東南 アジア研 究 7巻4号 1970年3月
ビ ル マ 語 に お け る 数 の 範 噂 に つ い て
-
複数助詞 の用法を中心
に
-薮
司
郎 *
On the Category ofNumberin the Burmese Language by
ShiroY ATIU
InBurmesegrammaritisaninterestingandvaluablematterto studywhat categoryofNumberexistsinthelanguage. Mostoftraditionalgrammariansof Burmese had undoubtedly explained thatthere would be two classes in the categoryofNumber- oneissingular,theotherisplural. Byeffortsofmodern students,however,itturnedoutclearthatthe analysisishardlysuitable. The presentwriter independently tried to investigate the matter through all the materialswhich aregatheredonthebasisof modern Burmese.Consequently it ledtothefollowlngOpinion.
InBurmesethepluralityisspecified by using each pluralparticle. Each nounandverbwithoutpluralparticlecannotexclusively be slngular,but may beeithersingularorplural・h otherword pluralparticles are optionally used. Thisfactrepresentsevidencethattherigidopposition ofNumber doesnotexist inBurmesenounsandverbs・ Nevertheless as for personalpronouns【singular formsarestrictlydistinguishedfrom pluralformswith pluralparticles,:thatis, theuseofpluralparticlesisobligatory.
NounpluralparticlesinBurmesehavethreefunctions:(1)Apl.-Aa+Ab+
-(normalplural),(2)Apl・-A+otllerS(pluralofapproximation),(3)(A+B十 - )
pl.-A+B+- (unification).(Thesymbols `A,B,-I,-pl.'indicate eachnounand pluralparticle respectively.) Verb pluralparticles specify the plurality(more strictly,severalityormutuality)ofagent.
The writer would;like to express his specialappreciation to Dr.Tatsuo Nishida,Kyoto University,who provided a kind and detailedcriticism forthis dissertation.
は じ め に
動機や目的や方法はさまざまであるけれども,古来幾多の人々によって
ビルマ語文法が書か
れ て きた 。 それ らはそ れ ぞれ ひ とつ の成 果 で あ り, また ビル マ語学 研 究 史 にお け る貴 重 な資 料 *東京外国語大学 ア ジア ・アフ リカ言語文化研究所
薮 :ビル マ語 にお け る数 の簡 略 につ いて で あ る。 しか し大 部 分 は , そ の 記 述 や 説 明 に お い て , パ ー リ語 な い しは ヨー ロ ッパ の 諸 言 語 に 行 な わ れ て い る伝 統 的 な 規 範 文 法 の枠 を あ ま りに 転 用 しす ぎて い る き らい が あ る。 個 別 的 言 語 の 文 法 を 書 く場 合 , そ の 言 語 の 全 体 の構 造 に適 合 した枠 を 設 定 す る の が 自然 で あ る と考 え る。 した が って , ビル マ言吾の 場 合 も ビル マ語 とい う言 語 に ふ さ わ しい 枠 が あ る はず で あ る。 ビル マ語 文 法 の 枠 を 設 定 しよ う とい う 目標 の も と に ,本 稿 で は , そ の一 斑 と して ビル マ語 に お け る数1)の 範 暗 に つ い て 考 察 す る。 は た して 従 来 の 文 法 宏 た ち の 設 定 して き た単 数 ・複 数 の 対 立 が , ビル マ語 に文 法 範 境 と して 存 在 す るの か , とい う点 を 懐 疑 的 に み て ゆ き た い 。 論 を 進 め る に あ た って は , ビル マ語 に お け る複 数 助 詞 の 用 例 を 素 材 とす る。2) 1)本稿では,文法範噂 と しての 「数」と概念上の 「数」とを区別す るため,前者を 「数」,後者を 「カズ
」
と書 く。「数」は常にスウと読 む もの とす る。五 島忠久 「数 と性」(英文法 シ リーズ7,研究社)参照0 2)使用 した資料 は次の とお りであ る。あわせて,わか っている範囲内で,資料提供者の略歴を示す。な お本稿でい う 「ビル マ語」 とは, 「ラングー ンおよびマ ンダ レイ方言を基盤 と した, ほぼ ビルマ連邦全 域 にわた って共通語 と して使われている現代 ビルマ語」を指す。 A)小 説(1) Daw NiNiYin/doni-ni-yin/llmoo:mye'yeihpyainll
(ド- ・二一二-イ ン 「両 の ごと く涙 あふ
る」)
30ペ-ジ (A l)1924年丑.。 ラングー ン巧
′
廿i
三
(⊃閏秀作
r宝。 この小説 は'IIFlTH,/JtltZlL・(トウェイクT'))誌1965年1
1月号
所収の もの。
B)手 紙
(1) U Maung MatlngTin/qu:m_'Tun-maun-tin/(ウ一 ・マウンマウンテ ィン)13通 (B 1) マ ング レイ (上 ビルマ)在u. プL:マ ング レイ文理科入学 (Arts and Science University, Mandalay)講「批 l-,HL在, ビルマ史委員会 (BurmaIIistoric{11Commission)文化評議会顧問。
ビル マ文学者。
(2) Daw KhinLatt/dollkin-1aソ (ド一 ・キ ンラ)15通 (B 2)
ラングー ン在住。 ビル マの3人総合月刊雑誌の一つ「トゥエイクウ」(伸冊)の編集次
r
io
閏秀作安(3) LuduU Hla/lu-du.qu:hla./(ルー ドゥ ・ウ- ・ラ) 1通 (B 3)
マ ング レイ在住。元 「ル- ドゥ」(民衆)新聞 (1967年 7月発刊停止)編集長。文筆家o
(4) KoSoeMaung/kousou:maun/(コウ ・ソウマウ ン)l
o
遭 (B 4)シャン州南部 イ ンレイ地方出身o ラング-.ン教育大学 (ⅠnstituteofEducation・Rangoon)
守
托。イ ンダー方言 (Ⅰnthadialect)の natlVeSpeakero 共通語 とイ ンダ-方言の bilingulisto 言言吾学徒。
C)
会 話(1) KoTintNaing/kotttin.れain/(コウ ・テ ィンナイン) (C 1)
1943TFラング- ン![:.。 ラングー ン工科人J?I:(Institute of Engineer-ing,R・lngOOn)牛。 Sino
-Burmese.
(2) KoKyaw Min/kotlC0-111i11:/(コウ ・ナ ヨー ミン) (C 2)
1943
年
ザガイ ン(
上 ビルマ)/i.o マ ング レイ文理科人'
羊牛。作
'--jL71S・1g・linU r}oThin(ザガイ ン .り一 ・ポウテ ィン)の孫。(.i) U OhmKyaw/qu:qoun:co/(ウ- ・オT')ンチ ョー) (C 3)
1933年プロ-ム県(下 ビルマ)
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。 マ ング レイ農村入学(InstituteofAgriculture.M・lnd・11・ly)辛農林省勤務。Shan-Burmese。
(4) U HtunHla/qu.'htun:hla./(り一 ・トゥンラ)(C4)
1936年 ピャ-ボウン県
(
下 ビルマ ・デル タ地帯)
圧。マ ング レイ農
科人学 卒。 農林省勤7
,
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7
0
(.t,) U MaungMaungSoeTint/qu:maun-maun-sou:titl・/(ウ-・マウ ンマウンソTljテ ィン)(C 5) ラングー ン県視学官。KoKyaw Minの叔父。
(6) U NyuntShein/qu:nylln.hyein/(ウ- ・ニュンシJイ ン) (C 6)
ビルマ放送局 (BurmaBroadcastingService)アナウ ンサ-0 -時 NIiK国際局の沼的 ビルマ 語 アナウ ンサー。Shan° (7) U Mallng Maung Tin (ウー ・マウンマウンテ ィン) (C 7)(B l)と同一人物 C)の会話については,(1)(2)はおのおの筆者 との対談 (1967年3月録音),(3)(4)は筆者をま じえた得[・談(1966 年11月録音), (5)(6)はNHK国際局 ビルマ語放送のイ ンタビュー番組 (1966年11月録音), (7)は ビルマ に留学 した大阪外国語大学 ビルマ語学科の-学!I:_との対談(1964年録音)よ り得 た ものであ る。(つづ く) 505
東南 アジア研究 7巻4号
Ⅰ
ビルマ語文 法 にお け る品詞 分類 の発展1.
