• 検索結果がありません。

業務監査知識の吟味 (9) : 監査人にあるべき心構え

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "業務監査知識の吟味 (9) : 監査人にあるべき心構え"

Copied!
23
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

風 r i l l l l l l l l l l l l l l l

業務監査知識の吟味 (9)

― 監査 人 にあ るべ き心備 え― 酒 居 叡 二 I 序 ` H 監 査 開始前 の心備 え 皿 監 査 開始時 の心備 え I V 監 査期 間中の心備 え(1) 一― 実在す る証拠 にのみ注意 を払 うべ きか―一 V 監 査期 間中の心備 え(2) 一 一 明瞭 ・簡潔 なノー トとは如何 にあるべ きか―― W I 監 査期 間中の心備 え(3) 一 一 時間浪費の策略への対応 は如何 にあるべ きか―― W I l 監査期 間中の心備 え(4) 一― 注意 して捜すべ きは何 か―― Ⅷ 監 査期 間中の心備 え(5) 一 一 時間浪費以外 の策略 ・序盤作戦への対応―― 区 監 査 終 了 に際 しての心備 え X ま とめ I 序 「後 にな ってか ら挑戦 を受 ける こ と,そ して,確 か な証拠 の所在 を示す こ と が で きない,確 か な証拠 を描 写す る こ とが で きない とい うことほ ど悪 い ことは 1 ) ほとんどない。」 1 ) G o W P a r k e r , T んθ r 7 2 けθt t a ιれ 例けウ% θげ 〃a 物り θt t θ物けS y s けθt t s , G o w e r H o u s e , 1995, p.94.

(2)

2 4 彦 根論叢 第 328号 これ は, 監 査 人が監査期 間中に “明瞭 に して筒潔 なノー トを とる こ とルの必 要性 に関連 してG . W . P a r k e r 氏 が示 してい る命題 であ る。 「疑 い と証拠 とは別 2 ) 物 であることを覚 えているように」 とい う監査人に対する氏の助言か らも祭せ られる如 く,G.W.Parker氏 にあって証拠 とは,被 監査者か らの挑戦 に監査人 が対応 し得 るための最強の武器 として専 ら位置づけられているものの如 くに, 一見思われるかもしれない。 しか しながら,監 査人は 「合理的な数の標本を採っ て吟味 した ものであ り,一 部分の標本のみを観察することによって得 られた結 論 ではない とい うことの証拠 として,た とえ矛盾が発見 されなかった場合 にお いてさえも,常 に,個 々の項 目の実態 ・お よび,個 々の項 目を取 り巻 く環境 に 3 ) ついて もノー トをとってお くべ きである。」 とい う勧告か らは,氏 において, 監査 プログラム担当部長 を始め とする組織内部の被監査者以外の構成員 も監査 人 に対する挑戦者であ り得 る旨意識 されていることが解 る。まことに,内 部監 査 とは組織内部の者 による組織内部の監査 とい う小宇宙の監査ではあって も, 必ず しも狭い了簡の通用する領域ではない とい うことが確認 されるであろう。 「監査 の準備お よび誘導」の章│こおいてG.W.Parker氏が示 している “監査 人 の心備 え"と は,主 として,被 監査者関連の もの としてこれを理解 し得 るもの であるけれ ども,監 査人に対 し批点 を打 ち得 る者,す なわち,監 査人 として恐 れるべ き者は被監査者だけではないことが覚えられなければならない。本稿 は, この ような観点か ら “監査人の心備 え"に 関す るG.W.Parker氏の監査知識 を 吟味 しようとした ものである。 H 監 査開始前の心備 え 被監査者の中には威嚇的な者 も居れば,人 を見下げるような者 。人 を小馬鹿 に したような者 ・全 く歯 に衣 を着せない粗野 な者,果 ては,監 査人を利用する 者 も居 る とい うのがG.W.Parker氏の観察であると被監査者以外 の者 について 2)rbウ冴.,p.100. 3 ) 乃 ぢα, p . 9 4 . 4 ) 乃 あα. , p p . 9 1 - 1 0 2 . 5 ) 、7 ) め ウ冴, p . 9 9 .

(3)

業務監査知識の吟味(9) 25 も恐 らく同様 なことが言えるのであろうけれ ども,こ れ ら被監査者のすべての 者が監査人 に対する挑戦者 になる可能性 は大であるにもかかわらず,実 際にこ れ らの被監査者が監査妨害の挙 に出て,監 査人が監査妨害のための真剣 な試み であると覚 えるのは比較的小 さな割合で しかない。すなわち,監 査人が上級部 長 の場合 で1.25%(80件 中約 1件 ),監 査人が上級者でな く経験 も左程豊かで 0 ない場合で 5%(20件 中約 1件 )程 度であるとい う。すなわち,大 抵の被監査 者 は 自分達の仕事 とか予定 に監査が及ぼす衝撃 について深刻 な関心 をもってい る程 に監査 を歓迎 しているわけではないけれ ども,素 直で協力的で建設的であ の る とい うことになる。 この ように,被 監査者の類型 を2大 別すれば,監 査人に 対す る潜在的敵対者は少数派 ・潜在的味方者 は多数派 とい うことになるのであ ろ うが,少 数派必ず しも弱者でない ところに監査人が備 えを怠 ってはならない 背景 を理解す ることがで きる。見方 を変 えて,監 査人に対する潜在的敵対者は 必ず しも本 当の敵ではな くて監査人を磨 きあげるための使者であるとして も叙 上 の ことに変わ りはない といえるであろう。 1 ) 被 監査者 に対す る通知 被監査者 は監査予定表 をもって監査の行 われる日時 を先刻承知 している 筈 であるけれ ども,監 査実施前 3週 間頃に監査があることを被監査者 に思 働 い出 させ,監 査実施 2日 前 に再確認すること。これは被監査者か ら寄せ ら れるか もしれない 「通知 な し」の抗議 に備 えてお くことの必要性 を認めた 要件 である。「被監査者 に対 して余 りに も同情的になってはならない。被 監査者はこれ まで沢山の通知 を受けているのであ り,従 って十分 な時間が 9 ) あったのだか ら」 との言 は,備 え無 き者 には同情無用 とい うことを意味す る ものであるけれ ども,こ の言は,被 監査者 に対 し十三分 な通知 を してお かなかった監査人に対 して もそのまま当てはまるものであることを指摘 し た ものである。

2)監 査プログラム担当部長とともに行う

監査の範囲固め

8),9)ゴbぢα,p.91. 1 0 ) - 1 9 ) 乃づα, p . 9 2 .

