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学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 氏 名 Seong-Woo Cho

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Academic year: 2021

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(様式第9号)

学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

氏 名 Seong-Woo Cho

審 査 委 員

主 査 辻本 壽 ◯ 副 査 田中 裕之 ◯ 副 査 執行 正義 ◯ 副 査 田中 淨 ◯ 副 査 小葉田 亨 ◯

題 目 Studies on Leymus Species as Genetic Resources for Wheat Breeding

審査結果の要旨(2,000字以内)

本論文は、パンコムギに耐乾性等の有用形質をコムギとはゲノムの異なる野生植物から導入する際 に求められる、非相同染色体間の転座または組換え制御に関する研究を記したものである。

世界の食糧が不足し始めており、主要穀物であるコムギの増産が不可欠である。しかし、近年の環 境悪化、特に干ばつのためにコムギ価格が急騰し、このことは地球規模課題のひとつとなっている。

コムギは50年前の緑の革命によって、毎年一定量の収量増に成功したが、近年、行き詰まっている。

その大きな原因は、遺伝資源の枯渇である。この研究は、それを打開するために行われたものである。

この論文では、まず、DNAの構成成分、シチジンのアナログであるゼブラリンをコムギ種子根に 処理したときに見られる体細胞分裂染色体への影響について調べている。ゼブラリンはDNAのメチ ル化阻害剤でもあり、類似の5アザシチジンに比べ安定な物質である。最初にゼブラリンを種子根に 投与すると濃度依存的に、成長阻害が起こることを明らかにした。そして、その原因を調べるために 根端の体細胞分裂を調査したところ、高頻度に染色体異常の起こっていることを示した。さらに、ハ マニンニクの染色体添加系統にゼブラリンを処理し、ゲノミック in situ ハイブリダイゼーション法 でハマニンニク染色体をペインティングして識別することで、染色体異常の様態を詳細に解析した。

その結果、転座、欠失、環状、二動原体染色体など様々な異常が出現し、その頻度は濃度依存的に高 まり、一方で細胞数は減少することを明らかにした。ヒトのガン細胞でゼブラリンが染色体を切断す る事例は2010年にあるが、植物の正常細胞において多様な染色体の切断・融合をペインティング により詳細に示したのは最初の報告である。染色体異常の切断・融合には、放射線照射などの

(2)

方法があるが、これには照射装置が必要である。一方で、ゼブラリンの投与による方法は特別な装置 の必要がなく簡便であり、今後、有用遺伝子をもつ異種染色体部分をコムギゲノムに導入する際に有 効な方法になると思われる。

次に、減数分裂の組換えを制御して、異種遺伝子を導入するための実験材料の開発を行った。まず ハマニンニクとオオハマニンニクの二染色体添加系統を交配して、両種由来の染色体を1本ずつもつ 重複一染色体添加系統を5系統開発し、減数分裂の染色体行動を調査した。そして、最も相同性の高 い系統と全く相同性のない系統について、両種染色体の減数分裂染色体の行動をそれぞれ別の色でペ インティングすることにより調査した。この研究の中で、相同性の度合いを四分子期の各小胞子への 異種染色体の分布のデータを、「相同性指数」という新しい概念を導入することにより、適切に表して いる。その結果、最も相同性の高い系統でも完全に相同ではなかったが、両染色体が様々な相互関係 を保ち行動していることを明らかにした。さらに、この系統について、第一分裂前期の核内で起こる 染色体のダイナミックな行動を明らかにすることができた。この研究で育成された系統は、様々な物 理化学的処理が減数分裂組換えへ与える影響を調査するために有用な材料である。

ハマニンニク属のようなコムギとはゲノムを異にする遠縁植物種において、ストレス耐性や品質改 善など現在のコムギの能力を格段に高めることのできる遺伝子の存在が知られている。しかしながら、

作物として好ましくない遺伝子も多数あり、いかに有用遺伝子が座乗する染色体部位のみをコムギゲ ノムに組み込むかが大きい課題であった。本研究は、容易に染色体操作のできる化学物質を解明した と共に、減数分裂での組換えの操作を意図して、オリジナリティーの高い系統を開発した。

以上のように本研究は、独創性の高いものであり、この研究を進めることにより耐乾性や耐塩性等 のストレス耐性遺伝子を異種植物からコムギへ導入することを目指した優れた内容である。したがっ て、学位論文として十分な価値を有するものであると判断した。

参照

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