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『経済広報』2017年7月号

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455

月刊

7

2017

◆企業広報研究

ポピュリズムの台頭と企業広報の今後

ウェーバー・シャンドウィック 会長 

ジャック・レスリー

組織変革に向けて、周年記念を活用する

~周年記念の特徴を捉え、会社を動かすには~

(株)リンクイベントプロデュース 社長 

八重樫 徹

世の中を動かす「戦略PR」、6つのルール

ブルーカレント・ジャパン(株) 社長/CEO 

本田哲也

◆メディアに聞く

深掘りした記事を増やしたい

産経新聞社 経済本部長兼経済部長 

吉田憲司

第39巻第7号通巻455号2017年7月1日発行(毎月1回1日発行) 1980年10月23日第3種郵便物認可

(2)

国内 3日 6月の消費動向調査結果(内閣府) 7日 5月の景気動向指数速報(内閣府) 10日 5月の国際収支速報(財務省)6月の景気ウォッチャー調査(内閣府) 19 ~ 20日 日銀の金融政策決定会合 20日 6月の貿易統計(財務省) 28日 6月の失業率(総務省)6月の有効求人倍率(厚生労働省) 海外 6日 6月の米雇用統計(米労働省) 14日 6月の米小売売上高(米商務省) 20日 ECB(欧州中央銀行)定例理事会(ドイツ・フランクフルト) 25 ~ 26日 FOMC(米連邦公開市場委員会)(米FRB(連邦準備制度理事会)) 26日 6月の米新築住宅販売件数(米商務省) 28日 4~6月期の米GDP(国内総生産)速報(米商務省)

7

月の動き

自転車博物館サイクルセンターは、日本の自転車産業 の発展と国民生活の向上を目指すという目的のもと作 られた、堺市にある日本唯一の自転車博物館である 1992年4月に開館した同施設は、2018年7月開業をめ どに、現在の施設から南東約700メートルの大仙公園 内に移転・新築され、現在の2 . 4 倍の広さに拡張される 写真は自転車の進化・発展史が展示されている「自転 車の歴史」コーナー 『経済広報』では、裏表紙に関連する写真・イラストを表紙に 掲載しています。

(3)

月の動き

発行/一般財団法人経済広報センター 国内広報部    東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館 TEL:03-6741-0021 印刷/三葉株式会社 TEL:03-3294-4751 ※本誌掲載の記事・写真・イラスト・図版の無断掲載を禁じます。

2017

年7月号目次

企業広報研究

ポピュリズムの台頭と企業広報の今後

ジャック・レスリー

(ウェーバー・シャンドウィック 会長)

2

組織変革に向けて、周年記念を活用する

~周年記念の特徴を捉え、会社を動かすには~

八重樫 徹

((株)リンクイベントプロデュース 社長)

4

世の中を動かす「戦略PR」、6つのルール

本田哲也

(ブルーカレント・ジャパン(株) 社長/CEO)

8

新任広報担当者が知っておくべき12の常識

~実践企業広報実務~

江良俊郎

((株)エイレックス 代表取締役/チーフ・コンサルタント)

平野日出木

((株)エイレックス 取締役副社長/チーフ・トレーナー)

11

広報の仕事が楽しくなる最初の10歩

栗田朋一

(PRアカデミー(東京/名古屋/大阪/福岡)主宰/(株)外食広報会 代表取締役)

14

メディアに聞く

深掘りした記事を増やしたい

吉田憲司

(産経新聞社 経済本部長兼経済部長)

7

統合報告書は、いま 

対話したいステークホルダーに、

長期的視点で企業の価値創造の姿を発信

KDDI(株)

17

経済広報センター活動報告

ボストン、シリコンバレーのハイテク企業と交流

~米国にミッションを派遣~

18

視点・観点

プレミアムフライデーへの取り組み1

21

コーポレートメッセージ

ほっと安心、もっと活力、きっと満足。出光の約束

出光興産(株)

24

連載 経済広報センター NEWS

22

企業広報ニュース(広報トピックス/ Book)

25

企業・団体のCSR活動((公財)シマノ・サイクル開発センター) 裏表紙 7月の動き 表紙裏

(4)

ポピュリズムの台頭

と企業広報の今後

ジャック・レスリー

ウェーバー・シャンドウィック 会長

81カ国でPR事業を展開するPRエージェンシーであるウェーバー・シャンドウィックのジャック・レス リー会長が来日した機会を捉え、5月15日に「企業広報講演会」を都内で開催した。テーマは、「世界情勢の変 革期におけるコーポレート・コミュニケーションのあり方」。42名が参加した。

時代の変化を告げた3つの選挙結果

コミュニケーションに大きく影響を与えるのが、 ナショナリズムとポピュリズムの台頭である。その 風潮の到来を告げる出来事として、最近3つの大き な選挙があった。1つは英国のEU(欧州連合)離脱 選挙。2つ目が米国大統領選挙、3つ目が仏大統領 選挙だ。いずれも、僅差の勝負となり、票が割れ た。投票結果を地理的に分析すると、その特色が見 えてくる。EU離脱選挙と米大統領選挙では、「勝 者」に票を入れた地域は比較的教育水準が低く、労 働者が多い地方が中心である。仏大統領選挙は、マ クロン大統領が66%の投票を得て、国民戦線の候 補を30%に抑え勝利した。とはいえ、国民戦線の 候補に30%も集まっていることに注目しなければ いけない。

ポピュリズムを生む貧富差の拡大

私は長年にわたり、政治分野でコンサルティング サービスを提供してきたが、全国規模の大きな選挙 を行う際に投票者の意思に大きく影響するのが、怒 りの感情であると認識している。この怒りの原因 は、富の不均衡である。現在、世界規模で、富と貧 の均衡が大きく崩れている。人口の1%が富を享受 し、残りの99%が貧困にあえいでいるという統計 もある。長く続く不景気が、この不均衡を生んだひ とつの原因かもしれない。しかし、それだけではな い。 テクノロジー化、自動化が大きく台頭してきたこ とにより、求められる働き手の人材像が大きく変 わってきたのだ。これから先20年の間に、全米の 職業における45%の仕事が自動化される可能性が あるという推計がある。米国では、自動化に伴っ て、特に自動車の労働市場が大きく変わろうとして いる。全米にトラック運転手は100万人いるといわ れる。しかし、最近の報道で、ウーバー社が自動運 転のトラック開発を行う事業会社と業務提携を行う との報道があった。この取り組みがさらに進むと、 100万人のトラック運転手が路頭に迷ってしまうか もしれない。また、アマゾン社の売り上げが、昨年 1360億ドルに到達した。この売り上げに貢献した のは、アマゾンの営業マンではなく、アルゴリズム なのだ。