(4)

2 6 彦 根論叢 第 328号 3)存 在 の確 認 を狙 ってい る弱″点の具体 的性格 を決定す る こ と (適用可能 に して 目的適合 的 な基準 ・法令 ・要件 ・統制 ・手続等 はいず れであ るか決定 1 1 ) すること。) 4)前 回の監査で識別された矛盾に対 してはすべて是正措置が講 じられてい 1 2 ) るか監査 プログラム担当部長 に尋ねること。発見 された矛盾 に対する是正 措置の存否確認はすべて監査予定表中に示 されていることであるとすれば, やがて監査人 自ら確認 して知 ることになる内容 を何故 にわざわざ時間を割 いて監査 プログラム担当部長 に尋ねる必要があるのか一見不審 に思われる であろう。 しか しなが ら,こ れは監査人にとっての基本的な備 えを構成 し ている謙遜 とも解すべ きものであって,監 査人の弱点 を補い監査人を守 る ための工夫 と解すべ きものである。 5)以 前の監査 で識別 された弱点領域 についての監査報告 を前 もって読んで お くこと。そ して,ほ んの僅かな りとも,前 回の監査で弱点が識別 された 1 3 ) 局面に傾斜 した監査 を行 う必要がある旨の覚書 きを作成 してお くこと。そ の根拠は “弱点の根深 さ"と いうことに求め得るであろう。正に,「前の 監査で完了済みになっている措置によって弱点は除去されて しまっている 1 4 ) などと決めてかかってはならない。」 と言 うべ きである。 才 6)何 らかのチェック ・リス トが必要であるかどうか固め,チ ェック ・リス 1 5 ) 卜を作成す るな り,然 るべ くチ ェ ック ・リス トを修正す るな りす る こ と。 7 ) 前 掲 チ ェ ック ・リス トとか覚書 き, あ るい は必 要 な情報 ・有用 な情報 ・ 1 6 ) 資料 ・文書 をひ とまとめに したフアイルを準備すること。 8)実 際に監査 を行 うことがで きるための条件の充足 を確認すること。たと えば,核 燃料施設の安全性監査 のため被爆危険の高い所へ も行かなければ な らない とい う場合の保護衣服類の手配はこちらで行 う必要があるか どう かの確認,ま たそ うである場合,そ れ らを調達する責任者は誰であるかの 1 7 ) 確認 をとってお くことな どが考 えられよう。 1 8 ) 9 ) 経 営 システム文書の吟味 ・外部的要件への適合性 ・解釈の正確性

(5)

業務監査知識の吟味(9) 27 ・内部文書基準へ の適合性 ・完全性 ・明瞭生 。前後矛盾 とか誤謬 の有無 ・正 当性 (正しく承認 された ものであるか どうか)・周知性 1 9 ) 10)昼 食 は軽い もの,そ して,ア ルコール抜 きであること。 朝 か らアル コールを口に して出勤す る者 は誰 も居 ないであろう。昼食 におい て も同様 であるにちがいない。 しか しなが ら,あ るいは,被 監査者か ら昼食の 席 を用意 されていてこれに応 じた結果,勧 められてアルコールを口にして しまっ た とい うことが攻日きことは大いにあ り得 ることであると言わなければならない。 アル コールを口に した後 に監査 に従事 し,後 に至 り他者 より“監査人は集中力 不足であつた"な どと責め られることがないためには,被 監査者か らの招待 は 一切謝辞するということ,大 事 に至 らないうちに危険な芽はつみ とってお くと い うことでなければならないことが示唆 されていると解することがで きるであ ろ う。 皿 監 査開始時の心備 え 監査 の 開始 に よって初 めて監査 人 は被 監査 者 と対 面す る ことになる。その場 2 0 ) で被監査者が監査人について抱 く“第一印象が他の何物 にも優 る効果 を有する" とい うことについては解す るに難 くないであろう。第一印象が悪ければ後は何 を為 して も全 く無駄 と真実思わざるを得 ない如 くに,第 一印象 を他者が改める に至 るため には,(1)時 の推移 ・環境 の変化 を経て も変わ らぬ真実性如何 とい うことが明瞭 に示 され続 け られるべ きこと,(11)試みに対する反応の内容や如 何 ・注 目に値す る ものあ りや を見 ている者の 目に顕著 にアピールす る もの ・魅 力ある ものが投影 されるべ きことが必要である。 しか しなが ら,第 一印象 とは 良 きにつけ悪 しきにつけ結果論であることは論 を倹 たない。結果が良好 なもの である場合 は ともか く,結 果が悪い場合 には,事 実上すでに遅 しと言 って も過 言ではないであろ う。年の最初の 日が重 ん じられ祝 われるの も,初 成 りとか著 20)rbケ冴,p.93.

(6)

28 彦 根論叢 第 328号 作 の第一作 が重 ん じられ るの も, 男 女 いず れであれ家庭 において家長が重 ん じ られ るの も,こ れ らそれぞれの もの に よって残余 の ものが決定 的 ともい えるほ どの影響 を受 け る こ とを見越 しての こ とと言 うべ きであ り,決 して故 の ない こ とで は ない。監査 に関 して言 うな らば,“開始 の取 り組 み方次 第 で監査 の色調 2 1 ) は協力的なもの ともなれば, 敵 対的なもの ともなる" と い うことになるであろ う。監査人 に対する被監査者の第一印象 を悪 くし, 非 協力的 ・敵対的態度 をと られることが ない ように心備 えをな し, ま た, こ れを実行することの重要性 に ついて も首肯 し得 るところであろう。監査人に対する被監査者の第一印象 を良 い もの とす るための要件 として, G . W , P a r k e r 氏 は以下の6 個の もの を識別 し 2 2 ) て い る 。 1)人 なつっこい流儀,す なわち,笑 顔で被監査者 を迎 えること 2)よ りくつろいだ雰囲気 を作 る一助 とするために,ち ょっとした会話や軽 い冗談で話 し合いを始め,議 論の余地のない問題の中に共通の関心の場 を 見 出 し,共 感的な関係 を築 くこと。 3)監 査 の範囲を見直 し,適 度 に素早 く解決することので きる関心事 とか内 心秘かに抱 えている疑念 といった ものがないか被監査者 に尋ねること。 4)発 見事項 についての概要は監査終了時点で被監査者 と話 し合 う予定であ る旨説明すること。 5)最 初 は矛盾が見出される見込みのない ・回 りくどくない ・単純 な問題か ら着手 し,次 第 に危険性,複 雑性が増 してい く領域へ と吟味 を進めてゆ く こと。 6)建 設的な色調 ・雰囲気 を増大するためには, `良い'・ `すぐれている'・ `素晴 らしい'等 々の言葉を用いた陽性的言語を用いること。 これ らの要件 に見出 される問題点 として少 くとも以下のことが挙 げられるで あろ う。 △ 如 何 に被監査者の第一印象 を良 くす るためであるとはいえ,監 査人 とし rbぢα,p.92. rbぢα,p.93.

