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法人化10年と大学改革の取り組み(講演)

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法人化10年と大学改革の取り組み(講演)

著者

辻 洋

雑誌名

科学と工業

90

7

ページ

205-211

発行年

2016-07

URL

http://hdl.handle.net/10466/16357

(2)

講  演

講  演

法人化 10 年と大学改革の取り組み

辻  洋 1 は じ め に 丁寧なご紹介ありがとうございます。大阪府立大学 の辻でございます。私はかたい話をするのは余り得意 じゃないので,やわらかくいきたいと思いますが,ど うぞお許しください。私は京都で学生時代を過ごしま した。1978 年から日立製作所で金融機関や特許庁な どのシステムの研究開発に携わってきました。カーネ ギーメロン大学に留学後,日立製作所の大阪の研究所 に 6 年おりました。その後バブルがはじけ,1998 年 に大阪の研究所を閉鎖することになり、それが一つ の転機となり,2002 年から大阪府立大学の教員になり ました。赴任していきなり大阪府立大学,大阪女子大 学,大阪府立看護大学の 3 大学統合がありました。当 時の南努学長から,経営情報システムをやっていたの だったら情報システムを集約する担当をやってくれと言 われ,引き受けたのが運の尽きと申しますか,それ以来 管理職をおおせつかり現在に至っています。 2 大阪府立大学の概要 大阪府立大学の歴史を調べますと,一番古くは獣医 学講習所で,明治 16 年に創設され,大阪市立大学の 源流の大阪商業講習所に比べると少し遅い創設になり ます。その後,官立大阪工業専門学校,大阪青年師範 学校,また,化学工業専門学校や農業専門学校,大阪 社会事業短期大学,放射線中央研究所などの府立の 様々な教育機関や研究所が一緒になり,今の大阪府立 大学になっています。本学のここ最近の大きな変化と 言えば,大阪府立大学,大阪女子大学,および大阪府 立看護大学の三つの大学を統合して法人化したこと, さらに大阪府から大阪府立工業高等専門学校を法人へ 移管したことです(図 1)。 大学の規模ですが,常勤の教員が 662 名,職員数が 160 名,そして,高専を含めると 8,000 人を少し超え る学生が在籍しています。府立大学と高専の両方合わ せますと,大阪市立大学とほぼ同じ規模になります。 キャンパスは中百舌鳥,羽曳野,りんくうにあり,特 に中百舌鳥キャンパスは 46.5 ヘクタールの敷地を有 し,甲子園球場が 12 個分,仁徳天皇陵(大仙陵古墳) もほぼ同じ大きさの,広いキャンパスになります。大 きな敷地を持つ大学は多々ありますが,それは丘陵地 帯であったりするので,平地にこれだけのスペースの 本稿は平成 28 年 2 月 3 日の(一社)大阪工研協会新春講演会での講演内容をまとめたものである。 Incorporation and Reform in Osaka Prefecture University

公立大学法人大阪府立大学 理事長・学長 〔経歴〕 1978 年 京都大学大学院工学研究科修士課程 修了 株式会社日立製作所入社 カーネギーメロン大学 客員研究員 スタンフォード日本センター 客員研 究員 2002 年 大阪府立大学 教授 2007 年 学術情報センター情報システム部長 2012 年 現代システム科学域長 2012 年 理事(教育研究担当)・副学長 2015 年~ 公立大学法人大阪府立大学 理事長・ 学長 〔専門〕 経営情報システム,技術士(情報工学)