ビル マ語 にお け る数 の範 鴫 とい う問題 を扱 うにあ た り, まず ,従 来 ビル マ語 文 法 全般 が どの よ うな視 点 にた って扱 われ て きたか を ,品詞 分 類 を例 に と り,一 望 して み たい。2.
従 来 品詞分 類 は ,単 語 の意 義 ・機能 ・形 態 な どに基 準 を おいて行 なわ れ て い る。何 に基 準 を お くか につ い て一 貫性 が ない ため しば しば非 論理 的 とい う非 難 を うけて きた。 それ に もか か わ らず ,従 来 の品詞分 類 が現 在 で もな お 広 く 用 い られ て い るの は, それ に 代 わ るべ き 明解 な ものが ない こ と と,非 難 され なが らも従 来 の もの に は捨 て が たい軽便 さが あ る こ とに よ るの か も しれ な い。 しか しビル マ語 に関 して い うな らば ,印欧語 に おい て行 なわ れ てい るよ うな品 詞 分 類 は全 く意 味 が な い。 む しろ この言 語 の姿 を著 し くゆ が めて と らえ て い る と さえい え る。3.
い ままで公 に され た ビル マ語 文 法 の うち代 表 的 な もの につ いて見 て み よ う。 古典 的著 作 の ひ とつ で あ るJ
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(ジ ャ ドソ ン) の文 法3)は , ビル マ語 を 印 欧語 文 法 の枠 に お しこん だ もの にす ぎな い 。用 例 もす くな く,締英 辞典 編纂 にお け る輝 か しい業績 に比 べ れ ば , この文法書 はい さ さか平凡 な感 じがす る。Lons
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(ロ ンズデ ィル) の文 法4)は ,非 常 な労 作 で あ り ビル マ語 規範 文 法 の最 高 峰で あ る。 したが って品詞 分 類 を み て も,彼 が印 欧語 規範 文 法 の枠 をビ ル マ語 に忠 実 に適 用 しよ うと,い か に努力 したかが わ か る。 彼 は序 文 のな かで ,科学 と して の ビル マ語文 法 の必 要性 を説 き,特 に土着 の研 究者 がパ - リ語 文 法 の枠 を通 して しか ビ ル マ語 を観 察 しな か った ことを非 難 して い るけれ ど も,一 方 この著 作 において は学 徒 の便 宜 を 考 えて彼 らに最 もな じみ の深 い英 語 文 法 の 流儀 に 従 った ことを 白状 して い る。 この 文 法 の 価 値 は以上 の点 を別 にす れ ば ,記 述 の綿 密 さに あ る とい って よい。Br
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(ブ リッジズ) の文 (脚注 2つづき) 以上の資料は共通語 としての ビルマ語の分析にほぼ適 したものであると思われ る。資料提供者のなか には人種的に ビルマ人と認めがたい者がいるとしても,この場合それは問題 とな らない。彼 らの母語が ビ ルマ語であるか,あるいは彼がほぼ 完全 なまでの bilingualistであれば,資料提供者 としての適格条件 を欠 くとはいえない。C)の(1)および(3)はシナ語やシャン語を知 らず.ビルマ語を母言吾として/J:_まれた。 また C)の(6)はビルマ語のアナウンサーとして招哨 されている事情か ら bilingualist と認めた。また B)の(4)はインダ-方言を何語 とす るが,これは ビルマ語 という同一の言語内の場合なので C)の(6)の 場合より,さらに問題はす くない。本人の説明を引用すれば,学校ではビルマ宗吾(myan-mazaga:)を話し,故郷-帰ればインダ-語 (°in:dha:zaga:)を話すそうである.bilingualistと認めてよい。 資料選択の基準を, 「現代におけるできるだけインフォーマルな,つまり格式ぼった形でない, ビル マ語」に置いて,手紙や会話をた くさん選んだ。 A)は大衆小説,B)は,(1)(2)は(3)(4)に くらべればい くぶんかたい文体であるが,概 して口語体の平俗な手紙,C)は, (5)(6)が公式のインタビューという以 外は,全 く私的な会話である。 なお,本文中あげた用例には, (A l) (B l)- -- (C 7)のように符号でその出所を示す。 Jll例はすべて音韻表記で示 し,その下に逐語訳をつける。必要な場合に限り意訳文を添え ( )でつ つむ.音韻表記は W.S.Cornyn
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D.H.Roop.Beginning Burmese.(YaleU.P.,1968)の方式 に従 う。諸家の文法書および論文か ら引用 した箇所 も含めてすべてこの方式による。3)Judson,A.A Grammarof theBurmeseLanguage.Rangoon,1951.(Reviseded.) 4)Lonsdale,A.W.BurmeseGrammarand GTTammaticalAnalyst-S.Rangoon,1899.
5)Bridges,J.E.Burmetw Crammer.Rangoon,1915. 全休を説明 したあと,literaryと colloquial に分けてさらに特徴点を説明 している。
戯 :ビルマ語:-J-J-ける数の範時について 述 の枠 につ い て は侍 に 目新 しい 点 は な い 。 しか し, 口語 の観 察 の刻 明 な こ とは注 目に値 す る。 ビル マ人 自身 に よ る もの と して は , まず Taw Seュn
Ko
(トー セ イ ンコ ウ) の文 法 6)が あ げ られ る。 彼 は , この中 背 の序 文 で , ビル マ に は文 法 と呼 ぶ に値 す る土 着 の著 作 は な い と述 べ , 新 しい 木 格 的 な ビル マ語 文 法 を 書 く野 心 を 示 して い る。 しか しこの著 作 は 印 欧 語 の文 法 の枠 を 一 歩 も脱 して い な い 。 Pe M aung Tin (ペ イ マ ウ ンテ ィ ン) の文 法7)は土 着 の もの と して高 く 評 価 され て い るが ,現 代 語 は お お む ね排 除 され て い る し, 品 詞 の分 類 につ い て は何 の疑 念 もな く印 欧 語 文 法 の 枠 を 用 い て い る。 こ こで ひ とつ 注 意 す べ き こ とは , ビル マ人 白身 に よ る ビル マ語 文 法 に colloquialism を 対 象 と した もの が 全 くな い とい う点 で あ る1。 ビル マ語 研 究 の歴 史 を み る と,文 字 に か か れ た ビル マ 語 , な か で も と りわ け古典 的性 格 を も った雅 語 と して の ビル マ語 を 対 象 して 始 ま り,今 まで続 い て き た こ とが わ か る。 そ こに は言 語 そ の もの と文 字 とを 同 一 視 す る 傾 向 が あ った よ うで あ る。 さ らに ま た現 代 使 わ れ て い る ビル マ語 は , 常 に ゆ れ う ごい て い る状 態 にあ り ビル マ語 研 究 の対 象 とな る資 格 が な い と考 え る傾 向 もあ った 。8)6)Taw SeinKo.ATEElemelltaZ・y G7-aWLmarOf theBzLT・meSeLanguage.Rangoon:Hanthawaddy Press,1949(初版は1891年).Taw SeinKoは Sino-Burmese。大野徹 「ビルマ言吾又献解題」(『A.A.