(7)

業務監査知識の吟味(9) 29 て越 えてならない一線 は失張 り越 えてはならない とい うこと。前第 工節2) において紹介 している如 く,監 査人は被監査者 との面談 に先立 ち,監 査 プ ログラム担当部長 との打合せ会において監査範囲を固めて しまっている筈 である。その打合せ会 において “監査範囲をどのようなもの とするかにつ いては監査人に一任す るルとの言質 をとりつけてあるのでない限 り,上 記 要件3)は,監 査 プログラム担当部長 を監査人の敵 にまわす可能性大 といえ るであろう。 △ 要 件5)6)を 一体 として見 る ときには,被 監査者の第一印象良かれ と い う願い とは裏腹 に,背 に腹 は代 えられないではないか とい う場合のある ことが察知 されるけれ ども,こ のような場合の取組み如何 ということが第 2の 問題である。矛盾が見出 される見込みのない単純 な問題 にたい し `良 い' `すく`れている' `素晴 らしい'を 違発することは何の雑作 もないこと であ り,被 監査者 も上気嫌で監査人に応対 していることであろう。 しか し なが ら,こ れで監査 は終了 とい うのではな くて,監 査人は危険性 ・複雑性 の増 し加わる領域へ吟味 を進めてゆ くとい うのであれば,こ こに監査人 と 被監査者 との間の本当の意味での攻め ぎ合いが始 まると言わなければなら ない。監杢人は “被監査者の第一印象や如何ルと被監査者 を恐れることを どの ような時点で中止すべ しとい うのであろうか。あるいは,こ の段階に おいて も監査人は被監査者の第一印象如何 を恐れて `良い'`素 晴らしい' を連発すべ きとい うのであろうか ?も しそ うであるならば,監 査人は被監 査者の前 に屈服 しているに等 しく,監 査無用 とい う論が生 じて くるであろ う。監査 人 といえ ども徒 らに被監査者 と対立 して事 を構 えることなきよう 配慮すべ きであることはわかるとして も,監 査の成功 =被 監査者の気嫌の とりもちであるかの如 き思考,な い し,そ の うような思考であると誤解 さ れかねない行動形式 は厳 に排斥 されなければならない。 Ⅳ 監 査期間中の心備 え(1)一実在する証拠 にのみ注意 を払 うべ きか一 証拠 とは “客観 的な実体であ り,そ れ自体的確 に して簡潔な,そ して,

(8)

3 0 彦 根論叢 第 3 2 8 号 客観的な描写 と引照 とをなすことができるもの ナタというのがG.W.Parker氏に よる証拠の定義である。その有用性は,不 真実な主張 (真実に対する挑戦)が どのような形をとろうとも,そ れを沈黙させることのできるものというところ にあると認めてよいであろう。ここにこそ “目に見える"と いうことが証拠の 不可欠な要件 とされてきた背景を理解することができると しかし証拠 とは目に 見える事実であるとしても,そ れが当初の形態そのま ゝに存在 し得る期間には 長短 さまざまなものがある如 く,“目に見える"と いうことは果 して本質的な 要件であるのかと考え込まざるを得ないことがあるかもしれない。たとえば, すべての痕跡が後になって消えて しまうような危険な方法あるいは正 しくない

1日

:猛

も観察 しうる ものがない とい うことはあ りうることである。幸運にも監査人の 目に入 り観察 された後消 えていった ものは証拠であ り,監 査人の現場到着が少 しばか り遅れたため証拠 となるものは何 も観察 されなかったとすればこれは元 来何 も存在 しなかった証拠であるとする区別が,本 質的な区別であるとは筆者 には考 え難い。 これではあたか も,人 の目に見 えるものは存在 し,人 の目に見 えない物 は何 も存在 しない とい う論理 に立脚 した議論 に至 らざるを得ない。本 当に大切 な ものは却 って目に見 えない ものの中にこそ数多 く存することに思い を馳せ るとき,こ の ような議論の論破可能性は誰の目にも明 らか と言わざるを 得 ないであろ う。 それに して も,監 査人の質問に対する被監査者の応答 を構成 している事実が

?⊇

I`ほ

,P?督

の事実を呈示できない,あ るいは,そ のことについての事情を説明できないと いうのは,常 識的には不審とみなされて止むを得ないところである。監査人の 2 3 ) 乃 ぢα) p . 9 3 . 24)rbづα.,p.94. 25)Fbづ冴,p.93. 26)Fbづα,p.94.

(9)

業務監査知識の吟味( 9 ) 3 1 質 問 に対 す る被 監査 者 の応答 を構 成 してい る事 実 は, そ れが真 実 な ものであ る 限 り,監 査 人 に対 してだけ有利 に働 いてい る もので はな くて,被 監査 者 を守 る 防具 ともなってい る ものであ るが故 に, 被 監査者 として は この防具 ( 目に見 え る一連 の事実)の 至 る所 に 自らの足跡 を確 実 に とどめてい くよう自ら心配 りし てお く必要が基本的にあるのであると言えるであろう。換言すれば,最 早や人 の目には見えないものとなっている事実 というものもあ り,従 ってこれを被監 査者が証拠 として呈示することはできなくなっている可能性 まで否定すること はできないということであるけれども,そ のことをも含むあ りのま ゝの事実す べてを呈示 し説明できるような道を常に選びとることは可能であ り,あ くまで も,そ こに真実が満ち満ちているのであれば,た とえ監査人は容認せず という ことがあろうとも,真 実そのものである神がいずれそのことを説 き明か して く れることを信頼 してよいということである。基本的に重要なことは,人 に対 し ても然ることながら,何 より真実な神に対 して申し開きをなすことができるか 否かということであるように筆者には思われる。 このように解するとき,G.W.Parker氏 の “疑いと証拠 とは別物であるルと いう立場は,必 ず しも,“証拠 となるものは何 も観察 されなかったが故に,こ れは疑わしきこと何 も存在 しない証拠である"と いう立場に等しいものではな く,む しろ,上 記筆者の理解そのものであることがわかる。“われわれは## 1!**!の 嘘をあば くことがで きなかった'と は “ゎれわれは被監査者が 嘘を言つている証拠を見出すことができなかった"と いうことに他ならない。 本当に#♯ !!**!が 嘘であるか否かは神のみ知るところであ り,わ れわれ の報告すべ きことは,わ れわれの入手 し得た証拠により圧倒的強さをもって発 言 しうることだけであるが故に,神 のみ知る領域のことについては何 も発言 し えない, ということでなければならない。このような立場は決 して,人 の目に 見えるものだけが存在 し人の目に見えないものは何 も存在 しないというが如 き 立場 と相入れるものでないということが注目されなければならない。 27)乃 あ先 p.100.

