• 検索結果がありません。

証券投資技法の基礎と概要(1)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "証券投資技法の基礎と概要(1)"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

連載講座1111111111111111川聞111111111111111111111111111111酬1111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111川11111111111111111川川酬1111111111111111

証券投資技法の基礎と概要 (1)

石井吉文

1

.

米国証券市場と投資理論の発展

最近,米国においてはコンピュータを駆使した投資管 理が活発化している.たとえば昨年 10 月の株式大暴落に おいても米国ではその 1 つの原因として,いわゆるプロ グラムトレーディングの影響が大きく取り上げられた. ところでプログムトレーディングとは債券や株式の刻 々の価格変動に対し, コンピュータプログラムによる売 買指示さらには売買注文を同時に行なうものである.こ のプログラムトレーディングが活発に行なわれだしたの は 1980年代に入ってからのことであり,特に 1986年に入 ってからは株式市場の価格形成に大きな影響をおよぼす ものとなってきたと言われている.そこでまず簡単に現 在のようなプログラムトレーディングが活発になるまで の証券投資手法・理論発展に関し時代をおいながら述べ ていくことにしたい. 1929年の株式市場大暴落は多くの教訓を残した.その 1 つの現われが 1934年の[証券分析 j (ベンジャミン・グ レアム著) (以降, 1960年代までのロングセラーとなる) に見られるように,“投資は十分な分析にもとづいてなさ れるべきものである"といった投資に対する新たな考え 方がおこってきたことである.それまでの株式投資は十 分な投資分析によらず,むしろ感覚的に行なわれるもの であった. 1929年の大暴落はそういった状況下,さらに 株式市場の活況化に伴なう投機的な売買行為が進展して いったところに 1 つの大きな原因があったのである. 1929年の株式大暴落がその後の市場に与えた心理的な 後遺症は大きく, 1950年初頭まで投資家の間では超保守 的な,むしろインカム注1)狙いの投資スタイルが定着し ており,再び株式市場が活況を呈するようになったのは 注1)・インカム・ゲイン 利子・配当収入.これと対照的なものがキャピタルゲ イン いしい よしふみ紛ニッセイ基礎研究所 〒 100 千代田区有楽町 1-1-1 日比谷ピル 1988 年 8 月号 1950年代半ば以降であった.それと時を同じくして投資 分析における理論面での発達もみられるようになってき た. 1952年のハリー・マルコヴィッツによる rportfolio Selectionj では,“ポートフォリオ注2) 選択は,主とし てリスクとリターンの組合せによる"ことが主張され, この方向はその後,ジェームズ・トーピン,ウィリア ム・シャープ等により, いわゆる rModern

P

o

r

t

f

o

l

i

o

Theoryj によって確立されるに至ったのである. しか しそれらは当初,あくまで市場が効率的であるといった 仮定のもとで成立するものであり,単なる理論にしかす ぎないといった認識から,実際の投資に直接活用される ことは少なかった. ところでその後,株式市場は活況を呈し 1960年代には ゴーゴーブアンド(成長銘柄群への集中投資)の盛行に みられるようなキャピタルゲイン注3) によるパフォーマ ンス競争が展開していった.その中でプアンドマネージ ャーが世の中で脚光を浴びるようになったことは当然の ことであろう. また,企業年金市場は拡大を続けていった.その投資 方法の特徴をみるならばゴーゴーファンドと同様, Nifty

-

F

i

f

t

y

(魅力ある 50銘柄)銘柄を中心にした特定株への 集中投資であった.しかしながらケネディーの後を継い だジョンソン大統領の時代に入り,インフレが経済のあ らゆる面に深く根をおろすようになった.そういったな かで企業収益も 1965-66年をピークに伸び悩みを見せる ようになり,さらに 1973年 II 月に勃発した第 1 次オイル ショックはゴーゴーファンドや Nifty-Fifty 銘柄への集 中投資の前提となっていた企業収益の持続成長の可能性 に決定的な打撃を与えるものとなった.そして翌年 1974 注2) ・ポートフォリオ 株式,債券,貸付,外国証券,金等ある投資目的(リ スク=リターン)によりそれらの資産を組み合わせるこ とまた組み合わされたもの 注 3) ・キャピタル・ゲイン 資本収益率.簡単にいうと元本の値上がり益.たとえ ば株式の配当はインカム・ゲインで,株価が買い値より 上がれぽその差額がキャピタルゲインになる (49)

4

1

7

© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.

