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書いて覚える習慣をつける ―原稿用紙を使用した書き取り練習―

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Academic year: 2021

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実 践 紹 介

55 1.はじめに

 近年インターネット上では様々な漢字学習アプリが紹介されており,ダウンロードをす るだけで誰でも簡単に利用することができる。担当した漢字クラスの中にも既に利用して いるという学生が複数いた。しかし,漢字学習アプリはいつでもどこでも学習できるとい う手軽さが利点である一方,その多くは視覚的あるいは音声的な学習にとどまり,書く練 習の機能を持ち合わせていない。

 漢字学習の難しさは,小テストや試験における学生の誤答から察することができる。漢 字圏の学生は簡体字や繁体字をそのまま書いてしまうことがあり,非漢字圏の学生は漢字 の形が正確に書けていないことがある。また,どちらの学生も共通して漢字の読み方に間 違いが目立つ。長音や促音などの特殊音や清音・濁音が聞き取れないためである。

 これらの問題を解決するには,漢字学習アプリのように漢字を眺めるだけではなく,何 度も書いて練習する必要がある。しかし,非漢字圏の学生の中には漢字を書いて覚えると いう習慣が身についていない学生もいる。繰り返し書いて練習するように指導するが,見 て暗記することに意識を集中させようとする。また,漢字圏の学生の場合も,漢字が書け るからと言って練習を怠るケースがある。本論では,授業内あるいは宿題としていかに漢 字を書く回数を増やすかに焦点を当てて実践してきた取組を紹介する。

2.授業の概要 2-1.コースの目標

 担当したのは,漢字圏と非漢字圏の両方の学生を含む中級3レベルのクラスである。週 1回90分×15週の授業で,レベルを統括するクラス案内には,到達目標として「初級の 漢字を文章の中で理解し,書ける漢字と見てわかる漢字を増やす」ことと「一つ一つの漢 字の知識をもとに,漢字熟語の知識を増やす」ことが挙げられている。読むことと書くこ との両方の技能が要求されるクラスである。

2-2.教材

 受講者全員に『

KANJI LOOK AND LEARN

』の本冊とワークブックを購入させ,授業内 早稲田日本語教育実践研究 第 8 号

書いて覚える習慣をつける

―原稿用紙を使用した書き取り練習―

松浦 康世

  科目名:漢字 3

  レベル:初級 1・2 /中級 3 ・4・5 /上級 6・7・8   履修者数:22 名

(2)

早稲田日本語教育実践研究 第 8 号/ 2020 / 55―56

56

で使用する。教科書の「対象とねらい」には,「主に非漢字圏の学習者を対象に,初級〜

中級レベルの漢字512字の形と意味を,イラストとストーリーを使って無理なく楽しく覚 えられるようにした教材」(

p.

8)と記載されている。512字の漢字が1課16字ずつ,能力 試験

N

5レベル相当の

Part

1から

N

3相当の

Part

3まで段階的に導入されており,担当ク ラスは1学期間で

Part

3(21課〜32課)の192字を学習する。

2-3.書くことを意識した活動

 90分の授業内には毎回約10分間の小テストがあるが,それ以外の時間は単元毎の漢字 を学習するために自由に使うことができる。漢字の意味や使用については,象形文字やス トーリーを示したイラストによる漢字の意味の理解から始まり,その漢字を使った語彙の 理解,短文による場面の理解,文章の文脈での意味の確認という流れで進めていく。この ような意味の理解には教科書とワークブックを使用し,解説,朗読,質問などを交えなが ら会話方式で理解の確認を行っているが,この中にどのように書く練習を取り入れていく かが当初の課題であった。ワークブックには各漢字に練習用のマスが5つずつ設けられ,

薄く書かれた漢字をなぞることもできる。また,漢字の穴埋め問題には学習した語彙が文 中に組み込まれており,漢字の書き方と読み方が練習できる。しかし,どちらも自主学習 として自宅で活用できるものである。

 そこで導入したのが原稿用紙を使用した書き取り練習である。原稿用紙はマスにより文 字のバランスを見ることができるだけでなく,行と行の間に余白があるため,漢字と読み 方の両方を書かせることができる。テスト等では読み方の誤答も多いため,読み方まで書 いて練習させる必要がある。教科書の語彙を読ませた後,その語彙の漢字とふりがなをす ぐに用紙に書かせている。

 この方法を導入してから読み方の誤答が少なくなった。また,授業を進める中で指示を しなくても自主的に何度も書こうとする姿が見られるようになり,学生が書いて練習する 習慣を身に付けることができたと実感している。

3.今後の課題

 漢字の授業は読み書きの時間が多く,学生間のコミュニケーションの機会が少ない。学 期を通して「語彙マップ」と「短作文」の提出が3回ずつ課せられており,それらを活用 してペアやグループで紹介し合うというのが学生間コミュニケーションの唯一の機会と なっている。単独学習になりがちな漢字の授業に学生間の会話を取り入れ,いかに楽しく していくかが今後の課題である。

参考文献

坂野永理他(2009)『KANJI LOOK AND LEARN』ジャパンタイムズ

坂野永理他(2009)『KANJI LOOK AND LEARN ワークブック』ジャパンタイムズ

(まつうら みちよ,早稲田大学日本語教育研究センター)

参照

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