ポピュリズムが企業に与える影響

ポピュリズムの台頭による企業広報への影響であ るが、怒りの感情がポピュリズムに変化することに より、怒りの矛先が組織に向けられることがあると いうことを認識してほしい。信頼が崩壊している現 在では、企業は非常に脆弱な状態になる。例えば、 離職率の高まり、株主による株式の売却、消費者に よる購買ボイコットなどが挙げられる。日米企業を 問わず、このように信頼関係が失墜している状況に 対し、コミュニケーションがより大事になってく る。この状況を改善すべく、より頻繁に、より緊密 にコミュニケーションを図っていくことを求められ

(5)

ている。 ソーシャルネットワークの活用を図ることは、企 業として怖い面もあると思う。情報が開放される と、誰かに情報をコントロールされてしまうこと もあるため、企業は恐怖を感じてしまうかもしれな い。企業には、情報をコントロールしたいという 衝動があり、日本企業には特にその傾向が強いよう に思われる。ただ、このような時代に、企業情報の 全てをコントロールしようと躍起になることは好ま しくない。もし、会社の経営陣がソーシャルネット ワークの活用や、eコマースの活用に消極的な理 由が、情報の統制を図りたいという理由であれば、 10年、20年後には、事業が成り立たなくなってし まうかもしれない。

CEOの政治的発言

トランプ政権が、TPP(環太平洋経済連携協定) からの離脱を表明して以来、アジアで大きな軋轢を 生んでいる。しかし、トランプ政権は、日米関係を 傷付けようとしているわけではない。むしろ、先の 北朝鮮のミサイル試験発射や、ペンス副大統領の来 日を踏まえると、日米関係は変わらず重要視されて いくだろう。しかし、我々は傍観していてはいけな い。私や企業広報の皆さんが、コミュニケーション の担当者として、この二国間の関係から生じ得るメ リットをきちんと伝えていくことが求められてい る。現在、特に重要なこととして、アクティビズム への対応が挙げられる。今までは、企業のリーダー も政治のリーダーと同様に、利害関係者との関係を 構築していくことへの重要性が叫ばれていたが、最 近ではこの関係に変化が見られる。 米国企業の動向に興味深いものがあった。トラン プ大統領は就任早々に、移民に関する大統領令を発 令したが、その際、各企業のCEOが、大きな声で 意見を表明したのだ。企業のトップが政治にものを 言うようになってきた。企業内では、ダイバーシ ティ(多様性)が重要視されている。このため、社 員や取引先と考えが一致するならば、政治的なこと であっても、CEOには発言することが求められて いる。ウェーバー・シャンドウィックが実施した調 査では、世界の消費者の41%が、社会問題に対し、 企業は明確なスタンスを取るべきだという結果が示 された。

日本企業が生き残るには

今までは、ブロードキャスティング型の情報共有 が行われていた。企業がメッセージを発信し、メ ディアはそれを伝えるという形である。しかし、昨 今では、エンゲージメント型といわれる双方向型の 方法が広がっている。 日本の企業が、グローバル競争の中で勝ち残って いくには、このエンゲージメント型のコミュニケー ションが大切だ。最新のテクノロジーを活用し、S NS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を 利用して、従業員やお客さまとのコミュニケーショ ンを図るという方法を、あらためて見直していかな ければならない。 日本の会社はすごいといつも感心している。世界 的な技術の進歩に貢献したのが日本企業。世界最良 といわれるようなテクノロジーで、私たちの生活を 変えてくれた。ブランディングに関しても、豊富な 知識と経験を持っている。だから欧米でもよく浸透 した。ブランディングというのは、顧客が求める品 質や製品・サービスに、きちんと応えていくこと。 それには、コミュニケーションとマーケティングの 要素が必要だ。日本企業は、マーケティングを得意 としていて、性能の高い製品を作ることに秀でてい た。 しかし、世界中のオフィスには大きなコンピュー ター端末が置かれているにもかかわらず、素晴らし い製品を作っている日本のオフィスには最新のハー ドウェアはあまり置かれていない。日本はイノベー ターとしてはすごく優れている一方で、アダプター としては、なぜこんなにも最新テクノロジーの導入 が遅いのだろうと、常に不思議に思っていた。今 後、日本企業には、新しいテクノロジーを早期に採 用する気概が必要だ。 今年初めてデジタル広告への投資額がテレビ広告 への投資額を上回ったという結果が出た。これから 2、3年の間に、このデジタル広告への投資拡大は 世界の至るところで起こるだろう。今後企業がグ ローバル化の中で生き残っていくには、最新テクノ ロジーの採用、SNSの採用と、エンゲージメント 型コミュニケーションというスタイルに適用できる かどうかが重要となる。  k (文責:国内広報部主任研究員 遠藤瞭太)

企業広報研究

(6)

組織変革に向けて、

周年記念を活用する

~周年記念の特徴を捉え、会社を動かすには~

八 重 樫 徹

(やえがし・とおる)

(株)リンクイベントプロデュース 社長

組織変革のニーズが増加

今、組織開発、ひいては組織変革がこれまで以上 に大事になってきているといわれています。それ は、事業環境と労働環境の2つの環境変化から見る ことができます。事業環境では、商品の短サイクル 化や競争優位のソフト化が進み、変化の激しい外部 環境に適応することが難しくなっていること。一 方、労働環境では、ワークモチベーションの多様化 や人材の流動化が進み、組織を束ねることに力を割 かなくてはならなくなったこと。つまり、組織とし て外部環境変化に対応していく必要性が高まってお り、画一的なマネジメントではなく、多様化に適応 したマネジメントによって組織の労働環境を改善し ていくことが求められているのです。しかしなが ら、多くの企業はこのような背景から組織変革を目 指すものの、結局「いつやるの?」「いつまでにやる の?」というタイミングを決め切れず、その結果、 変革に及ばないケースが散見されます。これは、組 織変革が一朝一夕に実現できる容易なものではな く、会社全体を巻き込む大きなパワーが必要だから です。 そんな中、周年記念の機会を活用して変革を推進 する事例が増えてきました。

なぜ組織変革に周年記念が最適なのか?

