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新 型 家 蚕 濃 核 病 ウ イ ル ス (BmDNV ー 2) の 増 殖 機 構 に     I

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Academic year: 2021

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(1)

     博 士 ( 農 学 ) 早 川    徹      学 位 論 文 題 名

新 型 家 蚕 濃 核 病 ウ イ ル ス (BmDNV ー 2) の 増 殖 機 構 に     I

     関 す る 研 究

学位 論文内容の要旨

  家蚕 濃 核 病ウ イ ルス (Bombyx mori densonucleosis virus;BmDNV)はカイ コ に 軟 化病 を 引 き起 こ し、 養蚕農 家に大き な経済的 ダメージ を与えるウ イルスで あ る 。 本ウ イ ルス は 線 状1本鎖DNAをウ イ ル スゲ ノ ム とし て 持つ 小 形 球状 ウ イ ル ス であ る 。 歴史 的 には 伊那株 や山梨株 を初めと するいく っかの株が 分離され て お り、 そ れ ぞれ 共 通の 性状を 示すこと から、パ ルボウイ ルス科デン ソウイル ス(DNV)属 に 分類 さ れて 来 た 。ま た 一 方で 、 伊那 株 と 山梨株は 蚕品種に対 する 感受 性や血清 学的性状 の違いか らそれぞ れBmDNV―1とBmDNV−2と呼ばれ、区別さ れる に至った 。しかし 、近年のBando,et. al.(1992)の報 告から、BmDNV―2が BmDNV−1な ど 他 のパ ル ボウイ ルスとは 異なる遺 伝子構造 を持っこ とが明らか に な り 、BmDNV−2が 新 し い タ イ プ の ウ イ ル ス で あ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。   本研 究 で はBmDNV−2の 遺伝子 構造をよ り詳しく 解析し、 本ウイル スがパルボ ウイノレスとは異なる新型ウイノレスであることを明らかにすると共に、本ウイノレ ス の 増 殖 機 構 の 詳 細 を も 明 ら か に し た の で 以 下 に 報 告 す る 。

1.新型家 蚕濃核病 ウイルス(BmDNV−2)の複製 機構

  パ ル ボウ イ ルス の ゲ ノムDNAの末 端 領 域に は 大 きなへア ピン構造 を形成し 得 る 回 文 配 列 が 存 在 し て い る 。 グ ノ ムDNAの 複製 は この へ ア ピン 構 造を プ ラ イ マー と し て開 始 し、 一方 の末端に 閉環状構 造を有する 複製中間 体を生産 する。

  本 研 究で は この パ ル ポウ イ ルス に 特 徴的 な 複 製中間 体に注目 し、PCR法を 用 いた 複 製 中間 体 の構 造解 析を行っ た。すな わち、ウイ ルス感染 細胞内に おける 複製中間 体の構造 を、BmDNV一1とBmDNV−2で比較す ることに より両者 のDNA複製 機構の異 同を解析 した。

  そ の 結果 、BmDNV−1で は他のパ ルボウイ ルスの複 製中間体で 観察され るよう な末 端 の 閉環 状 構造 が検 出された が、BmDNV一2に おいてその ような分 子は検出 できなか った。こ の結果はBmDNV−2がパルボ ウイルス とは異な る機構でDNAを複 製す る 事 を示 し てお り、 本ウイル スがこれ までに報告 のない新 しいタイ プのウ イルスで あること を強く示 唆していた 。

2. BmDNVー2のゲノム構造解析

(2)

  本ウイルスは2種のゲノム(VD1,VD2)を持っウイルスであるが、それぞれの 大きさは6. 6kb,6.lkbと小さく、その一次構造の決定は比較的容易である。

  本研究ではウイルス遺伝子上に存在する情報の解析から増殖機構の解明のア プローチする目的で、VD2の塩基配列を決定し、その遺伝子構造の解析を行っ た。一方、時を同じくして信州大学と当研究室の共同研究グループによりVD1 の塩基配列も決定された。

  その結果、BmDNV―2の2種のウイルスゲノム(VDl. VD2)の全塩基配列が決定さ れたことになり、ウイルスに存在しているORFの大きさや位置、そしてウイル ス 遺 伝 子の 発現 制御に 関わ ると 考え られる 配列 など が明 らかに なっ た。

3. BmDNVー2に お け る ウ イ ル ス タン パ ク 質の コー ド領域 同定 と機 能解析   ウイルスDNAにコードされるウイルスタンパク質の機能については主要構成 タンパク質のコード領域が示唆されたのみで、その他のウイルスタンパク質に ついては依然不明のままであり、本ウイルスの増殖機構を理解する上で、ウイ ルスタンパク質の発現及び機能についてさらに解析する必要が考えられた。

