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地域活性化における地方金融機関とFinTechの役割 : 飛騨信用組合の事例分析

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論文

地域活性化における地方金融機関と

FinTech の役割

飛騨信用組合の事例分析

小川 哲司

Roles of Local Financial Institutions and

FinTech in Regional Revitalization

A Case Study of Hida Credit Union

OGAWA, Tetsuji 名古屋経済大学経済学部准教授 要旨:現在わが国では、多くの社会課題が顕在化してきている。一部の地域では、ICT を積極的に活用し て、地域活性化を促進する取り組みがすでに始まっている。本研究では、地方金融機関がFinTech を活用 して、地域活性化を推進するための実践的な知見を獲得することである。 飛騨信用組合の事例を取り上げ分析したところ、(1)経済的アプローチの地方活性化における金融機関の役 割は、金と人の流れを生み出すこと、(2)地域活性化における FinTech の役割として、各取り組みに存在す る課題を解決することと、業務の効率化を図ること、を明らかにした。 キーワード:FinTech、地方活性化、飛騨信用組合 現在わが国は人口減少に伴う経済力の低下などにより、 多くの社会課題が顕在化してきている。特に地方では喫 緊の課題として、雇用確保、産業振興、地域連携などの社 会課題に直面している。政府は地域で住みよい環境を確 保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持してい くために、平成26 年 11 月に成立した「まち・ひと・し ごと創生法」に基づいて、地域活性化を積極的に推進して きた。最近では、東京一極集中を是正するために、東京か ら事業移転した際、課税特例等を受けられる地域の拡大 や、空き店舗を活用して商店街の活性化を図りやすくす ることを盛り込んだ地域再生法の改正によって、地域活 性化に向けた取り組みを加速しようとしている。 地域活性化とは、地方創生の取り組みの結果、地域に賑 わいをもたらして、人口の減少に歯止めをかけ、住民が住 みやすい地域を作り上げてゆくことを目的とするもので ある。地域活性化の実現には、二つのアプローチがあると されている(日本政策投資銀行, 2009)。雇用や所得などを 拡大させて地域活性化を実現する経済的なアプローチと、 コミュニティや芸術・文化などを拡大させる非経済的な アプローチである。これらのアプローチのもと、地域ごと に異なる特性を活かしつつ、各地域の課題に対応してい くことが必要となる。 一方で、近年AI(Artificial Intelligence: 人口知能)や ブロックチェーンなど先端 ICT(Information and Communication Technology: 情報通信技術)が急速に進 歩している。またIoT(Internet of Things: モノのインタ ーネット)を通じて、ビックデータが比較的容易に収集で きるようになってきたことで、さまざまな分野への活用 が進んでいる。現在、このようなICT の進歩が社会全体 に浸透することで、新たな価値が創造され、社会全体が大 きく変革されようとする動きが生まれ始めている。 一部の地域では、ICT を積極的に活用して、地域活性 化を促進する取り組みがすでに始まっている。例えば、 IoT によって灯油の残量を可視化して、効率的に灯油を配 送する事例や、マイカーの空席を見える化することによ り、過疎地での相乗りを実現して交通課題を解決する取 り組みなどがある(総務省, 2019)。このような取り組みは、 ICT が既存のビジネスモデルを変革したり、労働生産性 を上昇させたりすることで実現するものである(経済産

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業省, 2016)。このような ICT を活用した地域活性化の動 きの中で、経済的なアプローチに有効なFinTech が注目 されている。