~周年記念の特徴~

なぜ周年記念が組織変革をする上で良いのでしょ うか。それは、周年記念が持つ特徴にポイントがあ ります。 ①誰もが「会社」のお祝いとして注目する 「周年」=会社のお祝いごと、これは誰もが思うこ とです。ヒトの誕生日に対して「おめでとう」という ように、会社の誕生日である「周年」はその事実を明 らかにすれば社内外問わず、「おめでとう」とお祝い される機会です。これだけ誰もがネガティブになる ことのないことは、他にありません。その観点か ら、組織変革に必要な社内外のパワーを結集させや すい機会ともいえます。 ②テーマとして「自社のアイデンティティやDNA」 「会社の価値」をあらためて扱いやすい 周年記念のタイミングは、創業から現在までの歴 史を振り返り、自分たちが大事にしてきた考え方や こだわりをあらためて確認する取り組みを違和感な くできる機会です。つまり、あらためて会社のDN Aや価値といった、大切にしていることをテーマと して扱いやすいタイミングといえます。社歴やバッ クグラウンドが多様なメンバーを抱える中、今後の 方向性を提示する上で、会社に対するメンバーの認 識をそろえ、目線を合わせることは、組織変革をし ていく上で不可欠です。 ③通常の時間観から脱し、視界を大きく広げること ができる 創業からこれまでの期間を振り返ることができる ということは、それと同じ時間だけ未来にも目を向 けやすくなります。例えば50周年の企業であれば、 「次の50年」に向けた長期ビジョンを描く機会にも なり、日常の時間観では思いが及ばない長期の目線 でこれからの会社を目指す姿を考える機会にもなり ます。社員が日ごろ考える時間観は長くても3~5 年。組織を大きく変革する上では現状のパラダイム は大敵です。その観点から、関係者の時間観を大き

(7)

Copyright © by Link Event Produce Inc. All rights reserved. 組織の複雑性 組織成果・個の モチベーション 行きすぎた組織の分化 ・多様化・精緻化は、 全体成果と個々人の モチベーションを下げる 分化 多様化 精緻化 +の効果 -の効果 (注1)NextageとはNext stageを表現した造語です く変えることのできる「周年」の機会は、組織変革に は絶好の機会といえます。 ④周年を迎える企業は、それなりの歴史があるから こそ組織的な障害もある 「周年」を迎えるということは、それなりの歴史を 積み重ねてきた証拠です。人間も年を重ねるごとに 折り重なる味が出てきますが、残念ながら身体に何 かしらの変化が生まれることが多くあります。組織 も歴史を重ねることで伝統と文化が積み重なります が、それなりのメンテナンスをしないと組織として の障害も発生してくるのが常。つまり、組織とし て、まさに変革を求めているタイミングなのです。 多くは、効率性を求めた組織の拡大に伴う組織の内 部での階層、役割の分化によるものです。もちろん ポジティブな面もありますが、分化や多様化の行き 過ぎによる個々の視界の低下、効力感や参画感、存 在意義の薄れによるモチベーションの低下が発生 し、障害が生じるという組織の宿命があります。本 件は前述②のように、自社の原点や理念、ビジョ ン、価値によってあらためて組織を捉え直すことが 必要になるわけですが、この「周年」のタイミングは 組織変革として最適といえます。

組織変革を実現する周年事業を

どう設計するのか?

では、組織変革に繋げる周年記念は、どのように 設計すればよいのでしょうか。ポイントは3つあり ます。 ■1つ目は周年事業のゴールを設定すること 周年記念をきっかけに様々な施策が計画されま す。その中で、お客さまから弊社へよく相談される のは、「計画された多くの施策をどう決めたらよいの か」ということです。どう選ぶ? どう進める? ど こまでやる?なぜやる?本当にやる?などの質問 が社内で発生し、決断できずにいるというケースが 多くあります。なぜこのようになってしまうのか。 その要因のひとつは、「組織成果を上げるために行う 組織変革を周年事業としてどう行うのか」という目 的が、いつの間にか「周年事業を失敗することなく どう行うのか」にすり替わってしまっていることに あると考えます。周年事業の「ゴール設定」をせずに 進めてしまうためです。この周年記念をきっかけに 何を実現したいのか、何を優先したいのか、という 設定なくして、数多くの施策の中で優先順位を決め ることができないのです。 では、どのようにゴールを設定すればよいので しょうか。私たちは周年記念の特徴を生かしな がら、そのゴール設定の観点の頭文字を取って 「LINK」で整理しています。 【Linkage】(社外からも注目されることを生かし) 「顧客」や「市場」から期待されることを確認する 【Integration】分化した社内が一体となる 【Nextage(注1)】長期的「未来」への変革に向けて挑戦 の兆しを感じる 【KeepUp】創業から今ここに至るまで変わらず継承 していきたい自組織の「DNA」や「らしさ」を確認す 貴社の理念、ビジョン実現に向けて、周年の1年 間、どこを強化する期間にするべきでしょうか。上 記観点のどこに重点を置くのか、特に貴社らしい周 年、貴社らしい変革を実現するには、具体的にはど のような言葉で編集すれば伝わるようになるので しょうか。それによって取り組む施策も変わりま す。 例えばある企業においては、変革のために今必要 なことは、数々の修羅場を乗り越えてきた自分たち のDNAを再度確認し、今の仕事とひも付けること だとし、「(自社の理念)のスタートラインにつく」こ とをゴールに置いていました。またある企業では、 分化している組織を一体にする必要があったことか ら【Integration】を打ち出し、「Restart~経営が創る から皆で創る●●社」と掲げ、そこに合わせた施策 を展開しています。社員のどんな状態を変革したい のか整理し、ゴールを設定することをお勧めしま す。

企業広報研究

(8)