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講 演 キャンパスがあるというのは本学の特徴であると考え ています。 教育研究組織をこちらに示します(図 2)。平成 24 年の学士課程の教育プログラム改革のときに,経済学 部,人間社会学部,工学部,理学部,そして,生命環 境科学部といった昔からの伝統的な学部構成から,理 系中心の統合・再編をしたうえで,文理融合の現代シ ステム科学域をつくり,学士課程教育にかなり大きな 変更を加えました。今年が変更後の教育組織の完成年 度となり,1 ~ 4 年生を新学域で過ごした学生たちが 初めて卒業します。今回の卒業生を見ていて,私たち が目指した文理融合によって,問題解決に強い学生 が,相当数育ったかな,と思っています。短期間で再 編したためまだまだ課題もあります。それらの点は今 も改善の努力を続けているところです。 大学院についてですが,博士課程の 5 年間をマス ター 2 年,ドクター 3 年で,前後に分けるのは日本の 特徴的な制度ですが,本学では大阪市立大学と共同で 5 年制の博士課程プログラムを始めています。産業界 からの強いニーズで大学院が 2 年と 3 年に分かれてい るのかと思いますが,民間で研究に投資する余裕がな くなった今,大学が大学院で育てる人材に対して負う 責任というのも変わってきているのではないかと考え ています。 大学の財務状況ですが,基本的には運営費交付金を 大阪府からいただいて大学運営することになっていま す。私の着任したころは 137 億円あった運営費交付金 もどんどん減ってきています。平成 28 年度の予算額 は 95 億円にまで減少しており,かなり厳しい財務状 況になっています。それに応じて教職員数も 3 大学で 860 人いましたが,今では 662 人,来年度は 637 人と 減少します。こういう厳しい状況下で,いかに教育の 質を保っていくかというのが我々執行部に投げられた 課題です。 一方で,文科省を中心とした競争資金や企業との 共同研究費などの外部資金は,法人化前の約 15 億 4,000 万円から約 32 億円へと増加しています(図 3)。 外部資金の内訳ですが,会社と一緒に行う共同研究, 企業等から委託されて行う受託研究,寄付で賄う奨励 寄付金,文科省や学術振興会などの科学研究費補助 金,さらに,経産省や農林省などからの補助金があり 総 合リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 研 究 科 現 代 シ ス テ ム 科 学 域 知識情報システム学類 環境システム学類 マネジメント学類 工 学 域 電気電子系学類 物質化学系学類 機械系学類 生 命 環 境 科 学 域 獣医学類 応用生命科学類 緑地環境科学類 地 域 保 健 学 域 看護学類 総合リハビリテーション学類 教育福祉学類 自然科学類 工 学 研 究科 機械系専攻 航空宇宙海洋系専攻 電子・数物系専攻 電気・情報系専攻 物質・化学系専攻 応用生命科学専攻 生 命 環 境 科 学 研 究 科 緑地環境科学専攻 獣医学専攻 情報数理科学専攻 理 学 系 研 究 科 分子科学専攻 生物科学専攻 物理科学専攻 経 済 学 研 究 科 経済学専攻 経営学専攻 言語文化学専攻 人 間 社 会 学 研 究 科 人間科学専攻 社会福祉学専攻 看護学専攻 看 護 学 研 究 科 【学域】 【大学院】 【全学教育研究組織】 高等教育推進機構 地域連携研究機構 21世紀科学研究機構 国際交流推進機構 201 ※ 数字は平成27年5月1日現在の学生数 486 588 772 606 570 207 179 415 493 506 316 316 236 学域合計 5,602 110 82 106 160 252 146 35 - 45 49 52 41 博士前期 課程 博士課程・ 博士後期 課程 13 8 29 25 66 18 26 62 3 10 6 8 19 50 22 34 40 55 21 - 20 39 16 35 観光・地域創造専攻 17 - 総 合リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 学 専攻 臨床支援系領域 生活機能・社会 参加支援系領域 栄養支援系領域 45 41 研究科合計 1,381 455 博士前期 課程 博士後期 課程 【学部】 工学部、生命環境科学部、理学部、 経済学部、人間社会学部、看護学部、 総合リハビリテーション学部 357 学士課程合計5,959 量子放射線系専攻 21 9 ※ 人間社会学研究科は、平成28年(2016年)4月に「現代システム科学専攻」を設置し、同時に研究科の名称を「人間社会システム科学研究科」に変更予定。 (設置および名称変更届出済) 【府大高専】 本科 専攻科 総合工学システム学科 総合工学システム専攻 799 60