(2)

年の株式大暴落は特に Nifty.Fifty 銘柄に大きく影響を 与え,それまでのプロのファンドマ不一ジャーは大方, 多くの損失を被むることとなったのである.このような 状況に対し,学者サイドからは強周な理論武装と膨大な 実証分析の結果をふまえて痛烈な非難があびせられるよ うになった.以上の時代背景のもと,投資理論(モダン ポートフォリオセオリー)が 1970年代末には本格的にマ ネージメントの世界に影響をおよぼしはじめた. さらに投資理論の台頭を語る場合, 1974年の ERISA 法 (Employee

Retirement Income Security Act of

1974) の判定は無視することができない事柄であろう.と いうのも,それまでに大きな拡大をみせてきた企業年金 について,この法の中ではフe ルーデントマンルール注4) にもとづく帰結として,分散投資によるリスク管理が義 務づけられているからである.このことは ERISA 法が 投資理論の研究成果をとり入れたと見ることができるの である. また,投資理論が実際のマネージメントの世界に活用 されるに当つては,アカデミックな世界の新動向,つま り理論を L 、かに実践に応用するのかについて力が注がれ るようになったことも見逃がすことはできない. 投資理論の実際の投資マネージメントへの活用の活発 化に関してさらに忘れてはならないのがコンピュータの 発達,低廉化であろう.投資理論の進展とともに実際の マネージメントの世界にそれらが活用される場合,膨大 な数値計算を即座に行なう必要性が高まってきたからで ある.また 1980年代に入るとコンピュータをフルに活用 した投資顧問会社等が現われ,それが優れた実績パフォ ーマンスをあげたことは,先物・オプション注5) を積極 的に活用した投資戦略の高まりとともに,コンピュータ を活用した投資戦略にさらに拍車をかける形となってい った.

2. 米国における投資理論・分析家の拡充

以上述べてきたように 1950年代のマルコヴィッツの 「ポートフォリオセレクション j 以来,主に確率論的ア プローチをもとに投資理論が発展し,また実際の世界で 広く活用されるようになった.しかし,その背景として 忘れてならないことは特に 1970年代に入ってから学者サ 注4) ・プルーデントマンルール 簡単に言うならば他人のカネを責任をもって運用する ための標準的なルール. 受託者(年金等)は資金の運用において慎重であるべ きで,キャピタノレ益を追い求めるような投機的な投資行 動をなすべきでないといったもの. 表 1 ( 1 )企業の資金調達構成の変化(純増額) 資料: r法人企業統計季報J より 資本金 10 億円以上の企業につき集計 ① 56-58年度 ② 59-61 i!'-)交 イドで投資理論をし、かに実践に活用するかに注力された こと,またその成果が L 、ろいろな検証分析の結果,有効 であると示されたことである.また,こういった背景の もと,最近の投資理論,その実践活用の活発化は,金融 の世界に投資理論を専門とする学者たちを活発に招き入 れるようになり,相乗的な効果を生み出すこととなった のである.また,投資理論を専門とする者以外でも 1970 年代末までにウオールストリートの主だった証券会社は コンピュータや統計学,数学に詳しい人材を次々に採用 し,計量,調査グループを持つといった理論の実践活用 に向けて人材面での充実を図っていった.また同様に学 注ラ)・先取取引 3 カ月とか 6 カ月というように将来の約束の日時に商 品の受け渡しと代金の決済をすることを現在時点で契約 する取引. ・オプション取引 一定期間中に株式等ある投資対象を指定の価格で買う (または売る)権利を取引すること. (オプション理論を活 用した先物投資戦略) ポートフォリオ・インシュランス (P.I) がその l つ. なお,ポートフォリオ・インシュランスとは先物の売建 額を日々価格変動に対応し変化させオプションと同様の 効果をもたらす手法.

