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築後約90年の煉瓦造建物から採取したコアの圧縮および割裂試験による煉瓦組積体の圧縮・引張強度と剛性の評価 [ PDF

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Academic year: 2021

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築後約 90 年の煉瓦造建物から採取したコアの圧縮および割裂試験による

煉瓦組積体の圧縮・引張強度と剛性の評価

賀 雄 1.序 本研究は,煉瓦造建物から採取した寸法が比較的小 さなコアの力学特性の把握を通して,煉瓦組積体の力 学特性の評価可能性を検討することを目的としている. 筆者が所属する研究室では,文献1)で本部庁舎から 鉛直方向に採取したコアの圧縮強度,及び文献2)で行 った無補強壁試験体の水平載荷実験により水平耐力の 確認がなされた.本研究では,本部庁舎から水平方向 に採取した直径約103mm のコアを用いて,煉瓦組積体 の圧縮強度・引張強度と剛性の評価を行った. 2.測定方法の検討 本部庁舎から水平方向に採取した 88 体のコアの端 面(円形面)を平行,平滑となるように整形した.コア の様子を写真1 に示す.圧縮実験は JIS A 1107:2002 コ ンクリートからのコアの採取方法および圧縮強度試験 方法の規定を準用し,高さと直径の比は 1.90〜2.10 と なるよう圧縮実験用試験体(BMC)を用意した. 割裂引張試験については,採取したコアの目地と煉 瓦との接着面(以下,界面と記す)がコアの中心を通っ ていなかったため,界面が試験体の中心を来る ようにコアを型枠にセッティングして周辺にグ ラウト(圧縮強度:64.2N/mm2,引張強度:3.70 N/mm2)を打設し,実験を行う方法を提案する. 割裂試験体のグラウト打設後のイメージ図を図 1 に示す.コア界面の位置を考慮し,直径 125mm のプラモールドと直径 150mm の円形鋼製型枠 にコアを設置してグラウトを打設した.完成し た試験体は直径が 125mm のものを BMSS, 150mm のものを BMSL とする. 各実験の実験方法のイメージ図を図 2 に示 す.採取したコアに1 番から 88 番まで番号を振 った.ただし,圧縮試験も割裂引張試験も実験 の条件に合うものだけを使用した. 3.実験概要 割裂試験体は界面がコアの中心から離れすぎ ると,型枠に設置できなくなるという制約条件 があるため,割裂試験体を優先して選出し, BMC 試験体は残りから 12 体確保した. 割裂試験体は図3 のように名称を定義する. 1. 寸法 a に近い界面を a 側界面,寸法 b に近い界 面をb 側界面と定義する. 2. 上面では寸法 a<b とする,ただし,目地は厚さ が均一でないなどの原因で,底面では寸法 a>b となっている場合もある; 3. a 側界面が左側に来るように手前側面と裏側面 を定義する. 打設時に型枠とコアの間にある程度余裕を持たせるこ とや,|bu-bb|の値の差が大きすぎるものを対象から外 すために,|bu-bb|が5mm を超えたコアを排除し,寸 法 b が max(bu,bb)≦61mm の BMSS 試験体を 7 体, 61mm<max(bu,bb)≦73mm の BMSL 試験体を 18 体用意 した.グラウトの打設時に,コア表面にある隙間から グラウトが入らないように隙間に粘土を詰め,コアが 水分を吸い込まないよう表面にプライマーを塗布した. 割裂引張試験の割裂面は max(bu,bb)を想定しコアの 表面に線を引いた.打設時に流れ込むグラウトの流動 性によるコアの移動を防止するため,型枠の直径と同 図 2 圧縮試験及び割裂引張試験のイメージ図 写真 1 コアの様子 図 1 グラウト打設後のイメージ図 割裂引張試験 圧縮試験 変位の測定位置 変 位 計 パイ型変位計 加 圧 板

