単一の市場及び 生産拠点の設立」のみである。また,2 条の原則では,(2)(a)加盟国の独立,主権,平 等,領土の保全及びナショナル・アイデンティティの尊重,(e)内政不干渉,(k)加盟 国の主権,領土の保全,(n)地域的経済統合に向けたASEANルールに基づく体制

(regimes)の固守などが規定されている。ASEANでは,加盟国の主権保全や内政不干 渉が原則となっており,主権に関わる問題はそもそも存在せず,主権国家を基本とした 国際組織であることが,明記されている。

ASEAN 憲章に掲げられたASEAN の目的の第 1 は「地域における平和・安全・安定 を維持・向上し,平和志向の諸価値を一層強化する」(第 1 条第 1 項)ことであり,第 2 は「さらなる政治・安全保障・経済・社会文化協力を促進することにより,地域的強靱 性を向上する」(第 2 項)ことであり,設立以来のASEANの目的を明確に再確認したも のとされる43)。実際,ASEANを結成した加盟国が最も切実に希求していたのは相互の 信頼醸成・善隣友好と地域の平和・安全であった44)。今日のASEAN は,加盟諸国間の 単なる 「不戦条約レジーム」ではなく,安全共同体(各国国民がASEAN内での武力行 使・威嚇による紛争解決を想定せず,平和的解決を当然視する状態)に一歩近づいたと 評価されている45)。ASEAN 安全保障共同体は,軍事や防衛を主眼とする伝統的安全保 障ではなく,総合(包括的)安全保障をめざしている。そしてASEAN憲章では,ASEAN の 8 番目の目的として「総合安全保障の原則に沿いながら,いかなる形の脅威・国際犯 罪・越境問題に対しても有効に対処する」(第 1 条第 8 項)と,非伝統的安全保障への取 り組みを掲げている46)。安全保障共同体は,共同防衛や軍事同盟的色彩はほとんどなく,

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総合安全保障(包括的安全保障)の強化が中心であり,内政不干渉,国家・地域の強靱 性,国家主権の尊重,コンセンサスによる意思決定,武力の威嚇・行使の放棄,紛争の 平和的解決というASEANの基本を再確認したものである47)。また,非伝統的安全保障

(国際犯罪や人身売買など)のための能力強化などもうたっており48),安全保障共同体は,

EUの目指すような伝統的な外交・安全保障共同体ではないと言うことができる。すなわ ち対外的外交・安全保障というよりも,むしろ加盟国間の脅威・国際犯罪・越境問題と いう内向きの加盟国単位の安全保障に重点を置いていることが特徴であろう。

ASEAN 憲章では,単一市場創設をめざす(第 1 条第 5 項)とともに,「相互支援・協 力によりASEAN内における貧困を緩和し発展格差を縮小する」(第 6 項)ことがASEAN の目的として掲げられた49)。ASEAN は経済協力を進めるために域内の経済格差是正に 取り組む姿勢を見せているが,ASEAN 自体が是正措置を実施する資源を持っていないこ とが問題とされている50)。単一市場を形成・維持するための重要な要素が,経済格差の 是正であることは,EUの単一市場でも全く同じである。それに対してEUでも投入でき る資源(財源)が加盟国の財政に比べて圧倒的に少ないことは同じく問題である51)

ASEAN自由貿易地域は,1992 年に合意した原加盟 6 カ国(当時のASEAN加盟国)が 原則として域内関税を 5%以下にするとの構想は,一応 2003 年に完了し,現在は関税撤 廃と新規加盟の 4 カ国の貿易自由化を新たな目標にしている52)。もっとも経済共同体 の 経済協力の目標は,域外共通関税や政府調達の開放,共通通貨,人の自由な移動などは 目標としておらず,むしろ経済連携協定に似ている53)。ただし,物品の貿易に加えサー ビス,投資,熟練労働者と資本のより自由な移動を実現し,グローバルなサプライチェー ンの参加を目指し,対象分野は輸送やエネルギーなども含み,その点では経済連携協定 よりも広いと言える54)

最後の社会文化共同体では,福祉に配慮した社会を,人材育成や教育,農村開発,医 療など様々な分野での施策を通じてめざすとともに,ASEAN としての一体性を芸術,文 化,報道などを通じて人々の意識に浸透させることもめざしている55)

