• 検索結果がありません。

短 時間全力運動の繰り返し時に見られる 筋疲労の機序

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "短 時間全力運動の繰り返し時に見られる 筋疲労の機序"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 教 育 学 ) 松 浦 亮 太

学 位 論 文 題 名

短時間全力運動の繰り返し時に見られる筋疲労の機序 学位論文内容の要旨

    運動時に起こるパフオ,マンスの低下は、伝統的に末梢性疲労が原因であるとされ てきた。短時間全力運動の繰り返し時に見られるピ ークパワー発揮(PPO)の低下に関し ては、クレアチンリン酸(PCr)の不完全な再合成と、筋内pHの低下が解糖系の律速酵素 に及ばす抑制効果の2っ が主な原因と考えられている。しかし最近では、筋の代謝産物そ れ自体が運動パフオーマンスの低下を引き起こすわけではないことが示唆されている。こ の最近の示唆によると、筋の代謝産物は中枢神経系(CNS)ヘ筋の代謝状況を伝える求心 性信号を発信するものであり、運動パフオーマンスの低下は、この求心性信号に基づぃて CNSが遠心性運動指令を 変化させた結果であるとされている。この考えは、Ulmer (1996) が提唱した目的的予期モデルに端を発して発展してきたものである。ただし、短時間全力 運動の繰り返し時において目的的予期モデルに則って筋疲労を検討した研究はない。加え て、 松浦 ら(2005)は、 繰り 返し の自 転車 スプリント(RCS)時における運動パフオーマ ン ス が 目 的 的 予 期 モ デ ル の 考 え 方 だ け で は 説 明 で き な い こ と を 示 唆 し て い る 。     そこ で本 研究では、Ulmer(1996)の目的的予期モデルを修正して新たな筋疲労モ デルを仮定し、そのモデルから短時間全力運動の繰り返し時における筋疲労の機序を検討 することとした。モデルを検討するにあたり、まず、短時間全力運動の繰り返し時におけ る末梢の筋代謝と筋ヘ送られる筋動員戦略の間の関係を明らかにし、その際の発揮パフォ ーマンスを検討する必要がある(課題1)。また、CNSへ伝えられた求心性信号は、統合 体そのものとして遠心性運動指令の作成過程に関与するのか、もしくはそれぞれの求心性 信号が詳細に遠心性運動指令の作成過程に関与するのかは明らかにされていない。本研究 で提案したモデルでは、求心性信号の統合体に基づぃて疲労感(RPE)・が知覚されること を仮定している。そこで、短時間全力運動の繰り返し時におけるRPEと遠心性運動指令の 関係を検討する必要がある(課題2)。

    上述 した 検討 課題 を考 慮に 入れ た結 果、課題1を検討するために【実験Il、【実 験H】 お よ び 【 実 験m】 、 課 題2を 検 討 す る た め に 【 実 験IV】 を 計 画 し た 。     【実 験I】で は 、35秒の 休息 を採 用し た繰り返しの自転車スプリント(RCS)と350 秒の休息を採用したRCSを行い、血中乳酸濃度(阻胡)と各自転車スプリント直前の酸素 摂 取 量(preV02)が 脚 の 表 面 筋 電 図(SEMG)活 動に 及ば す影 響 を検 討し た。2つ のRCS では、筋内のPCr量と筋 内pHを含む筋代謝の状況が大きく異なることが予測されるので、

148

(2)

求心性信号から最適な遠心性運動指令 が作成されているのならぱ、2つのRCS時における 脚のSEMG活動には差が生じると考えら れる。

    【実 験n]では 、 運動 の前 半と 後半 に1回ず つ350秒の休息を採用したRCSを行い、

前半と後半の350秒休息直後における自転車スプリント時のPPO、血中[L胡、脚のSEMG 活動を比較検討した。末梢からの求心 性信号の発信源として筋内pHに焦点を絞り、血中 [La'Jの差 が脚のSEMG活動とPPOに及ば す影響を検討した。

