• 検索結果がありません。

児童・青年期の気分障害,広汎性発達障害に関する臨床的研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "児童・青年期の気分障害,広汎性発達障害に関する臨床的研究"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 保 健科 学 )    佐 藤祐 基

学 位 論 文 題 名

児童・青年期の気分障害,広汎性発達障害に関する臨床的研究

学位論 文内容の要旨

[ 要

  旨 ]

  

児童・青年期の気分障害は近年まで稀な疾患であると考えられてきたが,国際的な診断基準が 用いられるようになった頃から,児童・青年期の気分障害は,これまで認識されているよりも,

はるかに多く存在することが明らかにされてきた.またアスベルガー障害などの広汎性発達障害 に対する関心も近年高まりをみせている.児童・青年期の気分障害と広汎性発達障害は,ともに 近年になってから注目を集めるようになった障害であり,その関連性については未だ不明なこと が少なくない.本論文では,まず児童・青年期の気分障害のうち,大うつ病性障害と双極性障害 の症例について,診断や広汎性発達障害などの併存障害,経過,および転帰について検討するこ とを目的とした,次に,気分障害と広汎性発達障害を併存したことのある中学生に対し,筆者が 心理相談室の臨床心理士として臨床心理学的援助を行い,事例研究を通して効果的な支援につい て検討することを目的とした,

  

第2 章では,児童・青年期の大うつ病性障害の併存障害の特徴に焦点を当てながら,診断,臨 床的特徴,転帰について検証した,小児科発達障害クリニックの中にある児童精神科外来を初診 し,大うつ病性障害と診断された

7

 17

歳までの児童・青年47 例(男子

21

例,女子

26

例)を 対象に,後方視的なカルテ調査を行った.その結果,児童・青年期の大うつ病性障害の併存障害 として,広汎性発達障害,不安障害,注意欠如・多動性障害などが確認された,特に,広汎性発 達障害との併存が55.3 %と高い割合で確認され,従来考えられてきたよりも広汎性発達障害との 併存率は高いと考えられた.臨床的特徴については,大うつ病性障害で受診し,「社会的ひきこも り」の症状をもつ場合は,広汎性発達障害や不安障害などの併存障害に注意して診断を検討する 必要があると考えられた.児童・青年期全体の転帰について,多重口ジステイック回帰分析を行 ったところ,児童・青年期の大うつ病性障害には,1 年以上の継続的な治療を行うことが,症状 の改善に有効であることが示唆された.一方,治療期間が「1 年以上2 年以内」であるとき,併 存障害がある場合は,ない場合と比べて,有意に転帰が不良となりやすいことが示唆された.

  

第3 章では,児童・青年期の双極性障害について,児童期と青年期の比較をしながら,診断や 併存障害,経過,および転帰について検討することを目的とした.対象は,小児科発達障害クリ ニックの中にある児童精神科外来を初診した

8 ‑17

歳までの児童・青年30 例(男子8 例,女子

22

例)であった,診断の内訳は,双極I 型障害が3.3 %,双極II 型障害が

40.0

%,特定不能の双 極性障害が56.7 %となり,特定不能の双極性障害が最も高い割合で診断された.遺伝歴は,児童 期発症群の方が青年期発症群よりも第1 度親族に大うつ病性障害をもつ場合が有意に多いことが 示された.併存障害については,児童期と青年期ともに,広汎性発達障害が最も高い割合で確認 された.また,児童期発症群の方が青年期発症群よりも有意に広汎性発達障害と注意欠如・多動 性障害を併存しやすいことが示された.不安障害が単独で併存する割合は,青年期発症群で30.4 %

‑ 1155

(2)

で あ っ た が , 児 童 期 発 症 群 で は1例 も 認 め ら れ な か っ た . 転 帰 に つ い て は , 平 均 し て 約27カ 月 の 治 療 期 間 に , 半 数 以 上 の 症 例 が 改 善 ま た は 寛 解 を 示 し た . 経 過 の 特 徴 と し て , 児 童 期 発 症 群 の 方 が 青 年 期 発 症 群 に 比 べ て , う つ 病 相 と 躁 病 相 の 混 合 状 態 が 有 意 に 多 く み ら れ る こ と が 示 さ れ た , 児 童 期 発 症 の 双 極 性 障 害 の 特 徴 と し て , 青 年 期 発 症 群 よ り も , 大 う つ 病 性 障 害 の 遺 伝 歴 が 多 く , 広 汎 性 発 達 障 害 と 注 意 欠 如 ・ 多 動 性 障 害 の 併 存 が 多 く み ら れ た 。 経 過 に つ い て は 躁 病 相 と う つ 病 相 が 混 合 し た 経 過 を た ど り や す い と 考 え ら れ た . 青 年 期 発 症 の 双 極 性 障 害 の 特 徴 は , 不 安 障 害 を 単 独 で 併 存 す る 場 合 が 児 童 期 発 症 群 よ り も 多 く , 経 過 に つ い て は 児 童 期 と 比 べ て 躁 病 相 と う つ 病 相 の 区 別 が 明 瞭 と な り や す い と 考 え ら れ た .