文献調査 撤!1,--』弟75冊,言語 ・宗教10,1964)pp.34-35参照。((追加))京都大学の西日龍雄助教授の釦 教示によ り,これ とは別に Taw SeinKo.Elf,mentaryHand・bo。koj-theBtm TleSeLangzJage.4thed. Ran写oOn・'American BaptistMission Press,1939(初版 は1898年)があることを知 ったo これ は前 者 より記述が詳細で,LJ語の扱いが重視 されていろ。前者はこれの PartlI.Literaryおよび Appendices の一部をとりだ して編集 した ものである。
7)PeMaung Tin/hpei-maun-tin/.Hmyan-ma dhadaH(jj'(m TleSe Gran〃nar.Rangoon,1956.); doHmyan-ma we'ca.hpwe.htoILn:ran:lt(BurmeseSyntax.Rangoon,1951.)大野徹 「ビルマ語又 献解題」pp.35-36参照。PeMaung Tinには, この種の ものが他に二,三 あるが,内容の骨丁-は上記 の著作 と基本的に同 じである。
8)筆者は, この事情を如実に物語 る次のような体験を した。 2年 ほど前,あるきっかけで ビルマの留学 圧 UOhm Kyaw (注 2参照)に Stewartの M anlLalof ColloquialL、urmese(後述) とい う又法富 の題 '{Jの ビルマ訳について尋ねたことがある。 彼は しば らく考えてか ら, どうい う本だと説明を求め たので,又法の本だと答えると, ColloquialBurmeseの文法などとい うのはないといって筆者を困 ら せた。PeMaung TinElm yan-ma we'〔・a hpwe.hloEEn:Can・:11の序文 にも同様の趣 旨の説明がある。 また, ビルマには人 口に胎灸す る yei:do.qahman,hpa'to.qathan(苦く時は止 しく,読む時は音の 通 りに) とい うことばがある。 これは綴字 と音声 (speech-sound)との関係を述べたものあでるが
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底には文字に書かれた言語 と音声 のみの言語 とを全 く別のものとす る考えがあることをいみ じくも物語っている。(原 けhli
秦
『ビルマ語入門』(後述)p・24参照o 「これは決 して両者が一致 しな くともいいこ と,をうたっているわけではないのだが,一般の ビルマ人は, どうや らこの ことばを現状肯定の根拠に し たり,はなはだ しきに至 っては,む しろ一致 しないのが正 しいのだと孟闇 JJf'している.」)また,ビルマ語で myan・rnasaといえば 「ビルマ語」の ことを意味する。saは又 とか又Ji・:とか,要す るに占いたものをい う
航
行であるO ここにも又 '了と言語 とを同一視す る見-JJLが現われているといえない こともない. シナ語の 「緬 丈」mi昌nwさn(ビルマ語)等について も同 じことがいえ るだろう.つまり言 語研究の対象とな りうるのは,文語だけであるとい う考え方の現われ と見 られ るのである。なお,ビルマ における言語研究 については,ノく野徹 「ビルマ語文献解題」,脚 ‖LL・:在「ビルマにおける国語研究の現状」(
LT人阪外国語大学学
捜
rn9.1961)参照。 ビルマには[1-;続的な国
語学 ・国文学 ・民族学 ・此史学等の面か らの言語の研究 者はいて も,いわゆる一般的な意味での方法論を身につけた言語学 苫ははと/i/どいない よ うであるo しか し近年 このJJ-面-の関心 も徐 々に高 まりつつあると聞 く 『入学学術紀要
』 (t`,'gad/n JLpt'7"ly`tbadeL'-thtL∫`∼-gaNn)第 2巻 ・/j'l'4部,1967には,ラング- ン文理科大学 ビルマ語・助講師 Daw Kh).∩ Aye/dohkin-qel'.-/(ド- ・キ ンエイ)に.たろ言
語
学 (ba-dh,ibe主-a.1.)紹介の訂 車があ;7,(、東南 アジア研究 7巻 4号
再 び欧米 の ビル マ語学者 の著 作 についてみてみ よ う
。St
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(スチ ュアー ト) の文 法9)は,それ以前 の もの と比べ ると著 しい変化をみせ てい る
。
彼 は(ntroductionの序 文で,J
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品詞 ,のちの文 法家は8
品詞 を たててい るが,実 際 はf
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種 を たて るだ けで十分 で あ り,それ以上 の ものを認 め る根拠 はない と述べて い る
。
また M anualで は ビル マ語 の品詞 はnoun,ver
b,par
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で あ る(
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.20)
と述 べてい る。Cor
nyn
(コーニ ン)の文法10)は,St
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の試 みを さ らに徹底 させ た もの と して注 目に値す る。 Outlineの序 文で ,彼 は
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の予備 的な分析 を終 えて しば らくのちに ,幸 運 に も英 国 か ら
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の Zntroduction が手 にはい り,St
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の品詞分析 が 自分 自身 の分析 に確証 を与 え ることにな った と 述 べて い る。 しか し,一方 この 言語 に2
品詞 (つ ま りSt
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が Iniroductionで い うf
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Wor
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の こと)を認 め るとい う一致点を除 け ば ,St
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と 自分 の考察 にはほ とん ど共通点が ない とつ け 加 えてい る。事実 ,St
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とCor
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で は,名詞 ・動詞 に助詞 が連接 してい ろい ろな機能を果 たす とい うこの言語現 象 の扱 い方 に関 して異 な ってい る。Cor
nyn
の文 法 は根本 が Outlineに示 されていて,その実際面 に お ける具体的 な説 明が Spokenと Beginningに述 べ られて い るとい って よい。 この三 つ の著作 に貫 かれてい る態 度 は,col
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を対象 と し,文 字 に書 かれた言語 に と らわれずnat
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と して) の発 す る音声 に 忠実 で あろ うとす る点で あ る。 彼 の文 法 の特徴 は ,整然 と していて明解 な ことで あ る。 こうい った 明断 さのあ る反面 ,言語現 象 の分 析 が細部 に まで必ず しもゆ きわた っていない とい う不満 も抱 かせ る。Mi
nn Lat
t(ミン ・ラ ット) の文法11)は
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とい う見地 か ら品詞 の問題 を扱 ったかな り大 がか りな もので あ る
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彼 は Contributz'onの冒頭 でJ
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な ど1
9
世紀 の文 法 の品詞分類 は印欧語 の強い 影響 を示 してい る と述べ ,品詞分 類 に関 して い ままで ビ ルマ語学者 の書 いた文法 にみ られ る特 徴 をそれ ぞれ あげて説 明 してい る。彼 自身 は独 自の立場か ら
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とい う二 つ の大 区分 を たて ,その下 にい くつかの小 区 分 を たてて い るO筆 者 にと って は未 見 で あ るが ,Cor
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の Ouill'Tleの序文 とMi
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ソは, チェコスロバキア,プラ-在住のビルマ語学者。 彼 自身はビルマ人である が,この文法はヨ-ロツパの言語学界のひとつの成果とみるべき性質のものである。薮 :ビ ルマ語 にお け る数 U)穐暗 につ いて
Contributionの冒頭の部分 によれば
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HalftheBattleinBurmese.Lo
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,1910.は,以上 のよ うな品詞分類 に関す る考 え方 において先鞭 をつ けた 著作で あ るとい う。 日本 の ビル マ語学者 は この問題 を ど う扱 って きたか。蛍即書中,五十嵐智 昭 (いが ら し ち しょ う)が
J
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の文 法 の訳注書12)を書 いた。彼 は緒言で ビル マ語文法 は 日本語 と同株 に (と著者 は信 じるのであ るが),体言 ・用言 ・助語の三分 法を もってす るのが妥 当で あ ると述 べ ,品詞論 の箇所(
pp.
