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ヒト 精巣卵胞 刺激ホルモン受容体

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 相 原 稔 彦

学 位 論 文 題 名

ヒト 精巣卵胞 刺激ホルモン受容体 cDNA の クローニングおよびその機能解析

学位論文内容の要旨

    緒 言

  ヒ ト 卵 胞 刺 激 ホ ル モ ン 受 容 体 (uSH‑R)は 精 巣 や 卵 巣 の 発 達 お よ び 生 殖 機 能 の 維 持 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て お り ,hFSH‑R遺 伝 子 の ク 口 ー ニ ン グ お よ び そ の 機 能 解 析 は 生 殖 内 分 泌 学 的 に 大 き な 意 義 を 有 す る と 考 え ら れ る ・

  本 研 究 で は , ラ ッ トFSH受 容 体 の 塩 基 配 列 を も と に ヒ ト 精 巣FSH受 容 体cDNAを ク ロ ー ニ ン グ し , そ の 機 能 解 析 を 行 っ た . さ ら に , 既 に 報 告 さ れ て い る ヒ ト 卵 巣FSH‑Rと 本 研 究 に お い て ク ロ ー ニ ン グ さ れ たhFSH‑R cDNA2039番 塩 基 に 違 い の あ る こ と に 着 目 し ,hFSH‑Rの 遺 伝 子 多 型 に つ い て も 若 干 の 検 討 を 加 え た .

    実 験 内 容

PMSG処 理 を し た 未 熟 ラ ッ ト 卵 巣 か ら 得 ら れ た 全 RNAを 用 い て , ラ ッ トFSH‑R cDNA の 塩 基 番 号621か ら 1031に 対 応 す る cDNA断 片 をRT‑PCR法 に よ り 得 た . こ のcDNA 断 片 を32pで 放 射 性 標 識 し プ 口 ー ブ と し て 用 い , ラ ム ダgtllヒ ト 精 巣cDNAラ イ ブ ラ リ ー の ス ク リ ー ニ ン グ を 行 い ,hFSH‑Rを コ ー ド す る と 考 え ら れ るcDNAが 得 ら れ た の で , ジ デ オ キ シ 法 に よ り そ の 塩 基 配 列 を 決 定 し た ・

  得 ら れ たcDNAを 発 現 ベ ク タ ー に 組 み 込 み , リ ン 酸 カ ル シ ウ ム 沈 殿 法 に よ り ,293細 胞

( ヒ ト 胎 児 腎 由 来 の 細 胞 株 ) に ト ラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン し て ,1251で 標 識 さ れ たhFSHに 対 す る 特 異 的 結 合 部 位 の 発 現 の 有 無 , 続 い て ,hFSHを 添 加 し た と き のcAMPお よ び イ ノ シ ト ー ル リ ン 酸 の 産 生 能 に つ い て 検 討 し た . さ ら に ,293細 胞 に 発 現 さ れ た 受 容 体 に 対 す る , hFSHの 結 合 能 とFSH以 外 の 各 種 ゴ ナ ド ト 口 ビ ン あ る い は ヒ ト 以 外 の 動 物 ( ラ ッ ト , ヒ ツ ジ , ウ マ , ブ 夕 ) の ゴ ナ ド ト 口 ビ ン の 結 合 能 と の 比 較 を 行 っ た ・   ヒ ト 卵 胞 期 卵 巣 お よ び 月 経 周 期21日 目 の ヒ ト 黄 体 か らpolyA) mRNAを 抽 出 し た 後 に , hFSH‑R cDNAの 塩 基 番 号744か ら1026に 対 応 す る 放 射 性 標 識cRNAブ 口 一 ブ を 作 製 し , ノ ー ザ ン ブ ロ ッ ト 分 析 を 行 っ た .