図2 大阪府立大学の教育研究組織

図 2 大阪府立大学の教育研究組織   公立大学法人

大阪府立大学

大阪府立大学 1883年 大阪女子大学 1924年 大阪府立看護大学 1937年 2005年に3大学統合、法人化 2011年、大阪府立大学工業高等専門学校 2013年11月4日に創基130年記念式典 高度研究型大学 ~世界に翔く地域の信頼拠点~ 図図 1 公立大学法人大阪府立大学設立の流れ1 公立大学法人大阪府立大学設立の流れ

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ます。ちなみに,図 3 の平成 26 年の額は,全国の大 学で 32 ~ 33 位に相当します。国はトップ 20 ~ 30 の 大学をサポートするとか,トップ 20 ぐらいを研究型 大学と見ていくといような方針になりつつあります。 もし,本学と大阪市立大学と一緒になれば,この順位 は 16 位ぐらいになります。研究型大学を目指すので あれば,両大学が統合した規模が間違いなく必要です し,教育型の大学を目指すならば,また別の道がある かなと考えています。 3 法人化後の大学改革について 3.1 組織改革 独立行政法人化してから 10 年間で二度,大きな組 織の改編をしています(図 4)。大阪府が直接,大学を 管理・運営する直営時代は三つの大学に分かれていま した。この 3 大学の統合・法人化を機会に 7 学部 28 学科に再編し,さらにその上に大学院をつくるという 形で,一度目の大きな大学の組織改革を行いました。 そして,橋下前大阪府知事が就任されたときには,大 単位:百万円 (下段:H16対比) H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 外 部 資 金 内 訳 共同研究費 262 277 355 663 353 357 289 339 362 359 412 357 受託研究費 228 245 367 777 720 771 1,222 1,088 1,196 850 1,159 904 奨励寄付金 233 227 242 227 203 230 217 229 180 213 245 272 科学研究費 982 669 833 887 1,052 1,106 1,094 1,086 1,193 1,188 1,173 1,185 補助金等 126 237 236 147 453 498 591 534 562 712 523 1,705  1,543  2,033  2,791  2,507  2,917  3,320  3,333  3,465  3,472  3,701  3,241  0 1,000 2,000 3,000 4,000 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 単位:百万円 法人化前 法人化後 H21年度は、別途、植物工場研究センター整備で11億円プラス H16→H26 2.1倍

図3 大阪府立大学の外部資金等の獲得状況

図 3 大阪府立大学の外部資金等の獲得状況 大阪女子大学 ・2学部2研究科 大阪府立看護大学 ・2学部1研究科 〔学部・研究科〕 ○7学部28学科 ・工学部 ・生命環境科学部 ・理学部 ・経済学部 ・人間社会学部 ・看護学部 ・総合リハビリテーション学部 ○7研究科21専攻・領域 〔全学教育研究組織〕 ○総合教育研究機構(H17設置) ○産学官連携機構( 〃 ) 〔学域・研究科〕 ○4学域13学類 ・現代システム科学域 ・工学域 ・生命環境科学域 ・地域保健学域 ○7研究科21専攻・領域 〔全学教育研究組織〕 ○高等教育推進機構(H23改編) ○地域連携研究機構( 〃 ) ○21世紀科学研究機構(H21設置) ○国際交流推進機構(H23設置) 〔教員組織〕 ○学術研究院(H23設置) 大阪府立工業高等専門学校 (~H22) 大阪府の直営 大阪府立大学工業高等専門学校 (H23~) 法人運営 選 択 と 集 中 大阪府立大学 ・5学部6研究科 ・先端科学研究所 法 人 化 ・ 大 学 再 編統 合 大阪府立大学(H17~) 大阪府立大学(現在) 機 能 強 化 公立大学法人(H17~) ~法人制度を積極的に活用~ 直営(~H16)