■2つ目は変革推進チームの発足と育成 組織変革を実現させていくためには、変革の機運 を伝播させ組織風土として繋げていくことです。そ のためには、経営陣のみが頑張る、特定の組織や部 署の方だけが注力する……という状態では、全社に 対して組織変革に向けた温度感を伝播するのに時間 がかかる可能性が高くなります。組織全体を巻き込 むためには、経営陣、バックオフィスメンバー以外 に、現場のメンバーで温度感の高いチームをつく り、その上で施策を実行していくことが肝になりま す。ポスター、ウェブ、映像などのツールを駆使 することは大事なことですが、結局人に影響を与 え、人の行動を変えさせるのは「人」です。中核とな る「人メディア」を育て、各ツールを使いながら周囲 のメンバーを仲間にするよう働き掛けをしていくこ とを強くお勧めします。周年ということで、職場で のある程度発言権もありながら未来を創っていける 「次世代リーダークラス」に焦点を当てる企業は多い かと思います。 ■3つ目は全社員を組織変革に巻き込むストーリー を設計すること 行動経済学の第一人者で、2002年にノーベル経 済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが唱えてい る通り、人間は「完全合理的な経済人」ではなく、「限 定合理的な感情人」です。完全に合理的に物事を判 断することばかりではなく、時に好き嫌いという感 情で判断することもある生き物だということです。 例えば、自分の担当業務を役割以上に頑張り、その 結果、1万円のインセンティブをもらう機会があっ たとしても、職場の上司や同僚が自分の頑張りを認 めてくれ、賞賛してくれることの方が嬉しいという 人もいるでしょう。これは、まさに「感情人」として 判断している証拠です。そんな感情人である私たち は、同時に頭で分かっていてもなかなか行動でき ないということがよく起こります。これは 感情人が持つ「バイアス」=一定の偏りがも たらすものといわれています。どんなに新 たなやり方が優れていても、今までのやり 方に固執してしまう「現状維持バイアス」や、 遠くの理想的な目標よりも目先の目標を優 先してしまう「近視眼バイアス」が顕著な例 です。その観点から、様々な価値観や思い を持つ社員を巻き込みながら組織変革を実現するた めには、人間の特徴を踏まえた丁寧なステップを追 う「ストーリー」の設計が必要であると考えます。そ のステップとは、「Unfreeze(解凍)」⇒「Change(変 化)」⇒「Refreeze(再凍結)」の3つといわれていま す(注2)。肝は「Change」から入るのではなく、まず 「Unfreeze」させること。人は上記の理由から「変わ れ!」と言われてもなかなか変わることのできない 宿命を持ちます。ましてや「会社の周年だから変わ ろう!」と言われても、「正直、自分には何の関係も ない……」と言われて終わるのがオチです。まずは、 「なぜこの周年記念の機会に組織変革をしていきた いのか」「一人ひとり(あなた)にとってのメリット は?/それに取り組まないことでもたらされるデメ リットは?」といった視点を入れることが何よりも 大事になります。要は視界を広げ、テーマと各人を 接続させることになります。各社のゴールを実現し ていくために、ただやみくもに施策を実施するので はなく、「魅力的なお披露目を行う」「推進メンバーを 中心に実行させる(LINKの観点によって異なる)」、 そして「次の●年に向けてスタート位置につく」と いったステップを設定し、そこに合わせて施策を検 討していくことが重要なのです。一見遠回りのよう ですが、一つひとつ手順を踏むことが結果的には近 道だといえます。 組織変革の実現には、会社全体を巻き込む大きな パワーが必要です。そして、そのパワーを集めるこ とができる代表的なタイミングが周年記念です。こ れまでご紹介した周年の特徴や組織の宿命を踏まえ て、組織変革に繋げる絶好の機会として積極的に活 用いただければ幸いです。 k

Copyright © by Link Event Produce Inc. All rights reserved.

ビジョン

外部との「接続」 DNAの「継承」 内部の「統合」 未来への「変革」 Nextage Keep up Linkage Integration 創業 (注2) 社会心理学 クルト・レヴィン「態度変容の3ステッ プ」より

(9)

メディアに聞く

■産経新聞の経済報道体制は。 吉田 産経新聞社は本部制をとっていて、経済本部 の中に産経本紙の経済部長と、『フジサンケイ ビジ ネスアイ』の編集長がいる。ビジネスアイの発行元 は産経新聞社でなく、子会社の日本工業新聞社であ る。経済記者はデスクを含め約50名いるが、産経 本紙とビジネスアイの両紙に記事を書いている。産 経新聞社と日本工業新聞社は別の組織で、営業や管 理部門はそれぞれにあるが、記者は共通という体制 になっている。このため現場の記者は両紙に書くの で大変である。 ■記者の配置は。二紙にウェブも加わるが、記者は どのように書き分けているのか。 吉田 財務省、総務省などといった官庁をはじめ、 日銀、東商、自動車、貿易など、民間のクラブに満 遍なく配置している。現場の記者は、産経本紙、ビ ジネスアイ、ネット対応をする必要があり、昔より も格段に忙しくなっている。例えば、産経本紙に掲 載されない記事でもビジネスアイの要求に応えて書 かなければならないし、ネットへの独自記事も求め られている。裏を返せば、記者にとっては活躍の フィールドが広いといえる。記者教育という面で も、量を求められているので筆力は上がっていく。 ■記者に望むことは。 吉田 スクープ記事を狙うのはもちろんだが、内容 を深掘りした記事を書いてほしいと思っている。本 格的なネット時代を迎えて、新聞には以前にも増し て、その出来事の背景や裏話などを含めた読み応え のある記事が求められるようになっている。それに は人脈づくりが大切だ。 ■産経本紙とビジネスアイ両紙のそれぞれの特徴 は。 吉田 産経本紙の経済面で「検証エコノミー」という 深掘りした記事を掲載する不定期連載を始めた。あ の出来事は今どうなったのか、その出来事の背景に は何があるのか、といったことを追求する企画だ。 産経本紙では日々のニュースを追うのはもちろん、 深掘りした記事を増やしていきたい。 一方、ビジネスアイは経済本部が作っている面、 ブルームバーグの翻訳記事を掲載している面があ り、表裏でダブルトップの形になっている。中国・ アジアに特化した面も設けており、非常に国際色豊 かな新聞だ。 ■吉田本部長は社会部、経済部を経験されている が、両部のスタンスなどの違いをどう思うか。 吉田 いずれも足で稼ぐという記者の基本は同じ だ。事件取材も企業の合併取材も対象が違うだけ で、取材手法になんら変わりはない。ただ当然のこ とだが、企業取材を主とする経済部の方が企業広報 との関係は密接になる。 ■最も印象に残っている取材は。 吉田 社会部時代は検察担当として夜討ち朝駆けに 明け暮れたゼネコン汚職事件や二信組事件、金融機 関を舞台にした総会屋利益供与事件などが印象に 残っている。経済部では、なんと言っても日銀担当 時代の金融再編。銀行や損保が相次いで統合し、多 くの生保が経営破綻した。そして金融庁記者として 竹中平蔵金融相を担当していたときのりそな銀行へ の公的資金注入や金融再生プログラム。全般的に金 融ものが多い。 ■企業広報に望むことは。 吉田 要望を言ったら切りがない。企業広報に一番 大事なのは、迅速で正確な対応でしょう。それが正 しい報道に繋がる。そのためには、記者といかに人 間関係を築くかが大事だと思う。  k (聞き手:常務理事・国内広報部長 佐桑 徹)

深掘りした記事を増やしたい

吉田憲司

(よしだ・けんじ) 産経新聞社 経済本部長兼経済部長 (よしだ・けんじ)1989年、産経新聞社入社。前橋支局、社 会部、経済部などを経て、2008年に『フジサンケイ ビジネ スアイ』編集長。その後、Web編集長、東北総局長、2016 年に経済部長。2017年4月より現職。

(10)

世の中を動かす「戦略PR」、

6つのルール

本 田 哲 也

(ほんだ・てつや)

ブルーカレント・ジャパン(株) 社長/CEO

聞き手:佐桑 徹 経済広報センター 常務理事・国内広報部長

本田さんは、2009年に『戦略PR』、2014年に『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきら めなさい。』(共著)を出版。このたび、『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』を上梓された。

