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施設ケアの研究方法にかんする一考察

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(1)

施設ケアの研究方法にかんする一考察

一一一老人ホームにおけるケアの質と 規定要因をめぐって一一

副 田 あ け み

本稿の目的は,社会福祉施設とくに老人ホームにおけるケアの質をとらえる 方法を検討することにある

O

1

では,施設ケアの概念的枠組について

2

ではケアの質をとらえる方法的 枠組について論じる

O

そして

3

でケアの質を評価する方法を

4

でケアの質

を規定する要因について考察する

O

.施設ケアの概念的枠組

本稿では,処遇に代えてケアというタームを用いる

O

その理由はつぎのとお りである

O

処 遇

(treatrnent)ということばは,本来ケースワークの医学モデルにおける

対象者援助をさしていると考えられる(1)

treatrnentには医師による治療,手

当てという意味が含まれていることからも類推できるように,そのことばの訳

である処遇というタームには,生活上の諸困難や問題をかかえるクライアント

に働きかけてその困難や問題の解決を図るよう援助していく, といったニュア

ンスが含まれている

O

それゆえ,処遇のタームは,生活の場としての意味を第

一義的にもつ老人ホームの援助活動をさすことばとしては必ずしも適切とは思

われない

(2)O

もちろん,老人ホームにおいても

treatrnentとしての意味をもっ

ケースワークは実際におこなわれている。しかし,それが老人ホームの主たる

目的(果たすべき主要な機能)とは一般的に考えられていない。そこで本稿で

は,処遇のことばに代えて世話,保護,介助,介護といった意味あいをもっケ

(care)

のタームを使う

O

そして,従来から用いられている施設処遇のこと

(2)

ばに代えて施設ケア

(residentialcare)

を用いる

o

施設処遇といったばあい,そのことばの意味するところは用いる人によって 多少異なる

O

たとえば,秋山智久氏は施設処遇の概念を処遇の枠組(内容)と 処遇の条件の

2

っから成るととらえ,根本博司氏は広義の意味と狭義の意味が

あるとしている(表

1

参照)。本稿では秋山氏,根本氏のとらえかた,また小 笠原祐次氏の施設における運営組織論を参考にして

(3)

施設ケアを図

1

に示

1

施設処遇概念 秋山智久氏の施設処遇の概念

処遇の枠組(内容)=直接的処遇

│ 

処 遇 の 条 件

①専門援助的処遇(情緒安定,問題行動の 治療,社会的機能の強化)

②日常(介護)的処遇(基本的日常生活の 世話,健康管理)

③教育的処遇(生活指導,職業指導,学習 指導,作業,クラブ活動,自治会)

④身近な生活空間と日用品の整備

⑤仲間関係の育成

⑥家族関係の調整

⑦アフター・ケア

①設備,建物,環境

②物財,資金

③ 職 員 ( イ . 資 質 , 専 門 性 ロ . 労 働 条 件)

④施設の運営管理・処遇計画(対象者観)

⑤地域社会・学校・他の社会資源との関 係

⑥行政・制度による条件整備

根本博司氏の施設処遇の概念

広 義 の 概 念

│ 

狭 義 の 概 念

施設におけるあらゆるサービスの総称 生活の場の提供

若干の被服の給与 給食や洗濯サービス

日常生活動作の介助 健康管理

疾病時の看護

機能の維持・回復訓練

生きがいのための諸活動の機会の提供と その活動の援助

生活上の相談に応ずること

(  (衣・食・住の提供などを除いた)職 員と対象者との聞の人間関係を通じてな

される生活援助

秋山智久「戦後社会福祉施設発達史

J(r

社会福祉施設管理運営論』全国社会福祉協議 会 ,

1980

年 ,

49

ページ)

根本博司「処遇の理念と処遇の原則・目標

J(r

老人ホーム処遇論

j

全国社会福祉協議

会 ,

1979

年 ,

35

ページ)

(3)

施設の目的 ニードの把握,運営方針

構造的条件 │運営組織

ランニング

物理的環境 業務運営組織

l

建 物 設 備 「 ケア計画

的条件 権限委譲システム

l

日 日 間 計

│職務分担(役割分 各職務計画 財務管理

担)体系 ノ ケアを行う上での

人事管理

調整組繕 原則

l 件,職員の質の 保(研修) ‑ 1   職員会議 職務単位の会議 職務遂行におけ る原則

'

.l 

各種委員会 入所者の守るベ

ゐ 十

リーダー会議 き原則

F

連絡会,ミ‑ティング (; 

M

構 造

4

1

施設ケアの概念的枠組

ド‑"

h

(4)

す諸要素から構成されるものとして考えることにしたい。

1

に示すケア・ワーク

(carework)は,基本的日常生活の世話・介護サー

ビスの実践をさす。このケア・ワークと,それ以外の職員による入所者との人 間関係をとおしておこなわれる諸活動,たとえば健康管理・看護,機能回復・

維持訓練,クラブ活動・レクリエーション活動,ケースワーク,グループワー ク,家族調整などをあわせて直接的援助活動,ないしレジデンシャル・ワーク

(residential work)とよぶことにしよう O

なお,ケア・ワークにかんしては,その専門性をめぐる論議,ソーシャル・

ワークの一部かケースワーク,グループワークなどと並ぶひとつの社会福祉実 践の方法かといった論議,ケアーワーカーの資格,教育訓練制度をめぐる論議 などがさかんにおこなわれている

(4)O

これらは施設ケアをめぐるホットなイッ シューであるが,本稿では言及を控える

o

2  ケアの質をとらえる方法的枠組

(1) 

ケアの質の次元

ケアの質をとらえていくにあたって, まず,イ可をケアの質としてとらえてい くのかというケアの質の次元と,それがどのていどのレベルにあるのかを測る 基準,およびその基準が前提とする価値の問題を検討しなければならない。

