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中国の価格体系と価格モデル(陵水七十年記念論文集)

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261

中国の価格体系と価格モデル*)

陳 光 輝 1.序  近年,中国の価格体系について,産業連関モデルを用いた数量的分析が行わ れるようになった。価値価格,平均価値価格や生産価格といった,一定の原理 に従って算出される価格をベースにして,現実の価格体系の歪みを測り,ある        1) いは価格改革のシミュレーションを行う分析である。  中兼(1987;1992)は1981年と87年の6部門産業連関表を用いて,農産物の 現実の価格は価値価格を下回っていたこと,工業,運輸・通信部門の価格は逆 に過大であったことを示した。田畑(1990)は81年の6部門表と24部門表を用 い,価値価格,平均価値価格のいずれと比べても農業,石炭・コークス,建設 の価格は低く,消費財や電力,石油,化学製品の価格は高かった;そして現実 の価格は平均価値価格に近かったと論じた。金澤(1992)は田畑と同じ方法を 87年33部門表に適用し,農産物価格の過小評価は続き,その一方で現実価格の 価値価格や平均価値価格との乖離は全体として拡大したと論じた。また,Lu and Li(1991)は1981年と83年に独自の調査を行って得た産業連関データをも とに,価値価格,生産価格,および両者の組み合わせである二径路価格を採用 した場合の改革のシミュレーションを行い,所得分配の観点からは二径路価格 が最も好ましいと結論づけた。 *)本稿の作成にあたってはアジア政経学会関西部会第33回研究大会(名古屋大学,1993年 6月19日)で報告を行い,加藤弘之神戸大学助教授をはじめとする方々から有益なコメン トを得ることができた。謝意を表したい。 1)価値価格,平均価値価格などについてはBrown and Licari 1977,田畑1981を参照され たい。なお,平均価値価格は原価価格とも呼ばれている。

(2)

 こうした分析に関し,本稿は次の2点に着目する。 1.各価格の算出方法が同じでない点:たとえば価値価格は各産業の利潤を賃   金コストに一定率で比例させ,平均価値価格は中間投入も含めたコストに   比例させて得るのであるが,その比例定数に関する想定は一様ではなく,   また,賃金を物価にスライドさせるかどうかも一様でない。中兼らの分析   結果は単純には比較,総合できず,また,想定いかんによって変化するこ   とも考えられる。 2.各想定,そして各価格モデル自体の妥当性:価値価格,平均価値価格など   の価格モデルは本来,計画経済下での価格設定を考えたものである。中国   で進行中の改革が市場経済の導入,拡大を図っているのに対し,こうした   計画経済のモデルをベースにして価格体系の歪みを測り,あるいは価格改   革のシナリオを描くことは,どこまで妥当か。  これらをふまえて以下,本稿はII節で各価格モデルを,付随する各想定を含 めてサーベイする。III節は1987年33部門産業連関表を用いた実証分析にあて, 本稿のモデルによって各価格を再計算し,現実の価格体系はどのモデル体系に 近かったか,価格の歪みはどうであったかなどについて再検討した結果を報告 する。最後のIV節は議論の要約にあてられる。 II.価格モデル A.基本的枠組み  n個の産業があり,それぞれ各産業のアウトプットと労働,資本を用いて生 産を行っているとする。生産技術はレオンチェフ型,すなわち,投入係数は固 定的であり,また,各生産額は次式のように,中間投入コスト,賃金コストと 利潤に分解できるとする。 PJXj =2iPiXij+Wj+Z, j一一 1, 2, …, n ただし,P,:第j産業のアウトプットの価格     X、:第j産業の生産量 (1)

(3)

