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訓練における観察とは何をみれば良いのか 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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訓練における観察とは何をみれば良いのか

著者

唐沢 彰太

著者別名

Shota KARASAWA

雑誌名

神経現象学リハビリテーション研究

5

ページ

1-6

発行年

2020-03

URL

http://doi.org/10.34428/00011947

(2)

Key words: 観察(observation),経験(experience),自覚(awareness) 要旨:リハビリテーションにおいて,理学療法士などのセラピストによる臨床は情報収集から 始まる。画像診断や既往歴などの基礎情報はもちろん重要だが,患者と関わることで得られる 情報の価値は非常に高い。その中でも,観察・評価は臨床においてその大部分を占め,訓練の 精度を左右する。この観察・評価は何を目的に行われ,どの様な方法が考えられるのか。ま た,観察・評価の限界はどこにあり,どこまで知る事が出来るのか。患者の病態を紐解いてい く作業に当たるこの観察と評価に関して,エビデンスを意識しつつ患者の意識経験を重要視し た方法を今回考察していく。

訓練における観察とは何をみれば良いのか

唐沢彰太

はじめに  私が学生だった頃,4 年生で行く臨床実習の準 備をしていた時のことである。整形外科疾患,脳 血管疾患など,疾患別に「行うべき評価項目は何 か」をグループで考えていた。関節可動域測定, 筋力測定,反射検査…様々な評価項目が上がって いた。その時,教室の隅の方で見ていた,私の担 任である理学療法士の教員が「なぜその評価を行 うのかが大切です」と話していた。その時は,そ の言葉を本当の意味では理解できていなかったと 今は思っている。整形外科疾患だから疼痛検査, 関節可動域測定を行う…脳血管疾患だから感覚検 査,反射検査を行う。それくらいの意味でしかそ の時は捉えられていなかった。しかし,そうでは なかったのである。患者の希望や個別性,環境な ど様々な要因が影響するリハビリテーションで は,疾患別だけでは評価や検査項目は決められな いのだ。それでは,どの様に問診・観察から評 価・検査へ進めて行けば良いのだろうか。 Ⅰ.臨床の手続き  1回の臨床は,急性期では20分前後,回復期で は 60 分のように時間が決められている。この決 められた時間の中で,患者を最大限改善させてい く為には,問診から訓練までいかにスムーズに進 めていくかが重要になってくる。問診や観察な ど,それぞれからどの情報を得て何を考えればス ムーズに進めるのか。各項目別に考えて行く。 1,情報収集  性別,年齢,疾患名,発症年月日,障害名,画 像診断,既往歴,家族構成,自宅環境など基本的 にはカルテに記載されている情報を収集する。こ れらの情報から,問診時にする質問や会話の手掛 かりを考えて行くことが出来る。また,画像から は現状の理解と予後予測を考えることができ,非 常に有用な情報となることが多い。これらの基礎 情報と,患者像をセットで経験として積み上げて いく事で,セラピストとして将来の財産となる。