2
7-
2
8)
で もうす こ し詳 しく説 明 してい る。 矢 崎源九 郎 (や ぎき げん くろ う)もい ま まで の品詞 の分類 とは違 った 別個 の文法範 境を考 え る必要 があ りそ うで あ ると 述べてい る。13) 原 田正春 (は らだ まきは る)の文 法14)は,
「入 門」で は文法篇 で名詞類 ・陳述部 ・助詞 とい うふ うに分 けて説 明 してい るが, 「基礎」 で はそ うい う大 きな区分 ははず して細分 してい る。 三 人 三様 に印欧語 の文法 の枠を ビル マ語 にその ままあてはめ ることについて非 常な疑問を感 じてい るに もかかわ らず,それ に代 わ るべ き 自分 の考 えを 明解詳細 に具体化す るには至 らなか った。4.
以上 みて きた よ うに,言語学 の進展 とあい ま って ビル マ語 にふ さわ しい文法 の枠 が設定 され るよ うにな って きた。品詞分類 についていえば,St
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tの試 みは, それ以前 の もの と比べて著 しい相違を示 してい る。三者 にみ られ る共通 の精神 は, ビルマ語文 法 に印欧語 の文法 の枠 を転用す るので な くビルマ語 自身の申か らひきだ され るべ き枠を設定 し よ うとい うところにあ る。 (IntrodlLCliu7
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alwor
d
(
1
95
9)
;
`gr
a
mma
t
i
c
alwor
d
(下位区分 は省 略) 三者 の品詞 に関す る考 え方 を整理 し図示す ると上 のよ うにな る。 以 前の ビル マ語又法 にお け る品詞分類 が,大 部分 その単語 の機能 とは別 に意味 によ って印欧語 の品詞 の枠 にあて はめ るこ とによ ってな されていたの に対 して , この三者 の文法 にお ける品詞分類 はおのおのの単語
の文 法 的機能 に基準 を おいてい る。下位 区分 に関 して は,それ ぞれ ちが ったゆ き方 を してい るが, それは さほ ど重要 な ちがいで はない。 12)五十嵐智昭 『ビルマ語文法』旺文社, 昭和18(1943)JJudson,^・ノ1G′-`L""7=lr,,I I/"・/,'"/`川`,∫(∫ I,angzIage.London,1888.の邦訳。随所に施されてある許音の注には,当時としては斬新なものが見 ら れ,その価値は高い。 13)矢崎源九郎 「ビルマ語」(市河三喜 ・服部四郎共編 『世界言語概説』下巻,研究社,1955)p.925,注1 14)原m正春 『ビルマ語入門』江南書院,19580 (以下 「入門」と略称する。) 同 『基礎 ビルマ語』大学書林,昭41(1966)0 (以下 「基礎」と略称する。) なお,ビルマ語の述部については,原田正春 「ビルマ語述部要提」(
『東南アジア研究』2巻2号,1964) に詳 しい。 509東南 アジア研究 7巻4号 本稿 で は,上 に述 べ た
St
ewar
t
な どの品詞分類 の見解 が妥 当 と認 め られ るので ,それを採用 して それ ぞれ 「名詞」
「動詞」
「助詞」
と呼 ぶ ことにす る。 そ して以下 において ,その三 品詞 と数 の範 鳴 とが どの よ うな関連を もってビル マ語 の中で具現 され るかを考察 して ゆ くことにす る。Ⅰ
名 詞 と 数1
.
名詞 に関 して数 の範 鴫の タイプにはおおむね次 の二つ があ る。単数 ・複数 の セ ッ トと単 数 ・双数 ・複数 のセ ッ トで あ る。 またそれを言語化す るのに とる手段 と して は,語形変化や助 詞 の連接 な どがあ る。 ビル マ語 の場合 は,数 の範 鴫の タイプ と して は単数 ・複数 のセ ッ トが考 え られ , また言語化す る手段 と して は,複数助詞 の連接 を あげ ることがで きる。15)2.
ビル マ語で は,名詞 に複数助詞-
mya:
,・
t
ou.
,-
t
wei
16)を連接 して ,名詞 の複数 を表 わす といわれて きた。で は, これ らの三つ の形 式 の間 には どの よ うな意 味のちがい,機能 のちがい が あ るのか。PeMaungTi
n
は次 のよ うに述べてい る。17)・
mya:
- カズを は っき りと表示 しないが ,少数 ではない とい う意味を表 わす
。-
t
ou.
一 全部を まとめひ っ くるめて とい う 意 味で 多数 を表 わす。-
t
wei
- 全部を ま とめひ っ くるめて とい う意味を表 わす。Taw Sei
nKo
は,-
mya:
は一般 に無 生物 に対 して,-
t
ou.
は人 または有生物 に対 して用 い られ ると述べてい る。18)Juds
on
は,複数 は・
t
ou.
によ って表 わ され るが , 時 には形容詞の-
mya:
が それ に とってかわ る こと もあ ると してい る。19)Lons
dal
e
は,
-
mya:
は形 容詞で あ るが複数 の接辞 と して用 い られ ,一
万 -
t
ou.
ほ もっぱ ら有生物 を表 わす名詞 について複数を表 わす が, これ は厳格 にま も られて い るわ けで はない と してい る。20)Br
i
dge
s
は,代名詞 の複数 は もっぱ ら・
t
ou.
によ って表 わ きれ ると述べてい る。21)St
e
war
t
は,-
t
ou.
ほ人称代名詞 に とって適切 な接辞で あ り,-
t
wei
は集合 的な複数 を表 わす と してい る。22)Cor
nyn
はBeginningで,-
mya:
は複数 ,そ うでない場合 は不 定 のあ るいは漠然 と した カズを表 わす と し, また・
t
ou.
については人称 代名詞 との結合例 しか 示 していない。 -
t
wei
は複数 とい うことを強調 す る場合 にのみ用 い られ るので あ って ,その使 用 は英語 にお ける複数 は ど一般 的でない と述べてい る。また一
mya:
と-
t
wei
を比較 して ,一般15)複数を示すのに複数助詞の連接によらずに,畳語
(
r
e
dupl
i
c
a
t
e
df
o
r
m)
による場合もある。qa
py
トbyi
(国々)<pyi
(国),qa
myo
u:
myo
u:
(いろいろ)<qamyo
u:
(種類)など。 しか し,これは限られた名詞に限られた場合にしか起こらないので,ここでは扱わない。なお名詞の複数を示す助詞を「(名詞
の)複数助詞」と呼ぶことにする。
16)その他
-
mya:
do
u.
など,これ らの 複台形を い くつかあげている文法書もあるが,現代語ではほとん ど現われないので,本稿ではふれない。17)
PeMa
ungTi
n
lTmyan-madhadal
l
pp.
116-18. 18)Ta
w Se
i
nKo
,op cit.,p.
15.19)
J
uds
o
n
,op.cit.,p.
16.2
0
)Lo
ns
da
l
e
,op.cit.,pp.4
3f
f
.
2
1)Br
i
dge
s
,op.cit.,p.
ll.