      中国の価格体系と価格モデル  263       Xij:第j産業が中間投入する第i産業のアウトプット       WJ:第j産業の賃金コスト       Z,:第」産業の利潤  価値価格平均価値価格などの価格モデルは,各産業の利潤を一定のルール に従って決定し,利潤の変化を通じて価格体系を変化させる。価格体系の変化 は各産業のコストバランスを変化させ,(1)式は賃金コストが変化しなければ   Pr X, =2i Pti Xi, + Wj +Zf j 一一 1, 2, …, n   ただし,P芦第j産業アウトプットの新たな価格       宥:各価格モデルが想定する第j産業の利潤 Lu and Liのように賃金を物価にスライドさせるのであれば,たとえば   PTX,=2,PTX,,+(ZPfC,/E,P,C,)W,+Zl j=1, 2, …, n   ただし,Ci:旧価格のもとでの第i財の消費 (2a) (2b) となる。(2b)式はΣiP↑Ci/Σ,PIC,,すなわちラスパイレス式による消費者物価        2) 変化分を賃金に反映させている。  新たな価格は(2a)式,あるいは(2b)式を解いて得られるが,利潤につい ての中腹らの想定は次のように表現でき,それぞれが価値価格,平均価値価格, 生産価格,二径路価格に対応する。

  Zr == aWj (3a)

  Zf・ =B (2, Pf, X,,十W,) (3b)

  zr=7K, (3c)

  Zr=of W,十6, K, (3d)

  ただし,Kj:第j産業の資本       α,β,γ,6,,あ:比例定数 2)Lu and Liは実際には農業労働者とその他雇用者の賃金を区分し,それぞれ.を農村,都 市の消費者物価指数にスライドさせている。

(4)

各産業の利潤を価値価格は賃金コスト,平均価値価格は中間投入と賃金のコス ト,生産価格は資本に比例させ,二径路価格は賃金コスト比例部分と資本比例      3> 部分を設ける。  中兼らが用いた価格モデルは(2a),(2b)式と(3a)一(3d)の各式を第1表 のように組み合わせた形になる。たとえば中兼,田畑,金澤の価値価格モデル は(2a)式に(3a)式を代入して得られ,田畑,金澤の平均価値価格モデルは (2a)式に(3b)式を代入して得られる。 第1表 各価格モデルのコストバランス式と利潤式 コストバランス 利潤 中兼,田畑,金澤の価値価格モデル 田畑,金澤の平均価値価格モデル Lu and Liの価値価格モデル Lu and Liの生産価格モデル Lu and Liの二径路価格モデル (2a) (2a) (2b) (2b) (2b) (3a) (3b) (3a) (3c) (3d)  各モデルを導出するにあたってはBrown and Licari(1977)に従い,価格調 整係数 p,=Pr/Pj j=1, 2, …, n (4) すなわち新旧価格の比率を定義しておくと便利である。たとえば中兼,田畑, 金澤の価値価格モデルは,(2a)式の恥をp、 Pjに置き換えて pj Pj X, == 2,p,P,X,, 十Wj 十Z: (3a)式を代入して両辺, PjX、で割って pj==2ipiaij+(1+af)wj j== 1, 2, …, n (5a) 3)利潤が賃金コストに連動し,かつ,賃金が物価にスライドする場合,物価の変動は利潤 に影響を与えると考えるのが自然であり,その場合,(3a),(3b),(3d)式のWjは,たと えば(ΣiP†Ci/Σ】P且C,)W,と修正されるべきかもしれない。しかし,ここではLu and Li (1991,84−85)に準じ,利潤は賃金の物価スライドに影響されないとした。

(5)