(3)

表 1 (2) 企業の証券市場における資金調達(発行額) (金額単位:億円)

年度 1

1

1

5

1

2

5

1

3

5

4

1

5

1

5

5

1

6

5

1

7

5

1

8

5

1

9

5

1

6

0

1

6

1 州!臼

1

1

;

:

1

1

:

2

1

1

;

:

;

;

;

1

2

1

9

2

1

1

;

:

2

1

1

:

:

:

;

;

l

;

1

1

J

7

1

1

1

:

:

;

;

;

1

2

1

;

:

;

;

;

l

;

:

;

:

:

-,ー1 ー 2001

4

7

0

1

1

7

0

1

3

0

1

5

5

0

1

1 , 0401 ー l ー 内&別1 7, ω41 叫 3判 6,6051" ,仰 1 17, 9判叫 1 刊 8, 4951 8, 1矧 6, 5131

6

,

3151 8

2

9

6

2

0

小計凶 120, 453121 , 127126, 232123, 121122,刈 36,叫 25,叫円

105

1 川9料吋 51 ,

835

1ι 叫 7, 880

普通社債 1

2

,

135!

1 的1,

2

7

0

1

1

,

7

8

6

1

1

.

6

8

0

1

仰 11 6, 81~ 4, 03~ 11 , 34引 14, 393116, 3921

1

,

5771

1 , 04位

2

海|転換社債 1 1し,叫乙μ2川 4, 2

2初8判1l 刊11 5丸引:

1

4

9

1

1

新株引受

一斗|

一斗

-1

-

1

4431オ

6倒兜矧| 丸口231叫lUl 4, 3幻361

8

,

6621

叫 9伺321 1 , 2ω

凶1 4, 4引14

権付社債 -1

-

1

一 一-1 一-1 つ .),""..1

11

"'l,J.J

VI O)VV""1 17

,

7-'''''1 1

,

"'101

外 I~

R

1

9卯06町 5兇87引 13珂4引 14矧8司1 1し, 0ω771 2乙, 8川87刊4 臼7可 77明8町 4仰9円 10町7引 61 一「|一

lI'J小j、 計 ω叫l 引仰仰7乃~j~,竺剖竺到I_~,竺千竺子

合 計 ω+柵ω 1

同勿仰

2

5

, 0詞込1ムム, 39

刈刈"別刈01わ1

3引凡仰川

1

しリ

, 9刈9引

17

1

3犯丸州

O

0, 6州山~可市丙f5丙一

7瓦一}元

i函i示丙ム61い叫州

4化,

067

1 抑制|ω伽, 017110, 185113, 761

債債受債資 社社引社増 通換株付償 普転新権有 国 (比率) (単位:%)

年度 1

1

1

5

1

2

5

1

3

5

5

4

1

1

5

5

1

6

5

1

7

5

5

8

1

1

9

5

6

0

1 司 62/41ω

国 1Z222111ti 引 113;:J:;:;::;;;i;;:;l;;:;l;;1;;:;|;::;l;::;

内 12il3J

J

J2JJ 二 4 1::j13110:。 6

1

.

;J,.-i雨下一;一汗云~T 82.21- 叶川1 72.01 ム可~54.

5

1

7

2

.

5

1

49.8円可-…戸五

時間 |85!5814 い 8l i!可五 2192l19 戸 1~.~1

1

:

:

~I

|転換社債|

6

.

2

1

8

.

7

1

1

3

.

4

1

8

.

2

i

16.

[

2

0

.

4

1

5

.

8

i

2

7

.

0

1

2

0

.

4

1

4

.

6

1

.』

.

