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学位論文題名 Structural and electronic properties of c(2x2)Fe thin film surfaces studied by ●scannlngtunnelingmlCrOSCOpyandSpeCtrOSCOpy

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 工 学 ) 岡    博 文

     学位 論文題名

    Structural and electronic properties of     c(2x2)Fe thin film surfaces studied by      ●

scannlngtunnelingmlCrOSCOpyandSpeCtrOSCOpy

     ( 走 査 型 ト ン ネ ル 顕 微 鏡 / 分 光 法 に よ る c(2x2)Fe 薄膜表面の構造と電子状態に関する研究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  近 年、半 導体デ バイス の微細 化や磁 気記録の 高密度 化が一 段と進 むにっれて、材料の様々な特性、

例 えば電 気特性 や磁気 特性、結 晶構造 など、 を数十nmのオー ダーで 測定し制御することが求められて き ている 。また 、微細 化に伴う 次元の 低下に より、 物質表 面や界 面の特性がデバイスの特性に大きく 効 い て く る た め 、 表 面 の 物 性 を 明 ら か に す る こ と が 重 要 な 課 題 に な っ て き て い る 。   こ のよ う な 測 定に お い て 、高 い 空 間 分解 能 を 持 つ走 査 型 卜 ンネ ル 顕 微 鏡(Scanning Tunneling Microscopy: STM)やトンネル分光法(Scanning Tunneling Spectroscopy: STS)は有用性が高い。また、リソ グ ラフイ ーなど を用い て、大き なもの を小さ くしてnmスケー ルヘ近 づくという従来からあるトップダ ウ ン法だ けでな く、原 子や分子 を一個 ずつ操 りnmスケ ールの 材料を 作るというボ卜ムアップ法の可能 性 も 示 し てき た 。い まや「 ナノテ クノロ ジ一」 の分野 におい て欠く ことの出 来ない ツール である 。   そ ういっ た中、 量子干 渉とい った、 表面にお いて新しい現象が、Cu(lll)やAg(.lll)などにおいて、

STMを 用 い て発 見 され ている 。この 量子干渉 は、表 面特有 に存在 する準 位が2次 元的な 広がり を持つ ため、表面ステップや欠陥によって反射され定在波ができるために起こる。一方、bcc‑Fe(001)やV(OOl) の ような 、bcc遷移 金属(001)では、上述の準位とは違い、原子サイトに局在したdz2̲likeな表面準位が 発 見され ている 。一様 に広がらず局在する性質を使って、原子レベルでの元素同定が実現されている。

更 に、bcc‑Fe(001)やCr(001)など磁性金属表面が持つ表面準位はスピン偏極するため、〜nmの磁性現象 を 解明す る鍵に もなり うる。故 に、磁 性金属 表面は 、磁気 メモリ(MRAM)、究極的には原子スピンメモ り などへ の応用 という 観点だけ でなく 、基礎 物理現 象を解 明する という観点からも注目されている。

  本 研究は 、STM/STSを 用いて 、Mg0(001)基 板上にエ ピタキ シャル 成長させたbcc‑Fe(001)の表面構造 と 電子状 態を原 子レベ ルで調べ た結果 をまと めたも のであ る。加 工などの応用への容易さから、パル ク 単結晶 ではな く、薄 膜表面を 選択し た。表 面準位 は規則 正しく 原子配列された表面において発現す る ため、 原子レ ベルで 構造が制 御され た表面 が必要 になる 。そこ で、10〜30nmの原子レベルで平坦な 表面が得られる条件でbcc‑Fe(001)薄膜を作製した。しかし、その薄膜表面は(lxl)構造ではなく、c(2x2) 再 構成構 造を持 つこと がわかっ た。ま た、局 所的に存在する1次元ナノ構造 ラインライクバターン を発見し、この構造内部では(lxl)構造を持つことがわかった。

  ま た、STS測 定から 、c(2x2)再 構成構 造上で はフェ ルミレベ ルの上+0.43eV付近に、一方ラインライ ク パター ン上で は+0.2eV付 近に表 面準位 が存在することを明らかにした。この表面準位のエネルギー 位置の違いは、表面原子構造の違いから来ていると考えている。

‑ 1091 ‑

(2)

  第一 章では 、本研究 の背景 が書かれている。半導体デバイスの微細化や磁気記録の高密度化により、

nmスケ ールに おける物 性制御 の重要 性が高 まり、 「ナノ テクノ ロジー 」という分野が生まれ、注目さ れ てき た 経 緯 をま と め た 。ま た 、 そ の中 で 表 面 物性の 重要性 と、STMを 含む走 査型プ ローブ 顕微鏡 (Scanning Probe Microscopy: SPM)がどのような役割を果たしているのか、その研究状況をまとめ、本研 究の目的を書いた。

