博士( 地球環 境科 学)塩寺さとみ
学位論文題名
Diversity in leaftraitSandarChiteCture ●
amongunderStoreyplantSCO ― OCCurrlng inatropiCalmontaneforeSt ,WeStJaVa ,IndoneSia
( 西ジ ャワ の熱 帯山 地林 に共 存する 下層 植物 の個 葉特性と 分 枝形 態の 多様 性)
学位論文内容の要旨
低 緯度 域に みら れる 熱帯 山地 林は ,一 年を 通し で直温多湿で,多くの植物種が同所的 に生育している。そこではまた,植物の生活形も多様であり,これらの生活形は形態的特性や その生活の方法を反映していると考えられる。本研究ではこの形態学的な多様性に着目し、
熱帯山 地林 の閉 鎖林 冠下 で生育している植物群集を対象として,(1)多様な生活形に属す る植物 の葉 寿命 と個 葉特 性の多種間比較,および(2)木本稚樹の個葉特性と分枝様式との 関係,の二点に着目して研究を行った。調査はインドネシア西ジャワ州のグヌン・ハリムン
・サラック国立公園の山地林(標高1,100 m)で行った。
ま ず, 様々 な生 活形 に属 する 植物 の葉 寿命 と個 葉特陸との比較を行ない,葉寿命がど のような要因によって決定されているのか,そして,閉鎖林冠下において葉寿命がどのよう に分布 して いる のか につ いて検討した。様々な生活形(木本稚枇草本jシダ,ツル植物)に 属する 高さ1.5mま での 植物101種 を調 査対 象と し,2002年から2005年にかけて,毎月個葉 フェノ 口ジ ーの 調査 を行 った。さらに,同種個体から個葉を採取し,個葉面積,LMA (leaf massげareagm'L), 窒 素 含 量 防御 物 質 鯲 フ ェ ノ ー ノ レ 量縮 合型 夕ン ニン 蜀, 葉の 硬さ を 測定した。葉寿命と個葉特陸との関係を生存時間解析によって算出し,これをもとに推定葉 寿命を求めた。
個 葉 の 生 存 解 析 の 結 果 , 様 々 な 葉 の 性 質 の 中 で ,LMAは葉 の生 存に 最も 強い 正の 効 果を持っていた。推定葉寿命については,木本稚樹と草本との間に違いは見られなかった。
ついでシダ ツル植物が長い葉寿命を示した。それぞれの種の推定葉寿命は10ー50ケ月に収 まっており,極端に寿命の短いものや長いものは存在しなかった。葉寿命と個葉特陸との関 係を 比 較 し た と こ ろ , 同 じ寿 命の 場合, 木本 稚樹 ではLMAが高 く,ツ ル植 物で はLMAが 低 かった。このことから,異なる生活形間では葉の質と葉寿命との関係性が異なっていること が示唆された。このような違いは,樹木がモジュール構造を持ち,様々にアロメトリーを変化 させることができるというという,他の生活形との構造上の違いに起因していると推察した
。 熱帯には,単軸のものから分枝の多しゝものまで,様々な分枝様式を持った樹木が存在
する。樹木にとって,個葉を効果的に配置することは限られた資源を利用して効率の良い光 合成を実現するために重要であるので,個葉面積は樹木のア口メ卜リーを反映していると考 えられている。そこで,分枝様式の異なる19種の木本の稚樹を用いて,個葉面積と樹木のア口 ヌト リー (一 次枝 数vs.樹高,樹高vs.直径,個葉数vs.直径)との関係について,階層ベイ ズモデルを用しゝて解析した。調査は2004年と2005年の2ー3月に行ない,成長にともなうア口 メト リー の変 化を 見る ため に, 様々な 大き さの 稚樹(10u‑400 cm)についてサンプリングを 行 っ た 。19種 の う ち5種 は 低 木 に 属 し て お り , あ と の14種 は 高 木 の 稚 樹 で あ っ た 。 19種の個葉面積は16.4 cm丶一l丶109cm2と大きな幅を示した。最も個葉面積の小さな種は QM加 血 あ 蚰 留 紅 大き な 種は 艤嫐 棚響 級鰡 ぬび であ った 。個 葉面 積は 一次枝 数, 葉教 樹高 と強い負の相関関係を示した。これにより,個葉面積の小さい種では一次枝数が多く,葉数 が多く,樹高が高しゝことが示された。個葉面積の大きな種では逆の傾向がみられた。調査対 象種 のう ち5種 は低 木で あったが,個葉面積や樹木のア口メトリーには成木サイズによる違 いは見られなかった。個葉面積とア口メトリーの関係は,樹木個体が小さな時(直径=0.5 cm) とあ る程 度成 長し た後 (直 径〓215cm)と でほ とん ど変 化しな かっ た。 しか し、一次 枝に対して二次枝の数が多い種では成長にともなって高さ成長への投資が制限されており,
