保 全生態 学 研 究(Japan ese Journa’of Conservation Ect’logソ丿vr〃 (12’
51・
6i(2002丿〈
記
事
〉
個
体 数
が
減 少
し た オ
ガ
サ
ワ ラ
オ オ
コウ
モ
リ
保 全
の
た
め
の
緊
急 提
言
稲葉 慎
’
1・
高
槻 成
紀
’
2・
上
田
恵 介
゜
3・
伊
澤 雅 子
巾
4・
鈴 木 創
寧1・
堀 越 和 夫
’
1’
1 小 笠原 自然
文化
研究所
〒100−2101
東京都
小 笠 原村
父島字
宮 之 浜 道’
2東 京 大 学 総 合 研 究 博 物 館 〒113−0033
東 京 都 文 京 区 本 郷7−3−1
’
3立 教 大学
理学部
生命
理学科
〒 171−
8901東京
都 豊島
区西池袋 3−34−
1’
4琉 球 大 学 理 学 部 進 化・
生 態 学 講 座〒903
−0213
沖 縄 県中頭 郡西 原 町字
千原1
An
urgent apPealfor
conservation ofthe
Bonin
flying
fox
,
Pteropus
pselaphon
Layard ,
an endangered speciesMakoto
lnaba
”,
Seiki
Takatsuki
’
2,
Keisuke
Ued
ゴ3
,
Masako
Izawa
’
4,Haj
{meSuzuki
’
1&Kazuo
Horikosi
”
’
11nstitute of Boninology,
Miyanohamamichi,
Chichi−
jima
,
Ogasawara,
Tokyo,
100−
2101,
Japan
拿
2The University Museum,
The University ofTokyo,
7−3−
1 Hongo,
Bunkye.
Tokyo,
113−
0033,
Japan
’
3LaboratoryofAnimal
Ecology,
College
ofScience,
Rikkyo
University,3−24−
INishi−ikebukuro
,
Toshima,
Tokyo , 170
・
8901, 亅apan
’
4Laboratory ofEcology
andSystematics
,
Faculty
ofScience,
Unlversjty
ofIheRyukyus,
Nishihara
,
Okinawa
,
903−
0213,
亅apan 要旨:小 笠原諸 島に 生息する オガサ ワ ラ オ オコ ウモ リの うち,
父島 個体群の 生息数は近 年 150 頭 前 後で ほ ぼ安 定し て い た が,2001
年頃か ら急 速に減 少 し て お り,
保 全対 策を緊急に実 施する必 要がある,
オガサ ワ ラ オ オ コ ウモ リ は果 実食で現 在で は栽 培 植 物に大 き く依 存 し,
ま たエ コ ツー
リ ズム の 対 象と な りつ つ あるなど,
本 種 を め ぐる自 然 環境・
社会環 境は複 雑で あ る た め,
問 題 点 を整 理し,
保 全策の 提 言を お こ なっ た.
1
オ
ガ サ
ワ ラ
オ オ
コウ
モ
リ
の
現 況
と提 言
の
背
景
小 笠 原 諸
島
の動植物
は種
数が少
な く,
その ほ とん ど を固有 種
が占
め てい る (小 野1994
).
これ は小 笠 原が大洋
島で ある た めである (Carlquist
.
1974
;伊
藤1994
).一
般に大
洋 島の 生態系
は人 間 の影
響 や 移 入 種の 侵 入に対 して 脆 弱で あ り,
ハ ワイ諸島
で は多
くの動植物
が絶滅
した.小
笠原で もオガサ ワ ラ ガ ビチ ョ ウ Turdus terre
.
gtrisKittlitz
, オガサワ ラマ シ コChaunoproctus
ferreorDstris
(Vigors
),
オ ガ サワ ラ カ ラ ス バ トCoiumba
versicolorKittlitz
などの鳥 類 が 絶 滅 し た.
現 代に お い て もコ バ ノ トベ ラ Pittosporum parv ヴfolium
Hayata ,
ムニ ン ッ ッジRhododendron
boninense
Nakai ,
ムニ ン ノボ タ ンMelastoma
保≦≦}生
.
苞与学 研究 v‘丿1,
72002 あ り,
絶 滅 回 避の懸 命の努 力が おこ な わ れて い る (岩 槻・
下 園 】989
).
その一
方で,
移入種
の ア カギBisch
〔oLfia y’
avanicaBl
.
(清 水1988
)とギン ネムLeucaena leucocephala (Lam
.
)de・Wit は島 本 来の生 態
系
に 猛威 とい っ て よい ほ どの 強い 影 響 を 与え 続 けてお り (吉田
・
岡2001
), ノヤ ギCapra
hircus
Linnaeus
に よる植生 へ の深 刻 な 悪 影 響 も続い て い る (日本 野生生 物 研 究セ ン タ
ー 1992
).
同様
に クマ ネ ズミRattus
rattusLinnaeus
, ネコ
Felis
catus ・
Linnaeus
な どの哺 乳 類に よ る在 来の 動 物 種へ の影 響 も
懸
念 さ れ てい る.
こ の よ うな生
態 系
の 中にあっ て,
オガ サ ワ ラオ オコ ウモリ
Pteropus
pselaphon
Layard
(以下 オオコ ウ モ リ )は小 笠原
諸 島
唯一
の 固有哺
乳類
で ある.
オ オコ ウモ リは1969
年 に 国の 天然
記 念物
に指 定1
さ れ, 環 境 省 「レ ッ ド デー
タブ ッ ク」で は 絶 滅 危 惧 種IA
〔CR
)に ラ ン クされてい る,
本 種 は現在,
父 島 列 島の 父 島,
母 島 列 島の 母 島と,
こ こ か ら約200km
南に位 置 する火 山 列 島の北 硫 黄島,南硫黄
島にの み分布
し て い る.
個体
群は父 島 の ものが最大
で ある と考
えら れ るが ,他 島
で の 生息
数 に つ い て は不 明 な 点 が 多い.
母 島で は1970
年代
初頭に100
頭以 上 見 ら れ た個体
群 が (蓮尾
】969
),
近年
で は最 大3
頭 程 度 し か見 ら れず,
絶 滅に近い 状 態にある (稲 葉 1999).