新株引受 i

l

J

i

!

i

n

n

l

TJ

マ包

7

Q

!

1

Q 包| 引に 1 '1,,1

':l'1

1

権付社債!

-

1

-

1

V

.

7

!

'・ 1 4 ・ -'1 '.-'1 ・ J <0,・ノ・ v ,

外!日 1811川一日-iU315147150141 一

一両山崎:)r lO()~

1

1

0

(

)

(

)

.

~…|ふ f;…|一日 i川 i川 l…Iloo~I-;…1

1

川…

(出所) 公社債月報 者の世界からも,たとえば原子物理学者や数学,エンジ る.彼は今 4 人の Ph.

D

, 6 人のエンジニア,物理学 ニリアングといった元来,金融にはまったく縁遠い分野 者,天文学者各 1 名からチームをかかえているというこ で博士号をもっ研究者や大学教授をも積極的に招き入 とである. れ,もはや現在では彼らがウオールストリートを占領す また,オプションの世界で有名なフィッシャー・プラ るにいたっている. ック(ブラック・ショールズモデルの開発者,現在,ゴ たとえば大手投資銀行モルガンスタンレーに引き抜か ールドマン・ザックス)は,もともと MIT で数学の有 れたヌンツォ・タータグリアはベル研究所出身者であ 能な教授であった. る.彼は天体物理学者であり,ベル研究所では太陽圏と 近年米国でおこった投資,ボートフォリオ革命は,一 地球滋場との相互作用を研究していた. 方で数理,コンピュータ革命である.理学・工学の人間 やはり投資銀行ファースト・ボストンのデクスターセ が金融の世界に多量に流れている様はむしろ当然のこと ンブトは数学の世界でさまざまな業績をあげた 1 人であ と言えるのである. 1988 年 8 月号 © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.

5

(

1)

4

1

9

(4)

3

.