       中国の価格体系と価格モデル  265   ただし,alj=P,X量、/(P、X、)は金額ベースの投入係数       Wj==Wj/(Pj X、)は賃金コストのシェア となり,物量表示の変数X」,Xt,を消去できる。同様にして,田畑,金澤の平均 価値価格モデルは   p」=(1+X3)(2tpiaij+w,) j=1, 2, …, n (5b) となり,Lu and Liの価値価格,生産価格,二径路価格モデルはそれぞれ  pj=2ip,aij十(2iptci十cv)wj j=1, 2, …, n  pj一一2ipiaij+(2ipict)wj+)tk, j=1, 2, …, n  pj :2ipiaii十(2ipici十〇t)wj十62kj j=1, 2, …, n   ただし,Ci=P,c,/Σ,P,c,は消費総額に占める第i財のシェア      k、=Kj/(P、 Xj)は資本係数 と表すことができる。 (5c) (5d) (5e) B.比例定数を決定するための想定  (5a)一(5e)の各式は利潤に関する比例定数α,β,… を与えて各価格(調 整係数)を算出する形である。(5a)一(5d)式には各1個,(5e)式には2個の 定数を与えなければならない。  中兼は(5a)式に次のような想定を加えて価値価格を算出した。   Σ,P葦X、=ΣjP,X、 あるいは ΣjPjX,=1       (6a)   ただし,Xj=PjXj/ΣjPjXjは生産総額に占める第j財のシェア        4) これは生産総額,あるいは平均物価水準を変えないという想定である。(5a)式 の比例定数αを直接与える形ではないものの,この想定はモデルを完結させる 4)中兼はGanczerのモデルを用いたとしているが, Ganczer(1966,60−61)の想定は消費 総額,あるいは消費者物価水準を変えないとなっている。

(6)

に十分である。(5a)式は(6a)式を加え,合計n+1本の方程式でn個のPjと 1個のα,すなわちn+1個の未知数を決定する形になる。  中之が生産総額不変を想定したのに対し,田畑,金澤はBrown and Licariに 従い,付加価値総額不変を想定してモデルを完結させた。付加価値が賃金コス トと利潤からなり,かつ,賃金コストが価格変化の前後で不変であるならば, この想定は       、

  2,Zr =: 2, Zj (6b)

      5) すなわち,利潤総額を不変に保つことに等しい。このとき,価格モデルは利潤 を産業間で再配分して価格体系を変化させる形になる。  Lu and Liが用いた想定は,この産業間の利潤再配分である。その想定はや はり(6b)式で表されるが, Lu and Liの場合,付加価値総額は必ずしも不変 でない。利潤総額が不変に保たれる一方で,賃金コストは物価スライドにより 変動するからである。  Lu and Liの価値価格モデル,生産価格モデルはそれぞれ(5c)式,(5d)式 に(6b)式を加えた形で完結する。しかし,(5e)式で表された二径路価格モデ ルはn個のp、と2個の未知定数窃,6,を含んでいた。(6b)式の追加は依然, モデルを完結させず,Lu and Liはさらに 6, 2j Wj : 6, 2jK, =O.21:0.52 (6c) として二径路価格を算出した。左辺の6,ΣjWj,6,Σ、K、は(3d)式で示した利潤 の賃金コスト比例部分と資本比例部分の各合計である。  Lu and Li(1991,85)によれば,次のようなコブ・ダグラス生産関数 5)田畑,金澤の想定は(6b)式に帰着するはずであるが,田畑(1990,224)が実際に用い たのは次のような条件式であり,金澤についても同様である。   2, [Zr/(P, X,)] = 2, [Z,/(P, X,)] この式の意味づけは困難である。

(7)

