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高知県の施設栽培葉ジソ(オオバ)における病害虫防除上の問題点

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Academic year: 2021

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は じ め に 高知県では,冬季の温暖・多照な気候を利用して野菜 の施設栽培が盛んに行われている。この中には,ミョウ ガ,シシトウトウガラシ,葉ジソ(青ジソ,オオバ)等 全国的には栽培の少ないマイナー作物が多く含まれてお り,以前から病害虫対策に苦慮してきた。このため,農 薬取締法改正に伴い実施されたマイナー作物に対する経 過措置として27 作物・148 剤の承認を受け,このうち, 14 作物・79 剤について適用登録拡大試験に取り組むな ど(朝比奈,2006),農薬登録促進を積極的に行ってきた。 しかし,ミナミキイロアザミウマ(古味・伊藤,2008), タバココナジラミ(広瀬ら,2008)等の薬剤感受性低下 が顕在化するとともに,チャノキイロアザミウマ新系統 (TODA et al, 2014)やシシトウトウガラシの黒枯病(安 達ら,2005)等の発生が確認されるなど病害虫防除上の 新たな問題が発生し,農薬登録の促進のみでは対応が困 難になりつつある。このため,マイナー作物では農薬登 録の促進とともに,薬剤のみに頼らない総合的な防除技 術の開発がメジャー作物以上に必要となっている。 そこで,本県では基幹品目の一つである葉ジソを対象 として,総合的な防除技術の開発を目的に,2011 ∼ 13 年にかけ,農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業 「オオバに発生する病害虫の新規防除資材を活用した総 合防除体系の確立」に取り組んだ(図―1)。本稿では, 高知県の葉ジソ栽培における病害虫防除上の問題点を述 べるとともに,上記事業の概要について紹介する。 I 高知県の葉ジソ栽培の特徴と       病害虫防除上の問題点 シソには葉ジソのほかに芽ジソ,穂ジソ,抜き穂があ り,それぞれ収穫対象である若葉,子葉,花穂,未熟果 (子実)を食用に供する(岡,1988)。品種は赤ジソ,青 ジソの二つの品種群に大別され,全国各地でそれぞれに ついて品種系統が淘汰されてきた(岡,1988)。高知県 でも各産地で選抜された系統を用いて,生食用の青ジソ (以下,オオバと表記)が促成,半促成,抑制の各作型 を組合せて周年栽培されている(前田・福井,1998)。 県内の産地は南国市,香美市および四万十市の3 市で, 栽培面積9 ha,生産量 228 t(高知県農業振興部,2014) とそれぞれの地域の重要品目になっている。1 作型当た りの栽培期間は育苗を含め6 ∼ 9 か月程度で,定植約 1 か月後から収穫が開始される。なお,シソは代表的な短 日植物で(前田・福井,1998),短日条件になると花芽 が形成されて新葉が展開しなくなるため,オオバ栽培で は暗期中断による電照が行われている。 オオバでは葉が直接収穫物となることから,葉のわず かな病斑や食害痕が品質低下をもたらす。本県のオオバ にはハダニ類,チャノホコリダニ,ハスモンヨトウ等の 害虫(広瀬,1998)や斑点病,さび病といった病害が発 生し,多大な被害をもたらしている。これらの病害虫の 中にはハスモンヨトウのように薬剤抵抗性の発達(広瀬, 1994;1995)により,薬剤のみでは防除の難しいものが ある。さらに,高知県ではモザイク症やマデイラコナカ イガラムシといった新たな病害虫が発生し,産地の維持 にかかわる深刻な被害をもたらしている。 モザイク症は2000 年ころから発生が問題となり始め た障害で,発症株では収穫不可能となるため大きな問題 となってきたが,これまで原因が不明であった。また, マデイラコナカイガラムシは高知県では1990 年代後半 か ら 発 生 す る よ う に な っ た 害 虫 で(山 下・下 八 川, 2007),多発すると株の枯死などの深刻な被害をもたら す。本種に対してはネオニコチノイド系殺虫剤,有機リ ン系殺虫剤,合成ピレスロイド系殺虫剤等の効果が高い ことが報告されている(山下・下八川,2007)。しかし, これらの薬剤の中でオオバに適用登録されているのはシ ペルメトリン乳剤など一部に限られ,防除対策の確立が 喫緊の課題となっていた。 なお,オオバは農薬登録における適用農作物分類では シソに分類されるが,軽量で表面積が大きいことから農 薬が残留しやすく,登録農薬は極めて限られる。しかも,