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訓練における観察とは何をみれば良いのか 神経現象学リハビリテーション研究 No.5 2,問診  セラピストと患者の会話によるやり取りであ り,私自身非常に重要視している項目である。患 者の脳の働きを予測していく為には,患者と話し ていく手続きはかかすことが出来ない。例えば, 今何が 1番気になっているのか,反対に気付けて いない事は何なのかなど,何に注意して生活して いるのか,また注意を向けることが出来ないのか といった具合にである。  問診では,次の事を必ず聞くようにしている。 ① リハビリで改善したい行為(動作)は何ですか? (希望) ② 今改善したい行為がうまく出来ない原因は何だ と思いますか?(障害の理解度)  ①に関しては,リハビリテーションにおいて最 も重要である,生活の質を向上させる目的を達成 するために行う。手が動くようになりたい,痛み を無くしたいと言った目標ではなく,動くように なった手で何をしたいのか,痛みがなくなった生 活で何をしたいのかを明確にし,その目標に向 かっていく手続きがリハビリテーションだからで ある。  ②に関しては,セラピストが仮説立てている原 因と患者が考えている原因に齟齬がある場合,訓 練効果が半減する場合が多い。これは,患者が考 えている原因に対する訓練でなければ,患者が訓 練に入り込みにくく学習効果が得られない為であ ると考えられる。皆さんも,数学の微分積分を勉 強している時,「今後の人生で必要なのか?」と 思ったとたんやる気がなくなった経験があるので はないだろうか。これらを考慮し,目標としてい る行為を獲得していく為に,必要なことは何なの か,今問題となっている事は何なのかを患者と共 有するためにも,問診の中で情報を収集していく 必要がある。  ①と②は全員にしていくが,この会話の中から 問診の内容を広げていく。私は,問診の中でセラ ピストが 2 ~3,患者が 7 ~8 割を話していくイ メージを持っており,いかに患者に自由に語って もらうかが大切だと考えている。その患者の話の 中で,どのワードを多く使うのか(筋力,体,感 覚,痛みなど),ネガティブな発言が多いのかポ ジティブな発言が多いのか,リハビリに対してど の様なイメージを持っているのかなど,注意深く 聞いていく。それらのワードから,患者の病態と 認知的な癖を探っていく作業を問診の中で行って いく。つまり,仮説を構築していく作業が,問診 において最も重要な項目となってくる。この仮説 を,更に精査していく為に,評価・検査を選択し 実施していく流れとなる。 3,観察  基本的には,患者の動きや仕草を視て,どう動 いているのかを理解する項目となる。ただ,観察 の中に,患者がその動きなどをどう認知している のかを聞いていく作業も含み,問診を更に 1歩進 めたような形となる。この患者に対する質問は, なぜそう動くのかを更に理解していく為の手続き であり,訓練の直接的な手掛かりとなる事も多 い。観察には次のような種類が考えられる。 ① 無意識的かつ自然な動作:セラピスト側から何 も規定せず,待合からリハ室までの移動など, 目的があり自然に遂行される動作。 ② セラピストが指示した動作:基本動作や歩行な ど,今の動作がどのように行われているかを視 るために遂行される動作。最も臨床で行われる 観察方法。 ③ 患者が目標とする動作:日常生活動作であるこ とが多く,環境を出来るだけ類似した状態で 行ってもらう動作。箸操作や書字動作など。 ④ セラピストが規定した状態で遂行される動作: 踵から着いて歩くなど,セラピストからルール や方法を規定された状態で行われる動作。観察 より評価に近く,セラピスト側に明確な目的が ある中で行われる。  これらの動作遂行後,もしくは遂行中に,今の 動きをどう感じているのか(うまくいったかどう か,何が気になるか,何が問題だと思うかなど) を聞き,より訓練への手掛かりを増やしていく。  