中国の価格体系と価格モデル  267 Y=O.3187 LO・482 Ko.s236 ただし,Y:付加価値     L:労働     K:資本 がクロスセクションデータから計測され,労働の生産弾力性は0.48,資本の生 産弾力性は0.52であったのに対し,付加価値総額に占める賃金,利潤のシェア はそれぞれ0.27,0。73であった。賃金のシェアは労働の生産弾力性に比べて 0.21小さく,利潤のシェアは,この0.21と資本の生産弾力性0.52を加えた形に なっている。利潤はO.21の労働貢献分と0.52の資本貢献分から成り立っていた と考えることができ,Lu and Liはそれぞれを利潤の賃金コスト比例部分,資 本比例部分として(6c)式の想定を与えたのである。 C.モデルの性格  以上に示した各モデルの性格は,(3a)一(3d)式の利潤決定ルールが大きく 左右している。(3a)一(3d)の各式に対応する価値価格モデル,平均価値価格モ デル,生産価格モデル,二径路価格モデルはそれぞれ,次のような特徴をもつ。 価値価格モデル:賃金コストと利潤の比が全産業で等しく1:α,つまり,付   等価値ベースの資本分配率が全産業で等しくα/(1+a)になる。 平均価値価格モデル:総コストに占める利潤の割合が全産業で等しくβ/(1+   β)になる。 生産価格モデル:資本利潤率,すなわち資本1単位あたりの利潤が等しくγに   なる。 二径路価格モデル:資本利潤率を全産業で等しくあにし,さらに賃金コストに        6>   対し,6rの比率で利潤を上積みする形になる。 6)二径路価格モデルの利潤上積み部分については,Brown and Licariによれば,次のよう に考えることができる。 1.賃金コストに計上されない雇用者への各種支出 2.賃金コストを上回る労働の生産貢献分       /

(8)

 一方,次の2点もまた,モデルの性格を左右する要因になっている。 1.利潤に関する比例定数α,β,…をどう与えるか。 2.賃金を物価にスライドさせるかどうか。 同じ利潤決定ルールから導かれた価格であっても中兼モデルの場合は比例定数 に関する想定が平均物価水準を不変に保つような値にし,田畑,金澤,Lu and Liの場合はそうでない。また,いずれのモデルも消費者物価水準は変化させう るが,Lu and Liの場合,その変化が賃金コストを通じてさらなる価格変化を もたらす。実際,中兼とLu and Liの価値価格を比較してみると,後者の値は 全部門で前者を上回っている。その大きな理由は恐らく,ここで示したモデル の性格の相違である。  さて,中兼らはその価格モデルを中国の価格体系の歪みの計測,あるいは価 格改革のシミュレーションに用いたのであるが,その価格モデルは本来,計画 経済下での価格設定を考えたものである。中国で現在進行中の改革が市場経済 の導入,拡大を図っていることを考えれば,用いたモデルが目的に合致したも のであったかどうか,実は疑問の余地がある。具体的理由は次の通りである。 1.価値価格モデルの利潤決定ルールは全産業,その資本集約度と無関係に付   加価値ベースの資本分配率を等しくし,平均価値価格モデルは総コストベ   ースの資本分配率を等しくする。しかし,こうした状況が市場経済下で実   現するとは思えない。 2.二径路価格モデルは価値価格モデルと生産価格モデルの中間,すなわち産   業間の「労働利潤率(賃金コスト1単位あたりの利潤)」均等と資本利潤率   均等の中閲をとる形になる。この点を評価し,シミュレーションでも確認   してしu and Liは所得分配の観点から好ましいと論じたのであるが,そう   した状況もまた,市場経済下で実現するとは思えない。 3.生産価格モデルは各産業,資本利潤率を等しくする形になり,この点では   市場経済モデルに近い。しかし,その利潤率が市場で決定される利潤率に \3.人的資本から得られる収益  (6c)式で示したLu and Liの想定は,このうちの2番目にあたる。

(9)