FinTech とは、Finance(金融)と Technology(技術) が融合したものであり、金融サービスとICT を結びつけ て、これまでに無い革新的な価値を生み出そうとするも のである。これまで金融とICT との結びつきは強く、金 融機関の勘定系システムや情報系システムなどに代表さ れるように、古くから情報システムの導入は進められて きた。しかしながら、FinTech はこれら伝統的な情報シ ステムとは区別して、金融機関や IT 企業がオープン API(Application Programming Interface)などを利用し て、利用者にとって新しく革新的なサービスを示すこと が多い。 FinTech は幅広い分野への活用が可能であるため、経 済的アプローチによる地域活性化への活用にも期待でき る。この経済的アプローチによる地域活性化を推進する 代表的な主体として、地域金融機関が挙げられる。地域金 融機関が地域活性化を推進する理由として、マイナス金 利や地域経済の落ち込みなどによる厳しい経営環境の中 で、FinTech を活用した経済的アプローチによる地域活 性化によって、収益の向上を図ろうとするためである。 しかしながら、地方金融機関がどのようにFinTech を 活用して、経済的アプローチによる地方活性化を図って いけばよいかという方法論が確立されている訳ではない。 そこで本研究の目的は、地方金融機関がFinTech を活用 して、経済的アプローチによる地域活性化を推進するた めの実践的な知見を得ることとする。 地域金融機関とFinTech に関する研究として、遠藤は FinTech 萌芽期における地域金融機関の経営戦略として、 IT イノベーション対抗型、IT インフラ利用地域創成型、 インフラ構築協賛型、非IT 戦略先行型、M&A 型の 5 つ に分類できるとしている(遠藤, 2017)。IT イノベーショ ン対抗型とは、FinTech 企業に対抗して、IT イノベーシ ョンを図るものとしている。IT インフラ利用地域創生型 とは、IT インフラにより地域創成を図るものである。イ ンフラ構築協賛型とは、多くの金融機関が利用するイン フラ構築を図るものである。非IT 戦略先行型とは、あえ て目標数字ではなく、顧客のためにどう行動したかとい うプロセスを重視するものである。M&A 型とは、金融機 関同士のM&A のことである。この研究は、地域金融機 関がFinTech 萌芽期に取るべき経営戦略を分類した研究 報告である。IT インフラ利用地域創生型が地域活性化と 関係があるとしているが、FinTech の役割まで踏み込ん でいない点が指摘できる。 次に脇谷らは、ICT と地域活性化に関する研究として、 商店を含む地域を支える関係者がICT を活用することで、 関係者間のコミュニティが活性化されると報告している (脇谷ら, 2016)。この研究は ICT が地域活性化に有効で あることを示唆するものであるが、地域活性化を非経済 的なアプローチで捉えており、経済的アプローチまで調 査が及んでいない点や、地域金融機関の視点が欠如して いる点が指摘できる。 以上の先行研究レビューより、本研究のリサーチクエ スチョンは、 ① 経済的アプローチによる地域活性化では、金融機関 はどのような役割を果たすのか。 ② FinTech は経済的アプローチによる地域活性化にど のような役割を担うのか。 とする。これらに答えていくことで、地方金融機関が FinTech を活用して、経済的アプローチによる地域活性 化を推進するための実践的な知見を得ることとする。 本研究では、FinTech を活用した経済的なアプローチ によって、地域活性化に取り組んでいる飛騨信用組合の 事例を取り上げる。ここでは、経済的なアプローチによる 地域活性化を、地域内に財をストックして、その財を地域 内で循環させることや、雇用を生み出すことと定義する。 飛騨信用組合は、岐阜県高山市、飛騨市、白川村を営業 エリアとする地元密着型の金融機関として、高山市を中 心に16 店舗を展開している信用組合である。高山市や白 川村は数多くの歴史的資産や豊かな自然を残しているた め、毎年国内外から多くの観光客が訪れる国内有数の観 光地である。信用組合とは、中小企業や個人などが組合員 になり、相互扶助を目的として設立された金融機関のこ とである。飛騨信用組合の職員数は176 名と、金融機関 としては比較的規模が小さい。 飛騨信用組合は、FinTech を活用した積極的な取り組 みで、地域活性化を推進している。本研究では、飛騨信用 組合のFinTech を活用した 3 つの取り組みを取り上げ、 分析を進めていくこととする。 クラウドファンディングとは クラウドファンディングとは、群衆(crowd)と資金調 達(funding)を組み合わせた造語で、自分の活動や夢を インターネットで発信することによって、共感した人々 から資金を募る仕組みのことである。インターネットの 普及に伴い、補助金や助成金などとは異なる資金集めの 方法として、一般的になりつつある。クラウドファンディ ングには大きく分けて「購入型」、「寄付型」、「融資型」、 「投資型」という4 種類がある。購入型は、あるプロジ ェクトに対して支援者が出資をして、プロジェクトが成 功した際には、その対価として支援者は商品やサービス を得るものである。寄付型は、プロジェクトに対して支援