観察で得られた情報は,【なぜなのか】まで自 分の中で処理しておくと次の分析がスムーズにな る。その為,【なぜなのか】の次に【こうじゃな いか】と言った仮説まで持っておくとより臨床と しては精度の高い内容となる。 4,分析  3 の観察で,患者の病態や目標とする動作など を観察した結果,セラピストが疑問に感じた点や 仮説を更に裏付けていく為に行われる。観察まで は,セラピストの経験や主観などから疑問点を 絞っていく方法が多いが,分析においてはエビデ ンスに基づいている事が求められる。つまり,既 存の評価や検査を行い,その結果を軸に分析して いかなければならない。  しかし,既存の検査や評価のみでは患者の病態 を細分化していく事は難しいことが多く,セラピ ストが自分なりに考えた検査や評価を実施してい かなければならない。この時に注意しなければな らないのは,エビデンスのない検査や評価では得 られた結果に信頼性が無い為,文献などを参考に 検査や評価を考えなければならない事である。た だ,実際は完全にエビデンスを構築することはほ ぼ無理であり,セラピスト自身が根拠を持つこと が最低限となる。最終的には,検査や評価の結果 から訓練を組み立てていく事になる為,狙った改 善効果が得られない時は,検査や評価の結果を疑 う事も必要にはなる為,経験を積み重ねていく事 が重要である。この経験が,行っている検査や評 価の信頼性を高めていく。もちろん,数値化して 学会などで報告することが最も大切ではあるが。  また,観察で聞いた患者の話であるが,分析に おいて【なぜそのようなことを言うのか】を考え て行く手続きが必要になる。病態のある脳や身体 で生きてきた患者がどのような意識経験を持って いるのか,また訓練を経験していく事で患者の意 識はどう変化していくのか。臨床においてはこの 患者の意識経験を積み重ねていく事は,エビデン スと同等の価値があると私は考えている。訓練に おいても,この患者の意識経験をどう変化せてい くのかを考えることは非常に重要になる。 5,そして訓練…  1~4 までで得られた情報を元に,訓練を考え 実施していく。  この様にすべてを列挙していくと,訓練が始ま る前には,患者の病態を始めとした情報は大部分 が揃っている状態が理想である。つまり,臨床に おいて問診から分析までの流れがいかにスムーズ かつ,精度の高い内容になるかどうかは,セラピ ストの作り出す臨床力の基本であり最も肝となる 所なのである。 Ⅱ.観察と訓練と行為と  観察で得た患者の情報を訓練に活かしていく為 には,観察・評価と訓練とのつながりを意識しな ければならない。また,訓練は患者の生活・行為 とつながっていなければならない。ゆえに,観 察・評価は患者の生活・行為とつながっていなけ ればならない。  どんな病態であれ,患者の生活が改善しなけれ ば,それはリハビリテーションになり得ない。我々 セラピストは,患者が生きていく上で何に困って いるかを傾聴し,その原因をいかに専門的にか つ,根拠のある方法で構築していくのかが仕事で ある。患者の悪い箇所を見つけ,部分的に改善す ることはセラピストのエゴでしかないことは言う までもない。日常生活から余暇活動まで,患者の 希望に合わせて,観察から訓練まで個別性のある 内容を提供していかなければならないのである。 1,観察と評価による訓練のフィルタリング  観察で得た内容はあくまで【仮説】である。  「患者はなぜそのように動くのか(話すのか)」 この問いに対して,セラピストが観察の結果によっ て選別された評価結果をもとに,【仮説】を構築 していく。この仮説が訓練のすべてを決定する。  例えば,大腿骨頸部骨折の患者が,問診をして いる中で「1 人で外を歩きたい」と話して来た場 合,まずは歩行を観察するだろう。骨折側の立脚 期が短く,体幹が同側に側屈していた場合,

