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博士(理学)敷中一洋 学位論文題名 The Relationship between Structure and R/Iotility of Actin Bundle formed with Polycation

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Academic year: 2021

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博士(理学)敷中一洋

    

学位論文題名

The Relationship between Structure and R/Iotility of     Actin Bundle formed with Polycation

( 高 分 子 間 相 互 作 用 に よ り 得 ら れ た ア ク チ ン バ ン ド ル の     構 造 と 運 動 性 の 相 関 )

学位論文内容の要旨

  これまでに本 研究室では、筋肉夕ンパク再構成による運動素子の創製を目標に研究を行 ってきた。生物 は極めて効率的な動カシステムを有する。そのシステムを構成する主要成 分は動植物界に 広く分布しているアクチン・ミオシンと呼ばれるタンパク質分子である。

筋肉の収縮はこ のアクチンとミオシンがそれぞれフイラメント→フィブリル→サルコメ アといった階層 構造を作ることによって、ナノオーダーのアクチンーミオシンフィプリル 間の滑り運動を マク口の運動に集積することで実現されている。本研究室では生物よルア クチンとミオシ ンを抽出し、人工的に再構築することで生物様運動素子の作成に成功して いる。作成され た運動素子は天然系のアクチン ̄ミオシンに比ベ高い運動を発現すること から今までに例 の無い生物と同様の原理を基とした人工筋肉への応用が期待される。この 運動素子におい て、アニオン性高分子電解質であるアクチンはカチオン性高分子を導入す ることで束状集 合体として再構築されている。このアクチン集合体の構造を評価し、その 運動性との関係 を理解することは運動素子の運動性能の制御に繋がり、その応用への可能 性に寄与する。 また上記の様なアクチン集合体は細胞内に広く存在し、その細胞骨格の形 成、及び運動に 深く関わることが知られている。本研究で得られる知見はこのような細胞 内 に お ける アク チン 集合 体の 形成 メカ ニズ ムに 関す る知 見も 与 える と期 待さ れる 。   本学位論文は 第1章の序論、第2章から第4章の本論、第5章の結論から構成され.、ア クチン集合体の 構造と運動特性の相関を理解するために有用な知見を与えている。以下が 得られた研究結 果である。

  第2章ではアクチン集合体の極性と運動性 の相関を検討した。今までの研究においてア ニオン性高分子 電解質の性質を持つアクチンがカチオン性高分子との静電的相互作用に より束状の集合 体を形成することを発見している。様々なカチオン性高分子を導入するこ とで得られたア クチン集合体はATP添加によ ルミオシン表面上で運動を発現した。またそ の運動速度は導 入するカチオン性高分子の種類により異なる。ミオシン上を運動するアク チンフイラメン トの運動方向を決定するのはアクチン分子の極性である。我々はこの極性 が運動に影響を 及ばすと考え、アクチン集合体の極性を調べるためにミオシンのアクチン 結 合部(HMM)で修 飾し た後 、透 過型 電子 顕微 鏡くTEM)観察 を 行った。その結果全ての

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集合体内のアクチンフィラメントで極性の向きを示す矢じり構造(Arrowhead structure)が 観察 され た。これら のTEM写真より集合体内の一 本のアクチンフィラメントはすべて極 性が揃っていることが分かり、さらに集合体を形成するフイラメント同士の極性は揃って いるとは限らないことが明らかになった。そこでアクチン集合体の極性をファイバー内に おける個々のアクチンフイラメントの極性から評価したところ、集合体を形成させる条件 の違いにより極性が大きく異なることが判明した。さらにアクチン集合体の極性が高いほ ど運動速度が大きくなる傾向が見られることから、アクチン集合体の運動速度は自身の極 性により決まることが示唆された。

  第3章ではアクチン集合体 の極性を決める要素を解明した。集合体の極性はアクチンに 導入するカチオン性高分子濃度の増加に対し減少することが分かった。カチオン性高分子 の濃度の上昇はアクチンと高分子の衝突頻度(反応確率)の増加に繋がると考えられること から、集合体形成速度の高分子濃度依存性を検討したところ、高分子濃度増加に伴しゝ集合 体形成速度の上昇が見られた。またカチオン性高分子のサイズ増加により集合体形成速度 が減少し、同時にその極性も増加するという結果も得られた。以上よルアクチン集合体形 成のキネティクスがその極性を支配することが示唆された。ここから、我々は集合体形成 時におけるアクチンの再配向の頻度が極性に影響を及ぽすと考えた。そこで集合体形成に おけるアクチンの大きさを変えることで極性の制御を試 みたところアクチンのサイズ減 少に伴い極性の増加が見られた。以上の結果よルアクチン集合体形成時におけるアクチン の再配向可能性がその極性に影響を及ぽすことが分かった。