ケアの質をとらえるということは,ケアという行為の水準をとらえるという ことである

O

つまり,図 1に示す施設ケアの行為過程,つまり「施設ケア(全 体)のプラニング」作業と,それにもとづいておこなわれる入所者への「直接 的援助活動」の質をとらえるということがケアの質をとらえることになる

o

I 構 造的条件」ゃ「運営組織j は,これらの行為過程のありょうを条件づける構造 的要素である

o

施設の質あるいは水準をとらえるといったばあいには,これら 構造的要素の水準をも考慮に入れる必要があろう

o

だが,ケアの質といったば

あいには,職員のケアという援助行為の過程そのものを問題としなければなら ない。

そこで本稿では, I 施設ケア(全体)のプラニングj と「直接的援助活動」

をケアの質を構成する要素としてとらえ これをケアの質を表わす

2

つの次元

(5)

と考える

O

なお,本稿では, I 直接的援助活動」といったばあい「ケア・ワーク

J

に焦点をあてている

O

これが老人ホームにおける直接的援助活動の中心的活動 だからである

O

(2) 

前提となる価値

ケアの質が良いとか悪いとか,あるいはどのていど良いのかをとらえるのに,

従来は入所者にケアの満足度を尋ねるという方法をとってきた

(5)O

これもひ とつの方法ではあるが,実際の調査のやりかた(誰がどの場面でどのように尋 ねるのか)や対象者(精神上の障害のある人は対象とすることができない)の ことを考えれば,必ずしも適切な方法とは思われない。これに代わる客観的な 方法を検討するためには,ケアの質が良いとか悪い,あるいはより良いかどう かを測る基準について考察しなければならないであろう

O

ケアの質を測る基準というのは,なんらかの価値を前提とする

O

つまり,ケ アはこれこれであるのが望ましいという前提があって,一定の基準が設定され る

O

この望ましさ,すなわち価値についてはいくつか考えられよう

O

ひとつは,効果という価値である。社会福祉サービスの評価(

evalnation)と

いったばあい,効果測定をさすことが一般的であることからも理解できるよう に,サービスの提供や援助活動の実践が対象者にとってなんらかのプラスの効 果を及ぼすことが望ましいという価値は 明確に存在している

O

たとえば,老人ホームの施設評価の理論的検討をおこなった米本秀仁氏は,

「老人ホームの入所者個人に対してとられた処遇目標がケア・プログラムの遂 行によって達成されたかどうかをみるという効果測定の意味で『評価

J

という 用語は使用される」とし, I 最終的な施設評価のためには,産出関係の最終産 物を入所老人の状態におき,その産者として何が有効であるかを明らかにしな ければならない」と述べている

(6)

。これは施設ケアという社会福祉実践の方 法が入所老人にとってプラスの効果をあげることが望ましいという価値を前提

としている。

米本氏は,老人ホームという施設(全体)の効果を評価する方法を検討して

いるが ( 7 ) 個々のサービスや個別的な援助活動を評価するにあたっても,評

価とは効果測定であると一般的に考えられており ( 8 ) 老人ホームのケアの望

(6)

ましさ(価値)を示すものとして効果をとらえることができる

O

実際には施設 におけるケアに限らず,社会福祉の実践においてはその効果が明白にあらわれ ないとか,長期間にわたって考慮しなければならないといったばあいが多い。

だが,これらは効果をどういう基準でとらえるかその工夫の仕方の問題である。

そのことによって,効果という価値から評価することの意義が失なわれるとい うことではない。

しかし,ケアの望ましさ(価値)は効果があるということに限らない。これ 以外の価値として,たとえばケアの実践方法や実践過程が社会的にみて妥当で ある,あるいは適切であるという適切さの価値を考えることができる

O

冷水豊 氏が提示している社会福祉サービスの

4

つの事業評価のうちの「過程の評価」

は,この適切さの価値を前提とした評価といえよう

O

氏は,これを「サービス 提供の展開の過程および方法を評価するもの j とし,とくにつぎの点ゆえに意 義があるとしている

o r

福祉サービスをはじめとして人間と人間との直接的関 わりをとおして提供されるサービスの評価においては,サービスの提供によっ て問題の解消,生活の改善,能力の発達などの一定の結果や効果が得られたと しても,その結果や効果が生み出される過程で,非人間的なあるいはその社会 の規範に反するような方法がとられていれば,その結果や効果の価値はそのま ま評価するわけにはいかない。」それゆえに,

r

結果・効果の評価の代替として ではなく,過程自体を単独に直接評価する積極的意義がある ( 9 )

oJ 

この論議の前提にあるのは,社会福祉サービスの提供方法や提供過程は社会 的にみて適切なものであることが望ましいという価値である

O

この価値は効果 の価値とは独立したケアの質の望ましさを示すものとして考えることができ る

o

この適切さという価値と効果という価値の他にケアの質を評価する価値一一 これは評価する観点といいかえてもよいーーにはどのようなものがあるだろう か 。

冷水氏は,

r

結果・効果の評価」つまり効果の価値観点からの評価と,

r

過程

の評価」すなわち適切さの価値観点からの評価の他に,

r

投入資源の評価」と「効

率の評価j をあげている ( 1 0 )

r

投入資源の評価」とは,サービス供給のために

(7)

投入された物的・人的資源やそれらが具体的形態をとったサービス活動の量と 質

(input

あるいは

effort

として表わされる)がどの程度投入されたかという 評価である

O

これは, [""投入量が多ければまた質が良ければ, もたらされてい る結果も良いという前提

J

のもとでの評価であって,そこにはやはり効果をあ げるケアが望ましいという価値が前提にある

O

「効率の評価

J

とは,結果・効果の達成度を投入資源との対比で相対的に評 価することであって,費用便益の分析がその典型例である

O

改めていうまでも

なく,これも効果をあげることのできるサービスが望ましいという効果の価値 を前提としている

O

ケアの質の望ましさを示す価値という観点からすると,氏 の示す

4

つの評価も,効果の価値からの評価と適切さの価値からの評価の

2

つ にまとめられる ( 1 1 ) 。従って,これまでの評価研究は主にこの 2 つの価値観点 からおこなわれてきたということができょう。

この

2

つの価値観点と先にみたケアの質の次元を組合わせれば,ケアの質を とらえる枠組は,表

2

のように整理できるのではなかろうか。分析の方法とし ては,たとえば施設ケアのプラニングについてその質を効果の観点から

(A)

