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地域開発の事後的分析 -経済指標と社会指標による考察-

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経済分析

62号 昭和51年8月

☆地域開発の事後的分析

−−経済指標と社会指標による考察−−

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本 誌 の 性 格 に つ い て

本誌は,研究所員の研究試論である。この種の成果は研究所内部においても検討中のものである が,同時に現在研究所でどういう研究が進行しつつあり,どういう考え方が生まれつつあるかを外 部の方々に知っていただくと同時に,きたんのない批判を仰ぐことを意図するものである。そのた めに,掲載は研究員個人の名義であり,研究所としての公式の見解ではないことを含まれたい。

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経 済 分 析

62 号

1976.8 経済企画庁経済研究所

目 次

<分析>

地 域 開 発 の 事 後 的 分 析

−経済指標と社会指標による考察− 第1章 序 ···1 第2章 地域開発の歴史と諸問題···3 第1節 経済計画および地域計画の理念とその社会的背景···3 第2節 地域開発の問題点 ···6 第3節 対象地域の開発の経緯···7 (1)鹿 島 地 域···7 (2)坂 出 地 域···8 (3)秋 田 地 域···8 第3章 開発効果分析のための経済指標と社会指標···9 第1節 社会指標の系譜···9 第2節 社会指標に関する研究事例···10 (1)OECD「ファンダメンタルソーシャルコンサーンズ」···10 (2)国民生活審議会「社会指標」···11 (3)東京都「福祉指標」 ···13 (4)宮崎県「総合地域指標(TLP)」···13 第3節 本研究における経済指標と社会指標···15 第4章 経済・社会指標からみた地域社会の変容···19 第1節 経済指標の変動···19 第2節 社会指標の変動···23 第5章 地域開発計量モデルの構築···29 第1節 モデルの特徴およびその構造···30

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第2節 構造方程式の推定結果···34 (1)構造方程式と変数記号表···34 (2)構造方程式の説明と内挿テスト···39 (3)ファイナルテストの適合度について···65 第6章 シミュレーション分析···66 第1節 鹿島地域シミュレーション···66 第2節 能代地域シミュレーション···70 む す び···74 参 考 文 献···75 附 属 資 料···77 (1) 使用データ一覧表···78 (2) デフレーター···85 (3) 主要データの算出方法···85

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地 域 開 発 の 事 後 的 分 析

−−経済指標と社会指標による考察−− システム分析調査室 中 村 英 夫 ・ 武 藤 昭 光 尾 崎 博

1章 序

システム分析調査室では昭和43年に調査室が 発足して以来,PPBSの我国予算制度への導 入を図るために基礎的研究を続けてきた。この 間,米国において1961年(昭和36年)に国防総省, 1965年(昭和40年)他の民生省庁の予算制度に導 入されたPPBSの制度(予算要求の際プログ ラム要綱,特別分析書,プログラムおよび資金 計画書を添付する制度)は1971年(昭和46年) ニクソン大統領の時代に廃止されている。こ の廃止された理由についてはニスカネンレポ ートに詳しく述べられているが,一言でいえば, PPBSの本来意図された理念と,現実の制度 として予算制度に導入された手法および,そ の効果に余りにも大きな相違があったこと,ま た制度を受入れる土壌が十分に熟成されてい なかったことによると言っても過言ではない。 しかしこのことはPPBSの理念が否定された ことを意味するものではない。行政における合 理的な資源配分,サービス配分の考え方は我々 の常にめざすべき方向である。今後なお増 ※ 尚本研究にあたり,東京工大大学院の亀井敏郎 氏は,ほとんど共同執筆者にひとしい助力をおし まなかった。また秋田市,能代市,鹿島3町,諏訪 市,坂出市,益田市の市役所および関係県庁の方 々には,種々の資料を提供していただいたのみな らず,貴重な時間をさいて多大の御協力をいただ いた。これらの方々に心から感謝の意を表する。 加するであろう行政需要と予算執行においてこ のような基本的な考え方や,方向は生かされな ければならない。しかしPPBSが持った初期 の着想や方法を固執していては実際の行政の中 へ制度的にとり入れることはきわめて難しいと いわざるを得ない。近年,経済社会の発展に伴 なって,行政需要も増大,多様化し,そのため の行政施策の影響も複雑化,広汎化している。 ある目的のもとに採られる行政施策は社会活 動の複雑な因果連鎖の網の目を通して思いがけ ない結果を導き出す可能性を持つものである。 それゆえこの事前の検討においては関与する社 会システム全体の中で問題をとらえそれを可能 な限り科学的な立場に立って分析する必要性は 以前にまして大きいといわねばならない。それ ゆえ,政策の合理的,全体的評価を目的として 行政施策の影響をシステム分析的アプローチに よって明らかにすることは,現在必須であると 思われる。したがって我々がとるべき新たな研 究の方向は,ある行政施策を行ったとき,関与す るシステムの中でそれがどのような影響を及ぼ すかを調べ,この結果を多面的に事前評価する という行政分析の方法を作り上げることが重要 になる。このような観点から,我々は幾多の事 例を取り上げ研究を重ねて行かねばならない。 本調査ではこのような目的に沿って,いくつ かの都市における地域開発振興策に着目し,今 までに行われたその種の政策を追跡的に捉え, これの社会変動に対する影響分析を試みた。 昭和30年代から始まった経済成長政策によっ

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て,日本各地に工業開発を核とする地域開発が 行われて来た。昭和37年公布の新産業都市建設 促進法,および昭和39年公布の工業整備特別地 域整備促進法によって指定された地域は15新 産,6工特地域にのぼっている。これらの地域 では莫大な公共,民間投資の集中により,急激 に工業都市へ変貌したところもあれば,公共投 資と民間投資の不調和によって遅々として投資 効果が上らぬところもあった。また当時の開発 の究極の目的が,工場誘致によって,地域の所 得を向上させ住民の福祉を向上させることにあ ったにもかかわらず,経済的合理性を追求する あまり,住民社会や環境への適応を考慮するこ とが,ともすれば,見落されがちなところもあ った。その結果,産業基盤投資が先行し,公害 防止や生活環境整備が立遅れ,投資のアンバラ ンスによって日本全国に環境汚染,住民の開発 アレルギーなど種々の歪みを生じていることは 周知の事実である。さらに一方そのような国家 的投資よりとり残され,人口の急激な減少と公 共サービスの低下に悩む過疎地域をも生み出し た。 我々は,このような過去の経験から多くの教 訓を学び,それを次の施策に生かさねばならな 図1−1 商業機能と工業機能

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い。 そこで本論では,これらの地域社会を1つの システムとしてながめ,そこに投入された行政 施策がその社会の中でどのような影響を及ぼし たかを,過去にさかのぼって,その変動を追跡 し,しかも可能なかぎり全体的な視野に立っ て,システム内の因果連鎖を分析することを試 みた。ここでは,工業開発の行われた動態的な 都市と,みるべき産業開発が行われなかった静 態的な都市の経済的ならびに社会的指標を昭和 35年まで逆のぼってとらえそれらの時間的変動 を比較して眺め,社会全体のシステムを表現す る指標として妥当と思われる社会指標を選定 し,それらによって分析モデルを構築した。さ らにこのモデルを用いて,各地区において過去 に行われて来た政策投資の配分や規模,時間を 仮想的に変えてみることによってどのような結 果が導き出されるかを見ることとした。 研究対象地域としては大都市圏の直接的影響 を受けることの少ない地方都市でしかも,地域 面積や人口等,都市の規模が比較的類似してい るものを選定した。図1−1は主要地方都市の 市民1人あたりの卸小売業販売額と製造業出荷 額を示したものである。○印は昭和40年値で, △印は昭和45年値である。その間を結んだ直線 はその間の成長を示す。この直線が横軸に平行 になる程この間に商業機能が発展し,縦になる 程工業化が進んだことを示している。そこで, 工業化が著しく進んだ都市として鹿島三町,工 業化,商業化がどちらも同程度に進んだ都市と して坂出,諏訪,商業化だけが進んだ都市とし て秋田,工業商業共発展が他と比較してあまり みられない静態的な都市として能代,益田の6 都市を対象として選定することにする。 また今回の分析では,対象地域を市町村レベ ルとした。この理由は,できるだけ開発の影響 が指標の変化として直接的かつ明確に把握しう る行政単位であると考えたからである。