    【実 験Iu】で は 、炭酸水素ナトリウム(NaHC03)と偽薬(炭 酸カルシウム:CaC03) をそ れぞ れ経 口摂 取 した後に【実験II】と同様のRCSを行い、NaHC03の経口摂取がRCS 時におけるパワー発揮および脚のSEMG活動に及ばす影響を検討した。【実験H】での仮 説をより厳密に検討するため、NaC03によって筋内pHを操作し、同 じ時点でのパワー発 揮および脚のSEMG活動を比較した。

    【 実 験Wlで は 、 【 実 験H】 お よ び 【 実 験IHlと 同 様 のRCSを 行 い 、 各 自 転車 ス プリ ン卜 直前 のRPEとそ の直 後の 自転 車ス プリ ント時における 脚のSEMG活動の関係を 検討した。求心性信号が統合体としてCNSにおける遠心性運動指令の作成過程を修飾して いるのならば、複数の求心性信号を統合して知覚されるRPEと、自転車スプリント時にお ける脚のSEMG活動が対応すると考えら れる。

    【実 験I】 にお いて、筋内の代 謝状況の変化によってCNSか ら筋へ送られる筋動員 戦略が変化することを確認した。これにより、筋疲労は末梢性要因のみによって引き起こ されるわけではなく、代謝状況の情報を含んだ末梢筋からの求心性信号をCNSが考慮に入 れ、その結果起こるCNSからの遠心性運動指令の変化によって引き起こされることが示唆 された。筋の代謝状況を表す代表的な 指標の1っとして筋内pHが挙 げられるが、【実験 II】と【実験m】において、筋内pHの低下に差が生じればそれと対 応するように遠心性 運動指令が変化するわけでなく、運動の進行に伴って生じる他の代謝要因の変化も考慮に 入れて遠心性運動指令が決定されていることが推察された。また、末梢からの求心性信号 に基づいて変化する遠心性運動指令のみが発揮パフオーマンスを決定している可能性は低 く、求心性信号に基づぃて変化した遠心性運動指令と筋に末梢性に生じる抑制効果(末梢 性疲労)の相互作用によって発揮パフオーマンスが決定されている可能性が高い(【実験 Iu】)。

    短時間全力運動の繰り返し時にお いて、各全力運動直前のRPEとその直後の全力運 動時の遠心性運動指令は完全には対応 していないことを【実験W】で明らかにした。RPE は骨格筋、心臓および呼吸筋からCNSヘ送られる求心性信号の統合体に基づぃて作り出さ れるとされているので、短時間全力運動の繰り返し時に起こる遠心性運動指令の変化は、

骨格筋、心臓および呼吸筋からCNSへ送られる求心性信号の統合体そのものではなく、そ れ ぞ れ の 求 心 性 信 号 を 個 別 に 考 慮 に 入 れ て 行 わ れ る こ と が 示 唆 さ れ た 。     結論として、短時間全力運動の繰 り返し時に見られる筋疲労は末梢性疲労のみが反 映されているのではなく、末梢の骨格筋およぴ心臓や呼吸筋などの末梢器官からの求心性 信号に基づく、中枢神経系からの遠心性運動指令の変化も反映されている。遠心性運動指 令の 変化 をも たら す 多数の求心性信号は、個別に中枢神経系に 影響を及ばしている。

    ―149―

(3)

学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 准教授 教授

矢野 水野 柚木 小宮山

学 位 論 文 題 名

徳郎 眞佐夫 孝敬

伴与志(千葉大学教育学部)

短 時間全力運動の繰り返し時に見られる 筋疲労の機序

  