北 硫黄 島
で は2001 年に予備 的な観察
が お こ なわ れ , 20 頭以 上の個 体 が 確 認 され たが (稲 葉2001
),
その詳
細 は不 明で ある.
南 硫 黄島
で は 1982年
の調
査で 100 頭 程 度 と推 定 さ れ た が (石 井1983
),
現 況は不 明 である.
父
島
個体
群は,
小 笠 原 諸 島が 日本に返 還 され た直後
の1970 年
頃に は多
数の生息
が住 民に よ り 確 認 さ れてい た が,
その後は 目撃
が 少 な く な り,1980 年
代に は一
時は絶 滅か と思われてい た.
実際
は少数
が 生息
してい た ようだ が, こ の 間の調 査が お こな わ れ てい ない た め,
当時
の 生息数
は 判 ら ない,
そ の後 1990
年に5
個体
程 度 (佐 藤1987
), 1995年
に75
頭が数え ら れ (金 子1995),
1998 年か ら2000 年
にか け ての稲葉
らの セ ン サス に より, 生息
数は130−150
頭と推 定さ れ た (稲 葉 199g ).
2001
年 (1
回 〉と2002
年 (10
回 )の カ ウ ン トの 結 果, 生息
数は大幅
に減少
して65−80
頭 と 推 定 され た (稲 葉 ら未
発表
).
上記の生
息数
は 「飛 翔カウ ン ト」
に よっ て推定
し た もの で ある.
父島
の オ オコ ウモ リ の個体数
は,夕刻,
ね ぐ ら (roost }と呼ばれる山 林 内の 樹木樹
冠か ら餌
場に飛
び立つ とこ ろ を見 通 しの よ い 複 数定 点
で カ ウ ン トする こ と に よ り,
か な り高
い精度
で推定
が 可能
である.
推定
個体
数は,
飛 翔時
間・
方向
な ど か ら 重 複 を 排 除 して割 り出 し た もの で ある.
図 1に は こ の推 定 個 体 数の推 移を 示 した.
こ の結 果,1998
年か ら2000
年まで個 体 数はや や増 加 して い た が,2002 年
だけが その3
年 よ り も 有 意 に減 少 してい るこ とが 示 され た (分散
分 析 に よ る個 体数
変動
で有意
差があっ たの は1998
年と2002 年 [
p
=0,
0079 ],1999 年
と2002
年 uo ・。 6。 釦 確 認 個 体 数 20 olgge 199920co20C12002 年 図 1.
父 島にお ける オ ガ サ ワラ オ オコ ウモ リの セ ンサ ス結 果の年変 化.
誤 差バー
は標 準 誤 差.
2001
年は調 査 を1
回 し か お こ な わ なかっ た.
ecEA
生,
聾学研 究 v‘}’.
72002[
p
=0.
0002 ],2000
年と2002
年[
p
=0.
0002
]
).
2002 年
(あ るい は2001 年
にすで に起 きてい た可 能 性 もある)の 減 少の 原 因は不 明である が, こ の急
速な個体数
減少
は きわ めて危 険な徴 候 とい え る.後
述 するよ うに,
現在
, 父島
個体
群を とりま く状
況に は多
くの問 題があ り, こ の ま ま 減 少 傾向
が続け ば,
絶 滅の危 険 も否 定でき
ない.
こ の た め個 体 数 減少
を くい 止め,
回 復 させ るた めの 緊急
な保 全対 策
が 必 要であ る,
2
オ オ
コウ
モ リ の
生 態 と
保 全
の
た
め の
問
題
点
2
.
1
生 態学
的 知 見オ オコ ウモ リ類は洞
窟
や樹 洞を利 用せ ず,
日 中はね ぐ らで休息
する.
オ ガ サ ワ ラ オ オコ ウモ リも 同 様で ある.
父 島の 場 合, とくに冬 期に父 島 中 央 部の一
地 域に集 中し て大 き な ね ぐらを 形 成 するが,
そ れ 以 外の 時 期は 父島 全 域に分 散 し て 小さ な ね ぐ らを 形成
する (稲
葉1999).
この特性
は 集 中的
な調
査 を可能
に し,
総 個体
数な ど を 把 握 しゃすい という調
査上 の 利点
が ある が,
一
方 で,
ね ぐら が破 壊 的な変 化を受
けた り,
伝 染 病が 蔓 延 する など,危
険が集 中し やすい とい う,保
全 上 望 ましく ない 面 も ある.実
際オー
ス ト ラ リ ア の メガネオ オコ ウ モ リP .
conspici 〃atusGould
で はマ ダニ の
一
iig
Jxodes
holocyctus
Neuwmann に媒 介 され る病 気 に よる死 亡 率が非 常に高い こ とが 知 ら れてい る(
Hall
&Richard
2000 ).
し か し,
ね ぐ ら形 成の季 節 変 化 要 因,
ね ぐら と し て選ば れ る 場 所の地形 的,植
生的特性
な どは不明
である.
食 性は あ る程 度あ き ら かに なっ てい る (稲 葉・
小 守1999
).
果実 食
で,餌
と し て50
種以 上の植
物の果 実, 花,
葉を利 用 して い る.
注 目 され るの は餌種
の うち80
%以上 が帰化 種
や栽 培 種
で あ り, 在 来 植 物の利 用 頻 度は低い 点である.
これ は 父 島で は自 然 植生で あ る森 林があ ま り残っ てい ない こ と,
野生の果実
よ りも栽培
果樹
の ほう
が 栄 養 価が高い こと な どに よっ て オ オコ ウモ リ が 本来
の食性
を 変 化さ せ た た め と考
えら れ る.
こ の こ と は,
後 述 する農 業 被 害 問 題と も 関 係 して い る.
また他の オ オコ ウ モ リ類 と比 較 する と葉 食 率 が 高い とい う傾 向がある (稲 葉・
小 守 1999 ).
こ れ が,
本 来その よ う な食
性 を もつ た め なのか,
利 用で きる果 実が制 限 され,
葉食
を強い ら れて い る の か はあ き らかで ない.