薮 :ビル マ語 にお け る数U)範鴨 につ いて
に
-
mya:
は-
t
wei
よ り漠 然 ・不 定 の 意 味 が つ よ い と し,-
t
wei
の ほ うが よ り一 般 的 に用 い られ る形 式 で あ る と説 明 して い る。23)また Spokenで はI
mya:
ほ 不 定 の 複数,・
t
wei
は集 合 の 複 数 であ る と して い る024)
3. -
mya:
は ,PeMaungTi
n
やLons
dal
e
の 説 明 を まつ で もな く,動 詞mya:
de
(多 い ) に 山来 す る25)こ とは 明 らか で あ る。・
mya:
に つ い て は次 の よ うな用 例 が あ る。qamyou:
dhami
: yi
:
z
a:
pt
ya
_
1
:(
C1)
,j
apan mei
'
hs
wei
空些 :(
B2)
女 性 の 恋 人 たち 口本 の 友 人 たち
hs
aya-
p
ry
A:(
C3), caun:
dha:
mya:(
C3), myan・
mat
ho:
t
a・
hyi
n-
mya:(
C6)
先生 たち 学 とl:. たち ビルマ の 聴 取 者 たち
s
a-
qou'
mya:(
B2)
,yi
n-
cei
:
hmu・
mya:(
B2)
,mu-
1
a・
dan:c
aun:
哩
(
C5)
本 文
化
小 学 校ce一
ga
lei
:
mya:(
Al)
,
qahma:
mya・
'(
Bl
)
,
qac
aun:qaya
q a:(
B3)
屋(
di
m.
)
誤 り :prJiI 柄-
t
ou.
を 有 生 物 (人 間 も 含め て ) に用 い る0
)に対 して,-
mya:
ほ 無 生 物に 用
い る と述 べ て い る 又 法 家 は多 い 。 しか しこの 区別 は厳 格 に ま も られ て い るわ けで は な い と指 摘 して い る又 法 家 も い る よ うに,噌
な る原 則 にす ぎな い026)事実-
mya:
ほ ,有 生 物 ・無 生 物の差
別 な く用い られ て い る。上 に あ げ た用 例 は そ の うち の い くつ か にす ぎない。-
mya:
と-
t
ou.
の ちが い ほ , 無 生 物 ・存生 物 との
闇
通 性 よ りむ しろ カ ズの と らえ方
の ちがい とみ るべ きだ と思 わ れ る。 これ に つ い て は , あ とで 述 べ る。4. -
t
ou.
につ い て は , 次 の用 例 が あ る。cun-
do-
dou.(
Cl
)
,hkamya:
dou.(
C3)
,t
hu-
dou.
(Cl),kou-
dou.(
Al
)
私 たち あなた たち かれ たち 自分 たち
yi
n-
cei
:
hmu.
dou.(
B2)
,yi
-
hman:
j
e'
,youn-
ci
-
j
e'
t
ou.(
Al
)
文 化 志 や 信 念
j
apanpyi
-
dou.(
B2)
,kouhl
a.
wei
-
dou.(
B4)
日 本 国 コウ ・ラウ ェイ た ち
この場 合 も生 物 との必 然 的 な 関 連 性 は認 め が た い。 しか し
,-
t
duは 人 称 代 名 詞 あ るい は 人 名に対 して 用 い られ る場 合 を の ぞ け ば , そ の用 例 は きわ め てす くな い。
5.
で は,-
mya:
と・
t
ou.
の ち が い は ど こに あ るの か 。PeMaungTi
n
は , 前 述 の よ うに ,2
3
)Co
r
nyn
,Beginning.pp.6
0
f
f
.,p.7
8
,p.1
2
9
.
2
4
)Co
r
nyn
,Spoken.p.1
31
,p.1
6
4.
2
5
)PeMa
un
gTi
n
"myan-madhadal
f
p.1
1
6;Lo
ns
dal
e
,op.cir.,p.
44.2
6
)
ビルマ人UAun
gMyi
n
t
(注2
8
参照)による次のような説明がある。彼は筆者 との雑談の最 中,
請が・
mya:
と-
t
o
u.
の ことにふれ るや,す ぐI
mya:
ほ無二]:_物(
i
nani
ma
t
e)
,-
t
o
u.
は有生物(
ani
ma
t
e
)
に対 して伎 うと述べた。 この事実は, ビルマ人の言語意識にそ うい う区別が存在す るのではないか とい う
推
測をおこさせ る。 しか し彼 白身の使 う言語において もこの区別は守 られていない。なお
,PeMa
un
gTi
n
はこの区別については全 くふれていない。
束 輔 ア ジ ア 研究7巻 4号
mya:
は 「カズを は っき りと表示 は しないが, 少数で は ない とい う 意味 の 複数」
を表 わ し,-
t
ou
・は「全部を まとめひ っ くるめて とい う意味の複数」を表 わす と説 明 してい る。Cor
nyn
は,-
mya:
は 「複数」 ,さもな くば 「不定 あ るいは漠然」 を表 わす と してい る。-
t
ou.
につ いて は, 人称代名詞 との結合例 しか示 していないのは, この書物が 口語 ビルマ語 を対象 と した もので あ る点を考 え ると,現代 口語 において-
t
Ou.
が人称代名詞以外 の語 について用 い られ ることのま れな事実 に注 目 した結果 と思われ る。 ・mya:
と-
t
ou.
のちがいは, この両者 の説 明を総合 したあた りにみいだ され るので はないか
。
2
7
)この問題 については, ビルマ語 のnat
i
ves
pe
aker
が ど うい う意識 を もって使 いわ けてい るのかをつぶ さに調査す る必要 があ る。 ここでは最近 たまた ま ビル マ人 か ら聞いた次 の説 明をあげるにとどめたい。
(1)
〔
ei
-
di
・
you-
dou.s
a・
qou'
t
ou.hyi
.
ba-
de
ラジオ も 本 も あります。
(2)
diqahkan:
de:
hmar
ei
・
di
-
you-
mya:hyi
.
ba-
de
この 部屋の中に ラ ジ オ が あります。
説 明 して くれ たのは,下 ビルマの タ トゥン出身の
U AungMyi
nt
28)で あ る。 彼 の説 明によると,口語では上 のよ うに使 いわ けるとい うことで あ る。 も し(1)のよ うな列挙 (
e
numer
a
t
i
on
, 日本語の 「・・・も- も」 のよ うな表現-U AungMyi
nt
による)の文 において,・
t
ou.
を・
mya:
に お きかえ ると文語的(
s
a-
peihs
a
n-
de)
な表現 に な るとい う。 また(2)の文で は-
t
ou.
は用い られないそ うで あ る。以上を解釈す ると次 のよ うにな る。 (1)のよ うに列挙を示す文 に
・
t
ou.
を用
い るのは,PeMaungTi
n
のい う 「まとめひ っ くるめた意味 の複数」 とい う意識 が働 いてい る か らだ と考 え られ る。 この文 の趣 旨が個 々の物 の カズの指摘 にあ るので はな く,個 々の物 それ 自身 の指摘 にあ る点を考 えれば,・
mya:
を 用いず-
t
ou.
を用い るわ けは うなず ける。('2)の又 で-
t
Ou.
を用いず ,・
mya:
を用い るのは, ラジオが何台 かあ る, つ ま りカズに関心 がむ け ら れ る結果 ではないか。6.