  4章 で は , 気 分 障 害 と 広 汎 性 発 達 障 害 を 併 存 し た こ と が あ る 中 学 生 に 対 し て , 筆 者 が 臨 床 心 理 士 の 立 場 か ら 臨 床 心 理 学 的 援 助 を 行 う こ と で , 学 校 適 応 が 高 ま っ た 経 過 に つ い て 振 り 返 り , 効 果 的 な 支 援 に つ い て 検 証 し た . 広 汎 性 発 達 障 害 を も つ 男 子 中 学 生 で あ る ク ラ イ エ ン ト は , 小3〜 小4に か け て 大 う つ 病 性 障 害 や 抜 毛 癖 , 選 択 性 緘 黙 と い っ ・ た 複 数 の 精 神 疾 患 に 罹 患 し た こ と が あ り , 中2に な っ て 来 談 し た と き は , 「 フ ん ン タ ジ ー へ の 没 頭 」 と 呼 ば れ る 解 離 状 態 を 呈 し て い た . ク ラ イ エ ン ト は ア メ や 漫 画 な ど の フ ァ ン タ ジ ー に 対 し て , 周 囲 が 当 惑 す る ほ ど の 没 頭 を 示 し , 他 者 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 問 題 を 生 じ さ せ て い た . 他 の 生 徒 か ら , か ら か い を 受 け , 対 人 的 に 孤 立 し , 落 ち 込 む 様 子 が 確 認 さ れ , 大 う つ 病 性 障 害 や 選 択 性 緘 黙 と い っ た 併 存 障 害 が 再 発 す る 可 能 性 が 考 え ら れ た , 心 理 面 接 は 週1回 ,1時 間 と い う 枠 組 み の 中 で , 約2年 間 に 渡 っ て 行 わ れ た . 独 自 の 心 理 支 援 の 技 法 を 工 夫 す る こ と に よ っ て , ク ラ イ ェ ン ト の 言 語 と イ メ ー ジ の 表 現 が 次 第 に 豊 か に な っ て い き , そ れ に 合 わ せ る よ う に , 学 校 な ど 社 会 的 な 場 面 で の 適 応 も 改 善 を 見 せ る よ う に な っ た .

  本 論 文 の ま と め と し て , @ 児 童 ・ 青 年 期 の 気 分 障 害 の 診 断 に つ い て は , 大 う つ 病 性 障 害 の 診 断 が 最 も 多 く 認 め ら れ た . ま た , 双 極 性 障 害 の 診 断 で は , 特 定 不 能 の 双 極 性 障 害 の 診 断 が 最 も 多 く み ら れ た . ◎ 児 童 ・ 青 年 期 の 気 分 障 害 は , 広 汎 性 発 達 障 害 や 不 安 障 害 , 注 意 欠 如 ・ 多 動 性 障 害 な ど の 併 存 障 害 と 相 互 に 密 接 な 関 係 が あ る こ と が 推 察 さ れ た . 児 童 ・ 青 年 期 の 気 分 障 害 の 併 存 障 害 の 特 徴 と し て , 大 う つ 病 性 障 害 を も つ 症 例 で は , 「 社 会 的 ひ き こ も り 」 の 症 状 が あ る 場 合 に 広 汎 性 発 達 障 害 や 不 安 障 害 な ど の 併 存 障 害 の 存 在 に 特 に 注 意 す べ き と 考 え ら れ た . 児 童 期 に 双 極 性 障 害 を 発 症 し た と き は , 広 汎 性 発 達 障 害 と 注 意 欠 如 ・ 多 動 性 障 害 を 併 存 す る こ と が 多 い と 考 え ら れ た . 青 年 期 に 双 極 性 障 害 を 発 症 し た 場 合 は , 広 汎 性 発 達 障 害 や 不 安 障 害 の 併 存 を 確 認 す る こ と が 望 ま し い と 考 え ら れ た . ◎ 児 童 ・ 青 年 期 の 気 分 障 害 の 転 帰 に つ い て は , 一 定 期 間 の 治 療 を 行 う こ と で , 半 数 以 上 の 症 例 が 改 善 し て い た . 大 う つ 病 性 障 害 の 場 合 は ,1年 以 上 の 治 療 を 継 続 す る こ と が 良 好 な 転 帰 に 繋 が る こ と が 示 唆 さ れ た . た だ し , 治 療 期 間 が 「1年 以 上2年 以 内 」 で あ る | 量 , 併 存 障 害 が あ る 場 合 は , な い 場 合 と 比 べ て , 改 善 し に く い 傾 向 が あ る こ と が 示 唆 さ れ た . @ 児 童 期 発 症 の 双 極 性 障 害 の 経 過 の 特 徴 と し て , 躁 病 相 と う つ 病 相 が 混 合 し た 経 過 を た ど り や す い と 考 え ら れ た . 一 方 , 青 年 期 発 症 の 双 極 性 障 害 の 経 過 は , 児 童 期 と 比 べ て 躁 病 相 と う つ 病 相 の 区 別 が 明 瞭 と な り や す い と 考 え ら れ た , ◎ 気 分 障 害 と 広 汎 性 発 達 障 害 が 併 存 し た 場 合 の 実 際 の 支 援 に つ い て , 臨 床 心 理 学 的 援 助 を 個 人 の 症 状 に 合 わ せ て 行 う こ と に よ っ て , 社 会 適 応 の 改 善 に 繋 が る 場 合 が あ る こ と が 示 さ れ た .