と適切さの観点から

(c)

それぞれ評価する

O

そして,両者を関連づけてみる

O

また,直接的援助活動(とくにケア・ワーク)について,効果の観点から

(B)

と適切さの観点から

(D)

それぞれを評価する

O

ここでも両者の関連をみると

2

ケ ア の 質 を と ら え る 枠 組

ケア、日¥質¥由¥次元『、‑‑‑基準、の ¥前な¥ 効果の価値 適切さの価値

施 設 ケ ア の プ ラ ン ニ ン グ

計 画

ケ ア の 原 則

直 接 的

ケ ア ・ ワ ー ク そ の 他 の 活 動

(8)

いったことをおこなう

O

あるいは,効果の観点、から施設ケアのプラニング

(A)

とケア・ワーク

(B)

をとらえる

O

そして両者の関連をみる

O

また,適切さの 観点から施設ケアのプラニング

(c)

とケア・ワーク

(D)

をとらえ,双方を

関連づけてみる。こうしたさまざまなとらえかたが理念的には可能である

o

しかし,以下では適切さの価値からの評価方法に検討の焦点をあてる。とい うのは,施設が自らそのケアの質を検討し,より良いケアを求めていくにあたっ ては,適切さの価値観点からの検討が第一義的だと考えるからである

O

施設は ケアの効果があらわれでもあらわれなくても,入所者にとって適切なケアをし ていくことが社会的に求められている。たえず,適切さの価値観点から自らの ケアを点検していく必要がある

D

その意味で,適切さの価値からの評価がより 重要と思われる口

(3) 

ケアの適切さをとらえる基準

適切さの価値を前提とした評価の方法としては,冷水氏が「過程の評価」の 例としてあげている

PASS3

がある。これは,適切さの価値をノーマリゼーショ ンという社会福祉の理念に求めた評価方法である

O

ただし,これは施設ケア全 体の事業評価方法であるために,

r

過程の評価」ではあるがそのチェック項目

には,施設ケアの物理的環境条件(建物・設備やそれをとりまく地域社会と施 設の関係)にかんする項目が相対的に多く含まれており,ケアの実践過程にか んする項目がすべてというわけではない

(12)o

たしかにこれは施設のひとつの 評価方法である

o

しかし,本稿では施設のケアを評価する方法, しかも施設が そのケアを点検し,より良いケアをめざしていくための方策を工夫していくこ

とができる方法を求めている。

そこで本稿では,適切さの価値を表わす価値基準として,入所者の「主体性 (または自己決定の権利)と自尊心(または個人としての尊厳)の尊重」とい う理念を取り上げることにしたい(1

3)

「入所者の主体性(自己決定の権利)と自尊心(個人としての尊厳)の尊重」

の理念がどの程度施設ケアにおいて実現しているか,この価値基準が老人ホー ムにおいてなぜ重要であるのか。後者については,つぎの

3

点を主要な理由と

してあ

tf

ること治宝できる

O

(9)

1.多くの老人は,家庭や地域社会において自立した生活を営むことが困難 になって施設に入所してくる

O

それゆえ,施設入所するということ自体が 老人の心理にマイナスの影響を与えがちである

O

また,施設入所はその人 のそれまでの生活スタイル,諸役割を喪失させ,ときには親しい人との関 係までも喪失させる

O

その結果,入所者は生活の意欲を失いアパシーとか ひきこもりといったいわゆるインスティテューショナライゼーション(施 設病と訳されたりする)を引き起こしやすく,主体性や自尊心を喪失しが

ちである

O

.老人ホームをはじめとして施設は組織である以上,入所者の自由やプラ イパシーを制約する

O

自己の生活において自己選択や意志決定をする機会 が少なくなり,自分の生活の大部分を他者によってコントロールされるこ

とになる

O

それによって入所老人はその主体性や自尊心を失いがちとなる

o

そして,それが生活の意欲の低下や身体的機能,精神的機能の低下をもた らし,依存性を助長させる恐れがある(1

4)

3.

入所老人は加齢に伴って,遅かれ早かれみな身体上の依存性を強めてい く

O

他者に依存しなければ日々の生活が成り立たない状況の中でも,なお かつ主体性と自尊心を保持していくことが,人間らしい生きかたである

O

しかし,障害が重くなるほど,つまり依存性が高まるほど援助の程度は強 くなり,結果として生活全般へのコントロールは強められやすい。そのこ とは,主体性ゃ自尊心との保持に障害となりがちである

o

精神上の障害に ついても,依存性が強まるほどよりコントロールが強められる結果となり,

自尊心や個人としての尊厳を傷つけられやすい。

この施設ケアにおける「主体性および自尊心の尊重」という理念は,インス

ティテューショナライゼーションの解消や,ゴッフマンのあきらかにした

tot al  institutionにおける自我喪失の危険性の防止をめざす努力過程の中で,施設

ケアの原理として認識されてきたといえる(1

5)

。今日では,施設入所後も在宅

生活のばあいと同じように,自分の生活はできるだけ自分でコントロールすべ

きであるといった

norrnallifeを求める一種のノーマリゼーションの考え方に

よっても強調されるようになった理念といえよう (16)O

(10)

この理念によってケアの質をとらえるにはどのような方法が考えられるだろ うか。

3.

