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共済の取組み

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(1)

東日本大震災にかかる

JA

共済の取組み

協同組合・共済事業の社会的役割について

若 松 仁 嗣

■アブストラクト

協同組合共済としての目的は,震災に遭われた組合員への補償提供はもと より組合員の生活再興でもあり,共済金支払いのみがその役割でないことが 明らかになった。

このことは,組合員の 助け合い 運動を根底に,全国一律料率・長期共 済契約等の特徴を活かしつつ地震災害を主契約に盛り込み,さらにリスク分 散・内部留保造成を重ねながら保障内容も高めていくことができた建物更生 共済によるところが大きいが,ハードの制度面とソフトの協同組合活動が相 まっての結果でもある。

被災者・被災地域支援は 公 の役割が重要であるが,地域に暮らす組合 員や地域住民相互の 助け合い による 共助 の復興も大切であり,今回 の震災は,協同組合が 共助 の役割を果たすことでその存在価値を高める こととなった。

今後も協同組合・共済事業の役割を発揮していくところである。

■キーワード

共済事業の役割,助け合い,共助

*平成24年3月10日の日本保険学会関東部会報告による。

/平成24年8月24日原稿受領。

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Ⅰ.はじめに

東日本大震災は,東北の農業における被害推定額約8,412億円,また農地 推定被害面積約23,600 ,さらに人的被害も未曾有のものとなる等,東北地 方の生活基盤であった農林水産業が一瞬にして崩壊してしまう大被害を招い た。また,被災地JAが経営困難に陥る等,農業・生産者・協同組合それぞ れにおいて,危機を迎えることとなった。

本稿では,共済事業に生業を得ている立場から,まず東日本大震災におい JA共済が被災組合員・利用者のためにどのように対応したか,とくに JA共済・事業理念を象徴する建物更生共済等の支払い状況を概観する。ま た,共済制度や査定体制のハード面の状況はもとより,これを支える協同組 合理念に基づくソフト面の両面にわたる取組みを解説しながら,総合事業と してのJA・JA共済事業の社会的役割を検討していくこととする。

Ⅱ.東日本大震災への対応状況について

1.共済金支払について

平成24年2月末までの支払状況について,農業生産に携わる組合員等の住 居や家財等の動産を共済の目的とする建物更生共済は589,450件・8,389億円 の支払い,農協等の施設をその目的とする団体建物火災共済は2,600件・112 億円の支払いとなり,建物保障のみで8千億円強の共済金を支払うこととな った。また,生命共済にかかる人保障においても,入院共済金等の生存保障 を含め2,114件・315億円の支払い,さらには地震免責規定を持たない傷害共 済からの共済金も216件・4億円の支払いを計上することとなった。この時 点での総計支払金額は8,820億円にのぼり,この数字は偶然ではあるが,先 述した農業関係被害額に近似する。

なお,団体建物火災共済の地震保障については,長期共済の建物更生共済 と異なり,短期共済(共済期間最長3年)として損害の額の30%を限度とす る地震填補を行っている。

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また,養老生命共済・終身共済等生命共済は地震における死亡を災害死亡 と認定,主契約に加え災害給付特約・災害割増特約からも共済金を支払っ た。

建物更生共済にかかる支払内訳については,支払総件数約59万件中家財を 主契約とするお支払いが8万件・834.8億円となっており,全体の14%程度 を占めている。かねてよりJA共済では建物主契約に加え家財主契約のダブ ル加入を推進しており,共済金を受け取った契約者がどれほどダブル加入し ていたかデータ不足ではあるものの,これもひとつのJAの特徴といえる。

さらに建物主契約に特約として動産保障を填補している契約もあり,その特 約からの支払いも5千件程度ではあるが82億円程度にのぼっている。

動産特約の場合は全損滅失を起因として特約共済金を支払う制度となって おり,今回津波による全損が多かったことも支払金額が少なくなかった要因 としてあげられる。さらに,建物内に生活する組合員一人ひとりの保障も建 更・傷害共済金より支払うことができ,4,840件・177億円を遺族の方々へ支 払うこととなった。

支払った建物更生共済にかかる共済金について,起因別の平均共済金をみ ると,地震(振動)による平均金額で120万円,津波では677万円となる。こ のことは,津波では全損・滅失の損害,振動では小損害を含む中軽度の損害 であったといえる。