図4 法人化と二度にわたる組織改革

図 4 法人化と二度にわたる組織改革

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講 演 学のあり方をもっと考えようという話になり,いろい ろな議論の中で,もう少し理系を強化しようという方 向になりました。また,教養教育をおろそかにしない という点から,なるべく幅広く勉強した後に自分の専 門を決めるように改革しようと議論を行いました。そ ういった議論をもとに,七つの学部を,文理融合の現 代システム科学域,工学域,生命環境科学域,それか ら看護と総合リハビリテーションと教育福祉をひとつ にした地域保健学域の四つの学域に再編しました。 幅広く勉強することを目的に,学域共通科目を設け ております。例えば,現代システム科学域の中には三 つの学類(知識情報システム学類,環境システム学類, マネジメント学類)がありますが,どの学類に入って も,他の学類の専門科目も一緒に勉強しないと卒業で きない制度になっています。 3.2 教育方法の改革 教育方法についても改革を行っています(図 5)。図 5 の FD というのはファカルティ・ディベロップメントの ことです。私は 2002 年に大学の教員になったのです が,教育の仕方などについては何も教育を受けていま せんし,他の先生がどんな授業をしているかも知らずに 我流で教育を行ってきました。そういう状況を改善する ために,新任の教員研修をはじめ,各先生がお互いの 授業を見学することで,工夫を学び合う制度(ピア授 業参観)等を導入し,教員の能力開発を行いました。 成績については,“可”,“不可“という 2 段階の評 価ではなく,GPA を導入し,学生の半期ごとの成績 が把握できる形になっています。また,CAP 制では, 半期にとれる授業の数を制限しています。例えば,学 生によっては 2 年ぐらいで,卒論以外の要卒単位を取 得してしまう者もいましたが,そんなに詰め込んでは 授業の内容が身につかず,教育効果が出ないだろうと いうことで,こういう制度を設けています。 シラバスというのは授業計画書で,教員が,「私は こういう内容の授業をします」ということを書きます。 何を教えるかということを日本では教員自身が A4 の 半ページぐらい書いて済ますことが多いのですが,欧 米では異なります。あるコース,例えば機械のこうい うコースなら,この科目とこの科目とこの科目を教え なければならない,各科目についてはこういうことを 教えなければならないと決める人がいます。さらに, その内容が適切かというのを別の先生がチェックしま す。本学では,そこまではできていませんが,授業の 内容だけでなく学習目標や成績評価基準をしっかり書 いた書類を第 1 回の授業で配付するようにしていま す。さらに,ホームページで学外に公開しています。 ポートフォリオというのは,自分がどんな勉強をし たか,その学びから得た気づきをまとめ,自己改善 につなげていく取り組みです。これは IT を活用して 行っています。また,学生の成績を分析すると,1 年 生前期と 4 年間の成績とは強い相関がありますが,入 試の点数とでは全く相関がないことがわかりました。 つまり,学生の学業に対するモチベーションを最初の 半年間で如何に上げていくかが非常に大切になりま す。そこで,初年次教育を改革として,中等教育の受 動的な学習から能動的な学習態度へ学びの転換を目的 項 目 内 容 FD (組織的実施はH17~) 主な活動:授業アンケート、FDワークショップ、FDセミナー、新任教員研修、ピア授業参観など 企画立案:高等教育開発センター、審議機関、教育改革専門委員会(全学) 実 施:全学、学部局 GPA (H17年度入学生~) 算定方法:学期ごとに算出、授業科目ごとに5段階(4~0)で評価。 不合格となった科目や再履修した科目は加えるが、自由科目や他大学修得科目は除く。 活用方法:成績優秀者のCAP上乗せ。成績不振者の指導。研究室配属。早期卒業(一部の学部)判定等 CAP制 (H17年度入学生~) 受講申請の上限: H23年度以前入学生:前期25単位、後期25単位(実験、実習、演習科目、自由科目を除く。) H24年度以降入学生:1年次は前期24単位、後期24単位。2年次以降は原則、年50単位。 成績優秀者の上乗せ:成績優秀者は、次期に6単位まで上乗せ申請できる。 授業アンケート (H17年度後期授業~) 対象授業:学域、学部、大学院の授業(学部等が指定する少人数授業等除く。) 方法等 :Web実施が基本。年度により紙との併用。携帯の活用など工夫。担当教員からコメントを返す。 H24~学習ポートフォリオシステムを活用 シラバス 配付方法等:H21年度~ 第1回授業において配付。 H23年10月~学生ポータルに掲載 H23年度~ 学外公開ホームページに掲載 記載項目 :授業の基本情報、オフィスアワー、授業目標、教科書、参考書など10項目 アクティブ ラーニング 初年次ゼミナール(H24年度~、1年次、必修)、演習科目、インターシップ科目、卒業研究等。 学生の自習スペースとして、ラーニングコモンズをH22年度~順次整備 ポートフォリオ (H24年度入学生~) 目 的:目標を意識しながら学ぶこと、自分自身の学びを見つめる目を養うこと、学びについて得た気付 きを自己改善につなげること、を目的として導入。 記入事項:学期の学習目標、学習のふり返り、自己評価、受講科目の学修自己評価。 教員の活用:学生アドバイバーによる履修指導、授業担当教員の教育成果の確認、教育改善等 初年次教育 (H24年度~) 科目名等:「初年次ゼミナール」(必修2単位) 1年次前期配当 目 的:中等教育までの比較的受動的な学習態度から大学における能動的学習への学びの転換 クラス数等:91クラス、14人~18人/1クラス。学域混合により編成。