1999 年
以 来の 電波発 信 機の 装着
と夜間観察
な ど に よ り,
完全 な夜行性
で あ るこ と,
行動
圏は ほ ぼ父島
全 域 に わ た り,
一
晩
の う ちに複数
の餌 場
を利 用す るこ と,
な どの 知 見が得 ら れ た(
阿部ら1994
;稲葉
・
小守 1999
;東京都
小 笠 原支庁 2001
).
し か し行 動 圏 内にね ぐ らや餌 場, その ほ かの 生活
上 必 要 な資 源
が どの よ うに配 置され, 実 際 に どの よ うに利 用 さ れてい るの かは不 明で ある.
ところ で コ ウモ リ は飛 翔 す る
哺
乳 類で あ り,
餌
場や ね ぐら間 を 空中移動
する こ と で,
地上生 哺 乳 類と 比較
して は るか に広い 空 間を利用 で き る.
こ の た め,
生息
地が断 片 化 して も生 活上必 要 な要素
が存 在
す る 限 り存 続
で きる可能
性 が あ る.
この知見
は保
全に とっ て も 重 要である.
移 動 に関 して の も うひ とつ 重 要 な 問 題 は父 島 以外の個 体 群 との 関 係で ある.
母島
列 島と は50
km
,火 山 列 島と は200
km
以上 も へ だ た っ てお り , 遺伝
的に異な る集 団で ある 可能 性が ある が, 今
の と こ ろ研 究は お こ な わ れ てい ない,
2 .2
移入種 (外 来 種 )の影 響大
洋 島
で あ る 小 笠原 諸 島に生息
す る オ オ コ ウ モ リに とっ て,移
入 種の存在
は大 き
な脅威
であ保 全 生
.
態学研 究 レ‘丿1.
72002バ ン ジロ ウ(キバ ン ジロ ウ)
Psidium
iittoraie
Raddi
cv.
Lucidu
,n Degener な ど は逸
出して野生状態
に近 い 状 態で 生 育 してお り, 食 糧 供 給 とい う 点で プ ラ ス の働 きを してい る とする見 方 も ある が,
固有
の 生態 系
を維持
し,
保全
す る という視 点
か ら望
ましい 状態
で は ない.
近
年 ,
小 笠 原で はノ ラネコ , ノネコ が増 え, 分布
域 を拡大
し てい る.
オ オコ ウモ リ は高
さlm
ほ どの 樹木
の上 や まれ に 地 面で も 摂食行
動 を とる ことがあ
る た め,
ネコ が オ オコ ウモ リを捕 食
す る危 険 性 が ある.
実 際,2001
年 にその よ う な 事 例 が確 認さ れ た(
稲 葉未
発表
).
な お沖 縄の オ リ イ オ オコ ウモ リP .dasyma
〃usinopinatus
Kuroda
ではす
で に イヌCanis
famiiiaris
Linnaeus,
あるい は ネコ に よ る捕
食
の事 例が確 認 さ れて い る (大 島ら1995).
ま たオ オコ ウモ リの 主
要
な餌 種
の多
くが クマ ネズ ミと共 通 して お り,
タ コ ノ キPandanus
boninens
is
Warburg ,モ モ タマ ナTerminalia
eatappaL
, テ リハ ボクCatophyUum
inophyllum
L .
,
ガ ジュマ ル
,
シマ グ ワMorus australis Poir.
,
キミ ノバ ン ジ ロ ウ の 果 実,
オガ サ ワ ラ ビ ロ ウLivistona
chinensis var
.
boninens
isBecc .
の花,
その他バ ナ ナや
柑
橘 類 な どの栽
培 果 実 を食
べ る (稲 葉 未 発表
).
した がっ て,
もし な ん らか の 理由
で ネズ ミ の 個 体 数 が 増 加 し た 場 合には両 者の あい だで競
争 が 起 こ り,個 体
群 維持
にマ イナス の影響
が お よぶ可 能 性 が ある,
2
.
3
農
業 被害
問 題オ オコ ウモ リ
類
は世 界の多
くの 生息
地で農
業被害
を引
き起 こ し てい る (Rainey
&Pierson
l992
:Peake
et ai.
1996
).
父島
では オ オコ ウモ リ が果実
を食
べ た り爪で 傷つ けるこ とに よ る被 害 が発
生 し てい る.
バ ナ ナ,柑橘類 ,
その他の熱帯
果樹 ,
お よ び そ れ らの葉などへ の食害率
は高
く,
柑
橘 類 は一
晩
で ほ とん ど全滅
する こ と も ある (稲 葉らig99
).
オ オコ ウモ リの ほ か に,
ノヤ ギ,
クマ ネ ズ ミ,
オ ガ サ ワ ラ ヒ ヨ ド リHypsipetes
amaurotis squam
iceps
(Kittlitz
), メ ジ ロ Zosterops/aponica
Temminck
&Schlege
]な ど も加
害 するので , その 防 止の ため に防 鳥 ネッ ト等 が 広 く使 用 さ れ てい る
.
し か し
,
防鳥
ネッ トに は オ オコ ウモ リが か ら まっ て 死亡す る という
問 題点
が ある.
1996−2002
年の 間に筆 者 ら が知 り得た だけで も31
頭の オ オ コ ウ モ リが こ の事 故
にあっ て い た.
こ のう
ち3
頭 は発 見 時に 死 亡 してお り,
生存
して い た個 体は救
出 し た が,放置
して お け ば死亡 して い た だ ろ う (図2
).
ま た,
他の原 因で農 園で 死 亡 し た個 体 も3
頭い た (表
D
.
この ほ か農園外
で は自然
状態
で 発見
さ れ た 死体
が2
頭,捕獲
中の事故
が1
頭,
不 明 が1
頭 あっ た.
他に も農家
で は い くつ かの 防 除 方法
をとっ て い る た め,
オ オコ ウモ リへ の影響
が懸
念 さ れ る.
これ に対
し て,今
の ところ行
政 に よ る食 害 対策,
補 償,
あるい は既 存の対
策 方 式へ の 指 導 な どは お こな われ てい ない.一
方,父 島の 図2.
ネッ トに か らまっ た オ ガサ ワラ オ オコ ウモ リ.