2章 地域開発の歴史と

諸問題

分析にはいる前に戦後行われた経済および地 域開発政策の経緯とその間に生じた問題点につ いて,ここで振返ってみよう。 第1節 経済計画および開発計画の理念とその 社会的背景 第二次大戦によって日本国土は壊滅的な打撃 を蒙った。終戦直後の日本は,国土は荒廃し, 物資は不足し,貿易も途絶し,植民地も喪失し てしまった。しかもその上,台風,地震等自然 災害が発生するという混乱した社会情勢にあっ た。このような状況のもとで昭和24年経済復興 計画が出された。この計画の基本的方針は,戦 災を振興し自然災害を復旧し,食糧を増産さ せ,産業の振興を図るという。文字通りの復興 計画であった。次にようやく,敗戦の処理から 国民が解放された頃,昭和25年に朝鮮戦争が勃 発し,我国は米軍の軍事物資調達の特需景気 で,予想以上に生産拡大が行われ,また講和条約 によって貿易が再開されたことにより,加工基 地として新しい設備をそろえた工業基盤整備の 必要性が高まった。朝鮮戦争後になると戦争特 需から脱却することが必須となり,日本経済自 立のため正常な貿易による経済成長実現に力が そそがれ,企業合理化促進法,港湾整備促進法 により,公共資金が,工業やその基盤の近代化 への投資を促進させ,また税制,利子などの優 遇措置も構ぜられるようになった。昭和26年の 経済自立三ケ年計画,および25年の国土総合開 発法はこのような社会情勢を背景にして,(1)水 力発電等の資源開発,(2)重点的地域開発,(3)既 成工業地帯の整備をスローガンにしている。こ れが資源開発中心の段階であった。 昭和30年代に入ると昭和32年に新長期経済計 画,35年に所得倍増計画が打出される。この時 代は日本経済が新たな発展段階に入り始めた頃 で,技術革新とともに,新しい生産設備を導入 した業種は一様に著しく成長をとげた。その結

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摘 要 国土 計画審議会 国土 総合開発審議 会 朝鮮 戦争 港 湾 法 土地 収用法 電源 開発促進法 農地 法 企業 合理化促進法 港湾 整備促進法 市町 村合併法 土地 区画整理法 日本 住宅公団法 工業 用水法 国土新幹線自 動車道建 設 法 自然 公園法 工業 用水事業法 工場排 水の 規 制に関 する 法律 地 域 開 発 の 課 題 1 戦 災復興 。 応 急的住宅建設 。 長 期的都市計画 。 大 都市への集中 抑制 。 地 方中小都市の 振興 2 災 害復旧 3 食 糧増産 。 農地改革と 関連した開拓 , 開墾事業 。 長期 的干 拓 ,灌漑 排水 事 業 4 産 業振興 1 資 源開発 2 重 点的地域開 発 3 既 成工業地帯 の整備 1 既 成工業地帯 の整備 主と して 4 大工業 地帯 2 首 都圏 の整 備( 大都 市過 密 防止) 3 後 進地 域よ り地 域格 差是 正 の要請 4 産業の 地域 分散 (所得倍増計画の太平洋ベ ルト地 帯構 想 ) 地 域 開 発 計 画 10 北 海道総合開発計 画 (第 1 次 5 ケ年計 画) 12 北 海 道 総 合開発 計画 (第 2 次 5 ケ年計 画) 7 首 都圏基本計 画 8 東 北開発促進 計画 11 九州地方開発促進計画 地 域 開 発 関 係 法 5 国 土総合開発 法 5 北 海道開発 法,首 都 建 設法 4 首 都圏整備法 5 東 北開発促進 法 5 北 海道東北開 発促進法 5 東 北開発株式 会社 4 首 都圏の近 効整備 地 帯 及 び 都 市開発 区域 の整 備に 関する法律 3 首 都圏の既 成市街 地 に お ける工業等 の制限に 関す る法律 4 九 州地方開発 促進法 経 済 計 画 5 経 済 復興計 画第 1 次試 案 5 経 済 復興計画 委員会報 告 1 自 立経済 3 ケ年 計画 12 経 済自 立 5 ケ 年計画 12 新 長 期経済 計画 年次 昭和 22年 23 24 25 26 27 28 29 30 昭和 31 32 33 34 表 2 − 1 − 1 地 域 開 発 政 策 の 経 偉 段階 復 興 の 段 階 資源開発中心の段階 工業開発中心段階

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特 別港湾 施設 整備特 別 措置 法 水資 源開発促進法 港湾 整備緊急措置 法 水資 源開発公団設 立 産炭 地域振興事業 団法 公害 対策基本法 新都 市計画法 大気汚染防止法,騒音防 止法 水質汚濁防 止法 , 海 洋汚 染防 止法 悪臭 防止法 世界環境会議 (ストック ホル ム) 自然 環境保全法 10 第 4 次中東戦 争 (石 油危 機)国土庁設 置 1 産 業の地方分 散 拠点開発を戦 略手段として 工業 の分散を図る (国 土利用の抜本 的再編成) 1 情 報化社会へ の対応 (新ネ ット ワークの形成 ) 2 地 域の特性に 応じた開発 3 環 境問題の積 極的克服 4 都 市農村 を 通じてのナ ショ ナル ミニマムの確 立 1 人間と 自然 のある べき 調 和 2 ナショナ ルミニマム ・ シ ビ ル ミニマム の確 立 3 開発構想 の具体化実 施 段 階 におけ る住民参加の ルール づくり を初めとする 開発体 制 づくり 10 四 国 地 方 開発促 進計 画 7 北 海 道 第 2 期総 合開 発 計画 10 全国総合開発 計画 2 東 北開発促進 計 画 (改 訂) 2 九 州地方 〃 〃 2 北 陸地方 〃 〃 2 中 国地方 〃 〃 2 四 国 地方開発 促進計画 (改 訂) 5 近 畿圏基本整 備計画 6 首都圏 基本 計画( 改訂 ) 6 中部圏基 本開発整備計 画 5 新 全国総合開 発計画 7 北 海 道 第 3 期総 合開 発 計画 4 四 国地方開発 促進法 12 中 国 地方開 発促進法 12 北 陸 地方開 発促進法 11 低開発 地 域工業開 発 促 進法 5 新 産業都市建 設促進法 7 近 畿圏整備法 7 工業整備特別地 域整備 促進 法 7 中 部圏開発整 備法 農村 地域工業導入 促進法 工業 再配置法 9 工 場立地法 国土 利用計画法 12 国 民 所得倍 増計画 1 中 期経済計画 3 経 済社会発展 計画 5 新 経済社会発 展計画 2 経 済社会基本 計画 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 地域格差是正主義の段階 過 密 過 疎 対 策 の 段