       中国の価格体系と価格モデル  269   等しいとは限らない。 4.各モデル,賃金については現行のまま,あるいは物価スライドを想定して   いるが,その賃金が妥当であるとの保証はない。 中国の現状を考えた場合,歪みの計測や改革のシミュレーションは市場で決定 されるであろう価格をベースにして行うのが自然であるのに対し,各価格モデ ルは必ずしも市場価格を算出しているといえないのである。  しかしながら,こうしたモデル価格を算出し,現実の価格と比較することが 無意味であるとは考えない。本稿もまた,価格モデルを用いた実証分析を行っ ているが,それは次の点で有益と考えたからである。 1.過去,計画経済を中心としてきた中国の価格体系が現在,どのモデル体系   にどの程度近いかを知ることは有益である。 2.その想定する利潤率や賃金が妥当であるとの保証はないものの,生産価格   モデルは市場経済モデルに比較的近く,一つの試算として有益である。 こうした有益な情報が簡単に得られる点,価格モデルの有用性は大だというこ とができる。 III.実証分析 A.モデル  実証分析は1987年33部門産業連関表を用いて行ったのであるが,データとの        7) 対応を考慮し,各産業の生産コストに減価償却と「その他費用」をつけ加えた。 そしてLu and Liのような賃金の物価スライドは行わず,中事,田畑,金澤と 同様,各産業の利潤だけを操作した。各産業のコストバランス式は次のように 表される、 PrX,=2,Pt, X,,+Dj+Wj+Zf+O, j== 1, 2, …, n ただし,Dj:第j産業の減価償却     0、:第j産業のその他費用 (7) 7)産業連関表は国家統計局国民経済平衡司他1991。「その他費用」には交際費等の企業消 費にあたる部分や退職者への給付などが計上されている。

(10)

 利潤決定ルールは先行研究に準じた。よって各価格は(7)式に(3a)一(3d) の各式を代入して導出される。前節と同様,(4)式で定義した価格調整係数を 用いて表現すれば,価値価格,平均価値価格,生産価格,二径路価格はそれぞ れ,次のようになる。   p)=2ipiaij十d]十(1十a)w,十〇j j== 1, 2, …, n   pJ=(1+X3)(2ipiaij+dj+wj+o,) j= 1, 2, …, n “ pj=2iptai,十d,十wj十7tk,十〇j j== 1, 2, …, n   pj=Σip且al、+d、+(1+6,)wj+6,kj+oj j=1,2,…, n   ただし,dj=D、/(P, X、)は減価償却のコストシェア       OJ=OJ/(P, X,)はその他費用のシェア (8a) (8b) (8c) (8d)  比例定数α,β,…を決定するための想定には前述の(6b)式,(6c)式を用 いた。すなわち,利潤総額不変,あるいは産業間の利潤再配分を想定し,二つ の比例定数が必要な二径路価格についてはLu and Liの想定を合わせて用いた。 ただし,利潤再配分については,実際の33部門連関表では「行政機関」部門の 利潤はゼロとなっていたため,本稿でも当該部門の利潤はゼロとなるような, すなわち,残る32部門で利潤を再配分するような形にした。 B.分析結果  各価格(調整係数)は(8a)一(8d)の湿式を比例定数決定のための想定式と 連立させて算出される。算出に当たっては産業連関データに加えて資本のデー タが必要であるが,これについては各産業,減価償却の値が資本ストックに比 例すると想定し,連関表に記載のある減価償却のデータで代用した。  各価格(調整係数)は第2表のように算出された。たとえば農産物の場合, 価値価格は現実の価格に比べて30%高く,平均価値価格と二径路価格は現実の ほぼ10%高,そして生産価格は現実とほぼ同じ;つまり,価値価格,平均価値 価格や二径路価格をベースにして判断すれば現実の農産物価格は過小評価され, 生産価格をベースにすればそうでないといったことを表の値は示す。各モデル

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       中国の価格体系と価格モデル  271 価格問の相違は小さくなく,どのモデルをベースとするかにより,価格体系の 歪みに関する議論は大きく変ってくることがわかる。ただし,二径路価格の値 第2表 価値価格,平均価値価格,生産価格と二径路価格a 価値  平均価値  生産 二径路

123456789101112131415161718192021222324252627282930313233

農産物 石炭 石油・天然ガス 金属鉱物 その他非金属鉱物 食品 紡織 縫製・皮革 木材・家具 製紙・文教用品 電気・スチーム・温水 石油製品 コークス・ガス・石炭製品 化学 建材・窯業製品 金属 金属製品 機械 輸送機械 電気機械 電子・通信機器 メーター・その他計器 機械設備修理 その他工業製品 建築 運輸・通信 商業 飲食 旅客輸送 公共・対家計サービス 文教・衛生・研究 金融保険 行政機関

