自由財産による破産債権の任意弁済の可否について
: 最高裁平成一八年一月二三日判決を契機として
著者名(日)
櫻本 正樹
雑誌名
東洋法学
巻
54
号
2
ページ
79-102
発行年
2010-12-20
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00000788/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止目次 一 はじめに 二 判例 ( 1 ) 最高裁平成一八年一月二三日判決 ( 2 ) 東京高裁平成一三年五月二四日判決 三 学説 ( 1 ) 肯定説 ( 2 ) 否定説 四 検討 一 はじめに 破産者は破産手続中に自由財産から破産債権者に対して任意に弁済をすることが認められるか、という問題は戦 《 論 説 》
自由財産による破産債権の任意弁済の可否について
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最高裁平成一八年一月二三日判決を契機として
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本
正
樹
前から議論がなされてい ( 1) た。しかし、どちらかといえばそれは体系書の片隅でなされる程度の議論であり、かつそ れに対する判例もなかったために、大きく意識された問題ではなかった。 しかし、近年このテーマに関する判決が、平成一二年一二月五日に千葉地 ( 2) 裁で、平成一三年五月二四日にその控 訴審である東京高 ( 3) 裁でそれぞれ下され、地裁と高裁で結論が異なった判決であったため、このテーマに対する関心 が高まっていた。そこに、別の事案でこのテーマに関する最高裁判 ( 4) 決が平成一八年一月二三日に下された (原審 高 松 高 裁 平 成 一 七 年 四 月 二 一 日 判 ( 5) 決、 第 一 審 徳 島 地 裁 平 成 一 六 年 八 月 五 日 判 ( 6) 決) 。 こ れ ら の 事 案 は 旧 破 産 法 下 の も の で あ るが、新破産法の下においても破産財団や破産債権の行使に関して基本的に変更はないため、現行破産法において も同様に論ずることができるものである。これら二つの事案は、両方とも不当利得返還請求事件であり、自由財産 から破産債権者に対して任意弁済が認められるか、という判断と、給与支払機関が地方公務員等共済組合法一一五 条二項に基づいて組合員である公務員の給与や退職手当から組合員に対する貸付金を当該組合員に代わって一定額 を控除して共済組合に払い込むことが右任意弁済に該当する ( 7) か、という判断がなされ、前者に関してはすべての判 決において自由財産による任意弁済が肯定されたが、後者に関しては右千葉地裁判決がこのような払込みの任意弁 済該当性を肯定して不当利得の成立を認めなかったが、他は任意弁済該当性を否定して不当利得の成立を認めた。 これにより、右の問題は判例上は一応の決着をみたことになった。特に最高裁が破産者は破産手続中にその自由 財産から破産債権者に対して任意弁済をすることが可能であると判示したのは初めてであり、これが破産実務に与 える影響は大きいものといえる。さらに、これら一連の判決に対しては多くの判 例評釈 ( 8)( 9) が出されている。 本稿は、この最高裁判決に関連して判例評釈において新たに主張された ( 10) 説もあることから、これまでの学説を整 理、検討するとともに自己の見解を論じることを目的とし、破産者が破産手続中に自由財産から破産債権者に対し
て任意弁済をすることの可否を中心に論述する。 二 判例 本 テ ー マ に 関 す る 判 決 は、 最 高 裁 平 成 一 八 年 一 月 二 三 日 判 決 (原 審 高 松 高 裁 平 成 一 七 年 四 月 二 一 日 判 決、 第 一 審 徳 島 地 裁 平 成 一 六 年 八 月 五 日 判 決) 、 東 京 高 裁 平 成 一 三 年 五 月 二 四 日 判 決 (原 審 千 葉 地 裁 平 成 一 二 年 一 二 月 五 日 判 決) が ある。以下、二事案の事実および判旨を挙げる。 ( 1) 最高裁平成一八年一月二三日判 ( 11) 決 【事実】 X (原告・被控訴人・被上告人) は、A (徳島中央広域連合) に勤務する地方公務員であった。 X は、 Y (徳 島 県 市 町 村 職 員 共 済 組 合) (被 告・ 控 訴 人・ 上 告 人) か ら 平 成 元 年 八 月 か ら 平 成 一 三 年 六 月 に か け て、 五 回 に わ た り、 合 計 一 二 〇 〇 万 円 の 貸 付 け を 受 け た (以 下「本 件 各 貸 付」 ) 。 X は、 平 成 一 四 年 六 月 一 〇 日 徳 島 地 方 裁 判 所 で 破 産 手 続 開 始 決 定 (当 時 破 産 宣 告) を 受 け、 破 産 管 財 人 が 選 任 さ れ た。 X は、 そ の 後 平 成 一 四 年 一 二 月 三一日にAを退職した。 X の 給 与 支 払 機 関 で あ る B (徳 島 県 市 町 村 総 合 事 務 組 合) は、 平 成 一 五 年 二 月 破 産 管 財 人 に 対 し て、 X が 破 産 手 続 開始決定時に退職したとすれば支給されたであろう退職手当に相当する一八四一万五二〇〇円の四分の一に当たる 四 六 〇 万 三 八 〇 〇 円 を 破 産 財 団 に 属 す る 財 産 と し て 交 付 し、 Y に 対 し て 地 方 公 務 員 等 共 済 組 合 法 (以 下「地 共 法」 )
一 一 五 条 二 項 に 基 づ き、 X に 支 給 す べ き 退 職 手 当 (以 下「退 職 手 当」 ) の 中 か ら 本 件 各 貸 付 金 の 残 金 に 相 当 す る 四 三 一 万 二 九 三 円 を 控 除 し て こ れ を 払 い 込 ん だ (以 下「本 件 払 込」 ) 。 そ の 後、 X に 対 し て 退 職 手 当 と し て、 破 産 財 団に組み入れられた四六〇万三八〇〇円および本件払込金四三一万二九三円を控除した残額を支給した。 Xは、本件払込みに当たって、YまたはBとの間で、地共法一一五条二項所定の方法 (組合員の給与支給機関が組 合 員 に お い て 組 合 に 対 し て 支 払 う べ き 金 員 を 給 料 そ の 他 の 給 与 か ら 控 除 し て 組 合 員 に 代 わ っ て 組 合 に 払 い 込 む 方 法。 以 下 「地 共 法 の 弁 済 方 法」 ) に よ り、 本 件 退 職 手 当 の 中 か ら 本 件 各 貸 付 金 の 残 債 務 を 弁 済 す る こ と に つ き 合 意 を し た こ と はなかった。 そこで、XはYに対し、Yが本件各貸付金残債務の弁済として本件払込金を受領したことは、法律上の原因を欠 くと主張して、本件払込金につき不当利得に基づく返還を求めて提訴した事案である。 第 一 審 (徳 島 地 裁 平 成 一 六 年 八 月 五 日 判 ( 12) 決 ) は、 破 産 法 三 四 条 (旧 破 産 法 六 条) 、 同 一 〇 〇 条 (旧 破 産 法 一 六 条) の 規 定から、破産債権者が「破産財団に属しない自由財産に対して、個別に強制執行をしたり、実質的に個別の取立て に 等 し い 相 殺 権 を 行 使 し て、 破 産 債 権 の 回 収 を 図 る こ と は 許 さ れ な い と 解 す る の が 相 当 で あ る。 」 と し、 ま た、 右 規定の趣旨を破産者の生活保障をし、経済的再起、更生のために自由財産を確保したとして、破産者が「任意に自 由 財 産 か ら 破 産 債 権 の 弁 済 を す る こ と ま で は、 破 産 法 上 禁 止 さ れ て い な い と 解」 し、 「破 産 宣 告 後 に お け る 自 由 財 産からの弁済等による破産債権の回収については、破産者の任意の弁済であれば、法律上の原因があり不当利得に 当たらないが、任意の弁済と認められない場合は、法律上の原因を欠き、不当利得に当たると解するのが相当であ る。 」とした上で、 「本件払込みは、地共法一一五条二項の効力によってされたものであり、…給与支給機関が、現 に控除の対象となる給与からの払込みに関する組合員の個別の意思にかかわらず、当該給与から組合員の債務額を
