人口学的指標を用いた社会変動の分析
一都道府県レベルのマクロ分析と市町村レベルのミクロ分析ー
教科・領域教育専攻 社会系コース
菊 池 将 太
1 .はじめに
今日、地域を研究の軸に据えるものは数多く みられる。こういった研究は、ただ1つの地域 を分析する個別的な研究から、同ーの指標を用 い、 2つ以上の地域を比較分析する方法へと転 換がなされてきている。この比較方法には、地 域類型論(以下、類型論)と地域領域論(以下、
領域論)の2つの方法が主軸として挙げられる。
この2つの研究方法は、地域性研究の歴史にお いて、類型論が活発に行われた時期を第1期、 領域論が登場してきた時期を、第2期とされて いる。
本稿においては、これら2つの研究方法の特 徴を明らかにし、両者を複合的に用いて分析を 行い、統合の可能性についてみてみる。
2. 地域性研究
地域性研究の中軸を担っている、類型論と領 域論の2つの研究方法から探っていく。
まず、類型論について説明する。類型論の特 徴は、いくつかの類型を設定し、その上でその 地域構造を明らかにするとしづ手続きがとられ ている。その中心課題は、その分析に設定され た類型の妥当性であり、それぞれの類型の地域 構造ないし地域的分布は議論の中心にならない ことにある。また、日本民族文化の起源や動態 の考察を目指すものではなく、焦点は現実に存 在する社会構造の構造的理解を目標としている。
次に領域論について説明する。領域論は、文
指 導 教 官 山 本 準
化要素の地域的分布に関心があり、東西や南北 などの文化領域を設定することに第一次的な目 的がある方法である。文化領域を現在の構造的 な問題としてだけでなく、日本文化に起源や歴 史的展開の問題として考察しようとする傾向が みられる。この領域論の中には、日本の文化を 同質的あるいは、異質的と捉えるものがある。
ここで、領域論に多くみられる、起源論や動態 論について述べる。起源論とは日本の民族文化 の起源を明らかにすることを目的とする研究で ある。動態論は、人類学や民族学の地域性研究 に対して、主に、考古学の分野から主張されて いるものである。その本質は、時代を越えて存 在する地域差と、時代の流れに沿って変化する 地域差を区別して両者の相互関係を分析しよう
とするものである。
3. 研究の目的と方法
本稿の分析の目的は、前述した地域性研究の 今日までの研究方法に対する疑問に端を発する。
これまでの地域性研究の2つの潮流である、類 型論、領域論の研究方法は、両者に共通してい えることとして、個別的な地域特性を問題とす る研究から、文化などの全体的な地域構造を考 察する研究へと転換してきている。個の分析か ら、個々を分類、比較する研究へと転換してき た。この点について、筆者は同調するものであ り、地域を研究、考察する上で他地域と比較し ての考察は必要不可欠なものであると考える。
つ 白
4Ei q δ
しかし、地域比較研究の大半の研究は、比較考 察の際の地域分類を、単純な二分化論で述べる ものが多い。その類型も、データから導き出さ れた客観的なものではなく、研究者の主観によ って決められたものが多く見られる。また、考 察の方向も、構造的な理解に迫るものか、起源、
や動態に迫るものかのどちらかに偏っていた。
上記のような地域性研究の問題点を踏まえ、
本稿では、統計数値によって導き出された客観 的データを重要視する。データを解析処理し、
それによって得られた結果から、分析をするこ とを原則とする。類型論的な、構造的理解と領 域論的な起源、・動態的理解を並行して行うこと を目標としている。また、目的のもう 1つに、
全国 47都道府県のデータ分析結果と、一段階 視点を下げた市町村レベルのデータの分析結果 とではどのような差異が見られるのか、という 点に着目している。これは、第 E章の結果と、
第皿 ~V 章にかけての、県別分析の結果を比較 して、明らかにしていく。
次に、分析に用いる数値と対象について説明 する。ここでは、老年化指数と、 65歳以上の親 族を含む世帯割合を中心に分析を進めていく。
第 H 章では 47 都道府県の数値、第 III~V 章で
は各県の市町村の数値を用いることとなる。対
象は、第 E 章では全国 47 都道府県、第匝 ~V
章では第H章の結果より、秋田県、滋賀県、徳 島県を選出し、分析を行う。本稿においては、
前者を相対的なマクロ分析、後者を相対的なミ クロ分析と位置付ける。
最後に分析方法について説明する。第1段階 として、両数値をクラスター分析にかけ、散布 図を作成し、それぞれ個別に分析を進める。
分析の第2段階として、全国及び、各県ごと に、分析された 1980年と 2000年のクラスター
分析及び、散布図、分類地図を直接比較しなが ら進める。ここでは、比較した状況を明確な数 値で捉えるために、数値操作を行い、 20年間の 移動状況が的確に把握できるように、数値を算 出している。この数値操作とは、 2000年のX軸 数値、 Y軸数値から、 1980年の両数値を引くこ とである。この操作は、 1980年から 2000年の 聞に散布図でどの方向にどれだけの量を移動し たかというものを求めている。散布図は両年の 平均をOとして、それからどれだけ離れている かという点で作成しているので、20年間の平均 の変化も加味されており、正確に 20年間の変 化を捉えることができる数値が得られる。
この操作によって得られた数値を元に、第1 段階同様、クラスター分析および、散布図を作 成し、グループの類型化、及び、個別分析を行う。
分析の第3段階として、これらの分析、及び 考察を踏まえ、総括を行う。
4. 総括と展望
地域性研究をベースに、47都道府県のデータ と、秋田県、滋賀県、徳島県の3県の市町村デ ータで、地域分析を行ってきた。分析目的の 1つ に、マクロ分析の結果と、ミクロ分析では、結 果にどのような相違点が見られるのか検証して いる。本稿の地域分析については、用いた指標 やサンプルの少なさが、問題点として挙げられ る。本稿の研究では、データの視点によって、
新たに見られる傾向が確認されたが、その信溶 性に疑問が持たれる。この点は、本稿に残され た課題であるが、地域性研究の2つの研究方法 である、類型論と領域論の統合の可能性を見出 せたことは、評価できることであろう。
地域性研究は、まだまだ新しい研究であると いえる。このような研究が、新たな発見の土台
となることを期待し、本稿の帰結とする。
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