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果,既存工業地域への一層の集中という形で重 化学工業が進展した。これらの計画の基本的課 題は,既成工業地帯の整備,首都圏の整備,産 業の地域分散が主眼であった。次に既成工業地 域,大都市の発展によって,地方との格差が顕 著になってくると,各地域から格差是正の声が 高まった。昭和32年から,35年にかけて,地方 開発促進法が各地に続々と成立しているが本格 的に工業の地方分散を強力に推進したものは昭 和36年の低開発地域工業開発促進法,37年の新 産業都市整備促進法,昭和39年の工業整備特別 地域整備促進法であった。特に新産,工特両法 は拠点開発を戦略手段として工業の地方分散を 図るための,強力な法律で,全国に15新産,6 工特地域が指定を受け,それまで土地生産性の 低かった原野,畑地を工業用地に造成して,鉄 鋼,石油,化学,電力などの大規模な重化学工 業コンビナートが各地に形成されていった。し かし一方では東京,大阪,名古屋を中心とした 大都市圏への人口,資本の集中は著しく,過疎 過密が促進された。このような昭和30年代にお ける高水準の公共,民間投資によって,我国の 国際競争力は著しく増強され,昭和40年代の経 済発展の基盤がつくられていった。 昭和40年代になると本格的な国際化時代の到 来に対して,既応体制を強固なものにするため の産業体制づくりと,社会開発の要請が一層強 くなったが,また一方では,過密過疎が一段と 進展し,深刻な問題となってきた。このような 背景をもとに昭和44年に決定された新全国総合 開発計画は20年の長期にわたる初めての開発計 画であった。そしてその理念は基本目標として 次の4つの課題を調和せしめつつ,高福祉社会 を目ざして人間のための豊かな環境を創造する ことであるとした。 ① 人間と自然との調和を図り,将来の都市化 の進展に伴なって生ずると思われる自然への 国民の渇望に応ずるため,自然の恒久的保存を 行なうこと。 ② 全国土を有効に活用するため,開発の基礎 条件を整備して開発可能性を全国土に拡大 し,均衡化を図ること。 ③ 地域特性に応じて,それぞれの地域が開発 整備を行うこと。 ④ 経済社会の高密度化が進むにつれて,国民 生活に不安をいだかせぬよう,都市,農村を 通じて安全,快適で文化的な環境条件を整備 保存すること。 更に当面の課題として,次の2つの目標をか かげている。 ① 過疎過密対策としては大都市の諸機能再編 成と防災公害防止の面からの抜本的改造,また, 人口流出地域の効率的な産業開発と観光開発。 ② 地域格差問題については,生活水準格差是 正の観点から地方中核都市を中心に環境整備 を図る。 また,1年遅れて,昭和45年に決定された, 新経済社会基本計画は昭和45年から50年に至る 中期計画であるが,計画と課題として「人間性豊 かな経済社会をめざして」という理念のもとに 次の4項目をかかげている。①国際的視点に立 つ経済の効率化,ロ)物価の安定,ハ)社会開発の推 進,ニ)適正な経済成長の維持と発展基盤の培養。 いづれも,当時の経済社会情勢に即したバラ 色の展望を持った発展的計画であった。しか し,これらの計画が実行されていくうちに,前 半の高度経済成長により蓄積されていた歪みが 一挙に吹き出て来たのである。すなわち,公害 による環境汚染と開発に対する住民の反対姿勢 がそれである。その結果,周知のとおり,石油 ショックも加わって,高度成長政策に対する反 省がいや応なしに必要となり,工場立地法,国 土利用計画法,自然環境保全法等の成立によっ て,厳しい規制が行われるような体制になっ た。以上述べてきた現在までの経緯を年代順に 整理すれば表2−1−1のように示されよう。 第2節 地域開発の問題点 前節で見て来たような一連の経済計画,地域 計画によって我国の経済は驚異的に飛躍し,発 展を遂げたことは疑うべきもない事実である。 しかし,これらの諸計画は,「豊かなる人間社

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会を築くために」というスローガンに集約され ているように,究極の目的は社会福祉の向上を 願ったものであったにもかかわらず,その戦略 として鉄鋼,石油を中心とした重化学コンビナ ートを誘致し,地域の産業基盤を整備し,それ によって地域の生産を高め,ひいては住民の所 得向上を図るという方式であり,性急に経済的 合理性を追求するあまり,産業基盤の投資が先 行し,ややもすれば,公害防止投資や生活環境 の整備および土地利用計画が立遅れた。しかも これらの開発は各地でほぼ一様な方式がとられ たために全国各地に環境汚染や自然環境破壊, および地価の高騰をひきおこし,地域住民の開 発に対する不信感を倍加させたことも事実であ る。経済成長が地域社会や環境の適応能力以上 に進展したことにより,現在みるような社会不 安をひき起し,成長害悪論さえ生み出している が,国土開発という国家百年の大計はこれらの 批判を謙虚に受け入れると同時に,場合によっ ては,近視眼的と思われる批判に対してもこれ に耐え,開発によって我々が身をもって体験し たこれらの貴重な経験を次の政策に有効に生か さねばならない。このような反省にたって,昭 和48年の経済社会基本計画,昭和49年の国土利 用計画法および,工業関係法,公害関係法には ①人間と自然のあるべき調和を図る。②ナショナ ルミニマム・シビルミニマムの確立,③開発構想 の具体化および実施段階における住民参加のル ールづくりを初めとする開発体制づくり,が理 念としてとり入れられている。昭和48年秋の石 油価格の暴騰によって,ひきおこされた経済の 世界的不況によって,地域開発の投資速度も現 在はきわめて緩やかになっているが,この機会 こそ,過去の開発政策をじっくりと追跡し, 事後的分析を行う絶好の機会であるといえよ う。 第3節 対象地域の開発の経緯 我々が事例として取上げた6地域のうち,工 業による大規模,および中規模な地域開発が行 なわれ,それに基づいての社会変動が起ってい る。鹿島,秋田,坂出地域について工業開発の 経緯を簡単にふれておこう。 (1) 鹿島地域 鹿島地域は茨城県の東南部,鹿島灘に面した 地域で,昔から利根川によって背後地域と分断 された地形のため,交通の便に恵まれず,また 広漠たる砂丘地帯のため農耕地としての生産性 も低く,開発から立遅れた地域であった。しか し,地理的には東京から80kmという近距離で 水資源と,工業用地に恵まれ,しかも豊富な労 働力が期待出来ることから,この地域に掘込式 港湾をつくり,工業用地3,300haの一大臨海工業 地帯を造成しようという開発計画が策定され, 昭和38年から実行に移されて来た。そして昭和 48年までに,大企業28社が誘致され操業を開始 している。全体計画では工業生産額1兆5,517億 円,従業員30,446人の大コンビナートが形成さ れる予定である。開発経緯を年次別に示せば次 のようになる。 昭和36年9月 「鹿島臨海工業地帯造成計画」 (マスタープラン)茨城県作成 37年12月 マスタープラン改訂 38年4月 鹿島港重要港湾指定 7月 鹿島地区工業整備特別地域指 定 11月 鹿島港起工式 39年2月 用地買収開始 42年2月 鹿島地区工業用水道起工式 3月 国鉄鹿島線起工式 12月 鹿島臨海工業団地造成事業に 関する都市計画事業決定告示 12月 企業公募の結果23社の立地を 決定 43年4月 住友金属起業式 7月 知手住宅団地(13万m2)着工 8月 超高圧送電線,鹿島線着工 9月 国道124号線開発地域内着工 44年4月 住友金属工業圧延工場操業開 始 44年8月 鹿島港開港指定 45年4月 鹿島石油操業開始

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8月 国鉄鹿島線営業運転開始 47年10月 25万トンタンカー初入港 12月 鹿島地域公害防止計画策定 48年12月 工業団地造成事業工事完了 告 49年6月 波崎工業団地公募の結果15 の立地決定 (2) 坂出地域 坂出は讃岐平野の中央部に位置し,坂出港は 天然の良港であり,古来より備讃交通の要衝で 阪神∼関門間の中間港として機能し,栄えて来 た。また附近一帯は製塩業が盛んで塩田として 利用されていたが,近年塩田の廃止によって塩 田跡地を埋立て,そこに工場が立地し始めてき た。大規模な開発は,昭和40年に坂出港の前面 番ノ州地区の公有水面を埋立て,そこに重化学 工業を誘致し,また坂出港の機能を充実させ て,臨海工業地帯づくりに着手した時からであ る。現在では番ノ州地区には,川崎重工,三菱 化成,四国電力,吉田工業,アジア共石の5社 が立地操業している。また昭和51年度には本四 架橋建設の最初の地点に指定されており,今後 本州と四国を結ぶ拠点として飛躍的な発展が期 待されている。 昭和23年1月 坂出港開港場として指定 32年5月 中新開埋立工事(39,670m2 に着手 38年10月 金山新塩田埋立工事に着手 39年4月 番ノ州第I期工事開始 42年10月 川崎重工業操業開始 43年4月 番ノ州第II期工事開始 7月 松ヶ浦中桝塩田埋立て工事着 手(186,000m2 45年1月 四国電力操業開始 10月 松ヶ浦地区埋立完成 47年8月 西浜地区公有水面埋立完成 48年3月 番の州地区臨海工業用土地造 成事業(東部工事)開始 (3) 秋田地域 秋田は江戸時代佐竹藩20万石の城下町であ り,雄物川の河口港である土崎港を他藩との交 易の門戸として,また北廻り航路の日本海北部 における要衝として繁栄した。土崎港について は季節風と漂砂による河口閉塞対策のため明治 後半より,雄物川をショートカットして本格的 な港を築く運動が起り,大正6年から雄物川放 水路の改修が始まった。これは22年の年月を経 て完成したが,併せて河口の一部を埋立て茨島 工業地帯が生まれた。この間土崎港は秋田港に 改称され県管理の港となった。昭和40年に秋田 湾地区新産業都市の指定を受けると砂丘地帯を 一部掘込み,大規模な工業港を築造し,背後の 向浜,大浜地区に亜鉛製錬,火力発電,製紙工 場,木材関連の企業が誘致され,船川地区も含 めると従業員2万1,700人,工業出荷額1,666億 円の工業規模に達している。なお秋田湾地域は 更に大規模な開発の要請が高まっており,今後 の発展が期待されている。 昭和26年3月 秋田港重要港湾指定 39年10月 秋田県工業化促進条例施行 昭和40年1月 飯島地区工業用地造成開始 1月 秋田港関税法上の開港指定 1月 奥羽本線複線・電化着手 1月 秋田市下水道着手 11月 秋田港地区新産業都市の指定 42年1月 向浜地区工業用地造成開始 4月 秋田県工業用水道着手 44年4月 船起バイパス着手 45年4月 手形山住宅団地着手 8月 東 北 電 力 秋 田 火 力 操 業 開 始 (飯島) 47年1月 東 北 製 紙 秋 田 工 場 操 業 開 始 (向浜) 1月 秋田臨海鉄道操業開始 47年5月 秋田製錬秋田工場操業開始