日本における金融市場の変遷

以上述べてきた米国での変化は現在,日本の金融界に も影響をおよぼしつつある.しかし,それはむしろ最近 のことであり,これまで実際に日本の金融市場で米国流 の投資理論・手法が直接活用されてこなかったのは l つ に日本の金融市場の持つ特質に問題があったと言えよ う.そこで日本の金融市場の変遷について目を向けてみ ることにしよう. 元来,日本の金融取引を見るならば資金の調達側(企 業)は高度成長の時まで銀行からの借り入れにその多く を依存していた.また資金の運用側にとっても多くを企 業向貸付で行なってきた.当時,企業にとって資金を借 り入れ,たえず設備投資を行なっていけば事業は好調で あり業績は拡大していった.またこういった拡大傾向の 中で企業にとって資金は恒常的に不足しており(つまり 資金需要が高かったわけであり),必要とされる資金は質 (金利水準)よりむしろ量が問題であった.よって,資金 運用側(金融機関)にとっても企業向貸付は相対的に高い 金利で,また保有資金の多くを運用することができる格 好の運用手段であった.つまり当時,日本の金融市場に おいて主要なものは金融機関一企業聞の貸借であった. よって金融機関にとって大きな関心事となるのはし、かに 高い金利で多くの資金をさばくかであった.ところで貸 付による運用は証券のように価格変動リスクが表面化し ないため,投資リスクに関する概念は自ずと金融機関に とって希薄とならざるを得なかった(当然,貸付にも企 業の貸倒れリスクは存在するが,当時の貸付先は主に優 良企業であり,大きな問題となることは少なかった). しかしながらその後 2 度のオイルショックを経て日本 の金融構造に大きな変化が生じた. 1 つは金余り時代の 到来である.また 1 つは金融の自由化・国際化である. そういった中で資金の調達側は少ない資金をし、かに低い コストで調達し,また短期的に発生する余資を効率的に 運用していくかに大きな関心を向けるようになってきた のである. (表 1 からわかるように近年,資金調達の中で 借入れの比率は低下し,証券を中心とするより多様な資 金調達が行なわれるようになってきた.) より有利な資金運用についていうなら,それは単に企 業だけでなく一般個人にとっても同様である.各々の保 有する資金・資産を L 、かに効率よく,また高い利回りで 運用すべきかといったことが国民全体の関心事となって きた.こう L 、った時代変化の中で金融機関にとっていか に高い利回りを顧客に提供できるかが自己の存命をはか っていくうえで重要なポイントとなってきたのである. こうして金融機関は時々の経済環境をみすえながら機 動的に多くの投資対象の中から適切な投資対象を選択し かっその中でいかに高いパフォーマンスをあげるかに力 を注がざるを得なくなったのである.単に貸付によって 量をさばけば良い時代は終り,資金運用の質,ノウハウ が求められる時代へと変化したのである. なお,いうまでもないことであるが,日本の金融構造 変化の中で最も大きなものは金融の証券化である.そこ で資金運用者(金融機関)にとって新たに問題となるのが 証券投資リスクおよび投資収益率の問題である.すでに 述べたように貸付主導の資金運用の場合,将来の投資収 益率は貸付約定のさいの金利水準で決定され,顕在化す るリスクとは貸倒れリスクのみであった.一方で証券の 価格変動は不確定であるから,結局,金融機関(資金運 用者)にとって金融の証券化の流れ(運用資産に占める証 券比率の上昇)は運用資金全体にとって将来の投資収益 率の不確定性(リスク)の増大を意味することとなった. ところでリスク対策になくてはならないのが l つに先 物・オプション市場である.そこでまずは 1985年 10 月に 国債の先物市場がスタートした.その取引高をみるなら ば発足当初より大幅な拡大をみせ,現在においては現物 の取引高を上回り,また先進の米国国債先物(シカゴ)の 取引高をも上回る世界最大規模のものとなっている.ま た,オプション市場も近々開設されることとなっている. 一方,それら市場の規模拡大は単なる投資家のリスク ヘッジ手段注6) のみならず,それら取引を現物取引と種 々組み合わせた新しい金融商品の台頭,新しい投資戦略 を可能とし,日本の金融市場にも米流の投資理論・手法 が受け入れられることを意味し,今後それらのさらなる 実践活用が見込まれる. 以上,日本の金融市場の変化から現在の投資理論・手 法の活用の可能性をみたわけであるが,それについて述 べる場合,欠くことのできない最近の大手(機関)投資 家の動向について,その資金運用の変遷からから投資理 論・手法が注目を浴びるようになってきた状況を簡単に 次節で述べることとしたい.

4

.

日本の大手投資家の資金運用の変遷

一一車利指向から総合収益重視へ 注6) ・リスクヘッジ手段 投資行動に伴なうリスク(危険)を回避する手段.投 資リスクには価格変動リスク,デフォルトリスク等があ るが,価格変動リスクを回避する手段として,先物,オ プションは重要な市場.

(5)

