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Vol.64 , No.2(2016)094赤塚 祐道「『請来目録』と密教経軌との関係 : 天野山金剛寺聖教を中心に」

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(1)

The Japanese Association of Indian and Buddhist Studies

NII-Electronic Library Service 『

         

N工 工一Electronlc  Llbrary  SerVlce

The  Japanese  Assoclatlon  of  工ndlan  and  Buddhlst St二udles

は じ め に   空

( 七 七 四 − 八 三 五 ) の 『 請 来 目 録 』 成 立 の

景 に は 『

元 録 』 巻 第 十 五 が あ っ た こ と を

認 す る こ と が で き る 。 す な わ ち 長 安 西 明

の 円

次 ぐ

教 経 典 の 翻

事 業 に 対 応 す る た め 貞 元 十 六 年 ( 八 〇 〇 ) に 『

』 三 十 巻 を 編

し 、 密 教 や 三 階 教 を 新 入 し 一 切 経 目 録 を

成 さ せ た 。 そ の 四 年

の 延

二 十 三

( 八 〇 四 ) に 空

は 入

し 密

し 、 「 貞 元 録 』 に

め る 密 教 経 典 を 日 本 に

え る こ と に な っ た の で

る 。   後 に こ れ ら の

典 は 請 来 経 と し て

づ け ら れ る よ

に な る 。 と く に 真 言 の 寺 院 に お い て は こ れ ら の 経 典 を

え て き た 形 跡 が 残 っ て い る 。 天 野 山 金 剛

( 大 阪 府 河 内 長 野 市 ) に も 一

の 規 則

を も っ て 書 写 さ れ た で

典 群 が

在 す る 。 こ れ ま で こ れ ら の 経 典 が 請 来 経 で

る と の 推 測 の も と 調 査 を 進 め て い た が 、 金 剛

の 学 侶 に よ っ て

来 経 と し て 分 類 さ れ て い る こ と が わ か っ た 。 印 度 學 佛 教 學 研 究 第 六 十 四 巻 第 二 号   平 成 二 十 八 年 三 月 一

 

』 と 『

』   奈 良 時 代 の

は 、 唐 の 智 昇 ( 六 五 八 − 七 四 〇 ) が 開 元 十 八 年 ( 七 三 〇 ) に

し た 『 開 元

録 』 二 十

に 基 づ く も の で あ っ た 。 『 開 元 録 』 編

時 、 唐 で は 不 空 ( 七 〇 五 − 七 七 四 ) ら に よ っ て 『 金 剛 頂

』 系 経 典 を は じ め

が 次 々 と 翻 訳 さ れ た 。 一

に つ い て は 『 開 元 録 』 に

め ら れ た が 、 そ の

、 空 海 が

と し た 時 期 と

な る よ う に 、 不 空 に よ っ て

々 と 翻 訳 が

め ら れ た 。 そ こ で 長

西

の 円 照 ( 七 二 八 頃

八 〇 九 頃 ) は

典 の

業 に 対 応 す る た め

元 十 六 年 に 『

元 録 』 三 十 巻 を 編 纂 す る 。   円 照 の 『 貞 元

』 が 完 成 し て 間

な く の 延 暦 二 十 三

( 八 〇 四 ) に 空 海 は 唐 に

る 。 そ し て 『 請 来 目 録 』 に 、                                 准 レ 勅 二 留 二 住 ス 西 明 寺 ノ 永 忠 和 尚 ノ 故 院. 〜 と あ る よ

に 入 唐

忠 ( 七 四 三 − 八 = ハ ) が 止

し た 西 明

二 三 一 

547

 一

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The  Japanese  Assoclatlon  of  工ndlan  and  Buddhlst St二udles

『 請 来 目 録 』 と 密 教 経 軌 と の 関 係 ( 赤   塚 ) に 空

す る こ と に な る 。 『 請 来 目 録 』 の 中 に 『 貞 元 録 」 の 名 が 見 え 、 そ の 影

を 見 る こ と が で き る 。   『 請 来 目

』 の 経 典 ・

軌 に つ い て 、 『

元 録 』

十 五 と 比 較 す る と 、 そ の 配 列 は 『 貞 元 録 』 を も と に 『 請 来 録 』 が 成 り 立 っ て い る こ と が わ か る 。 た だ し 『 請 来 目 録 』 に は 「 已 下 未 載