ケアの質を評価する方法

「主体性(自己決定の権利)と自尊心(個人としての尊厳)の尊重」という 理念によってケアを評価する方法として,ここでは施設ケアが入所者志向

(re sident orientation)

か施設管理志向

(institutionorientation)

かを調べる方法を参 考とすることにしたい。これは,ケアの日常的実践において入所者の自由の制 約がどの程度おこなわれているか,個性の無視や意志決定の制限,あるいは入 所者にたいするスタッフの親しみのない距離のとりかたなどによって入所者へ の画一的な対応や非人間的な扱いがどの程度おこなわれているか,を調べる方 法である

o

いうまでもなく,その程度が低ければ入所者志向的ケアの実践とい

うことになり,高ければ施設管理志向的ケアの実践ということになる

o

以下では,そうした調査研究の中から

Evansらの方法を取り上げ,それを

今後洗練していくかを検討する

o

検討は「施設ケア(全体)のプラニング」と

「ケア・ワーク」に分けておこなう

O

(1)  r

施設ケアのプラニング」の質を評価する方法

「施設ケアのプラニング

J

のうち「施設ケアの原則」を評価する項目として 考えられる

Evansらのチェック項目には以下のようなものがある(17)

入所者に入浴時間の選択を認めているか

入所者に入浴させてくれる人を選ぶことを認めているか 入所者に許可なしで入浴することを認めているか

入所者が職員とは離れて入浴できるようにしているか 入所者の排植の時間を決めないで自由にしているか

入所者が職員の介助者とは離れて排植できるようにしているか

女性と男性はそれぞれ別の用具・設備で排植できるようにしているか

入所者の排池介助ははじめから終わりまでひとりの職員によってやるようにして

いるか

(11)

入所者に食事内容を選ぶ自由を認めているか

入所者が席につくとすぐ食事ができるようにしているか(全員が席につくまで待 たなければできないか)

入所者が自分の好きな人と食事できるようにしているか

身体障害のある人が自分で食べられるように道具ゃ設備を整えているか {入所者の就寝時間を決めているか

l

入 所 者 が 寝 る 山 な ん ら か の 援 助 を 必 要 と し た と き は 即 座 に 世 話 仇 よ う にしているか

l 一一… 身体障害のある人は起床時間を選べるように配慮しているか 入所者は起きるとすぐ朝食をとれるようにしているか

( 入 所 者 に そ の 日 に 着 る も の を 選 川 ら う よ う に 山 る か

入所者が望むなら衣類を購入したり注文できる便宜を与えているか 入所者に個室か共同部屋のどちらかを選ばせているか

入所者が自由に部屋をいききすることを認めているか

入所者の部屋は適度のプライパシーを確保できるように配慮しているか

l

入所者が自分の部屋を自分の部屋らしくすることを認めているか(絵や写真を飾 るだけでなく,家具や敷物など多くの個人用のものを認めているか)

( 内 何 者 が 望 む と き に 的 お 金 を 使 え る ょ う 鴨 川 る か 身体障害や精神障害をもっ人が何かを買うさい援助するようにしているか

歩行可能な人,精神障害のない人は許可なしで,あるいは職員に知らせることな く外出することを認めているか

入所者が好きな時間だけ外出することを許可しているか

身体障害や精神障害のある人の外出に付添うようにしているか 親族が入所者を自由に連れ出すことを認めているか

l 持 … の 明 一 用

共同のテレピやラジオは利用しやすいようにしているか 電話は利用しやすいようにしているか

l 一 一 一 る こ と を す す め て し る カ 入所希望者の家庭訪問をおこなうことにしているか

新しく入所してきた人を入所後職員ゃ他の入所者に紹介しているか

〔入所者の不平や苦"育をいうフォーマルな方法を用意しているか ( 入 所 者 に た い 叩 会 , 訪 問 は 自 由 か

入所者が訪問者にプライベートに会えるよう配慮しているか

(12)

Evansらは,これらの項目についてスタッフに質問するか観察によって yes

no

かを判定し,それぞれに点数を与えて総合得点を出すという方法を考え ている

O

ここでは,そうした方法についてよりも,チェック項目について検討

してみたい。

これらの項目は,障害のない人やあっても軽度の人の居住するホーム向きの 評価項目といえる

O

わが国でいえば軽費老人ホームや有料老人ホーム,養護老 人ホーム(中,重度の障害の人の多い養護ホームは除いて)向きで,障害の重 い人の多い特別養護老人ホームには不向きと思える項目が多い。特養などでは 障害が重いために希望や意志が布っても入所老人たち自身,自由に行動するこ とができない。介護する側も介護しやすくするために,また安全を確保したり 効率よく介護するために,老人の希望や意志をかなりのていど制約せざる得な

い。しかし,これらの項目を参考にして,障害の重い人の多い老人ホームにも 適用可能なチェック・リストを作ることは不可能ではないと思われる

D

たとえ

ば,つぎのような項目を含めることはどうだろうか。

その日の入浴は本人の希望によって決めているか(身体状況に問題がないとき) 入浴のさいの洗いかた,衣服の着脱の援助の仕方に入所者の希望をとり入れるよ

うにしているカ、

i

世援助のためのコールがあれば,必ず応じているか

ベッドサイドでの排池の援助のさいには必ずカーテンをひいているか 食事は入所者の好みによって残しでもよいか

決められた時間内であれば寝ていても無理に起こさないか 寝ている人を無理に起こして食事をさせることはないか

なかなか就寝しない人を無理に寝るよう指導することはしないか

衣類の着がえの援助のさい 着るものをできるだけ入所者に選んでもらっている か

車椅子や歩行介助具は入所者が使いたいときいつでも使えるように用意している

車椅子や歩行介助具は必要な人すべてに行き渡るようにしているか 車椅子や歩行介助具で施設内を自由に移動することを認めているか

車椅子などを使う人でも施設の敷地内であれば自由に外に出歩るけるよう配慮を

しているカ、

(13)