ASEAN憲 章 は,ASEAN標 語,ASEAN表 象 旗,ASEAN紋 章,ASEAN記 念 日,

ASEAN賛歌56)についても規定している57)。もっとも,ASEAN諸国が抱えてきた重要 課題のひとつが,国民としてのアイデンティティ(国民意識)を浸透させることであり,

東南アジアの 5 カ国が善隣友好と信頼醸成を主要な目的とするASEANを設立したこと の思惑は,近隣諸国との摩擦・対立を減らし(内政への不干渉),自国の国内に関心をな るべく集中して国家建設・国民統合・経済開発を進めることにあった58)。したがって,

(13)

ASEANの目指す経済協力は,あくまでも主権国家の協力の下でなされる協力である。

4 政策決定方式

本章では,EUとASEANの政策決定方式の違いに着目して,それぞれの方式が,国家 主権の問題とどのように関わっていくのかを検証したい。

ASEAN憲章は,政策決定方式としては,原則的には,コンセンサス方式を採用してい る。ASEAN憲章では,基本原則として,ASEANの決定は,協議とコンセンサスで行わ れることが明記される59)一方で,コンセンサスが得られない場合は,ASEAN首脳会議 が,特別な決定がなされる方式を決定することができる60)と規定されている。しかしな がら,この規定では,具体的な方式は明記されておらず,なおかつ,ASEAN首脳会議の 決定方式がコンセンサスであることを考えれば,問題が解決する見込みはかなり少ない。

ただし,コンセンサス制度の運用は,協力分野ごとに異なる。3 共同体ごとに見ると政 治・安全保障共同体では,コンセンサス方式が厳密に適用され61),各加盟国に拒否権が 保障される。その意味では明確に,各加盟国の主権が保障される。AECでは,準備がで きた国から合意を履行する「ASEAN−X方式」が導入され,こうした柔軟な履行方法を 前提に加盟各国は,拒否権の発動を控えているといわれている62)。さらに,ASEAN 協 和宣言Ⅱでは,履行可能な加盟国が少数であっても先行実施を可能とする「2 +X方式」

へとより柔軟化されている63)

コンセンサスによる意思決定,全会一致,多数決などの表決制は政策決定方式だが,

ASEAN−Xや 2+Xという方式は単に合意の履行を容易にする方式である64)。この合意 履行方式を採用することは,実施不可能あるいは反対の加盟国が実施義務を免除される という点で,合意を成立させやすくする。しかし,「あるプロジェクトを 2 +Xの方式で 実施する」という決定をどのような意思決定方式で行うのか,という問題は依然として 残る65)。この決定方式は,少数であっても協力を先行して進めることができるというと いう側面はあるものの,決定を促進するためと言うより,むしろ加盟国間の協力の差異 あるいは多様性を積極的に認めるための方策である。この点に関しては,玉虫色かつ問 題の先送りの側面が強い。

ASEAN憲章のたたき台となった,賢人会議による「ASEAN憲章に関する賢人会議報 告書66)」でも,一般原則としては,協議とコンセンサスに基づく意思決定を採用すると し,既存の方法を踏襲している。他方で,意思決定の迅速化を目指して,政治・安全保

(14)

障分野,組織上の問題などの政治的にセンシティブな問題以外の領域における諸決定に 表決制導入67)が提言されてはいたが68),ASEAN憲章には,採用されなかった。

EUにおける政策決定方式69)は,領域によって全く異なる。最も統合が進んでいる経 済分野においては,かなりの部分で特定多数決と呼ばれる特殊な多数決制が導入されて いる。特定多数決制度の要点は,加盟国の国家主権の制約である。全会一致あるいはコ ンセンサス方式と決定的に違うのは,1 加盟国が反対しても拘束力ある決定が可決される と言うことである。そのため経済分野の多くの領域で,加盟国の個々の主権は既に否定 されているのである。他方,外交・安全保障政策の分野においては,コンセンサス方式 が維持され各国の主権が完全に保障される政府間主義であり,刑事に関する司法協力の 分野も依然として,加盟国の主権を尊重する傾向が強い。加盟国からEUへの権限移譲 については,既に述べたように,あらゆるものが対象になっているわけではない。一般 的な見方として,加盟国の主権に完全に属するものは,そもそも基本条約の中の授権対 象に記載すらされていない。EU基本条約にEUの授権対象として記されたとしても理事 会での全会一致の対象となっている限りは,国家主権は守られている。実際に主権の問 題となるのは,理事会での決定が特定多数決の対象となった事項である。このようにEU では段階的に,主権の制限が進行していくのである。