017856891221149732196120104981815317779888865077677766788980071029

110000000000100000000000001101100

110000010000100000000000100101100

881388902117467265745022046038727009879909976188888888899089180029

011100000010100000000010011011101

919277072772128802364522990387794951198989808499999988809910917G20

111100000000100000000000011011101

807219989643972956619168781878761040098888897289888887898900905020

a価格調整係数,すなわち現実の価格を1とする値で表示。

(12)

は必ず価値価格と生産価格の問をとっている。その定義,あるいは利潤決定ル ールが価値価格と生産価格を組み合わせた形になるからである。  表の値をもとに,次の2点を検討した。 1.現実の価格体系はどのモデル体系に近いといえるか。 2.市場価格により近いと本稿が考える生産価格をベースにすれば,現行価格   体系の歪みはどのように評価されるか。  1番目の点については,第3表に示した二つの基準を使って判断した。一つ は各モデル価格の現実価格との平均絶対乖離率,すなわち,33の産業部門につ いて現実価格,つまり1からの絶対乖離率を計算し,産業別生産額で加重平均 した値;もう一つはモデル間比較成績と題したもので,各価格,いくつの部門 で他と比較して最も現実,すなわち1に近かったかを数えた値である。前者の 基準に従えば,現実との乖離は価値価格で大きく,後者も合わせれば,現実に 最も近かったのは生産価格であったと判断される。価値価格と平均価値価格だ けを取り上げるのであれば,いわれてきたように,現実の価格体系は後者に近 い。しかし,少なくとも1987年段階では,現実は生産価格により近かったと考 えられるのである。 第3表 各モデル価格の現実価格との比較 価値 平均価値 生産 二径路 平均絶対乖離率a モデル間比較成績b

11

2 0 0 1

08

0

0711

0 19ρ7 a産業ごとの現実価格からの乖離率絶対値を生産額によって加重平均した値。 b当該モデル価格が他と比較して最も現実価格に近かった産業部門の数。  2番目の点については,第2表より次のことがいえる。すなわち,表の生産 価格の値が1,つまり現実価格を上回り,価格の過小評価があったと判断され る部門は,表の値が大きい順に公共・対家計サービス,石炭,コークス・ガス ・石油製品,石油,天然ガス,運輸通信,旅客運送,金属鉱物などであり,逆 に価格の過大評価があったと判断される部門は,表の値が小さい順に金融保険, 石油製品,電子・通信機器,メーター・その他計器,電気機械,食品,縫製・

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      中国の価格体系と価格モデル  273        8) 皮革,製紙・文教用品などであった。生産価格をベースとする限り,先行研究 の多くが論じてきたような農産物価格の過小評価は認められない。概してイン フラ,エネルギー部門の価格が低く,金融保険,電気機械や軽工業製品の価格 が高かったと考えられるのである。  ところで,生産価格は諸産業の資本利潤率を均等化するような価格であり, その生産価格に現実の価格体系を近かったと本稿は論じたのであるが,現実の 体系と生産価格との乖離は小さくなく,利潤率も均等化していない。現実の価 格が生産価格と完全に一致し,利潤率が完全に均等化することは恐らくは不可 能である。しかし,第4表が示すように,現段階での産業間利潤率格差は大き い。現在,中国では各分野への利潤を求めての投資が盛んに行われている。こ の活発な投資,資本移動は利潤率格差を縮小するとみられるが,その過程で所 得分配状況は大きく変化し,場合によっては社会不安の要因となることもまた, 考えられる。 IV.結  以上,中国の価格体系の歪みの計測や価格改革のシミュレーションに用いら れてきた価値価格,平均価値価格,生産価格,二径路価格の各モデルをサーベ イし,1987年目産業連関データを用いた実証分析の結果を報告した。本稿の議 論は次のように要約できる。 1.中国の現状を考えた場合,歪みの計測や改革のシミュレーションは市場で   決定されるであろう価格をベースにして行うのが自然であるが,各価格モ   デルは必ずしも市場価格を算出しているといえない。 2.しかし,生産価格モデルは市場経済モデルに比較的近く,一つの試算とし   て有益である。 3.少なくとも1987年段階では現実の価格体系は生産価格に近かった。 4.生産価格をベースにして判断すれば,先行研究の多くが論じてきたような 8)ここで挙げた諸部門のうち,「公共・対家計サービス」が具体的に含むのは市内交通,理 髪,日用品修理,不動産サービスなどである。

