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共役リノール酸の抗肥満・抗高脂血症作用とその機序

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Academic year: 2021

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「肥満研究」Vol. 9 No. 2 2003 <トピックス> 柳田晃良,ほか

トピックス

はじめに

食生活や生活スタイルの変化が原因 となって発症する生活習慣病(癌,高 脂血症,動脈硬化,糖尿病,高血圧)は 日本を含め先進工業国における死亡原 因の約半数を占め,人口の高齢化が急 速に加速するなかにあって,今や医学 領域のみならず社会経済的にも最も重 要な課題となっている.この生活習慣 病の原因ならびに発生病理について は,その3∼6割が過食・運動不足な どの生活習慣を基盤とした肥満,特に 内臓脂肪の蓄積に起因しており,日本 人では20∼25%が肥満を発症している との報告がある.その発症予防として は,食事への食品機能性成分の導入が 有効であると考えられているが,なか でも食事脂肪の量や脂肪酸の質が大き な影響を及ぼすことが知られている. 近年,最も注目されている脂肪酸の一 つに,必須脂肪酸リノール酸の位置・ 幾何異性体である共役リノール酸があ る.共役リノール酸は,炭素鎖中に共役二 重結合を持つことを特徴とし,乳製品や 肉製品に含まれる脂肪酸である1,2) .こ れまでの研究において,抗ガン作用, 抗動脈硬化作用および抗肥満作用など が報告されているが3∼5) ,その作用機 序に関して未解明の点を多く残してい る.本稿では,われわれが肥満モデル 動物およびヒト肝臓モデル細胞を用い て明らかにした共役リノール酸の抗肥 満・抗高脂血症作用とその機序につい ての知見を紹介する.

1.共役リノール酸異性体

混合物の生理作用

一般に研究用およびサプリメントと して市販されている共役リノール酸 は,リノール酸をアルカリ共役化する ことにより生成されており,主な異性 体として9シス11トランス型CLAと 10トランス12シス型CLAをほぼ等量 の割合で含んでいる.われわれはまず, このようなCLA異性体混合物を1% 添加した食事で2週間飼育することに より,肥満モデル動物OLETFラット の高脂血症の発症と内臓脂肪の蓄積を 抑制できることを報告した6∼9) .その 作用機序としては,肝臓における脂肪 酸合成系の抑制と脂肪酸β酸化系の亢 進が確認された.特に脂肪酸β酸化系 の亢進については,脂肪組織および筋 肉中でも認められ,全身における脂肪 酸燃焼の亢進が主要な作用であること が示された.

共役リノール酸の抗肥満・抗高脂血症作用とその機序

佐賀大学農学部応用生物科学科

柳田 晃良,永尾 晃治

0 2 4 6 a LA 9c,11t 10t,12c a b 白色脂肪組織重量 g/100g BW 0 20 40 a LA 9c,11t 10t,12c a b 肝臓TAG濃度 mg/g liver 図1 CLA異性体が肥満ラットの病態発症に及ぼす影響 ab p<0.05で有意差あり. TAG:トリアシルグリセロール. 0 50 100 150 a ab b LA 9c,11t 10t,12c CPT mRNA arbitrary unit 0 40 80 120 a ab b LA 9c,11t 10t,12c FAS mRNA arbitrary unit 0 40 80 120 a a b LA 9c,11t 10t,12c SREBP1 mRNA arbitrary unit 図2 CLA異性体による肥満ラットの病態改善作用の機序 abp<0.05で有意差あり. CPT:カルニチンパルミトイルCoA転移酵素, FAS:脂肪酸合成酵素, SREBP:ステロール調節因子結合タンパク質.