政策決定過程については,ASEANは,依然として主権の維持が徹底されており,今後 も主権の制限が想定される可能性はかなり少ないと思われる。他方,EUにおいては,授 権の原則よりEUに与えられた分野,主に経済分野においては,かなりの主権の制限が 見られるが,その他の外交・安全保障分野や刑事司法分野については,まだ統合のレベ ルは,低い状態であることが言える。

5 ASEANの開放性・重層性・柔軟性

本章では,最後に,ASEANの特徴として,その開放性・重層性・柔軟性を明らかに し,問題点も指摘した上で,ASEANに見る地域協力の特徴を検討していきたい。

ASEANを中心とする東アジアの地域協力の特徴は,その重層性・開放性・柔軟性に求 められる。ASEANは,経済協力が,その政策的特徴ゆえに,より広域に開放された広域 経済協力を必要としているとされる70)。ASEANの経済協力においては,発展のための 資本の確保・市場の確保が常に不可欠であり,同時に自らの協力のための域外からの資 金の確保も肝要であるため,ASEAN自身が,広域な制度の整備や自由貿易地域の整備

(15)

が,不可避なのである71)。ASEANの経済協力の原点である輸出指向型工業化政策(EOI : Export-Oriented Industrialization)は,すなわち外国資本の導入とそれによる工業化=

工業製品輸出による経済発展政策である72)。そもそもASEAN自由貿易地域は,域内関 税率を下げることで,外国直接投資の導入の促進を主たる目的として企画された73)。こ の自由貿易地域を継承し,発展させる形で,企図されたものが経済共同体である74)。 ASEANにとって対外貿易が重要であり,経済共同体が全体として外向きの経済政策をと る必要性があり,そのために単一市場と生産拠点などの目標が上げられているのであ る75)

また,ASEANの重層性を指摘する考察も多い76)。ASEANは,重層的な枠組みに網羅 的に参加することによって,東アジア地域のみならず,ロシアからオーストラリア,パ キスタンから南北アメリカ大陸まで広がる広範囲な協力枠組みにおける「交渉の場」を 提供することが可能となっている77)。このことにより,ASEAN は,東アジアの地域協 力において中心となってきているのは事実である78)。このASEANの重層性こそが,

ASEANの中心性につながり,東アジアの様々なネットワークの形成を可能にしているの である。

ASEAN加盟国間では,経済の発展段階の差があり,自由貿易地域でも後発 4 国(ベト ナム・ラオス・カンボジア・ミャンマー:CLMV)の最終関税率適用の時期を遅らせる など柔軟な対応をしている79)。金融・資本分野についても,国内の金融・資本市場自体 の整備・発展状況に差異があり,それをふまえた対応を行っている80)。ASEAN が経済 共同体 で取組んでいる金融・資本各分野については,「ASEAN− 5」など,できる国々 により,できる項目から進めていくのが妥当と考えられている81)。そのうえで,後発国 が参加できる項目を徐々に増加させる方式での推進,そのための環境整備の進展が今後 も予想される82)。つまり,このASEANの柔軟性こそが,逆にASEANという枠組みの 維持につながっているのである。

他方で,経済共同体の内容については,いくつかの問題が指摘されている。まず,物 品貿易については,関税は,比較的順調に撤廃されたものの,多くの非関税障壁があり,

その撤廃が遅れている83)。また,サービス貿易の自由化,投資の自由化,資本の自由化,

労働の自由化などは,進んでいないのが実情である84)。これについては,ASEAN固有 の問題の存在が指摘されている85)。第 1 は,ASEAN 諸国の経済関係は先進国とは補完 的である一方で,ASEAN 諸国間では競合的であるという構造的な問題を抱えていること である。第 2 は,ASEAN 諸国間の大きな格差― ASEAN・Divide と呼ばれる―の存在