疲 労に関す る生理 的な研究 は古くか ら行わ れてきて いる。近年では、人について、骨 格 筋 へ の侵 襲 的 な方 法 や神経へ の電気 刺激ある いは磁 気刺激の 方法を用 いるこ とによ っ て骨格筋 の疲労が 検討さ れてきて いる。 その結果 、骨格筋の疲労が末梢や中枢神経に 由 来するこ とが明ら かにさ れてきた 。しか し、最近 、このような神経や筋に実体化した 疲 労を求め るのでは なく、 末梢の代 謝状況 を中枢神 経系へ伝え、この情報をもとに生体 の 恒常性維持を保つ方向ヘ筋動員が調節されるというモデルが提唱されている。っまり、

こ れはある 状況下で 運動パ フオーマ ンスを 最適化す るには、どの様な骨格筋の動員が必 要 かという 目的的予 期モデ ルである 。そし て、この モデルが実験的に検討されている。

こ う い った 検 討 の中 で 、 筆者 は 修 士論 文 ( 日本 生 理 人類 学 会 誌 、

2005

) で 、自転 車 ス プ リ ント を 繰 り返 し 行 う運 動

(RCS)

を用 い て 骨格 筋の疲 労を検討 した。 その結果 、 こ の 目 的的 予 期 モデ ル の 考え 方 だ けで は

RCS

時 の 運動パ フオーマ ンスが 説明でき ない こ と を 示 唆 し た 。 そ こ で 、 新 た な モ デ ル を 構 築 す る 必 要 性 が 生 じ た 。

  

筆 者が新た に提唱 したモデ ルは、末 梢での 筋代謝の 状態が中枢神経系で統合され、疲 労 感として 意識上に 表れる とするも のであ る。また 、運動パフオーマンスは筋代謝状態 が 中 枢 神経 系 を 介し て もたらす 筋の動 員状態と 筋の疲 労状態に よって決 定され るとい う ものであ る。さら に、こ のモデル が妥当 であるか を決定 するため には、

1

)末 梢の筋 や 運動に関 連する器 官から の情報と 骨格筋 の動員状 態との 関係性、 および

2

)疲 労感と 筋 動 員 状 態 と の 関 係 性 を 実 験 的 に 検 討 す る 必 要 が あ る と 指 摘 し て い る 。

  

実 験

I

J Physiol Anthropol

2006)

で は 、

10

秒 間 の 自 転 車 ス プ リ ン ト を

35

秒 の 休 息 で

10

回 繰 り 返 す 運 動

(RCS35)

350

秒 の 休 息 で

10

回 繰 り 返 す 運 動

(RCS3s0)

を 行った。 その時の 発揮最 大パワー 、酸素 摂取量、 血中乳酸値および表面筋電図の変動 を 測 定 した 。 そ の結 果 、

RCS3s0

より

RCS35

の代 謝状態 が、安静 時から

RCS

時に かけて大 き く変化し たことを 各測定 値から確 認した 。また、 この代 謝状態下 で

RCS35

時の表面筋 電 図 の 平均 パ ワ ー周 波 数(外側 広筋) が

RCS3s0

時よ り低いこ とを認め た。こ れらの結

(4)

果か ら中 枢神 経系 が筋 代謝 産物 の求 心性 信号 に基 づ いてRCS時の 骨格 筋の動員状態を 決定していると考察した。

  実 験II(JPhysiol Anthropol,2007)で は 、5セ ッ ト 目 と9セ ッ ト 目 の 前 に350 秒 の 休 息 を 入 れ 、 そ れ 以 外 の 休 息 は35秒 で あ る 運 動(RCScomb)とRCS35を行 った 。 RCScombで は 最大 パワ ーは4セ ット 目 まで 漸次 低下 して 、そ の後 の350秒休 息後 の5セ ット 目で は1セッ ト目 の 値ま で回 復し た。RCScomb時の平均パワー周波数〈外側広筋)