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    第4表 産業部門別利潤率a

1234567891011121314151617181920212223242526272829303132

農産物 石炭 石油・天然ガス 金属鉱物 その他非金属鉱物 食品 紡織 縫製・皮革 木材・家具 製紙・文教用品 電気・スチーム・温水 石油製品 コークス・ガス・石炭製品 化学 建材・窯業製品 金属 金属製品 機械 輸送機械 電気機械 電子・通信機器 メーター・その他計器 機械設備修理 その他工業製品 建築 運輸・通信 商業 飲食 旅客輸送 公共・対家計サービス 文教・衛生・研究 金融保険

9161530195522281889190715161443490460962390603028211676365085033

00001212111301111112110100010009

a32部門の資本ストック(ただし,減価償却のデータを 代用)による加重平均を1とした値。   農産物価格の過小評価は認められなかった。概してインフラ,エネルギー   部門の価格が低く,金融保険,電気機械や軽工業製品の価格が高かった。 5.産業間の利潤率格差は大きかった。この格差は利潤を求めての活発な投資,

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中国の価格体系と価格モデル  275   資本移動によって縮小するとみられるが,その過程で所得分配状況は大き   く変化することが考えられる。  本稿は市場経済モデルに近いという観点から生産価格モデルを評価し,積極 的に用いたのであるが,モデルで想定した利潤率,あるいは現状のままとした 賃金コスト等が妥当であるとの保証はない。この点でモデルは改良の余地があ り,また,より現実的な方向を目指すのであれば,ありうべき産業間格差も許 容しなければならない。残された課題としておきたい。        引 用 文 献 Brown, Alan A., and Joseph A. Licari. 1977. “Price Forrnation Models and Economic   Efficiency.” The Socialist Pn’ce Mechanism. Ed. Alan Abouchar. Durham, NC:   Duke UP. 184−230. Ganczer, S. 1966. “Price Calculations and the Analysis of Proponions within the   National Economy.” Acta Oeconomica 1: 55−68. 国家統計局国民経済平衡統計司・全国投入産出調査辮公室. 1991. 『中国投入産出表:   1987年度』 北京:中国統計出版社. 金澤孝彰. 1992. 「中国経済の構造変化と価格体系:中国産業連関表を用いての一考察」   アジア政経学会第46回全国大会。大阪市立大学,10月31日. Lu Nan, and Li Mingzhe. 1991. “Use of lnput−Output Techniques for Planning the Price   Reform.” Chinese Economic Planning and lnPut−OutPut Analysis. Ed. Karen R.   Polenske and Chen Xikang. Hong Kong: Oxford UP. 81−92. 中兼和津次. 1987. 「農工間「不等価交換」論について:中国における「鋏状価格差」論   の一考察」 『一橋論叢』98.6:1−22. 一一一一一一一一D 1992. 「農工関係の経済分析:その1」 『中国経済論:農工関係の政治経済学』   東京:東京大学出版会. 39−84. 田畑理一. 1981. 「社会主義経済の多部門価格形成モデル:二径路価格を中心として」   『一橋論叢』85.6二101−19. 一一一一一一一一D 1990. 「中国産業連関表と価格改革について」 『比較経済研究:計画経済の理   論的・実証的検討』 京都:晃洋書房.211−34.

参照

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