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訓練における観察とは何をみれば良いのか 神経現象学リハビリテーション研究 No.5  「なぜ,そのような歩容になるのだろうか」 と疑問を持つ。この疑問に対して仮説を構築する ために,評価を考えて行く。もちろん問診による 痛みの聴取を忘れてはいけない。筋力・可動域を 中心に評価を行えば,「筋力不足により痛みが生 じている」と仮説が構築される。痛みに関する評 価を中心に行っていけば,「荷重する時に痛みが 想起され,正しい運動単位が動員されていない」 と考えるかもしれない。この様に,仮説が異なれ ば,行う訓練もおのずと異なってくる。筋力を問 題と考えれば筋力トレーニングが中心となり,痛 みが問題と考えればイメージングセラピーなどが 導入されるかもしれない。つまり,観察から何を 考えたのかに加え,どの様な評価を行ったのか が,そのまま訓練の幅を決定することになる。多 角的に捉え,様々な側面から観察し評価を実施す ることは患者の改善可能性を広げることに直結す る。  ただし,ここで落とし穴が存在する。多くの評 価を行い,莫大な情報量になったとしてもそれを 訓練に落とし込めなければ意味がない。結局自分 の思考の癖に引っ張られ,評価結果を活かせない セラピストを私は多く見てきている。これを解決 するためには,経験しかない。患者のパーソナリ ティから病態,その患者をどう観察しどの評価を 実施して,どの様な仮説を立てたのか。その結 果,どの訓練を実施して結果はどうだったのか。 この経験こそが,セラピストの財産であり,患者 の改善可能性そのものであろう。つまり,この 1 連の流れをいかに大切にして,一人一人の患者と 向き合ってきたのかがセラピストの価値を決め る。ここの経験があればあるほど,患者を多角的 に観察できるし,様々な評価も浮かんでくる。そ の結果,訓練は的確なものへと洗練されていくの だ。その為にも,患者の希望に合わせて行うとい う一貫性を持つことも大切になってくる。 2,訓練はあくまで訓練であることの自覚  さて,ここで観察・評価結果と訓練,また日常 での行為とのつながりに戻ろう。セラピストが頻 繁に悩みとして抱えている,「リハビリでは出来 たのに,日常生活では出来ない」。これはリハビ リの問題点を明確に指摘してくれている。これに はいくつかの問題点を含んでいる。 ① リハビリで出来るようになることが目標になっ ている ② 日常生活をイメージした観察・評価が出来てい ない ③ 訓練と日常生活での行為とのつながりが理解で きていない これらは患者はもちろん,セラピストも同様であ り,3つの自覚が不足していると考えている。 ①あくまで最終目標は日常生活の行為を変えるこ との自覚 ②観察しているのは日常生活での動作・行為では なくリハビリ室での行為であることの自覚 ③訓練はあくまで訓練であることの自覚  これらの自覚がなければ,観察・評価から訓 練,更に日常生活への汎化は難しい。では,1 つ ずつ詳しく見ていきたい。  ①あくまで最終目標は日常生活の行為を変える ことの自覚  この自覚に関しては,セラピストの方が欠如し ているケースが多いかもしれない。長期目標を見 据え,短期目標を達成していくプロセスを持って いるリハビリだが,その目標がリハビリ内で行え ることになりがちである。例えば,安定して麻痺 側に荷重することが出来るなどである。これで は,日常生活で具体的にどのような変化が生じる のかが分かりにくく,患者もセラピストもぼんや りしたままになってしまう。これではリハビリ内 で出来たとしても日常生活に汎化することは難し くなってしまう。  その為,目標はあくまで日常生活の行為であり, 今行っている訓練によってその行為はどう変化す るのかをセラピストはもちろん,患者側も理解し ておかなければならない。 よって, 先ほどの, 【麻痺側に荷重することが出来る】といった目標 ではなく,【トイレで下位更衣を行うときに左右 均等に荷重でき,安定して行える】というように 具体的にすることが大切である。  ②観察しているのは日常生活での動作・行為で はなくリハビリ室での行為であることの自覚  ①から考えられるように,より日常生活からの 情報を収集することに越したことはない。しかし, 現実的になかなか見ることが出来ないのが現状だ ろう。病院であれば看護師との連携,生活期であ ればご家族との関係性の構築が重要であり,ある 程度の情報を収集できる。また,患者自身に対し て,日常生活内と今リハビリで行ってもらった動 作に差があるかどうかを聞くことも有効である。 この2つを比較することで,今行ったリハビリ内 での行為だけではなく,日常生活での行為に関し ても考えることができる。更に,2 つの差が分か るようになれば,患者自ら日常生活での行為を考 えながら行えるようになる。これはまさしく患者 の意識経験の変化であり,自律性の獲得へ繋がる。  ③訓練はあくまで訓練であることの自覚  ここまで考えてきた,①と②の総括になるが, 訓練はあくまで訓練であり,日常生活の動作とは 別物であることの自覚とはどういうことか。この 問題を解決するためには2つの方法が考えられる。  1 つ目は,リハビリの環境を出来るだけ日常生 活の環境に近付けることである。皆さんは,ホ ラー映画を見るだろうか。ゾンビが出てくる様 な,【非日常的】な映画を見た後に,日常生活に 影響はなかなか出にくい。しかし,どこにでもあ るようなマンションの 1室で心霊現象が起こるよ うな映画を見たとしたら,同じようなマンション に住んでいる人はふとした時に映画の影響を受け るかもしれない。つまり,映画を見ている時に, 自分の日常生活の環境と【類似】していればする ほど,日常生活への汎化を期待できるということ である。  2 つ目は,今行っているのは訓練であり,日常 生活とは異なっている事の自覚を持つことであ る。ただしこれだけではもちろん足りない。訓練 と日常生活での行為は別物ではあるが,似ている 部分もあるのではないかと考えて行く手続きが必 要である。訓練で行っている内容を理解し,どの 行為を対象としているのかも同時に理解した状態 で,この訓練の内容の【何が】行為に使えるのか を考えて行く。この【何が】の部分が,訓練と日 常生活での行為とのつながりであり類似点であ る。例えば,体の使い方の方法であったり,注意 の向ける対象であったりといった具合にである。 この方法を可能にするためには,患者に常に実行 為(改善の対象となる行為)がイメージ出来るよ うに訓練を工夫しなければならない。どの様な言 語を使用すれば患者がイメージしやすいのか,ど の場面での行為であればイメージしやすいのかな どを考えて行く。今行っているのが訓練であり, 対象となっているのがどの行為だったのかを自覚 することをセラピストと患者に求められている。 Ⅲ.おわりに  今後リハビリテーションが発展していく為に は,研究領域での発展だけでは足りず,臨床現場 における進化が必要である。その為には,① EBM, ②症例報告に加え,③患者の意識経験の貯蓄が重 要になると考えられる。  発症や受傷した後,その身体でまたその脳で何 を経験し,何を思ってきたのか。リハビリテーショ ンはその患者に何を経験としてもたらしたのか。 この部分をセラピストは知らなければ,患者のも つポテンシャルを最大限引き出すことは難しい。  今まで改善が難しいと思われてきた症状を今後 改善していく為には…  大きく改善出来るセラピストと出来ないセラピ ストの差は何なのか…  リハビリの持つ可能性はまだまだあると思って いる。意外とセラピスト人生は短い。全力で走れ るうちに走っておこう。

