「みえないものj としての関わりーオ}トポイェーシスの視点から一 専 攻 人 間 教 育 専 攻 コ ー ス 現代教育課題総合 氏 名 岩 田 健 志 指導教員 近 森 憲 助 序章 いて明確にでき、オートポイェーシスの視 今日の社会では、「人と人との関わりの希 薄化jが危ぶまれており 、関わりの希薄化に は、今の社会的風潮として、「目に見えない ものjを軽視し、すべてのものを「目に見え る形」にす る こ と で 安 心 を 得 よ う と し て い る点にある。 問題の多くは、 「人間関係のように目には 見えないものは信頼を基礎とした“何か日 の上に築いていくものjではなく 、r<方法) と い う 目 に 見 え る 形 で 解 決 す る も のjとし て暗黙の内に捉えられてし、ることから派生 しているのではなし1かと考え られる。 この ようなことから、目には見えない「人と人 との関わり
J
そのものを根底から捉えよう とする 「態度jや「姿勢jが必要ではなし、かと 思われる。 そのような問題意識から、目に見えない システムを│“関係Jという観点から、生物を 一元的に捉えようと試みた「オートポイエ ーシス論J
を援用して、関係のあり方を捉え 直してし1く。 第 1章 「人間関係Jの今 ここでは、 一般的に認識されている「人間 関係 Jについて分析し、その様態を明らかに していく。そうすることで、普段意識せず、 当たり前のよう に行っている 「関わりJにつ 点から見たものと、どのように違うのかを 見てし1く上でも必要になる。人間関係には、 多くの関係が存在し、同じカテゴリーに括 られる関係であってもこつとして同じ関係 はない。さらに人間関係は、具体物として 見て取れるものでなければ、自分でコント ロールできるものでもないため、古くから 問題として取り上げられ、今も問題が尽き ないものとして存在する。しかし、このよ うに人間関係は判然としないものであるが、 望むと望まざるとに関わらず、人と人が関 係 を 築 く の は 確かで、ある。そこで、まず、 「人」とは誰のことかを考えてし、く。 ここでは、人間関係がどのようなものとし て捉えられているかを見ていく。人間関係 は、何の前触れもなく、急に関係が築き上 げられるというものではない。そこには、 人と人が出会い、人と人が関わり、その中 で、お互いに「相手がどのような人間である かJを、自分もしくは第3者に対する態度や 接し方で見たり、会話の中でお互いの考え や価値観の比較が行われ、その積み重 ねの 中で、親近感が湧いたり、尊敬の念を抱い たり、恋慕したり して、その人間関係が決 まってくる。そこには必ず、時間的経過が 付随してくる。では実際に、どのように捉 えられているかを見ていく 。 q υ 4 A第 2章 オ ー ト ポ イ エ ー シ ス 「オートポイエーシス(autopoiesis)Jと は、ウンベルト・マトヮラーナとフランシス コ・ヴァレラが提唱した理論である。マトゥ ラーナは生命の統一的な性質を捉え、「生物 とは何かj という聞いへの一元的な解答を 模索した。その際に、有機的組織体を構成 する物質の性質は、物を見ている人が語る ことが可能な領域にあるものであり 、生物 を一元的に捉えてないと考えた。そこで、 そ の 一 元 的 な 性 質 を 目 に 見えない「構成物 問の関係」という観点から捉えようとした。 このようなアプローチは生物を「機械j と して捉えた場合、「部品の性質jから論じる のではなく、生物をシステムとして捉え、 「部品と部品との関係jから論じようとする ものであるo生物も機械も「構成物と構成物 の関係Jを持っているが、との「関係」のあり 方に違いがある。機械には、人聞に与えら れた「目的」を達成す一るための動きをする構 造を持っているO その構造は、人間によっ て意図的に作られたものであるため、破 損 した場合、機械が自らの力 で破損部分を治 すことはできない。一方、生物には与えら れた「目的Jはないが、自らの生命を維持す る構造を持っている。その構造は、生命を 維持できる範囲の中で、常に変化をしなが ら生命の維持を行うている。 この維持には、 自律的に作動し、自らの生命活動に必要な もの全てを作り出すとい う特徴がある。生 命活動に必要なものを作り出す上で、物質 の「破壊と変形jによるエネルギ一変換が行 われるのだが、この作動で欠かせないのが 「構成物同士の関係」である。構成物同士の 関わりによってエネルギ一変換が可能にな るのだが、構成物同士の関わりが、ある1)慎 序を持ったエネルギ一変換の過程としてシ ステムを形成することで、「エネルギー変換 の循環」が成り立つのである。こうして、シ ステムは自らの生命活動に必要なものを自 らが作ることで、自らを維持し続ける こと ができるのである。このように見ていくと、 「関係」が生物を成り立たせており、オート ポイエーシスを生物の自己形成の論理とし て見ることができる。そのような観点から、 オートポイエーシス論が