学 位 論 文 題 名
博 士 ( 工 学 ) 鈴 木 修 一
燃料電池用白金触媒の微細化と構造制御による 高活性化に関する研究
(Improvement of Platinum Catalytic Activity for Fuel Cells by Reducing Particles Size and Controlling Structure)
学位論文内容の要旨
エネ ルギー大量消費社会 とをった現代にお いて、燃料電池は 低公害であり、発電効率が高いこと から、 次世代エネルギー源 として注目されて いる。その中で、 低温作動型であり、メタノールを燃 料 とし て 発電 する 直 接メ タノ ー ル形 燃料 電 池(DMFC)は 、起動時間が早く 、エネルギー密度が 高 い こと か ら、携帯 機器用電源や可搬型 電源として実用化 が進められている 。しかしをがら、DMFC では高 価を白金(Pt)が触媒 として多量に使用 されており、コス ト低減の大きな障害とをっている。
Ptの使 用量を削減するため には、Ptの単位質 量あたりの触媒活 性を向上させることが必要である。
本 論 文 で は、DMFCに 使わ れ るPt触媒 の 高活 性化 を 目的 とし て 、Pt粒子 の 微細 化とPtの構 造制 御 ( 担 体 材 料 の 変 更 、 粒 子 表 面 組 成 の 適 正 化 ) を 検 討 し た 結 果 を ま と め た も の で あ る 。 第1章 で は 、 燃 料 電 池 の 概 要 とDMFCの 位 置 づ け を 示 す と と も に 、DMFCの 普及 に 向け た課 題 のひ と っが高価 をPt使用量の低減で あることを述べた 。また、Pt使用量 を削減するためのア プ ローチ である、Pt粒子の微 細化、担体材料の 変更、ならびに粒 子表面組成の適正化について述ベ、
本論文 の目的を示した。
第2章では、Pt粒子の微粒化によ る反応面積の増大を 目的として、無電 解めっきによる触媒合成 時 に、 リ ン(P)供給 源で あ る次 亜リ ン 酸(H3P02)を添 加 する 手法 を 検討 した 。H3P02の添加はPt 粒 子の 微 細化 に有 効 であ り、 未 添加 のPt粒 子径 が4.2 nmに対して、H3P02/H2PtC16=0.10、0.25 の添加 量でそれぞれ、2.3、2.0 nmのPt粒子 が得られることを 明らかとした。走査型透過電子顕微 鏡 (S´rEM‑EDX)、X線 回 折(XRD)、X線 光 電 子 分 光(XPS)分 析結 果 より 、添 加 したPはPt粒子 の表面 に酸化物状態で結合 しており、これが 合成時のPt粒子の 成長を抑制することが推察された。
ま た、P添加 に よりPt粒 子 が微 細化さ れた触媒は、従来 よりも高い酸素還 元活性を示し、Pt触 媒 の高活 性化に有効を手法で あることが実証さ れた。
第3章 では 、 担体 材料 の 変更 によっ て空気極用Pt触媒 の酸素還元活性を 向上させることを目 的 とし、 スパッタで成膜した 薄膜モデル電極を 用いてその効果を 検証した。薄膜モデル電極は、アモ ルフア スカーポン(a‑C)担体を用い たPt/a‑C(従来触媒のモデル 電極)とセラミックス担体を用いた Pt/酸化 タン グステン(W03)、Pt/酸化チタン(f102)(新規担体のモ デル電極)の3種を用いて、 特 にPtの 格 子ひ ずみ に 着目 しな が ら検 討を 行 った 。作 製 した 薄膜 モ デル 電極 のXRD分析から、Pt 膜 厚が2 nm以 下の 場 合に 、a‑C担体 上 では バル クPt板 に比 べ て明 らか をPt格 子定数の増大が 確 認 さ れ た が、W03、T102担 体上 で は認 めら れ をか った 。 また 、aーC担体 上で はPt膜 厚が2nm以 下 の 場 合 に酸 素 還元 活性 が 低下 した が 、W03、Ti02担 体 上で はPt膜 厚が2nm以 下の 場 合に も高 い 活性 を 維持して いた。更に、酸素還 元活性はPt格子定 数と相関があり、Ptの格子定数の増大 に ともを い低下することが分 かった。以上より 、セラミックス材 料は酸素還元活性を低下させない有 望誼担 体であることが明ら かとなった。