元 目 録 」 と あ る よ う に 、 参

に し な が ら も

載 の 経

を 連 ね た の が 『 請

目 録 』 で あ っ た 。 空 海 は ま ず 『

元 録 』

第 十 五 と 同 じ

裁 を 整 え る こ と で 、

教 の 輸 入 を

え た と 思 わ れ る 。 二

 

  『

来 目 録 』 に よ っ て わ が 国 に 伝 え ら れ た

典 は 、 そ の 後 「

」 と し て 書 写 さ れ て い く 。 金 剛

に は こ れ ら 請 来

と 思 わ れ る 一 群 が 存 在 す る 。 こ れ ら の

 

平 安 時 代 院 政 期 の 写 本 で あ る こ と 、

 

密 教 経 典 お よ び

の 写 本 で あ る こ と が 特 徴 で あ る 。 す な わ ち 空 海 の 『 請 来 目 録 』 に よ っ て

来 経 と し て 整 え ら れ た も の と

え ら れ る 。   す な わ ち 長 和 二 年 二 〇 一 三 ) の 年 記 を 持 つ 『 聖 迦 据

子 行 法 私 記 』 を 始 め と し 『 大 聖 観 自 在

薩 心

言 瑜 伽 観 行 儀 軌 』 の ほ か 、

記 を

つ も の が 三 十 五 点 ほ ど 存

す る 。 た だ し 金

は 阿

( 一 一 三 六 − 一 二 〇 七 ) に よ

て ら れ た

で あ る の で 、 年 代 的 に こ れ ら は

外 で 書 写 さ れ た 可

性 が

い 。 そ も そ も 金 剛

に 関 す る

書 が な い 。 次 の 問 題 点 と 二 四 し て は 長 和 二

か ら 承

七 五 ) と い う 時 代 の

が あ り 、 経 典 が 一 時 に 書 写 さ れ た も の で な い こ と を 意

す る 。   次 に 問 題 と な る の は 形 態 で あ る 。 こ れ ら の

軌 は 巻 子 で は な く

形 粘 葉 装 の 形 態 を と る 。

通 、 一 切 経 と し て 整 備 さ れ る 経 典 は 巻 子 と し て 書 写 さ れ る 。 さ ら に は す べ て が 同 じ 法 量 で は な く

つ 大 小 の 違 い が あ る 。

姿

も 異 な る 。 こ

し た 問 題 か ら 推 測 す る と 院 政 期 と い う 時

の 経

で は あ る が 、 揃 っ て

写 さ れ た も の で は な い こ と が わ か る 。   そ の 他 、

代 は 明 記 さ れ て い な い も の の 字 姿 お よ び

な ど か ら 判 断 す る 限 り 、 院 政

の も の と 考 え ら れ る

が 三 十 点 ほ ど

在 し て い る 。   こ れ ら の 経 典 は 密 教 寺 院 と し て 金 剛 寺 が 整 備 さ れ る 中 で 、 ま ず 聖 教 の 根 本 と な る 請 来 経 を 整 え よ

と し た も の か 、 あ る い は あ る 時 期 に 古 い 儀 軌 を ま と め て

え た も の で あ る の か そ の 伝 来 は わ か ら な い が ど の よ

な 目 的 で こ れ ら の

が 整 え ら れ た の か を 知 る 一 つ の 判

材 料 と し て 、 次 節 で 述 べ る

恵 の 『 新 請 来

』 と の 関

が 考

ら れ る 。 三

 

っ て   金

に は

恵 ( =

1

一 三 六 四 ) の 書 写 に よ る 『

来 録 』 ( 覗 函

12

番 ) が あ る 。 空

の 『 請 来 目 録 』 の 写 本 で あ る 。 金 剛

本 の

書 は

の と お り 。 一

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一 N工 工一Electronlc  Llbrary  

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写 本 云   建 治 三 年 卸 七 月 廿 八 日 於 金 剛 峯 寺 信 芸 書                                   ぬ       は お むロ サ       正 中 二 年 砒 九 月 廿 三 日 亥 尅 終 於 河 州 天 野 寺 北 谷 文 殊 院 以 摺 写 本 書   写 了                                   金 剛 仏 子 禅 恵