もともと日本の大手(機関)投資家にとって運用パフ ォーマンスの基本となるのが直利(投資元本に対するイ ンカム収益率)といった(キャピタル益のかえりみられ ない)インカムゲイン重視のものであった.というのも 元来,投資対象としては金利収益率の相対的に高い貸付 がメインであり,キャピタルゲインは問題となり難かっ た(価格変動資産への比率が低かった)こと.さらに証 券投資に関しては,短期的な価格の変動は特に長期運用 を目的とする投資家にとって長期的観点に立てばもはや そこで被むるリスクは小さい(平準化される)というこ とであった.さらにキャピタルゲインについてあまりか りえみられなかったのは主にキャピタルゲインはダイレ タトに投資家の期間収益として反映されず,いざという 時(大きな価格変動により大きな損失を被むる場合)のた めの積立金といった意味あいをもたされてきたこと(法 的制約があった)にあろう. よって価格変動に伴なうリスクに対する考えも希薄で あったことは当然と言えよう.しかしながら近年になっ てこういったリスクに対する考え方を改めなければなら ない状況が生じてきた .1 つに昭和50年代に入ってから金 融の国際化とともに外債投資が積極的に行なわれるよう になったこと(為替,価格変動リスクを考えなければ直 利ベースで評価して外債はうまみのある投資対象であっ た)があげられる.当時200円/ドル -250円/ドルといっ た為替水準での大量の米ドル債投資が最近の円高によっ てどれだけ多くの為替リスグを被むらなければならなく なったかは明らかであろう.また,すで・に述べたように 外債投資における為替リスクの問題だけでなく近年,企 業の資金需要が低迷しているなかにあってはもはや資金 配分の証券比率を上げざるを得なくなってきている.そ のことはつまり現在の資金運用者にとって将来の投資収 益率が不確実性のもとにおかれているとともに運用資金 全体の投資リスク増大と結びついているわけである. さらに投資家の中でもたとえば生保についてみるなら ば最近,新たに変額保険および年金の分離勘定注7) とい った短期の(運用資産の)価格変動が直接運用収益を直接 左右するもの(キャピタルゲインが投資収益とに反映さ 注7) ・変額保険 資金の運用実績にもとづいて,保険金額を変動させる もので従来の定額保険の資金とは明確に区分して運用す るもの -年金の分離勘定 分離勘定は,商品ごとあるいは各契約ごとに資産を分 離して運用するもの.個人保険分野では,昭和61 年 10 月 に「変額保険」として発売されたが,近年企業年金分野 においても分離勘定が検討されている. 1988 年 8 月号 れるもの)の量的拡大に及んでは,もはや単に金融環境 の変化のみならず独自の体質変化に応じて収益=リスク 聞の資金運用管理が必要となってきたのである. 以上のことはつまり日本の大手投資家にとって資金運 用管理が 1 次元(リターンのみ)のものから. 2 次元(リ スク=リターン)のものへと変化したこと,さらにそう いったなかで最も適切とされる資金配分を常に考えてい かなければならなくなってきたことを意味する.これま で行なわれてきた直感的な投資方法ではこのことはもは や対処不可能となり,先に述べたように米国流の投資理 論をとり入れ活用せざるを得なくなってきたのである (ただし,日本の市場は米国市場に比べ特異な性質を持 つため,理論をダイレグトに適合でき難いといった問題 は残されては L 、るが).

5

.

現在の投資理論・手法(実践応用さ

れているもの)のフレームワーク

以上述べてきたように日本の金融界にも米国で生まれ た投資理論・手法が急速に浸透するようになった.なお その主たるフレームワークをあげるならば以下の通りで ある. ・ポートフォリ理論(アセットアロケーション) ・債券投資理論(金利感応度分析) ・株式投資理論 (CAPM,

APT)

・リスクヘッジ理論(オプション理論) ・裁定理論(スプレッド分析,スワップ) ・予測モデル(時系列解析) ・市場効率性分析(統計手法) ところで今回の連載講座ではその概要,特にその基礎 的部分について簡単に紹介していくこことしたい. 参芳文献

[

1

]

ポートフォリオ理論(アセットアロケーション)

Bawa

,

V. S.

,

S

.

J

.

Brown

,

and

R

.

W. Klein.

Estimation Risk and Optimal P

o

r

t

f

o

l

i

o

Choice

(Amsterdam: 1979)

,

North Holland.

Sharpe

,

W. Asset Allocation Tools (

P

a

l

o

Alto

,

C

a

l

i

f

.

:

1985)

,

S

c

i

e

n

t

i

f

i

c

P

r

e

s

s

.

Elton

,

E.

,

and M.Gruber.

Estimating t

h

e

Depenュ

dence Structure of Share Prices-Implications

f

o

r

P

o

r

t

f

o

l

i

o

Selection

,"

Journal of Finance 2

8

.

(December 1973)

,

p

p

.

1

2

6

5

-

1

2

7

3

.

Margrabe

,

W.