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者が対価を求めない寄付を行うものである。融資型は、資 産運用したい投資家から資金を集め、金銭的リターンを 提供するものである。株式型は、資金支援の対価として未 公開株を提供するものである。 クラウドファンディングのメリットは、地方で資金調 達を行うには、融資、補助金、助成金などの限られた手段 しかないところに、資金調達の選択肢が増えることであ る。さらに、インターネットを通じて、地域外から資金を 獲得できることにもある。 FAAVO 飛騨・高山 飛騨信用組合は2014 年より、地域に特化したクラウド ファンディング「FAAVO」と連携をして、「FAAVO 飛騨・ 高山」という購入型のクラウドファンディングサービス を提供している(図1)。クラウドファンディングに参入 した背景として、多くの地元企業が資金調達手段を融資 や補助金などに依存しており、資本性資金がほとんどな いことや、起業家は事業実績などから通常融資では対応 が困難という現状があるためである。 多くの支援者から小口資金を集めることは、非常に多 くのコストがかかる。例えば、プロジェクトを周知するた めの広告費、銀行に振り込みに行く手間、送金手数料が掛 かるなど、多くのコスト的課題が存在する。一方、クラウ ドファンディングは、インターネットを通じて、多くの支 援者から小口資金を効率的に集めることができる。実際、 「FAAVO 飛騨・高山」には、専用インターネットサイト や決済プラットフォームが存在している。これより 「FAAVO 飛騨・高山」は、多くの支援者から小口資金を 集める取り組みの課題を、ICT によって克服しているこ とが分かる。よって、「FAAVO 飛騨・高山」は、FinTech によって実現されていると言える。 図 1 「FAAVO 飛騨・高山」のスキーム 出所:「HIDASHIN DISCLOSURE 2019」(飛騨信用組合, 2019)をもとに再編成 地域活性化 飛騨信用組合はこれまで46 件のプロジェクトサポー トを行い、41 件で「FAAVO 飛騨・高山」による資金調 達を行っている。延べ3,075 人が「FAAVO 飛騨・高山」 を通じて支援を行い、1,800 万円を超える資金を集めてい る(飛騨信用組合, 2019)。 「FAAVO 飛騨・高山」での飛騨信用組合の役割は、ク ラウドファンディングサイトを運営して資金調達支援を するだけでなく、地域プロジェクトの発掘をして、プロジ ェクトの立上げ段階から参画して、事業計画を練り上げ ることである。つまり、起業家をサポートする役割を担っ ていると言える。 よって、飛騨信用組合は、資金調達する環境を整え、起 業支援を行うことで、起業家が生まれやすい状況を作り 出していると言える。このような取り組みは雇用創出に つながるため、地域活性化に寄与すると考えられる。 地域通貨とは 地域通貨とは、特定の地域でのみ使える通貨のことで、 法定通貨とは異なるものである。法定通貨の役割として、 価値の尺度機能、決済機能、価値保存機能があるとされる。 価値の尺度機能とは、商品やサービスの価値を定める物 差しとして機能するものである。決済機能とは、同等の価 値のものと交換する機能である。価値保存機能とは、将来 のために蓄えておく機能である。地域通貨は、価値保存機 能がほとんど無いために、貯蓄ができず、使わざる得ない 状況を作り出す。これより、法定通貨より早いスピードで 飛騨信用組合 起業家 FAAVO 飛騨・高山 支援者 資金送金 相談・案件 持ち込み 商品・サービス 資金拠出 サイト運営