  ト ラ ン ス フ ウ ク シ ョ ン さ れ た293細 胞 を125IhFSHと と も に ,1000倍 過 剰 量 の 非 標 識 hFSHの 存 在 下 あ る い は 非 存 在 下 で 培 養 し た 後 ,disuccinimidyl suberate (DSS)を 用 い , hFSHhFSH‑Rと の ク 口 ス リ ン ク を 起 こ し た 後 にSDS‑ボ リ ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル 電 気 泳 動 を 行 い , ゲ ル を 一 70℃ , 14日 間 の オ ー ト ラ ジ オ グ ラ フ イ ー に 用 い た .   イ ン フ オ ー ム ド コ ン セ ン ト を 得 た 後 に , 患 者70名 の 末 梢 血 リ ン ノ ヾ 球 か らDNAを 抽 出 し , こ れ を 鋳 型 と し てPCR法 を 行 い ,hFSH‑R遺 伝 子 の 塩 基 番 号1624か ら 2143ま で を 増 幅 し た . 本 研 究 で ク ロ ー ニ ン グ さ れ たcDNA2039番 塩 基 は ア デ ニ ン で あ り , 既 報 の ヒ ト

(2)

卵巣FSH‑R cDNAでは同位置の塩基がグアニンであることから,後者では制限酵素BsrI によ り ,520bpのPCR産 物カs413bpと107bpに切 断さ れる こと によるRFLP解析 で遺 伝子多型の頻度を調べた.

    結果

  クローニングされたcDNAの塩基配列から,hFSH‑Rはシグナルベブチドも含め695個 のアミノ酸からなり,N末端には366個のアミノ酸からなる非常に大きな細胞外領域を有 し,また,7個の膜貫通領域を有すると推定された.

  トランスフェクションされた293細胞に対して125I̲hFSHは強い結合を示し,解離定数 は1.5x10‑9Mであった.しかし,ヒトCGはほとんど結合を示さず,ヒトLHも高濃度で 弱い結合を示しただけであった.さらに,ヒト以外の動物のゴナドトロピンではラット FSHがhFSHに類似 した 結合 を示 したが ,ブ タや ヒツジ のFSHおよび ウマ のCGの結合 能は著しく低いものであった・

  トランスフウクションされた293細胞にhFSHを加えると,その用量に依存したcAMP の産生の増加を認めた.イノシトールリン酸の産生に関しては,ヒトLH/CG受容体を発 現した293細胞に対するヒトCGの効果に比して弱いものであったが,hFSHの用量に依 存しての増加を認めた.

  hFSH‑RのmRNAのノーザンブ口ット分析ではヒト卵胞期卵巣において7.0,4.2,2.5 kbの3本の バンド が認 めら れた が,月 経周 期21日目の黄体においてはhFSH‑RのmRNA のパンドは検出されなかった.

  125I‐hFSHとhFSH‑Rとのクロスリンク実験では分子質量が約109kDaと推定される蛋 白質のバンドが検出されたが,1,000倍過剰量のhFSHの存在下では検出されなかった.

  本研究で得られたクローンをA型,既報の卵巣から得られたクローンをM型とすると,

70名のうちAAは33名(47.1%),AMは31名(44.3%),MMは6名(8.6%)であった.少 数例の検討であるためか疾患による差違は認められなかった.

    考察

  本研究においてクローニングされたcDNAを293細胞にトランスフウクションすること に よ り ,125I‑hFSHに 対 し て 高 い 親 和 性 を 有す る 受 容 体 の 発 現 が 確 認 され た ・   受 容体 を発現 した293細胞 はhFSHの 用量に依存してcAMPを産生することが示され た.また,ヒトLH/CG受容体に対するヒトCGの効果に比して弱いものではあったが,

hFSH.Rにおいてもより高濃度のhFSHの刺激によルイノシトールリン酸の産生の高まる ことが認められた.これらの結果から,hFSH.Rの細胞内情報伝達にはAキナーゼ系だけ ではなくCキナーゼ系の関与も推測された.

  ノーザンブロット分析に関しては今回の結果のみから結論を導くことは困難である.今 後,多くのサンプルを分析することにより月経周期の各時期におけるmRNAの発現レベ ルの変化を検討する必要がある.