岩手・宮城・福島・茨城・栃木の甚大被災5県における支払状況をみると,

特に宮城県で加入件数80%を超える支払いとなっており,県下全域における 地震・津波被害を受けた様子を数値の上でも表す結果となった。

2.取組み施策について

今回の震災に関して,共済金の支払いに対しては組織として最優先で取り 組んだが,その他,被災者・契約者・組合員の利便性・困窮性を勘案した施 策も講じている。

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⑴ 特別措置等の実施

生活基盤である農業地帯の崩壊により,共済契約の掛金払込が困難となる ケースが想定され,長期共済で最大12ヶ月・短期共済では9月末までの払込 猶予期間延長措置を行い,約4万7千件程度を受け付けた。また,共済証書 を担保に貸付けを行った際の利率についても1.5%(通常3.25%)の減免措 置を行い,約4万6千件を対象とした。

JA共済では,組合員が生活する基盤ごとにJAの管轄が決まっており,

組合員・利用者は原則その地域のJAを利用することとなる。そのため,本 来は被災地からやむなく避難した先でのJAを利用することはできないルー ルとなっているが,今回はそのルールを改善し,他JAでの事務手続き等の 代行も行えることとした。 共済における共済事務コストは契約している共 済掛金から充当されているが,この他JAでの事務代行はコストを度外視し た協同組合としての 助け合い の事例の一つといえる。

また,共済約款に定めている 削減払い規定 の不適用と請求手続きの簡 素化等もあわせて実施した。

⑵ 契約者フォロー等の取組み

震災以降,被災JAでは独自に共済受付を開始,システム照会もままなら ぬ中でも組合員の不安を取り払うため,共済相談を受け続けていた。しかし ながら,被災地を離れなくてはならない契約者も存在することから, 避難 契約者相談受付センター を開設し,約1万7千件の受付を行ったほか,一 般相談センターへも同内容の相談が5万6千件ほど入っており,最寄のJA から遠く避難した契約者の対応を行った。

一方で,被災地への救援の一助として,○災害シート(通称ブルーシー ト)の9万枚無償配布,○仮設住宅の国土交通省への提供,○被災者への見 舞金助成等の実施,○被災地子供たち向け アンパンマンミュージカル の 開催等共済事業としての特性を生かした被災地への取組みを行った。

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⑶ 広報活動について

震災被災者へ向け,全国紙・東日本地方紙へのお見舞い広告掲載やテレ ビ・ラジオへのお見舞いCMの提供,避難契約者窓口や共済契約取扱いにか かる情報提供としてホームページ・全国紙への掲載・避難所へのポスター等 配布を実施した。

.JA共済事業・建物更生共済について

1.JA共済・事業理念について

農業生産者のための協同組合をベースとしたJA共済は,事業理念として 安心 ・ 信頼 で地域をつなぐミッションのもと,事業を展開している。

特に 共済 とは,○他の構成員(組合員)を救済する 他助(共助) を基礎とした事業であり,協同組合理念に基づく 助け合い による事業,

○保険の技術を踏襲し保障提供を行う上で,応用・工夫を組み込んでいる,

○組合員のみの出資・拠出でありながら社会保障を補完する等,社会的機能 や公共性とそのための姿勢(非営利経営)を求められている等諸々の特徴が あげられる。構成員については,JAであれば前述したように農業生産者を 組合員とするが,JFでは漁業者,全労済では労働者等それぞれの団体ごと に異なっている。また,非営利経営の姿勢も貫かれており, 利益は組合員 のもの,組合員へ還元していくこと の精神において,事業を行っている。

今回の震災においても,制度としての仕組み面とそれ以外のソフト面の双 方でこの理念が明確となった。

2.JA・JA共済の組織について

JAのそれぞれの団体はその名のとおり 農業 を基盤とした組合員のた めの組織であり,組合員と日頃接している農業協同組合(JA)は平成23年 7月段階で715の組織が地域ごとの特徴を生かしながら事業展開している。