ソーシャルメディアがもたらした変化

■今回の著書発行に至った経緯は何か。 本田 最初の本の初版は2009年で、今からちょう ど8年前。8年もたつと、広報PRを取り巻く環境 も様変わりした。最も大きな変化は、2010 ~ 2011 年のソーシャルメディアの普及だ。そのため再度、 イチから戦略PRというものを世に問うタイミング と思い、出版した。 ■時代によって変化した部分と、変わらない部分が あると思うが。 本田 戦略PRには、社会の関心に目をつけて、そ れをいかに「料理」していくかという発想が大事であ る。社会の変化に伴い、HOWの部分が変わった。 つまり、ソーシャルメディアの登場で、PRに大事 な世の中の関心事が細分化され、それが表出化して きている。そこで、抜本的にPRの考えを改めなけ ればいけなくなった。 ■新しい6つの法則とあるが、以前と比較し、加 わったものは何か。 本田 「おおやけ」「ばったり」「おすみつき」の3つの 法則は、前著にも記しているが、8年を経て、これ らも現代的に解釈し直した。全く新しいのは、「そも そも」「しみじみ」「かけてとく」の3つ。新しい法則 が生まれたきっかけは、最初に提唱していた3つの 法則では網羅し切れないPRの成功例が出てきたこ とだ。

法則1「おおやけ」

■1つ目の「おおやけ」とは、何か。 本田 公共性とか社会性のことであり、PRにとっ て最も重要な要素。商品のことばかり主張するので はなく、それが社会にどう貢献できるかという要素 が重要であると述べた。当時に比べて、企業やブラ ンドを社会への貢献という視点で見る目が、ますま す厳しくなってきている。今回の著書で、「有言実 行」と述べているように、社会を深く洞察し、多層 な社会や課題を捉える視点だけでなく、それに対す るソリューションが明確に提示され、さらに、それ が有効性を持ったものか、という視点もより重要に なってきた。 「おおやけ」に関して、もうひとつ現代的な解釈を し直したのが、ビッグデータについてだ。ビッグ データの本質は、たくさんの人の声であるというこ と。ビッグデータは、PRで一番重要な「おおやけ」 を捉えるのに活用できる。ビッグデータと広報との 繋がりは、まだまだ希薄であるが、今後新たなPR テクノロジーという領域に繋がっていくのではない だろうか。

法則2「ばったり」

■2つ目の「ばったり」とは、何か。 本田 「ばったり」は、ソーシャルメディアの登場に より、大きく意味合いが変わった部分。ソーシャル メディアが普及したことによって、情報の流通が変 わってきた。キュレーションメディアや、いわゆる BuzzFeedのような分散型メディアといった、一つ ひとつのコンテンツをソーシャルメディアの海の中 に放り込むというやり方が登場した。これは、人を 集めてPV(アクセスしたページの総数)を稼ぐとい うより、面白い情報を投稿して、その情報に人が集 まるという、抜本的に考えの違うメディアである。

(11)

これにより、「ばったり」出合わせやすくなった半面、 競争率も上がるので、コンテンツの作り方を積極的 に考えなければならない。いかに「ばったり度」を上 げるかが大事である。 例 と し て は、 野 良 犬 や 捨 て ら れ た 犬(Shelter Dog)の里親探しを行うNPO団体であるSPCA (SocietyforthePreventionofCrueltytoAnimals) が展開した、「ドライビング・ドッグ」というキャン ペーン。単に、犬を飼ってくださいという動画を流 すのではなく、犬が車を運転する動画を作成した。 車を運転するほど、ShelterDogは賢いという風刺 も効いて、世界中で「ばったり」(情報接触の偶然性) を起こした。動画は数多くのシェアを生み、世界中 に拡散し、ShelterDogの里親になりたい人が急増 した。

法則3「おすみつき」

■3つ目、「おすみつき」は何か。 本田 「おすみつき」は、信頼の確保のこと。いわゆ るインフルエンサーの活用についてである。イン フルエンサーは、ここ10年間でだいぶ多様化した。 ソーシャルメディアが増えるにつれ、ツイッター、 インスタグラマー、ユーチューバーなど、影響力を 持つ人たちのバリエーションが増えた。一方で、医 者、有識者、専門家といった、旧来のインフルエン サーも依然として重要であることに変わりはない。 私はインフルエンサーを2種類に分けた。事実系 のインフルエンサーと共感系のインフルエンサーで ある。前者は、華やかさに欠けるが、信頼の「おす みつき」を与える人。後者は、セレブ、インスタグ ラマー、ユーチューバーといった、共感を生む人た ち。広報の目的を考えたときに、それぞれのインフ ルエンサーの特徴を捉え、的確に当て込んでいくこ とを考えなくてはいけない。 日本企業の課題は、共感系インフルエンサーをど う使っていくかである。まずは、企業側と一般人側 のそれぞれのリテラシーを上げていかなければなら ない。昨今のステマ議論に繋がるが、金銭や物品の 授受そのものが問題ではなく、それによって発言を コントロールしているのかどうかが本質であり、そ の本質を捉えていないからこそ、日本企業が共感系 インフルエンサーを活用することに尻込みしている という現状がある。 例えば、ユーチューバーに、商品に関する動画の 制作費を払い、発言を自由に任せることで、ファン に商品を認知させていくことは、立派なPR戦略の ひとつであると考えている。

法則4「そもそも」

■4つ目の「そもそも」は何か。 本田 「そもそも」とは、普遍性のこと。斬新さで驚 かせたり、際どいことで話題を振りまくPRもある が、普遍的で変わらない価値を大事にすることで、 支持が集まるものがある。ものすごく普遍的だが、 世の中に埋もれている価値観を提示することによ り、共感や共鳴が広がることもある。 「そもそも」をニューメディアで発信すると、特に 効果がある。オールドメディアの新聞が「そもそも」 を社説で言っても、新規性が全くないが、ソーシャ ルメディアやソーシャルメディアでの発信力が強い 人を介し、「そもそも」論のメッセージを訴える方法 は効果的である。 成功例としては、ヘアケア製品や化粧品、衛生用 品を扱っているP&Gが、生理用品ブランドとして 世界的に展開している「オールウェイズ(Always)」 で行った「ライク・ア・ガール(#LikeAGirl)」とい うキャンペーンである。子どものとき、女性は「女 性らしさ」を求められないが、10歳くらいになると、 世間が「女性らしく」振る舞うことを求めることは、 社会的な価値観の押し付けではないかという疑問 を、PRに取り入れたところ賞賛を受けた。世間に 潜在化している疑問を表出させることが、PRとし ての重要な要素のひとつであるという表れである。