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61-2 じサイズのプラスチック板を作成し,型枠の底盤とプ ラスチック板,プラスチック板とコアの間を両面テー プで貼り付けてコアを固定した. 目地の充填が十分でないため,隙間の長さの割合は コア表面で測定した隙間の長さの和をその界面の全長 で除した値(%)を求め,表4 に示した. 圧縮試験時に全ての試験体に対して,変位計を3台 同じ間隔で試験体の周りに設置し加力面間の変位を計 測しながら,載荷を行った.割裂引張試験は試験体25 体中,12 体にパイ型変位形を取り付けて実験を行った. 4.実験結果及び考察 4.1 圧縮試験の結果及び考察 圧縮載荷実験の結果と文献1)に示された OCC 試験 体の実験結果を表1 に,一部の BMC 試験体の破壊状 況を写真2 に,圧縮試験で各試験体に生じた圧縮応力 度と軸方向歪みの関係をまとめて図4 に示す.各試験 体の歪みは図2 に示す 3 つの変位計で計測した変位か ら求めた平均の歪みを示している. BMC 試験体は OCC 試験体に比べて,圧縮強度が 20%〜39%高かった.これは寸法効果や試験体の構成 要素の相違によるものと考察される.文献1)の実験結 果では,第三庁舎の試験体は第一庁舎の試験体に比べ, 強度が若干高い傾向が見られた.今回の実験では他の 試験体に比べて試験体BMC61,66,77 は圧縮強度が低 かったが.これは今回の試験体は第一庁舎と第三庁舎 の試験体が混在しているためと考察される.加えて, BMC 試験体は OCC 試験体より強度が高い反面,剛性 が10%〜24%低かった. 4.2 割裂引張試験の結果及び考察 パイ型変位計を取り付けて実験を行った各試験体の 引張応力度と歪みの関係をそれぞれ図5,図 6 に示す. 歪みは計測変位から求めた平均の歪みである. BMSS 試験体が最大荷重に達するまでに,どの試験 体 に も 一 度 荷 重 が 降 下 し,その後また荷重が上 昇する挙動が見られた. こ れ は 引 張 強 度 が 強 い ために,試験体が耐えて いたのではなく,割裂で 破 壊 し た 試 験 体 が 単 に 圧 縮 力 を 受 け て い た た めと考察される.このた め 実 験 で 得 ら れ た 一 回 目 の ピ ー ク 時 の 荷 重 を 割 裂 破 壊 時 の 荷 重 と し 0.00 0.40 0.80 1.20 1.60 -5000 0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 引張応力度 σ ( N/mm 2) 歪みε(×10-6 図5 BMSS試験体 27番 38番 45番 51番 69番 73番 写真 2 BMC 試験体の破壊状況 試験体 BMC09 試験体 BMC32 試験体 BMC41 図 3 コア各面名称の定義 0.0 4.0 8.0 12.0 16.0 20.0 24.0 28.0 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500 5000 5500 6000 6500 圧縮応力度 σ ( N/mm 2) 歪みε(×10-6 図4 BMC試験体 04番 09番 19番 32番 39番 41番 47番 57番 61番 62番 66番 77番 図 6 BMSL 試験体

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61-3 て記録した.BMSS 試験体に荷重の降下・上昇が発生し たのに対し,BMSL 試験体には同様の現象は起こらな かった. 表 2 で網かけを施したものはパイ型変位計を取り付 けて実験を行った試験体である.全体を通して見ると, BMSL 試験体は BMSS 試験体に比べて強度が 41%高 い.これは割裂面におけるグラウト材の面積の大きさ や目地の隙間具合に起因すると考えられる. 図 7 のような状況を考慮して割裂面におけるグラウ ト材面積の割合を式(1)で算定した. R" % = %&' (%( ×100 (1) ただし, R-:割裂面におけるグラウト材の面積の割合; d:試験体の直径(mm); t: 割裂面におけるコア部分の幅 (mm); L: 試験体の長さ(mm); 計算の結果を表2 に,グラウト材面積の割合でプロ ットしたグラフを図 8 に示す.グラフの近似直線を作 成した時,縦軸の切片はグラウト材がない場合のコア の引張強度になると予想される.グラウトテストピー スの引張強度の実験値3.70 N/mm2はグラフにおけるグ ラウト材面積の割合が 100%の場合の引張強度 3.61 N/mm2に非常に近い値となった.0.29 N/mm2という値はコ ア界面の付着強度として妥当と考えられる. なお,比較のために,コア界面の付着強度を式(2)か ら逆算した. 𝜎 =/0102/313 10213 (2) ただし, 𝜎:割裂試験体の引張強度(N/mm2); 𝜎-:グラウトテストピースの引張強度(N/mm2); 𝜎5:コア界面の付着強度(N/mm2); 𝐴-: 割 裂 面 に お け る グ ラ ウ ト 材 の 面 積 (mm2); 𝐴5:割裂面におけるコアの面積(mm2). コア界面の付着強度の算定結果を表 2 に示す.平均の付着強度 0.32 N/mm2 は前述したグラウト材面積の割合によるコア界面の引 張強度0.29 N/mm2 に近い値となったので,この方法で も煉瓦と目地モルタルの間の付着強度は概ね捉えられ ると言える.ただし,この算出方法では個別の試験体 の付着強度がマイナスの結果となるものがあったため, この点はさらに検討が必要である. 文献2)に示された無補強壁試験体の水平載荷荷重か ら開口壁脚部の曲げ引張強度を予想して算定した結果 を表 3 に示す.予想曲げ引張強度に比べ,試算した界 面の付着強度は60%大きい結果が得られた.これは無 補強壁試験体が今回の試験体と異なり本部庁舎から採 取したものではないことや,各試験体の経過年数の違 表 2 割裂試験体の実験結果 表 1 圧縮載荷実験の結果 図 7 グラウト材の面積 σmax= 0.0332Rg+ 0.290 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 引張強度 σmax (N/m m 2) 割裂面におけるグラウト材面積の割合Rg(%) 図8 引張強度とグラウト材面積の関係 グラウトテストピースの引張強度:3.70N/mm2