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3章 開発効果分析のた

めの経済指標と社会

指標

第1節 社会指標の系譜 福祉という概念は政策目標としてみるなら ば,政策手段が目標達成にどの程度役立ってい るかを明らかにするという観点から何らかの形 で計量されうるものでなければならない。国民 所得の概念体系は,年々の国全体の経済活動の 規模を示すことによって,国民福祉について も,そのかなりの部分を説明している。特に国 民が市場で財貨を購入し,それを消費するとい う経済面での福祉の状態についてはかなり正確 に示しているといえよう。 確かに生産水準はそれがまだ低い段階では福 祉水準とプロポーショナルであり,したがって そのような社会ではこれら生産水準を示すGN P,NIは,社会の全体的福祉水準を示す最も 適切な代表指標であるといえよう。 なぜならば,未成熟な社会にとっては生産拡 大によって可能となる消費水準の向上のみが, 国民の満足度の向上に直接的に結びつくからで ある。 しかし,近年経済の高度な発展に伴なって生 産,所得の水準が上昇し,経済社会の機構も複 雑化するにつれて,公害の激化,交通事故の増 大など福祉を阻害する要因があらわれてきた し,他方国民の意識構造も変化し,市場で購入 する財貨サービス等だけでは満足できないよう な欲求の多様化が生じてきた。その結果,従来 ともすれば生活の量的側面に目を向けていたも のが,しだいに質的側面を重視するようにな り,GNPを中心とした経済指標だけでは国民 の真の豊かさの水準を表わすことができず,国 民生活の状態をあらわしうる福祉指標を開発し ようという動きがでてきた。これらの動きは, 大別すると二つに分類されうるであろう。 まず第一の方法は,アメリカで開発された

W.Nordhaus と J.Tobin に よ る MEW (Measure of Economic Welfare)及び我国 の経済審議会NNW開発委員会によるNNW (Net National Welfare)である。

ここでは「NNW」の基本的なアプローチの 仕方を紹介することによって,この第一の方法 の考え方を明らかにしておく。 「NNW」は経済活動規模の拡大より国民福 祉の増大を基本的な計画目標とし,国民所得フ レームが経済計画の中で果す役割の重要性を肯 定しつつ,これを補完し国民福祉をよりよく表 現する手法を開発しようとする考え方である。 アプローチの方法は ① GNPの福祉指標としての機能を強化す る。 ② 社会資本ストックから得られる便益を擬制 的に評価計上し,他方政治社会機構維持の経 費(defensive expenditures)を消費から控 除する。 ③ 社会的・目標別国民総支出を推計する。 ④ 非貨幣的利益(生産物の質の向上,余暇時間 の増大等)を貨幣に換算して計上する。 といった形である。 ここでの構成項目は,①NNW政府消費,② NNW個人消費,③政府資本財サービス,④個 人耐久消費財サービス,⑤余暇時間,⑥市場外 活動,⑦環境維持経費,⑧環境汚染,⑨都市化 に伴う損失といった9つに分類されており, ⑦,⑧,⑨の3項目をマイナス要因としてい る。「NNW」の特徴は,全ての項目が貨幣単位 で示されるところから指標の総合化にはこれら を単純に加えることによって算出されうる点で ある。但しnon-monetaryなものをmonetary な形で表現しようとするためにそこで選択され る指標も自づから貨幣的評価が可能なものに限 定されるという点で,どうしても恣意的な面が 入らざるをえないという欠点をもっているとい える。 第二は,社会指標(Social Indicators)であ る。この具体的指標に関しては,次節でいくつ かの研究事例をピックアップして紹介するの

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で,ここでは,社会指標作成の目的及びその概 念について簡単に触れておくにとどめる。OE CDの定義によれば,社会指標作成の目的は, 「経済社会計画の主たる最終目標であるような 社会需要,欲求の問題点を識別し,これらの最 終目標の達成あるいは,それからの退歩を測定 表示し公共の議論と政府の意思決定を啓発改善 していくこと」となっている。 ここでいう経済社会計画とは,政策の目標分 野を定め,その各々について目標値を設定し, それを達成するための政策手段を明らかにする ことである。それ故社会指標のもつ役割はまず 第一に社会目標の体系を明らかにする点に求め られよう。そして第二は,社会指標は現状評価 のための手段であるとともにシビルミニマムや ナショナルミニマムのような規範的な目標概念 に結びつけることも可能となろう。 このような目的に基づいて作成された社会指 標は,前述したNNW,MEWなどとは,その 表現を異にすることになる。すなわちNNWや MEWが生活基盤のそれぞれの状態を貨幣的一 元化によって表わそうとしたのに対し,社会指 標では無理に貨幣的評価をそれらに与えようと はせず,むしろ実物表示(指数化等)によっ て,そのまま社会の状態指標を表現しようとす るものである。内容的には特に分配ないしは格 差を表わす指標が登場する。確かに,この方法 によれば,社会の状態をかなりの程度までは, ありのままに表現することは可能であろう。し かしながらその短所は各々の指標がそれぞれ違 った単位で表現されているために指標の総合化 に大きな問題を残していることである。(指標 の総合化に関してはDrewnowskiの提案した スライド・ウエイト方式あるいは,その他いく つかの方法が開発研究されてはいるが,それら はいずれも一長一短をもつとともに,全体とし てはどの方法も満足すべきものにはなっていな いのが現状である)。以上みてきたように,G N P o r N I → M E Wo r N N W → S I と い う 一つの流れは,それぞれが独立してきたわけで はなく,あくまでもG N P ないしは,N I のみ では,表現しきれない国民の福祉状態を補完す る意味で開発研究されてきたものであり,従来 もっていたGNP,NIの指標としての価値を 決して軽視するものでないことはいうまでもな い。 第2節 社会指標に関する研究事例 前節では,社会指標が開発されるにいたった 経緯,目的,及びその概念について説明してき た。そこで本節では,社会指標の具体的研究事 例 と し てO E C D の「Fundamental Social concerns」。国民生活審議会の「社会指標」,東 京都の「福祉指標」,宮崎県の「総合地域指標 (T L P )」を紹介し,それぞれの基本的なアプ ローチの方法,考え方,及び具体的指標比較を 試みることにする。但し,指標については,そ の数が多数に及ぶため,その中の代表的なもの を選んで掲げることにする。

(1) O E C D「Fundamental Social Concerns」 1970年5月のO E C D 理事会において「経済 成長は自己目的ではなく,むしろよりよい生活 条件を創り出すための手段である」ということ が強調された。この理念に基づいて作成された Social Concernは人間の福祉にとって基本的 かつ直接的な重要性をもつような願望や関心事 を表わすものが選択されており,手段あるいは 関接的な重要性しか持たないものは除外されて いる。 この基準があることによってSocial Concern の数は厳選されてくるが,これは他の研究事例 と比較するときの大きな相異点として重要な点 であろう。 人間の福祉にとって最も重要な目標として 8つのsocial Concern(S.C)が設定され, それぞれのS.Cの目標領域に応じて何が重要 かが識別されている。これがFundamental Social Concerns(F.S.C)と呼ばれるもの で24の項目によって構成されている。そして, F.S.Cのうちなお細分化が必要なものについ て,Sub concern(S.C)という形でブレー クダウンするといったヒエラルキー方式がとら れている。

