博士(医学)Siddiqua Latifa Kamal
学位論文題 名
Glomerular express10nofCOllagenIVQ1 , Q3 andn5chainsinchildhoodIgAnephropathy ( 小 児 IgA 腎 症 の 糸 球 体 に お け る IV 型 コ ラー ゲ ン a1 , a3 , a5 鎖の発 現)
学位論文内容の要旨
1,概要
IgA腎症 において よく見られ る糸球体 基底膜(GBM)障害の程度は、その腎予後と深 く 関 連す る と考 え ら れて い る。IV型コ ラ ー ゲンは、 最も重要 なGBM構成成 分のーつ で 、 その 発 現様 式 の 変化 はGBMの 構 造 変化 を もたらし 得る。今 回の研究 では、21名 の小 児IgA腎症患 者を対象に 、IV型コラ ーゲンal、a3およびa5鎖[al(IV)、a,3 (IV)、 a5(IV)]のGBMに おける発 現様式の変 化を、新鮮凍結標本を用いたぺルオキシダーゼ染 色により明らかにした。
2.背景と目的
IgA腎症は、小児埼nこおいて最もよくみられる原発性糸球体腎炎であり、発症後20 年の 経過で、 その約20〜30%が末期腎不全に進行し得る。病理組織学的には、IgAのび まん性沈着をともなうメサンギウム網‖胞および基質の増加を特徴とするが、電子顕微鏡 によ る検討で は、GBMの構造 変化を頻 回に観察する。症例によっては、a3(Iり‑a5(IV) 鎖 の 遺 伝 子 変 異 に よ り 発 症 するAlport症 候 群 に特 徴 的な 激 し いGBM病 変(GBM緻 密 層の 分裂、層 状化)をも 伴い得る 。IgA腎症におけるGBM病変は、局所的な基底膜の融 解がその引き金とされ、メサンギウム増殖病変の重症度、細胞性半月体の頻度、腎予後 と深く柵f矧するといわれてきた。
IV型コ ラーゲン は、GBMの最も 重要な揃 成成分で 、現征ま でに6種の亜型(a鎖)
が矢Llられている。糸球体では、al(IV)、cx2(Iり鎖はメサンギウム領域およびGBM内皮 0叫こ 分布し、 またa3 (IV)‑ a5(IV)鎖はGBM緻密眉に分布する。これまでに、幾つかの 原 発 性糸 球 体腎 炎のGBM病 変におい てa(IV)鎖の発 現様式の異 常を認め ることが 報告 されている。例えば、al(Iり、oc2 (IV)剣iは、各純糸球体腎炎における硬化病変の過鰹で メサンギウムおよび硬化嗣;位に一致して、その発現が増強することが麺|られている。ま た、恥尿4q性腎症またJl炎性腎症におけるGBM肥J!jjl可変においては、GBM緻衛嗣に特 災「I′、Jにうナ価するa3 (IV)‑ a5(IV)鎖の発現が箸fリ]に増強する1iが知1られている。
本fひf究においては、まずIgA腎jltに合DFする微細なGBM病変を、光学顕微鏡レベ ルでより【リJらかにするために、従来の螢光抗体法でなく、新m゛I凍結切片を利川したぺル オキシダーゼ染色法にてocl(I¥D、a3(Iり、a5(Iり鎖の発現を検索するヨ[を試みた。而!立 した 染色条件 が、良好な感度、特異度を有するヨ{を確認した後、小児IgA腎症患者21 名か ら得られ た腎組織を 用いて、IgA腎症のGBM病変におけるal(lり、a3(Iり、a5(IV) 鎖 の 発 現 様 式 の 変 化 を 明 ら か に し 、 臨 床 病 理 学 的 特 徴と の 関 連性 を 検討 し た 。
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3.結果と考察
ま ず 新鮮 凍 結 標本 を 用 いた ぺ ル オキ シ ダ ーゼ 法 に よるal(IV)、a3(IV)、a5(IV)鎖の 染 色 条 件 の 確 立 を 試 み た 。 本 法 の確 立 の ため に は 、a(IV)鎖 抗 原 の露 出 を 目的 と し た尿 素処理時間の調整、ブ口ッキング条件の調整が最も重要であった。