・
t
wei
29)は,文語 をお もな対 象 と してい る 文法宏 は と りあげていないが,次 の よ うな用 例 があ る。qahpou:
j
i
:
dwei(
Bl
)
,poun-
byi
n-
dwei(
B3)
,s
ei
'
t
wei(
B3)
,gabya-
Lwl
e
i(
B4)
おじいさん たち 民 話 心 詩
27)
Da
go
n
USamNgwe
/
da
go
unqu:s
an・
n
gwe
i
/(ダゴウン・ウ一 ・サンダエイ)は,・
mya
:
をン村湛か な推測複数,-
t
o
u.
を確かな複数を表わすと定義 し,石生物 ・無生物に ついては全 くふれていない。ま た,古来,複数助詞としてI
t
O
u.
が用いられてきたが,-
mya
:
の出現でその位置を奪われるようになっ たと述べ,-
mya
:
を文章語(
s
a
-
pe
i芝
a
ga:
)
でな く,芝居諮 (
z
a'z
a
ga:
)
・方言(
q
aya'2
:
a
ga:
)
である としている。(
Da
go
n
USa
nNgwel
l
d
ha
da
.my
e
'
l
o
un:ye
i
:
hpa'
ht
o
un:
「文法の主眼点」HRan
go
o
n
,1967.
pp.
85f
f
.
)
28)U
Åung Myi
nt
/
qu:qa
un-
myi
n
ノ (ウ一 ・アウンミン)27才。ラングーン経済大学(
Ⅰ
ns
t
i
t
ut
eo
f
Ec
o
n
o
mi
c
s
,Ra
ng
o
o
n)
卒。陸運局技官。ラングーン外国語学院で 日本語を学び,1968年1
0月来 日。大 阪外国語大学留学生別科に在籍 していた。言語に関してs
o
p
hi
s
t
i
c
a
t
e
d
な性格ではない。巌 :ビル マ語 にお け る数 o)範晴 につ いて
kwe:pya:
hmu.
dwei(
B4)
,
j
apanpyi
-
dhu-
dwei(
B4)
,kal
a:
dwei(
C2)
ち が い 日本 国民 たち イン ド人たち
myan-
maqamyou:
dhami
:
dYei(
C1
)
,hs
aya-
dwei(
C3)
,qe:
由一
dwe
i(
C7)
ビルマの 女 性 たち 先生 たち それ ら
hpo-
ywei
-
hmu.
dwei
,hki
n-
mi
n-
hmu.
dwei(
C5)
,mei
:
da-
dwei(
C6)
つきあいやす さ 親 し さ 尋ね ること
myan-
mas
a,mya
n-
maya-
z
awi
n-
dwei(
C4)
,
ht
u:
z
a
n:
da-
dwei(
C2)
ビルマ 語 ビルマ 歴 史 珍 しいこと
-
t
wei
は会 話 か ら得 た資 料 に圧 倒 的 に多 くみ られ る。 したが って , これ は 口語 に のみ 使 用 され て きた助 詞 で は な い か とい う推 測 が な りたつ。 また ,これ を う らづ け る次 の よ うな事 実 が あ る。あ る き っか けで ,
Cor
nyn
の Outlineの 中 に 出て くる ビル マ語 の 用 例 を ビル マ文 字 にな お し て 印 刷 した資 料 を , ビル マ の友 人KoSoeMaung
30)に送 った こ とが あ る。彼 はて い ね い に も資料 の 中 の 誤 りを一 々指 摘 して くれ た。 そ の うち に は ミス プ リン トの箇 所 もあ ったか
,Cor
nyn
が原 文 で
-
mya:,-
t
ou.
と記 述 して い る と ころを す べ て-
t
wei
(た だ し人称 代 名 詞 に つ い て は そ の ま ま) と訂 正 した こ とは注 目に値 す る。 彼 は そ の理 由を こ う説 明 して い る。 話 す 時 は たい て い
-
mya:
の代 わ りに・
t
wei
を わ た した ち は 使 う。 口語 で は-
t
ou.
や-
mya:
の代 わ りに-
t
wei
を 伎 うの で あ る, と。 で き るだ け話 す よ うな調 子 で書 く (い わ ゆ る言 文 一 致 の こ と) の を 信 条 と して い る彼 の手紙 に は ,事 実 この よ うな-
mya:早 -
t
ou.
の用 例 は ほ とん ど見 あ た らな い。Cor
nyno
)Outli71e31) に あが って い る例 文 は たて ま え か らす れ ば , あ くまで も口語 を対 象と した もの で あ るか ら
,KoSoeMaung
の説 明や 訂 正 を そ の ま ま全 部承 認 す る こ とはで きな い だ ろ う。 しか し事 実 に照 ら しあ わせ て み る と,彼 の説 明 は現 代 ビル マ 口語 に お け る-
t
we
i
の使 用 の 姿を ほ ぼ 的 確 にい い あ らわ して い る とい え る。 これ は ,ま た ,当 のCor
nyn
がBeginningで-
t
wei
は複数 助 詞 と して , よ り一 般 的 に用 い られ る形 式 で あ る と述 べ て い るの と も合 致 す る。-
t
wei
の意 味 につ い て は ,PeMaung Ti
n
やSt
e
war
t
,Cor
nyn
な どが ,す で に述 べ た よ うな 説 明を して い る こ とか らみ る と,集 合 体 と して ものを と らえ る場 合 に用 い る と考 え られ る。7.
最 後 に ,名 詞 の複 数 助 詞 (-
mya:
,
-
t
ou.
,-
t
we
i
)
全 体 の機 能 につ い て述 べ よ う。 個 々の使 い わ けにつ い て は前 節 まで に述 べ た が , これ らの助 詞 に共 通 な働 きを み る こ とが ビル マ語 の数 の範 晴を 考 え る上 で は , さ らに重 要 で あ る。8.
複 数 の概 念 とは ,一 般 に どの よ うな もので あ るのか 。J
e
s
pe
r
s
en
(イ ェスペ ル セ ン) の 説 明t12)を 引用 す る と次 の よ うに な る。1
.
TheNor
malPl
ur
al
3
0
)KoSo
eMaun
g.
注2
参照。31
)Co
r
nyn
,01itlineは,主 としてMaun
gShweWai
n
(下 ビルマ出身)をi
nf
o
r
ma
nt
として記述 され た。Co
r
nyn
,op.cii.,p.5
参照。3
2
)J
e
s
pe
r
s
e
n,0.
Them ilosophy ofGramma7・
.Lo
nd
o
n,1
9
5
5(
1
s
te
d・1
9
2
4)
,p
p・1
9
0
-
9
2
・
東 南 ア ジ ア研 究 7巻 4号
Thes
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s
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-Aa+Ab+Ac
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・
・
・Ex.S
i
xt
i
e
s
,
・
・
・
we
,-さて , ビル マ語 の名 詞 の複数 助詞 に は大 き く分 けて三 つ の機能 が あ る と考 え られ る。 (1)
Ap
ュ.→ Aa+Ab+
-・ (2)Ap
l. →A+o
t
her
s
(3)(
A+B+-・
)
p
l.→
A+B
+-(
A,B
,- は個 々の名 詞 を,pl.は名 詞 の複数助詞 を示 す 。) (1)の場 合 は,J
e
s
pe
r
s
e
n
のい う正 常 複数 の概 念 に あた る。pa
n
i
PBR:
.(
Al
)
,j
a
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二
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B2)
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B2)
花 日本の友人 たち 休 日
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B3)
学生 たち 人物 たち 日本の 兵士 たち
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C2)
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B4)
少女 たち シナ人たち ことば
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Bl
)
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aun:
dha:
dou.(
C4)
,
j
a
pa
nl
u:
myou:
dou.(
C6)
先生 たち 学 生 たち 日 木 人 たち
前 の名 詞 が単 一 の個 体 で な く何 らか の意 味で 複数 性 を帯 びて い る こ とを は っき りと打 ち 出 した い とい う意識 の働 きで複 数助 詞 を用 いて い る と考 え られ る
。
33)(2)の場 合 は
,J
e
s
per
s
e
n
の い う近 似 複数 の概念 に非 常 にちかい。 これ は一 人称 代 名 詞 と固有名 詞 の場 合 ,最 も顕 著 にあ らわ れ る。
cun・
do-
dou・(
C1
)
,c
a
ma・
dou・(
B2)
,kou-
dou・(
Al
)
,mei
・
mei
-
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m
B :(
Al
)
わた し たち わた したち 自分 たち おかあさんたち
kouhl
a.