右 翼 (写 真 右 側)にネッ トがか らまっ てい る.
撮 影,
稲 葉.
保≦含生
、
馨「学 研 究 γρ’.
72002 表 1.
確 認 され たオ オコ ウモ リの事 故 内 訳.
事 故 内 容 死 亡生
存 計
防 除 ネッ トへ の絡 ま り 餌付
け 飼 育 ネコ による捕食
不 明計
311110 80008
2
2
13
43
オ オコ ウモ リ は栽 培種 ・
帰 化種
に大 き く依存
し てい るため,食害対策
が徹底
さ れ れば,特定
の時
期には深 刻 な餌
不足 に陥る 可能 性が 高 く, 個体
群の存 続に影 響が出る こ と が懸 念 され る.
2
.
4
エ コ ツー
1丿ズム オ オ コ ウモ リ は季 節 に よ り特 定の 植 物 に飛 来 するこ とが予 測で き,餌
場で の観察
が容
易な の で,
オオコ ウモ リ・
ウ オ ッチ ングと グ リー
ンペ ペ(ヤ コ ウ ダ ケ ル
fycena
chlorophos (BCTk .
&Curt
.
):光る キ ノコ
)
の観察
な ど を組
み合 わせ た 「ナイ ト ツ アー
」
が 実施
されて い る.
しか し観 察 時に懐 中 電 灯 や フ ラ ッ シ ュ で オオ コ ウ モ リを 照 ら し た り, 過 度の接 近に よ り オ オコ ウモ リの 行 動が あ き らか に阻 害 されて い る例 が ある.
また島 民
も
含め,
日中オ オ コ ウモ リの ね ぐ ら へ 頻 繁に 立 入る た めに,
ね ぐら を放 棄 し た と考 えら れ る事
例 も ある.
ね ぐ らの 攪 乱は オ オコ ウ モ リの個 体 群 維 持 に特に深 刻な影
響 を与 えてい る危 険 性がある.
現 状のエ コ ツー
リ ズム に は オ オコ ウモ リの保 全上改善
すべ き 問題 が多
い.
教 育 委 員 会 が 許 認 可 等の 事 務 窓口 となっ てい る にす ぎない.
また 環境
省の レ ッ ド リス トで は 絶 滅 危 惧 種IA
とい う,
最も保 護が必 要な種に分 類 さ れて い る が,
小笠 原 には環 境 省の 出先 機 関 も 野 生 生物保護
セ ン ター
な どの施
設 も なく,保 護 ・
管
理体制
が きわ めて不 十分 であ る.
こ の た め,
オ オ コ ウ モ リ を含む希 少 野生 生物に関 する情 報 も 集 約 さ れ ない.
さ らに オ オ コ ウ モ リの 生 息 地 保 全の観 点か ら み る と,
大 規模
な ね ぐら は私 有地 に形 成 さ れ る こ と が多
い ため (表
2 ), 保 護の ため の法 的 手 段 を と るこ と がで き ない.
農 作 物の
食
害 問 題は深 刻で ある.
オ オ コ ウモ リの 保 全に は 農 家の協 力
が不 可欠で あ る が,
現 状で は農業
担当行
政 に よ る食 害対策
は な く,
農家
が泣 き寝入 りす る状態
と なっ て い る.
小 笠 原 諸 島で は狭い 地 域 に国
,
東 京 都, 小 笠 原 表2.
父 島 でこ れま でに確 認 さ れたオオ モウコ リ の ね ぐ ら集団 サ イ ズ,
形 成 時 期,
ね ぐ ら場 所の所 有 者 (稲 葉 未発 表).
ね ぐ ら 集 団 ね ぐ ら番号
サ イ ズ形 成
時
期 土 地所有
2
.
5
保
全対策
上の体 制 小 笠 原 村で は野 生 生 物 保 全 管 理 等の 責 任 所 在 が曖昧
である.
オ オコ ウモ リ は国の天然
記 念物
に指 定さ れてい る が,管
理団体
が な く,
小 笠原村
1234567890123
1
1
1
1
000000
置 且51102
034110
> > > >1
> 夏 期・冬
期 夏 期 夏期・
冬 期夏
期
夏 期冬
期夏
期
夏 期 夏 期夏期
夏 期 夏 期 夏 期 私有
地・村有
地 私 有 地’
私 有 地私
有 地 私 有地 国 有 林国
有
林 不 明 国 有 林国
有 林
国 有 林 国 有 林 不 明保 全 生 庖孝学 研 究 リ01
.
72002 村とい う3
つ の行政 が複 雑に交
錯 してお り,特
定 の種
に対
し文化
財保護法 (
天然
記念物),種
の保
存 法,
鳥 獣 保 護 法な どの 法 律が オー
バー
ラ ッ プ し て い る.
こ の た めt一
般の住
民 あるい は観光
客 が野生動 植 物 管 理や保 全 に関 する法 的 な問 題 を 理 解 しに くい.担当
部 局に は,
個人的には オ オ コ ウモ リの保 全の 重 要 性 を理 解 し,
その た めの努力
も惜 し ま ない 人 が多
い が,
この よ うな縦 割 り 行政 の 壁 は それ を阻む 大 きな障 害 と なっ て い る.
この た め,
一
般の 人 が得
たオ オコ ウモ リ に 関 する情 報 が 集 約 されない だ けで な く,
被 害 問 題 の対 応 窓口が一
本 化 されて い ない の で不 満が解 消さ れず,
行 政に対 する不 信 感が 昂 じる原 因と もなっ てい る.
実 際,
農 園で の事 故は報 告 さ れ る こ とは少
な く,事 後
に第
三者
か らの 聞 き 取 りで判
明 する こ とが多
い.
3
今 後
の
保 全
に
つ いて
今後
オ オ コ ウモ リ 父島個 体
群の絶滅
回 避 をは か り, 維持 ,
回復 させ る た め には,前
述 の 問 題点
を 解 決 し,
短 期 的,
長 期 的両方の保 全 プラ ンを 策 定 してい か な け れ ば な ら ない.
以下 にそ の よ う な保 全プラ ン策定
に向
けた提 言を示 し たい.
3
.