は4から5セッ トに かけ て増 加を 認め た。 血中乳 酸は両負荷で漸次増加した。これらの 結果 から 最大 パワ ーの 低下 は1) 乳酸 増に 伴う 筋内pHの 低下 が中 枢神 経系を介して筋 の動 員状 態へ 影響 を及 ばし たこ と、 また は2) 筋内pHの 低下 が筋 へ影 響を及ばしたこ と に1) の 条 件 が 重 な っ た こ と に よ る と い う ニ つ の 可 能 性 を 示 唆 し た 。   実 験III (EurJAppl Physiol,2007)で は 、 実 験IIの ニ つ の 可 能 性を 吟味 する た めに 、炭 酸水 素ナ トリ ウム を経 口摂 取し て、筋 中及び血中のpHを上昇させた場合とプ ラセ ボ時 の場 合を設 定した。そしてRCScomb時の 筋動員の状態の相違を検討した。最大 パワ ーは9セ ット 目でプラセボ時より炭酸水素ナ トリウム摂取時で高い傾向であった。

しかし、炭酸水素ナトリウム摂取は表面筋電図(外側 広筋)に影響を及ばさなかった。

これ らの 結果 から 、RCS時の 筋動 員状 態が 筋内pHの みに よっ て決 定さ れないこと、お よび筋内pHの低下がパワー発揮へ影響すると考察した 。

  実 験IVでは 、末 梢に おけ る代 謝に 関係 する 疲労 感 を主 観的 運動 強度の指 標(RPE)を 用い て評 価し 、その 疲労感と骨格筋の動員様式との関係を検討した。しかし 、RPEと骨 格筋の動員(外側広筋)とは関係なく、むしろ肺換気量や心拍数との関係が認められた。

この結果から、筋動員状態は中枢神経系ヘ送られる求 心性信号の統合によって修飾され るのではなく、個別の求心性信号の情報に基づくと考 察した。

  こ れら の実 験からRCS時の骨格筋疲労は末梢性 疲労のみが反映されるのではなく、末 梢の骨格筋や呼吸筋などの末梢器官からの求心性信号 に基づく、中枢神経系からの遠心 性運動指令の変化も反映していると結論した。また、 遠心性運動指令の変化をもたらす 多 数 の 求 心 性 信 号 は 、 個 別 に 中 枢 神 経 系 に 影 響 を 及 ぼ す と 結 論 し た 。   以上、従来の骨格筋の疲労の研究は末梢性の疲労の 原因究明が主たる任務であった。

そして、骨格筋内の乳酸増に伴うpHの低下が筋疲労の 重要な要素であるとされてきた。

しかし、この従来の研究では疲労物質の蓄積のみに焦 点が片寄っていて、この状態での 骨格筋の動員の在り方へは目を向けてこなかった。本 研究では、この点を改めて、疲労 物質 蓄積 時の 筋動員 の状態を扱った点に新規性がある。また、全身の疲労状 態はRPEの ような求心性信号の統合化として表れるであろうが、 骨格筋の疲労に特定した筋動員状 態はもっと個別な情報を下に行われているとしている 。これは今後の研究へ発展的な視 点を与えるものである。

  よって、筆者を北海道大学博士(教育学)の学位を 授与される資格があるものと認め る。

参照

関連したドキュメント

タービンブレード側ファツリー部 は、運転時の熱応力及び過給機の 回転による遠心力により経年的な

添付資料4 地震による繰り返し荷重を考慮した燃料被覆管疲労評価(閉じ込め機能の維持)に

契約社員 臨時的雇用者 短時間パート その他パート 出向社員 派遣労働者 1.

熱源機器、空調機器の運転スケジュールから、熱源機器の起動・停止時刻

傷病者発生からモバイル AED 隊到着までの時間 覚知時間等の時間の記載が全くなかった4症例 を除いた

モノづくり,特に機械を設計して製作するためには時

(2,3 号機 O.P12,000)換気に要する時間は 1 号機 11 時間、 2,3 号機 13 時間である)。再 臨界時出力は保守的に最大値 414kW

運転状態 要求機能 考慮すべき応力と地震動 許容応力 地震時