(10)

彦根論叢 第 328号 V 監 査期間中の心備 え(2)一明瞭 ・簡潔 なノー トとは如何 にあるべ きか一 ノー ト(覚書 き)は記録その ものであ り,ノ ー トをとる監査人の側からすれば, それは後 に至 り受けることになるか もしれない被監査者か らの挑戦に対処 した 抗弁用具 と解 さなければならない。ノー トをもって確かな証拠 とその所在 とを 正 しく示す ことがで きているならば,監 査報告 に対する挑戦 (監査人に対する 挑戦)に は,ノ ー トの中に示 されている証拠が対時 して くれるとみてよいであ ろ う。それ故,こ の ような働 きをなすノー トは証拠 を的確 に描写 したものであ ることを要する。すなわち,証 拠 はこれ しかない,証 拠の所在 について も同 じ とい うことが識別 される時点 までノー トの作成 は待たれなけらばならない とい う要件の充足が,ノ ー ト作成の基本 と解 さなければならないことになる告 調査過程 において監査人が被監査者 に対 してなす質問は,被 監査者の応答内 容 と現実 との間の矛盾の在否 を捜 し求めるための道具であるが故 に,矛 盾が見 出 された ときの質問 とそれに対する応答,お よび,応 答 に対する現実は矛盾の 存在 を立証す る一対の証拠 として記録 されなければならないでろう。 しか し監 査人の質問に対す る被監査者の応答が 「何事 かについて しなかった。」 「して いない。」 「特定の統制 な り基準が機能 していないのでその結果 についての記 録 はない。」とい うが如 き否定形 をとる場合 もあ りうると これはあたか も貝が 殻 を閉 ざ して沈黙する如 く“徹底的な過小表示"に 等 しい場合 と言 うべ きであ り,応 答内容 と現実 との比較対照が不可能な状態 にあることを意味するもので ある。 この ような場合,監 査人は被監査者の応答内容の中に矛盾の在否 を捜 し 求めることがで きない故 に格別な困難 に道遇せ ざるを得 ないであろう。この よ うな場合,監 査人の とるべ き最善の方策は,被 監査者の返答 を額面通 りに受け 取 り 「それであなたは どうするんですか ?」 とい うが如 き間をもって探 りを入 れ,代 替的手筈の在否確認 をなす とともに結果 ・結末 についてノー トをとるこ 3 0 ) ととい うことになるであろ う。“この ような場合 とは被監査者の返答 を額面通 28)-29)rbぢ 冴,p.94. 3 0 ) - 3 3 ) 乃づ冴, p . 9 4 - 9 5 。

(11)

業務監査知識の吟味( 9 ) 3 3 りに受 け取 っ て よい数 少 ない場 合 の一 つ で あ るルとの 讐) も, 監 査 期 間 中 にお け る監 査 人 の心 備 え に関 す るG.W.Parker氏 の本 音 を示 す もの と して注 目す る こ とが で きる。 更 なる問題 は,被 監査者が矛盾の存在 を自覚 している,あ るいは,矛 盾の存 在 を自発的に申 し出ている場合 におけるノー トの とり方についてである。監査 上 の矛盾 を記載す るノー ト (Audit Discrepancy Notes)が用 い られている場 合 には矛盾発見後すみやかに当該 ノー トを提出するよう求め られるであろうキナ れ ども,被 監査者の策略が働 いている可能性 も否定で きないが故 に,被 監査者 の 自認 な り自発的申 し出を鵜春みにすべ きでなばと と勿論である。すなわち, この ようような場合のおけるノー トの記入は,相 異るい くつかの方向からその 問題 を徹底的に取 り上げ吟味 して,情 報伝達上の誤解がないことを確かめるこ と,あ るいは,被 監査者が 自己に不利 な情報 を自発的に申し出るに至 った動機 に不審 をもち続 けるべ きこと,ど こか他の所 にもっと重要な欠陥が存在するの でないか一層精力的に調査追求 し│そ の結果 についても記録 してお くこととい うことになるであろう。 Ⅵ 監 査期間中の心備 え(3)一時間浪費の策略への対応 は如何 にあるべ きか一 監査人 に非協力的な被監査者の採 る序盤作戦ない し策略の中に “監査人の持 ち時間を浪費 させ ることルのあることが識別 されているを このような策略 もあ り得 ることのため に監査人 として心備 え してお くべ き要点 をG.W.Parker氏 に 従 い一覧表示すれば以下の如 くであると a)細 部 に多 くの時間を使いす ぎず,余 りにも広い領域 にまで監査 を拡大 し ない こと。 b)余 りに も多い中断についてはこれを許 さないこと。 c)監 査 を絶 えず滑 らか しに し,目 的指向的に進めるような努力すること。 d)呆 断であ る こ と―何 らかの理 由で何事 かが矛盾であるのか否か明 らか 34)rbづd,p.95.100. 35)Fbぢ冴,p.98. 36)乃 勉 ,p,95.( )内筆者補充。

(12)

3 4 彦 根論叢 第 328号 で ない場合 の処置 は以下 の如 し。す なわち,(1)全 体 の 中の個 々の細 か な 部分 を十分 に集 め ること,(11)被 監査 者 に (1)で 得 られた状況 を知 らしめ, 更 な る助 言が必 要であ る こ とを確 かめ させ るこ と,(111)(当 該個所 で)監 査 を行 ってい る間 に助言 (返答 )を 得 ようと した り,そ の点 (返答 が なか なか返 って こない こ と)で 思 い煩 い時 間 を浪費 しない こと。 e)礼 儀 正 し くあ る こ と。 しか し,被 監査 者が監査 目的 に関連 の ない論点 を 持 ち出 して きた り脇 道へ 逸 らそ うと試 み て きた ときには,断 国 と して これ に抵抗 す る こ と。 D 精 神 の集 中 とい うことをなすべ きこと。以下の如 きことはこれを為すべ か らず。 一―監査 目的 ・監査範囲を見失 うこと。 ―一注意散漫になること。 ――個人的に興味のあるものだけを追いかけること。 ―― 重箱の隅を楊枝でつつ くようなことをすること,あ るいは,些 細な議 論 に巻 き込 まれること。 a)について :細 部 に多 くの時間を使 わせ よう,あ るいは,監 査全般の役害Jり と有用性 について議論 しよう,被 監査者 自身の機能 について論争 しようと仕掛 けて くる被監査者への対応 はあ らか じめ心構 え しておかなければ,相 手方の術 中に陥って しまう可能性大 とい うべ きであろう。 この ような場合の監査人の対 応 は,論 争 に加 らない とい うこと,そ して,提 起 されている問題 については他 の もっと都合の よい ときに話 し合 うことに しようと提案 して切 り抜ける他はな 3 7 ) い。このような切 り抜けを為 し得るためにも,監 査人たる者,平 素より,他 者 からその正直さ ・感覚の鋭敏 さ ・誠実性について僅かなりとも疑念をもたれる ようなことがあってはならないと言 うべ きであろうと b)について :こ こに言 う“監査の中断"と は,た とえば,監 査中に被監査 者宛電話の呼び出 しがあって監査続行が遮断されること, しかも,被 監査者た ゴひぢα,p.98. ゴbウα,p.94.