この715の組織の下には支店(または支所・出張所)が配置されており,全 体では9千程度の店舗が日本全体の農村部と組合員の絆の拠点となっている。

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JAの機能は,組合員の農業振興に携わる経済・営農事業,JA貯金と農業に かかる融資等を行う信用事業,そして組合員の個人リスクにかかる保障提供 の共済事業の3つの事業が柱となっている。このJAでの事業を支援する役 割として,それぞれJA全農・農林中金・JA共済連の全国的組織が存在し ており,また,農村医療を支えるJA厚生連病院・全厚連やJAの指導や農 政活動を行うJA全中もそれぞれの役割を発揮している。

今回の震災においては,JA共済事業の共済金支払いだけが,JA事業の 役割ではなく,全中では全国からの支援物資・義捐金のとりまとめと送付・

送金,全農では現地への燃料供給や生産資材・飼料の手配,厚生連病院では 医療チームの派遣等,それぞれの立場で被災者・被災地への支援を行った。

3.JA共済事業について

農協法を根拠に事業展開しているJA共済では,組合員の個人保障にかか る生命共済・損害共済事業を行っており,平成22年度末では生命共済1,490 万件・建物更生共済1,109万件の保有契約,自動車共済846万件の保有件数に より,全国の組合員の 助け合い を全うしている。

特に組合員の建物・家財等を保障している 建物更生共済 は,○最長30 年の長期共済であり,満期共済金を持ち,地震保障を含む自然災害保障を主 契約で保障,○全国一律掛金率,○死亡等の場合にも傷害共済金を支払う等 JA共済独特の特長を持っている。契約上は10年ごとの自動継続制度をと っており,継続をまたぎながら満期時点での満期共済金を積み立てている。

共済金については,損害割合(損害の額╱共済価額)に応じた金額支払であ る。ただし,地震を起因とする共済金については,損害の額の50%を限度と しているため,今回の震災は最高(全損)でも火災共済金額(共済の目的の 価額範囲で定める契約金額)の半額の支払となる。今回の震災では,地震振 動による損害割合の平均は16.55%,一方津波による損害割合平均は95.21%

で,繰り返しにもなるが今回の震災の特徴のために 振動による小規模被害,

津波による全損滅失 の二極化した支払いとなっている。

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また,家財主契約もあり,同様に地震保障は火災共済金額の50%・損害割 合に乗じて共済金を支払う内容となっている。

火災共済金額は5億円(住宅物件)を上限としており,地震保障の最高限 度も50%の2億5千万円となる。

4.建物更生共済のなりたち

建物にかかる火災・地震損害を含む自然災害等オールリスクを填補し,さ らに全国一律の料率でカバーできているのは,全国で 助け合う という協 同組合理念を具現化させた過去の先達方の発想の豊かさ・大胆さ・挑戦心に 裏打ちされたものである。

農家はたえず自然との闘いの中で生き続けてきた。それは,農業生産にお いても農業者の生活においても,同じ厳しさがあり,弱者としての生産者は 前者を国の制度である農業共済制度により補償を得,後者については自助か ら共助へ発展した協同組合の助け合いの中に見出すこととなる。

特に,農家の建物は,生産者が生活を営むだけではなく,農業生産を営む 場所であり,牛馬や農機具等生産に携わる全てがひとつ屋根の下に同居する 農住混在の生活スタイル であった。そのため,弱者・生産者を守る第一 歩は建物保障からのスタートとなる。

昭和24年に北海道において原型となる建物共済が誕生して以来,28年の全 国展開・36年自然災害(地震保障を含む)の保障提供開始・平成7年最高限 度額の引き上げ・平成23年風・ひょう・雪害にかかる小損害フランチャイズ 要件の拡大等現在に至るまで,組合員・生産者の負託に応えられるよう制度 改正を行ってきた。

5.建物更生共済にかかる地震保障の改訂変遷

JA共済では昭和36年に建更・地震保障の担保を取り入れたが,その契機 は34年に襲った伊勢湾台風であった。その当時の地震共済金は火災共済金額 の10%であったが,3年後の新潟地震(昭和39年)においては3,800万円の