1 農
業 問 題の解決
と代 替餌
場の設 置すで に述べ た ように
,
オ オコ ウモ リの 死亡 要 因と し て農
園 内での事故
は無
視で きない.
これ を 抑 制 する ため には,
ま ず 現 在各
農 家が お こ なっ てい る野 生 鳥 獣 対 策に おけるオ オコ ウ モ リ 混 獲 防 止の指導
を 早 急 に始め る必 要 が ある.
ま た オ オコ ウモ リの食 性, 行 動,
行 動 圏 利 用 などの 知 見に も とつ く有 効 な 農作物 食 害対 策
を 立 案 , 普 及 させ , 農 家 との 協 力関係
を構
築 する こ とが 不 可 欠で ある、
オ オ コ ウモ リの 農 園へ の 侵入 を 防 ぐ
一
方で,
その こ とに よっ て引 き 起こ さ れるオ オコ ウモ リ の餌 不 足を補
填 する こ とが必 要である.
その場合,餌
不 足解
消の ため にオ オ コ ウモ リの 代替
餌 場を整 備 し てい くこ とが 不 可 欠 とな ろう.
イ ギ リス で は ガン類
の 代替餌
場が役に立っ て い る (Vickery
&Gill
1999
).
これは餌
不足解消
とい う よ り,農業被
害 抑 制の ため に農 地に行 くガ ン類 を代 替 餌 場に引 きつ けて,
「か わ す 」た め に 工夫
され た もの である.
Banack (1998
)
は,
太 平洋
の島
嶼に生息
する オ オコ ウモ リ属 (Pteropus
)は,
大 陸の オ オコ ウモ リの食
性 がス ペ シャ リス ト的
で あ るの に対
し て ジ ェ ネラ リス ト的で あ り,
そ れは餌植 物
の種
数 が 限定
さ れ て お り,嵐
が多
い島嶼
で は専門化
し な い こ とが適
応 的で ある ためだ ろ う とし て い る.葉食
に依 存 的で ある こと もこれに よっ て説 明で きる として い るが,
オ ガ サ ワ ラ オオコ ウモ リ の場合
もよ くあて は まるよ うに 思 わ れ る.
こ の よう
な食
性 と 個体
数が 少 ない こ と を考
える と,代
替 果実栽培
は非 常 に有 効で ある と考
えら れ る.
な お長 期 的に は オ オ コ ウモ リの
食
性 を本 来の 在 来 植 物 食へ と復 元 して ゆ くこ と を念 頭に お く 必 要が あ ろ う.
現在,
南硫
黄島
は原生植
生 が保た れ て い る.
こ の 個 体 群の食
性 を調べ る こ とに よっ て本 来の餌種
をある程度
あ きら か にす る こ と ができ
る.
した が っ てそれ らの 餌 種 を含む植 生 を復
元 する こ とが適
当で ある.
現在
小 笠原 で 実 施 さ れてい る植 生回復事
業にオオ コ ウモ リの餌
種に 関する配 慮 を求
めたい.
こ れ ら を
実
現 させ るために は,
複 数の 行 政 機 関に また が る諸 問題 を総 合的
に解消
し てい く必 要が ある.
渠≦≧「生庖ξ学 研究 レo〜
.
720023
,
2
保 全の た め の体 制 作 り小 笠
原の よ うに希 少
野生 生 物が数 多
く存 在
し,
かつ 管理保 全 策が必 要な地域 で は,
組 織 と し て 総 合 的な体制
を もっ て対 処す るこ と が望 ま し い.
こ れ は将 来の 目標と して も, まず現 行 の各
担 当 行 政 機 関 間の, 縦 割 りを 超え た連 絡 体 制を構 築 し て (鈴 木 1999 ),事故
な ど緊 急 問 題が生 じ た 際の 島 内 (島 外 )対 応 窓口, 複 数 行 政 機 関にまた が る問 題を解 決 する こ と が不 可 欠である.
将 来 的に は国, 都,村 行 政の
一
貫 した 方 針と管 理 シス テ ム が あっ て初めて オ オコ ウモ リの 絶 滅 を回避 し,
保全 と持 続 的 利 用が実 施で きる.
望む ら くは,
ガ ラ パ ゴ ス諸 島の 「ガ ラパ ゴス研究所 」 の よ う な, 小 笠原 の動 植 物 に関する管理 の責
任 と権 限 を 持 っ た 研 究 所 がで き , すべ て の 問 題 が そ こ で対 応 さ れ る こ と を期 待 したい.
3
.
3
生息
地 保 全オ オコ ウモ リ
行動
圏 内の 必須
要素
が あ きら か に な り,
そ れ ら が十 分に確 保 さ れ てい れ ば,
そ れ ら が あ る程度
隔 離さ れ てい て も あ ま り問題 が な い.
その 意 味で オ オ コ ウモ リの場
合,
ラ ン ドス ケー
プ・
レベ ル で の 生息 地 管 理が よ り一
層 必 要 で あ り, かつ有
効であろ う.
その た め に は行 動 圏 内の必 須 要 素で ある餌 場,
ね ぐ ら などを あ き ら か にする 基 礎 研 究が必 要で あ る。 こ れ ら が あ き ら かになれ ば,
その 空 間 配 置を現 実に即 して変 形 するこ と も可 能にな る だ ろ う.
現在 ,
扇 浦 付 近 で計 画 さ れ てい る 土地 改 変は オ オコ ウモ リの主 要な ね ぐ ら に近 く,
状 況の 進 展 しだい で は深 刻 な影響
がで る可能
性が あ り,
予断
を 許さ ない.
十 分 な 保 全の対 策 を 実 施 す るた め には,
こ の課 題 に 緊 急に取 り組む必 要がある.
将 来 的に は, 人 間 側の 土 地 利 用や その 所 有 形 態
,
人口密 度や道 路 密 度,
交 通 量,
観 光 客 訪 問 数 など も含んだ総 合 的 な 地 理 情 報 学 的 解 析が必 要 と なる だろ う.
3
.
4
個
体 数 把握 と生 態 学 的 知 見の蓄積
すべ ての 絶 滅危惧
種 ・
希 少 種の 保 全の ため に 不 可 欠 なの は,
正 確 な 個 体 数 把 握 とモ ニ タ リン グ で ある.