(13)

業務監査知識の吟味( 9 ) 3 5 る者,要 件 を聞いて手短かに切 り上げ監査人の前 に戻 るとい うのではな くて, 長電話 を し,あ るいは,人 を捜 しに行 く,情 報 を捜 しに行 くとい う口実 を設け て長時間居 な くなる事態 を指す告 この ような事態が再々起 こり始めたときに監 査人 として とり得 る最善の方策 とは, い らだちを抑 えているところを示す こと, 具体 的には,被 監査者 に,監 査人 ・被監査者双方で効果的に完成 しなければな らない手持 ち課業があることを思い出させ,こ れ以上の中断や牽制行動 はない 40) ように求めることであると言う。かなりの中断をひきおこしてそうな人を予め 被監査者 としない被監査者選びをしても,監 査 目的の達成には支障がないと判 断される場合には,そ のような判断を実行に移すことも対抗手段 として許され るというのがGo W.Parker氏の見解であると許される最後の対抗手段 とは,出 入 り自由の認められた日時について合意ので きない場合に認められるもの (r a n a l t e r n a t i v e i n t e r r u p t i o n 一f r e e d a t e a n d t i m e c a n n o t b e a g r e e d ) で, こ の場合 には,監 査 の 中止 を宣言 し,監 査 の 中止 お よびその理 由 について報告 す 4 2 ) ることになる。 d)について :自 ら為すべ きこと(1)(11)を為 しているのな ら相手方 (被監査 者)の ことで思い煩 い を してはな らない。被監査者側の不履行 を我身に引 き受 けてはな らない とい う意味 において これ を理解す ることがで きるであろう。 e)について :議論好 きの被監査者, したがってまた,眼 光 も鋭い被監査者は, 監査人 に隙あることを見出せば,そ れ を手掛 か りに,必 ずや議論 を仕掛 けて く るにちがいない と覚悟 してお くべ きである。このようなことはある程度不可避 的なことであるが故 に,こ の ような事態の発瑞 とな り得 る監査人の弱点は可能 な限 りこれを防止す る,可 能であるならば除去す るを最善 とするであろう。 要件 e)に対応す る被監査者 の行動 ,そ れは現象 としては,監 査 人の為す コ メ ン トに対する被監査者の逐一的不同意 として,あ るいは,経 営 システム基準 ・法令等 に関する長々とした批判 といった形 を取 るのが通常であるが,被 監査 者の狙いは監査人に心理戦 を仕掛 けて監査 人のやる気 を挫 く,あ るいは,自 己 防衛 しなければ危い とい う雰囲気 を作 り出 し,監 査人が効果的に動 くことがで 39)-42)rbウ 溺,p.99.

(14)

3 6 彦 根 論 叢 第 3 2 8 号 4 3 ) きないようにすることにある。それ故,被 監査者がこのような行動に出てきた ときには,“本監査はこのような論争のための公開討論の場ではない。ルときっ ぱ り指摘 し,“被監査者は自ら抱いている疑間については適当な専門家かある いは部長に問い合わすべ きである。"と 示唆することによって,時 間浪費の策 略に対抗するを最善 とする旨G.W.Parker氏は教示 していると Ⅶ 監 査期間中の心備 え(4)一注意 して捜すべ きは何 か一 前述の如 く,統 計的に見 るならば監査人 を試みる者が被監査者全体 に占める 割合いは極めて小 さな ものである。そ うであるとは言 って も外観か ら人の誠実 性 の有無 を知 ることは必ず しもで きるものではないが故 に,被 監査者が 自らに 不利 な申出を自発的にな している場合 にはとりわけ,呈 示 されている証拠 に舷 惑 されて不用意 な判断形成 に直行す ることな きよう注意 を換起 しているG.W. 4 5 ) Parker氏の言はこれを首肯 しうるであろう。 これは言わば逆粉飾 に関 し成立す る監査判断形成上の誤 りに備 えた議論であるが,逆 の議論が成 り立つ ことにつ いて も言 うまで もない。む しろ現実 には被監査者の中に欠陥な り弱点な りが存 在 していて もこれをその通 り表 に示 さない とい うのが通例 とみてよいであろう。 G.W.Parker氏 は被監査者が 自らの弱点 な り欠陥な りを上手 に隠 している粉飾 の場合 において も監査人の本能 ・直感 によってこれを察知することは可能であ るとして,こ のための手掛 りな り徴候 を識別 している。その源泉は被監査者の 身体言語 ・パ ラ言語お よび被監査者 を取 り巻 く周囲の状況 ・事情 に求める他 な 4 6 ) い。そ こで 目を凝 らし見張 っていて得 られる手掛か りとか徴候 というものは証 拠 ではないが故 に,結 果的には根拠のない ものであった と判明するもの も存在 す るであろ うけれ ども,徴 候 もまた “そ うある しかない もの"あ るいはその反 映であるが故 に,監 査人が注意 して捜すべ きもの としての価値 をいささか も減 4 7 ) じる ものでない と考 え られるべ きであろう。G . W . P a r k e r 氏の掲げている “弱 点存在の一般的特徴" に 整理のための符号 を付 して一覧表示すれば以下の如 く 43)-44)めづα.,p,98. 4 5 ) r b あα, p . 1 0 0 . 4 6 ) 4 9 ) r b づα) p . 9 6 .