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共済金支払いにより被災者支援を行うこととなる。

その後,火災共済金額30%に支払金額を引き上げた昭和42年の翌年には十 勝沖地震にて1億1千万円の共済金支払,そして現在の制度でもある火災共 済金額50%に引き上げた直後には伊豆大島近海地震・宮城県沖地震でそれぞ れ9億7千万円・27億6千万円と助け合いの輪は拡がっていく。最高限度額 を5億円(地震保障は2億5千万円)に引き上げた後の平成7年・阪神淡路 大震災では未曾有の1,189億円を被災者に支払うまでに至っている。このこ とは,全国の組合員の理解により地震を含む自然災害保障の支払余力の造成 や,海外再保険のリスク分散を積み重ねてきた結果といえる。

.震災により見えてきた JA共済の特長

1.JAとの共同元受方式による一体的事業運営

現在のJA共済・共済契約は,組合員の接点であるJAJA共済連との 共同元受方式をとっており,共済にかかる権利・義務をJA・連合会がとも に負うこととなっている。そのため,今回の震災においては,現場のJA 連合会がともに損害査定活動に取り組んできた。

まずは,JAでの 相互扶助に基づく地域密着した契約者対応 として,

ライフアドバイザーや共済担当者を中心に管内の被災者宅または被災者を訪 ね安否を問う活動から取り組んだ。このことは, 安心 と 信頼 をメッ セージとする共済事業のミッションとして忠実に実行することができ,そし て,被災者である組合員からも暖かい言葉をもらうこととなる。

次に,建物に関する損害査定では,41県の連合会から派遣された延べ 2,475名の損害査定員とJAの査定員が共同して対応した。もちろん,JA ライフアドバイザーや査定員は自らも被災者であり,家族や家を失った職員 も少なくはないが,まずは組合員のために自らを律して査定活動に従事した。

JA共済の損害査定は,一つ一つの損害部分を積み上げていき,全体の損 害割合を共済金額に乗じて共済金を確定していく方法をとっており,今回の 大震災では○被災場所が広大であったこと,○査定中においても余震が続き,

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再査定を余儀なくされたこと等もからみ,共済金支払いまでに時間を要する こととなり,一部の組合員からは早期支払いの要請をうけることもあった。

なお,連合会職員の広域査定員は,今回のような大震災に見舞われた場合,

全国の登録されている査定員がすぐに現地へ赴き,迅速かつ正確に損害査定 を行えるよう制度化している。阪神淡路大震災を契機に制度を構築してきた ものであるが,その後地震災害の度に派遣されており,そのノウハウも年々 蓄積されてきた。

2.経営健全性の確保

JA共済・建物更生共済は,これまでの先人方の知恵と努力の中で,自然 災害保障にかかる担保力を自ら造成してきている。建物更生共済は30年間の 長期共済であるため,将来のリスクに対する積立金を持つことができるが,

この強みを生かしたリスクヘッジである。

具体的には,地震に対する異常危険準備金の造成(震災当時1兆7千億円 程度)と海外への再保険等によるリスク分散により健全性を維持している。

3.共済制度ならではの独自性・応用性の発揮

協同組合理念に基づく共済制度は,それぞれの分野で独自性・応用性を発 揮しているが, 今回の震災においても建物更生共済において,その特長が 明確となった。

まず, 自然災害保障を含むオールリスク保障 という点であるが,契約 者はあえて地震保障をする意識がなくとも,今回のような震災でも共済金の 支払対象となる。

これは,協同組合として組合員に対し これは支払対象ではありません。

とお断りすることのないよう,工夫・努力により培った制度の一つであり,

JAに対する信頼の裏返しでもある。また,制度設計上は自然災害リスクを 区分せずオール保障することで,共済者としてのリスクを安定させることに もつながっている。

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さらに,30年の長期にわたる共済期間での新価保障を維持している。これ も,被災した農家組合員宅の再取得を目的とする 助け合い 精神の表れと いえる。

そして,全国のリスクを集中し,分散する独自の仕組みによって,全国一 律の料率を維持している。これこそ,協同組合の思想といえる。

4.被災者からみた JA共済〜助け合いの精神〜

組合員同士のつながり・絆によって成り立っている共済事業においては,

共済金を受け取る権利を有している被災者自身でさえも他の被災者をいたわ る協同の精神が至る所でみることができた。

それは,損害査定に入った職員からもたらされた契約者・被災者の声に顕 著に表れており,協同組合の社会的意義を改めて気づかされるメッセージで あった。

被災者からみたJA共済( 助け合いの精神 )①

・ 私の家は,被害はあんまりないですよ。生活できないことはない。

もし,私の家にお金を支払っていただけるなら,その分を被害のひど い家にまわしてもらえないですか?