機能回復・維持訓練はその日の入所者の身体上,精神上の状況をチェックし,本

人の同意を得ておこなっているか

見学者や実習生が部屋に入ったり,職員のケアを手伝うとき必ず入所者の了承を

得ているか

いうまでもなく,どのような項目内容を考案するかにあたっては,施設の諸条 件をよく踏まえたうえで慎重に検討しなければならない。

行動の選択,決定を入所者にできるだけ多く認める方針をとることは,必ず しも入所者にとってよいとばかりはいえない。ある入所者は,そのことによっ て「わがまま」な傾向や自己中心性が助長され,他の入所者に迷惑をかけると いうことが生ずるかもしれない。また,入所者の意志ゃ希望で決定した行動が,

機能回復や健康・衛生維持の観点から,あるいは入所者同士や職員との人間関 係の維持・発展という観点からマイナスと判断できるばあいも起こりうる

O

しかし,原則としてはどんなに障害の重い人にたいしても,また問題を引き 起こす可能性を強くもつ人にたいしても自己決定(選択の自由)や自尊心を尊 重したケアが重要である

O

そのうえで,入所者がなぜある行為を選択したのか あるいはしなかったのか,それが種々の観点からして問題であると判断できた ばあいに適切な働きかけを職員はすべきであろう

O

また,日常の介護活動をと おして,職員は入所者が行動を主体的に選択・決定していく意欲をもつよう働 きかけていくべきであり,そうした行動選択が可能なように環境的条件を整備 していくべきではないか。これが,ケア・ワークにおける本来の意味での個別 ケア(処遇)の原則といわれるものと思われる。

わが国の文化は,主体性(自律性)ゃ自尊心(個人としての尊厳)の価値を 欧米ほどには高く評価していない。しかし,人間らしく生きていく (死んでい く)ために,この価値は重視されなければならない。今後,学歴の高い人や職 業上の地位の高い人の入所が現在より相対的に多くなっていくことが予想され

O

この価値は入所者自身からも強く求められてくるであろう。

施設のスタップ,とくに管理的立場にある人やケア・ワーカーをスーパーパ

イズする立場にある人たちが自分たちの施設におけるケアの方針・原則を点検

するのに,こうしたチェック・リストを作成,活用することを考えたばあい,

(14)

そのチェック項目と内容については入所者の障害の程度だけでなく,建物・設 備の状況やマンパワーの状態などいくつかの条件を考慮に入れて工夫していく 必要がある

D

そうした条件を考慮、に入れてもなお, I 入所者の主体性(自己決定)

と自尊心(個人としての尊厳)の尊重」というケアの原理をどの程度現実のケ アにおいて生かせているか,それをチェックする項目を吟味していく必要があ る

O

「施設ケアのプラニング」のうちの日課などのケア・プランについては,上 記 の ケ ア の 原 則 が 生 か せ る よ う な 生 活 時 間 の 流 れ に な っ て い る か ど う か が チェックされるべきであろう

O

(2) 

I ケア・ワーク」の質を評価する方法

「入所者の主体性(自己決定)と自尊心(個人としての尊厳)の尊重」が,

職員の入所者にたいする直接的援助活動のなかでどの程度実際に実現されてい るかを評価することが,ケア・ワークの質を評価することになる

O

ひとつの評価方法としては,職員の入所者との相互作用場面における職員の 態度,ことばづかい,話の内容などからとらえることが考えられる

o Evansら

のリストから該当する項目を取り出してみよう。

‑ よ ん で し 材

入所者をカテゴリー化して「赤ちゃんたち」とか「おもらし組j といったいいか たをしていないか

この他にも

入所者にたいする態度や話かけが権威主義的でないか

入所者とのコミュニケーションの内容が指導的,説教的なものや情報伝達的なも のが多く,冗談をいいあったり何かについて話合うといったことが少ないことは ないか(1 8)

介護のさいには必ず声かけをおこなっているか

などが考えられる

O

これらは主に自尊心(個人としての尊厳)の尊重がどのて

(15)

いどなされているかをみる項目であるが,主体性(自己決定)の尊重がどのて いどなされているかをみる項目も検討することはできょう

O

たとえば,職員のなんらかの働きかけにたいして入所者が

no

という反応を 示したとき(ことばや態度・表情で),職員は不快の気持ちを表現(やはりこ とばや態度,表情で)してはいないか,入所者から職員に要求がだされたり話 かけがあったとき,親切な態度で応対しているかなど。

入所者と職員のあいだに信頼関係が形成されているかというかをみることも ひとつの方法である

O

たとえば,

など。

ケア・ワーカーは大部分の入所者に名前が知られているか

職員は入所者から個人的な悩みや困っていることについて話かけられているか 入所者の施設での生活にたいする不満が職員に話されているか

職員は入所者からその生活史や家族についてなどプライベートなことを話かけら れているか

「入所者の主体性や自尊心の尊重」という理念にもとづくケアは,先にも触 れたように入所者個人の独自性を理解し,その身体的・心理的・社会的状態を 正しく把握してその状態に適した方法でケアするという個別ケア(個別処遇) に他ならない。この個別ケアは,入所者のニードのアセスメント→その分析→

個別ケア・プラン(方針および方法)の作成→ケアの実践→反省(個別援助評 価)という一連の個別ケア・プラニングの過程としてなされていることが望ま

しい。

個別ケアが適切におこなわれているかどうかは,この個別ケア・プラニング の過程の反省の段階で,個々の入所者にたいして調べられなければならない。

個別ケア・プランの適切性,その実践の適切性は,入所者ひとりひとりで異なっ

ているから,それらの適切性を測る統一的な基準はない。個々の入所者にたい

してこの反省をおこなう,いわゆる事例検討作業を積み重ねていくことによっ

て,あるタイプの入所者にたいする適切なケア・プランというものがつくられ

ていく可能性がある

O

ただし,いったんケア・プランの類型がつくられると,

(16)