さい わい オ オ コ ウ モ リ は体
制 を 整え れば精 度の 高い セ ンサス が 可 能である.
ま た 個 体 群を保 全 する た め には, 年 齢 構 成, 繁 殖 生 態, 出 生 率, 死 亡率
, 死 亡 要 因 など, 個 体 群パ ラ メー
タをあき
らか にする必 要が ある.
識 別 個 体が増 え れ ば新生児の加入率が推 定で きる し,
死 亡・
出 生率 も推定で きる.
死 亡要 因の特 定は容
易で は ない が,
捕 獲調
査に よ り,
獣 医学
的 所 見 を とるこ と も可能であろう.
冬 期ね ぐ らはほ ぼ一
地 域 に集 中 する こ と が確 認 されて い る (稲 葉 】999
)、
し か し, 前 述の よう に こ の集 中 性 には危 険な要 素が あるので,
危険
の 分散
とい う 意 味では強 制 移 動 に よっ て ね ぐ ら を複 数にする こ とも
視 野に 入 れ る必 要が ある.
3
.
5
移
入種対 策
ネコ や クマ ネズ ミな どの 帰 化 種 を 島 か ら除 去 する努力
が な され るべ きで ある.
ネコ お よ び ク マ ネズ ミ は小 笠 原 諸 島で鳥類
群 集に も 悪 影 響 を 与 え て い る こ とが す で に確
認 さ れ て お り (Kawakami
&Higuchi
in
press
),
強 力 な 駆 除 計 画 が必 要で ある.
東 京 都 立 大 学の加 藤 英 寿 博 士 (私 信 )に よればシ ャ リン バ イRhaphiolepis
indica
(L .
)LjndL
var.
umbe 〃ate (Thunb .
)Ohashl
の果実
に対
する ク マ ネズ ミ の
採食
は すさまじ く,
局所 的
に全 滅 状 態が み られ る とい う.
ネコ と違い ,小 型で夜 行 性の クマ ネ ズ ミの排 除はき
わ めて 困 難で ある こ とが 予 想 さ れる.
ニ ュー
ジー
ラ ン ドの 離 島で深塗
’
生,
暫学研究 vo1,
72002
行っ てい る が (Jansen
1993
),
こ の よう
な手法
に つ い て は他 種へ の影
響に つ い て さ ま ざ ま な専 門 家との議 論を行い,
慎 重に対 応 すべき
であろう.
移 入 動 植 物は個 体 数 を 抑 制 する と ともに, こ れ 以 上 の移 入が ない よう
,
水 際作
戦を徹 底す
る 必 要 が ある.
小 笠 原 諸 島へ の 入口 は数 少 ない 港 湾に限 られて い る た め,
移 入種
管 理 は他 地域
よ りも容易
であ る.
沖縄 県北部 「や ん ば る」で はノ ネコ や ジャワマ ン グ
ー
スHerpestes
/avanicus (E .
Geoff
めy
)が ヤ ン バ ル クイナRallus
okinawaeYamashina
etMano
,
ノ グチゲラ
Sapheopipo
noguchii (Seebohm
)など希少
固有生 物 まで捕食
する よ うに な っ た ため , 環境
省 と沖 縄 県に よ りノ ネコ の 駆 除 事 業と飼い 猫 の適正飼 養 指導
が お こな われ て い る (沖 縄県
文 化 環 境 部 自 然 保 護 課2002
).
また小 笠 原 諸 島 聟 島 列島
で は ノ ヤ ギ の駆 除に成 功 し,
すで に植生 回復事 業
が開始
され て い る (東京都
小 笠 原 支 庁2001
)。
こう
し た野生動物
の駆 除事 業
につ い て一
部の 動 物 愛 護 団 体 など か ら批 判が あるが, こ れ ら は動物虐待
で はまっ た くない。
む し ろ,
大 洋 島 の 脆 弱 な 生 態系
に対して,
人 間がペ ッ トあるい は家 畜 を導
入 し放
置 す る という
無責任
な行為
に対
して,
その自然
の価値
を認
め て壊
滅的
な状 況 にある生態系
を 回復 す るため の責
任 ある活動
で ある.
3
.
6
望ま しい エ コ ツー
リ ズ ム の あ り方オオコ ウモ リを
含
めて動植物
の エ コ ツー
リ ズ ム が今後
の小 笠 原に とっ て 大き
な可 能 性を もっ てい るこ とは疑 う余
地が な く,
そ の た め に長期
的なガイ ドライ ン策 定 と体 制 作 り が不 可 欠で あ る.
・
エ コ ッー
リ ズムは,自
然 景 観や野生動 植 物 な ど を「
資 源 」として利 用 する産 業であ り, その た め に は資源
の持 続 的
な適
正管
理 が前提
とな る.
利
用側
面の み を 追求
した資源利
用 に よ り,
例 え ば希少 種
個体
数の減少
につ な が る 可能 性の あ る こ と はt きび し く排 除さ れ な け れ ば な ら ない.
現 在お こ な わ れてい る,
で きる だ け 見せ る,
でき
る だ け接 近
さ せ る とい っ た ガ イ ド の あ りか た は根
本 的に 見 直 し,
個 体 との 距 離や観 察者
数の 制 限 を初め と する ガ イ ド ラ イ ン策定
を早急
に進
め る 必 要がある.
望 ましい エ コ ッ
ー
リズ ム の 内 容 とし て は , 野 生 動 植物
を 見せ るだ けの 狭 義の 観 光 的 要 素 だ け で な く, 彼 らの生 態, 彼 らが 暮 らす 生 態 系, その 保 全の 重 要 性 を 学ば せ る とい う 環 境 学 習 的 な 側 面が 重 要で ある.
お り し も,
2002
年7
月に東 京 都と小 笠 原 村は小 笠原諸 島の 自 然 環境
が 重要である とい う認 識か ら 「小 笠 原 諸 島にお ける 自 然 環 境 保 全 促 進 地の 適正 な利 用 に関す る協定
書 (エ コ協定
)」
を結
び,
エ コ ツー
リ ズム の ガ イ ド養成
や利 用制
限に関す る取 り決め を し た.