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第4章 で倣、 第3章で得 られ た知見 をもと に、酸 素還 元活性が高く、且つ、耐久性の高いPt触媒 を 得るた めに 、セラ ミック スであ るシリ コン カーバ イド(SiC)でカーポンブラック(C)を被覆した SiC/C担 体の適 用を試 みた。SiC/Cは、カ ーボン プラッ クを ポリカ ルボシ ラン(PCS)で被覆し、こ れ を 熟 分 解 す る 方 法 で 合 成 し た 。 得 ら れ たSiC/CのXPS、STEM‑EDX分 析 より 、PCSはSiC化 し ており 、SiCはカ ーボン プラッ クを均 一に 被覆し ている ことが確認された。SiC/Cの電子抵抗は SiCの量 ととも に増 加した が、コ ア材料 であ るCと 同じ オーダーであり、十分に触媒担体として使 用 できる レベ ルであ った。SiC/Cを 担体 として 用いたPt/SiC/C触 媒は、Pt/C触媒 に比べて高い酸 素 還元活 性を 示した 。また 、大気 中での 熱重 量(TG)分 析より、Pt/SiC/C触媒は耐酸化性も高いこ と が分か った 。以上 より、SiC/Cは 燃料電池用空気極触媒の触媒活性と耐久性を向上させることが で きる有 望を 担体で あるこ とが明 らかと なっ た。
第5章 では、 燃料 極に使 われる 白金ル テニ ウム(PtRu)粒子触 媒のメ タノー ル酸 化活性を向上さ せ ること を目 的として、表面組成とメタノール酸化活性の関係を評価した。また、触媒形状による 影 響を確 認す るため に、ス パッタ で成膜 したPtRu膜も 同様に評価し、粒子の結果と比較した。合 成 したPtRu粒子、PtRu膜は 固溶合 金を 形成し ていた が、表 面組成とバルク組成は必ずしも一致し を かった 。メ タノー ル酸化 活性は 、PtRu粒 子、PtRu膜とも に表面組成に相関があり、最適値が存 在 し た 。 し かし を が ら 、 その 最 適値は 、PtRu粒 子Ru組 成が50 atパー セント で、PtRu膜で は25 atパ ーセ ントで あり、触媒の形状で異をることが明らかとなった。したがって、実触媒に用いられ るPtRu粒子 では、 表面のRu組成 を高め ること でメ タノー ル酸化活性が向上することが分かった。
以 上 より 、 本 論 文 で はDMFC用Pt、PtRu触 媒 の 高活 性化 を実現 する 手法を 明らか にした 。セ ラ ミック ス担 体の適 用は、Ptをナ ノ粒子 化した 際の格 子定数の増大を抑制でき、空気極用Pt触媒 の 酸素還 元活 性を向 上させ ること ができ る。 表面組 成の適 正化は燃料極用PtRu触媒のメタノール 酸 化活性 を向 上させることができる。また、これらのPt系触媒の構造制御による高活性化に加え、
P添加 による 粒子の 微細 化技術 は、上 記の手法と同時に適用可能を手法であり、空気極、燃料極触 媒 、それ ぞれ の活性 を更に 向上さ せるも ので ある。 本論文 で示したPt、PtRu触媒の高活性化の手 法 は 高 価をPt使用量 の削 減を可 能とす るため 、DMFCの 本格普 及へ の貢献 が期待 される 。また 、 本 論文で 得ら れたPt系 触媒の 高活 性化に 対する 知見は 、将来に実現が望まれる非Pt触媒の研究に も 応用可 能と 考えら れる。
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学位論文審査の要旨 主査 副査
副査 副査
教授 特任教授 教授 准 教 授
大 貫 惣 明 大 塚 俊 明 米 澤 徹 橋 本 直 幸
学 位 論 文 題 名
燃料電池用白金触媒の微細化と構造制御による 高活性化に関する研究