we
i
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dou.(
Bl
)
,
qu:maun-
maun-
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ou:
t
i
n.
dou.(
C6)
コウ ・ラウェイたち ウ一 ・マウンマウンソウテ ィンたち
koumou:
hs
we
i
-
dou.t
九a:qa
m
i.(
Al
),j
a
pa
npyi
-
dou.(
B2
)
コウ ・モウスエイ たち 息子 と母 (親子) 日本国代 表 とな る名 詞 を あ げ,それ に複 数 助詞 を連 接 す る と,その名 詞 以外 にそれ と関係 の あ る もの が い くつ か含 まれ るこ とを言 外 に示 す働 きをす る。 た とえ ば
,A,B
,C
- とあ るな かでAp
l.とい え ば ,
A
お よ びB
,C
-全 部 を含 む意 味 にな る。A
だ けを 明示 し,B
,C
- は 明示せず そ の存在 を言外 に漠 然 と表 わす の は,B
,C
-・を無視 した くはない が ,特 に言 及す る必 要 を認 め33)
Co
r
ny
n
は, ビルマ語には単数 ・複.数の区別がほとんどないと述べ,qa
hka
n:丈a
un:
d
e`
t
her
o
o
m i
s
go
o
d'o
r-
t
her
o
o
msa
r
ego
o
d'
という例をあげて説明 している(
S
po
k
e
n.
p.2
7
,p.1
3
1
)
。薮 :ビル マ語 にお け る数cJ)範晴 につ いて
な い気持 が働 くか らで あ ろ う。 日本 語 の 「た ち
」
「ど も」
「ら」 や 「な ど」
に も この よ うな意味 が あ る。
(;i)の場 合 は(1)(2)とちが って ,この複数 助詞 の有無 によ り,基本 的 な意 味 の変化 は起 こ らない。
c
a
ma.
ne.c
ama.hki
n-
pun:
dou.(
B2)
,myan-
mas
a,myan-
maya-
z
awi
n-
dwei(
C4)
わ た しと わ た しの配偶者 ビル マ 語 , ビル マ 歴史
maunt
i
n-
t
he
主
n:
, maunwi
n:
kou, hki
n-
c
we-
qu:
dou.
(Bl)マ ウ ン・テ ィンテ ィ ン,マ ウ ン・ウ ィンコウ,キ ンチ ュエー
ウ-mi
・ba・甲y早:
(Al,)j
a
panpyi
-
dhu-
ne・bamapyi
-
dhu-
dou
・(B4)母 父 (父 母,両 親 ) し日工 国民 と ビル マ国民
qu:maun-
maun-
nyun.
ne.c
ano-
dou.
(B4) ウ一 ・マ ウ ンマ ウ ン二 ュ ン と わ た しyei
-
qu:myou.
,da
ba・
yi
n:myou.
,daz
e-
myou
i
P a:
(Bl) イ ェイTj一町, グパ イ ンl 町, ダゼ - 町pa-
l
i
.s
a-
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a-
na.
ga.pa-
mau'
hka.
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ha
mai
n:ht
a-
na.
ga.pa-
mau'
hka.
ne.m
0-
gun:
dei
n:
dou.
パ ー リ 文学 科 の 教授 歴史学 科 の 教 授 と 記 録官
(Bl)
名 詞 をい くつ か催列 して ,最後 に複数 助 詞をつ ける。 この場 合 の複数 助詞 は全 く随意 的
(
o
p-t
i
ona
l) な もので あ り,用 い られ な い例 もか な りあ る,z
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B2
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n.
(
Bl
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(
B4
)
妻 人 (夫妻 ・大姉) 付 父 (父母 ・両 親 ) わた しと 先ii二
kou hl
a-
we
i
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ne.c
a
no
(B4),cun-
do-
ne.qu:ht
un:
hywei(
C5)
コウ ・ラウ ェイ とわた し わ た し と ウ一 ・トゥンシュエ イ
kou mou:
hs
wei
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-
1
a
(Al),°i
n:
l
ei
: g
a
ga:
,da
nu. z
a
ga:
,t
aun-
you: z
a
ga:
(B4) コウ・モ ウスエイ と ニー ラー イ ン レイ 語 (方 言 ),ダ ヌ語(方 言 ), タウ ンヨウ語(方言 ) この点 につ いて は ,五 十嵐 智 昭が , ビル マ語 の複数 は印欧語 の複数概念 の表示 と異 な る ことを 的確 に指摘 して い る。
34) 以上 三つ の場合 につ いて述 べ たが , これ らの用 法 は実 際 には互 い に錯 綜 して い るので ,その 場 の状 況(
s
i
t
ua
t
i
on)
や文 脈(
c
o
nt
ext
)
によ って見 わ け られ るにす ぎない。9.
で は ,複数 助詞 を伴 わな い名詞 は数 に関 して い ったい どの よ うな性 質 を そなえ た形 式 で あ るのか。今 まで の文法 家 の多 くは, ビル マ語 の数 につ いて単数 ・複数 の対立 が あ る もの と し て説 明 して きた。複数 助詞 を伴 わない名 詞 は単数 で あ ると決 めて かか って い た。J
uds
o
n
は ,複 数 助詞を伴 わ ない名 詞 は総 称 的(
ge
ner
i
c)
な意 味を もつ ことを述 べ て い る35)が , これ も印欧語 のgener
i
cs
i
ngul
ar
にな ぞ らえた もので ,単数 ・複数 とい う厳密 な対立 を否定 した上 で の見 解3
4
)
五十嵐智昭,前掲雷。p.3
0
,§
5
3
〔備考〕
。
3
5
)J
ud
s
o
n
,op.cit.,p.1
5
.
51
5
東南 アジア研鶏 7巻4号 で はな い 。 ビル マ語 で
l
u
(人),s
a-
qou'
(本 ) な ど とい った場 合 , 「人」
や 「本」 の カズ につ いて は特 別 な 関心 が払 われ て い な い ので あ る。 ビル マ語 の場 合 は ,印 欧語 の よ うに名 詞 の単 数 形 が 常 にそ の複数 形 の存在 を 意 識 して 用 い られ る の とは , 事 情 が ちが う。 ビル マ語 に おい て は ,普 通 名 詞 に関す る限 り単 数 ・複数 の厳 格 な対 立 は存 在 しな い。 した が って複数 助詞 の使 用 も随意 的(
opt
i
onal
)
で あ る。 と ころが ,人称 代 名 詞 の場 合 はい さ さか事 情 が異 な る。 人称 代 名 詞 に は,単 数 ・複 数 の厳 格 な対 立 が存在 す る。36)cun-
do,ca
ma.
(わ た し),hka
mya:,hyi
n
(あな た),t
hu
(かれ) な どは , おの おの これ に
-
t
ou.