(a)正 常 、 微小 変 化 群、Alp ort症 候 群 腎組 織 に おけ るal(IV)、a3(IV)、a5(IV)鎖 の発 現 正 常 腎 糸 球 体 に お い て は 、 過 去 の 報 告 に 一 致 し てal(IV)鎖は メ サ ンギ ウ ム 領域 か ら GBM内 皮 側 に 沿 っ て 発 現 し て い た 。a3(IV)、a5(IV)鎖は 、GBM特 異 的に 発 現 を認 め た 。 微 小変 化 群 の 糸球 体 に おけ るal(IV)、a3(IV)、a5(IV)鎖 の 発現 様 式 は、 正 常 腎と ほ ぼ同 様 で あ っ た 。 染 色 法 の 特 異 性 を 確 認 す る た めAlport症 候 群 の 腎 お よ び 皮 膚 に お け る al(IV)、a3(IV)、a5(IV)鎖 の 発現 を 検 討し た 。 過 去の 報 告 に一 致 し て、a3(IV)、a5(IV) 鎖 は、Alp ort症候 群 の 腎に お い て全 く 発 現さ れ て おら ず 、また 患者皮膚 基底膜 において もa5(IV)鎖発現の欠損を認めた。
(b) IgA腎症GBMにおけるal(IV)、a3(IV)、a5(IV)鎖の発現
21名 のIgA腎 症 患 者 [ 年 齢5歳 〜17歳 ( 平 均11.3歳 )] を 対 象と し た 。組 織 学 的重 症 度 別 で は 、WHO分 類 で1型 ( 微小 変 化 )8名 、2型 ( 巣 状 増殖 )9名、3型 (び ま ん 増殖 )4 名 で あ る 。IgA腎 症 で は 、 電 子 顕 微 鏡 に よ っ て 観 察 さ れ る 数 種 のGBM病 変 に 相 当 す る と 考 え ら れ る 、 特 徴 的 なalalo、a3(IV)、a5(IV)鎖 発 現 バ タ ー ン を 係 蹄 壁 に 認 め た 。 i) 増 殖 メ サ ン ギ ウ ム 領 域 周囲 の 係 蹄壁 のwrinkling:中等 度 以 上の 増 殖 病変 を と もな う 糸球 体 で は 、ぱi(i.D鎖 のメ サ ン ギウ ム に おけ る 発 現増 強と ともに、a3(IV)、a5(IV)鎖 発 現 陽 性 係 蹄 壁 のwrinklingを 認め た 。 また 、a3(IV)、a5(IV)鎖 の染 色 強 度は 、 不 規則 に 増 減 し て い た 。 本 所 見 は 、 局 所 的 なGBMの 融 解 に よ るa3(IV)、a5(IV)鎖 発 現 低 下 あ る いは 修 復 機 転に お け る代 償 的なa3(IV)、a5(IV)鎖の産 生亢進 を示唆す ると考 えられた 。 ii)半 月体 を と もな う 糸 球体 に お ける 係 蹄 壁の 断 裂 :半 月 体 形 成は 、IgA腎 症 にお いて 腎 予後 を 左 右 する 重 要 な因 子 で ある 。 細 胞繊 維 性 半月 体 内 部で は 、al(IV)鎖 発 現 増加を 認めたが、a3(IV)、.a5 (IV)鎖の発現はみられなかった。また糸球体係蹄壁の一部で、a3(IV)、 a5(IV)鎖 の 染 色 性 が 突 如 断 裂 し 、 問 質 部 か ら の 細 胞 成 分 の 流 入 を 認 め 、GBM断 裂 が 糸 球体硬化病変発症の契機となっている事が示唆された。
iii)係 蹄 壁 の 肥 厚 :IgA腎 症 では 、 し ばし ば 上 皮 下に お い ても 激 し い免 疫 複 合体 の 沈 着 を 認 め 、 特 徴 的 なGBM病 変(garland型 あ る い は dome型 肥 厚GBM)を 形 成 す る 。 電 子顕 微 鏡 に て同 病 変 を頻 回 に 認め た 症 例に お い て、 本 病 変に 相 当 す ると 考 え られ る特 徴 的なa(IV)鎖 発 現バ タ ー ン[al(IV)、a3 (IV)、a5(IV)鎖 陽性の二 重係蹄 壁形成] を認め た。