・ うちは大きな被害も無いから,先に大変な沿岸地域から見てやって

・ うちは,そんなに被害がないから,他の倒壊した家に多く共済金を 出してください。

また,共済者であるJA自身も組合員・被災者に励まされる一面もあり,

JAがいかに地域の核となって活動していたか,そしてこれから復興のキ ーステーションとしての期待をかけられているかの証でもあった。

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被災者からみたJA共済( 助け合いの精神 )②

・ 一部屋ごとみてくれてありがとう。ここまでしてくれたら満足で

・ いつも家に来て相談に乗ってくれていたJAの○○さんの安否も心 配しています。請求手続きだけではなく,私も安心したいので,○○

さんから直接連絡がほしい

・(事務所に来られたご高齢の婦人の話を伺っているうちに涙をこぼし てしまったら) あなたが泣いてどうするの!

.協同組合としての JA共済

1.より迅速で確実な共済金受取りのために…

今回の震災は,これまでのJA共済連の自然災害に対する準備・対応策で は間に合わないところも散見された。そのため,個々の改善策について検討 を始めた。

○機動的な初動体制の構築

震災直後の機動性をあげるため,各県から派遣の前に全国本部(東京)か らの支援チーム派遣・常駐化について検討する。

○損害査定要員にかかる体制整備

JA・連合会との連携した損害査定体制について検証し,さらなる整備を はかる。

○より簡便な損害査定方式の検討

丁寧な損害査定は,今回のような広い地域に亘る災害が生じた場合,時間 がかかってしまうデメリットもはらんでいる。そのため,簡便・簡易な査定 方式を検討する。

○損害査定から共済金を受取るまでの日数短縮化

損害査定が終了した後,入力し共済金を振り込む事務作業にも時間を取ら

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れてしまい,結果的に共済金の受取りが遅れてしまうケースも生じたため,

支払処理についてのバックアップ体制についても検討・強化する。

損害割合5%以上 の検討

地震を起因とした共済金を支払う際,損害割合5%以上となることで支払 対象となるが,当初契約した火災共済金額が大きくなればなるほど,5%の 金額は高くなり,そのため共済金を受け取れない組合員も増えてくる。その ことは,契約者のリスク負担の考え方と共済者としてのリスクをどこまで抱 えるかという体力・経営にかかる検討も必要とする。

2.地域復興のための加入促進

協同組合思想に基づき,つながり作り・絆作りを広めるためには,組合員 に理解を求め,かかる共済契約に加入していただかなければ,共済者として は無力である。現在,JA共済全世帯加入者は約1,100万世帯であるが,う ち建物更生共済未加入世帯は4割も占めている。この未加入者を少なくする ことはもちろんであるが,また,建物主契約と動産主契約の両方に加入して いる世帯も全体の3割に留まっており,万全な備えとなっていない。

一方で,加入はしているものの建物の再取得価格に満たない金額で加入し ている契約も多く,充分な加入内容に高めていく努力も重要である。

3.地域復興・復旧と JA共済の役割

JA共済は協同組合であり,地域の組合員の生活保障を通して地域農業の 活性・日本農業の安定のため,社会的役割を担う,いわば共同体でもある。

そのため,今回の震災では地震損害に対し共済金を支払い補償機能を発揮し たものの,組合員がまた農業を再開し,地域が復興・復旧しなければ,その 役割は半減してしまう。

共済名は 建物更生共済 であり,被災した建物の更生に資するのが本来 の共済金の使途かもしれないが,まずは生活再建に充てることも大きな目的 からして間違いではない。さらには,共済金が地域復興に役立てば 農業再

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生 のきっかけになるのであるが,実情はその復興のため新たな資材投資や ローンを設定して取り組む農業者の不安は大きい。

共済事業は,その一助としてのネットワーク再興のための活動であり,単 なる共済加入の促進だけには留まらない役割がある。さらには,JA共済は 農業生産者だけでなく地域の住民も加入しているが,組合員だけが共済金を 受け取り再興していくには無理があり,地域全体の復興を目指す活動が協同 組合としての大切な役割となろう。