  そこで本研究では、感染細胞におけるウイルス遺伝子の発現を追うと共に、

ウイルスDNAの塩基配列を基にウイルスタンパク質発現プラスミドを構築し、

培養細胞における一過性の発現系を用いて、ウイルスにコードされているタン パク質の機能解析を試みた。

  その結果、ゲノム上に存在する全てのORFからmRNAの転写が認められ、発現 量に差はあるものの、VD1,VD2共にウイルス感染細胞内において発現している ことが明らかになった。またこれらORFにコードされているウイルスタンパク 質についても、グノム上に存在する6つのORFの内、VD10RF1とVD20RF1を除く 4つのORFにコードされているウイルスタンパク質について、少なくともその 機能の一部が明らかになった。すなわち、VD10RF2には主要構成タンパク質が コードされていた。そしてVDIORF3とVD10RF4にコードされているウイルスタン パク質(p37,p14)は共に主要構成タンパク質遺伝子のプロモーターをアクティ ベートし、VD20RF2にコードされているウイルスタンパク質(p27)は調べた限り においてウイルスグノム上に存在する全てのプロモーターをアクティベー卜す ることが示され、これら3つのウイルスタンパク質はウイルスの制御タンパク 質であることが示された。

  以上、ウイルスの複製中間体の構造解析からBmDNV−2は動物・植物ウイルス を通して、これまでに報告のない新しいタイプのウイルスであることが明らか になった。しかし、一方において、ゲノム上で構成タンパク質のコード領域が ゲノムDNAの3 側に存在しており、5 側には非構成タンパク質がコードさ れている点や、5 側にあるこの非構成タンパク質のアミノ酸配列中にNTP− binding motiefが存在しているなどの点において特に、VD1とパルボウイルス

(3)

ゲノムの構造上の類似性も認められた。本ウイルスとBmDNV―1や他のパルボウ イルスとの進化・分類学上の関連性については、昆虫ウイルスと哺乳類のウイ ル ス と の 関 係 を 考 え る 上 で も 興 味 深 い 課 題 と 考 え ら れ た 。   ところで、BmDNV一2は厳密な宿主・組織特異性を持っているため、現在、ウ イルスに感受性のある培養細胞系は確立されていない。よらて、感受性細胞を 樹立することにより、宿主特異性の決定に関与する因丶子を解明する事が可能で あると考えられる。本実験では、本ウイルスグノムDNAをカイコ由来の培養細 胞に導入し、ウイルス遺伝子の発現にっいて検討を行ったが、その発現は認め られず、BmDNV−2のプロモーターを含むレポータープラスミドを単独で培養細 胞に導入してもそれぞれのプロモーター活性は検出できなかった。しかし、

VD20RF2にコードされているウイルスタンパク質(p27)が非感受性細胞において 自分自身(VD20RF2)のプロモーターを含めた全てのウイルスプロモーターをア クティベートすることができるという事実は、このp27が本ウイルスの増殖過 程において1つのトリガーとして働いている可能性を示している。っまり、本 ウイルスが増殖できるか否かは進入した細胞内でp27を発現できるか否かにか かっている可能性が示唆されたことになる。

  以上のことから、本ウイルスの遺伝子発現は宿主細胞の因子のみならず、ウ イルス自身がコードする複数の遺伝子産物によっても複雑に制御されているこ とが明らかになった。

(4)

     学位論文審査の要旨      主査   教授   飯塚敏彦      副査   教授   上田一郎      副査   教授   三上哲夫      副査   助教授   伴戸久徳      学位論文題名

新型家蚕濃核病ウイルス(BmDNV ―2) の増殖機構に      関する研究

本 論 文は 、 総 頁数75頁 、 表1、 図20か らな る 和文論 文で、他に 参考論文 4編 が 添え ら れて い る。

  家蚕濃核病ウイルス(Bombyx mori densonucleosis virus;BmDNV)はカイコ に軟化病を引き起こし、養蚕農家に大きな経済的ダメージを与えるウイルスで ある。本ウイルスは線状1本鎖DNAをウイルスゲノムとして持つ小形球状ウイ ルスである。歴史的には伊那株や山梨株を初めとするいくっかの株が分離され ており、それぞれ共通の性状を示すことから、パルボウイルス科デンソウイル ス(DNV)属に分類されて来た。また一方で、伊那株と山梨株は蚕品種に対する 感受性や血清学的性状の違いからそれぞれBmDNV―1とBmDNV―2と呼ばれ、区別さ れるに至った。しかし、近年のBando,et. al.(1992)の報告から、BmDNV−2が パルボウイルスとは異なる新しいタイプのウイルスである可能性が示唆された。