法則5「しみじみ」

■5つ目、「しみじみ」とは何か。 本田 「しみじみ」とは、当事者性を醸成するような ストーリーテリングを展開し、感情に訴え掛けるこ とである。広告領域は、「しみじみ」(感情に訴える) が得意であるが、企業広報は、感情に訴えることが 苦手のように思う。しかし、だからこそ企業広報の 分野が「しみじみ」をうまく使う可能性が、非常に大 きく広がっている。 成功例としては、スウェーデンのスーパーマー ケットCoopの、「TheOrganicEffect」というキャン ペーン。ある家族が2週間、徹底的にオーガニック フードを食べ、毎日検査を行う。すると、見るから に体内の残留物が減っていくという、シンプルなP Rである。本来、もっと多くの母数で実験するのが 普通であるが、それでは「しみじみ」がなくなってし

企業広報研究

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まう。この例は、ひと家族だからこそ、見ている人 も、その家族に感情移入してしまい、もっとオーガ ニックフードを食べた方がよいかもとの感情を煽ら れる。ネットの動画などを活用し、感情に訴えPR することは、現在の企業広報の弱点でもあるが、今 後はますます重要となろう。 昨今マーケティング広報とコーポレート広報のす み分けは、あまり意味をなさなくなってきた。企業 のファンになってもらうことも、商品を買ってもら うことも、感情に訴えることが重要なのは同じであ る。企業広報においても、ストーリーテリングの重 要性がだいぶ認知されてきたが、ストーリーテリン グこそ、「しみじみ」の最たるものである。それがで きている企業とそうでない企業との差が生じてきて いる。信頼度と好感度は違うということを、早く認 識すべきである。「しみじみ」から企業広報が学ぶべ き点は多いのではないだろうか。

法則6「かけてとく」

■6つ目、「かけてとく」とは何か。 本田 「かけてとく」というのは、とんちや機知性の ことだ。ここ3、4年くらいの海外のPRを見てい て実感するのが、非常にウイットに富んだPRをし ている点だ。世の中の流れや、社会のある事件など で、ざわついた状態のときに、ユーモアがあり、し かもスピーディーに行っているものが、賞賛され、 好感を持たれている。 例としては、BurgerKingの「ProudWhopper(プ ラウドワッパー)」(イベント期間限定のハンバー ガー)がある。LGBT(女性同性愛者(Lesbian)、 男性同性愛者(Gay)、両性愛者(Bisexual)、トラン スジェンダー(Transgender)の各語の頭文字をとっ た表現)が集まるお店で、「ProudWhopper」という 商品を販売し始めた。その見た目は、虹色の紙で包 まれた派手なハンバーガーなのだが、中身のこと は、店員も一切教えてくれない。そして包みを開け ると、「誰でも中身は一緒」というメッセージが包装 紙に書かれている。つまり、見た目は異なっていて も、中身は普通のハンバーガーと全く変わらないと いうことだ。これが、賞賛と感動を生み、世界中に シェアされた。同社のLGBTへの取り組みや考え を、機知を発揮し、見事に伝えた例といえる。 しかし、ユーモアの効いた宣伝というのは、一歩 間違えると「炎上」に繋がる。だから、日本では避け られがちである。そんな現状を踏まえ、私は、これ を今回あえて6つのルールに加えた。欧米に比べ、 保守主義的なところが日本にはあるが、こうした手 法も積極的に仕掛けていってほしい。

広報の目的は「行動変容」

■日本の広報戦略に足りないものは、何か。 本田 一番言いたかったのは、今後世界と繋がる機 会がますます多くなる日本の企業にとって、効果的 なPRができていないこと、経営層が広報戦略を理 解していないことが、足かせになってしまうという ことだ。日本の企業活動や商品は、クオリティは高 いが、それを伝える工夫がまだまだ甘い。今回の著 書を世に出した後に、PR戦略を組織全体がもっと 理解し、ビジネスに積極的に活用すべきである、と いう反応があった。こう した反応があるというこ とは、広報は情報発信戦 略であり、それによって 解決できる問題がたくさ んあることに気付いてい ない人が多いということ だ。広報の効果測定に関 しては、様々な議論がな されているが、本当の効 果は、人の行動を変える こと、つまり、ビヘイビアチェンジ(行動変容)であ る。広報活動には、大きな可能性が秘められてい て、そのことをもっと啓発していく必要がある。6 つの法則は、あくまでPR戦略を整理したひとつの 体系的なものであり、情報を発信するときのチェッ クリストのようなものとして役立てていただければ 幸いである。 k (文責:国内広報部主任研究員 遠藤瞭太) (ほんだ・てつや) 1970年生まれ。戦略PRプランナー。「世界でもっとも影響 力のあるPRプロフェッショナル300人」に『㏚Week』誌に よって選出された日本を代表するPR専門家。1999年、世 界最大規模のPR会社フライシュマン・ヒラードの日本法 人に入社。2006年、ブルーカレント・ジャパンを設立し代 表に就任。『戦略PR』(アスキー新書)、『広告やメディアで 人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』(田端信 太郎氏との共著、ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)な どの著作、国内外での講演実績多数。2015年よりJリーグ マーケティング委員。2015年の「PRWeek Awards」にて「PR Professional of the Year」を受賞。「カンヌライオンズ2017」 PR部門審査員。

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新任広報担当者が

知っておくべき12の常識

~実践企業広報実務~

 

江 良 俊 郎

(えら・としろう)

(株)エイレックス 

代表取締役/チーフ・コンサルタント

平 野 日 出 木

(ひらの・ひでき)

(株)エイレックス 

取締役副社長/チーフ・トレーナー

経済広報センターは5月10日、「企業広報講座」を経団連会館で開催した。当センターは新任広報担当者を 対象とする同講座を毎年、東京で7回、大阪で4回、名古屋で3回開催しているが、今回は東京での第1回 講座である。企業広報・危機管理コンサルティング会社であるエイレックスの江良俊郎代表取締役と平野日 出木取締役副社長が、広報部門の役割やメディアリレーションのポイントなど「新任広報担当者が知っておく べき12の常識」について講演した。参加者は約100名。両氏による講演概要は以下の通り。

広報担当者の役割

そもそも広報とは何か。パブリックリレーショ ンズとは、一体なんのことなのだろうか。著名 な“EffectivePublicRelations”(カトリップ、セン ター、ブルーム著)によると、「パブリックリレー ションズとは、組織体とその存在を左右するパブ リックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構 築し、維持するマネージメント」とある。日本語の 「広報」とはニュアンスがやや異なる。 こうした定義を念頭に置きつつ、広報担当者であ るからには、まず、自社の広報部門の目的は何かを 確認しておいてほしい。明確でない場合は、広報担 当役員や広報部長も交え、話し合っておいていただ きたい。かつては経済広報センターの調査でも「マス コミ記者との良好な関係を築く」といった項目が上 位にきていたが、これからの広報活動の目的を考え る上で極めて重要な視点を幾つか紹介する。 ・ コーポレートレピュテーション、企業ブランド価 値の向上 ・ 経営理念・経営方針をターゲット層に理解しても らうこと ・ 社会との対話、理解共感の獲得 ・ 危機対応 ・ 社内コミュニケーション、の視点である。 (常識1「自社の広報活動の目的、目標、戦略を持 つ」)