控除して、組合員に代わって債権者である組合に債務額を払い込むというものであって、その実態をみれば、組合 員 の 任 意 の 意 思 に 基 づ く 行 為 と は い え ず、 事 実 上 相 殺 権 行 使 と 類 似 す る 債 権 回 収 方 法 と い う こ と が で き〔、 〕 破 産 者の任意の弁済に当たるものとは認められない。 〔カッコ筆者〕 」としてXの請求を認容した。 これに対して、Yが控訴。 原 審 (高 松 高 裁 平 成 一 七 年 四 月 二 一 日 判 ( 13) 決 ) は、 「破 産 宣 告 後 の 破 産 者 の 自 由 財 産 か ら の 弁 済 等 に よ り、 破 産 債 権 者が破産債権を回収する行為は、破産者による任意の弁済であると認められる場合を除き、旧破産法一六条に抵触 し無効と解するのが相当である。そこで、本件払込みが被控訴人による任意の弁済と認められるか否かについて検 討するに、本件払込みは地共法一一五条二項の規定に基づくものであることが明らかであり、同条項は、給与支給 機 関 に よ る 組 合 員 の 組 合 に 対 す る 払 込 代 行 方 法 を 法 定 し た も の で あ る と 解 さ れ る と」 し、 「本 件 払 込 み は、 被 控 訴 人による任意の弁済とは認められず、旧破産法一六条に抵触して無効であるから、控訴人が本件事務組合から本件 払込金の支払を受けたことは、法律上の原因なくして本件払込金と同額の利得をしたことになり、他方、被控訴人 は、 本 件 払 込 金 と 同 額 の 損 失 を 被 っ た こ と に な る か ら、 控 訴 人 に 不 当 利 得 が 成 立 す る と い う べ き で あ る。 」 と し て Yの控訴を棄却した。 これに対して、Yから上告受理の申立てがなされ、それが受理されたのが本件である。 【判旨】 最高裁は、以下のように判示して上告を棄却した。 「( 1 ) 被 上 告 人 の 破 産 事 件 に つ い て 適 用 さ れ る 旧 破 産 法 (平 成 一 六 年 法 律 第 七 五 号 に よ る 廃 止 前 の も の) に お い て
は、 破 産 財 団 を 破 産 宣 告 時 の 財 産 に 固 定 す る (六 条) と と も に、 破 産 債 権 者 は 破 産 手 続 に よ ら な け れ ば そ の 破 産 債 権 を 行 使 す る こ と が で き な い (一 六 条) と 規 定 し、 破 産 者 の 経 済 的 更 生 と 生 活 保 障 を 図 っ て い る こ と な ど か ら す る と、破産手続中、破産債権者は破産債権に基づいて債務者の自由財産に対して強制執行をすることなどはできない と解されるが、破産者がその自由な判断により自由財産の中から破産債権に対する任意の弁済をすることは妨げら れないと解するのが相当である。もっとも、自由財産は本来破産者の経済的更生と生活保障のために用いられるも のであり、破産者は破産手続中に自由財産から破産債権に対する弁済を強制されるものではないことからすると、 破産者がした弁済が任意の弁済に当たるか否かは厳格に解すべきであり、少しでも強制的な要素を伴う場合には任 意の弁済に当たるということはできない。 そして、地共法の弁済方法は、組合員の給与支給機関が組合に対する組合員の債務の弁済を代行するものにほか ならず、組合員が破産宣告を受けた場合において、地共法一一五条二項により、組合員の自由財産である退職手当 の中から組合の破産債権につき地共法の弁済方法で弁済を受け得る地位が組合に付与されたものと解することはで きない (最高裁昭和六二年(オ)第一〇八三号平成二年七月一九日第一小法廷判決・民集四四巻五号八三七頁参照) 。 ( 2 ) 上 記 説 示 に よ れ ば、 組 合 員 の 破 産 手 続 中 に そ の 自 由 財 産 で あ る 退 職 手 当 の 中 か ら 地 共 法 の 弁 済 方 法 に よ り 組合員の組合に対する貸付金債務についてされた弁済が、組合員による任意の弁済であるというためには、組合員 が、破産宣告後に、自由財産から破産債権に対する弁済を強制されるものではないことを認識しながら、その自由 な判断により、地共法の弁済方法をもって上記貸付金債務を弁済したものということができることが必要であると 解すべきである。 これを本件についてみると、被上告人が、本件払込みに当たって、上告人又は本件事務組合との間で、地共法の
弁済方法により本件退職手当の中から本件各貸付金残債務を弁済することにつき合意をしたことはなかったという のであり、他に任意性を肯定し得る事情がうかがわれない本件においては、本件払込みが被上告人による任意の弁 済であるということはできない。 ( 3 ) 以 上 に よ れ ば、 上 告 人 は、 法 律 上 の 原 因 な く 本 件 払 込 金 を 利 得 し た こ と に な り、 他 方、 被 上 告 人 は、 同 額 の損失を被ったものということができるから、被上告人は、上告人に対し、本件払込金につき不当利得返還請求権 を有するものというべきである。 」 ( 2 ) 東京高裁平成一三年五月二四日判 ( 14) 決 【事実】 X (原 告・ 控 訴 人) は、 A (千 葉 県 夷 隅 郡 大 多 喜 町) 役 場 に 勤 務 す る 地 方 公 務 員 で あ っ た が、 昭 和 六 〇 年 一 〇 月 一八日、Y (千葉県市町村職員共済組合) (被告・被控訴人) から八五〇万円の住宅貸付を受けた (以下「本件貸付」 ) 。 そ の 際 X は、 給 与 支 給 機 関 (千 葉 県 市 町 村 総 合 事 務 組 合) (以 下「本 件 事 務 組 合」 ) が 貸 付 償 還 金 を 給 与 か ら 控 除 す る と明示されている本件貸付規則を承知した上で貸付を受けており、実際にも、本件貸付債務は、昭和六〇年一一月 以降、地方公務員等共済組合法第一一五条二項に従い、給与支給機関が給料から貸付償還額を控除してYに払い込 む方法によって分割返済されていた。 Xは、平成一一年一一月一五日に千葉地方裁判所一宮支部において破産手続開始決定を受け、破産管財人が選任 された。地方公務員であったXは、右破産手続開始決定当時、その財産としては、将来給付される予定の退職金請 求権が存在していたところ (以下「本件退職金請求権」 ) 、破産手続開始決定後である平成一二年三月三一日にA役場