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である。ASEANの経済協力の進展は,ASEAN内の先進国に有利に働き,後進国に不利 に働くため,「後発国」は非関税障壁等の手段を用いて86)自国産業の保護に向かうことに なるからである。第 3 は,外資依存の輸出指向型工業化政策によって,ASEAN経済協力 の恩恵を最も受けているのは,域外の多国籍企業なのである。域内の一般の中小企業や 労働者は,ASEAN経済協力の利益を実感できていないのが実態である。ASEANの経済 協力に熱心なのは,ASEAN域内ではなく,域外の先進国なのである。

また,ブループリント 2015 や経済共同体スコアカード87)についての分析においても,

多くの問題点が指摘されている。すなわち,ブループリント 2015 での評価は,経済共同 体の功績として大きな経済効果がもたらされたと評価しているが,西口は,経済共同体 以外の多くの要因を挙げている88)。また,スコアカードについても同様に根拠が不明確 であると指摘されている。経済共同体 は,1)単一の市場と生産基地 2)競争力ある経済 地域 3)公平な経済発展 4)グローバル経済への統合の 4 つの柱から構成されている。「経 済共同体 スコアカードの実施状況(2008―2015 年)によれば,第 1 の柱の実施状況は 92.4%,第 2 の柱は 90.5%,第 3 の柱は 100%,第 4 の柱は 100%,であることを示して おり,全体の実施状況は 92.7%であることが報告されているが,実施項目ごとの実施状 況に関しては何も報告されていない89)。この実施状況は,驚くほど高い実施率であるが,

このスコアカードの実施状況を鵜呑みにする経済共同体 の専門家は大変少ないといわれ る90)。そもそも,スコアカードはASEAN 各国の自己申告を基にして集計されたものに 過ぎず,その結果について分析も説明も行われたことがないのである91)。このASEAN 事務局によるスコアカードの公表を通じた経済共同体による経済協力体制の充実度の向 上は,ASEANによる実質的内部評価ではなく,単なる対外的アピールである。福永が分 析しているように経済共同体スコアカードは,公式性,包括性という 2 点において極め て有用な文書であるとの評価を受ける一方で,スコアの詳細が公表されず,加盟国の自 己申告の上に,「実施」の判断基準自体が明確ではない92)。しかも,スコアカードは,経 済共同体の実施率に関する限り,唯一の公的資料である。ASEAN事務局が策定し,定期 的にASEAN首脳会議,ASEAN経済大臣会合等に報告され,実施率の数値は首脳会議・

経済大臣会合の各種声明,ASEAN事務総長のスピーチ等において頻繁に引用される93)。 以上のことと経済共同体が外国資本の導入とそれによる工業化=工業製品輸出による経 済発展政策を目指すことを考えれば,スコアカードの役割は,ASEANへの外国投資可能 性国に対する経済共同体 の有用性のアピールが目的であり,正確な内部評価というより も,高い実行率をASEAN事務局という加盟国ではない第三者的機関が,高い実績(=

(17)

ますます快適になりつつある投資環境)を強調することにあるのである。経済共同体の 人の移動の自由が,労働者94)ではなく「熟練労働者」に限られるのもまさに投資環境の 質的向上を対外的にアピールするためであり,域内の自由化を求めるものではないこと も明らかである。

経済共同体を発足させるにあたり,ASEANは東南アジアを,EUとは異なり,商品,

サービス,投資および熟練労働者の自由な移動を可能とする,競争力のある経済的な共 同体とすることを目指している95)。この目標を達成するためには,さまざまな課題をク リアする必要があるが,競争法についていえば,経済共同体域内において,競争制限的 なプラクティスが行われないようにすることが求められる96)。この目標を達成するため,

ASEANの全加盟国は,ブループリント 2015 の中で,2015 年までに国家的な競争政策お よび競争法をそれぞれ自国において導入することを約束した97)。しかし,2014 年 3 月末 時点においては,ASEANの加盟国のうち,競争法が完全に導入されている国は,まだ半 数(シンガポール,インドネシア,マレーシア,タイ,およびベトナム)にとどまる98)。 残りの諸国については,既に競争法は制定されているが施行されていないラオスを除い て,ブルネイ,カンボジア,ミャンマー,およびフィリピンはいまだ自国における競争 法に関する一般法さえ制定されていないのが現状である99)。この点についても経済共同 体は,目標の厳格な実行よりもその目標を掲げること自体が重要なのである100)