  第4章ではアクチン集合体 の三次元構造を明らかにした。これまでにアクチン集合体の 構築 過程 の理解、及 びそれを基とした構造制御を目的にTEMを用いて集合体の構造を系 統的に調べている。その結果集合体はアクチンフイラメントの束であり、その形状はアク チンとカップリングさせるカチオン性高分子の種類・濃度、及び集合体形成時の溶液中イ オン 強度 によって大 きく異なることを明らかとしている。TEMによる像は電子線の透過 像であるので通常はサンプルの二次元的な構造しか評価できないことから、本項では三次 元電子顕微鏡法(Transmission Electron Microlomography: TEMT)を用いて、剛性に大きく関 与すると考えられるアクチン集合体の三次元構造を検証 した。TEMT観察結果からアクチ ン集合体の断面構造は形成条件(カチオン性高分子の種類・濃度やイオン強度)により扁 平・円・三角形と多様に変化することが分かった。この結果からアクチン集合体の構造は アクチンーアクチン間、及びアクチンーカチオン性高分子間に働く静電的相互作用カやカ チオ ン種 によ るア クチ ンヘ の特 異的 相互作用カ の違いで変化することが示唆された。

  以上の結果より、アクチン集合体の極性はアクチン‐カチオン性高分子の衝突頻度f反応 確率)に関係する集合体形成のキネテイクスに、断面構造はアクチンの表面電荷およびポ リカチオンの化学種に関係するアクチンフィラヌント同 士に働く静電相互作用カに影響 を受け、それぞれ異なる要素で決められることが分かる。これらの知見を基にアクチン集 合体の構造、およびそれに起因する運動機能はコントロール可能であり、以上の結果は運 動素子の設計、及びに生体内におけるアクチン集合体の機能発現メカニズムの理解に大き く寄与すると考えられる。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授 教 授 教 授 准 教授

翼 佐々 木 川 端 古 川

剣萍 直樹 和重 英光

    

学位論文題名

The Relationship between Structure and Motility of     Actin Bundle formed with Polycation

(高分子間相互作用により得られたアクチンバンドルの

    

構造と運動性の相関)

博士 学位論文審査等の結果について(報告)

  こ れま での 研 究で は、 生体 筋肉よルタンパク質分子 であるアクチンとミオシンを 抽 出し 、人 工的 に 再構 築す るこ とで生物様運動素子の作 成に成功している。作成され た 運動 素子 は天 然 のア クチ ンー ミオシン運動系に比べ高 い運動性を持つことから今ま で に例 の無 い生 物 と同 様の 原理 を基とした人工筋肉ーの 応用が期待される。この運動 素 子に おい てア ニ オン 性高 分子 電解質であるアクチンは カチオン性高分子を導入する こ とで 束状 集合 体 とし て再 構築 されている。今までにこ のアクチン集合体の構造、及 び その運動性との関係は未解 明であった,

  本 研究 はア ク チン 集合 体の 構造と運動性の相関、及 びその構造形成メカニズムを 理 解 す る こ と を 目 的 とす る もの であ る。 本 学位 論文 は第1章 の序 論、 第2章か ら第4章 の 本 論 、 第5章 の 結 諭 か ら 構 成 さ れ 、 以 下 の 研 究 成 果 が 得 ら れ て い る 。   2章 では アク チン 集合 体 の極 陸と 運動 陸 の相 関を 検討した。様々なカチオン性 高 分子 を導 入す る こと で得 られ たア ク チン 集合 体はATP添加によルミオシン表面上で 運 動を 発現 した 。 また その 運動 速度は導入するカチオン 性高分子の種類により異なる ー ミオ シン 上を 運 動す るア クチ ンフィラメン卜の運動方 向を決定するのはアクチン分 子 の極J陸である。本研究で はこの極J陸が運動に影響を 及ぼすと考え、アクチン集合体の 極性 を調 べる た めに ミオ シン のア ク チン 結合 部(HMM)で修飾した後、透過型電子顕 微 鏡(TEM)観察を行った.その 結果全ての集合体内のアク チンフィラメントで極陸の向 き を示 す矢 じり 構 造(Arrowheadstructure)が観察された .これらのTEM写真より集合 体 内の ー本 のア ク チン フィ ラメ ン卜はすべて極性が揃っ ていることが分かり、さらに 集     ―1528−