(15)

業務 監査 知 識 の吟味( 9 ) 3 7 4 8 ) である。 i)労 働環境の劣悪 さ :高温 ・照明 ・騒音 ・湿度 ・狭す ぎる空間 ・気 を散 ら す もの等 々に関 し如何―仕事場の無視 ・労働の無視 ・顧客 に及ぶ影響の 無視 ・環境 に及ぶ影響の無視 とい うことはすべて一体であるとい うこと が多 くの場合言える。 ii)一 般的なだ らしなさ ・一家の きりまわ しのまず さ ・粗末な設備 にレイア ウ トの悪い空間の存在 ili)ラベルのついていない項 目,あ るいは,不 明瞭なラベルのついた項 目, 古 いジャー ・ポ ッ ト,旧 式の使用不可能な材料で作 られたブリキカン iv)過 度 に,あ るいは不 自然 に,き ちんとした領域 v)壁 や掲示板 に古い 。期限外れの掲示物 vi)貧 弱な状況下 における大変新 しい備品 。大変古い備品 宙1)支 給 されている便宜 な り備品あるいは防護物 を用いていない従業員,あ るいは,こ れ らの ものの利用 は時お りである従業員 価)認 可 されていない私的道具 ・参照資料 ・規則集の使用 破)張 りつめた猜疑心でいっぱいの,あ るいは抑圧的な,雰 囲気 ― 異常に興奮 した歩 き方 ―壁の図表に示 されている高い欠勤率 ―用いられている契約スタッフの割合が高いこと 一イ国人的なス トレスや疲労があることを示す証拠 一 あからさまに無作法な行動 ・行 き当た りばった りの行動 ― 頑回で人を無視するような経営陣およびスタッフ x)以 下の如 き統制文書 ―所在 を見つけるのがむつか しい ―鍵のかかった机の引 き出 しやキャビネッ ト,あ るいは,事 務所に保管 されていて容易 に取 り出す ことので きない もの 一頁に欠落のあるもの 一 ほとんど半J読し難いもの

(16)

38 彦 根論叢 第 328号 一 コピー したての もの (頁と頁が まだ静電気で くっついている。) x l ) ど こ もか しこに も真新 しい ラベ ルに焼 き印が押 されてい る。 G.W.Parker氏 は これ らの一般的特徴 を①監査 を前 に今 しがた片付 けを した ばか りとい う卑 しむべ き態度,② 試みあるいは誤謬 ・誤解発生の温床 ともな り うる状態,③ 自覚のなさ,の 如 くに 3分 類 していると しか しなが ら,上 記例示 で言 えば (vii)(価)を除 く大方の ものは劣悪 な環境下 における労働 に関連づけて 理解す ることので きる現象 と認 めることがで きるであろう。上記除外 の (宙1) (価)を も含 むすべ ては 「実の良否 は木 によって判断 される」 とい うことによっ て理解することがで きるものである。成程,(労 働)環境 は木ではないけれ ども, 環境 の良否 は木 に影響 を及ぼ し,結 果的に実 に影響 を及ぼす とは言 えるであろ うか らである。良い木 に悪い実は結 ばぬ如 く,悪 い木 に良い実は成 らぬ道理で あると考 えて よい。但 し,監 査 でな くとも来客 を前 に,あ るいはヘルパーの来 訪 を前 に,今 しがた片付 けを したばか りといったようなことは日常茶飯事,こ れ以上 どうしょうもない如 くに仕事に追われっぱなしの者にとって,G.W,Parker 氏 の分類 における①が “卑 しむべ き態度ルと判定 されることは承服 し難 しと言 わ ざるを得 ない。 ここに一覧表示 されている状態の中に居 ることを自ら望む者 が誰か居 るであろうか。そ うであるか らといって,人 はそ う簡単 に劣悪 な環境 か ら解放 されるものでな く,失 敗事 をすれば手腕のある監査人 より“ここに何 か間違いがあるルと直感的に気付かれ摘発 されることになるとい うのが現実で ある。環境の悪 さは同情 されて も失敗 に同情が寄せ られることはない。大抵の 人間は,被 監査者 をも含めて,環 境 に敗 けるばか りでな く,自 らの失敗の責任 をすべて環境 に転化する しか しない余 りにも臆病な存在であるが故 に,劣 悪 な 環境 か ら解放 されることもな く堂々廻 りの悪循環 に陥ることにならざるを得 な いのであるとも言 える。それ故,G.W.Parker氏 の “弱点の徴候 を注意 して捜 すべ し"は 的 を射た観察であると解することがで きるのである。人が結ぶ実の 良否 に絶大 とも言 える程 に大 きな影響力 をもつ環境 も,実 は,人 に対する試み の役割 を果た している神の道具であるに他 ならない。

(17)

業務監査知識の吟味( 9 ) Ⅷ 監 査期間 中の心備 え(5)一時 間浪 費以外 の策 略 ・序 盤作 戦 への対応 一 1)階 級を笠に着た命令の押 しつけ これは被監査者が監査人よりも上級 (あるいは自分でそう信 じているだけ)で あ り,監 査の支配権 を握ろうとしている場合に生 じる序盤作戦を解すべ きもの である。たとえば,以 下の如 き応答が被監査者より返ってきたとき監査人とし てどうするかということが,こ こでの問題である。 「いや,そ れは君のかかわることではないんだ。君はただ……を見ることだ け考えておればよいのだ。それとも君は社長名をもって私をチェックしたいの 5 0 ) かね ? 」 このような場合における監査人の最善の対応は,監 査人に対 し被監査者が与 えた指図や命令 ・拒絶等は何であれ書 き留め, 効 果的に監査 を完了することが できなかった理由を監査プログラム担当部長に説明 し, ま た, 必 要 とあらば, 5 1 ) 客観 的 に監査報告書 中に記載す る資料 となす ことである。首肯 し得 る ところで あろ う。 2)無 作法 監査 の開始 に当 り,被 監査者の側ではお茶 とかコーヒー ・ジュース等 を飲 ん でお りなが ら監査人 には何 も提供 しない とか,無 作法 なが さつ さを露呈 した以 下の如 き発言がなされるとい うことも実際には存在することとみてよいのであ ろう。 「どうして君 は私の負担 を減 らして きちん とした仕事 をし,事 業 に貢献 しな 5 2 ) いのかね ?」 叙上の如 き無礼 な態度 とか発言が公然 となされてお り,か つ また,監 査 に対 す る非協力が被監査者 において公言 されるに及んだ場合 には,監 査人は堪忍袋 の緒 を切 つて も許 される,否 ,そ うあるべ きである とい うのがGo W.Parker氏 の見解である。すなわち,具 体的には,監 査の中止 を宣言 し,で きる限 り形式 的かつ冷淡 な方法で理由を明 らかに し,監 査 中止の理由はこの種の問題 を扱 う 50)-55)乃 ぢ溺,p.97.