Probrems in Controlling Diseases and Insect Pests on Greenhouse

Perilla Plant in Kochi Prefecture.  By Takuya HIROSE

(キーワード:葉ジソ,病害,環境制御,害虫,生物的防除)

高知県の施設栽培葉ジソ(オオバ)における

病害虫防除上の問題点

広  瀬  拓  也

高知県農業技術センター ミニ特集:マイナー作物での病害虫対策確立に向けて―葉ジソ(オオバ)での取り組みを例に―

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一斉収穫ではなくほぼ毎日収穫するため,収穫前日数の 制限が長い薬剤は栽培期間の大半を占める収穫期間中に は実質的に使用できない。試験を開始した2011 年 3 月 時点で収穫期間中のオオバに使用可能な化学合成農薬 は,収穫3 日前まで使用可能な剤を含めても,アザミウ マ類に対するスピノサド水和剤(収穫3 日前まで),ハ ダニ類に対するビフェナゼート水和剤(収穫3 日前ま で),ハスモンヨトウに対するフルフェノクスロン乳剤 (収穫3 日前まで),チャノホコリダニ,ハダニ類に対す るミルベメクチン乳剤(収穫前日まで)の4 剤が適用登 オオバは「地域を支える特産野菜」(高知県) しかし,病害虫の被害が多発! 背景 病害の発生 モザイク症 新発生 原因不明 さび病 斑点病 病害の物理的防除技術 結露センサ 研究 内容 農薬登録促進 害虫の生物的防除技術 目標 ハウス内環境制御  主要病害の生態解明  発病抑制技術開発  低コスト制御技術開発 モザイク症対策  原因究明  防除対策開発 登録農薬が少ない   マイナー作物 害虫の発生 アブラムシ ホコリダニ マデイラコナ カイガラムシ 近年多発 生態不明 効果検定 残留分析 有望天敵 総合防除体系の構築→確立 実証による改良と早期普及 マデイラコナカイガラムシ 対策  発生生態解明  天敵利用技術開発 天敵などの利用技術  防除効果確認  利用技術開発 安定生産・出荷 増収,農家経営安定 環境保全型農業の推進 安全・安心な国産野菜 農村の維持発展 後継者・雇用の増大 図−1  農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業「オオバに発生する病害虫の新規防除資材を 活用した総合防除体系の確立」の概要