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61-4 いなどから差が生じたものと考えられる. 前述した隙間長さの割合の算出結果を表4 に,結果 から作成した散布図を図9 に示す.隙間長さの割合が 増加すると,引張強度が減少する傾向が見られる.付 着強度のばらつきは試験体内部の隙間の状況が算定し た隙間長さの割合と一致していなかったために生じた ものと考察される.付着強度が高い試験体BMSS69 と 低い試験体BMSL83 の隙間状況を写真 3 に示す. なお,割裂引張試験によって破壊した試験体の破壊 面を見ると,煉瓦が破壊した試験体は25 体中 2 体しか なかった.提案した実験方法によって割裂面が中心に ない試験体の割裂試験が行えることが確認できた. 5.まとめ 本研究では,煉瓦造建物から採取したコアの圧縮試 験と割裂試験を行い,以下の知見が得られた. (1) 今回用いた径 103mm の試験体は径 218mm の試験 体に比べて,ヤング率が10%〜24%低かった. (2) コアの圧縮強度は直径約 2 倍のコアより 20%〜 39%大きかった.この傾向から断面積が異なる試 験体の圧縮強度も概ね予想できる. (3) 割裂試験は煉瓦の破壊を概ね防げたため,提案し た実験方法によって界面が円の中心にない試験体 の割裂試験を行えることが確認された. (4) 実構造物から採取したコアの界面付着強度の平均 値は壁試験体の曲げ引張強度より60%大きかった. (5) 割裂面におけるグラウト材面積の割合と引張強度 の関係を調べることで,組積体割裂強度を推定す る方法を提案した.設 σm= -0.0080 C + 0.35 -0.50 -0.25 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 付着 強度 σm (N/mm 2) 隙間長さの割合C(%) 図9 付着強度と隙間長さの割合の関係 謝辞 本研究は九州大学統合移転事業の一環で行ったもので ある.また,本実験の遂行にあたり,文部科学省国際共同 研究加速基金(国際共同研究(B),課題番号:18KK0129,研 究代表者:宮島)の助成を受けた.末尾ながら記して謝意を 示す. 参考文献 1) 山口謙太郎,石原義高,村上公志,蜷川利彦:九州大学本 部庁舎を構成する煉瓦造壁体 その 1,日本建築学会大 会学術講演梗概集,構造Ⅳ,pp.841-842,2014 2) 荒木啓介,山口謙太郎,賀雄,蜷川利彦,花里利一:無筋 煉瓦造建築の壁体を表面から補強する方法に関する研 究 その 3~その 5,日本建築学会大会学術講演梗概集 2016 年,2017 年 写真 3 割裂試験体の隙間状況 隙間 試験体 BMSS69 試験体 BMSL83 表 3 予想曲げ引張強度 表 4 割裂試験体の破壊面の隙間長さの割合

参照

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