図5 教育方法の改革

図 5 教育方法の改革  

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に,テーマを与えて少人数のゼミを行っております。 このゼミですが,所属,専門に関係なく全学から 17 人以下のクラス編成を行い,学域混合という形でやっ ています。 3.3 経営・意思決定構造の改革 私は法人の理事長と大学の学長を兼務しています。 理事長・学長の補佐体制ですが(図 6),法人の重要事 項に関する審議決議機関として役員会を設け,この役 員会の理事の半数を外部から選任しています。また, 図 6 に示しますように,役員会の下に位置する,経営 会議の委員も半数を外部から,さらに,教育研究会議 の委員も外部から 4 名を選任することで,積極的に外 の意見を吸い上げながら運営しています。 私の就任当初は,改革をしてきてかなり払拭,融解 されてきていましたが,部局間にまだまだ壁があり, 情報の共有がなされていないという状況がありまし た。そこで,管理職の兼務発令により,管理職の所管 を拡大することで,部局間につながりをつくるという 試みを行いました。例えば,留学生に関する業務は国 際交流の部署が担当しており,留学生と日本人の学生 がうまく連携できないという事例がありましたが,そ れぞれの管理職を同じ人物に兼任させることで問題解 決をはかりました。 3.4 研究予算・人材育成制度の改革 研究予算については,研究室に大半を配分していた予 算分配の方法を見直し,予算の重点化・配分最適化を 行っています。今は私たち執行部でかなりの予算を確 保し,執行部が積極的にリーダーシップを発揮して配 分しております。具体的には,全学的な課題に取り組 むための重点戦略予算や,執行部が重視するテーマに 配分する学長裁量経費として予算を確保するとともに, 各部局にも部局長ができるだけ裁量を発揮できるよう 裁量経費などとして予算の配分を行っています。 人材の流動性の確保や能力ある教職員の育成では, 年俸制,任期付き教員の他に,テニュアトラックとい う制度を導入しています。これは 5 年間で目標とする 成果を達成できれば,任期なしのパーマネントの教員 に採用するという,目標をアサインして,その間は教 育負担を減らし,研究に従事していただくという人材育 成プログラムです。目標をあらかじめ提示することで, 教員のモチベーションの向上を目標に実施しています。 4 21 世紀科学研究機構 21 世紀科学研究機構という組織を作って部局横断 型の研究を進める取り組みも行っています(図 7)。以 前は大学では部局ごとに壁があり,交流する場がな く,他の部局の先生の活動がわからないような状況が 見受けられました。そこで,部局を超えてチームを作 れば,研究所長を名乗れる制度を作りました。つま り,先生たちが自主的に分野・部局横断型の連携研究 を提案し,バーチャルな研究所を組織して研究を行う 制度を作りました(図 7 の第Ⅰ群)。例えば工学の先生 と看護の先生が研究所を立ち上げ,共同で研究に取り 組んでいます。研究期間は延長可能ですが,原則 3 年 間の時限的なものとして設定しています。さらに,教 員主導で立ち上げる研究所(第Ⅰ群)に対し,本学の戦 略的な調査・研究課題を実施するために学長が指定す る研究所(図 7 の第Ⅱ群)や学長が開設する機構直轄の 研究所(図 7 の第Ⅲ群)は,大学主導で研究をサポート する枠組みとして設定されています。図 7 に示したよ うに,本機構を始めた平成 17 年度は,7 人の先生が 研究所を立ち上げることから始まりました。今では, 自分も研究所を作りたいと希望者が増え,平成 27 年 度は 44 研究所,現在では,おそらく,45 ~ 46 の研 究所が立ち上がっています。 さらに,21 世紀科学研究機構では,外部から客員 部局長連絡会議 ・意見交換 ・決定事項の連絡 ・戦略 的運営の ための重 要事項の 検討 企画・戦略会議 ・法人の重要事項に 関する審議議決機関 理事長・学長 (意思決定) ・大学の教育研究に関す る重要事項の審議機関 ・法人の経営に関する 重要事項の審議機関 ・法人及び大学運営に関する議案調整 各 全学委員会(特定課題) 凡例: 内規設置機関 定款設置機関 役員会 教育研究会議 経営会議 役員連絡会 外部:職員の社会人 採用 外部:職員の社会人 採用 外部:4名 外部:半数 外部:半数 各部局(原案作成)