お わ り に

本稿は,様々な国際組織,特に地域的国際組織を分析する視座を設定しようとする試 みであった。その素材として,ASEANを取り上げ,それをEUと比較することによって ASEANの特徴を浮き彫りにしようとした。そのため,まず「協力」と「統合」の違いを 主権の所在を 1 つのメルクマールとして区別し,それぞれの定義づけを試みた。その結 果,統合を目指すEUと統合を目指さないが,できるだけ広範囲の協力を目指すASEAN という対照的な姿が浮かび上がってきた。それぞれの基本条約を見てもEUへの主権の 移譲とASEANにおける主権の堅持という特徴が見られた。政策決定過程においてもEU における主権の制限に対して,ASEANにおける加盟国の主権の尊重状況が確認された。

最終章では,ASEANの本質的特徴として,その開放性・重層性・柔軟性を検証すると 共にASEANの問題点も指摘した。

以上の分析の結果,ASEANは,あくまでも主権国家である加盟国のための国際組織で

(18)

あり,経済にしろ,安全保障にしろ,社会・文化にしろ,非常に広範な協力を模索する が,統合を目指す組織ではなかった。そのため,主権に関わるような統合をしない限り で,ASEANの目標設定は,自由自在であり,その開放性と重層性と柔軟さがASEANの 枠組みを維持させている。したがって,ASEANの強化や組織化は,交渉の場の強化や組 織化であり,統治組織としてのASEAN自体の強化や組織化を目指していない。ASEAN が目指すのは,経済にとどまらないあらゆる分野でのできるだけの協力であり,ASEAN という枠組み自体の維持であり,ASEANという場のアピールである。ASEANの開放 性・重層性・柔軟性もASEAN加盟国の全てが,緩やかに協力するための特徴であり,

ASEANの問題点についても,それは,指弾されるべき問題点というよりも,それが ASEANにおいて問題視されないことこそが,ASEANの柔軟性なのかもしれない。

ASEAN各国の政治の不安定,各国間政治対立,発展格差,各国の自由貿易へのスタン スの違いがあり,南沙諸島を巡る各国の立場の違い,それにも関連する各国の中国との 関係の違いが,ASEANの遠心力となっているのも事実である101)。また,ASEANの場 合,歴史的・言語的・宗教的な多様性の存在がしばしば問題視されるが,これこそが ASEANの強みなのかもしれない。

本稿は,あくまでも序論としての位置付けであり,今後の国際組織研究の一助とする ことを目的としている。そのため本稿の分析のみでは,不十分な点も多々存在している。

本序論をいかに充実させていくかが今後の課題である。

1 )リスボン条約版EU条約及びEU運営条約に関しては,Official Journal of European Union C306 17 December 2007 及び邦語版としては,鷲江義勝編著『リスボン条約による欧州統 合の新展開:EUの新基本条約』ミネルヴァ書房 2009.10 を参照した。

2 ) ASEAN憲章については,Charter of the Association of Southeast Asian Nations, Singapore, 20 November 2007,ASEAN HP http://www.asean.org/wp-content/uploads/2012/05/11.- October-2015-The-ASEAN-Charter-18th-Reprint-Amended-updated-on-05_-April-2016- IJP.pdfおよび邦文については,遠藤聡「ASEAN憲章の制定:ASEAN共同体の設立に向 けて」外国の立法:立法情報・翻訳・解説.(237),2008-09 を参照した。

3 ) ASEANブループリント 2015 に関しては,”Roadmap for an ASEAN Community 2009- 2015” Jakarta: ASEAN Secretariat, April 2009 および石川幸一「ASEAN 経済共同体とは 何か−ブループリントから読めるもの−」,季刊 国際貿易と投資Summer 2008/No.72 を参 照した。

4 )向山 英彦「アジア経済の新展開と経済統合への課題」,環太平洋ビジネス情報RIM 2007

(19)

Vol.7 No.24,p.99。

5 ) ASEAN憲章の発効は,2008 年 12 月 15 日である。

6 )鈴木早苗「第六章 ASEANにおける組織改革―憲章発効後の課題―」,山影進 編『新し

いASEAN 地域共同体とアジアの中心性を目指して』,日本貿易振興機構アジア経済研究,

2011 年 12 月 p.176 7 )鈴木,前掲書,176-177 頁.