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録されているのみであった。このような状況から,オオ バの病害虫防除体系の構築が不可欠となっていた。 II 病害虫総合防除体系の開発 前述のように,マイナー作物では農薬登録の促進とと もに薬剤のみに頼らない総合的な防除技術の開発がメジ ャー作物以上に必要となる。そこで,病害虫の発生を効 率的に抑えることのできる総合防除体系の開発を目標 に,高知県農業技術センター,農研機構 中央農業総合 研究センター,高知大学および高知県中央東農業振興セ ンターで研究グループを作り,研究に取り組んだ。利用 した主な技術は, ・結露センサー(商品名:まもるん,高知県と鈴木電子 株式会社が共同開発)を用いた環境制御による病害の 物理的防除 ・天敵などを利用した害虫の生物的防除 ・天敵などへの影響を考慮した農薬による防除 の三つである(図―1,2)。 個別技術の詳細は省略するが,生物的防除法について は主に高知県農業技術センターでマデイラコナカイガラ ムシに対する微生物農薬およびチャノホコリダニに対す るスワルスキーカブリダニの防除効果と利用法,高知大 学でマデイラコナカイガラムシに対するニッポンクサカ ゲロウの防除効果を検討した。以下に,市販されている 微生物農薬とスワルスキーカブリダニを用いた防除体系 について紹介する。 総合防除体系の開発には個別技術を矛盾のない形で組 合せる必要がある。しかし,微生物農薬の防除効果やカ ブリダニ類の定着には湿度条件が大きく影響するとされ ることから,結露センサーを用いた環境制御による病害 防除技術が微生物農薬やスワルスキーカブリダニによる 害虫防除に悪い影響を与える可能性がある。そこで,こ の点について検討した結果,結露センサーによる病害防 除に微生物農薬の処理やスワルスキーカブリダニの放飼 を組合せても,防除効果やオオバ上での定着に悪い影響 は認められなかった。このことから,施設でのオオバ栽 培ではこれらの個別技術は併用可能であると考えられる。 次に,オオバの作型や主要病害虫の発生消長を考慮に 入れた防除体系を作成し(図―3),高知県中央東農業振 興センターが主体となって防除実証試験を行った。その 結果,収穫初めの一時期を除いて病害虫による被害を収 穫葉の4%以下に抑えることができた。試験に要した防 除経費は,燃料費が約1万円/10 a(単価100円/lで試算), 微生物農薬や天敵も含めた薬剤費が約12 万円/10 a,防 研究試料の提供 研究協力 データの提供 研究協力 データの提供 データの提供 現地情報 現地情報 実証データの    フィードバック 現地情報 研究への 協力 データの   提供 (代表機関) 高知県農業技術センター ・全体総括 ・主要病害虫の物理的・生物的  防除技術の開発 ・農薬登録促進 ・総合防除体系の構築 (共同研究機関) (独)農業・食品産業技術 総合研究機構 中央農業総合研究センター ・モザイク症の原因究明と  防除技術開発 (普及支援組織) 高知県中央東 農業振興センター ・生産現場における実証試験 (共同研究機関) 高知大学教育研究部 ・マデイラコナカイガラムシに  対する天敵利用技術の開発 図−2 研究チームの構成

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1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 斑点病 さび病 マデイラ コナカイガラムシ チャノホコリダニ ハスモンヨトウ アブラムシ類 ハダニ類 備考 結露センサーで対応(結露値 100 で制御) 合成性フェロモン剤処理 発生後選択性殺虫剤処理 ボーベリア  バシアーナ乳剤(副次的な効果) 発生後選択性殺虫剤処理 ボーベリア  バシアーナ乳剤(副次的な効果) 発生後ミルベメクチン乳剤処理 7 ∼ 10 日後スワルスキーカブリダニ 放飼 カズサホス粒剤(定植前 適用病害虫 ネコブセンチュウ) ジノテフラン粒剤(定植時) ボーベリア  バシアーナ乳 剤(適用病害虫 アザミウマ類 コナジラミ類)の定期的処理(収穫期 1 か月間隔) 雌成虫あるいは卵塊発生時にはジノ テフラン水和剤処理 収穫が始まっ て以降(定植約 1 か月後)は ボー ベリア  バシアーナ乳剤を定期的に 処理 防草シート被覆などによる雑草対策 を併用 選択性殺虫剤 スポット処理 選択性殺虫剤 スポット処理 サイドに 4m m 目防虫ネットを展張 スワルスキーカブリダニの放飼には 耐油性紙袋 ( 多 湿 圃 場 で は 紙 コ ッ プ ) を用い 10 株ごとに放飼 斑点病 結露 18 h 以上の連続した 結露が予想される日に稼働 さび病 常時稼働 3  施設栽培オオバにおける主要病害虫の防除体系 は発生の多い時期 は発生する可能性のある時期を示す