を退職した。そこで、破産管財人は、破産裁判所の許可を受けた上で、破産手続開始決定時の退職金請求権の試算 額二〇七七万六四八九円の四分の一に当たる五一九万四一二二円を破産財団が受領することし、その余の退職金請 求権全部を破産財団から放棄した。本件事務組合は、平成一二年四月二八日ころ、破産管財人の求めに応じて退職 金試算額の四分の一に当たる五一九万四一二二円を破産財団へ直接支払い、さらに、本件事務組合は、XのYに対 する本件貸付残債務五七四万四〇七三円を退職金から控除して、これをYに払い込んだ。 Xは、退職金支給機関である本件事務組合がXのYに対する借入債務を退職金支給額から控除してYへ払い込ん だ行為はXの意思に反するものであって、これをXによる自由財産からの破産債権者に対する任意弁済であるとい うことはできないから、かかる払込金の受領はYの不当利得に当たる旨主張して、Yに対し、不当利得返還請求権 に基づき、右払込金およびその遅延損害金の支払を求めて提訴したという事案である。 第 一 審 (千 葉 地 裁 平 成 一 二 年 一 二 月 五 日 判 ( 15) 決 ) は、 「破 産 者 が、 そ の 債 権 者 に 対 し、 そ の 自 由 財 産 か ら 破 産 手 続 外 で任意に弁済をなした場合、…破産者と弁済を受けた債権者との間では、その弁済が任意になされたものである限 り、 同 弁 済 は 有 効 で あ る も の と 解 す べ き で あ る (破 産 法 第 一 六 条 は、 破 産 者 が、 そ の 債 権 者 に 対 し、 そ の 自 由 財 産 な い し 新 得 財 産 か ら 任 意 に 弁 済 す る こ と ま で 禁 じ た も の と は 解 さ れ な い。 ) 」 と し て、 破 産 者 の 自 由 財 産 に よ る 破 産 債 権 へ の 任 意 弁 済 の 有 効 性 を 認 め た う え で、 「… 同 借 用 証 書 中 の 同 約 定 は、 そ の 文 面 上、 何 ら の 留 保 も な く な さ れ て い る こ とが認められるし、同貸付の際、原告が、将来破産した際には同貸付規則の規定に従わない旨の意思を被告に表示 し、被告がそれを了解したことも認められないから、原告の退職金支払機関である本件事務組合が、原告に対して 退職金を支給する際、同退職金から前記金員を原告に代わって被告に払い込んだ行為は、原告と被告との右記合意 に基づくものであり、原告が任意になしたものと評価することができる」と判示してXの請求を棄却した。
これに対して、Xが控訴。 【判旨】 控訴審は、以下のように判示して、第一審判決を取り消し、Xの請求を認容した。 「破 産 法 第 一 六 条 は、 破 産 債 権 者 は 破 産 手 続 に よ ら な け れ ば そ の 破 産 債 権 を 行 使 す る こ と が で き な い 旨 を 定 め て おり、破産債権者は、破産手続中は、その破産債権につき、破産者に対して個別的に債務の履行請求や取立てをし たり、その自由財産に対して強制執行をすることも許されないが、破産者が新得財産又は自由財産から任意に破産 債権を弁済することは破産法上禁止されておらず、破産債権者がこれを受領しても不当利得には当たらないものと 解 す る の が 相 当 で あ る。 」、 「… 破 産 法 一 六 条 の 趣 旨 は、 破 産 債 権 者 が 満 足 を 得 る べ き 財 産 を 破 産 宣 告 時 の 財 産 に 固 定し、もって新旧債権者の公平を図るとともに、破産手続中も破産者にその自由財産を利用させることによって、 破産者の生活を保障し、その経済的活動を再開させようとしたものであると解される。そうすると、本件において は、破産管財人が破産裁判所の許可を受けて破産財団に帰属していた破産宣告時の将来の退職金請求権をその四分 の一である五一九万四一二二円のみを破産財団に提供させることによって破産財団から放棄したというのであるか ら、放棄されて自由財産となった破産宣告時の退職金相当部分又は新得財産である破産宣告後の退職金相当部分に 対して破産債権者が個別に強制執行をしたり、実質において個別取立てに等しい相殺権を行使することは許されな いものといわざるを得ない。したがって、事実上相殺権を行使するのと類似の取立て委託及び支払委託による退職 金からの償還金控除及び被控訴人への払込みは、破産法第一六条の趣旨に反する。また、上記払込代行の委任契約 は、民法六五三条の原則に従い、委任者である控訴人が破産宣告を受けたことによって終了したものと解するのが
相 当 で あ る。 そ の う え、 本 件 払 込 み が 退 職 時 の 控 訴 人 の 意 思 に 反 し て い た こ と は 明 ら か で あ る か ら (弁 論 の 全 趣 旨) 、 本 件 払 込 み が 控 訴 人 の 任 意 に よ る 弁 済 で あ る と い う こ と は で き な い。 」、 「地 方 公 務 員 等 共 済 組 合 法 第 一 一 五 条 二 項 に つ い て、 … 同 条 は、 給 与 の 直 接 払 の 原 則 及 び 全 額 払 の 原 則 (地 方 公 務 員 法 第 二 五 条 二 項) と の 関 係 を 考 慮 し て、その払込手続を法定したものにすぎず、優先的な個別具体的な控除やその共済組合への優先的払込みの根拠と なる趣旨の規定ではなく、破産手続の効果を否定し得るものではないから、本件払込みが不当利得に当たらないと し得る根拠となるものではない。 」 三 学説 本テーマに関連して論じられるものとして、破産債権者の側から破産手続中に破産債権に基づいて強制執行等の 個別的権利行使が可能かという問題がある。ここではまず、これに関して述べ、次に、破産者がその破産手続中に 自由財産の中から破産債権を弁済することが可能であるかという問題に関して述べる。 まず、前者に関しては、そもそも破産法は、破産者が破産手続開始時に有する財産が破産財団を構成するとする 固 定 主 義 を 採 用 し (三 四 条) 、 他 方、 破 産 債 権 者 は 破 産 手 続 に よ ら な け れ ば そ の 破 産 債 権 を 行 使 す る こ と が で き な い (一 〇 〇 条) と 規 定 し て い る こ と や、 免 責 手 続 終 了 ま で 強 制 執 行 等 個 別 執 行 を 禁 じ て い る 二 四 九 条 は、 破 産 手 続 中は破産債権に基づいて、破産財団や自由財産に対する強制執行等が禁止されていることを前提としていると考え られることから、破産手続中は、破産債権者の側から破産債権に基づいて自由財産に対する強制執行等はできない と解されており、この点に関しては現在異論は見受けられな ( 16) い。