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但し各々の目的達成度を計測する具体的アウ トプット指標はまだ完成されておらず現在作業 中 で あ る 。 表3− 2− 1に OECDの F.S.C の 一 覧 表を示す。 (2) 国民生活審議会「社会指標」 国民生活審議会による社会指標の研究は基本 的にはOECDの考え方を参考にしながら,我 国の実情に適合する形でその作業は進められて きた。 その社会指標体系は,社会のパフォーマンス を裁定するために福祉にとって重要度の高いも のとして,10の目標を設定している。 この目標を中心としてOECDと同様トッ プダウン方式により,Fundamental Social Concern24→Sub-Concern77→Sub-Sub- Concern→Indicatorsといった構成になって

表3−2−1 OECDのFundamental Social Concerns Social Concern Fundamental Social

Concern Sub Concern

A 健 康 1 生涯に亘る健康な生活 2 健康をそこなった際の 損害 イ)保健活動の質 ロ)同普及度 ハ)障害者の社会 参加 B 学習による個人開発 1 基礎的能力の習得 2 自己啓発活動 3 職業上必要な能力習得 4 学習途上の満足度 5 文化遺産の維持と発展 イ)経済・社会的に不利な児童の基礎学力の水準到達 ロ)障害児童の教育サービス ハ)一般児童の基礎学力水準到達 C 雇用と勤労生活の質 1 有利な雇用機会 2 勤労生活の質 3 勤労生活の満足度 イ)労働条件 ロ)稼得と付帯便益 ハ)時間と有給 ニ)雇用保障 ホ)昇進の見込 ヘ)労使紛争 上記と同様 D 時間と余暇 1 時間使用の自由度 イ)労働時間の弾力性 ロ)余暇機会の得易さと質 E 財・サービスに対す る支配 1 支配力 2 物的窮乏者の数 3 分配的平等性 4 消費環境 5 経済的安定 イ)相対的貧困の程度 ロ)富の構造の分散度 イ)消費のための情報入手 ロ)満足度 イ)偶的事項に対する補償 ロ)義務的支出の援助 F 物的環境 1 居住条件 2 環境汚染 3 自然環境の利用 イ)住居価格 ロ)広さと有用性 ハ)近隣環境の快適性 イ)大気 ロ)騒音 ハ)水 ニ)土地等 イ)水管理 ロ)土地管理 ハ)景観管理 等 G 個人の安全と法の執 行 1 暴力・被害・苦痛 2 法執行の公正 3 法執行に対する信頼 イ)人間 ロ)財産 ハ)危機感 イ)刑法 ロ)民法 ハ)行政訴訟手続 H 社会的機会と社会参 加 1 社会的不平等 2 コミュニティ生活と社 会参加 イ)社会階層間の不平等度 ロ)社会的移動の機会 ハ)不利な立場の集団の地位

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表3−2−2 国民生活審議会の社会指標 Social

Concerns

Fundamental Social

Concerns Sub Concerns Indicators

A 健 康 1 健康で長生きする 2 健康増進の社会的 条件 イ)健康阻害程度の減少 ロ)より高い健康の享受 医療水準の向上 死亡率,平均寿命,傷病率,身障率 体位水準,体力水準,呼吸機能,栄養水準 医療施設数,ベット数,医師数,医療費 B 教 育 ・ 学 習・ 文化 1 基礎教育水準 2 高等教育水準 3 自己啓発活動水準 4 文化環境水準 幼児及び義務教育 高校及び大学教育 学校以外の学習活動 幼椎園普及率,児童当り教員数,特殊教育 就学者 進学率,学校建物面積 書籍発行冊数,通信教育受講者数,公民館数 文化財指定件数,博物館入館者数 C 雇 用 と 勤 労生活の質 1 有利な雇用機会 2 勤労生活の質 就業機会及び情報の充実 イ)労働条件の向上 ロ)労働環境の向上 求人倍率,職安数,職安による採用者数 実質賃金,労働時間,休日数,福利費 労働災害率,日雇労働者率 D 余暇 1 生活時間の自由度 2 自由時間での生活 向上 自由時間の増大 イ)スポーツ・娯楽活動 の豊かさ ロ)文化的・創造的活動 の豊かさ 一週間当りの自由時間,連続休暇日数 スポーツ・娯楽施設水準,利用する時間数 図書館蔵書数,利用者数,美術館数,テレ ビ視聴時間 E 所 得 ・ 消 費 1 資産・所得の増加 2 資産・所得格差 3 資産・所得の安定 4 消費環境の好転 所得・消費・資産水準の 向上 経済的格差の縮少 イ)所得・資産喪失の補 償 ロ)実質所得の安定 自由競争確保と情報充実 実質国民所得,エンゲル係数,貯蓄残高, 固定資産 可 処 分 所 得 格 差 ,資 産 格 差( ジ ニ 係 数 ), 生 活 保護世帯数 失業保険適用率,労災保険適用率,損害保 険契約率 消費者物価指数 商品の不合格化数比率 F 物的環境 1 居住状態 2 有害物質の被害 3 災害による被害 4 良好な自然環境 イ)住宅の広さ及び費用 の軽減 ロ)住宅関連機能の充足 汚染被害の減少 自然及び人的災害の減少 植物の保全 低居住密度住宅居住者比率,持家取得価格 上水道普及率,ごみ処理率,電話普及率 環境基準不適合地域の人口,警報発令日数 風水害面積・火災件数,地盤沈下 植生自然度における良好な地域の面積 G 犯 罪 と 法 の執行 1 暴力・犠牲・苦痛 2 法執行の公正 3 国民の信頼 犯罪による被害の減少 人件浸害の危険の減少 法執行機関への信頼度 傷害発生件数,窃盗発生件数,交通犯罪件数 刑事補償件数,保護観察中の再犯率 意識調査によって信頼度を測定 H 家族 1 家族生活機能 2 家族の解体化 家族間の信頼関係 離婚,家出等の減少 少年犯罪数,一人ぐらし老人数,母子世帯数 離婚率,家出人受理件数,老人自殺数 I コ ミ ュ ニ ティの質 1 住民参加の団体・ 組織 2 コミュニティサー ビス福祉施設 住民の望む組織の存在 施設整備とサービス享受 参加率,満足度(意識調査) 住民の利用程度,満足度(意識調査) J 階 層 と 社 会移動 1 階層の不平等 2 社会移動の容易さ イ)社会階層における不 平等の減少 ロ)性別階層における不 平等の減少 地域・階層移動の容易さ 学歴別所得格差,企業規模別所得格差 男女別賃金格差,性別求人倍率 都市と農村間の人口移動率,低所得階層人口