1156

(3)

学位論文審 査の要旨 主 査    教 授    武 田 直 樹 副 査    教 授    傳 田 健 三 副 査    准教授    境    信哉

学 位 論 文 題 名

児童・青年期の気分障害,広汎性発達障害に関する臨床的研究

  

児童・青年期の気分障害(うつ病性障害、双極性障害)は、1980 年以前は極めて稀な疾患であ ると考えられてきた。欧米においては、操作的診断基準が用いられるようになると、成人と同じ うつ症状、躁症状をもつ子どもの存在が注目されるようになり、児童・青年期の気分障害がこれ まで認識されているよりもはるかに多く存在することが明らかになってきた。ところが、わが国 では児童精神科医の間でさえ、児童・青年期の気分障害に対する認識は依然乏しく、現在におい ても見逃されており、臨床的特徴や他の精神疾患との併存の問題などが不明な状態である。

  

本論文は、小児科発達障害クリニックの中にある児童精神科外来を受診した児童・青年期の気 分障害症例について、後方視的なカルテ調査を行い、児童・青年期における気分障害と併存障害 との関係、ならびに臨床的特徴、転帰などについて検討したものである。その内容は、わが国で は初めて明らかにされる臨床的研究であり、症例数も最大規模といえる重要な論文である。

  

第1 の研究は、児童・青年期の大うつ病性障害と併存障害に関する臨床的研究である。2008 年 から2010 年の2 年間に楡の会子どもクリニック児童精神科外来を初診し、大うつ病性障害と診断 された児童・青年47 例(男子21 例、女子

26

例)を対象とした。児童・青年期の大うつ病性障害 の中で、うつ病単独で発症したものは23.4 %であり、併存障害が確認されたものは76.6 %であっ た。併存障害の内訳は広汎性発達障害36.2 %、不安障害21.3 %、広汎性発達障害と不安障害が併 存するものl2.8 %、広汎性発達障害と

ADHD

が併存するもの

6

.4 %であった。児童・青年期の大う つ病性障害の併存障害として、広汎性発達障害が

55.3

%と最も高い割合であることが明らかにな った。大うつ病性障害の臨床的特徴としては、「社会的ひきこもり」の症状が併存障害を有する群 において有意に高かった。うつ病で受診し、社会的ひきこもりの症状がある場合は、広汎性発達 障害の併存を疑う必要がある。また、転帰に関しては、治療期間が「1 年以上2 年以内」の場合に 併存障害を有する群において有意に転帰が不良となった。児童・青年期全体の転帰については、1 年以上の治療を行うことが有意に良好な転帰に影響していた。このような結果から、児童・青年 期の大うつ病性障害を診断し、治療方針を立てる上において極めて重要な事柄が示唆された。

  

2

の研究は、児童・青年期の双極性障害に関する臨床的研究である。

2008

年から2011 年の3 年間に楡の会子どもクリニック児童精神科外来を初診し、双極性障害と診断された児童・青年30 例(男子

8

例、女子22 例)を対象とした。その結果、診断の内訳は、双極

I

型障害

3

.3 %、双極

H

型障害40.O %、特定不能の双極性障害

56.7

%であった。遺伝歴は、児童期発症群の方が青年期 発症群よりも第1 度親族に大うつ病性障害をもつ場合が有意に多いことが示された。併存障害に

1157

(4)