次に、後者に関しては、学説上争いがある。学説は、自由財産による破産債権の弁済を肯定する説と否定する説 に分かれる。肯定説は、自由財産による弁済に関して、自由財産を構成する種類を特に分けることなく弁済が可能 で あ る と す る 説 と、 自 由 財 産 を 構 成 す る 種 類 (内 容) を 分 け、 あ る 種 類 の 自 由 財 産 で の み 弁 済 が 可 能 で あ る と す る 説とに分かれ、否定説は、①個別の破産債権者に対して自由財産から弁済をすることの可否と、②破産財団に自由 財産を委付して破産債権者一般の配当に供することの可否とを分けて考え、①に関しては認めないが、②に関して は認める説と、①、②の両方とも認めない説とに分かれる。 ( 1 ) 肯定説 肯 定 説 は、 否 定 説 の よ う に 自 由 財 産 に よ る 弁 済 を、 ① に 関 す る 場 合 と、 ② に 関 す る 場 合 と を 分 け て 論 じ て お ら ず、 ① に 関 し て 認 め ら れ る か 否 か と い う 形 で 論 じ ら れ て い る の で (論 者 に よ っ て は ① と ② を 合 わ せ て) 、 本 稿 で 肯 定 説という場合、①に関する肯定説として論ず ( 17) る。 自由財産による弁済が可能であるとする説 (以下、肯定説A) 肯定説 ( 18) Aは、現在の通説であり、自由財産の種類を後述する肯定説Bのように新得財産、差押禁止財産に分ける ことなく自由財産で弁済することを肯定する説である。 この説は、弁済を肯定する理由を、自由財産は、破産者の生活を保障して破産者に経済的更生、再生の基礎を与 えるものであるが、一応破産者の自由な処分に任された財産であるから、個々の破産債権者へ弁済することも可能
であり、破産法一〇〇条はこうした任意弁済まで否定する趣旨でな ( 19) い、あるいは、破産者があえて固定主義の利益 を放棄した場合はこれを尊重すべきであり、さらに破産者による破産債権者に対する任意弁済を否定してみても、 破産者を個別的に追及する者が非常に少なくなるとも思えない、と主張す ( 20) る。 自由財産を構成する種類を分け、ある種類の自由財産でのみ弁済が可能であるとする説 (以下、肯定説B) 肯 定 説 ( 21) B は、 自 由 財 産 を 構 成 す る 種 類 (内 容) と し て、 い わ ゆ る 新 得 財 産 と 差 押 禁 止 財 産 を 分 ( 22) け、 差 押 禁 止 財 産 による破産債権者に対する弁済、代物弁済、あるいは破産財団への提供は認めないが、新得財産による任意弁済は 認めるとする説である。 この説は、差押禁止財産による弁済を認めない理由を、差押禁止「財産は差押禁止の趣旨から考えても、これを 財団に提供すること、あるいは破産債権者への弁済…に充てること等はそもそも許されない。…そもそも差押禁止 は 社 会 的 法 治 国 家 的 観 点 か ら す る 最 低 限 の 生 活 保 障 (憲 法 二 五 条) だ か ら で あ る、 と 言 う だ け で、 そ の 理 由 付 け と し て は 既 に 十 分 で あ る。 こ の 点 で は お そ ら く 何 の 異 論 も 出 な い で あ ろ ( 23) う。 」 と 説 明 す る。 新 得 財 産 に よ る 任 意 弁 済 を肯定する理由は肯定説Aと同様であり、また「弁済が任意のものでなければならないことが当然の前提であ ( 24) る」 ことも同様である、と主張する。
( 2 ) 否定説 個別の破産債権者に対する弁済は認めないが、破産財団に委付することは認めるとする説 (以下、否定説A) 否定説Aは、破産財団に対する自由財産の委付は破産債権者が破産手続によらずに弁済を受ける場合に該当しな いのみならず、債権者平等原則との関係でも問題がなく認められることを論拠とし、また、破産手続開始決定後の 新 債 権 者 の 利 益 に 対 し て は 債 権 者 取 消 権 (民 法 四 二 四 条) や 第 二 破 産 に お け る 否 認 権 行 使 に よ っ て 保 護 さ れ る た め 問題ないとす ( 25) る。しかし、破産債権者に対する任意弁済に関しては、破産者が裁判外の請求を受けることになる、 あるいは、債権者の平等を建前とする破産手続においては認められないと解するため許されないと主張す ( 26) る。 個別の破産債権者に対する弁済も、破産財団に委付することも認めないとする説 (以下、否定説B) 否定説Bは、①に関しては、否定説Aとほぼ同様の理由で否定し、さらに②に関しては、破産財団に委付するこ とを認めるとすれば破産者に自由財産が認められている制度趣旨に反することになる、あるいは、破産者に破産財 団に自由財産を委付するよう事実上の圧力が加えられることを危惧して許されないと主張す ( 27) る。
四 検討 まず、破産債権者から、自由財産に対して強制執行等個別に権利行使をすることが認められるかという点である が、強制執行等の個別的権利行使は認められないことについて現在異論がないことはすでに 三 で述べた。さらに、 本 件 最 高 裁 判 決 に お い て も、 任 意 弁 済 を 肯 定 す る 前 提 と し て、 三 四 条 (旧 破 産 法 六 条) 、 一 〇 〇 ( 28) 条 (旧 破 産 法 一 六 条) の趣旨より「破産手続中、破産債権者は破産債権に基づいて債務者の自由財産に対して強制執行をすることなどは できないと解される」と述べられている。 それに対して、破産者から、自由財産を自ら進んで破産債権の弁済に提供することの可否に関しては、直接これ を規定する条文は存在せず、自由財産の制度趣旨、目的等からこれを考察することになる。 破産法は、破産債権者に対して破産者の財産を破産法秩序に従って平等に配当すること、および破産者について 経 済 生 活 の 再 生 の 機 会 を 確 保 す る こ と を 目 的 と し て い る (一 条) 。 破 産 手 続 は、 破 産 手 続 開 始 決 定 時 に お け る 破 産 者の財産を破産債権者の配当に充てるための破産財団に属する財産に関しては、その管理処分権を破産管財人に帰 属させることとするが、破産者が経済的に更生、再生するために利用し得る財産は自由財産として、その管理処分 権を破産者にそのまま残している。従って、破産者が依然管理処分権を有している自由財産は、その財産を処分す るか否かの決定権および処分する場合の費消内容を決定する自由は破産者にある。そのため、自由財産を破産債権 者への弁済に充て、あるいは破産財団に委付することに関しては、そのようにしても自己の更生、再生が可能であ ると判断した破産者の意思をどのように評価するかが問題となる。 以下、順に検討する。
まず、否定説Aは、破産者の自由財産からの任意弁済に関しては、破産者が裁判外の請求を受けることになる、 あ る い は、 債 権 者 の 平 等 を 建 前 と す る 破 産 手 続 に お い て は 認 め ら れ な い と 解 す る た め 認 め ら れ な い と し て 反 対 す る。加えて、破産財団への自由財産の委付も否定する否定説Bにあっては、破産者に破産財団に自由財産を委付す るよう事実上有形、無形の圧力が加えられたり、強要されるおそれがあるとか、破産者の経済的更生を目的とする 自 由 財 産 の 本 来 の 趣 旨 に 反 す る と し て 認 め ら れ な い と の 反 対 が な さ れ て い る (も っ と も 自 由 財 産 に 対 す る 強 要 や 事 実 上 有 形、 無 形 の 圧 力 が 加 え ら れ る の は 財 団 へ の 委 付 だ け で な く 破 産 債 権 者 へ の 任 意 弁 済 の 場 面 で も 同 様 に 問 題 と な ろ う) 。 