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いる(表3−2−2)。ここで注意しておかな ければならないのは,最終的アウト・プット指 標としてのIndicatorは指標選定の困難性に よりインプット指標で代理せざるを得ない場合 があることである。(例えば,教育水準の向上 に関しては,教育環境が上昇することによって 受ける便益が,本来そのIndicatorとなるべ きであるが,事実上その便益を測ることが難し いために,その施設の整備水準−先生一人当 たりの生徒数等−を代理指標としている)。 これらインプット指標をIndicatorとして積 極的にとりいれるのは①行政が福祉向上のため に,どの程度努力しているかを明示すること, ロ)将来の社会計画に活用するには,財源配分の 意味からもインプット・アウトプット指標を体 系的にとらえておく必要があること,ハ)国民の 関心がより具体的なインプット指標(例えば病 院,医者の数等)にあることなどの理由による ものである。 (3)東京都「福祉指標」 東京都民の福祉の状態を指標化しようとする 目的で,行われたものに富永健一氏を中心とし て開発された東京都の「福祉指標」がある。 この研究においては,福祉を都民の欲求充足 の状態として定義し,「欲求の成分」と「欲求充 足に関する部門」という2つの軸を設定してい る。前者に関しては,国民生活審議会のSocial Concernと,ほぼ同様の形で10の分野に分類 されており,後者については 個人生活指標 生活環境指標 社会制御指標 といった3 つの部門に区別されている。 以上2つの分類軸をクロスさせることによっ て福祉の状態を分類する領域が構成される。さ らに,福祉指標の分類軸の設定には,一定期間 の福祉の流れの状態とともに,これまでの福祉 の蓄積をみるためにフロー指漂とストック指標 の区別も導入している。このような形で分類軸 を設定した後に,それぞれの領域を代表する指 標を選択するという方法がとられている(表3 −2−3)。 また,指標の総合化の点に関しては,基本的 には,Drewnowskiの3基準点方式を踏襲し ているといえる。但しDrewonwskiのO.M.F (O=survival point,M=poverty point,F =bull satisfaction point)という3基準点方 式は低開発国を対象としたものであるために, 東京都ではこれをM(minimum satisfaction point),F(full satisfaction point)の2基 準点方式に改めている。そして,実物量で示さ れた200余りの指標(最終的には79個の指標に 集約)のそれぞれに,社会的規範としての標準 を設けている。これをチェックするためのプロ セスが各分野のエキスパートによる判定であ る。 こうして,例えばM点=0,F点=100とし て,一つ一つの指標に点数をつけることによ り,美物量で示された全ての社会指標を共通の 尺度である点数によって変換している。 (4)宮崎県「総合地域指標(TLP)」 TLPは,福祉を 人間の満足できる状態 と定義することによって,福祉の状態を評価す る基準となる指標の概念体系を,人間の満足感 から組立てている。そして,この人間の満足感 を大きく3つのカテゴリーに分類して考える (表3−2−4)。まず第一は生活基盤水準であ る。例えば自然気象条件,地理的条件,都市化 の進展の程度人口構成等,生活や福祉の水準か らはやや間接的になるが,生活を支えていく上 で大きな影響をもつと思われる。第二は,生活 行動水準である。これは,個人サイドの環境条 件であり,例えば,収入,消費,住宅水準,進 学状況等の豊かさを,中心としたものである。 第三が,生活環境水準である。これは第二の生 活行動水準が個人サイドの条件であったのに対 し,道路,上下水道,医療施設等といった社会 的環境の問題をとらえている。但し,生活環境 水準に関しては,領域が広すぎるために次の3 つに分類している。 ①公共事業的な社会資本の整備状況,②民間 ベースのサービス機能,③行政ベースでのサー ビス機能 なお,合計200余りの指標選択に関しては,

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(△は,福祉と負の相関をもつことを表わしている) 表3−2−3 東 京 都 の 福 祉 指 標 個 人 生 活 指 標 生 活 環 境 指 標 社 会 制 御 指 標 フロー 個人所得,△エンゲル係 数 家計消費支出額 1人当り小売販売額,△ C P I 1人当り生産所得 国民年金受給額,生活保 護費 老令福祉年金額,中央卸 売市場取扱量 A 所得・消費 ストック 貯蓄残高 小売業店舗数 消費生協数 フロー カロリー摂取量,△乳児 死亡率 精神病者数 老人医療給付総額 B 健 康 ストック 平均寿命,体位(身長, 体重,胸囲) 運動能力(走力,跳力) 病床数,医師数 看護婦数,薬剤師数 都立病院数,保健所数 フロー 世帯当り電気消費量 年間住宅建設戸数,△地 価上昇率 新設住宅床面積,住宅充 足率 都営住宅供給戸数 平均ゴミ収集頻度,△住 宅競争率 C 住 生 活 ストック 一人当の畳数,持家比率 △間借比率 水洗便所普及率 △住宅不足戸数 都 営 住 宅1戸当り床面積 上下水道普及率,ゴミ処 理率 フロー △月間実労働時間 求人倍率,△労働災害率 職安紹介による採用件数 D 労 働 ストック 労働組合組織率 ホワイト・カラー比率 失業・労災保険加入率 フロー 月間余暇時間,旅行回数 社会教育予算額 E 余 暇 ストック ピアノ普及率,カラーT V普及率 都市公園面積 公共図 書館数,公 共体育 館数 フロー 幼稚園就学率 高校進学率,大学進学率 義務教育公費負担率 教育費国庫負担額,私学 助成額 高校奨 学生率 ,教 育都予 算額 F 教 育 ストック 生徒1人当り運動場△生/教員比率 特殊学校学級率 フロー 母子相談件数,△離婚率 △少年犯罪発生件数 老人ホームヘルパー訪問 回数 G 連 帯 ストック △被保護世帯数 老人ホーム定員数,老人 クラブ数 フロー △通勤時間 鉄道輸送人員 △地下鉄混雑率,△道路 渋帯度 地下鉄年間投資額 道路・街路投資額 H 交通・通信 ストック 自動車台数,電話普及率 道路総延長,公衆電話数 道路舗装率 フロー △交通事故件数,△刑法犯発生件数 刑法犯検挙率 I 安 全 ストック 生命保険加入率 警察官数,歩道橋数 フロー △公害苦情件数 △SOx濃度,△CO濃度 △NO2濃度,△地盤沈下 量 公害防止資金貸付融資額 J 自然環境 ストック 工業用水道使用率 河川改修延長,自然公園 面積

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恣意性を排除し,カテゴリー自身を体系的に引 き出す方法として因子分析の手法を用いてい る。これは福祉に関する300の因子を府県別に クロスセクションデータとして集め,事前にい くつかの柱を立てて分類しておき,各項目の中 に入っている20∼30の変数で因子分析をしてい る。また,アンケート調査に数量化理論を適用 することによって住民の価値観や生活意識など 主観的な要因を計量化し,指標の総合化及びウ ェイトづけを行っている。 表3−2−4 宮崎県総合地域指標カテゴリー指標 カ テ ゴ リ ー 指 標 A 生 活 基 盤 日照 時 間 , 人 口 増 加 率 , 純 生 産 ,商 業 販 売 額 ,住 宅 難 率 , 自 然 公 園 面 積 ,CO及 びSO2排出 量 , 東 京 ま で の 時 間 距 離 , 事 業 所 数 , 一 人 当 り 分 配 所 得 , 県 外 就 職 率 , D I D 人口密度,完全失業者,老年人口指数,財政規模等 B 生 活 行 動 住宅 当 り の 室 数 , 海外 旅 行 者 数 ,自 動 車 普 及 率, 電 話 普 及 率, 進 学 率 , 電灯 消 費 量,体 位水準 ,交通 事故死 傷者率 ,労働 災害危 険率,乳児死 亡率,平均収 入・支 出 , バス乗用車輸送人員,図書館閲覧者数,耐久消費財普及率 そ の 1 上水道 普 及 率 , 道 路 舗 装 率 , 一 人 当 り 都 市 公 園 面 積 ,8畳未満の住宅率,公害苦 情 陳 情件数,道路延 長,街 路面積,ごみ ,し尿処 理率 ,社会資 本ス トック,立体 交 差率, 歩道延 長,D I D 面積の割合等 そ の 2 ユ ース ホス テル,国民 宿 舎数,飲食 店 数,ス ーパ ー マーケ ット数 ,郵便 局数 ,喫 茶店数 ,金 融 機関数 ,百 貨 店売場 面積 ,公衆電 話台数 ,プー ルの 数 ,大学 の数 ,生 徒1人当り校舎面積,各種学校数,バス・タクシー台数等 C 生 活 環 境 そ の 3 社 会資 本ス トック ,火災 件数 ,消 防ポ ンプ台 数 ,派 出所数 ,医師 数,病床 数,無 医地区人 口, 乳児 死亡 率, 体位 水準 ,生 活保 護率 ,伝 染病 ,食 中毒 罹病 率, 警察 官 数,保 健所受 診人員 ,児童 福祉施 設数等 第3節 本研究における経済指標と社会指標 第1節では,社会指標が開発されてきた経 緯,第2節では社会指標に関する4つの代表的 研究事例をみてきたわけであるが,本節では本 研究でとりあげた経済指標と社会指標選定の基 本的考え方について述べることにする。 地域開発政策の開発効果を分析すためには, それをどういった指標で捉えるかが重要な問題 である。 従来行われてきた多くの地域開発分析の研究 は,地域の経済的側面に焦点を当てた,地域経 済へのインパクト分析が中心であったといえよ う。 確かに,地域経済全体の変化が,地域住民の 生活水準をかなり部分規定するといった考え方 からすれば,開発効果測定のための経済指標の 重要性は,非常に大きなものであるといえる。 しかし,住民の日常生活の基本的要件は,そ ういった経済的要因によってのみ全て規定をさ れているわけではなく,その他の要因(社会的 要因)にも大きく依存しているのである。 このような観点から,開発効果表示のための 指標として,地域の経済構造を示す経済指標お よび,住民の生活水準−−福祉水準−−を示す 社会指標を選定した。(ただし本研究では,通 常行われている経済的側面へのインパクト分析 というよりは,むしろ社会的側面へのインパク トが,分析の中心であるために,社会指標の選 定に焦点を当てている) 経済指標としては,第5章の計量モデル構築 のために必要な指標を中心として 選 定 し て い る。 開発による地域経済構造の変化を把握するた めに,産業は第1次,第2次,第3次産業の三 つに分類している。 各産業の労働力および生産所得の推移が,そ