同じ直径でも他の種と比べると低い樹高を持つことが分かった。個体全体の葉面積を比較す ると,個葉面積の小さい種は大きい種よりも直径あたりの総葉面積が大きいことが示唆され た。 しか しな がら ,葉 の厚さは個葉面積とは独立しており,個葉面積の大きい種が大きなL MAを持っているわけではなかった。このことから,総葉面積だけではなく総葉重においても,
個葉面積の小さい種の方が大きな値を持つことが示された。
これ らの 研究 から ,熱 帯山 地林の 林床 で共 存し ている植物は同じような葉寿命と個葉 特I生 を 持 っ て い る 斌 木本 稚樹 につ いて は他の 生活 形よ りも 同じIMAに対す るは 寿命 が短 いことが示された。また,樹木においては,個葉面積とア口メトリーとが密接な関係を持って いおり,成長によってその関係性が変化することが明らかになった。このような,環境に適応 した収斂と放散との組み合わせによって,熱帯山地林の閉鎖林冠下の環境で,多様な生活形 の植物の共存が可能となっていると考察した。
学位 論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 准教授 助教
甲 山 隆 司 高 田 壮 則 工 藤 岳 久 保 拓 弥
学位論 文題名
Diversity in leaftraitSandarChiteCture ●
amongunderStoreyplantSCO − OCCurrlng inatropiCalmontaneforeSt , WeStJaVa , IndoneSia
( 西 ジ ャ ワ の 熱 帯 山 地 林 に 共 存 す る 下 層 植 物 の 個 葉 特 性 と 分 枝 形 態 の 多 様 性 )
低 緯 度 域 に み ら れ る 熱 帯 山 地 林 は 、 一 年 を 通 し て 恒 温 多 湿 で 、 多 く の 植 物 種 が 同 所 的 に 生 育 し て い る 。 そ こ で は ま た 、 植 物 の 生 活 形 も 多 様 で あ り 、 こ れ ら の 生 活 形 は 形 態 的 特 性 や そ の 生 活 の 方 法 を 反 映 し て い る と 考 え ら れ る 。 申 請 者 は 、 こ の 形 態 学 的 な 多 様 性 に 着 目 し 、 熱 帯 山 地 林 の 閉 鎖 林 冠 下 に 生 育 す る 植 物 群 集 を 対 象 と し て 、 (1) 多 様 な 生 活 形 に 属 す る 植 物 の 葉 寿 命 と 個 葉 特 性 の 多 種 間 比 較 、 お よ び (2) 木 本 稚 樹 の 個 葉 特 性 と 分 枝 様 式 と の 関 係 、 の 二 点 に つ い て 研 究 を 行 な っ た 。 調 査 対 象 は イ ン ド ネ シ ア 西 ジ ャ ワ 州 の グ ヌ ン ・ ハ リ ム ン ・ サ ラ ッ ク 国 立 公 園 の 山 地 林 ( 標 高1,100 m)で あ る 。
第 一 の 課 題 で は 、 様 々 な 生 活 形 に 属 す る 植 物 の 葉 寿 命 と 個 葉 特 性 を 比 較 解 析 し 、 葉 寿 命 が ど の よ う な 要 因 に よ っ て 決 定 さ れ て い る の か 、 そ し て 、 閉 鎖 林 冠 下 に お い て 葉 寿 命 が ど の よ う に 分 布 し て い る の か を 検 討 し た 。 様 々 な 生 活 形 ( 木 本 稚 樹 、 草 本 、 シ ダ 、 つ る 植 物 ) に 属 す る 高 さ1.5mま で の 植 物101種 を 調 査 対 象 と し 、 展 葉 フ ェ ノ 口 ジ ー の 調 査(30ケ 月 ) を 行 な っ た 。 さ ら に 、 同 種 個 体 か ら 個 葉 を 採 取 し 、 個 葉 面 積 、 LMAG裏 の 面 積 当 り 重量 )、 窒素 含量 、防 御物 質( 総フ ェ ノー ル量 、縮 合型 夕ン ニン 量) 、 葉 の 硬 さ を 測 定 し た 。 