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地域経済内に循環する。地域通貨とは、この特性を利用し て、地域経済を活性化させようとする取り組みである。 地域通貨は、これまで主に紙幣で発行されてきた。地域 経済を活性化させるなどの目的で1990 年代に広まった が、現在ほとんどの地域通貨は姿を消している。地域通貨 が定着しなかった理由として、松原らは地域通貨の発行 主体として、地元で活動するNPO や市民活動団体が多 く、その団体が持つコミュニティに依存することで、新た な賛同者を獲得できず、運営の硬直化が進み、活動の不活 性化に繋がったためだとしている。また紙幣の発行・管理 や加盟店の開拓などで運用コストが掛かるため、発行主 体の体力が無いと継続しない点も挙げている(松原ら, 2019)。加えて、利用者側の視点からは、法定通貨と地域 通貨を財布内で二重で管理しなければならないため、管 理が煩雑になることも指摘することができる。 さるぼぼコイン 「さるぼぼコイン」は飛驒信用組合が発行している電 子地域通貨で、高山市、飛騨市、白川村の地域限定で利用 できるものである。利用者はスマートフォンに専用アプ リをインストールした上で、現金や口座預金を「さるぼぼ コイン」に交換して専用アプリにチャージする。チャージ 金額の1%がポイントとして還元されるプレミアムが付 く。 加盟店にはQR コードが設置されているため、利用者 はQR コードを読み取るとチャージされている「さるぼ ぼコイン」で支払うことができる。さらに加盟店での支払 いだけでなく、高山市や飛騨市の税金などの支払いにも 利用できるようになっている。 利用者はQR コードを読み取るだけで決済ができるた め、加盟店は専用端末を設置する必要が無く、低コストで の導入が可能となる。また加盟店は飛騨信用組合に決済 用口座を作ることで、「さるぼぼコイン」から現金への換 金や、加盟店の口座間で「さるぼぼコイン」での送金が可 能となる。「さるぼぼコイン」の全体像は図2 のとおりで ある。 「さるぼぼコイン」の発行主体は地元の金融機関であ るため、組織的かつ長期的な視点に立った体制を構築し て、取り組みを推進することが可能である。またこれまで 築いてきた地元事業者との関係性から、加盟店開拓を効 率的に進めることができる。さらに利用者はスマートフ ォン上で「さるぼぼコイン」を管理できるため、法定通貨 と使い分けが容易にできるメリットがある。 このように「さるぼぼコイン」は、法定通貨と地域通貨 を二重で管理しなければならないという紙幣の地域通貨 に存在していた課題を、克服していることが分かる。「さ るぼぼコイン」を実現するには、専用のスマーフォンアプ リや決済プラットフォームなどのICT の利用が不可欠で ある。よって、「さるぼぼコイン」はFinTech によって実 現していると言える。 図 2 「さるぼぼコイン」の全体像 出所:「HIDASHIN DISCLOSURE 2019」(飛騨信用組合, 2019)をもとに再編成 地域活性化 「さるぼぼコイン」の加盟店は2019 年度末時点におい て、高山市を中心に922 店舗あり、利用者は 7,474 人、 決済累計額は 608 百万円となっている(飛騨信用組合, 2019)。飛騨信用組合の役割として、「さるぼぼコイン」 の発行、加盟店開拓、店頭でのチャージ業務などがある。 「さるぼぼコイン」は、チャージ金額にプレミアムを付 けることと、電子通貨としての利便性によって、地域内で の個人消費を促進させる役割がある。また加盟店間にお ける仕入れなどの支払いを「さるぼぼコイン」のままで決 済することができるため、加盟店間での経済循環効果が ある。ゆえに、個人のみならず法人まで含めた、地域住民 向けの電子地域通貨サービスであると言える。 飛騨信用組合はFinTech を活用したこの活動を通じて、 飛騨信用組合 支払い 利用者 加盟店 モノ・サービス さるぼぼコイン チャージ 換金 払い戻し