  第二 章では 、本研究 で大き な役割 を果た すSTMと表 面準位 につい て記述 する。 量子ト ンネル 効果か ら トン ネ ル 電 流と ト ン ネルバ ルアの 関係を 導き、STMの動作 原理、STSで得ら れる物 理量に ついて 、 簡単な 理論的 考察か ら説明 する。 また、 表面準 位を利用した実験結果について詳細にまとめ、STM/STS に よっ て ど の よう に 検 出され るのか を説明 するこ とによ り、本 研究の 位置づ けをより 明確に した。

  第三 章では 、本研究 で使用 した装 置の概 要を記 述する 。実験 はーつ の超高真空システム内で全て行 われる 。その システ ムに取 り付け られた 測定装 置だけ でなく、 真空を 維持するためのポンプ類に至ま で、各真空チャンバーのスペックについて説明した。

  第四 章では 、bccーFe(001)薄膜の 作製手順 につい てまと める。MgO基板の 洗浄法から、STM測定のた めのAu電極の作製、真空中での清浄化法について記述する。その後、MgO(ool)基板上のFe(ool)薄膜 の作製 条件に ついて 、文献 報告を 概観す ること により 検討する 。そし て、成長温度573K、成長レー卜 lnrn/min.丶 膜厚10nmでェピタキシャル成長させたFe(001)薄膜の反射高速電子線回折とX線光電子分 光の結果から、成長中の膜質の変化と表面組成について議論した。

  第五 章では 、第四章 で作製 したFe(001)薄 膜の表 面構造に ついてSTMの結 果を記す 。Fe薄 膜はMgO 基板上 にアイ ランド 成長し 、その アイラ ンドは 約lO〜30nm幅 の原子 レベル で平坦なテラスを持つこと がわか った。 原子分 解能STMに より、 最表面 はc(2x2)再構成構造を持つことが示された。また、テラ ス上に 特異な1次元ナ ノ構造 を発見 し、 ライン ライクパターン と名付けた。その構造内部では再構 成を起こしていない(1x1)構造を持つことが明らかにされた。

  第六章では、低速電子線回折(Low‐EnergyElec缸onDi倚action:LEED)の結果から表面原子構造につい て議論 されて いる。STMは物理 的な原 子位置 を測定 してい るわけ ではな く、電 子状態の 空間分 布を観 て いる た め 、STM像 だ け か ら結 晶 構 造 を決 定 す るこ とは難 しい。 そこで 、LEEDパタ ーンの 各スポ ッ トのlm・ensiぢ‐v01tageカーブを測定した。モデル構造からのI‐Vカーブを計算し、実験デ一夕と比較す ることにより、結晶構造を決定した。

  第七 章では 、c(2x2) 構造とラインライクパターンの電子状態についてSTM/STSの結果が書かれてい る。c(2x2)構造上で測定したdUdVスベク卜ルでは、十O.43V付近に表面準位の存在を示すピークが観察 さ れた 。 原 子 分解 能STM/STSからc(2x2) 構造のSTM像にお けるtopサ イトとh0110wサイト では、 異 なる電 子状態 を持つ ことが 分かっ た。一 方、ラ インラ イクパタ ーン上 ではdUdVスベクトルにおいて、

十0.2V付近に表面準位に対応すると考えられるショルダーを観察した。表面準位が観察されたエネルギ ー位置 の違い は、原 子配列 の違い に起因 してい ると考 えられる 。また 、ラインライクパターンの出現 は、表面準位により引き起こされるトンネルコンダクタンスの増加が、c(2x2)構造と(1xl)構造を持つラ インラ イクパ ターン 上では 、異な るエネ ルギ一 位置で 起こるか らであ るということを明らかにした。

  第八章では、本論文全体をまとめ、更なる興味について書かれている。(1xl)bcc‐Fe(001)上に存在す る 表面 準 位 は スピ ン 偏 極 して い る た め、 ス ピ ン 偏極STMを 用いる ことに より、nm領域に おける スピ ンに依存した電子状態に関する知見が得られるものと期待される。

‑ 1092

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨

主 査    教 授    武笠幸一 副 査    教 授    山本眞史 副査   教授   岡田亜紀良 副査   助教授   末岡和久

     学位論文題名

    Structural and electronic properties of     c(2x2)Fe thin film surfaces studied by      ●

scannlngtunnelingmlCrOSCOpyandSpeCtrOSCOpy

     ( 走 査 型 ト ン ネ ル 顕 微 鏡 / 分 光 法 に よ る c(2x2)Fe 薄膜表面の構造と電子状態に関する研究)

  近年、走査型プローブ顕微 鏡は原子分解を有する計測 装置として様々な表面物性計測ーの応用 に関する研究が盛んに行われ ている。特に、磁性材料、 磁性ナノ構造表面における磁性をナノス ケールの精度で観察・制御す ることを可能にするための 研究を推進することが望まれており、磁 気ラ ンダ ムア クセ ス メモ りな ど磁性 材料を活用した新しいデバイ ス開発を進め上では急務の 課 題となっている。

  本論文は、このような現状 を踏まえ、走査型トンネル 頭微鏡(Scanning Tunneling Microscopy:

STM)や走 査ト ンネ ル 分光(Scanning Tunneling Spectroscopy: STS)を 用い 、 強磁性体薄膜 表 面の構造とそのスピンに依存 した電子状態について、Mg0 (001)基板上にエピタクシャル成長した Fe薄膜を研究対象としてその 詳細を明らかにしたもので ある。具体的には、平坦な表面が得られ る条件でbcc‑Fe(001)薄膜を 作製したところ、その薄膜表面が(lxl)構造ではなく、c(2x2)再構成構 造を 持つ ことを示した。また、局所的 に存在する1次元ナノ構造 ラインライクパターン を 発 見し、この構造内部では(lxl)構造を持っことを明らかに した。更に、STS測定から、c(2x2)再構 成構 造上 ではフェルミレベルより+0.43eV非占有準位側の近傍に、 一方ラインライクパターン 上 では+0.2eV付近に表面準位が 存在することを示し、それ らの違いが表面原子構造の違に由来して いることを示した。さらにこ の表面準位を利用したスピ ン状態測定方法についてその基礎的な実 験結果について述べている。

  第一章では、本研究に関わ る背景について論じた。「 ナノテクノロジ」という研究分野が注目 され てき た経緯をまとめ、当該研究分 野における表面物性の重要 性と、STMを含む走査型プロ ー ブ顕微鏡(Scanning Probe Microscopy: SPM)がどのような役割を果たしているのか、その現状状況 をまとめ、本研究の目的を導 いている。

    ‑ 1093―

(4)

  第二 章で は、STMの測 定原 理 と表 面準 位につ いて述べた。また、STSで得 られる物理量につい て、簡単な理論 的考察を踏まえて解説した 。

  第三 章で は、 表面 準位を利用した実験結果に ついて、これまでの研究経緯 についてまとめ、S TM/STSによ る研 究が 表 面電 子状 態の 何 を明らか にしてきたかにっいて解説 し、本研究の位置づ けを明確にした 。

  第 四 章 で は 、 本 研 究 で 使 用 し た 真 空 一 貫 表 面 分 析 装 置 の 概 要 に っ い て 述 べ た 。   第五章では、bcc‑Fe(001)薄膜の作製手 順にっいて論じた。MgO基板 の洗浄法、STM測定のため のAu電 極 の 作 製 、 真 空 中 で の 清 浄 化 法 に つ い 、 実験 条 件な どそ の詳 細に つ いて まと めた 。   第六章では、作製したFe(001)薄膜の表面構造についてSTM測定を行った結果について議論した。

Fc薄膜 はMgO基 板上 にアイランド成長し、そのア イランドは約lo〜30nm幅の 原子レベルで平坦な テラスを持つこ とがわかった。原子分解能STMにより、最表面はc(2x2)再構成構造を持つことが 示 され た。 さら に、 テラス上に特異な1次元ナノ 構造を発見し、 ラインラ イクパターン と名 付 け た 。 そ の 構 造 内 部 で は ( 1x1) 構 造 を 持 つ こ と が 明 ら か に さ れ た 。   第七 章で は、CrrS測 定お よびSTS測定 により 得られた表面電子状態にっい て、STM測定で明ら かになった表面 原子構造との関連について 、実験結果を基に考察した。 特に表面準位として測定 さ れるSTSスペ ク卜 ルのピーク位置が高エネルギ ー側にシフトしている原因 について、表面吸着 原子による量子 閉じこめ効果の可能性を指 摘し、現象論的解析から実験 で得られたピークシフト を説明すること に成功した。

    第 八 章 で は 、 STM/ STS測 定 の 結 果 に お よ ぴ 考 察 に っ い て 総 括 し た 。     第 九 章 で は 、 ス ピ ン 偏 極STMの 動 作 原 理 と そ の 有 用 性 に つ い て 論 述 し た 。     第 十章 では 、半 導体探針を用いたスピン偏 極STMの動作原理にっいて述 べ、本論文で作製し たFe(001)薄 膜表面を用いたスピン偏極STM実験の概念にっいて論述し、提案した実験装置の詳細 について述べた 。

    第十一章で は、光励起GaAs探針を持ち 手Fe(001)薄膜表面を測定した結果についてまとめ、

半 導体 探針 から 強磁 性 体の スピ ン偏 極 した 表面 準位 への ス ピン 注入 がで きた こ とを 示し た。

    第十二章で は、本論文を総括し、本論 文が明らかにした事柄が今後 の研究・開発ヘ展開され るぺきなのかそ の展望について論述した。

  これを要するに、著者は、bcc‐Fe(001)薄膜表面における表面結晶構造と表面電子状態について 原子分解能STM/STS測定により新しい知見 を得たものであり、表面物理 工学、磁気工学、ナノテ クノロジの分野 に対して貢献するところ大 なるものがある。よって著者 は、北海道大学博士(工 学)の学位を授 与される資格あるものと認 める。

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