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高齢者と家族の力を引き出す看護

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Academic year: 2021

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(1)

高齢者と家族の力を引き出す看護

著者

得居 みのり

雑誌名

聖路加看護学会誌

12

1

ページ

43-44

発行年

2008-03-20

URL

http://hdl.handle.net/10285/2691

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

聖路加看護学会誌 vol.12No.1March2008

シンポジウム

-高齢者と家族の力を引き出す看護

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みの り1

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Ⅰ.はじめに

わが国における高齢化 は他国に類 をみないスピー ドで 進み,高齢者 をとりまく環境の調整には急 を要する状況 にある。 筆者 は,急性期病院の地域医療連携室 における相談業 務や退院支援 を通 して,疾患や障害 を抱 えて療養生活 を 送 る多 くの高齢者やその介護者が さまざまな「困 りごと」 に直面 し

,

「住み慣れた場所での,住み慣 れた人々 との, あた りまえの生活

を手放す選択 を迫 られる場面 を目の 当た りにして きた。 特 に近年多 くの相談が寄せ られている認知症高齢者の ケースでは,その疾患の特徴か ら,家族 (時には医療従 事者 も)が症状や介護の方法 にとまどい,前へ進めず, 本人が本来 もっている能力や可能性 を見落 として行 き場 を狭めて しまう状況が少 な くない。 この度は筆者が地域医療連携室において関わ りをもっ たケースを紹介 し,高齢者や家族の もてる力 とそれを引 き出す看護実践 を報告す る。

Ⅱ.

事例の紹介

B

さん

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0

歳代男性,老年性 アルツハイマー病 (以下, SDAT),MMSE20/30,要介護2,元来怒 りっぽい性格。 「プライ ドが高 く,物忘れ を指摘 されると怒 る」 との家 族の弁。

1.入院までの経過

3年前 より,誰 も来ていないのに 「孫が来た」 と言 う, 何度 も同 じことを言 うな どの症状がみ られ,物忘れ もひ どくなって きた。妻へ の易怒性 ・暴力が頻繁 にみ られ, 首 を絞めようとした り刃物で脅 した りす るような行動 も み られるようになったため,認知症専門外来を受診。入 院の運び となる。

2.

家族の状況 妻

(

7

0

歳代) と

2

人暮 らし。妻 は本人の暴力のため 不眠傾 向 とな り,体重減少 (-7kg)がみ られている。 長男夫婦 (40歳代) と本人 は以前か らほ とん ど交流が ない。長女 (40歳代 ) は近所 に住 んでお り協力的であ るが,パー ト勤め と子育てで多忙 である。

Ⅲ.

退院支援の経過

認知症専 門病棟 の精神科医師よ り 「家族への暴力があ り,逆避難的な目的で入院 している患者の処遇について 相談 にのってほしい」との依頼があった。病棟か らは

,

「妻 への暴力が激 しく,妻 は退院後の同居が考 え られない。 本人は易怒性が高 く暴言や暴力 に発展 しやすいため,揺 設での集団生活 も難 しい と思われる。家族 は今後,精神 科病院への入院を希望 しているため,転院調整 を行って ほ しい」 とのことであった。

1

.本人へのアプローチ

画像等のデータか ら,本人は前頭葉のダメージがみ ら れ,感情のコン トロール,適切 な判断が困難なタイプの SDATであ り,精神症状 には 「よい とき」 と 「悪い と き」の波があることがわかった。本人か ら 「家 に帰 りた いね え」 とい う言葉がみ られたため 「検査の結果 によっ てはリハ ビリが必要になるか もしれませんが,次に行 く とした ら, どんなところがいいですか ?

と質問 した と ころ

,

「お任せす るわ」 との言葉が きかれた。集めた情 報か らは,本人の精神症状 には変動がみ られるが,対応 方法の工夫 と薬物療法 による症状 コン トロールが可能な のではないか,精神症状のコン トロールがで きれば施設 入所や 自宅退院 も考 え られるか もしれない, とい う先の 予測が立て られ,今後のアプローチ方法の検討 を行 った。

2.

看護師へのアプローチ

看護師 と共に症状観察を行 った ところ家族の面会後や 夜 間に精神症状が悪化 し,強い症状がみ られているとき には他患者 との関係 も悪化することがわかった。認知症 の状態 としては即時記憶障害がみ られているが,ほとん どのADい ま声かけのみで行 え,社交性 も保てているこ とがわかった。看護師のなかには 「精神症状がみ られて いない状態であれば集団生活 もで きるのでは ?

と考 え 1)兵庫県立姫路循環器病 セ ンター地域 医療連携室 老人看護専 門看護師

(3)

-43-る者 もあったため,カンファレンスで意見 を確認 ・共有 し,精神科病院だけでな く,施設入所 も選択肢に含める ことを検討 した。

3.