図6 経営・意思決定の構造

図 6 経営・意思決定の構造

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講 演 研究員を招へいし,一緒になって研究を行うことを推 奨しており,参加していただいている数も年々増加し ています。オープンイノベーションという表現が適切 かはわかりませんが,本学の人間だけで研究や教育す るのではなく,外部とも協力しながら成果を出してい こうという方向で運営しています。 さらに,機構の研究所の中で成果を上げているもの のなかから,所管を変えて継続的に運用していく制度 も用意しています。その事例としては植物工場研究セ ンターや BNCT 研究センターが挙げられます(図 8)。 植物工場センターですが,最初は比較的小規模で研究 していましたが,将来への可能性が見えてきたので, 今は 21 世紀科学研究機構から所管を変えて,地域連 携研究機構の下で運営を行っております。ここでは, 農学の先生だけでなく,工学の先生,リハビリテー ションの先生,経済の先生などが入り,分野・部局 横断的な運営を行っています。また,BNCT 研究セン ターでは,がんの新しい治療の方策の開発に取り組ん でいます。もとは,京都大学,大阪大学,大阪医科大 学等々の外部の機関と共同で研究してきたテーマです が,本学も覚悟を決めて 10 年単位のスパンで運営し, 発展を目指しているところであります。 この 21 世紀科学研究機構を運営していく上で目指 していたのは,異分野,別部局の先生方の交流から生 まれる新しい分野へのチャレンジ,そこから外部資金 を申請し,客員研究員の協力やコーディネーターなど のサポート等を受け,うまくいった場合はコンソーシ アムを作るなどしてアイデアを実現していくことです 地域連携研究機構 第Ⅰ群 21研究所 第Ⅲ群 4研究所 第Ⅱ群 19研究所 ・地域文化学研究センター ・放射線研究センター ・生涯教育センター ・生物資源開発センター ・植物工場研究センター ・BNCT研究センター ・ ・ ・ 地域企業 利用 ・共同研究 ・委託研究 ・国際支援 複数部局教員に よる自発的提案 設立 学長 教員 21世紀科学研究所 3年間時限但し、延長可 指定 第1群:教員が自発的に計画する研究所 第2群:戦略的な調査・研究課題を実施するために学長が指定する研究所 第3群:戦略的な調査・研究課題を実施するために学長が開設する機構直轄の研究所 各学域・研究科・機構 各部局 ・新しい制度 ・新しいカリキュラム (コース、副専攻) ・施設・設備が整備されている ・継続的に運用する 外部資金トリガー コーディネーター 拠点形成教員 構成員 ・専任教員 ・客員研究員 [他大学( 国内・海外) 産業界…] ・ポスドク 客員研究員 設置 成長 展開 年度 第Ⅰ群 第Ⅱ群 第Ⅲ群 合計 研究員数 研究員数客員 17年度 7 0 0 7 70 4 21年度 21 7 2 30 274 42 26年度 21 17 3 41 549 93 27年度 21 19 4 44 551 86