否定説Aの批判に対しては、肯定説側から、裁判外の請求を受けるという点に関しては、このような弁済を否定し てみても破産者を個別に追及する者が非常に少なくなるとも思えないとの反論がなさ ( 29) れ、債権者の平等が害される という点に関しては、これに対する破産法の趣旨は「一定の利害関係人を破産手続に乗せることによってその手続 内で確保する趣旨であるととら ( 30) え」るとか、あるいは債権者の平等は破産手続内においてのみなされればよく、手 続外で一部の債権者に弁済がなされることにより結果的に債権者間の平等を害することになっても致し方なく、債 権者平等の原則はあくまでも破産手続のなかで遵守されるべき原則であるとの反論がなされてい ( 31) る。債権者の平等 といった場合には、対破産財団との関係で考えれば十分であろう。次に、否定説Bの自由財産に対する強要や事実 上有形、無形の圧力が加えられる恐れがあるという批判に関しては、肯定説はあくまで任意の弁済を肯定している のであって、それが強制される可能性があるから認めないというのは硬直的であるとか、破産債権者は破産者から 履行を受けることができる受領権を有しているのであって任意弁済を認めないとこれが消滅させられてしまうのと 同じ結果になるとの反論がなされてい ( 32) る。言い換えれば、判旨にいう「破産者がした弁済が任意の弁済に当たるか 否かは厳格に解すべき」であるということの別の表現とも考えられ、自由財産による弁済に少しでも強制的な要素
を伴う場合には任意弁済に該当しないとすることで、緩和ないしは解消されうるものと考え ( 33) る。 次に、肯定説Aの破産手続において自由財産からの任意弁済を禁止する規定は存在しないとの主張や、破産者が あえて固定主義の利益を放棄するかしないかは破産者の自由であり、破産者の意思はこれを尊重すべきであるとの 主張は、基本的に肯首できる。 そして、肯定説Bであるが、これは石川明教授が提唱されている ( 34) 説であり、基本的には肯定説に立脚するもので あ る。 肯 定 説 A と の 違 い は、 自 由 財 産 の 種 類 (内 容) を 問 わ ず 任 意 弁 済 が 可 能 で あ る と す る の で は な く、 自 由 財 産 を構成する種類で任意弁済をすることができるものとできないものを区別する点である。すなわち、自由財産のう ち新得財産と差押禁止財産とを区別して考え、任意弁済を認めるのは新得財産からであり、差押禁止財産からの任 意弁済は否定するというものである。その理由とするところは、差押禁止財産は「禁止の趣旨から考えても、これ を財団に提供すること、あるいは破産債権者への弁済…に充てること等はそもそも許されない」 、「そもそも差押禁 止 は 社 会 的 法 治 国 家 的 観 点 か ら す る 最 低 限 の 生 活 保 障 (憲 法 二 五 条) だ か ら で あ る、 と い う だ け で、 そ の 理 由 付 け と し て は 既 に 十 分 で あ る。 こ の 点 で は お そ ら く 何 の 異 論 も 出 な い で あ ろ ( 35) う。 」 と い う も の で あ る。 こ こ で い う 最 低 限の生活保障というのは、社会的国家的観点からの「最低限の生活保障」ということであるが、本件判旨で述べら れている「自由財産は本来破産者の経済的更生と生活保障のために用いられるもの」とされる「生活保障」と同じ 範囲であるのか、あるいは差押禁止の趣旨を憲法二五条に求めているため、判旨よりもさらに絞りがかけられた範 囲であるのかは明らかではないが、少なくとも破産者の最低限の生活保障という基盤を確立することが最優先であ り、そのうえでの経済的更生、再生という主張であると思われる。従って、任意弁済に関しても、最低限の生活保 障が成り立っている、あるいは成り立たせるべき範囲には踏み込めないが、それ以外の部分で任意弁済を認めると
の主張であると考える。 思うに、これまでの通説、判例を前提とした議論は自由財産による任意弁済の可否であったが、その限界に関し ては特に言及されていない。すなわち、破産者が自己の経済的更生、再生および生活保障に支障がない範囲で任意 弁済をする場合は問題ないが、それを超えてしまう場合の可能性について触れられておらず、むしろ、それは超え ないであろうという前提の下に議論がなされていると思われる。仮に破産者の任意の意思に基づいていることを前 提 に し て、 自 由 財 産 の す べ て を (対 象 と し て) 任 意 弁 済 を す る こ と が 可 能 で あ ろ う か と い う こ と を 考 え て み た 場 合、それは認められないという結論には異論がないであろう。そこでは、自由財産の制度趣旨からその任意弁済が 可能な範囲には限界があり、その範囲の調整を必要とする問題がその根底にあるからではないかと思う。それゆえ 石川説は、差押禁止財産を任意弁済が可能な範囲から除いたものと考えられる。破産者の意思が、この点を凌駕し てまで自由に認められるとすると自由財産の制度趣旨を逸脱、没却してしまう結果となるので、筆者も、石川説が 妥当であると考える。従って、自由財産による任意弁済といっても最低限の生活保障は確保されることが前提であ り、 こ れ を 脅 か す 恐 れ が あ る 部 分 で の 任 意 弁 済 は、 ま っ た く の「任 意」 で あ っ て も 認 め ら れ な い と 解 す る。 た だ し、石川説は、任意弁済の可否に関して、差押禁止財産と新得財産とに関してのみを議論の対象としているが、筆 者の見解は、後述する理由により以下の二点において異なっている。第一点は、任意弁済が認められない自由財産 の範囲に、原則として差押禁止財産に加えて、それ以外の自由財 ( 36) 産である破産管財人が破産財団に属する財産のう ち管理処分権を放棄したもの、および破産法三四条四項により範囲が拡張されて破産財団に属しないとされた財産 (以 下、 合 わ せ て 放 棄、 拡 張 さ れ た 自 由 財 産) も 含 ま せ る と し た こ と で あ る。 第 二 点 は、 石 川 説 で は 差 押 禁 止 財 産 か ら は破産債権者に対する任意弁済も破産財団への委付も認められないが、右自由財産からでも特段の事情がある場合
には、例外的に任意弁済や委付を認めるとしたことである。第一点の理由としては、そもそも差押禁止財産は一般 的な規定として、画一的にその内容やその適用が定められているが、放棄、拡張された自由財産は個別の実情に配 慮し事案に即してその内容、範囲等が決定されるものであり、差押禁止財産だけでは破産者の経済的更生と生活保 障 の 確 保 に 不 足 す る た め、 通 常 は、 そ れ を 補 う 目 的 で 自 由 財 産 の 放 棄、 拡 張 が な さ れ る 場 合 が 多 い と 思 わ れ る こ と、 そ の 場 合 は 放 棄、 拡 張 さ れ た 自 由 財 産 も 差 押 禁 止 財 産 の 一 部 で あ る と 同 視 し 得 る か ら で あ ( 37) る。 そ し て 第 二 点 で、差押禁止財産、放棄、拡張された自由財産はここで特段の事情がある場合に限り破産債権者への任意弁済や破 産財団への委付を認めるとしたのは、たとえば新得財産を有してないが、それ以外の自由財産で任意弁済をするこ とによって新たな融資を受けることが可能である、あるいは約束されているような場合で、その方が破産者の経済 的更生や生活保障に資するということも考えられるからである。 最後に、本事案の地共法一一五条二項所定の払込の任意性について簡単に触れてみたい。本件は、破産手続開始 決定前の同意に基づいて破産手続開始決定後に振り込まれており、この点で、破産手続開始決定前と後では状況が 異なるため決定前の同意をもって決定後の同意とすることはできないと考える。破産手続開始決定前は、破産した 場合に退職金の一定の割合が自由財産となり自己に管理処分権が帰属し、経済的更生、再生のためや最低限の生活 を維持するために利用することが可能であると理解した上で同意しているものではないからである。なお、残る課 題としては、任意弁済が有効とされる範囲の「任意」性に関していかなる要件が必要とされるかということが検討 されるべきであろ ( 38) う。 ( 1 ) 山田正三『破産法』九六頁(弘文堂書房 昭和八年) 、齋藤常三郎『破産法』一二九頁(日本評論社 昭和一一年)等。