現状
で は検討
課題 は山積
さ れ てい るが, こ れ は貴 重 な 第一
歩で ある.
今 後こ の よう な 活 動が進め ら れ,
全 国で初 めて の協
定 が有効
に機 能 する こ と を期待
し たい.
その ため に も各
分 野の研 究 者,
エ コ ツー
リ ズ ムの専
門家
を含
む 関係 者
の ネッ トワー
クを強 化
し,
い っ そう
の連携
と情報
交換
を 進め て ゆ く 必要
がある.
3 .7
遺 伝 学 的 研 究 父 島 列 島と火 山 列 島の オ オコ ウモ リ個 体 群 が そ れ ぞ れ 】00
頭 あるい は そ れ以下 になっ た現 状 で は ひ とつ の個 体 群 を 生 け 捕 りに して 移 動 さ せ,
他の個体
群と ま と め て個 体 群サ イ ズの大 型 化を は か れ ば よい とい う見 解 もある.
し か し父 島・
母 島 列 島の 個 体 群と火 山 列 島の 個 体 群 とで は実 質 的に は地 理 的 隔離
が 存 在 する の で遺伝的 交
流は ほ ぼ な く,
それぞ れが遺 伝 的保全 生庖ξ学 研 究 vθ’
.
72002 に異 なる 可能
性が ある.
したが っ て個体
群の競 合はそ れ ぞ れの オ オコ ウモ リ 個体群 の 歴 史を否定
するこ とに もな り か ね ない.
その 意 味で,
ま ず 遺 伝 学 的 な解 析 をお こ なっ て集団 間の 遺 伝 的 差 異を あ き ら か にす る必 要が あろ う.
その こ と を 含め て父 島以外の 島で の オ オコ ウ モ リの実 態 調 査を緊 急 に実 施 する必 要が あ る、
これ に 関
連
し て オガサ ワ ラ オ オコ ウモ リ が ど こか ら 来 たの か とい う 生 物 地理 学 的,
進 化 学 的 に重 要なテー
マ が ある.
国 内の ク ビ ワ オ オ コ ウ モ リP .dasyma
〃usKuroda ,
さ らには島づ たい の 飛 翔 を考え れ ばマ リア ナ 諸 島か らカロ リン諸 島 な ど か ら イ ン ド ネ シア の 島々 に 連な る太 平 洋の 島々 の近 縁 種 との遺 伝 学 的 研 究 も 重 要で ある.
4
ま と め
日
本
の数少
ない 大洋 島
で ある小 笠原 諸島
の 自 然は生 物 の 進化 や生態 を 理解す る上で世 界 レベ ル で か け が えの ない もの で ある.
しかし, これ ま で の 小 笠 原の 自然 に対 する 人 間 側の あ り方は好 ましい もの で はなか っ た.
それ は略 奪 的 破 壊で あ っ た り,
意図的 あるい は意
図 し ない 移入種
の導
入で あ っ た り し た.破
壊や移入種
の導
入は 世 界 中で お こなわれ た こ とである が,
大洋 島
の 脆 弱 な自 然は こ れ らの影響
に と くに弱い.
こ の た め にすで に オ ガサ ワ ラカラ ス バ トな どは絶
滅,
最
近で は多
くの陸 産貝類
,昆 虫類
が姿
を 消 し始 めて い る.
21
世 紀を迎え た今, その 反 省の上に立 ち,
こ れ 以 上 の絶 滅 を決して 起こすこ との ない よ う な 保 全の 取 り組み を重 視 する必 要 が ある.
父 島で 進め ら れ て きた小 笠 原 空 港 建 設 計 画 は2001 年
に白
紙 撤 回 さ れた.
さま ざ まな問題 をか かえ なが ら も,
かけが えの ない父 島の 自 然が破 壊か らまぬが れ た こ とは,
長 期 的にみ た と き,
英断
で あっ た と 評 価 さ れ る に違い ない.
オガサ ワ ラ オ オ コ ウ モ リの 絶 滅は東 京 都 と日 本の損 失に と ど ま らず,
世界の 損 失 とい わ な け ればな ら ない,
ム ニ ン ノポ タ ンが そ うで あっ た よ うに (岩 槻・
下園 1989 >,
オ オ コ ウ モ リ の絶 滅 回避 は あ らゆ.
る立場の 人々 と組 織の協 働 と順応 的な対 策に よっ ては じ め て実 現 し う る もの で あ る.
そ れに対 して我々 研究 者
は研究
サ イ ド か ら 最 大 限の 努 力 を する所 存で ある.
関 係 各 位, 機関 の ご理解, ご協 力
を 期待
したい、
謝 辞 こ れ まで の オ ガサ ワ ラオ オコ ウ モ リ の 調 査 と本 稿 を まと め る にあた り,
琉球 大学大学院理工学 研究 科 の 金城 和三氏 よ り有 意 義なご助 言を頂 きました.
ま たNPO 小 笠 原 野 生 生 物 研 究 会の 安 井 隆 弥 先 生に は オ ガ サ ワ ラ オ オコ ウモ リ と植 物につ い て貴重な ご意 見 を伺 うこ とが で きま した,
ま たマ ダニ の一
種の 学 名 につ い て は森 林 総 合 研 究 所の 岡 部貴美 子 博 士の ご指 導をた まわ りまし た.
調査 を進め る上で,
以下の 方々 の ご協 力 をい た だい た こ と に改めて感 謝 すると と も に,
小 文で提 言 し た保 全 策 を実施 し て ゆ く上で,
今 後 こ れ まで 以 上の ご 理 解 とご協 力をお願い い た しま す.
環 境 省 南関東 地 区 自 然 保 護 事 務 所の 佐 藤 俊 次氏,
文 化 庁 文 化 財 部の 花 井 正 光 氏,
東 京 都 教 育 庁の 原眞 麻 子 氏,
環 境 局各位,
中 野秀人 氏 を 始 め と す る東 京 都 小 笠 原 支 庁 土 木 課 各 位,
小 笠 原 亜 熱 帯 農 業七 ン ター
各 位,
小笠 原 村 教育 委員 会の 島田絹 子 氏 を始め とす る 小 笠原村 役 場 各 位,
父 島 在 住の 安 藤 重 行 氏,
木 村 ジ ョ ン ソ ン氏,
和田実 氏を始め と する小笠原村の 方々.