図7 21世紀科学研究機構の概要

図 7 21 世紀科学研究機構の概要 B: Boron ホウ素 N: Neutron 中性子 C: Capture 捕捉 T: Therapy 治療 BNCT治療のためのホウ素薬剤開発 ・低分子ホウ素剤の開発 ・高分子ホウ素剤の開発 ・生物による評価 BNCT(ホウ素中性子捕捉療法) 完全人工光による植物生産 ・植物の体内時計(グリーン・クロック) の解明と生産ラインへの利用 ・農耕栽培実習フィールドとの一体運 営による植物生産研究 植物工場研究センター (H23年~) BNCT研究センター (H26年~)

図8 植物工場研究センターとBNCT研究センター

図 8 植物工場研究センターと BNCT 研究センター  

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(図 9)。さらに,うまくいった事例を集めて,書籍, セミナーや Web ページで共有しながら,自主財源の 獲得等のモデルを構築し,そのモデルをほかの人も勉 強して新たに挑戦していくという循環を作ることがで きたら良いと考えていました。少しずつですが,当初 目指していたものが実現できたと自負しています。 7 最 後 に 理事長・学長になって 3 カ月ぐらいがたった時,い ろいろなことがあり,とてもつらいと思うことがあり ました。みんなには言えないので,大学院生の指導 で来ていた米国の先生に相談した時,彼女がすらす らっと書いてくれた言葉が,「You are not alone in your role.」です。あなたの役割の中であなたは孤独じゃな いよ。これを聞いて急に肩の荷がおりて,よし頑張ろ うという気持ちになりました。この言葉を皆様にも紹 介したいと思って持ってきました。 最後に,今後の取り組みと課題です(図 10)。学士 課程の教養教育の重要性の浸透を目標にやっておりま す。大学院のコースでは,先生は「自分の学生は自分 のもの」という考えがあり,自分の学生が専門以外の ことをやって時間を潰すのを嫌う雰囲気があります。そ んな空気をもう少しでも変えていこうと思っています。 様々な取り組みを行っているところではあります が,図 10 に示しましたように,国際化への対応,教 職員の環境整備,大阪市立大学との統合等の課題があ ります。 駆け足になり恐縮でございますが,どうも御清聴あ りがとうございました。 (平成 28 年 4 月 21 日受付) OPU Good Practice レポジトリ 目標を設定したら 外部資金の申請 イノベーション 創出プログラム フォロアーによる 新規提案 (

I

nternalization) 垣根のない、出る杭 OPUマインド (

E

xternalization) (

C

ombination) (

S

ocialization) GP Good Practice 自主財源獲得モデル集 新分野の研究・教育に連 携してチャレンジ 「つながり」を共創 客員研究員、コーディネータ コンソーシアム、教職協働 TNIモデル 植物工場モデル ものづくり イノベーション・モデル

図9 21世紀科学研究機構成長の循環モデル

図 9 21 世紀科学研究機構成長の循環モデル (野中氏提唱の SECI モデルを参考に作成)   ○戦略的でわかりやすい情報発信 ・ I R(情報の収集と分析)の推進 ・ 教員活動データベースの展開(教員 評価にも活用) ○国際化への対応 ・ 国際通用性、互換性、標準化 ・ 留学生支援の充実 ・ 海外への派遣支援 ○教職員の環境整備、SD・FD ・ 教員の研究時間の確保(教員支援の 強化、会議等の時間の縮減) ・ 教員と職員の適正な業務配分 ・ 教職協働の推進 ・ 職員の育成、プロフェッショナル化 ○今後の改革の進展 ・ 学士課程教育における教養教育の 重要性の浸透 ・ 大学院におけるコースワーク ・ 研究公正・服務管理の実質化 ・ 教育研究環境の継続的更新計画 ・ 大阪市立大学との統合に向けた対応

10 今後の課題

図 10 今後の課題

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