計 二   正 平 十 八 年 孵 九 月 廿 九 日 於 天 野 金 剛 寺 無 量 寿 院 加 一 見 畢                                                                                             学 頭 法 印 禅 恵 八 十 歳   す な わ ち

治 三 年 ( 一 二 七 七 ) に 開 版 さ れ た 信 芸 本 い わ ゆ る 高 野

を 、 正 中 二 年 ( 一 三 二 五 ) に 金 剛

無 量 寿 院 に お い て

恵 が

写 し た も の で 、 正

十 八

( 二 二 六 三 ) に 一

を 加 え た と あ る 。   『

本 弘 法

』 の カ ナ

に つ い て は 正 平 七 年 ( 一 三 五 二 ) の 醍 醐

本 を 用 い て 編 纂 し て い る が 、 こ の

書 写 本 と も 近 い 。 禅 恵

そ し て

本 以 前 に 信 芸

が あ り 、 信 芸 本 あ る い は 仮 名 付 き の

本 に よ

、 醍 醐

本 や 金

本 の よ う な 仮

せ ら れ る よ う に な っ た と

え ら れ る 。   禅 恵 の 『 新 請

』 は 禅 恵 に よ り 書

さ れ た こ と に 特 徴 が あ る 。 禅 恵 が 「 請

目 録 』 を 書 写 し た

に は 請 来 経 の 整 備 を 考 え て い た と 考 え る こ と が で き よ う 。 こ の よ

に 考 え る の も 禅 恵 自 筆・ の 経 軌 、 そ し て 伝 領 本 の 中 に も 経 軌 が

ま れ て い る か ら で あ る 。 禅 恵 が 『 請 来 目 録 』

写 に あ た り

蔵 の 存 欠 を 確 認 し て い た 可

書 き か ら 判 断 で き る こ と か ら 、 禅 恵 の 時

に は あ る

の 経 典 が 金 剛 寺 に 伝 わ っ て い た こ と が 『 請 来 目 録 』 と 密 教 経 軌 と の 関 係 ( 赤   塚 ) わ か る 。

 

て の

  こ

し た

軌 が 現

金 剛 寺 に

え ら れ る の は や は り 請

経 と し て

置 づ け ら れ て い る か ら と 考 え ら れ る 。 こ れ ら の

軌 を 金 剛

侶 が 請 来 経 と し て

理 し て き た と い

こ と を 示

資 料 が 金

に 残 っ て い る 。 ま

『 御 請 来

之 内 不 足 目 録 』 (

7

番 皿 号 ) で あ る 。 書 名 が 示 す と お り 『 請 来 目 録 』 を 基

と し て 金 剛 寺 に 伝 わ っ て い な い 経 軌 に つ い て こ れ ら を 確 認 し 目

化 し た も の で あ る 。 『 御 請 来 録 之 内 不 足 目

』 を 、 禅 恵 が 書 写 し た 『

請 来 録 』 と 比 較

る と 経 軌 の 不 足 に つ い て こ の 『 不 足 目 録 』 と 一 致 す る こ と か ら 、 『 御 請 来 録 之 内 不 足 目 録 』 は

に 所 蔵 さ れ る 請 来

の 不 足 を 示 し た 目 録 と い う こ と が わ か る 。   次 に 「 目

  新 請 来 ノ 外 」 (

17

函 鵬 号 ) な る 一 紙 が 見 つ か っ て い る 。 こ れ も や は

典 や

軌 の 目 録 で あ

「 目 録   新 請 来 ノ

」 と あ る よ

に 『

目 録 』 に

ま れ な い 目 録 と な る 。 こ こ に は 先 に あ げ た 院 政

の 経 典 や 儀 軌 の

ち 、 『

来 目 録 』 に 収 め ら れ て い な い

を 目 録 化 し て 「

請 来 ノ 外 」 と し て い る 。  

に あ

る の は 『 本

目 録 」 (

21

函 醜 番 ) で あ る 。 こ の 『 本

』 は 金 剛

に 所 蔵 さ れ る 密

軌 を 目 録 に 二 五 一

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一 N工 工一Electronlc  Llbrary  

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『 請 来 目 録 』 と 密 教 経 軌 と の 関 係 ( 赤   塚 ) し た も の で あ る が 、 所 在 が わ か ら な い も の も あ る が 『 本