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草 シ ー ト な ど の 資 材 費 が 約2 万円/10 a の計約 15 万 円/10 a であった。一方,実証圃場での収量を,対策が 未確立であった2009 年と比較すると 13%の増収となり, 防除経費を差し引いても約56 万円/10 a の増益につなげ ることができた。 III 残された問題点 これまで原因が不明であったモザイク症については, 農研機構 中央農業総合研究センターを中心として病原 体の解明に取り組んだ結果,シソサビダニによって媒介 されるEmaravirus 様の新種ウイルスによる病害である こ と が 明 ら か に さ れ た(久 保 田 ら,2014)。し か し, Emaravirus 属に属するウイルスは世界的にも発見例が 少なく,我が国ではイチジクに感染するイチジクモザイ クウイルス(Fig mosaic virus)が知られているのみで ある。さらに,媒介虫であるシソサビダニは日本で初め て確認されたShevtchenkella 属の 1 種である(上遠野・ 岸本,2013)。このように,原因ウイルスと媒介生物の 両方が新種であり,寄主範囲などの発生生態や防除対策 については全く不明である。これらの被害は現在徐々に 増加傾向にあり,シソサビダニと新種ウイルスの発生生 態を解明し,それに基づいて今回開発した総合防除体系 に組み込める防除対策を早急に確立することが,オオバ の生産安定に不可欠となっている。 お わ り に 近年,害虫の薬剤抵抗性対策として農薬の作用機作分 類に基づくブロック式防除法が提唱されている。しか し,使用できる農薬の少ないマイナー作物では防除対象 とする病害虫に適用登録のある薬剤が1 剤のみというケ ースも少なくない。また,ミナミキイロアザミウマのよ うに多くの薬剤に対して抵抗性を発達させている害虫に 対しては,十分な効果を示す登録農薬がない場合も見ら れる。限られた薬剤の有効活用や薬剤抵抗性の回避の面 からも総合的な病害虫防除対策の確立が重要となる。 今回の研究では,農薬登録促進や原因不明の障害であ るモザイク症の原因解明とともに,環境制御による病害 防除,天敵等を利用した害虫防除を組み込んだ総合的病 害虫管理技術の開発に取り組み,一定の成果を上げるこ とができた。これは,競争的資金に採択され,県の試験 場だけでなく独法,大学,普及機関および行政が一体と なって課題解決に当たったことが大きい。マイナー作物 での病害虫防除体系開発には,登録促進も含めた個別技 術の開発と体系化に関係機関が一体となって取り組むこ とが重要と考えられる。なお,本研究の成果は「オオバ の主要病害虫総合防除マニュアル(技術者用暫定版)」 と し て 高 知 県 農 業 技 術 セ ン タ ー の ホ ー ム ペ ー ジ 上 (http://www.nogyo.tosa.pref.kochi.lg.jp/?sid=2012)で公 開予定なので,そちらも参照されたい。 引 用 文 献 1) 安達理恵ら(2005): 日植病報 71 : 72(講要). 2) 朝比奈泰史(2006): シンポジウムマイナー対策を考える講要, 日本植物防疫協会,東京,p. 30 ∼ 35. 3) 広瀬拓也(1994): 四国植防 29 : 107 ∼ 112. 4) (1995): 応動昆 39 : 165 ∼ 167. 5) (1998): 四国植防 33 : 57 ∼ 64. 6) ら(2008): 同上 43 : 37 ∼ 43. 7) 上遠野冨士夫・岸本秀成(2013): 第 57 回応動昆講要:78. 8) 古味一洋・伊藤政雄(2008): 第 52 回応動昆講要:159. 9) 高知県農業振興部(2014): 高知県の園芸,高知県農業振興部 産地・流通支援課,高知,p. 9 ∼ 12. 10) 久保田健嗣ら(2014): 平成 26 年度日本植物病理学会大会プロ グラム・講演要旨予稿集:133. 11) 前田幸二・福井康弘(1998): 高知農技セ研報 7 : 81 ∼ 87. 12) 岡 昌二(1988): 農業技術体系野菜編 11,農山漁村文化協会, 東京,p. 185 ∼ 200.

13) TODA, S. et al.(2014): Appl. Entomol. Zool. 49 : 231 ∼ 239.

参照

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