8 )紛争解決については,今回特には取り上げないが,ASEAN憲章 8 章 22 条から 28 条に規 定されている。

9 )鈴木,前掲書,177-178 頁。なお,平和的紛争解決については,194-205 頁に詳しい。

10)鈴木,前掲書,177 頁。

11)山影進「「新ASEAN」の課題と日本」,NIRAモノグラフシリーズNo.08,2008/03,3-4 頁。

12)首脳会議の定例化と強化については,鈴木, 前掲書,182-185 頁に詳しい。

13) ASEAN事務局の強化については,鈴木, 前掲書,189-194 頁に詳しい。

14) ASEAN常駐代表委員会については,鈴木, 前掲書,186-188 頁に詳しい。

15)「単一の議長国システム」は,リスボン条約以前のEUにおいても採用されていたシステム である。欧州理事会を頂点とし,理事会や常駐代表委員会を始めとする加盟国が主体とな る作業部会まで,全ての組織の議長を同一国籍の代表が務めるため,すべてのレベルでの 議題調整や運営を潤滑にできるため,一定の評価を得ていた。ASEANの議長制度につい ては,鈴木, 前掲書,178-179 頁および鈴木 早苗,「研究レビューASEANのコンセンサス 形成における制度的要因―国際レジーム論再考に向けて」,アジア経済 50 巻 11 号 2009-11,

77-78 頁に詳しい。

16)山影 進,「東アジア地域統合の現状と課題 ─ASEAN的不戦レジームの可能性」学術の 動向 14 巻(2009)5 号,28 頁および山影進「「新ASEAN」の課題と日本」,NIRAモノグ ラフシリーズNo.08,2008/03,3-4 頁。

17)福永 佳史, 磯野 生茂「AEC創設とは何か」,アジ研ワールド・トレンド 242,2015−11。

18)関税と貿易に関する一般協定の条文については,経済通産省ホームページhttp://www.

meti.go.jp/policy/trade_policy/wto_agreements/custom_duty/を参照されたい。

19) Béla Balassa, ”The Theory of Economic Integration”, Richaed D. Irwin, 1961)および中 島正信訳『経済統合の理論』,ダイヤモンド社, 1963 年を参照されたい。

20)渡邊頼純,「制度的経済統合の法的枠組み」アジ研ワールド・トレンド 219 巻,2013-12,49 頁。

21)渡辺,前掲論文 49 頁。

22)以下,渡辺,前掲論文 50-51 頁を参考に作成。

23)田辺智子,「東アジア経済統合をめぐる論点」国立国会図書館ISSUE BRIEF NUMBER 489(JUL.28.2005),1 頁。

24)それに対して,全世界的枠組みとしては,例えば世界貿易機関(World Trade Organization)

がある。ちなみにEUは,WTOの正式メンバーである。以下のWTO HPを参照されたい

(20)

https://www.wto.org/english/thewto_e/whatis_e/tif_e/org6_e.htm  他 方 で,ASEANや

ASEAN共同体は,オブサーバーメンバーでもない。以下のWTO HPを参照されたい。

https://www.wto.org/english/thewto_e/igo_obs_e.htm 25)田辺智子,前掲論文,1 頁。

26)田辺智子,前掲論文,1 頁。

27)以下新機能主義理論については,鷲江義勝「国際統合理論についての一考察 ―新機能主 義をめぐって―」,『同志社法学』第 207 号,1989 年 5 月を参照されたい。

28)本稿で基本条約と記す場合は,EU条約及びEU運営条約を指すものとする。

29)個別授権の原則については,庄司克宏『新EU法基礎篇』,岩波書店,2013 年 6 月,29-31 頁に詳しい。

30) EU条約 7 条。

31)3 条 2 項は,自由,安全および正義の領域についてより具体的に「EUは内部に境界線のな い自由,安全および正義の領域をEU市民に与え,そこにおいては,対外国境管理,亡命 者庇護,移民および犯罪の防止と撲滅に関して適切な措置をとりながら人の自由移動が保 障される」と記している。