( 2 ) 金判一一二二号二五頁、判時一七五五号七七頁、判タ一〇八九号二九三頁。 ( 3 ) 金判一一二二号二一頁、金法一六一九号五一頁、判時一七五五号七四頁、判タ一〇八九号二九一頁。 ( 4 ) 民 集 六 〇 巻 一 号 二 二 八 頁、 裁 時 一 四 〇 四 号 一 三 頁、 判 タ 一 二 〇 三 号 一 一 五 頁、 判 時 一 九 二 三 号 三 七 頁、 金 判 一 二 四 七 号 二 四 頁、金法一七七九号八七頁、労判九三五号二四頁。 ( 5 ) 民集六〇巻一号二四四頁、金判一二四七号二九頁、労判九三五号二八頁。 ( 6 ) 民集六〇巻一号二三七頁、金判一二四七号三二頁、労判九三五号三二頁。 ( 7 ) この地方公務員等共済組合法一一五条二項に基づく弁済の法的性質に関しては、破産手続開始申立後、破産手続開始決定前に 退 職 手 当 全 額 を 組 合 員 に 代 わ っ て 貸 付 金 債 務 の 弁 済 と し て 共 済 組 合 に 払 い 込 ん だ 行 為 が、 組 合 員 が 破 産 手 続 開 始 決 定 を 受 け た 場 合 に お い て、 旧 七 二 条 二 号 の 危 機 否 認 の 対 象 と な る か が 争 わ れ た 事 案 に お い て(払 込 が 破 産 手 続 開 始 決 定 前 で あ っ た た め 自 由 財 産 と の 関 連 は 問 題 と は な ら な か っ た) 、 最 高 裁 は 平 成 二 年 七 月 一 九 日 判 決(民 集 四 四 巻 五 号 八 三 七 頁) に お い て「地 共 法 一 一 五 条 二 項 の 規 定 は、 組 合 員 か ら 貸 付 金 等 を 確 実 に 回 収 し、 も っ て 組 合 の 財 源 を 確 保 す る 目 的 で 設 け ら れ た も の で あ り、 給 与 の 直 接 払 の 原 則 及 び 全 額 払 の 原 則 … と の 関 係 を 考 慮 し て、 右 の 払 込 方 法 を 法 定 し た も の と 解 さ れ る。 そ し て、 右 払 込 が 他 の 債 権 に 対 し て 優 先 す る 旨 の 規 定 を 欠 く こ と と、 「組 合 員 に 代 わ っ て」 組 合 に 払 い 込 ま な け れ ば な ら な い と し て い る 地 共 法 一 一 五 条 二 項 の 文 言 に 照 ら し て み れ ば、 こ の 払 込 は、 組 合 に 対 す る 組 合 員 の 債 務 の 弁 済 を 代 行 す る も の に ほ か な ら ず、 組 合 に お い て、 破 産 手 続 上、 他 の 一 般 破 産 債 権 に 優 先 し て 組 合 員 に 対 す る 貸 付 金 債 権 の 弁 済 を 受 け 得 る こ と を 同 項 が 規 定 し た も の と 解 す る こ と は で き な い」 と し て 他 の 債 権 者に対する優先性を否定して、否認を認めており、本件最高裁判決でも引用されている。 ( 8 ) 最 高 裁 平 成 一 八 年 一 月 二 三 日 判 決 に 関 す る 判 例 評 釈 等 と し て、 服 部 敬「判 批」 NBL 八 二 七 号 四 頁(平 成 一 八 年) 、 上 江 洲 純 子 「判 批」 沖 縄 法 学 三 五 号 二 三 九 頁(平 成 一 八 年) 、 石 毛 和 夫 「 判 批 」 銀 法 六 六 二 号 三 八 頁(平 成 一 八 年) 、 升 田 純 「 判 批 」 Lexis 判 例 速 報 九 号 二 七 頁(平 成 一 八 年) 、 登 情 五 三 六 号(平 成 一 八 年) 、 遠 藤 曜 子「判 批」 金 判 一 二 四 七 号 二 頁(平 成 一 八 年) 、 金 法 一 七 七 九 号 七 二 頁(平 成 一 八 年) 、 原 強 「 判 批 」 別 冊 ジ ュ リ 一 八 四 号(倒 産 判 例 百 選 第 四 版) 八 六 頁(平 成 一 八 年) 、 亀 井 洋 一「判 批」 リ ー ジ ョ ナ ル バ ン キ ン グ 五 六 巻 一 〇 号 四 八 頁(平 成 一 八 年) 、 吉 岡 伸 一 「 判 批 」 判 タ 一 二 一 六 号 五 七 頁(平 成 一 八 年) 、 浅 野 謙
一「判 批」 信 用 保 険 月 法 四 九 巻 一 二 号 三 〇 頁(平 成 一 八 年) 、 黒 田 直 行 「 判 批 」 JA 金 融 法 務 四 二 四 号 六 〇 頁(平 成 一 九 年) 、 栗 田 隆「判 批」 判 評 五 七 七 号 二 六 頁(平 成 一 九 年) 、 小 原 将 照 「 判 批 」 法 研 八 〇 巻 三 号 一 八 五 頁(平 成 一 九 年) 、 佐 藤 鉄 男 「 判 批 」 ジ ュ リ 一 三 三 二 号(平 成 一 八 年 度 重 判 解) 一 四 四 頁(平 成 一 九 年) 、 山 本 研 「 判 批 」 明 治 学 院 大 学 法 律 科 学 研 究 所 年 報 二 三 号 九 五 頁 (平 成 一 九 年) 、 同 「 判 批 」 リ マ ー ク ス 三 四 号 一 二 六 頁(平 成 一 九 年) 、 野 村 直 之 「 判 批 」 判 タ 一 二 四 五 号 二 二 八 頁(平 成 一 九 年) 、 石 川 明 「 判 批 」 判 タ 一 二 五 一 号 八 九 頁(平 成 一 九 年) 、 志 田 原 信 三 「 判 解 」 曹 時 六 一 巻 三 号 一 六 五 頁(平 成 二 一 年) 、 同「判 解」 最 判解説民平成一八年度(上)一四六頁(平成二一年) 、北村賢哲 「 判批 」 ジュリ一三八八号一一二頁(平成二一年)がある。 ( 9 ) 東 京 高 裁 平 成 一 三 年 五 月 二 四 日 に 関 す る 判 例 評 釈 と し て、 吉 田 光 硯 「 判 批 」 金 法 一 六 二 三 号 四 頁(平 成 一 三 年) 、 高 田 賢 治 「判 批」 法 学 研 究(北 海 学 園 大 学) 三 七 巻 三 号 二 〇 七 頁(平 成 一 四 年) 、 中 西 正 「 判 批 」 ジ ュ リ 一 二 二 四 号(平 成 一 三 年 度 重 判 解) 一 三 九 頁(平 成 一 四 年) 、 井 上 繁 規 「 判 批 」 金 法 一 六 四 五 号 三 七 頁(平 成 一 四 年) 、 杉 山 悦 子 「 判 批 」 ジ ュ リ 一 二 七 五 号 一 七 二 頁 (平成一六年)がある。 ( 10) 石川・前掲注( 8 )九一頁以下。 ( 11) 前掲注( 4 )。 ( 12) 前掲注( 6 )。 ( 13) 前掲注( 5 )。 ( 14) 前掲注( 3 )。 ( 15) 前掲注( 2 )。 ( 16) 小 野 木 常『破 産 法』 一 五 一 頁(有 信 堂 昭 和 二 五 年) 、 坂 本 泰 良『破 産 法 講 義』 一 二 三 頁(有 信 堂 昭 和 二 六 年) 、 加 藤 正 治 『破 産 法 要 論(新 訂 増 補 一 六 版) 』 六 九 頁(有 斐 閣 昭 和 二 七 年) 、 兼 子 一 編『破 産 法』 二 五 頁〔担 当 者 不 明〕 (青 林 書 院 新 社 昭 和 三一年) 、中田淳一『破産法・和議法』二〇三頁(有斐閣 昭和三四年) 、坂本泰良『破産法要義』一六六頁(不明 昭和三六年) 、 伊 東 乾 = 斎 藤 秀 夫 編『演 習 破 産 法』 一 八 四 頁〔菅 野 国 夫〕 (青 林 書 院 新 社 昭 和 四 八 年) 、 山 木 戸 克 己『破 産 法』 三 四 頁(青 林 書 院 新 社 昭 和 四 九 年) 、 斎 藤 秀 夫 編『講 義 破 産 法』 一 一 三 頁〔林 屋 礼 二〕 (青 林 書 院 新 社 昭 和 五 七 年) 、 山 田 治 男『破 産 法』 二 二