メディアリレーションのポイント

マーケティング広報の世界ではデジタルのOwned Media(後述)全盛であるが、企業広報が主の広報活 動では、マスコミ(EarnedMedia、後述)対応が業 務の中心かもしれない。そこで今日は、メディアリ レーションの基本を解説する。新聞記者15年の経 験(平野)から言うと、記者の仕事は、いかに熱心に 取材してもそのプロセスは評価されず、最終的には 結果で判断されてしまう。その「結果」とは3点。紙 面上の扱いが大きいか小さいか。他媒体より早く記 事化できたか。独自ネタか、である。リリースをそ のまま書いただけでは、全く評価されない。多くの 他媒体に載っているのに自社媒体のみ載らなかった 話題は、“特オチ”と呼ばれ、記者の担当替えに発展 江良俊郎氏 平野日出木氏

企業広報研究

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する場合すらある。こうしたプレッシャーに記者は 常時さらされている。 スクープを取りたい記者心理からすると、経営 トップとの関係はもちろん大事だが、同時に、広報 担当者とも親しい関係を築き、協力を得たいと考え ている。なぜならスクープ内容について他紙から真 偽の問い合わせがあったとき、肯定してもらいたい からだ。広報の側からすれば「仁義を切らずに勝手 に記事を書けば否定しますよ」とプレッシャーをか けることで、記者の動きを相当程度コントロールで きる。実際そうやって掲載時期をコントロールして いる企業は少なくない。(常識2「『スクープ』への執 念と『トクオチ』の恐怖」) 商品に関するリリースは、宣伝色が前面に出ない ようにすることが重要である。企業を取材する記者 は本能的に、広告宣伝は絶対に書きたくない。従っ て宣伝色の強いリリースは、単純に記事化すると広 告になってしまう懸念を彼らは感じ、忌避しがち だ。社会的な意義を強調するなどして、極力、宣伝 色を薄めるように努めてほしい。(常識3「リリース は、ヘッドラインと第1パラグラフ(リード)で勝負 する」) 新聞社の編集局には経済部だけではなく、政治 部、社会部などの他、写真部、地方部、校閲部、世 論調査部、航空部、配信部などがある。ニュース素 材の内容次第では、経済部ではなく、生活情報部や 解説部など隣接部が関心を示す場合もある。記者は 本社ではなく、記者クラブや取材センターにいるこ とも多いので、物理的にどこにいるかを確認してお くことが大切だ。(常識4「経済部記者は本社にいな い場合が多い」) メディアからの問い合わせに対しては、①リリー ス発表前にあらかじめ、記者からの想定質問と回答 例を作成しておく、②リリース発表後は、必ず問い 合わせに出られるようにする、③窓口は一本化し、 社内でたらい回しをしない、④広報で分からない場 合、すぐに現場部門に確認する、⑤記者は時間に追 われているので、クイックレスポンスを心掛ける。 (常識5「記者からの電話には、とにかくクイックレ スポンス」) 記者が聞く典型的な質問は、「これって、どれぐら いインパクトがある話ですか?」(業界やユーザーへ の影響の大小)、「なぜ今この時期に導入するのです か?」(動機・理由・タイムリー性の深掘り)、「同じ 目的のために、これまで他にどんな策を取ってきた のですか?」(これまでの経緯。他社の策との差異性 の有無)などだ。 取材の事前準備と当日の対応は、①取材の申し込 み時は、取材の目的、企画意図をよく聞くこと、② 記者の要望と自社でできることを、よく調整するこ と、③Q&A、伝えたいメッセージ、サポート資料 を用意する、④取材対象者や現場と事前に十分に打 ち合わせる、⑤取材時は広報スタッフが同席、協力 する、といったことに注意する必要がある。(常識6 「できない取材の約束は、メディアが最も嫌う」) 記者も知り合いの広報からきたリリースは読む確 率が高く、記事が書かれやすいという面はある。記 者とは長期的な関係を視野に入れて、人間関係を構 築してほしい。とりわけ、トップに直結している広 報担当者は重宝される。記者の要求を理解し、社内 調整し、多くの情報開示をしてくれる人が信頼され る。また、自社だけでなく、業界全体・関連市場に ついて知識と分析力があることが望ましい。(常識7 「記者との信頼関係が正確な記事につながる」) 一方、①対応が遅い、②知識不足、情報不足、③ 「企業の都合」ばかり押し付けてくる、④都合の悪い ことをひた隠しにする、⑤トップの協力を得ること ができない──広報パーソンはメディアに嫌われる ことを知っておきたい。

記者に会う時

記者にコンタクトする際には、①忙しい時間帯は 避ける、②事前に紙面を研究しておく、③担当の記 者に直接アプローチする、④自社だけでなく、業界 全体の動向も把握しておく、⑤他紙のことを話さな い、といったことに注意する必要がある。(常識8 「初めての記者への接触は書いた記事を読んでから 行く」)

リリース作成のポイント

リリースは記事にならなくとも、のちのち記者に とってその企業の公式情報として重宝される。 リリース作成の際のポイントとしては、紙の上部 にある重要要素から、そのまま下方に向かって、疑 問なく流れるように書いていくことが重要。「逆三角 形に」としばしばいわれる通り、見出しは1行目に 最も言いたい文言を入れるべき。リリースの文章を 読んでいる途中でつまずくと、そこで記者は読むの をやめる。だから文章は途中で疑問を抱かせない流 れになっていることが重要。ポイントを明記して、

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記者に提示してやるような書き方が良い。逆に、あ いまいな表現、大げさな表現、宣伝臭は嫌われる。