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の地域の工業化の進展度(経済の発展段階)を かなりの程度表現しうるからである。 各々の経済指標選定の理由については,多言 を要しないと思われるので,以下にその指標群 を列記しておく。 人 口……総人口,転入者数,転出者数 労働力……第1次,第2次,第3次産業就業 者数 生 産……第1次,第2次,第3次産業生産 所得 分 配……個人所得 財 政……市町村税収,歳入,歳出 資 本……第1次,第2次,生活基盤,運輸 基盤,公共資本ストック,民間資 本ストック その他……製造業出荷額,商業販売額,経営 耕地面積 さらに,社会指標については,第2節でとり あげた4つの代表的研究事例を参考にしながら 以下に述べるような考え方で選定している。す なわち,社会の福祉の状態を表わすのに,必要 欠くべからざる関心事として11の基本目標を設 定した。 A健康,B教育,C文化・情報,D労働,E 余暇,F所得消費,G安全,H住居,I自然環 境,J交通,Kコミュニティがその内容であ る。これらは,国民生活審議会あるいは,OE CDの分類と,ほぼ同様の構成となっており, いわゆるSocial Concernと呼ばれるものであ る。11のS.Cそれぞれが,福祉向上の観点か らどういった意味を持っているかを明らかにす ることによって,次のステップであるFanda- mental Social Concernが決定される。すな わち,例えば「健康」というS.Cであれば 健 康とは何か? という設問に対する回答 肉体 的・精神的に病気にならないこと , もし病気 にかかったならば早期回復が可能であること がF.S.Cを構成する形をとっている。 また,F.S.Cをより具体的に説明するため に,もう一歩ブレークダウンしてSub Concern を説定している。このSub Concernに対応した Indicatorsを選定することが最も困難な点(恣 意的な要素が入り込む余地が大きい)である が,できるだけ項目の代表性(当該福祉の領 域)包括性(地域住民全体),恒常性(時系列 変化),計量化可能性を勘案しかつ各事例研究 の公約数的要素をとり入れて選定した。 しかしながら,我々の研究の対象地域が市町 村レベルであるということが,常に脳裡にある ために,自然,市町村レベルでは入手不可能なデ ータを前もって捨象するという恣意的な面は否 定しえない。他方,こういった指標は無制限に 選定していけば,きりがないわけであるから, できるだけ少ない指標によって,よりよくその 領域を表現しうるように心がけた。 そこで以下では,我々の研究におけるSocial Concern,Fundamental Social Concerm, Sub Concern,Social Indicatorsといったヒエ ラルキーを掲げ,それぞれに対する意味づけを 明らかにしておく。 < 社 会 指 標 体 系 > A 健康フレーム 1 肉体的,精神的に病気にならないこと イ)予防医療水準が充実していること………保健所受診人員 ロ)体力水準が高いこと………体位水準(身長・体重・胸囲) ハ)死亡・傷病の危険が少ないこと………死亡率,傷病率 2 病気にかかったら,早期回復が可能であること イ)医療機会が多いこと………医師数/人口,ベット数/人口,医療施設/人口 ロ)医療の質が高いこと………医師一人当り患者数,看護婦数/人口 B 教育フレーム 1 学習機会が平等に与えられていること

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イ)肉体上の欠陥者に対する教育機会が平… … … 特 殊 教 育 就 学 者 / 同 必 要 者 数 等であること ロ)経済的困窮者に対する教育機会が平等… … … 義 務 教 育 公 費 負 担 率 であること 2 教育内容が充実していること イ)物的環境が良好なこと………学 校建 物・ 土 地 面 積/生徒数 ロ)教育の質が高いこと………教員数/生徒数 3 学習意欲が高まること イ)より高い教育への意欲が増大すること… … … 高 校 ・ 大 学 進 学 率 ロ)学校教育以外の学習訓練への意欲が増… … … 職 業 訓 練 所 受 講 者 数 大すること C 文化・情報フレーム 1 情報機会が多いこと イ)情報入手が迅速かつ多くあること………新聞発行部数 2 文化・芸術に接する機会が多いこと イ)施設が整備されていること………美術館数,博物館数 ロ)利用が活発に行われていること………上記利用者数 3 知識吸収が活発に行われていること………図書館蔵書数,書籍販売数 D 労働フレーム 1 能力に応じた有利な職業,選択ができること イ)雇用機会が多いこと………求人倍率,職安紹介採用率 ロ)雇用が安定していること………失業率,日雇労働者率 2 労働条件が良くなること イ)賃金が高いこと………実質賃金 ロ)労働時間が短かいこと………週所定(実)労働時間 ハ)福利厚生が充実していること………法定外福利費 3 安全な労働環境が確保されていること…………労働災害率 E 余暇フレーム 1 生活の中における自由時間が多いこと イ)日常生活の中での自由時間が増大す…………週当り自由時間(実労働時間との差) ること ロ)まとまった自由時間がとれること………年間非出勤日数 2 自由時間の過し方の質が向上すること イ)施設(環境)が整備されていること…………娯楽施設数,スポーツ施設数 ロ)利用が活発になること………上記利用者数 F 所得・消費フレーム 1 物質的に豊かな生活が享受できること イ)所得水準が高いこと………世帯当り年収 ロ)資産が多いこと………貯蓄残高,固定資産保有高 ハ)消費水準が向上すること………エンゲル係数,自家用乗用車保有率,カラー TV保有率

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2 物質面での生活の安定が維持されていること イ)所得の安定が保たれていること………消費者物価指数 ロ)所得・資産喪失の補償が十分なされる………労災保険適用率,火災保険契約率 こと 3 豊かな生活が平等に享受できること 所得・資産格差が少ないこと………所得階層別人員構成・ジニ係数 G 安全フレーム 1 犯罪・災害による被害からの危険が少ないこと イ)肉体上の危険が少ないこと………傷害発生件数,交通事故件数 ロ)財産上の危険が少ないこと………窃盗発生件数・火災発生件数 2 犯罪・災害からの安全のために社会的防衛がなされていること イ)人的環境水準が向上すること………警察官数/人口,消防署員数/人口 ロ)物的環境水準が向上すること………消防自動車数 H 住宅フレーム 1 居住の快適さが充されていること イ)住宅の広さが十分であること………一人当り畳数,一戸当り住宅面積 ロ)住宅関連機能が充足されていること…………上下水道普及率,電話普及率 ハ)周辺施設の利用が容易であること………バスの運行間隔 2 住宅利用のための費用が少ないこと イ)住宅費用が適度であること………月当り住居費/月収 ロ)住宅取得が容易であること………持家比率,地価上昇率 Ⅰ 自然環境フレーム 1 有害・不快な物質(現象)による被害が少ないこと イ)大気が汚染されていないこと………亜硫酸ガス濃度,一酸化炭素濃度 ロ)水が汚染されていないこと………シアン,水銀濃度 ハ)騒音による被害が少ないこと………騒音レベル ニ)土壌汚染による被害が少ないこと………カドミウム,六価クロム濃度 2 人間の自然への欲求が充される環境状態が維持されていること イ)緑が保全されていること………緑地面積比率 ロ)自然に接する機会が多いこと………自然公園一人当り面積 J 交通フレーム 1 地域間の移動が容易にできること イ)道路が整備されていること………道路舗装率 ロ)公共交通機関が整備されていること…………鉄道輸送人員 2 移動が安全かつスムーズに行われていること イ)道路混雑度が少ないこと………道路混雑率,交通事故件数 K コミュニティ・フレーム 1 住民間の連帯意識があること イ)コミュニティ形成の場が存在すること………公民館数,老人クラブ数 ロ)住民参加が活発であること………上記利用者及び参加者数 2 社会的規範が維持されていること イ)他人に迷惑をかけずに生活していること……刑法犯発生件数