(5)

神経現象学リハビリテーション研究 No.5

Abstract

What Should be Observed in Training?

Shota KARASAWA

Rehabilitation begins with information collection by a therapist or a physiotherapist. Of course, basic information such as diagnostic imaging and medical history is crucial, but information obtained through interacting with patients is especially important. Among them, most of them are collected through observation and evaluation in clinical practice, and the accuracy physio/therapists have acquired through training plays an important role in the ability. What is the purpose of this ability: observation and evaluation, and what kind of approach works well? Also, where are the limits (drawbacks) of observation and evaluation and how dependable is it? Regarding the task of unraveling patients’ conditions, this study based on evidences analyzes the method of observation and evaluation that emphasizes patients’ conscious experiences.

Key words: 認知神経リハビリテーション(cognitive neurorehabilitation),オートポイエーシス

(autopoiesis),神経現象学(neurophenomenology),システムアプローチ(system approach),強度(intensity) 要旨:認知神経リハビリテーションの理論構想は「差異の認識」「認知過程の活性化」「プロ フィール評価」「情報の構築」「世界に意味を与える」「三項関係」などの主要概念によって構 成されており,行為間比較への展開においては,「比較・関連付け」といった認知機能が追加 されている。認知神経リハの現状として,これらの各概念の関係性や機能的役割は十分な定式 化が成されていない。認知神経リハの理論構想には,行為のシステム論であるオートポイエー シスの概念が導入されており,神経現象学としての認知神経リハの確立には,オートポイエー シスの概念を中心とした体系化が必要となる。本稿では行為間比較の自験例を介して,オート ポイエーシスの概念を中心とした認知神経リハの理論構想の再定式化を試みる。

認知神経リハビリテーションの理論構想における各主要概念の体系化の試み

―行為間比較により改善を認めた慢性期脳卒中患者の自験例を介して―

村部義哉

【はじめに】  認知神経リハビリテーション(以下:認知神経 リハ)の理論構想は,「差異の認識」「認知過程の 活性化」「プロフィール評価」「情報の構築」「世 界に意味を与える」「三項関係」などの主要概念 によって構成されており,近年の行為間比較への 展開においては,「比較・関連付け」といった新 たな概念が提示されている。しかし,現在の認知 神経リハの理論構想では,各概念の具体的説明や 関係性,およびその活用方法は十分には体系化さ れておらず,認知神経リハの理論構想の論理的展 開には,各概念の統合を可能とする上位概念を用 いて,再定式化する必要性が高い。  認知神経リハの理論構想が神経現象学と親和性 の高いものである以上,各概念の統合には,神経 現象学の上位概念としての設定が有効となる可能 性がある。神経現象学は,チリの認知科学者 F・ ヴァレラによって提唱された学問分野であり,主 体の経験を現象学と神経科学の双方の視点から分 析するものである。  神経現象学が提唱されたのは 20世紀末であり, この時期は認知科学・脳科学などの研究成果が隆 盛を極めるとともに,我が国に認知神経リハが導 入された時期でもある。こうした風潮も相俟っ て,神経現象学としての認知神経リハは,その理 論構想の神経科学的側面が過剰に重視された体系 化が推進されるとともに,各主要概念は自然科学 的な概念を中心として解釈されるか,抽象的概念 として放置されることとなった。認知神経リハの 創始者であるC・ペルフェッティを中心とするイ タリアの研究グループが,こうした形態での理論 展開の限界を明言したにも関わらず,我が国では 依然として認知神経リハの自然科学的な展開が主 流となっている。

参照

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