のつ い た 複 数 形 の存在 を 意 識 して 用 い られ る。 つ ま り 「わ た した ち」
「あな たが た」
「かれ ら」 とい うべ き と ころ に は , 必ず 人称 代 名 詞 + :t
ou.
37)の形 式 を用 い るの で あ る。 この ことは ,具 体 的 な複 数 の カズを示 す 単 語 と と もに用 い られ る と きの普 通 名 詞と複 数 助詞 の関係 を思 い起 こ し,人称 代 名 詞 の場 合 と比 べ れ ば ,明 らかで あ る
。
「人3人」
「本3
冊」
とい う時,l
ut
houn:
yau'
,
s
a-
qou'
,
t
houn:
qou'
とい って ,複 数 助 詞 を用 い な い 。88)これ は カズが別 の語 に よ って 明示 され て い るので , さ らに複 数 助詞 を用 い る必要 はない とい う理 由 に よ る もので あ る。 こ こに も ビル マ語 の複 数 助詞 の性 格 の一 端 が あ らわ れて い る。 しか し一 方 , 人称 代 名詞 の場 合 は,具 体 的 な複 数 の カズが 明示 され る場 合 で も,複 数 助詞 が必 ず そ の ま ま用 い られ る。t
hu-
dou.hnayau'(
Al
)
, t
hu-
dou.hnaqu:(
Al
)
, kou-
dou.hnaqu:(
Al
)
かれ ら
2
人 かれ ら2
人 自分(わた し)たち2
人 ビル マ語 の場 合 ,名 詞 の数 に対 す る関心 は普 通 名 詞 と人称 代 名 詞 で は異 な って い て ,普 通 名 詞 につ い て は単 数 ・複 数 の 区別 が厳 格 で ない の に反 して ,人称 代 名 詞 で は単 数 ・複数 の厳 しい 対 立 が 存 在 す る とい え る。Ⅱ
動 詞 と 数1
.
動 詞 の表 わす 動 作 や状 態 それ 自体 の複数 性 を 表 わす に は ,ビル マ語 で は多 くの言 語 の場 合 と同様 ,副詞 の働 きに依 存 す るか ,も し くは ,動 詞 の重 複 に よ る。つ ま り動 詞 の真 の複数 は , い くつ か の言 語 に おいて い わ ゆ る反復 相(
i
t
er
at
i
ve)
に よ って 表 わ され る と ころの もので あ る とい うJe
s
per
s
en
の説 明39)が ,そ の ま まあて は ま るので あ る。 た とえ ば ,t
a
hkat
a
hkal
a-
de
36)新村出も,数について厳格でない言語において も,代名詞は一面名詞に比 して単複の区別が厳重であ
る,と述べている。 (『言語学序説
』
(改訂版)星野書店,昭和4
1
年 (重版).pp・1
0
2
-
0
3
・
)
37)
St
e
wa
r
t
は,仁
un-
d
o
一
mya:
とい う形式が 近年聞かれるようになったけれ ども,この形式はまだほと ん ど確立 していないと述べている(Introduction.p.2
3
.
)
。またU Aun
gMyi
nt
(注2
8
参照) も,田舎 へ行けば,あるいはラングー ンでもたまにはc
un-
d
0-
mya:
とい う形式が聞かれ るとい う。 しか しながら,共通語 としては人称代名詞
+t
o
u.
の形式を一般的と考えてさしつかえない03
8
)
次の用例参照。I
u-
ngel
e
i
:
qu:
(若者4
人),mi
.
ba.hna
pa:
(両親2
人),l
e
'
hma'hna
s
a
un
(切 符2
枚)(以上A1);c
a
un:
d
huc
a
un:
d
l
l
a
:hna
ht
a
un
(学生2
0
0
0
人),qe
i
nt
ho
un:
ya
(家3
0
0
戸)
(以上B
l)(
1
0以上の満数の場合は一般に助数詞を省 く)0薮 :ビル マ語 にお ける数 の範暗 につ いて (しば しば来 た。),c
jA
nei-de (しき りに見 てい る。)な どであ る。 しか し,それ は さて お き, ここで は動作 の主 体 が複数 で あ る場合 に動詞 に 連接 され る複数助 詞40)-ca.,-koun について述べ る。 2. これ について PeMaung Tin は次 のよ うに説 明 してい る。-ca.は 「それ ぞれ」 が行 な う ・起 こる ・存在 す ることを特 に明示す るため に用 い,-koun は 「全部」 が行 な う ・起 こる ・ 存在 す ることを特 に明示す るため に用 い る動詞 の複数接尾辞で あ る41) と。 つ ま り -ca.は 「それ ぞれ ひ とつずつ」,-kounは 「全部 ひ とつ残 らず」を意 味す る42)とい うので あ る。Judsonは,
-ca.,-kounを動詞の複数を あ らわす と し, しば しば省略 され ,複数 の概念 は名詞 の複数助詞 に よ って示 され るか ,あ るい は前後 の文 脈 によ って理 解 され る43)と述 べてい る。Lonsdale もほ
ぼ同様 の こと44)を述 べてい る。 Stewartは Zntroductio71で動詞 助詞 と して ・Ca.,-koun を あ げ,動詞 の複数 を表 わす と して い る。 そ して彼 は,-kounは動詞 koun-de (尽 き る) に由来
す ると して , この意 味が動詞助詞 と して の-kounの用法の基礎 にな ってい る45)と述 べてい る。 また M amJalで は -ca.は複数 の動詞助詞で あ り,一般 にそれぞれ偶 々別 々に行 なわれ た動作 を示す と し,一方 -kounは完結 を表 わ し, しば しば強めを表 わす46)と説 明 してい る。Cornyn
は-ca.のみを と りあげ,複数を 明示す ると し,次 の よ うな対比を もって この複数助詞 の性 質を 説明 してい る。
Pa:derefers tooneormorethanoneperson. sa:ja.derefersonly tomorethanoneperson.47)
Allott(ア ロ ッ ト)は Severality を あ らわす と し,次 のよ うに述べてい る。48)lu thwa:de (人 は行 く) といえばひ と りの人 が行 くのか,それ以上 の人 が行 くのか はわか らない。正確 な カズ は数詞 と助数詞 にによ って あ らわ され る。それ に対 してthwa:ja.deは,何人 かの人 がおのおの 同 じことをす るとい うことを表 わす 。 この よ うな文 で は複数 の主体 を示 さな くと も複数 の主体 が行 動 す ることは明 らかで あ るo つ ま り-ca.ほ動詞 がい くつかの偶 々の動作 ,で きごと,状態 にあ る ことを表 わす ので あ る。 動 詞 の複数 助詞 と しては,現代 ビル マ語で は, もっぱ ら -ca.が用い られ るよ うであ る。 こ 40)以下 「(動詞の)複数助詞」とIIT-ぶことにする。 また,「動作の主体 (agent)」という時 の 「動作 (action)」は 「動作あるいは状態」の略で ある。動詞の複数助詞には,-ca.goun という複合形をあげ ている文法書もあるが,現代語ではほとんど現われないので,本稿ではふれない。
41)PeMaungTin日mJ・aJ,]・mallfuld(IHP.250.
42)Zbz'd.,p.252.
43)Judson
,o
p.
C1.
i
..p.41.44)Lonsdale,op.lit..pp.219-20. 45)Stewart,IntrodtJCtion.p.47. 46)Stewart,Manual.p.31. 47)Cornyn,Beginning.p.282.
48)Allott,A.J.''CategoriesforDescr・iptionoftheVerbalSyntagmainBurmese,nLingua,15, 1965.p.301.