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4章 経済・社会指標か

らみた地域社会の変

第3章では社会指標の立場から,その要請の 背景,考え方,そして具体的指標の選定を行 い,体系づくりをめざしてきたわけであるが, 地域社会の変化を捉えるに際にはそれのみでは 決して充分とはいえない。地域全体の経済状態 を表わす経済指標とのかね合いで,捉えること が必要である。当然のことながら,地域社会の 経済変化が社会指標の変動に大きく影響を与え るからである。 そこで本章では,第5章のモデルの構築に先立 ち,地域開発の影響を経済指標および,社会指 標の両面からとらえ,地域全体の社会変化をグ ラフによって考察することにする。グラフによ るタイムシリーズ変化およびクロスセクション 比較は,それぞれの地域の地域特性を,明確に 表わしており,次章のモデル構築の際の因果連 鎖関係を考えるのに大きな手助けとなりうる。 本来収集した指標をすべて掲載するべきであ るが,紙面の都合上ここでは,経済的変化を表 わす代表的なものとして,人口,転入率,転出 率,各産業別就業者比率,各産業別就業者1人当 り生産所得,市町村税収,1人当り個人所得とい った経済指標をとることにする。他方,社会指 標としては,ソーシャル・コンサーンの各分野 から ① 健康……人口当り医師数,死亡率 ② 教育……進学率,先生1人当り生徒数 ③ 労働……求人倍率,賃金 ④ 所得,消費……乗用車普及率,電話普及率 ⑤ 安全……窃盗発生率,交通事故率 ⑥ 住宅……1人当り畳数,上水道普及率,地 価 ⑦ 交通……道路舗装率 ⑧ 自然環境……SOx濃度,降下ばいじん といった数個の指標をとって説明を加える。ま た第3章で掲げた,余暇,文化・情報,コミュニ ーティセクターは,適切なデータが得られなか ったためにここではとりあげていない。なお, 価格表示のものは地価以外昭和45年歴年基準で 示しており,グラフ上の地域区別は凡例の通り である。 第1節 経済指標の変動 (1)人口の動向(人口,転入者数,転出者数) 人口に関しては,二つのパターンに分類され る(図4−1−1)。秋田,鹿島,諏訪,坂出と いった人口増加地区及び能代,益田といった人 口減少地区(過疎地)である。35年から47年ま での増加率を比較すると,鹿島53%,秋田23% 諏訪12%,坂出6%,能代△6%,益田△11%の 順で鹿島の伸びが著しく大きい。特に鹿島の場 合,昭和41年までは典型的な過疎地域であった が,開発が軌道にのり始めた43年頃から徐々に 人口増加現象(但し,この時期の増加は,建設 労働者の流入が中心であったと思われる)がみ え始め,44年の企業の操業開始と同時に域外か らの労働者の大量の流入により急激な人口増加 となった。秋田は県内の行政の中心地,かつ東 北,裏日本の中心都市であるために,周辺地域 からの人口流入が毎年平均的にあり,ほぼ一定 率の人口増加となっている。 転入率については,ほぼ人口と同様の傾向が みられる(図4−1−2)。特に昭和42,43年以 降は,過疎地の転入率が停滞してきたのに対 し,人口増加地区のそれは,増大傾向を示し ている。他方転出率は,その指標の性格として二 律背反性を持っている。すなわち静態的な社会 −能代,益田−では有利な雇用機会が少ない等 の理由により若年層の域外流出は増大し,転出 率は高まる。(但し,グラビティモデルで示さ れるように,流出先までの距離が,転出率の高 さに影響を与えるといった考え方もある。例え ば能代,益田といった同じ過疎地でも,西日本 の工業及び商業圏に比較的近接している益田 は,域外へ出易く,近隣にそういった都市が少 ない能代は,出にくいといったことは,充分考

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えられうることである)。しかし,そういった 社会は,一次産業就業者比率が高いという特徴 をもっている。一次就業者の年令は他の産業に比較して高令化しており,移動に関しては本来 消極的な面が強い。それ故,このような人口, 就業構造は転出率を抑制する傾向をもつ。 また動態的な社会−秋田,鹿島,諏訪,坂出 −では,非一次産業比率が高く,サラリーマン 化の傾向に伴って転出は増大する。 全体的には,ほぼ増加傾向を示しているが43 年から47年までの鹿島の増加が著しい。 (2)就業者の動向(第1次,2次,3次産業就業 者比率) 就業者の動向としては,各地域とも1次産業就 業者が2次,3次産業就業者へと流出し,域外から の転入者は非1次産業に吸収されていくという プロセスをとっている。秋田は,商業(行政) 都市として初期の段階から1次産業比率は低く, 3次産業就業者比率が35年で57%,47年で67%に も達している。鹿島は,1次産業就業者比率の減 少率が46%と最も大きく,それに対して2次産業 者比率の増加率は,35%と群を抜いた増大を示 しており,特に43年∼45年の大企業誘致後の伸び は著しい。この就業者比率の変動は,かつての 農村のイメージから鹿島を完全に脱皮させ,工 業都市のイメージを植えつけることとなった。 しがしながら,第3次就業者比率をみると,他の 都市に比べて鹿島のそれは著し低く商業機能の 遅れを感じさせる。 諏訪も秋田と同様に初期の頃から1次産業就 業者比率は僅か20%足らずであったが,秋田の 図 4−1−1 人 口 凡 例 図 4−1−2 転入率(転入者数/総人口) 図 4−1−3 転出率(転出者数/総人口)

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商業行政都市とは性格を異にする,2次産業就業 者を主体とする典型的な工業都市といえる。 坂出は鹿島に次いで2次産業就業者の伸びが 大きい。 平担ではあるが,狭い土地を考えると工業化 への道は必然の方向であったと思われる。 能代,益田は,緩慢な1次産業就業者の減少と ともに,ゆっくりした足どりで,近代化への道 を歩んでいるといえよう。 (3)生産所得の動向(第1次,2次,3次産業1 人当り生産所得) 第1次産業生産所得額は,35年と47年比較では, 各地域ともほとんど変化しておらず,産業とし ての停滞ぶりが目立つ。しかし就業人口が大き く低下しているために,就業者1人当りの労働 生産性(図4−1−7)では,鹿島2.1,坂出 1.6倍,益田1.5倍,秋田1.5倍,諏訪1.4倍,能代1.1 倍の順で増加している。40年代前半の頃までの 能代の生産性は,1人当り耕地面積が大きいこと もあって群を抜いて高かったが,その後の停滞 と,他地域の成長により47年時点では,相対的 格差はほとんど変らない状況にある。 第3次産業の労働生産性(図4−1−9)も地 域格差は比較的小さく地方都市に共通する小規 模企業主体の経営形態を如実に示しているとい えよう。しかし第1次産業と比べれば,その労働 生産性は平均4倍近くに達しており,35年と47 年比較でも,各地域とも2∼3.5倍の伸び率を示 している。生産所得の中で,最も大きな変化が みられるのが,第2次産業生産所得である。日本 における高度成長期が,第2次産業中心(その中 でも重化学工業を主体とした)であったことを 考えればこの事実が,各地域とも共通な傾向と して現われてくるのは当然であろう。特に鹿 島では43∼45年の2年間に,集中的に大企業が操 業を開始したのを反映して,労働生産性は一挙 に7倍になり,工業開発のすごさをみせている。 また坂出の増加もかなり著しい。番の州地区 の埋立てによるコンビナートの形成の影響が43 年頃から急速に現われ,僅か4年間で,その増加 率は2倍にも達している。諏訪は精密機械等の 企業が古くから立地しており,その水準は初期 の頃からかなり高く,順調な伸びを示している。 図 4−1−5 第2 次産業就業者比率 図 4−1−6 第3 次産業就業者比率 図 4−1−4 第1 次産業就業者比率

参照

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