  クロスリンク実験において検出された分子質量109kDaの蛋白のバンドは,過剰量の非 標識hFSHの存在下では検出されなかったことから,hFSHと受容体のク口スリンクした ものと考えられ,リガンドの分子質量を弓|くと約76kDaとなり,これはhFSH.Rのアミ ァ ′ 酸 配 列 か ら 推 定 さ れ た 分 子 量 76, 000に ほ ぼ 一 致 し て い た .   以上の結果から,本研究において発現されたhFSH・Rは機能的な蛋白として産生されて いることが確認された・

  hFSH.Rの遺伝子多型と疾患との間には関連性を認めなかったが,今後症例数を増やす ことにより,血中のゴナドト口ビン値やエストラジオール値あるいは黄体機能などの機能 的側面との関連を検討していきたい.

(3)

  ヒト組織の大量入手には制限があり,hFSH‑Rの蛋白レベルでの研究には困難が伴うが,

hFSH‑R cDNAのクローニングに成功したことで受容体自身の構造や機能の解析だけでは なく,各種の生殖内分泌異常と受容体異常との関連性に関する研究にも大きく貢献できる と考えられる.

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

ヒト精巣卵胞刺激ホルモン受容体 cDNA の クローニングおよびその機能解析

  PMSG処理をした未熟ラット卵巣から得られた全RNAを用いて,ラット卵胞刺激ホル モ ン 受 容 体(FSH‑R)cDNAの 塩 基番 号621か ら1031に 対 応す るcDNA断 片 をRT‑PCR 法により得た.このcDNA断片を32Pで放射性標識しブ口ーブとして用い,ラムダgtllヒ ト精巣cDNAライブラリーのスクリーニングを行い,hFS H‑Rをコードすると考えられる cDNAが得られたので,その塩基配列を決定した.得られたcDNAを発現ベク夕一に組み 込み,293細胞(ヒト胎児腎由来の細胞株)にトランスフェクションして,1251で標識さ れたhFSHに対する特 異的結合部位の 発現の有無, 続いて,hFSHを添加 したときの cAMPおよぴイノシトールリン酸の産生能について検討した.さらに,293細胞に発現さ れた受容体に対する,hFSHの結合能とFSH以外の各種ヒトゴナドトロビンあるいは動物 のゴナドトロピンの結合能との比較を行った.ヒト卵胞期卵巣および月経周期21日目の 黄体からp oly (A) mRNAを抽出した後に,hFSH‑R cDNAの塩基番号744から1026に対 応 す る 放 射 性 標 識cRNAブ 口 ー ブ を 作 製 し , ノ ー ザ ン ブ 口 ッ ト 分析 を 行っ た.

  トランスフェクションされた293細胞を12aI̲hFSHとともに,1,000倍過剰量の非標識 hFSHの存在下あるいは非存在下で培養した後,disuccinimidyl suberate (DSS)を用い,

hFSHとhFSH‑Rとのク口スリンクを起こした後にSDS ‑ボリアクリルアミドゲル電気泳 動 を 行 い , ゲ ル を − 70℃ , 14日 間 の オ ー ト ラ ジ オ グ ラ フ イ ー に 用 い た .   内分泌疾患を有する女性患者70名の末梢血リンバ球からDNAを抽出し,これを鋳型と してPCR法を行い,hFSH‑R遺伝子の塩基番号1624から2143までを増幅した.本研究で ク口 一 二ン グ され たcDNAの2039番塩 基 はアデニンであ り,既報のヒ ト卵巣FSH‑R cDNAではグアニン であることから,後者では制限酵素BsrIにより,520bpのPCR産物 が413bpと107bpに 切断されるこ とによるRFLP解析で 遺伝子多型の 頻度を調べた.