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地域内の消費を促進して、経済を循環させているため、地 域活性化に貢献していると言える。 アクワイアラビジネスとは クレジットカードビジネスには、大きく分けて国際ブ ランド、イシュア、アクワイアラが存在している。国際ブ ランドとは、Visa や MasterCard のような世界中で利用 できる決済システムを提供するクレジットカード会社の ことである。イシュアとは、国際ブランドを付与されたク レジットカードを発行する会社である。アクワイアラと は、加盟店の開拓、審査、管理をする会社のことである。 アクワイアリングビジネスとは、加盟店の獲得と管理 を行い、手数料を得るビジネスのことである。加盟店はア クワイアラと契約することで、国際ブランドのクレジッ トカード決済が可能となる。 カード加盟店サービス 「カード加盟店サービス」は、飛騨信用組合が手掛ける アクワイアリングビジネスのことである(図3)。「カード 加盟店サービス」で利用できるキャッシュレス手段とし て、VISA や MASTER などの国際ブランドクレジット カードのみならず、Edy や交通系電子マネーなどの電子 マネーや、アリペイやウィーチャットペイなどの中国系 モバイル決済がある。 これまで飛騨・高山地域では個人商店が多く、クレジッ トカードなどのキャッシュレス決済インフラがあまり整 っていなかった。この理由として、決済端末や回線敷設費 などの導入初期コストが高いことが挙げられる。このた め、海外や国内から訪れた観光客が、クレジットカードな どのキャッシュレス決済ができず、消費に繋がらないと いう課題を抱えていた。またキャッシュレスインフラ整 備を外部のアクワイアラが手掛けると、手数料が外部に 流出するという課題もあった。 そこで飛騨信用組合は、アクワイアリングビジネスを 手掛けることで、キャッシュレス決済に対応する店舗を 開拓して、観光客の消費を高め、外部からの資金流入を増 やそうとした。さらに自身がアクワイアラになることで、 手数料を地域外に流出させないようにした。 図 3 「カード加盟店サービス」の全体像 出所:「飛騨信用組合ホームページ」をもとに再編成 IoT 端末としての専用決済端末 「カード加盟店サービス」の加盟店は、キャッシュレス 決済を行うために専用決済端末を設置しなければならな いため、飛騨信用組合が加盟店に対して、専用決済端末を 月額1,350 円(税別)でレンタルを行っている。また専用 決済端末は、決済時に与信照会データなどを送受信する ための回線が必要となる。これまで決済端末の回線は、固 定回線を利用することが一般的であったが、専用固定回 線を敷設することは加盟店にとって時間や費用的に大き なハードルとなるため、モバイル回線を採用している。モ バイル回線であれば、開通処理された専用決済端末を設 置するとすぐ利用することができる。飛騨信用組合はモ バイル回線を、月額500 円(税別)で加盟店に提供して いる。 専用決済端末は、ネットワークに常時接続されており、 専用決済端末で送受信するデータ量は非常に少ない。ま たアクワイアラである飛騨信用組合は、専用決済端末か ら得られる購買履歴をビッグデータとして活用すること ができる。よって、専用決済端末はIoT 端末と捉えるこ とができる。 IoT 端末としての専用決済端末によって、加盟店の導入 費用が低減されているため、キャッシュレス決済インフ ラ整備の課題がICT によって解決されている。よって「カ ード加盟店サービス」は、FinTech によって実現してい ると言える。 代金支払い 加盟店 支払い 飛騨信用組合 利用者 カード会社 キャッシュレス支払い 商品・サービス提供 代金支払い 与信確認 手数料