iv)虚 脱糸 球 体 にお け る 係蹄 壁 の 攣縮 : 虚 脱糸 球 体 にお け る 攣 縮し たGBMで 、a3(Iり 、 a5(IV)鎖 発 現 の 増 強 を 観 察 し た 。 メ サ ン ギ ウ ム 領 域 のal(IV)鎖 発現 は 低 下し て い た。
ま た 以 上 のa(IV)鎖 発 現様 式 の 変化 は 、 より 高 度 の 蛋白 尿 を 有し 、 病 理学 的 重 症度 の 高い患者群により頻回に観察された。
4.結論
新 鮮 凍 結 標本 を 用 いた ペ ル オキ シ ダ ーゼ 染 色 を利 用 し てal(IV)、a3(IV)、a5(IV)鎖 の 糸 球 体 に お け る 発 現 を 、 簡 便 に また 十 分 な信 頼 性 をも っ て 検 討し 得 た 。IgA腎症 に お い て 、 電 子 顕 徴 鏡 レ ベ ル で 観 察 さ れ 得 る 代 表 的 なGBM病 変 に 相 当 す る と 考 え ら れ る 、 特 徴 的なal(IV)、a,3 (IV)、a5(IV)鎖 の発 現 様 式 の変 化 を 認めた。IgA腎 症におい て、本染 色 法 を 用 い てa(IV)鎖 の 糸 球 体 発 現 を 検 討 す る 事 に よ り 、 本 症 のGBM病 変 の 重 症 度 を 容 易 に 把 握 す る 事 が 可 能 と な り 、 腎 予 後 判 定 に 大 い に 役 立 っ 事 が 期 待 さ れ る 。
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学位論文審査の要旨
学位論文題名
Glomerular expression of collagen IVQ1 ,a3 andQ5chainsinchildhoodIgAnephropathy
(小児IgA 腎症の糸球体における IV 型 コ ラ ー ゲ ン al , a3 , a5 鎖の 発 現 )
学位申請者は、小児期において最 も頻度の高い慢性腎炎であるIgA腎症を対象に、電子顕 微鏡でしか解析し得なかった糸球体 基底膜(GBM)の変化を、GBMに特異的に存在するr丶′型 コラーゲンn鎖に対するモノク口ーナル抗体を用いて免疫染色を行うことにより、光学顕微鏡 レベルで明らかにすることを試みた 。また、21名の小児IgA腎症 患者の腎生検検体について IV型 コ ラ ー ゲ ンQ鎖 発 現 様 式 を 検 討 し 、 臨 床 病 理 学 的 特 徴 と の 関 連 性 を 解 析 し た 。 IgA腎 症は、小児期において最もよくみられる原発性糸球体腎 炎であり、発症後20年の経 過で、その約20‑‑ 30%が末期腎不全に進行する。病理組織学的には、IgAのびまん性沈着を ともなうメサンギウム細胞および基 質の増加を特徴とするが、電子顕微鏡による検討では、
GBMの 構造 変化(GBM緻密 層の 分裂 、層 状化 ) が頻 回に 観察 され る。 また、IgA腎症におけ るGBM病変 は、 局所 的な 基底 膜の 融解 がそ の引き金とされ 、メサンギウム増殖病変の重症 度、細胞性半月体の頻度、腎予後と 深く相関するといわれている。基底膜の最も重要な構造 蛋白であるIV型コラーゲンは、現在 までに6種の亜型(a鎖)が知られているが、申請者は、
GBM内 皮 か らヌ サン ギウ ムに 存在 するal鎖 、GBM緻密 層に 存在 するa3 (IV)、a5crV)鎖 の 発現 を検 討し た 。申 請者 は先 ず始 めに 、微 細なGBM病変を 、光学顕微鏡レペルで明らかに するために、新鮮凍結切片を利用したぺルオキシダーゼ法によるal(rV)、a3cn′)、a5(Il:)鎖 の染色条件を確立した。本法の確立のためには、a(IV)鎖抗原の露出を目的とした尿素処理時 間の調整、ブ口ッキング条件の調整 が最も重要であった。次に正常、微小変化群、Alport症 候群[a3(IV). a5(IV)鎖の遺伝子変異により発症する先天性腎疾患]患者からの生検組織を用 いて、本染色条件の特異性を検討した。正常腎糸球体においては、過去の報告に一致したal(IV)、