頁 以 下(八 千 代 出 版 昭 和 五 七 年) 、 羽 田 忠 義『現 代 破 産 法』 一 五 七 頁(商 事 法 務 研 究 会 昭 和 五 七 年) 、 霜 島 甲 一『倒 産 法 体 系』 一 八 〇 頁(勁 草 書 房 平 成 二 年) 、 石 川 明 = 小 島 武 司 編『破 産 法(改 訂 版) 』 一 〇 二 頁〔加 藤 哲 夫〕 (青 林 書 院 平 成 三 年) 、 福 永 有 利 他『破 産 法』 一 二 七 頁〔林 屋 礼 二〕 (青 林 書 院 平 成 五 年) 、 中 野 貞 一 郎 = 道 下 徹 編『基 本 法 コ ン メ ン タ ー ル 破 産 法(第 二 版) 』 五 二 頁〔徳 田 和 幸〕 、 一 〇 八 頁〔本 間 靖 規〕 (日 本 評 論 社 平 成 九 年) 、 櫻 井 孝 一 = 加 藤 哲 夫 編『破 産 法』 八 四 頁〔近 藤 隆 司〕 (青 林 書 院 平 成 一 〇 年) 、 斎 藤 秀 夫 他 編『注 解 破 産 法(第 三 版 上 巻) 』 七 六 頁〔小 室 直 人 = 中 殿 政 男〕 、 一 一 九 頁 以 下〔石 川 明 = 三 上 威 彦〕 (青 林 書 院 平 成 一 〇 年) 、 林 屋 礼 二『破 産 法 講 話』 六 〇 頁(信 山 社 平 成 一 〇 年) 、 青 山 善 充 他『破 産 法 概 説(新 版 増 補 二 版) 』 一 一 五 頁〔福 永 有 利〕 (有 斐 閣 平 成 一 三 年) 、 竹 下 守 夫 他 編『大 コ ン メ ン タ ー ル 破 産 法』 一 三 九 頁〔髙 山 崇 彦〕 、 一 七 〇 頁〔菅 家 忠 行〕 (青 林 書 院 平 成 一 九 年) 、 中 島 弘 雅『体 系 倒 産 法 Ⅰ』 一 三 三 頁(中 央 経 済 社 平 成 一 九 年) 、 宗 田 親 彦『破 産 法 概 説(新 訂 第 四 版) 』 三 二 二 頁(慶 應 義 塾 大 学 出 版 会 平 成 二 〇 年) 、 山 本 和 彦『倒 産 処 理 法 入 門(第 三 版) 』 七 〇 頁(有 斐 閣 平 成 二 〇 年) 、 伊 藤 眞『破 産 法・ 民 事 再 生 法(第 二 版) 』 二 〇 四 頁、 三 一 五 頁 の 脚 注( 140)(有 斐 閣 平 成 二 一 年) 、 加 藤 哲 夫『破 産 法 (第五版) 』一三三頁(弘文堂 平成二一年) 、伊藤眞他『条解破産法』三二一頁(弘文堂 平成二二年)等。 但 し、 反 対 説 と し て、 井 上 直 三 郎『破 産 法 綱 要(第 一 巻 増 訂 第 三 版) 』 三 一 頁(弘 文 堂 書 房 昭 和 二 年) 、 齋 藤・ 前 掲 注( 1 )、 同『比 較 破 産 法 論』 三 〇 四 頁(有 斐 閣 昭 和 一 五 年) 、 岡 村 玄 治『破 産 法 要 義』 三 三 頁 以 下(明 玄 書 房 昭 和 二 九 年) 、 同「破 産 債 権の行使と自由財産」新法六三巻六号五〇三頁(昭和三一年)がある。 な お、 強 制 執 行 を な し え な い と す る 説 は、 そ の 根 拠 と し て 固 定 主 義 を 挙 げ る も の、 固 定 主 義 と 免 責 主 義 の 両 方 を 挙 げ る も の 等 に 分かれる。詳しくは、上江洲・前掲注( 8 )二四五頁の脚注( 5 )。 ( 17) な お、 肯 定 説 で あ る が、 ② は 否 定 す る 説 と し て、 古 い 学 説 で あ る が、 前 野 順 一『破 産 法』 二 六 頁(中 大 出 版 社、 出 版 年 不 明 謄 写 版) が あ る。 前 野 説 は、 ① に 関 し て は、 「法 律 上 ゆ る さ れ な い こ と で は な い」 と し て 肯 定 し、 ② に 関 し て は、 新 得 財 産 に つ い て で あ る が、 「破 産 宣 告 後 の 債 権 者 の 為 弁 済 の 引 当 と な っ て 居 る も の で あ る に も 拘 わ ら ず、 之 を 破 産 財 団 に 組 入 れ 得 る も の と せ ば 破 産 配 当 に 加 わ り 得 な い こ の 債 権 者 を 害 し、 不 公 平 と な る」 と し て 否 定 す る。 同 様 に 竹 下 他 編・ 前 掲 注( 16) 一 三 九 頁 以 下〔髙 山 崇 彦〕 も、 ① は 肯 定 す る が、 ② に 関 し て は「債 権 者 か ら 破 産 者 に 対 し て、 財 団 組 入 れ を 求 め る 有 形 無 形 の 圧 力 が 加 え ら れ る お そ れ
が あ る」 た め 一 般 的 に は 認 め ら れ な い と す る。 伊 藤 他・ 前 掲 注( 16) 条 解 二 九 七 頁、 七 〇 二 頁 以 下 も、 ① は 肯 定 す る が、 ② に 関 し て は 債 権 者 が 不 当 な 圧 力 を 加 え る お そ れ が あ る た め 原 則 と し て 認 め ら れ な い と す る(強 制 的 な 要 素 を ま っ た く 有 し な い 自 由 な 判 断 に基づく場合は組入れを認める) 。 ( 18) 井 上・ 前 掲 注( 16) 一 〇 三 頁、 金 澤 潔『破 産 法(実 体 規 定) 』 五 四 頁(巖 松 堂 昭 和 八 年) 、 齋 藤・ 前 掲 注( 1)、 坂 本・ 前 掲 注( 16) 講 義 一 二 一 頁 以 下、 加 藤(正) ・ 前 掲 注( 16) 六 八 頁 以 下、 兼 子 編・ 前 掲 注( 16) 二 四 頁 以 下、 中 田・ 前 掲 注( 16) 九 一 頁、 坂 本・ 前 掲 注( 16) 要 義 一 六 五 頁 以 下、 兼 子 一 = 恒 田 文 次『破 産 法・ 和 議 法(改 訂 増 補 版) 』 一 七 八 頁(青 林 書 院 新 社 昭 和 三 九 年) 、 伊 東 = 斎 藤 編・ 前 掲 注( 16) 一 八 三 頁〔菅 野 国 夫〕 、 斎 藤(秀) 編・ 前 掲 注( 16) 講 義、 山 田・ 前 掲 注( 16) 二 二 頁、 羽 田・ 前 掲 注( 16) 一 五 六 頁 以 下、 霜 島・ 前 掲 注( 16)、 中 野 = 道 下 編・ 前 掲 注( 16)〔本 間 靖 規〕 、 斎 藤(秀) 他 編・ 前 掲 注 ( 16) 注 解 一 二 〇 頁 以 下〔石 川 明 = 三 上 威 彦〕 、 林 屋・ 前 掲 注( 16)、 青 山 他 編・ 前 掲 注( 16)、 大 村 雅 彦『基 礎 講 義 破 産 法(増 補 版) 』 一 二 七 頁(青 林 書 院 平 成 一 四 年) 、 井 上・ 前 掲 注( 9 ) 四 〇 頁、 杉 山・ 前 掲 注( 9 ) 六 頁、 服 部・ 前 掲 注( 8 ) 六 頁、 上 江 洲・ 前 掲 注( 8 ) 二 四 六 頁、 遠 藤・ 前 掲 注( 8 ) 四 頁、 原・ 前 掲 注( 8 )、 亀 井・ 前 掲 注( 8 ) 四 九 頁、 吉 岡・ 前 掲 注( 8 ) 五 九 頁、 栗 田・ 前 掲 注( 8 ) 三 〇 頁、 小 原・ 前 掲 注( 8 ) 一 八 八 頁、 山 本・ 前 掲 注( 8 ) 明 学 九 九 頁、 同・ 前 掲 注( 8 ) リ マ ー ク ス 一 二 九 頁、 野 村・ 前 掲 注( 8 ) 二 二 九 頁、 宗 田・ 前 掲 注( 16)、 志 田 原・ 前 掲 注( 8 ) 曹 時 一 七 三 頁、 同・ 最 判 解 説 民 一 五 四 頁、 加藤(哲) ・前掲注( 16)一三四頁、北村・前掲注( 8)一一五頁。 ( 19) 宗田・前掲注( 16)。 ( 20) 斎藤(秀)他編・前掲注( 16)注解一二一頁〔石川明 = 三上威彦〕 。 ( 21) 石川・前掲注( 8 )九一頁以下。 ( 22) ここでは価値がないため破産管財人が破産財団に組み込まない自由財産は対象外としている。前掲注( 21)。 ( 23) 石川・前掲注( 8)九一頁。 ( 24) 石川・前掲注( 8 )九三頁。 ( 25) 斎藤(秀)他編・前掲注( 16)注解〔小室直人 = 中殿政男〕 。
( 26) 山 田・ 前 掲 注( 1 )(こ の 説 は、 旧 破 産 法 一 六 条 を 根 拠 に 破 産 債 権 者 は 任 意 弁 済 受 領 権 が な い こ と を 理 由 と す る) 、 山 木 戸・ 前 掲 注( 16) 三 四 頁、 一 一 二 頁 以 下、 斎 藤(秀) 他 編・ 前 掲 注( 16) 注 解〔小 室 直 人 = 中 殿 政 男〕 、 中 西・ 前 掲 注( 9 ) 一 四 〇 頁。 な お、 否 定 説 の な か に は ① に 関 し て 認 め な い こ と は 明 言 し て い る が、 ② に 関 し て 述 べ て い な い 説 も あ る が、 こ こ に 引 用 し て お く。 菊 井 維 大『破 産 法 概 要』 七 二 頁(弘 文 堂 昭 和 二 七 年、 こ の 説 は、 新 得 財 産 に よ る 弁 済 を 認 め な い と す る) 、 納 谷 廣 美『現 代 破 産 法』二二二頁〔遠藤功〕 (八千代出版 平成七年) 、中野 = 道下編・前掲注( 16)〔徳田和幸〕 、谷口安平他編『新現代倒産法入門』 五 九 頁〔井 上 治 典〕 (法 律 文 化 社 平 成 一 四 年) 、 山 本 和 彦『倒 産 処 理 法 入 門(第 二 版 補 訂 版) 』 六 〇 頁(有 斐 閣 平 成 一 八 年) 、 山 本和彦他『倒産法概説(第二版) 』五四六頁〔山本和彦〕 (弘文堂 平成二二年) 。 ( 27) 白川和雄 = 飯塚重男編『破産法』九四頁〔本間靖規〕 (青林書院 平成七年) 、小林秀之 = 齋藤善人『破産法』五一頁以下(弘 文 堂 平 成 一 九 年) 、 高 田・ 前 掲 注( 9 ) 二 一 二 頁。 伊 藤 眞『破 産 法・ 民 事 再 生 法(第 二 版) 』 一 八 四 頁(有 斐 閣 平 成 二 一 年) は、 ② に 関 し て は、 差 押 禁 止 財 産 の 破 産 財 団 へ の 組 入 れ を 否 定 し て い た が( 『破 産 法(全 訂 第 三 版 補 訂 版) 』 一 五 〇 頁(有 斐 閣 平 成 一 三 年) )、 新 破 産 法 施 行 後 は 自 由 財 産 の 破 産 財 団 の 組 入 れ を 否 定 し( 『破 産 法(第 四 版) 』 一 七 五 頁(有 斐 閣 平 成 一 七 年) よ り) 、①に関しては、特に明言されていないため肯定か否定かは不明であるが、他の判例評釈と同様、一応ここで引用する。 し か し、 一 部 の 学 説 が 言 う よ う に、 ② を 否 定 す る の で あ れ ば、 ① の 任 意 の 弁 済 に つ い て も 否 定 す る と は 言 い 切 れ な い で あ ろ う (たとえば、注( 17)参照) 。 ( 28) 破 産 法 一 〇 〇 条 一 項 が 破 産 債 権 に 関 し て「行 使 す る こ と が で き な い」 と 規 定 さ れ て い る 趣 旨 に 関 し て、 民 事 再 生 法 八 五 条 一 項、 会 社 更 生 法 四 七 条 一 項 と ま っ た く 同 一 の「弁 済 を し、 弁 済 を 受 け、 そ の 他 こ れ を 消 滅 さ せ る 行 為(免 除 を 除 く。 ) を す る こ と が で き な い」 と い う 文 言 に し た 場 合 に「自 由 財 産 か ら の 任 意 弁 済 を 禁 止 す る な ど 従 来 の 解 釈 と 異 な る 立 場 を 明 ら か に す る も の と 読 ま れ か ね ず、 適 切 で は な い と 考 え ら れ た た め で あ る。 こ の 問 題 に つ い て は な お 解 釈 に 委 ね る 趣 旨 で あ る。 」 と 説 明 す る も の と し て、山本(和)他・前掲注( 26)六〇頁〔沖野眞已〕 。 ( 29) 斎藤(秀)他編・前掲注( 16)注解一二一頁〔石川明=三上威彦〕 。 ( 30) 遠藤・前掲注( 8 )四頁。
( 31) 石川・前掲注( 8 )九二頁および同頁の脚注( 8 )。 ( 32) 石川・前掲注( 8 )九二頁。 ( 33) 山本・前掲注( 8 )リマークス一二八頁、吉岡・前掲注( 8 )五九頁等。 ( 34) 石川・前掲注( 8 )九一頁以下。 ( 35) 石川・前掲注( 8)九一頁。 ( 36) 竹下他編・前掲注( 16)。 ( 37) 差 押 禁 止 財 産 の 不 足 を 補 う と い う 趣 旨、 目 的 以 外 で 自 由 財 産 と さ れ た 場 合 に お い て は、 差 押 禁 止 財 産 の 一 部 で あ る と 同 視 し 得 な い た め、 任 意 弁 済 の 対 象 と な る と 解 す る。 も っ と も 現 実 的 に は、 破 産 管 財 人 が 破 産 財 団 か ら 放 棄 し て 自 由 財 産 と す る 場 合 は、 破 産 財 団 の 負 担 を 軽 減 す る 目 的 等 で な さ れ る 場 合 も あ り 得 る が、 三 四 条 四 項 に 基 づ き 自 由 財 産 と さ れ る 場 合 に は 差 押 禁 止 財 産 の 不 足 を補うという目的等以外でなされることはこの規定が設けられた趣旨からして、まずあり得ないであろう。 ( 38) 野 村・ 前 掲 注( 8 ) 二 二 九 頁 は、 そ の 要 件 と し て(イ) 弁 済 時 に お い て、 (ロ) 自 由 財 産 か ら 弁 済 す る 義 務 が な い こ と を 破 産 者 が 十 分 に 認 識 し た う え で、 (ハ) 自 由 な 判 断 を 阻 害 し か ね な い 強 制 的 要 素(暴 行、 脅 迫、 威 迫、 不 利 益 事 実 の 告 知、 執 拗 な 催 告 や説得、慫慂等)が全く存在しない状況のもとで弁済がなされること、を挙げている。 ―さくらもと まさき 法学部教授―