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地域活性化 2018 年には、飛騨・高山地域に国内外から 462 万人の 観光客が訪れており、とりわけ外国人観光客は 55 万人 が高山に宿泊している。「カード加盟店サービス」は、キ ャッシュレス決済インフラを整備して、この潜在的消費 を喚起するサービスである。 飛騨信用組合は、加盟店からキャッシュレス決済の手 数料収入を得ることができ、その収益は地元企業への融 資などに活用することができる。 よって、「カード加盟店サービス」は、FinTech を活用 することで、地域外からの資金流入を促進して、地域内に 還流させる仕組みと捉えることができるため、地域活性 化に貢献していると言える。 地方活性化における金融機関の役割 本研究では3 章で示した通り、経済的なアプローチに よる地域活性化を、地域内に財をストックして、その財を 地域内で循環させることや、雇用を生み出すことと定義 した。財を地域内にストックするとは、地域外に流出する 通貨量を減らし、地域外から流入する通貨量を増やすこ とに他ならない。 地域外に通貨の流出を阻止する取り組みについては、 「カード加盟店サービス」において、自らがアクワイアラ になることが該当する。飛騨信用組合がカード決済手数 料を加盟店より受け取ることにより、地域外に通貨が流 出することを防いでいる。 地域外から通貨を流入させる取り組みについては、 「FAAVO 飛騨・高山」による地域外からの資金調達と、 「カード加盟店サービス」による観光客の消費促進が該 当する。「FAAVO 飛騨・高山」はクラウドファンディン グによって、小口資金を地域外の支援者から効率的に資 金を集めることに成功している。アクワイアリングビジ ネスである「カード加盟店サービス」では、キャッシュレ ス決済インフラを整備することで観光客の消費を促進し て、地域外からの通貨流入を促進している。 地域内で通貨を循環させる取り組みとしては、「さるぼ ぼコイン」でのプレミアム付与や事業者間での「さるぼぼ コイン」決済が該当する。電子地域通貨である「さるぼぼ コイン」は、チャージ金額にプレミアムを付けることで、 法定通貨と比べて利用メリットが出たり、加盟店間の決 済は、現金化せず「さるぼぼコイン」のまま送金できたり するため、地域内で通貨を循環させるのに寄与する。 雇用創出については、「FAAVO 飛騨・高山」を通じた 起業支援が該当する。飛騨信用組合は起業家に対して、ク ラウドファンディングによる資金調達や、事業計画の作 成支援をする起業支援を実施する。このような取り組み から、雇用の創出が期待される。 これまで見てきたように、飛騨信用組合はFinTech を 活用した様々な取り組みを通じて、経済的なアプローチ による地域活性化を推進している。飛騨信用組合の経済 的なアプローチによる地域活性化によって、創出される 金と人の流れを図示すると図4 のようになる。実線は金 の流れで、点線は人の流れである。この図から、飛騨信用 組合が中心となり、新たな金と人の流れが生み出されて いることが分かる。これより経済的アプローチによる地 方活性化において、金融機関が果たす役割は、金と人の流 れを生み出すことである。 図 4 飛騨信用組合の取り組みにより生み出された金と人の流れ 地域活性化における FinTech の役割 飛騨信用組合はFinTech を活用することで、各取り組 みに存在している課題を解決している。「FAAVO 飛騨・ 高山」については、多くの支援者から小口資金を集める際 のコスト課題に対して、FinTech を活用したクラウドフ ァンディングによって、外部から効率的に資金調達を行 飛騨信用組合 支払い (さるぼぼコイン) 資金支援 (FAAVO飛騨・高山) 起業家 外部協力者・観光客 企業 住民 支払い(カード決済サービス) 手数料 (カード決済サービス) 融資 プレミアム (さるぼぼコイン) 支援 起業 商品・サービス 商品・サービス