これによって入所者をカテゴライズして対応していくということも生じがちな ので,その危険性については十分注意しておかなければならない。

ここでは,個別ケア・プラニングがどのていどおこなわれているかを,つぎ 7つのポイントで評価することによって,ケア・ワークの適切さを推察する 方法が考えられることを示しておこう O

①個別ケア・プラニングの過程はすべての入所者にたいしてきちんとなされてい るか。

②個別ケア・プラニングは入所時点もしくは入所前の段階から始められている か 。

③個別ケア・プラニングは一定の期間をおいて定期的にくり返しおこなわれてい るか。

④個別ケア・プラニングはミーテイングやケース会議などで担当スタッフができ るだけ多く参加しておこなわれているか。

⑤個別ケア・プランは参加者全員の合意を得ているか。

⑥個別ケア・プランはミーティングや会議に参加しなかったスタッフにも十分伝 えられているか。

⑦個別ケア・プラニングの過程はケース記録などにきちんと記録されているか

(19) 

.ケアの質を規定する要因

ケアの質を規定する要因はさまざまであるO というより施設ケアの構成要素 のすべてが直接的,間接的にケアの質に関連していると考えられるO ここでは,

そうしたなかでとくに重要と思われる要因として, (1)施設管理者のケア観, (2)  業務運営組織(運営組織,権限委譲システム), (3)職員の質, (4)職員のチームワー

( 5 )

家族の協力の

5

つを指摘しておきたい。

(1)  施設管理者のケア観

施設ケアにおいて 入所者の主体性(自己決定)と自尊心(個人としての尊 厳)の尊重の理念をどの程度実現化しうるかについては,施設管理者,とくに 施設長のケア観の与える影響は大きいと考えられるO

ケア観というのは,入所老人をどのような人たちと理解し,その人たちにど

(17)

のようなケアをすべきであるととらえているかということである

O

そのケア観 には老人一般にたいしてどのような考えをもっているかという老人観や,人間 はどう生きどう死んでいくべきかという人間観・哲学が反映する

O

人間はどん なところで生活しようとも死ぬまで主体性(自己決定)と自尊心(個人として の尊厳)を失うべきではないという哲学と,入所老人は入所に至るまでの過程 でその主体性や自尊心を失いがちな状態にあり,入所後の生活はその状態を助 長しやすいゆえに,施設では意識的にそれらの回復と維持を図っていくように ケアしていくべきであるといったケア観を明確にもっているかどうか。そして,

そのケア観にたいして職員の理解を求めるためにどのような方策をとっている か。これらのことは,施設ケアのプラニングの質についてもケア・ワークの質 についても大きな影響を与えると思われる

O

入所老人は障害の程度が重くなるほど,日々の生活を営んでいくうえで職員 に依存せざるを得なくなる。そして,依存性が増すほど職員は入所者の生活を その全般にわたって管理せざるを得ない。だが,依存性を受容してケアしてい くなかでも,入所者の主体性と自尊心を尊重するケアの原則とケア・ワークは ありうる

O

このことを施設長が提示していけるかどうかが重要であろう

O

今日一般的に考えられている入所老人にたいする施設ケアの目的には

a

できるだけ家庭的な雰囲気の生活環境を提供し,老人の身体上,精神上の保護

と生活の安定を図る

b.

家庭や地域社会とのつながりを重視し,できるだけ 老人の社会的統合を図る

c

老人の身体面,精神面,社会面に積極的に働き

かけて,できる限り自立した生活が送れるように図る,といったものがある

(20)O

施設長が自分の施設の目的としてこれらのうちのどれに焦点をあてているの か

(2

1)口そして,それぞれの目的のもとで「主体性と自尊心の尊重」をどのよ うに,またどの程度実現できるケア体制をとろうと考えているのか。この具体 的なケア観を明確にする必要がある

O

( 2 )   業務運営組織と権限委譲システム

各職種をどの程度どのように配置するかという業務運営組織と,その組織に

おいてどのような権限委譲システムがとられているかということも,ケアの質

に影響する

O

(18)

ケア・ワーカーの不足している施設では,ケアの原則もケア・ワークも入所 者の主体性と自尊心の尊重という入所者志向とは反対の管理志向的になりやす い。どの程度不足すると管理的志向が強くなるのか,その基準線を求めること は困難である。だが 入所者の障害の重度化やかかえる問題の複雑化に伴なっ て,入所者の基本的な介護ニーズに対応する時間も十分にとれないといった状 態のときには,施設長以下職員の主体性と自尊心を尊重するケア観にかかわら ず,ケアの原則やケア・ワークは管理志向的にならざるを得ないであろう

O

ケアにかんする決定権が管理者に集中しているのではなく,職員にその職務 の分担に応じた決定権が与えられる権限委譲システムは,各職員に自分たちの 仕事にたいする責任感や意欲を生じさせる

O

このことは,ケアの原則の作成や ケア・ワークにおいて創造性を発揮させやすくし,管理志向的対応を弱め入所 者の主体性を尊重する対応をとりやすくさせると考えられる ( 2 2 ) 。

( 3  )  職員の質

一般に,ケア・ワークの質を決定するもっとも重要な要因はスタッフの質で あるといわれている

O

スタッフの質を規定する要素として重要なものは,必要 な専門的知識・技術の習得程度と,入所者との信頼関係を作りそれを長く維持 していける資質(能力とかセンスといってもよい)の有無とではないだろうか。

入所者にみられる身体的,心理的依存傾向を受容しつつできる限り自立性を保 つようケアしていく

O

また 生活全面にわたって重度の介護をうけざるを得な い入所者にたいしても,その状況を受容しつつ入所者の主体性(自己決定)や 自尊心を尊重したケアをおこなっていく。こうしたことは多様なー専門的知識・