  これらの実験結果を要約すると,クローニングされたcDNAの塩基配列から,hFSH‑R はシグナルベブチドも含め695個のアミノ酸からなり,N末端には366個のアミノ酸から

181―

郎三 雄 一 征信 輝 本   橋 藤西 石 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(5)

  なる細胞外領域を有し,また,7個の膜貫通領域を有すると推定された.トランスフェク   ショ ンされ た293細胞に 対し て125I̲hFSHは強 い結合 を示 し, 解離定数はi.sxl0.9Mであ   っ た . しか し,hCGはほ とん ど結 合を示 さず ,hLHも 高濃 度で 弱い結 合を 示し ただけ て   あっ た.動 物の ゴナ ドト 口ビン では ,ラ ヅトFSHがhFSHに類 似し た結合を示したが,ブ   タや ヒツジ のFSHおよび ウマ のCGの結合 能は 著し く低 いもの てあ った,トランスフウク   シ ョ ン さ れ た293細 胞にhFSHを 加 え る と ,用量 に依 存し たcAMPの産 生増 加を 認めた .   イ ノ シ ト ー ル リ ン 酸の 産 生 は , ヒ トLH/CG受容 体を 発現 した293細胞 に対す るhCGの 効   果に 比して 弱い もの であ ったが ,hFSHの用量に依存しての増加を認めた,これらの結果   から ,hFS H‑Rの 細胞内 情報 伝達 にはAキ ナー ゼ系だ けで はな くCキナーゼ系の関与も推   測 さ れ た .hFSH‑RmRNAの ノ ーザ ン ブ ロ ッ ト 分 析 て は ヒ 卜 卵胞 期 卵 巣 に お い て7.0,   4.2,2.5 kbの3本の バン ドが認 められたが,月経周期21日目の黄体においてはバンドは   検出されなかった・

    125I̲hFSHとhFSH‑Rと の ク 口 ス リ ン ク 実験で は分 子質 量が 約109kDaと 推定 される バ   ンド が検出 され たが ,1,000倍 過剰量のhFSHの存在下では検出されなかった.この蛋白   はhFSHと受 容体 のク 口ス リンク したものと考えられ,リガンドの分子質量を弓|くと約   76kDaと なり ,hFS H‑Rの アミノ 酸配 列か ら推 定され た分 子量76,000に一致していた.

    本 研究の ク口 一ン をA型, 既報 の卵巣から得られたクローンをM型とすると,70名のう   ちAAは33名(47.1%),AMは31名(44.3% ),MMは6名(8.6% )て あった.hFSH‑Rの遺伝   子多型と疾患との間には関連性を認めなかったが,血中ゴナドト口ビン値やエストラジオ   ー ル 値 あ る い は 黄 体 機 能 な ど と の 関 連 を 今 後 は 検 討 し て い き た い .     以 上の結 果か ら, 本研 究にお いて発現されたhFSH‑Rは機能的な蛋白として産生されて   いることが確認された・

    公開発表に際し,石橋教授より,ヒト精巣を研究対象として用いた理由,スキャッチャ   ード 解析で のプ ロッ ト数 が少な い理 由,tot al cAMPの意味 ,添 加したhFSHの生理的な   濃度範囲,イノシトールリン酸の産生量の有意性,ノーザンブ口ット分析で4.2kbのパン   ドが 優勢な 理由 につ いて ,また ,西教授より,cDNAのサイズとノーザンブロット分析の 4.2kbのバンドとの関係,1種類のcDNA導入により2本のバンドが検出された理由,塩基・

  アミ ノ酸レ ベル での 卵巣 のFSH受 容体と の比 較, 卵巣 からの クロ ーンとの相違点と本研   究の 受容体 遺伝 子の 多型 との関 係, ラッ トFSH受 容体 との比 較に おける本研究のクロー   ンの 正当性 ,遺 伝子 型でMMの頻 度が低かった理由などについて,質問があった.また藤   本 教 授 から は, 高濃 度のヒ トLH添加 でcAMPの産 生増 加が 観察 された 理由 ,最 終的な 受   容体 の機能 解析 に最 適の 細胞株 ,黄 体期 の時 期によ る黄 体の 受容体m RNAの検出の差の   可能性,遺伝子多型の臨床的意義について質問があった.申請者はこれらの質問に対して,

  研 究 結 果 と 文 献 的 見 解 と か ら , 概 ね 妥 当 な 解 答 を な し え た も の と 判 断 さ れ た .     審査員一同は,これらの研究成果を評価し,申請者が博士(医学)の学位を授与される   のに資格を有するものと判定した.

参照

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