家族へのアプローチ 家族の 「首 を絞め られそ うになってか ら一緒にいるの が怖いんです。一緒に住むことは考 えられませんが,棉 神科病院への入院は可哀想 な気 もします。で きれば施設 にお願いしたい」 という思いを聴 き,疾患 と症状,治療 ・ ケア方法の説明を行 った ところ,「症状 は抑 えることも で きるのですか ?」という質問がみ られるようになった。 面談のなかで本人の背景 と状態 を共 に考 える場面 をもっ た ところ,「母親が戦争未亡人で男性 の行 き来が多かっ た らしく,結婚 当初,``(子供 なが らに)嫌やっだ '``女 は信 じられん"などと聞か されたことがあ りました。不 安や寂 しさがあると,そ うい う気持 ちが湧いて くるのか もしれませんね」 と,妻か らは本人の気持 ちに沿 うよう な言葉が きかれた。妻の対応 は 「つい, "お父 さん, ま た忘れたん ?''と言 った り,言われた こ とに口ごたえ した りしていました」「私 のほ うか ら "これか ら何す る の ?""

○ して くれない ?"などと話すことが多いです」 とのことであった。そこで,本人のプライ ドが傷ついた り負担 に感 じるような会話や対応は精神症状 に影響する ことを伝 え,対応方法 をア ドバ イス しなが ら,「で きそ うなこと」 を共に考えるようにした。

4.

医師へのアプローチ 医師には向精神薬を少量か ら始め,状態をみなが ら増 量する方法で精神症状の コン トロールを行 うことを提案 し,家族の来院時に本人の精神症状が悪化 した場合でも 落ち着 いて対応で きる環境づ くり (「何 かあった ら先生 が来て くれますか ら,大丈夫」)に協力 を得 ることとした。

5.

本人の状態の変化に伴 う新たな調整 本人の 「精神症状が落ち着いた様子」 を何人かの看護 師が実感 し,家族 も 「暴力 は出ないか もしれない」 とい う感覚 を実感するようになった。そこで,家族が本人の 症状に対 して強い恐怖感 を抱いていた点 を考慮 し,面会 時間を変更 ・延長する-外出する-外泊す るなど,段階 的に 「共に過 ごす」時間をつ くること試みた。本人の精 神症状 が安定 し家族の気持 ちが解 けてい く状態 に応 じ て,施設入所やグループホーム (以下

GH)

入居,在宅 ケアの可能性 と準備等について話 をし,家族の積極的な 反応 と依頼 に応 じてケアマネジャーや施設への情報提 供,デイサービス導入の方法の検討 を行 った。

6.B

さんの退院

B

さんは精神症状が安定 したため

GH

の入居条件 を満 た し,入居 までの待機期間は自宅で過 ごす こととなった。 医師か ら本人へ

GH

の入居やデイサービスの利用 につい て 「少 し脳の機能が落ちていることがわかったので,集 団生活 を通 して リハ ビリをしましょう」 と本人が混乱 し ない内容の説明を行 ってもらい,納得 と同意を得 て退院 の運び となった。退院後の Bさんは外来受診時,「元気 でやっています」 と笑顔がみ られ,妻か らは 「デイサー ビスにも通って落ち着いています。 この まま (家で)い けるか もしれ ません」 との言葉がみ られている。

Ⅳ.

認知症高齢者 と家族の力を引き出す看護

高齢者 にとって心地 の よい生活の場 を確保 し,守 り, 継続す るためには,本人や家族の もっている能力や可能 性 を見つけ出 し,引 き出し,育ててい く関わ りが必要で あ り,そのために私たち看護職の担 う役割は大 きい。高 齢者 に多 くみ られる認知症 は進行性 の脳の疾患であ り, その症状 (特 にBPSD)がその人の生活の質を大 きく左 右するため,疾患の種類や症状 を知 り,先の予測 を立て て生活 に反映 させてい くことが重要 となる。「本人のもっ ている色々な面 に接 して,声 を聴 き,思いを知 る」「背 景 を知 る

,

『で きること・で きないこと・していること

『好 きなこと (物,人)・嫌いなこと (物,人)』を知 る

「本 人にとって心地の よい環境や関わ り方 を探 り,ケア捷供 者が統一 したケアを提供で きるように調整する」などの 関わ りが強 く求め られるであろう。 一方,介護者- は 「思いを聴 く」「事実 を知 らせ,先 の予測 を立てる」「実行可能なケア方法を共 に考 え, 『お 試 し期 間』を設ける」「困 りごとをサポー トす るための 社会資源を具体的に伝 え,必要時,関係機関 との連携 の 場 をコーディネー トす る」などの関わ りが求め られてい る。 支援 を行 う看護師は,介護者 を勇気付け, よき相談 者 となることが強 く求め られるであろう。

V.

おわりに

高齢者のケアにおいて,「生活の場 をで きる限 り自宅 (地域)で」 と考 えた とき,「(その人 を)いかに手助 け す るか」 とい う発想か ら 「(その人の) もっている潜在 的な力 をいかに引 き出 し,生か してい くか

とい う発想 への転換 と工夫 も必要 となって くる。 認知症高齢者 と介護者の地域 における生活の充実のた めには,看護師の もつ さまざまな役割機能が惜 しみな く 最大限に発揮 されることが期待 されている。 -4

参照

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