(18)

4 0 彦 根論叢 第 328号 部署の部長 と論議することになるであろうこと,ま た,監 査 中止の理由につい ては監査報告の中に記載することになる旨明言する必要があるとするとただ し, このような宣言 に先立 ち以下の如 き最後の訴えをな してお くべ きであるとい う のがG.W.Parker氏の主張である。 「あのね え,△ △君,ど うしたの ?わ れわれの誰 もこんな風 になること望 ん でいないよね。こんなことになった ら僕 も君 も共に馬鹿者 になって しまうよ告」 この ような最後の訴 えによ り被監査者がそれまでの態度 を悔い改め監査人に 謝罪 して監査 に協力するようになるとは,ほ とんど想像だにすることがで きな いであろう。 しか しそれで も構 わない ;被監査者 に対するこの最後の訴えが効 を奏 さな くて も監査人の側 に失 われる ものは何 もない ;監査人はきわめて正 し く振 る舞 った とい う評価 を受けることになるであろうとい う計算がそこには働 いている。 この最後の訴えは,こ のチャンスを最後に被監査者がその地位を確実に保全す る道へ と通 じる城門は閉じられますよということを被監査者に告げるためのセ レモニー的な相図に他ならない。 しか し,こ れは苦き良薬を受け入れるか否か, 被監査者に現実の分岐点を認識 させ選択 を迫る心優 しい儀式 として首肯すべ き ものである。 3)便 宜供与 ・設備の削減 被監査部門に置かれている監査人用の椅子は座 して 2分 もすれば肘掛けが外 れて しまう代物であるとか,保 護衣類 としてのコー トとかヘルメットは提供 さ れているとはいっても,監 査人の体に合 うものではなくて監査人に不快感を与 える,あ るいは,監 査人が滑稽 に見えてしまう代物であるといった如 きことが 5 6 ) ここで示 されている内容である。 この ような場合,監 査人は事情 を説明 して丁 寧 に代 りの設備 を求めるべ きであるが,被 監査者側 においてこれに応 じて くれ ない場合 には,監 査人は職業専 門家 としての忍耐 をもって行動すべ しとい うの 5 7 ) がG . W . P a r k e r 氏の見解である。被監査者側 のこの ような態度 は,監 査人に対 5 6 ) r b あα, p p . 9 7 - 9 8 . 5 7 ) - 5 9 ) 拘ぢα, p . 9 8 .

(19)

業務監査知識の吟味( 9 ) 4 1 す る個 人 的攻 撃 とまで は行 か ない個 人 的嫌 が らせ に留 まる もので あ るが故 に, この ようなナ寸応 が適 当 とされ る ところであ ろ うか と思 われ る。 4)再 々生 じる監査 の延期お よび下位者への権限委任 同意 されてい る監査 日時の間際 になつてか ら,“上級経営者の特別 な要請 に よ り特別 な仕事が入 つた。"と い うが如 き理由により申し出られた延期 という 大義名分の立つ延期事例 もあるか もしれない。 これが単発 的な ものであるなら ば,監 査 プログラム担当部長 に報告 して許容 とい うこともあ り得 るであろうけ れ ども,再 々 とい うことになれば,被 監査者の策略である可能性 もあるため, 5 8 ) 監査 プログラム担当部長 による以下 2点 の確認が必要 とされるであろう。 (1) 監査延期 の申出時点で,関 係 している上級経営者は監査予定の事情 を知 ってい たか どうか,(11)被 監査者は監査予定 を十分知 ってお りなが ら,上 級経営者 に 対す る助力 の提供 を自発的 に申 し出た ものでないのか どうか。 指名 されている被監査者が,監 査人の質問に対 し十分詳細 な返答 をなす こと がで きそ うにも思われない誰かに自らの権限を委任するとい う形 をもって監査 人 を困 らせ るとい うことも可能性 としては大いにあ りうることである。この よ うな場合,監 査人は監査の中止 を宣言 し,指 名 されている被監査者が出席 して くるまで監査 を延期すべ しとい う見解 について も首肯 されて よいであろう。 5)時 間の特定 これは被監査者が監査実施の時間を昼食時間の間際 とか終業時間の終 り頃, 交替勤務の交替が行 われる頃,あ るいは,他 の職員が居 なかった り,設 備が作 動 していそ うでない時 に設定 しようとした り,そ の ような時間帯 だけを監査の ための時間 として受け入れ ようとす ることであると これが監査人に対する試み であるとい うのは,こ れが受け入れ られなければならない とすれば,監 査人が 入手することので きる時間は減少 し,監 査 に対する人々の身の入れようも減退 す る とい う効果が生 じることに因つている。監査人 としては,こ の ような監査 時間の特定 は受 け入れ られる ものでない以上,そ の旨粘 り強 く被監査者 と交渉 すべ きである。被監査者が これに応ぜず,従 って十分 な監査 を行 うことがで き 60)-61)rbづ α,p.99.

(20)

42 彦 根論叢 第 328号 ない場合 には他 の場合 と同様 な処置 に依 らざるを得 ないであろ う。 6)注 意 時 間の縮小 被 監査 者 が現在 かか えてい る病気 あ るい は辛苦 ,も しくは,何 らかの個 人的 心 配事 ・家族 の心配事 に起 因す る放心状態 ,こ の こ とに伴 う被監査 者 の注意散 漫 は策略 であ るな どとは解す る こ とがで きない場合 もあれば策略であ る場合 も あ り得 る。 この ような場合 に備 えて とられ るべ き監査 人の方策 は,被 監査者 に 6 1 ) 関す る知識 を常 日頃深めてお くことによっては じめて与 えられるものであると 考 えてよい。 IX 監 査終了に際 しての心備 え 監査が終了 した とき,監 査部長が被監査者 を一堂 に集め,監 査の終了を宣言 し,監 査への協力 に謝意 を表明 し,監 査結果は後 日各部署宛届け られるであろ うことを告 げ,直 ちに散会す ることは可能である。 しか し,Go W.Parker氏に おいてその ような方法 は採用 されていない。それは監査 に対する被監査者の貢 献は覚えられているということ,そ して感謝 されているということが実質を伴 っ 6 2 ) て被監査者 に届 くことの重要性が認識 されているか らに他 ならない。また, 監 査 に対する被監査者の態度 は, 而 後の是正措置 に対する態度 をも含めて, 被 監 6 3 ) 査者が監査に対 し抱 くに至った印象如何 ということによって決せ られることになる ことを考 えると,監 査の終了に際 しての被監査者への語 りかけも被監査者にとっ ては未だ監査 の中に入 るものであ り,こ この ところを粗略 にすることは即油断 であると解 してよいであろう。 監査 の終了時における被監査者の関心事 に含 まれる事柄 を分類 し,(1)監 査 人が問題 としている発見事項 は何であるのか,(11)ど の ようなことが要求 され ることになるのか,(ili)自分だけでは処理 しきれない心の重荷の解決可能性, をもってすべてであると言い得 るものであるか否かは不明であるけれ ども,こ れ ら被監査者の関心事 を可能な限 り賢明に充足することは,被 監査者への単な る謝意の表明にも増 して良 きものを加 えることになるであろう。すなわち,以 62)…65)rbづα,p.101.