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共役リノール酸の抗肥満・抗高脂血症作用とその機序

2.CLA異性体の生理作用

次にわれわれは,ヒト肝臓モデル HepG2細胞の脂質代謝について,各 CLA異性体精製物を用いて作用の違 いを検討した10) .その結果,10トラン ス12シス型CLAは,肝臓からのアポ B100含有リポ蛋白質の分泌を,他の 異性体に比べて顕著に抑制することが 確認され,CLA異性体により脂質代 謝に与える影響が異なることが示され た.そこで各CLA異性体の含有率を 90%程度まで高めた油脂をそれぞれ調 製し11) ,肥満モデル動物OLETFラット の病態発症に与えるCLA異性体の作 用の違いについて検討を行った.その 結果,対照群であるリノール酸摂取群 に比べ,10トランス12シス型共役リノー ル酸摂取群では,内臓脂肪の蓄積が抑 制され,肝臓および血中の脂質濃度が有 意に低下することが確認された(図1). その作用機序として,肝臓における脂 肪酸合成系の抑制と脂肪酸β酸化系の 亢進が酵素活性と転写レベルの両方で 確認され,その制御機構には脂質代謝 関連核内転写因子:ステロール調節因 子結合タンパク質(SREBP-1)の関与 が示唆された(図2).このような作用 は,9シス11トランス型CLAでは認 められなかったことから,CLAの抗 肥満および抗高脂血症作用の活性本体 は,10トランス12シス型CLAである ことが明らかとなった.また,CLA による抗肥満および抗高脂血症作用の 機序として脂肪酸β酸化系の亢進が示 さ れ た こ と か ら , 肥 満 モ デ ル 動 物 OLETFラットのエネルギー代謝に与 える影響について呼気ガス測定装置を 用いての検討も行った12).対照群であ るリノール酸摂取群に比べ,CLA異 性体混合物摂取群では,24時間,2週 間および4週間摂食後のエネルギー代 謝量が有意に増加していた(図3).こ れにともない内臓脂肪の蓄積量も低下 しており,CLA異性体混合物の抗肥 満作用の一因はエネルギー代謝亢進に よるものであることが確認された.ま たその作用は,CLA摂食後短時間で 惹起されることも示された.さらに各 CLA異性体によるエネルギー代謝亢 進作用の違いについて検討したとこ ろ,9シス11トランス型CLAに比べ, 10トランス12シス型CLAで有意な効果 が認められた(図4).したがって,CLA のエネルギー代謝亢進作用は10トラン ス12シス型CLAに起因することが確認 された. 現在は,肥満度の上昇にともない惹 0 2 3 * 4 24時間 2週間 4週間 酸素消費量 L/day/100g BW 図3 CLA異性体混合物が肥満ラットのエネルギー代謝に与える影響 * p<0.05で有意差あり. * * 0 60 * 80 24時間 2週間 4週間 エネルギー消費量 KJ/day/100g BW * * 対照群 CLA群 対照群 CLA群 0 40 80 120 a ab b LA 9c,11t 10t,12c アンジオテンシノーゲン Arbitrary unit 0 40 80 120 a a b LA 9c,11t 10t,12c レプチン Arbitrary unit 図5 CLA異性体が肥満ラットの内臓脂肪組織における    昇圧性アディポサイトカインmRNA発現に与える影響 ab p<0.05で有意差あり. GAPDH:グリセルアルデヒド-3リン酸脱水素酵素(内部標準). アンジオテンシノーゲン GAPDH GAPDH レプチン LA 9ct 10tc LA 9ct 10tc 1.0 1.5 2.0 2.5 10t,12c 9c,11t 酸素消費量 L/day/100g BW 図4 CLA異性体が肥満ラットのエネルギー代謝に与える影響 * p<0.05で有意差あり. * 40 45 50 55 10t,12c 9c,11t エネルギー消費量 KJ/day/100g BW *

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起されるマルチプルリスクファクター 症候群(高インスリン血症,糖尿病,高 血圧など)発症に対するCLAの作用に ついても検討を行っている.そのなか で,肥満誘発性高血圧の発症に対して, 10トランス12シス型CLAが昇圧性ア ディポサイトカインの産生を転写レベ ルで抑制することにより改善作用を示 すことを見出している(図5)13) .

おわりに

われわれの肥満モデル動物における 結果をはじめ,さまざまな動物実験で 得られた多くの結果から,CLAの摂 取がヒトの健康増進に対しても有効で あることが期待され,すでにいくつか の臨床研究が行われている14∼16) .肥満 の ヒ ト を 対 象 と し た 研 究 に お い て CLA補足が体脂肪を減少させること が確認されるなど,CLAを肥満予防 のための機能性食品成分として活用す る可能性に期待がもたれている.モデ ル動物や細胞を用いたCLAの機能性 評価は,より詳細な作用機序の解明と 生体での安全性を知るうえで,今後も 一層重要性を増すものと考えている. 文 献

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