The Value o

f

an Option t

o

Exュ

change One Asset f

o

r

Another." Journal of

(

5

3

)

4

2

1

(6)

Finance 3

3

(March 1978)

,

p

p

.

1

1

7

-

8

6

.

Rubinstein

,

M. and H. Leland.

Replicating

Options with P

o

s

i

t

i

o

n

s

i

n

Stock and Cash."

Financial Analysts

JOU1・nal

3

7

(J

uly-August

1981)

,

p

p

.

6

3

-

7

2

.

lbbotson A

s

s

o

c

i

a

t

e

s

.

Stocks

,

Bonds

,

B

i

l

l

s

and

I

n

f

l

a

t

i

o

n

:

1

9

8

5

Yearbook. (

C

h

i

c

a

g

o

:

1986)

,

Ibbotson Associates

,

C

a

p

i

t

a

l

Management

Research Center.

[2J

債券投資理論

Brown

,

S

.

J.

,

and P

.

H. Dybvig.

The E

mpirical

Imp

1

i

c

a

t

i

o

n

s

o

f

t

h

e

Cox

,

Ingersoll

,

Ross Theory

o

f

t

h

e

Term S

t

r

u

c

t

u

r

e

o

f

I

n

t

e

r

e

s

t

R

a

t

e

s

.

"

Journal of Finance 4

1

(J

une 1986)

,

p

p

.

6

1

7

-

3

0

.

Coleman

,

T

.

;

L

.

F

i

s

h

e

r

;

and

R

.

l

b

b

o

t

s

o

n

.

“Estimating Forward I

n

t

e

r

e

s

t

Rates and Yield

Curves from Government Bond P

r

i

c

e

s

:

Methodology and S

e

l

e

c

t

e

d

R

e

s

u

l

t

s

.

"

Working

paper

,

Yale Unìversìty

,

1986

,

unpubl shed.

Fong

,

H. G.

,

and O. Vasìcek.

Term S

tructure

Model ng."

Journal of Finance 3

7

(1

982)

,

p

p

.

3

3

9

-

3

8

.

Ibbotson

,

R. G.

,

and G. P

.

Br nson.

Investment

Markets: Gaining t

h

e

Performance Advantage.

New York: McGraw-Hill

,

1

9

8

7

.

Macauley

,

F

.

Some Theoretical Problems Suggesュ

t

e

d

by t

h

e

Movement of I

n

t

e

r

e

s

t

Rates

,

Bond

Yields

,

and Stock P

r

i

c

e

s

Since

1

8

6

5

.

(New York:

National Bureau o

f

Economic Research)

,

1

9

3

8

.

Toevs

,

A. “ H芭 dgìng

I

n

t

e

r

e

s

t

Rate Risk o

f

Fixed

Income S

e

c

u

r

i

t

i

e

s

w th

Uncertain Lives" i

n

Platt

,

R. Controlling Investment Rate R

i

s

k

.

(New York: John Wiley & Sons)

,

1986

,

p

p

.

1

7

6

-

9

6

.

[3J

株式投資理論

Chen

,

N.;

R

.

R

o

l

l

;

and S

.

A. Ross.

Economic

Forces and t

h

e

Srock Market" Journal of

Business

,

59

,

J

u

l

y

1986

,

p

.

3

8

3

-

4

0

3

.

Farrell

,

J.L.

,

J

r

.

Guide t

o

P

o

r

t

f

o

l

i

o

Management.

New York: McGraw-Hill

,

1

9

8

3

.

Fie

1i

tz

,

B. D.

,

and F

.

L. Muller.

A S

mp

1

i

f

i

e

d

Approach t

o

Common Stock V

a

l

u

a

t

i

o

n

.

"

Finanュ

c

i

a

l

Analysts Journal

,

November-December

1985

,

p

p

.

3

4

-

4

1.

Fogler

,

H.

R.“

Common Sense on CAPM

,

APT

,

and Correlated Residuals."Journal of P

o

r

t

f

o

l

i

o

Management

,

Summer 1982

,

p

p

.

2

0

-

2

8

.