32)3 条 3 項は,域内市場について,「均衡のとれた経済成長と価格安定,完全雇用と社会的進 歩を目的とする競争力の高い社会的市場経済,ならびに環境の質の高水準の保護および改 善を基礎とする,欧州の持続可能な発展のために活動する。EUは,科学と技術の向上を 促進する。

 EUは,社会的排除および差別と戦い,かつ,社会的な公正と保護,男女平等,世代を 超えた連帯,ならびに児童の権利の保護を促進する。

 EUは,経済的,社会的および地域的結束,ならびに加盟国間の連帯を促進する。

 EUは,自らの豊かな文化的および言語的多様性を尊重し,かつ,欧州の文化遺産が保 全されることを確保する」と定めている。

33)3 条 5 項は「より広い世界との関係において,EUは,その価値と利益を主張および促進 し,かつ,EU市民の保護に寄与する。EUは,平和,安全,地球の持続可能な発展,の保 護に寄与し,国連憲章の原則の尊重を含む国際法の厳格な遵守と発展にも寄与する」と規 定している。

34) EU運営条約 3 条 1 項及び 2 項。

35) EU運営条約 2 条 1.条約が特定の分野においてEUに排他的権能を授与している場合,EU のみが法的に拘束力を持つ法を立法し採択することができ,加盟国はEUによって権限が 与えられるかEU法の実施のためにのみ法的に拘束力を持つ法を立法し採択することがで きる。

36) EU運営条約 4 条 3 項。

37) EU運営条約 4 条 4 項。

38) EU運営条約 2 条 2.条約が特定の分野においてEUに加盟国と共有される権能を授与して いる場合,EUおよび加盟国はその分野において法的に拘束力を持つ法を立法し採択する

(21)

ことができる。加盟国はEUが権能を行使できない範囲内でその権能を行使する。加盟国 は,EUがその権能の行使を中止することを決定した範囲内でその権能を行使する。

39) EU運営条約 6 条。

40) EU運営条約 2 条 3.加盟国は,本条約に定められた取り決めの範囲内でそれぞれの経済お よび雇用政策を調整し,EUはその取り決めを定める機能を有する。

4.EUは,欧州EU条約の規定に従い,共通防衛政策の漸進的枠組みを含む共通外交・安 全保障政策を決定し,かつ実施する権能を有する。

5.条約で規定された特定の分野および条件の下で,EUは加盟国の活動を支援し,調整し,

補足する活動を実施する権能を持つが,それによってEUの分野における加盟国の権能を 侵害するものではない。

 これらの分野に関係する条約の規定に基づいて採択された法的拘束力を持つEUの法は 加盟国の法もしくは規制の調和化を必要としない。

6.EUの権能の行使の範囲および取り決めはそれぞれの分野に関係する条約の規定により 決定される。

41) EU条約V編「同盟の対外行動に関する一般規定および共通外交・安全保障政策に関する 特別規定」を参照されたい。

42)自由,安全および正義の領域についての詳細は,EU運営条約Ⅴ編 67 条-89 条を参照さ れたい。

43)山影,「「新ASEAN」の課題と日本」,前掲論文,4 頁。

44)山影,「「新ASEAN」の課題と日本」,前掲論文,4 頁。

45)山影,「東アジア地域統合の現状と課題 ─ASEAN的不戦レジームの可能性」,前掲論文,

29 頁および山影,「「新ASEAN」の課題と日本」,前掲論文,5 頁。なお,「平和共同体」に 関しては,塚越由郁「新段階に入ったASEAN共同体設立への動き―ASEAN憲章の発効 でASEANはどう変わるか―」みずは政策インサイト,2009 年 2 月 5 日,1 頁および西口 清勝「ASEAN 共同体の成立と域内経済協力」(その 1)『立命館経済学』第 64 巻 第 4 号 2016 年 2 月,155-157 頁を参照されたい。