葉 寿 命 と 個 葉 特 性 と の 関 係 を 生 存 時 間 解 析 に よ っ て 算 出 し 、 こ れ を も と に 推 定 葉 寿 命 を 求 め た 。 個 葉 の 生 存 解 析 の 結 果 、 様 々 な 葉 の 性 質 の 中 で 、LMA が 葉 の 生 存 に 最 も 強 い 正 の 効 果 を 持 っ て い た 。 木 本 稚 樹 と 草 本 と の 間 に 推 定 葉 寿 命 の 違 い は 見 ら れ な か っ た 。 つ い で つ る 植 物 、 シ ダ 植 物 が 長 い 葉 寿 命 を 示 し た 。 そ れ ぞ れ の 種 の 推 定 葉 寿 命 は10ー50ケ 月 に 収 ま っ て い た 。 葉 寿 命 と 個 葉 特 性 と の 関 係 を 比 較 し
た と こ ろ 、 同 じ 寿 命 に 対 し て 、 木 本 稚 樹 のLMAは大 き く 、 つ る 植 物 のLMAは 小さ か った 。こ のこ とから 、異なる生活形間では葉の質と葉寿命との関係性が異なってい る こと が判 った 。この ような違いは、樹木がモジュール構造を持ち、可塑的にア口ヌ ト リー を変 化さ せるこ とができるというという、他の生活形との構造上の違いに起因 していると推察した。
熱帯 には 、単 軸陸の ものから分枝頻度の高いものまで、様々な分枝様式を持った樹 木 が存 在す る。 樹木に とって、個葉の空間配置戦略は、限られた資源を利用して効率 の 良い 光合 成を 実現す るために重要であり、個葉面積は樹木のア口ヌトリーを反映し て いる と考 えら れてい る。そこで、第二課題では、分枝様式の異なる19種の木本の稚 樹 (樹 高10 ‑400 cm)を用 いて 、個 葉面 積と 樹木の ア口メトリー(一次枝数ー樹高、
樹 高― 幹直 径、 個葉数 一幹直径)との関係について、階層ベイズモデルを用いて解析 し た。19種 の個 葉面積 は1614ー109 cnr2と大きな変動幅を示した。個葉面積は一次枝 数 、葉 数、 樹高 と強い 負の相関を示した。個葉面積の小さい種では、一次枝が多く、
葉 数が 多く 、樹 高が高 かった。個葉面積や樹木のア口メトリーには、樹種の成熟サイ ズ によ る違 いは 見られ なかった。個葉面積とアロヌトリーの関係は、樹木個体が小さ な 時 ( 幹 直 径‑ 0.5 cm)と 、 あ る 程 度 成 長 し た 後 ( 幹 直 径‑ 2.5 cm)と でほ とん ど 変 化し てい なか った。 しかし、一次枝に対して二次枝の数が多い種では、成長にとも な って 高さ 成長 への投 資が制限される傾向があり、同じ幹直径では他の種と比べて樹 高 が低 かっ た。 個体全 体の葉面積を比較すると、個葉面積の小さい種は大きい種より も 幹直 径あ たり の総葉 面積が大きかった。葉の厚さは個葉面積とは独立しており、個 葉面積の大きしゝ種が大きなLMAを持っているわけではなかった。したがって、総葉面 積だけではなく総葉重においても、個葉面積の小さい種の方が大きな値を示していた。
以上 の結 果か ら、LMAは 葉寿 命と の強 い相 関が認 め. られ るが 、LMAと 個葉面 積の 相 関は 低く 、個 葉面積 は樹冠形成や葉数と密接な関係にあることが判明した。植物の 葉 に着 目す るこ とによ って、主要な光合成器官としての個葉の機能と、その器官をど のように配置し、利用するかという樹木の戦略の双方を、総合的に論じた点において、
本 研究 は独 創性 が高い 。熱帯山地林に共存する多種の植物について、生態学的機能の 類 似性 と相 違性 を明確 に示したことも評価に値する。本研究の成果は、いまだ未解明 で ある 熱帯 山地 林の情 報を補完した点においても意義があり、熱帯林における多種共 存機構の解明に資するものである。
審査委員一同は,以上の成果を高く評価し,また研究者として誠実かつ熱心であり,
大学院博士課程における研鑽や修得単位などもあわせ,申請者が博士(地球環境科学)の学 位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。