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合体 を 形成 する フィ ラメ ン卜同士の極性は揃っ ているとは限らなぃことが 明らかにな った 。 そこ でア クチ ン集 合体の極性をファイバ ー内における個々のアクチ ンフィラメ ントの極陸から評価 したところ、集合体を形成させる条件の違いにより#l?s,ltが大きく 異な る こと が判 明し た。 さらにアクチン集合体 の極性が高いほど運動速度 が大きくな る傾 向 が見 られ るこ とか ら、アクチン集合体の 運動速度は自身の極陛によ り決まるこ とが示唆された。

  3章 では アク チ ン集 合体 の極 陸 を決 める 要素 を解明した。集合体の極 陸はアクチ ンに 導 入す るカ チオ ン性 高分子濃度の増加に対 し減少することが分かった 。カチオン 性高分子の濃度上昇 はアクチンと高分子の衝突 頻度(反応確率)の増加に繋がると考え られ る こと から 、集 合体 形成時間の高分子濃度 依存性を検討したところ、 高分子濃度 増加 に 伴い 形成 時間 の減 少が見られた。またカ チオン性高分子のサイズ増 加により集 合体 形 成時 間が 短く なり 、同時にその極陸も増 加するという結果も得られ た。以上よ ル ア ク チ ン 集 合 体 形 成 の 速 度 が そ の 極 性 を 支 配 す る こ と が 分 か っ た 。   4章 では アク チ ン集 合体 の三 次 元構 造を 明ら かにした。これまでにア クチン集合 体の 構 築過 程の 理解 、及 び それ を基 とし た構 造 制御を目的にTEMを用いて 集合体の構 造は 系 統的 に調 べら れて いる。その結果集合体 の形状はアクチンと相互作 用するカチ オン 性 高分 子の 種類 ・濃 度、及び集合体形成時 の溶液のイオン強度によっ て大きく異 なる こ とを 明ら かと なっ て いる 。TEMに よる 像は 電子線の透過像であるの で通常はサ ンプ ル の二 次元 的な 構造 し か評 価で きな いこ と から 、本 項で は 三次 元電 子顕微鏡法 (Transmission Electron Microtomography: TEMT)を用いて、剛性に大きく 関与すると 考え ら れる アク チン 集合 体の三次元構造を検証 した。TEMT観察結果からア クチン集合 体の断面構造は形成 条件(カチオン性高分子の 種類・濃度やイオン強度)により扁平・

円・ 三 角形 と多 様に 変化 することが分かった。 この結果からアクチン集合 体の構造は アクチンーアクチン 問、及びアクチンーカチオ ン性高分子間に働く静電的相互作用カや カチオン種によるア クチンーの特異的相互作用 カの違いで変化することが示唆された。

  以上の結果から、 本研究では次のよ,うな知 見が得られた。

1)アクチン集合体 の運動速度は極陸に支配され 、その極性は集合体形成の 速度に依存 する。

2) アク チン 集合 体 の断 面形 状は ア クチ ンフ ィラ メン卜同士の静電相互作 用の影響を 受ける。

  こ れ らの 知見 はア クチ ン集合体の運動制御を 可能とし、その運動素子の 応用可能性 に寄 与 する ,ま たこ の様 なアクチン集合体は細 胞内に広く存在し骨格の形 成及び運動 に深 く 関わ るこ とが 知ら れているので、本知見 はこのような細胞内におけ るアクチン 集 合 体 の 形 成 メ カ ニ ズ ム に 関 す る 理 解 に も 寄 与 す ろ と 期 待 さ れ る 。   よ っ て著 者は 、北 海道 大学博士(理学)の学 位を授与される資格がある ものと認め る。

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