技術の習得だけでは十分ではなく さまざまなタイプの入所老人と信頼関係を っくり,それを長く維持していける資質が必要である

O

専門的知識や技術の習得については いうまでもなく学歴や訓練や研修を受 けた年数ゃ回数よりも 実質的にどれだけそれらを身につけているかが重要で ある

O

他方,信頼関係を形成 維持できる資質を構成するものが何かをいうの はたやすいことではない。

対人関係における信頼性の形成,保持の能力は,すべてのソーシャル・ワー

カーにとって必要な能力であるといえる

O

しかし,施設におけるケア・ワーカー

(19)

は入所者の生活全体にかかわりをもっ

O

また

1l

の関係ではなく

1

人のケ ア・ワーカーが複数の入所者にかかわり,複数のケア・ワーカーが

1

人の入所 者にかかわる関係である

o

さらに日常生活の介護という手段をつうじて入所者 からの信頼性を得ていかなければならない。こうした点を考慮すれば,その能 力の性質はフィールド・ソーシャル・ワーカーやケース・ワーカーに求められ

るものとまったく同じものとはいえないのではないか。

今後は,このケア・ワーカーとして必要な資質の内容をあきらかにし,ケア・

ワーカーとして必要な専門的知識・技術の習得と同時に,その資質の向上を図 る訓練,研修を考慮していく必要がある ( 2 3 ) 。

(4)

職員のチームワーク

スタッフ聞のチームワークは,それぞれスタップのもつ専門的知識・技術の 資質をどれだけ生かせるかということをとおして,ケア・ワークの質に影響を 与える。

施設におけるケア・ワークがフィールドにおけるケア・ワークと決定的に異 なるのは前者が互いに影響しあう複数の人びとから成るチームによっておこな われるという点である。入所者にたいするケアは,スタッフのあいだで合意の できたケアの原則とケア・プランに従って一貫した形でおこなわれなければな らない。これは,入所者にたいするケアを規格化

(regimentation)

することでは なく,統ーした方法でおこなうということである

O

そのためには,チームワー クがうまくとれていなければならない。

施設全体のスタッフにおけるチームワークは,各種の調整組織,職員会議や

各種委員会. リーダー会議(主任会議)などを民主的に運営し,スタップの相

互理解と相互援助を進めるよう努力していくことで生まれてくる

o

実際のケ

ア・ワークにおいては,各介護単位ごとのチームワークの形成,保持がさらに

重要である

O

定期的なミーテイング(連絡会,打ち合せ会,申し送り会など)

の開催,担当する老人の個別ケア・プラン作成へのできるだけ多くのスタップ

の参加,個別ケア・プラニング過程にたいする共通理解への努力,インフォー

マルな話合いなどをとおしてのスタッフ相互の信頼関係の形成などが,各介護

単位ごとのチームワークの形成,保持にとっての要件と考えられる

O

(20)

施設ケアのプラニングや個別ケア・プランにおけるケアの方針についてのス タッフ問の意見の違いは,以上のような各種の調整組織において議論しあい,

情報交換しあって合意を形成していくよう努力することができる

o

しかし,職 場における感情レベルの対立や葛藤は,フォーマルな調整組織では解決しがた い。このスタッフ間のコンフリクトは,チームワークをイ乍りがたくするだけで なく,スタッフのモラールや入所者にたいする態度,接し方にもマイナスの影 響を与える危険性が強い。それだけに,管理者やスーパーパイザー的存在であ る人ぴとがインフォーマルな形で,この人間関係の調整を図っていく必要があ ろう

O

( 5 )   家族の協力

家族や地域の人びとが規則的に施設を訪れることは,施設の閉鎖的な雰囲気,

管理的な雰囲気を減じる

o

また,多くの家族が規則的にホームを訪れることは,

入所老人に多くの満足度と高いモラールを与えるとともに,それがケア・ワー カーのよりよいケアをめざす意欲を刺激することもある ( 2 4 ) 。

限ら託たスタッフの数のなかで,入所老人の主体性と自尊心を尊重しつつ個 別的なニーズにできるだけ応えていこうとするならば,施設を訪問する家族に 協力を求めることがひとつの方法として考えられてよい。家族の協力はケアの 質に間接的に影響を与える要因となるという認識をもっ必要があろう

O

入所老 人のケアにかんして家族に協力を期待するという考えについて,

Litwakはつ

ぎのように論旨を展開している。

ナーシングホームは課題の特定化

(specialization)

,労働の分業,専門的知識・

技 術 の 行 使 , 意 志 決 定 と 権 限 委 譲 に か ん す る シ ス テ ム と い っ た 特 徴 を も っ フォーマルな組織でありながら,偶然性が強く予想しがたい課題,特定化しに くい課題,分業の困難性 意志決定や権限委譲システムの欠如という特徴をも ち,効率性よりも愛情や義務の価値を重視する第一集団(とくに家族)の提供 するサービスを代行する組織である

O

つまり,ナーシングホームは,フォーマ ルな組織として遂行するのに適さない課題をフォーマルな組織として遂行する 構造上のジレンマを本来もっている。

フォーマルな組織にしろ第一次集団にしろ 集団はその構造にマッチした課

(21)

題をもっともうまく運営,遂行していくことができる(マッチングの原則)。

それゆえ,ナーシングホームは画一化しにくい課題(入所老人への個別的な援 助)を本来切り捨てる傾向をもっ

O

そのことを前提としたうえで,ナーシング ホームがその重要な機能として第一次集団の果たす課題を代行していくには,

つぎの

3

つの解決策が考えられる

O

フォーマルな組織の内部構造を,より個別的な(パーソナルな)関係が成立 するように修正する

O

その方法として, (1)ナーシングホームにおける課題を,

特定化することができ画一的対応ができる課題と,それができにくい課題とに 分ける

O

そして,それぞれを別々に遂行することが可能になるような下位組織 を作る

O

それが困難なばあいは,

(2)

ケア・ワーカーの数をふやし,入所者との 信頼ある相互作用を作りうる時間量を多くする

O

しかし,これもコスト面で問 題がある

O

そこでつぎに考えられるのが,

(3)

家族と課題を分担し,家族により 特定化しにくい個別的な課題を遂行してもらう,という方法である

(25)