目 録 』 が そ の 当 時 の 金

所 蔵 の 院 政

の 密 教 経 軌 を 整 理 し た 目 録 と い う こ と が で き る 。   以 上 の 三 点 は い ず れ も

記 を 欠 く が 江 戸

代 の も の で あ り 金

寺 内 に 所

さ れ る 密 教 経 典 を 調 べ た 記 録 と な っ て い る 。 請 来

と し て 金

寺 の 僧 侶 が こ れ ら を 意 識 し 経

理 を 行 っ て い る こ と は 興

深 い 。

と め   密 教

院 に お い て は 『 請 来 目 録 』 収 載 の 経 軌 を 所 蔵

る こ と が 必 要 で あ っ た 。 金 剛

の 場 合 も 一 切 経 と は 別 に こ れ ら の

典 を 整 え て い る 。 密 教

軌 と 『

来 目

』 と の 関 係 は 、 空 海 が 朝 廷 に

出 し た 目 録 と い う 点 、 そ し て そ れ ら が 目

の み で は な く 『 貞 元 録 』 に 新 入 さ れ た

典 を 日 本 に 伝 え た 点 に 大 き な 意 味 が あ る 。 揃 え る に つ い て 一 つ の 規 範 と な っ た の が 『

目 録 』 で あ っ た 。   以 上 の よ

に 、 「 請 来 目 録 』 に 書 か れ て い る

典 が 「

来 経 」 と

ば れ る も の で あ る 。 江 戸 時 代 に は 浄 厳 が 『 秘 密 儀

』 と し て 鉄 眼 版 よ り 選 ん で 版

し て い る の も 、 結 局 の と こ ろ

来 経 を 整 え る と い う こ と と 変 わ る も の で は な い 。

院 に 所 蔵 さ れ る

経 と 分 類 で き る 経 典 群 を

理 す る こ と で 、

空 海 が 持 っ て

っ て き た 経 典 を 復 元 す る こ と が で き る 可

を 二 六 も っ て い る 。 そ の 中 に は 『 宿 曜 経 』 の よ

に 大 正

と は

な る

統 の 経 典 が

ま れ て る こ と も 考 え ら れ る 。 さ ら に 言 え ば 日 本 の

( 一 切 経 ) と の 比 較 に よ っ て 、 こ れ ら 一 切 経 の

教 部 ( 請 来 経 部 ) に 関 し て は 請 来 経 を ベ ー ス に 成 り 立 っ て い る と い

こ と が で き る の か も し れ な い 。

1

  『 定 本 弘 法 大 師 全 集 』 第 一 巻 、 三 五 頁 。

2

  『 河 内 長 野 市 史 」 第 五 巻、 四 九 七 頁 。 〈 参 考 文 献 V 後 藤 昭 雄 編 『 金 剛 寺 経 蔵 聖 教 目 録 』 ( 平 成 二 三 〜 二 六 年 度 科 学 研 究   費 補 助 金 基 盤 研 究 (

B

) 課 題 番 号 二 三 三 二 〇 〇 五 四 研 究 成 果 報 告   書、 二 〇 一 五 ) 小 野 塚 幾 澄 「 『 御 請 来 目 録 』 の 示 す も の 」 ( 『 曲 豆 山 学 報 』 第 二 四 号 、   一 九 七 九 、 一 − 二 二 頁 ) 甲 田 宥 吽 「 『 御 請 来 目 録 』 の 書 誌 学 的 研 究 」 ( 『 高 野 山 大 学 密 教 文 化   研 究 所 紀 要 』 第 四 号   九 九 一 、 四 九 − 八 三 頁 ) 〈 キ ー ワ ー ド V   院 政 期、 請 来 経、 禅 恵 、 聖 教 ( 新 義 真 言 宗 徳 蔵 寺 住 職 ・ 博 士 ( 文 学 ) ) 一

550

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