46)山影,「「新ASEAN」の課題と日本」,前掲論文,6 頁。

47)山影,「「新ASEAN」の課題と日本」,前掲論文,2 頁。

48)山影,「「新ASEAN」の課題と日本」,前掲論文,2 頁。

49)山影,「「新ASEAN」の課題と日本」,前掲論文,8 頁。

50)山影,「「新ASEAN」の課題と日本」,前掲論文,9 頁。

51) EUの財政については,とりあえず児玉昌巳,「EU予算」,辰巳浅嗣編著『EU 欧州統合 の現在(第 3 版)』創元社,2012 年 10 月を参照されたい。

52)山影,「「新ASEAN」の課題と日本」,前掲論文,2 頁。

53)石川幸一「基調講演 ASEAN 経済共同体の現状・課題・展望」,オーストラリア研究紀要 第 41 号,2015,6 頁。

54)石川,前掲論文,6 頁。

(22)

55)山影,「「新ASEAN」の課題と日本」前掲論文,2 頁。

56) ASEANの標語,旗,章,記念日,賛歌と同じ企画がEUにもあった。リスボン条約が締

結される以前,加盟国間で署名はされたが,批准作業に失敗し,発効しなかった条約とし て,欧州憲法条約がある。欧州憲法条約の中には,EUの旗,歌,標語,記念日などが規 定されていた。この規定に対して,EUの連邦化を想起されるとの懸念が巻き起こり,リ スボン条約では,削除されることとなった。ただし,リスボン条約に含まれる加盟国によ る宣言 52 で,「欧州同盟の象徴に関するベルギー王国,ブルガリア共和国,ドイツ連邦共 和国,ギリシャ共和国,スペイン王国,イタリア共和国,キプロス共和国,リトアニア共 和国,ルクセンブルグ大公国,ハンガリー共和国,マルタ共和国,オーストリア共和国,ポ ルトガル共和国,ルーマニア国,スロベニア共和国およびスロバキア共和国の宣言」とし て,以下の宣言がなされている。

 「ベルギー,ブルガリア,ドイツ,ギリシャ,スペイン,イタリア,キプロス,リトアニ ア,ルクセンブルグ,ハンガリー,マルタ,オーストリア,ポルトガル,ルーマニア,ス ロベニアおよびスロバキアは,青地に 12 の金色の星が円く描かれる旗,ルートヴィヒ・

ヴァン・ベートーベン作の交響曲第 9 番の「歓喜の歌」に基づく歌,「多様性の中の統一」

という標語,欧州同盟の通貨としてのユーロおよび 5 月 9 日の欧州の日が,これら諸国に とって欧州同盟における人々の共同体意識および欧州同盟に対する忠誠を表す象徴であり 続けることを宣言する。」

 EUにおいて,論争となり放棄された企画が,ASEANにおいて実現しているのは,大変 興味深い。EUの連邦化はあり得ることであるのに対して,ASEANの連邦化はあり得ない ということの証左かもしれない。

57)山影,「「新ASEAN」の課題と日本」前掲論文,p.10 頁。

58)山影,「「新ASEAN」の課題と日本」前掲論文,p.10 頁。

59) ASEAN憲章 20 条 1 項。

60) ASEAN憲章 20 条 2 項。

61)鈴木早苗「コメントASEAN共同体における協力と意思決定・組織運営の特徴」,アジア研 究, 2016, 62 巻, 3 号, p.64.

62)鈴木,「コメントASEAN共同体における協力と意思決定・組織運営の特徴」前掲論文,64 頁。

63)鈴木,「コメントASEAN共同体における協力と意思決定・組織運営の特徴」前掲論文,64 頁。

64)鈴木早苗「現地報告ASEAN憲章(ASEAN Charter)策定にむけた取り組み ― 賢人会議

(EPG)による提言書を中心に」アジア経済 48 巻 6 号,2007 年 6 月 77-78 頁。

65)鈴木,「現地報告ASEAN憲章(ASEAN Charter)策定にむけた取り組み ― 賢人会議

(EPG)による提言書を中心に」前掲論文,77-78 頁。

66) The Report of the Eminent Persons Group(EPG)on the ASEAN Charter,http://www.

asean.org/wp-content/uploads/images/archive/19247.pdf.

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