Marathe

,

V. V.

“Portfolio B

eta E

s

t

i

m

a

t

i

o

n

.

"

In

The Investment Manager's Handbook

,

e

d

.

Sumner N. Lev ne. Homewood

,

I

l

l

.

:

Dow

Jones-Irwin

,

1980

,

p

p

.

2

0

2

-

2

1.

Lavely

,

J

.

:

G. Wakef eld; and B

.

B

a

r

r

e

t

t

.

“Toward Enhancing B

eta E

s

t

i

m

a

t

e

s

.

"

Journal

of P

o

r

t

f

o

l

i

o

Management

,

Summer 1980

,

p

p

.

4

3

-

4

6

.

Statman

,

M.

Betas Compared: M

e

r

r

i

l

l

Lynch

v

e

r

s

u

s

Value L

i

n

e

.

"

Journal of P

o

r

t

f

o

l

i

o

Management

,

Winter 1981

,

pp.

4

I

-

4

4

.

[4J

オプション理論

Black

,

F.

,

and M. Scholes.

The Pr cing o

f

Options and Corporate L

i

a

b

i

l

i

te

s

.

"

Journal of

P

o

l

i

t

i

c

a

l

Economy

8

1

(May 1973)

,

p

p

.

6

3

7

-

5

4

.

Cox

,

J.

,

and M. Rub nste n.

Option Markets.

Englewood Cliffs

,

N. J

.

:

Prentice-Hall

,

1

9

8

5

.

Galai

,

D.

A Survey o

f

Emp r cal

T

e

s

t

s

o

f

Option

P

r

i

c

i

n

g

Models." Working

paper 枠2-83 ,

Gra.

duate School o

f

Management

,

Un vers ty

o

f

C

a

l

i

f

o

r

n

i

a

a

t

Los Angeles

,

1

9

8

3

.

Gambola

,

M. J

.

;

R

,

L

.

Roenfeldt; and P

.

L

.

Cooley.

“Spreading S

t

r

a

t

e

g

i

e

s

i

n

CBOE

Options: Evidence on Market Performance."

Journal of Financial Research

1

(W nter

1978)

,

p

p

.

3

5

-

4

4

.

Jarrow

, R.,

and A. Rudd

,

0ρtion

P

r

i

c

i

n

g

.

Homewood

,

I

l

l

.

:

Richard D. lrwin

,

1

9

8

3

.

Parkìnson

,

M.

Option Pr c ng:

The Amer can

P

u

t

.

"

Journal of Business 5

0

(J

anuary 1977)

,

p

p

.

2

1

-

3

6

.

Trennepohl

,

G. L.

,

and W. P

.

Dukes.

Return

and R sk

from L

i

s

t

e

d

Option I

n

v

e

s

t

m

e

n

t

s

.

"

Journal of Financial Research 2

(Spring 1979)

,

表 1 (2) 企業の証券市場における資金調達(発行額) (金額単位:億円) 年度 1   1 15   1 25   1 35 4   1 5   1 55   1 65   1 75   1 85   1 95   1 60  1 6 1 州!臼 1 1 ; : 1 1 : 2 1 1 ; : ; ; ; │ 1 2 1 9 2 1 1 ; : 2 1 1 : : : ; ; l ; 1 1 J 7 1 1 1 : : ; ; ; 1 2 1 ; : ; ; ; l ; : ; : :  -,ー1 ー

参照

関連したドキュメント

ところが,ろう教育の大きな目標は,聴覚口話

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

それでは資料 2 ご覧いただきまして、1 の要旨でございます。前回皆様にお集まりいただ きました、昨年 11

本事業を進める中で、

以上の基準を仮に想定し得るが︑おそらくこの基準によっても︑小売市場事件は合憲と考えることができよう︒

きも活発になってきております。そういう意味では、このカーボン・プライシングとい

自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から

大村 その場合に、なぜ成り立たなくなったのか ということ、つまりあの図式でいうと基本的には S1 という 場