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彦
敬
夫
邦
隆
林 木
池
小 吉
小
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
a3(rV)、a5 (IV)鎖の分布を認めた。微小変化群の糸球体における発現様式は、正常腎とほぼ 同様で、Alport症候群の腎および皮膚ではa3 (IV)またはa5 (IV)鎖の発現欠損を認め、本染色 条件の特 異性を確認した。次いで、小児IgA腎症患者21名から得られた腎組織を用いて、IgA 腎症のGBM病変におけるal(IV)、a3 (IV)、a5 (IV)鎖の発現様式の変化を観察し、臨床病理 学的特徴 との関連性を検討した。21名のIgA腎症患者[年齢5歳‑・17歳(平均11.3歳)]は、
WHO分類で1型(微小変化)8名、2型(巣状増殖)9名、3型(びまん増殖)4名であった。IgA 腎症GBl¥1で観察される特徴的なa(IV)鎖発現バターンは大きく4種に分類できた。即ち、i) 増殖メサンギウム領域周囲の係蹄壁の蛇行、.ii)半月体をともなう糸球体における係蹄壁の断 裂中等度以上の増殖病変、iii)係蹄壁の肥厚、iv)虚脱糸球体における係蹄壁の攣縮と、a(IV) 鎖 発現 異常 がみ ら れる 病変 、で ある 。蛇行GBMでは、a3(IV)、a5crV)鎖の染色強度の小規 則 な増 減、 断裂GBMで は、a3(IV)、a5(IV)発現の途絶と細胞成分の問質からの流入、肥厚 GBMではalcrV)、a3(IV)、a5(IV)の二 重係蹄形成が観察され、過去の報告における電顕的異 常 を適 格に 反映した。21名の対象患者の臨 床病理学的特徴とIV型コラーゲンa3、a5鎖の糸 球体基底 膜における発現異常との関連性を検討すると、蛋白尿の 程度、WHO分類を用いた病 理学的重 症度と良好に相関し、本染色法がIgA腎症の腎予後判定に有効であることを見出し た。
公開発表に際し、副査の古木敬教授から、ホルマリン標本を用しゝた免疫染色の可否につい て 、IV型 コ ラ ー ゲ ンa2、a4鎖 に つ い て の 検 討 、 成 人 例 に お け る 検 討 、matrix metallopr()teinase発現についての検討の必要性についての質問があった。次いで副査の小池 隆夫教授 から他のタイプの腎炎における検討、IgA腎症の成因と糸球体基底膜におけるハ′型 コ ラー ゲン 発現異常との関連性について質 問があった。主査の小林教授からmRNAレベルで の検討の 有無、今後の研究の方向性についての質問があった。いずれの質問に対しても、申 請 者は 、申 請者 自 身が 行っ た実 験結 果に 加え 、現 在進 行中 のIV型コラーゲンmRNA解析の 実験結果 、過去に報告された腎炎とIV型コラーゲンd鎖発現様式や細胞外基質産生、分解に 関する報告を引用し、各々の質問に対して的確な解答をした。
この論 文は、IgA腎症の糸球体基底 膜異常を容易に光顕レベルで解析する方法を確立し、
実際に腎 予後の推測に非常に有用であることを示した点が高く評価され、今後の本症の臨床 病 理 学 的 . 重 症 度 判 定 や 治 療 法 開 発 に 大 い に 役 立 っ て い く 事 が 期 待 さ れ る 。 審査員 一同は、これらの成果を高く評価し、大学院過程における研鑽や取得単位なども併 せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。
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