つ い て は 、 児 童 期 発 症 群 の 方 が 青 年 期 よ り も 有 意 に 広 汎 性 発 達 障 害 とADHDを 併 存 し や す い こ と が 示 さ れ た 。 一 方 、 不 安 障 害 は 青 年 期 発 症 群 の み に 併 存 し て い た 。 経 過 の 特 徴 と し て は 、 児 童 期 発 症 群 で は 青 年 期 と 比 較 し て う つ 病 相 と 躁 病 相 の 混 合 状 態 が 有 意 に 多 く 認 め ら れ た 。 一 方 、 青 年 期 発 症 群 は 児 童 期 と 比 べ て う つ 病 相 と 躁 病 相 の 区 別 が 次 第 に 明 瞭 に な っ て い く こ と が 示 さ れ た 。 以 上 の 知 見 は 、 わ が 国 で は 初 め て 示 さ れ る こ と が ら で あ り 、 児 童 ・ 青 年 期 の 双 極 性 障 害 の 診 断 お よ び 治 療 に 大 き く 貢 献 す る も の で あ る 。

  3の 研 究 は 、 広 汎 性 発 達 障 害 と 大 う つ 病 性 障 害 を 併 存 し た 男 子 中 学 生 に 対 す る 心 理 面 接 に 関 す る 事 例 研 究 で あ る 。 広 汎 性 発 達 障 害 と 大 う つ 病 性 障 害 を 併 存 し た 男 子 中 学 生 に 対 し て 、 臨 床 心 理 学 的 援 助 を 行 う こ と で 、 自 己 主 張 が 可 能 に な り 、 学 校 適 応 が 高 ま っ た 経 過 に つ い て 検 討 し 、 効 果 的 な 支 援 に つ い て 検 証 レ た 事 例 検 討 で あ る 。 当 初 は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を ほ と ん ど と る こ と が で き ず 、 自 ら フ ァ ン タ ジ ー の 世 界 に 没 入 し て い た 状 態 で あ っ た が 、「 絵 日記 」と い う技 法を 工 夫す る こ と に よ り 、 治 療 者 と ク ラ イ エ ン ト は 次 第 に 交 流 を 深 め て い っ た 。 そ の こ と を き っ か け に う つ 状 態 が 改 善 し 、 ク ラ ス の 中 で も 自 己 主 張 を す る こ と が で き る よ う に な り 、 交 友 関 係 が 広 が っ て い っ た 。 同 時 に 受 験 勉 強 に も 集 中 す る こ と が で き 、 目 標 の 高 校 に 入 学す る こと が可 能 とな った 。 「絵 日 記 」 と し ゝ う 技 法 が 、 認 知 行 動 療 法 的 な 効 果 を も た ら し た と 考 え ら れ た 。   以 上 の こ と か ら 、 著 者 は 児 童 ・ 青 年 期 の 気 分 障 害 ( う つ 病 性 障 害、 双 極性 障害 ) の臨 床的 特 徴、

併 存 障 害 、 経 過 、 転 帰 に つ い て 、 わ が 国 で 初 め て 詳 細 な 報 告 を 行 い 、 新 知 見 を 得 た も の で あ り 、 児 童 ・ 青 年 期 の 気 分 障 害 に 対 し て 、 正 確 な 診 断 を 行 い 、 治 療 方 針 を 立 て る 上 で 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。

  よ っ て 著 者 は , 北 海 道 大 学 博 士 ( 保 健 科 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

1158

参照

関連したドキュメント

筋障害が問題となる.常温下での冠状動脈遮断に

 12.自覚症状は受診者の訴えとして非常に大切であ

④日常生活の中で「かキ,久ケ,.」音 を含むことばの口声模倣や呼気模倣(息づかい

Denison Jayasooria, Disabled People Citizenship & Social Work,London: Asean Academic Press

中空 ★発生時期:夏〜秋 ★発生場所:広葉樹林、マツ混生林の地上に発生する ★毒成分:不明 ★症状:胃腸障害...

在宅の病児や 自宅など病院・療育施設以 通年 病児や障 在宅の病児や 障害児に遊び 外で療養している病児や障 (月2回程度) 害児の自

市民的その他のあらゆる分野において、他の 者との平等を基礎として全ての人権及び基本

一般社団法人 美栄 日中サービス支援型 グループホーム セレッソ 1 グループホーム セ レッソ 札幌市西区 新築 その他 複合施設