危機管理・緊急事態対応について

危機管理の第一歩は、自社リスクを想定しておく こと。業種によっても起こり得る危機の種類は異な る。危機の際は、初期対応やメディア対応の失敗が 危機を拡大させる。広報担当者は、レピュテーショ ンへの影響を最小限にするよう、様々な準備に努め ること。(常識9「危機管理と緊急事態対応のための 準備」) 報道が長引けばダメージも大きく、レピュテー ションはマイナス圏だ。企業活動に重大な影響を与 える。経済的損失や人的損失よりも、レピュテー ションの損失が怖いのだ。早期の発見、初期段階で マネージメントへの報告と対応を行うこと。危機を コントロールできるのは、多くの場合最初の段階の みだからである。 緊急事態の際、広報担当者がやるべきことは、ま ず情報収集と分析、つまり積極的な事実関係の確認 が必要だ。「何も言えない」にしても、事実を知らな くては回答できない。そして、その事実がどういう 事態に発展するかを予測し、トップに対して進言し ておく。公表すべきか、どのタイミングで誰をス ポークスパーソンとして会見するのか、謝罪するな ら誰に対してか。一方で、緊急会見では「トップ出 席が条件」、というわけではない。有力企業のトッ プが出て会見することは、それだけで大ニュースと して扱われてしまう点にも注意しておきたい。「トッ プは収束時の会見で──」そういう判断も広報が行 わなければいけない。(常識10「緊急事態の際に広 報がやるべきこと」) 緊急会見開催の基準は、一言でいえば、「社会的な 影響が大きい場合」となるが、お客さまの安全・安 心に関わる場合や、企業・組織の倫理が問われ見解 を出す必要がある場合などは必須である。この他、 コメントを出したり、会見を検討したりする場面は 少なくない。広報担当者は感度を磨いておきたい。 ここでも他社の事例は役に立つと思う。 さて、不祥事発覚後は、経緯と共にその問題に対 して会社はどういうスタンスなのかを決めて、文字 に落とす。これをポジションペーパーというが、そ れを基に、Q&Aを作成し質問に備える。危機対応 の現場では最も重要な業務である。

広報の効果測定

「マスメディアへの露出状況」「ネットメディアへ の露出状況」「広告費換算」「リリース本数や記者発表 など情報発信の回数」などを行っている企業が多い が、これらの複数の指標を併せて用いることをお 勧めしたい。(常識11「広報効果の測定はできるの か? 広報活動のKPIは?」)

メディアと広報活動の

最新トレンドについて

マーケティング広報分野では、既にネットメディ アやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サー ビス)など、デジタルでの施策が重視されている。 今後、企業広報もその方向が強まっていくことは明 らかである。 広報活動を戦略的に実施する上で、ここ数年日本 ではトリプルメディアの概念が浸透してきた。トリ プルメディアとは、EarnedMedia(いわゆるメディ アリレーションズとソーシャルメディア)、Paid Media(広告)、OwnedMedia(自社)の3つだが、最 近米国では、EarnedMediaからSocialMediaを分離 して、SharedMediaというひとつのカテゴリーと して位置付ける、PESO(Paid、Earned、Shared、 Owned)モデルと呼ばれる考え方がスタンダードで ある。 従来、広報は広告活動を担当すべきでない、とさ れた。自社メディアといえば社内報、SNSはブラ ンド担当者の仕事であった。しかし、今後企業広 報分野でもOwnedメディアを核に、Paid、Earned、 Sharedを統合的に結んだ戦略が必要になるだろう。 広報は、強みである「社会の視点で有益な情報」に加 工して、ストーリーを語ることがより重要になって きている。商品のスペックの話ではなく、企業や商 品がいかに社会問題を解決し貢献しているかを語る ことも大事だ。日本では、新聞をはじめマスメディ アへの信頼性が圧倒的に高く、米国とは単純に比較 できないが、グローバル企業の広報担当者は、非常 に細かく細分化されたターゲット層それぞれにアプ ローチして、対応していかなければならなくなる。 SNSを含め、ターゲットとの接点で、ストーリー や仕掛けを至るところに置いておく時代がくるだろ う。(常識12「企業広報のトレンド」) k (文責:国内広報部主任研究員 遠藤瞭太)

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広報の仕事が楽しく

なる最初の10歩

栗 田 朋 一

(くりた・ともかず)

PRアカデミー(東京/名古屋/大阪/福岡)主宰

(株)外食広報会 代表取締役

経済広報センターは5月18日、「企業広報講座」を大阪市内で開催した。大阪会場第1回の今回は、PRア カデミー(東京/名古屋/大阪/福岡)を主宰する栗田朋一氏が「広報の仕事が楽しくなる最初の10歩~広報 担当になったらまず何をやるべきか~」をテーマに講演を行った。参加者は、大阪を中心とする西日本の会員 企業の広報担当者約40名。

はじめに

広報の世界は「不平等」であり、「不公平」である。 つまり、会社の規模、知名度によってメディアに記 事を取り上げてもらいやすかったり、大きなアピー ルをしなくても記者に興味を持ってもらえたりす る。そうした「不平等」「不公平」をどう克服していく かが広報担当者の腕の見せどころである。中小企業 やベンチャー企業であっても、「広報の力」次第でグ ローバルな大手企業に勝てるのである。

第1歩 自社を把握すること

広報活動は、「企業の活動や商品・サービスを、メ ディアを通じて消費者に伝える」ことによって、「売 り上げのアップ」「アクセス数の増加」「評価・評判の 向上」を目指すための経済行為である。従って、企 業の活動や商品・サービスを知る、つまり「自社を 把握する」ところが広報担当者としての第1歩とな る。そのためには、3つのことが重要である。① 「事業部の会議に出る(今、社内ではどんなことに 取り組み、何が課題なのかを把握する)」、②「社員 と飲みにいく(社員から本音、ナマの情報を引き出 す)」、③「社長のことを深く知る」。 中でも、③の「社長のことを深く知る」ことは最も 重要である。社長の経歴や人となり、事業の失敗エ ピソードは、メディアにとって非常に価値のある情 報であり、特に苦労話はネタになりやすい。

第2歩 メディアを知る

ターゲットとなるメディアを深く知るために、3 つのことが重要である。1番目が「新聞を読み比べ る」ことである。多くの新聞を比べて読むことで、 新聞ごとに論調や視点が違っていることが分かる。 従って、どういう人が読んでいるのか属性や特徴が 分かってくる。2番目に「テレビ欄を暗記する」こと だ。少なくとも自社の商品・サービスが取り上げて もらえそうなニュース・報道、経済、情報番組にお いて、その番組がどんな時間帯で、どんな内容なの かを把握することが大切である。メディアから問い 合わせがきた際に、その番組内容や特性を知ってい ることで担当者に対する話し方も変わってくる。3 番目に「自社が取り上げられる欄やコーナーを探す」 ことである。自分の会社のこの商品・サービスな ら、この番組で取り上げられやすい、このコーナー なら紹介してくれるだろうという仮説を立てること でメディアへの理解を深められる。

第3歩 広報計画を立てる

広報計画にはいろいろな立案方法があるが、私 が推奨するのは「3・3・3の法則」である。「大目

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(回答受付期間) 2020年 11月 25日(水)~2021年 1月

(出典)5G AMERICAS WHITE PAPER「TRANSITION TOWARD OPEN & INTEROPERABLE NETWORKS NOV 2020」、各種報道情報 14..

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  中川翔太 (経済学科 4 年生) ・昼間雅貴 (経済学科 4 年生) ・鈴木友香 (経済 学科 4 年生) ・野口佳純 (経済学科 4 年生)

特に LUNA 、教学 Web

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

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