(Improvement of Platinum Catalytic Activity for Fuel Cells by Reducing Particles Size and Controlling Structure)
本研究は、直接メタノール形燃料電池 (DMFC) 用のPt 触媒の高活性化を目的として、
Pt 粒子の担体材料の変更と粒子表面組成の適正化によりその性能の向上を検討したもの である。
本論文は5 章で構成されている。
第 1 章は、諸言であり、燃料電池の概要とDMF ・ C の位置づけを示すとともに、その普 及の課題が高価をPt 使用量の低減であることを述べている。また、そのためのアプロー チとしてPt 粒子の微細化、担体材料の変更、粒子表面組成の適正化であることを述ベ、本 研究の目的を示した。
第2 章は、Pt 粒子の微粒化による反応面積の増加を目的として、無電解めっきによる触 媒合成時に、次亜リン酸によルリン(P) を添加する手法を検討し、Pt 粒子の微細化に極め て有効であることを明らかにした。添加した P はPt 粒子の表面に酸化物状態で結合し、
合成時の粒子の成長を抑制すると考察した。また、この微細化触媒は高い酸素還元活性を 示し、触媒の高活性化に有効をことを示した。
第 3 章は、担体材料を変更して空気極用Pt 触媒の酸素還元活性の向上を目的とし、ス パッタ薄膜モデル電極を用いてその効果を検証している。この薄膜モデル電極のXRD 分 析から、 Pt 膜厚が 2nm 以下の場合に、a ―C 担体上ではPt の格子定数の明らかを増大が確 認されたが、 W03 、 Ti 酸化物担体上ではそれが認められをかったことから、酸素還元活 性はPt の格子定数と相関があり、格子定数の増大にともをい低下することを示した。こ の結果、セラミックスは酸素還元活性を低下させをい有望を担体であることが明らかにし ている。
第 4 章は、シリコンカーバイド (SiC) でカーボンプラック (C) を被覆した SiC/C の複合
担体について、その触媒特性を示している。従来の材料に比べて高い酸素還元活性を示す
こと、また、耐酸化性も高いことを示した。その結果、SiC/C は燃料電池用空気極触媒と
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し て 活 性 と 耐 久 性 を 向 上 さ せ る と 結 論 し て い る 。
第5章 は 、 燃 料 極 に 使 わ れ る 白 金 ル テ ニ ウ ム(PtRu)触 媒 の メ タ ノ ー ル 酸 化 活 性 の 向 上 を 目 的 と し て 実 施 し た 表 面 組 成 の 影 響 を 論 述 し て い る 。PtRuの 粒 子 と 膜 の メ タ ノ ー ル 酸 化 活 性 は と も に 表 面 組 成 に 相 関 し 、 最 適 値 が 存 在 し た 。 し か し 、 そ の 最 適 値 は 粒 子 と 膜 で は や や 異 を る も の の 、 表 面 のR.u組 成 を 高 め る こ と で 酸 化 活 性 が 向 上 す る こ と を 示 し た 。 こ れ を 要 す る に 、 著 者 は 、 直 接 メ タ ノ ー ル 形 燃料 電池 (DMF・C) 用 のPt触媒 を 対象 とし 、 微 量 リ ン の 添 加 、 新 し い 担 体 材 料 と 粒 子 表 面 組 成 の 選 択 に よ り そ の 性 能 を 向 上 で き る こ と を 示 し た 。 こ れ ら の 結 果 は 、 希 少 資 源 で あ るPtの 使 用 量 を 削 減 す る と と も に 、 燃 料 電 池 の 本 格 的 普 及 ヘ 道 を 開 く も の で 、 材 料 工 学 の 発 展 に 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。 よ っ て 著 者 は 、 ゴ ヒ 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 が あ る も の と 認 め る 。
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