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っている。「さるぼぼコイン」については、紙幣の地域通 貨は発行コストが掛かることや、法定通貨と地域通貨を 二重で管理しなければならないという課題に対して、 FinTech を活用した電子地域通貨によって、運用コスト の低減や管理のしやすさを実現している。「カード加盟店 サービス」については、決済端末や回線敷設費などの導入 コストが高いという課題から、キャッシュレスインフラ が整備されてこなかったという課題に対して、FinTech を活用したIoT 端末によって解決を図っている。これら により、各取り組みに存在していた課題をFinTech によ って解決することで、経済的アプローチによる地域活性 化を推進していることが分かる。 また飛騨信用組合の職員数は176 名と決して多いとは 言えないが、通常業務に加え、多くの新たな取り組みを実 行している。これはFinTech を活用することで、少ない 人数でも効率的に業務を行うことが可能になっているこ とを意味する。 よって地域活性化におけるFinTech の役割は、各取り 組みに存在する課題を解決することと、業務を効率化す ることである。 本研究では、地方金融機関がFinTech を活用して、経 済的アプローチによる地域活性化を推進するための実践 的な知見を得ようとしてきた。分析の結果、本研究の成果 は以下の2 点に集約される。 第1 に、経済的アプローチの地方活性化における金融 機関の役割は、金と人の流れを生み出すことが明らかに なった。地方金融機関はこれまでに培ってきた地域との 関係性や信用によって、経済的アプローチによる地方活 性化を加速させて、金と人の流れを生み出している。特に、 電子地域通貨やアクワイアラビジネスなどの決済インフ ラを整備することは、金融機関としての専門知識や地域 との関係性が重要になるため、金融機関が取り組むこと は大きなアドバンテージになっていると考えられる。 第2 に、地域活性化における FinTech の役割として、 各取り組みに存在する課題を解決することと、業務の効 率化を図ることが明らかとなった。ICT には、ビジネス モデルの変革や、労働生産性の上昇をもたらす力を秘め ているため、ICT の力が作用していると考えられる。 今回取り上げた事例は、金融機関しかできないものが 多い。電子地域通貨は資金決済法における前払式支払手 段に該当するため、金融庁への登録が必要となる。また地 域通貨を普通預金と同様に扱うには、銀行法に基づかな ければならない。さらに地域通貨は法定通貨と同様、発行 元の高い信頼力が必要となる。加えて、電子地域通貨やア クワイアリングビジネスの加盟店開拓において、地方の 閉鎖的な土地柄では、これまで培ってきた信頼力や関係 性が非常に重要になってくる。これらの障壁をクリアし て、取り組みを進めていけるのは、地域金融機関しかない。 地方金融機関は、金利低下や顧客である企業の停滞な どで、収益が悪化しているところもも少なくない。地方金 融機関と地域は共同体の関係性であるため、どちらかが 消滅すると共倒れになることを意味する。幸い地方金融 機関はまだ比較的体力があり、優秀な人材を抱えている ことが多い。また長年その地域で営業を続けてきたこと で、地域から大きな信頼を獲得している。 よって、今後地域活性化のキーとなるのは、地域金融機 関と考えられる。地域金融機関はFinTech を活用して、 金と人の流れを生み出すとともに、課題解決や業務を効 率化することで、経済的アプローチによる地域活性化を 目指していくべきである。 参考資料 [1] 遠藤正之, 「FinTech が中小企業金融にもたらす影響」日本政策金融公庫論集第 37 号, 2017 年 11 月, pp51-74. [2] 株式会社日本政策投資銀行「地域経済活性化の論点メモ-地域経済活性化の概念整理と主な取り組み事例 -」地域調査研究 Vol.4, 2009 年 1 月. [3] 総務省「ICT 地域活性化事例 100 選」総務省, 2019 年, https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/local_support/ict/jirei/index.html(閲覧日:2020 年 5 月29 日) [4] 松原 英治, 藤本 穣彦, 「地域内循環経済を促す地域通貨の参加と流通のデザイン : 「オリオン」(北九 州市折尾地区)の事例研究と電子地域通貨の展開」社会環境論究 Vol.11, 2019 年, pp43-68. [5] 飛騨信用組合, 「ディスクロージャー」飛騨信用組合, 2019 年.

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