(21)

業務監査知識 の吟味(9) 43

下の如き

手順をふむべきことになる

1)被 監査者の協力 と助 け とに対 して謝意 を述べ ること ‐ 2)監 査 ノー トには主 として発見 された矛盾が記 されているとい うのが事実 であるとして も,被 監査者 に対 しては,ノ ー トに書 き留めてある良い点 ・ 積極的長所 を言葉でほめること。 しか し,監 査 の性質上,報 告書 には発見 された矛盾だけを記録することになる旨残念そ うに説明すること 3)発 見事項 については以下の如 く講評すること 。どこに欠陥が認められたか,ま た,そ の欠陥はどのように分類 されるも のであるのか述べ ること 。どこそこの欠陥を解決するためには,ど のようにすべ きと考えるか,何 日までに口頭で返答す るように求めること ・(監査矛盾 ノー トが用いられている場合)監 査矛盾ノー トのすべてに被 監査者の副署名がなされているか本講評終了 までに各 自確認すべ きこと ・監査報告書への発見事項の記述は公平 ・明確なものであ り,裁 いた り非 難 した りする ものでない旨述べ ること 4)監 査終了宣言後の情報収集 G.W.Parker氏 は,監 査人 による監査終了宣言は次の ようなものであるべ し と言 う。 「よろ しい。監査 は終了 しま した。私何 か聞 き逃 したことないで しょうか ? い まか ら後お聞 きしたことは一切報告することはいた しません告」 このような宣言 を して しまえば,必 ずや,興 味津津 にして暴露的な情報が寄 せ られて くることであろう。これによって,発 見事項の意義についての洞察 と か現在用い られている調査技術 の改善 についての洞察が得 られることであろう とGo W.Parker氏は述べている七権かにそれはその通 りであるか もしれないが, しか しなが ら,こ の段階で知 り得 たことは何 であれ漏 らさない とい う約束は守 6 7 ) られなければならない とい うこと, こ れは果た して可能であるのか とい うこと 6 2 ) - 6 5 ) 乃づα. , p . 1 0 1 . 6 6 ) - 6 7 ) 乃づα. , p . 1 0 2 .

(22)

44 彦 根論叢 第 328号 が 問われ なけれ ばな らない。 もとよ り監査 人 は被 監査者 に よる矛盾 の 申告が矛 盾 のすべ てで あ るな どは考 えてい ない。監査 人 は この ことに関す る被 監査 者 の 6 8 ) 自覚を高めるべ きであることをG.W.Parker氏は述べているけれども,被 監査 者において他者に隠 している矛盾が自己の内にあるということが本当に自覚さ れるに至れば,こ れは被監査者の心の重荷 とならざるを得ないであろう。監査 人には,場 合によっては,監 査人に心の重荷 を明け渡すべ く告 日してきた被監 査者の科を我が身に引 き受ける資格なり覚悟があると言えるであろうか。果た してそこに情報収集のためというが如 き損得計算の入るべ き余地があるのかど うかいささか疑念が残ると言わざるを得ないであろう。 X ま とめ G , W . P a r k e r 氏が′ふに留めてお くべ き要点の第一 として掲 げている “均衡 を じず ら 6 9 ) 保つ こと"の 必要性 は,必 ず しも氏の示 している字面のま ゝに狭 く限定 して考 える必要はないであろう。筆者 は前 IX節末尾 において紹介 しているような監査 終了宣言 を必ず しも否定するものではないけれ ども,そ の ような監査終了宣言 は監査 プログラム担当部長他組織内部の他の構成員か らも積極的に支持 されて いる,あ るいは,少 な くとも是認 されているのでない限 り,被 監査者向けサー ビス としては申 し分 ない ものであるとして も,批 判 を免れ得 ないのでないか と 考 える。それにひ きかえ,時 々,監 査か ら離れて組織内における最近の新 しい 進展 とか商業上 ・立法上の傾 向の変化 を受 けて個人的な所見 を述べ,ち ょっと した個人的助言 を与 え,あ るいは,限 度 を設定 してのことではあるけれ ども, 特 に明白な間違いに関 しきわめて迅速 にこれに対応することが可能であるなら ば,そ の件 について監査報告 に含めることは しない旨強調すること,あ るいは, 監査 を一時的に離れたことを明言 した ときに被監査者が言 った りした りしたこ とは何であれ,一 定の限度内で,報 告書 に記載 されることもなければ話 される 68)rbあα,p.101. 69)「 ある領域 に矛盾 を示す証拠が沢山存在 している とい うただそれでけの理由で想像上の “ 割 当量"が満 た された と考 え,ど こか他の所 と丁度同 じように厳格 に見 るとい うことを 止 めない こと。 しか し,そ れ と同時 に,下 らないことにこだわ らないこと。」乃づ先 p.100.

(23)

業務監査知識の吟味(9) 45 こともないという扱いをすること小被監査者を除 く組織内全構成員から許容さ れる性格のものであるということを前提 として,こ のような扱いは意味あるも のと考える。 G.W.Parker氏において取 り上げられ本稿で未扱いの以下の4要 件のいずれ も絶えず心に留めておかれるべ きものではあるけれども,と りわけ最後の要件 ④は監査人の引 き際を守る要件 としてその意義を理解することができるであろ う。すなわち ① も っともな質問が寄せ られたときには,時 間尺度を厳格にした上で可能 7 1 ) な限 りこれに答えるべ きこと ② 物 理的空間の調査 を行 うことが監査上必要であるという場合には,鍵 の かかった食器棚 ・部屋 ・引 き出し ・戸棚 ・網棚の奥の如 く,証 拠の隠され そうな,あ るいは,物 が置 き忘れされそうなところは何処でものぞき込み 7 2 )

たい旨常に求めるべきこと

③ 不 正直 ・欺脳あるいはべてんが存在する証拠を見出したときには,そ の

7 3 ) 場で判断を下さず,冷 静に職業専門家 らしく振舞 うべ きこと ④ 監 査人自身が間違いを犯 したとき,あ るいは,不 真実な発言をしたとき は直ちにそのことを謝罪 し訂正すること。自分自身には何 らの成厳 もない 7 4 ) こ とを認 めて。 70)rbウα,pp。100-101. 7 1 ) - 7 4 ) r b ぢα, p . 1 0 0 .

参照

関連したドキュメント

が有意味どころか真ですらあるとすれば,この命題が言及している当の事物も

当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の監査の基準に

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

共通点が多い 2 。そのようなことを考えあわせ ると、リードの因果論は結局、・ヒュームの因果

対象自治体 包括外部監査対象団体(252 条の (6 第 1 項) 所定の監査   について、監査委員の監査に

さらに, 会計監査人が独立の立場を保持し, かつ, 適正な監査を実施してい るかを監視及び検証するとともに,

人の生涯を助ける。だからすべてこれを「貨物」という。また貨幣というのは、三種類の銭があ

この設備によって、常時監視を 1~3 号機の全てに対して実施する計画である。連続監