Shutt1esworthらは,この Litwak

の考察を前提として,家族が第一次集団と しての自然な関与を継続し,老人の入所後も第一次集団としての役割の一部を 遂行していくことを求めるのが望ましいとする

O

そして,そのためには,施設 のスタッフと家族が互いの役割および責任を理解しあうよう努力することが必 要であるとして,双方の役割についての理解度を調べるチェック・リストを作 成している

(26)

わが国の施設ケアにおける家族の参加は,施設の行事への参加や家族会の結 成という形でおこなわれているのが現状である

O

だが,施設のある地域に住む 家族にたいしては,今後入所者のパーソナルな要求にこたえることを,個々の ケースに応じて期待していくことが検討されてよいのではないか。精神的なケ ア,情緒的なケアだけではなく,身のまわりのケアをも家族にあるていど求め ていくということである

O

もちろん現在でも,家族が自発的に協力していると いう事実はあるだろうが,施設の方針として,協力が求められそうな家族には 負担とならないような範囲で協力を求めていしといったことが検討されてよ

いように思われる

O

協力を求める課題としては,たとえばつぎのようなものを一応考えることが

(22)

できる

o

手足の指の爪を切る ひげをそる

身だしなみを整える

季節にあった衣類を引き出しに入れておく

ティッシュペーパーなど身のまわりで必要なものを整える 歯科医や病院に連れていく

車椅子で散歩にでる

個人的な買い物を頼まれる 私物の保管場所を整理する 衣類に名前をつける

入所者に代わって手紙を欠いたり電話をかける 新聞や雑誌を読んであげる

(27)

こうした項目について家族と話合ったうえでできるものをやってもらうわけで ある

o

これらケアの協力は家族だけでなくボランティアに求めることも可能で ある

o

手足の指の爪切り専門のボランティアや,本や雑誌を読んであげる専門 のボランティアなどの導入が考えられてよい。入所者のいっそうの高齢化に 伴って痴呆性老人がふえてくるにつれ,施設のスタッフはそれらの人ぴとへの 専門的なケアにおわれがちとなってくる

O

精神的には健康な入所者の個別的 ニーズへの対応がおろそかにならないよう,スタッフ外の人びとの協力を求め ていく

O

このことは,より望ましい協力関係の形成に努力していくなかで,ス タッフ自身がより良いケアのありかたについて学習していくという機会を提供 すると思われる

O

また,痴呆性老人への対応、の仕方については家族がどうしてよいのかわから ない例が多い。スタッフはそれを指導していくことを通じて,

r

主体性と自尊

心の尊重jの原則にもとづくケアのありかたをたえず反省し,さらに学習して いく機会をうることができるのではないだろうか。

以上,老人ホームにおけるケアの質をとらえる枠組と,適切さの価値を表わ

す「入所者の主体性(自己決定)と自尊心(個人としての尊厳)の尊重」とい

(23)

う理念にもとづくケアの質の評価方法,さらにそのケアの質を規定する要因に ついて検討した。いずれも不十分なものであって,検討の第一歩を踏みだした という j 犬況にすぎない。より良いケアを求めていくために,ケアの質とそれを 規定する要因をあきらかにする方法について,今後も検討を重ねてゆきたい。

今日,老人ホームとりわけ特別養護老人ホームは,在宅福祉サービスとくに デイケアサービスの拠点どなるようその機能の社会化が求められている。その ディケアサービスについても,やがてそれを実施しているということだけでは なく,その質が問われてくるようになる

O

その質は施設内でのケアの質と深く かかわっていると思われる

O

施設内でのケアの質を高めていくことが,在宅老 人へのケアの質を高めていくことにつながるということからも,施設における ケアの質の問題は今後も重要な検討課題であるといえよう口

( 1 )   根本博司は,処遇は

treatment

の訳で,ソーシャル・ワークなかんずくケース・ワー クの対象者援助をさしているとみられる,としている。根本博司「処遇の理念と処遇 の原則・目標

J

(全社協・老人ホームにおける入所者処遇に関する研究会編『老人ホー ム処遇論』全国社会福祉協議会,

1979

年 ,

34

ページ。)

(2) 

レジデンシャル・ワークを論じた

Clough

は,イギリスにおいてもフィールド・ソー シャル・ワークで用いる

treatment

therapy

rehabilitationといった概念がレジデン

シャル・ワークにもち込まれているが,これはレジデンシャル・ワークの課題を査め るという影響をもたらしかねないと批判している。

Clough

Roge

  , . r

Residential Work

, 

The Macmillan Press Ltd.

, 

1982

, 

24

ページ。

(3) 

小笠原祐次「施設における運営組織」全社協前掲書(1),

231‑271

ページ。

(4) 

黒川昭登『福祉はいかにあるべきか』誠信書房,

1983

年 ,

102‑114

ページ,仲村優

‑r 社会福祉概論』誠信書房,

1985

年 ,

153‑161

ページ,古瀬徹『創造的な長寿社会 への道

j

中央法規出版,

1986

年 ,

124

ページ,秋山智久「社会福祉技術の社会的基盤

j

( r 講座 社会福祉

5

社会福祉実践の方法』有斐閣,

1984

年 ,

64

ページの図

2)

,畠 山龍郎「社会福祉の流れと施設処遇

J

(高橋種昭・畠山編『社会福祉施設実践講座施 設処遇と社会資源一施設処遇の社会化をめざして一』東京書籍,

1986

, 

19‑25

ページ), 

船曳宏保「社会福祉としてのケア・ワークの構成

J

社会福祉研究

30

号 ,

1982

年な と さ 。

(5)

た と え ば

Kahn

,K

enneth.

, 

Hines

, 

William.

, 

Woodson

, 

Arlene.

, 

and  Burkham  Armstrong

, 

Gabrielle.

, 

A Multidisciplinary Approach to  Assessing the Quarity of Care 

参照

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