  本研究ではBmDNV―2の遺伝子構造をより詳しく解析し、本ウイルスがパルボ ウイルスとは異なる新型ウイノレスであることを明らかにすると共に、本ウイル ス の 増 殖 機 構 の 詳 細 を も 明 ら か に し た の で 以 下 に 報 告 す る 。

1.新型家蚕濃核病ウイルス(BmDNVー2)の複製機構

  パルボウイルスのゲノムDNAの末端領域には大きなヘアピン構造を形成し得 る回文配列が存在している。ゲノムDNAの複製はこのヘアピン構造をプライ マーとして開始し、一方の末端に閉環状構造を有する複製中間体を生産する。

  本研究ではこのパルボウイルスに特徴的な複製中間体に注目し、PCR法を用 いた複製中間体の構造解析を行った。その結果、BmDNV−1では他のパルボウイ ルスの複製 中間体で観 察されるよ うな末端の閉環状構造が検出されたが、

BmDNV−2においてそのような分子は検出できなかった。この結果はBmDNV−2がパ ルボウイルスとは異なる機構でDNAを複製する事を示しており、本ウイルスが これまでに報告のない新しいタイプのウイルスであることを強く示唆していた。

(5)

2. BmDNV−2のゲノム構造解析  ,

  本ウ イル スは2種の ゲノ ム(VD1,VD2)を持 っウ イルス であ るが 、それぞれの 大 きさ は6. 6kb,6.lkbと小さく、その一次構造の決定は比較的容易である。

  本研 究で はウ イル ス遺伝 子上 に存 在する情報の解析から増殖機構を解明する た め、VD2の 塩基 配列 を決 定し た。 一方 、時 を同 じくし て信 州大 学と当研究室 の 共同 研究 グル ープ によりVD1の塩 基配列も決定されたため、BmDNV―2の2種の ウイノレスゲノム(VDl. VD2)におけるORFの大きさや位置、ウイルス遺伝子の発現 制御に関わると考えられる配列などが明らかになった。

3. BmDNV一2に お け る ウ イ ル ス タ ン パ ク 質 の コ ーH頭 域 同 定 と 機 能 解 析   本 研究 では 、感染 細胞 にお ける ウイ ルス 遺伝子の発現を追うと共に、ウイル スDNAの塩 基配 列を 基に ウイ ルス タン パク 質発現 プラ スミ ドを 構築 し、 培養細 胞に おけ る一 過性の 発現 系を 用い て、 ウイ ルスにコードされているタンパク質 の 機 能 解析 を 試 み た 。 そ の 結 果、 ゲノ ム上 に存在 する6っ のORFからmRNAの転 写が 認め られ 、発現 量に 差は ある もの の、VD1,VD2共にウイルス感染細胞内に おい て発 現し ている こと が明 らか にな った 。ま たこ れらORFに コー ドさ れてい るウ イル スタ ンパク 質に っい ても 、そ の機 能の一部が明らかになった。すなわ ち 、VD10RF2に は 主 要 構 成 タン パク 質が コー ドさ れて いた 。そ してVD10RF3と VD10RF4に コー ドされているウイルスタンパク質(p37,p14)は共に主要構成タン パク 質遺 伝子 のプロ モー タ← をア クテ ィベ ート し、VD20RF2に コー ドさ れてい るウ イル スタ ンパク 質(p27)は調 べた 限り におい てウ イル スゲ ノム 上に 存在す る全 ての プロ モータ ーを アク ティ ベー トす るこ とが 示さ れ、 これ ら3つ のウイ ル ス タ ン パ ク 質 は ウ イ ル ス の 制 御 タ ン パ ク 質 で あ る こ と が 示 さ れ た 。   BmDNV一2は 厳密な 宿主 特異 性を 有し てい る。本研究では、カイコ由来の培養 細胞 に、 本ウ イルス ゲノ ムを 導入 して ウイ ルス遺伝子発現の検討を行った。そ の結 果、VD20RF2に コー ドさ れて いる ウイ ルスタンパク質(p27)が非感受性細胞 に お い てVD20RF2の プ ロ モ ータ ーを 含め た全 てのORFプ ロモ ータ ーを アク ティ ベー トす るこ とが明 らか とな った 。こ の事 は、本ウイルスの遺伝子発現が宿主 細胞 の因 子の みなら ず、 ウイ ルス 自身 がコ ードする複数の遺伝子産物によって も制 御さ れて いるこ とを 示し た。

  以上 のよ うに 本研 究は 新し いタ イプの昆虫ウイルスの発見を行ったのみなら ず、カ イコ のウ イル ス病 防除 への 可能性をも示す研究となった。よって審査員 一同は 、最 終試 験の 結果 と合 わせ て、本論文の提出者早川徹は、博士(農学)

の学位 を受 ける に十 分な 資格 があ るも のと 認定 した 。

参照

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