引用
文
献
阿 部 學・
前田喜四雄・
石 井 信 夫・
佐 野 裕 彦 (1994
)オ ガサワ ラ オ オコ ウモ リの分 布
・食
性・
行 動 圏.
小 笠 原 研 究 年 報.18
:4−
43.
石 井 信夫
(1983 >南 硫 黄 島の哺 乳類.
南 硫 黄 島の深 全生庖ξ学 研究 vo ’
,
72002自
然.
南 硫 黄 島 原 生 自然環境 保
全 地 域調
査 報告 書 (環 境 庁 自然 保 護 局 編 )
.pp .
225
・
242 .
伊 藤 秀三 (1994 ) 島の植 物 誌一
進 化 と生 態の 謎一.
講 談 社, 東京.
稲 葉 慎 (1999 )オ ガサワ ラ オ オコ ウ モ リの 父 島にお ける分 布 と個
体
数.
天然
記 念物調
査 (オ ガサ ワラ オオコ ウモ リ)
調
査 報告
書.pp .
29
−
40 .
小 笠 原村教
育委
員会.
稲 葉 慎 (200D
北 硫 黄 島に おける オ オコ ウ モ リ の現 況
.
北 硫 黄 島生物調
査 報 告 書.pp .
50−57 .
東 京
都 小 笠 原 支 庁.
稲 葉 慎・
小 守桃
世 (1999
)オガサ ワ ラ オ オコ ウ モリ の
食性
と摂 食行動 .
天然 記念物
調査
(オガサ ワ ラ オ オ コ ウモ リ
)調
査報告書 .pp .41 −
63 .
小 笠 原村
教育委員
会.
稲葉
慎・
小守
桃世・佐藤文彦
(1999
)オ ガ サ ワラオ オコ ウモ リ に よ る農 作 物 被 害 と 対
策 .
天 然記 念 物
調
査 (オガサワ ラオ オコ ウモ リ)調
査報 告 書
.pp .
75−
96.
小 笠 原 村 教 育 委 員 会.
岩 槻邦
男・
下 園文 雄 (1989
>滅 びゆ く植物
を救
う 科 学一
ムニ ン ノボ タ ン を 小 笠 原 に復 元 する試み
一.研
成 社,東京 .
大島
成生・
金城 道 男・
村 山 望・
小 原 祐二・
東 本 博之 (
1995
)沖 縄島
北 部にお ける貴 重 動 物 と移
入動 物の生
息
状 況 及び移 入 動 物 によ る貴 重動物
へ の影響
報 告 書.
日本
野鳥
の会
や ん ば る支部.
沖 縄 県 文 化環境 部
自然保
護課 (2002
)平
成14 年
マ ン グ
ー
ス等
対 策事
業の概 要.
やんば る における移 入 (
外
来 )動 物 問 題 を考
える シ ンポ ジウ ム (講 演 要 旨 集 )
.pp ,
】3−16.
小 野 幹 雄 (1994 )孤 島の生 物 た ち一
ガラパ ゴ ス と小 笠原
一.
岩 波 書 店,
東 京.
金 子 博 (1995)集 団
ね ぐ らに危機
迫 る.
小笠
原 父島の オ オコ ウ モ リ
.
科 学朝
日7
月号
:122−127 .
佐 藤 洋二 (1987 )小 笠 原 父 島に おける オ ガ サワ ラ オ オコ ウ モ リ の生息 状 況.
第2
次 小 笠 原 諸 島自 然 環 境 現 況 調 査 報 告 書
。pp.
128−
132.
東 京 都 立 大 学.
清 水 喜 和 (1988 )小 笠 原 諸 島 母 島 桑 ノ木 山の植生 とア カギの侵 入、
地 域 学 研 究.1
:31
−46 .
鈴 木 創 (1999
)オガサ ワ ラ オ オコ ウ モ リ防 除 ネット
.
天然
記 念物調
査 (オ ガサワ ラ オ オコ ウ モリ)調 査 報 告 書
.
pp.
102−109 .
小 笠 原 村 教 育 委 員 会.
東 京 都 小 笠 原 支 庁 (2001
> 平 成12 年度
小 笠 原 国立 公 園 植 生回復
調
査 報 告 書.
東 京 都.
日本
野生生物
研究
セ ン ター
(
1992)
小 笠原諸 島
における山
羊
の 異 常繁殖
に よ る動
植物
へ の 被害 緊 急 調 査
.
環 境省.
蓮 尾 嘉彪
(1969
)小笠
原諸 島
の動物 ,鳥
類,
哺 乳類 を 中 心 とし て
.
小 笠 原 諸 島 自 然 景 観調
査 報告 書
.pp .111−138 .
国 立 公 園 協 会.
吉田圭一
郎・
岡 秀一
(2001
)小 笠 原 諸 島 母 島におい て ギ ン ネム の 生 物 学 的 侵入 が二 次
植
生の遷 移 と種
多様
性 に与 える影 響.
日本 生 態 学 会 言志.
50 :11ト 119.
Banack
,S.
A .
(1998
)Diet
selection andresource use
by
flying
foxes
(Genus
Pteropus
).
Ecology ,79
:
1949_1967.
Carlquist,
S .
(】974
)lsland
Bio
】ogy.
Columbia
University
Press,
USA .
Hall,
L .
&Richard,
G .
(2000
)Mortality
anddisease.
In:F り・ing Foxes
−F
厂躍’and ・bto
∬ 0脚 β0’∫ 〔ゾAustralia・
,
pp .
48・
58 .
UNSW
Press,
Australia
.
Jansen,
W.
P.
(1993
)Eradication
ofNorway rats andrabbits
from
Moutohora
(Whale
)lsland,
bay
of
Plenty.
Ecoiogicat
Management
,1
:10.15.
Kawakami ,K .
&Higuchi
,H .
Bird
predationby
domestic
ecets.ge,"ff-voL72002
Ornithological
Slrience,
(in
press)
Peake,