4.地域復興・復旧の中の JA

協同組合としてのJA活動に目を向けると,JAグループ全体の連携・絆 の被災者支援が行われている。

食べるものが枯渇した被災地へ,被災を免れた岩手県内・別JA組合員よ り 一戸あたりお米一升 を寄附してもらい支援物資として33トンの米を届 けたり,JA組織で運営している厚生連病院スタッフが避難場所を巡回し健 康チェックする等,全国のJAからの支援・絆の発揮をみることとなった。

5. 共助 の協同組合・JA共済

共済事業は私的事業であるが,JAの事業を含め組合員・地域がともに助 け合い, 公 を補完する機能を持ち合わせている。農作物にかかる国の共 済制度は存在しているものの,今回の震災でも明らかになったように,国か らの支援だけでは復興は難しく,そのカバーをする役割を協同組合・共済事 業は担っている。そもそも,日本の農業は政策的な見地から国・地方自治か らの支援を受けているが,農業を行っている 私 としての生産者は,直接 的な行政の手ほどきだけでできるものではなく, 共助 の協同組合の役割 が重要となる。

もう一歩進んだ考え方をとると,行方不明者にかかる死亡認定について,

法務局や警察等の行政サイドは簡単に動きにくかったところを,地域に根ざ JAの補助的サポート(JA職員の証言等をひとつのきっかけに死亡認定

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を認めてもらう等)によって行政サイドの負担を軽減し, 公 を補完する 役割を持つことについても,今後検討の余地はあろう。

そして,JA共済は 共済金をお支払いする ことが機能ではあるものの,

協同組合としての役割は 農業復興 であり農業を再開する生産者の自助の サポートにある。特に,今回の震災に見舞われた東北地方は,農業(または 水産業)を基幹産業として,経済が成り立っていた地域であり,再興は地域 の復興へと結びつく。

そのような観点でいえば,共済加入している組合員・生産者に対し,地震 保障・火災共済金額50%支払や自動車共済の地震免責のあり方,組合員が生 産活動に従事できない状態における掛金払込の免除等,協同組合らしい共済 独自の研究が今後も必要である。

また,リスク回避においても共済者・協同組合として,組合員の生活・財 産を守る活動の一環として絶えず組合員とのコミュニケーションと災害時の 避難等についての対応に努めておく必要がある。かつて,地震災害であった エピソードとして,避難場所へ逃げていなかった高齢の組合員を いつも二 階の居間で寝ているはずだ! と急行,倒れた家具の中から救い出したとい う話が残っている。今後,世の中の流れによっては農村部では私企業はもと より公的機関すらも撤退する傾向にもあるが,地域のコアとなることでイザ というときの災害に対し,組合員・地域住民の生命・生活を守る役割を果た せることになろう。

Ⅵ.おわりに

JA共済は相互扶助・助け合いの精神のもと,創設以来,先人たちの苦労 の中,各種共済制度を作り上げ・制度を拡充し,リスク回避のための海外再 保険や内部留保を高め,損害査定の量・質の充実を図り,地域全体の復興を 目指すため共済加入を促がす活動をここまで積み重ねてきた。そのこと自体,

時間経過の中での つながり・助け合い であろう。

また,前述したように,全国の地域の組合員の集結により共済が役に立ち,

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支援がなされたのもまさに つながり・助け合い である。また,長期共済 である建物更生共済は,その日に大震災が来るから加入されたのではなく,

万一の時に備え,最大30年近く前に加入した契約であり,このことも家族の 歩みの中での つながり である。被災者からは, 死んだお爺さんが残し ていってくれた建物更生共済が,今回の震災では役に立った という涙の声 もあり,JAの推進した側も昔の先輩職員方が つながり・助け合い 作り のため,説明し理解を求めた結果といえる。

JA共済は,かつては 結び目マーク のロゴを使用し,協同組合の中に あってひときわ 結びつき を強調し,事業展開してきた。これらの思いが 今回の震災において,目に見えない共済から目に見える成果として現れるこ ととなった。おりしも,2012年は 国際協同組合年 であり,世界的に貧 困・飢餓・格差拡大が懸念される情勢の中,改めて協同組合の大切さをPR する時期と重なった。

世界が注目した東日本大震災を協同組合らしい活動でここまで支援できた ことは,協同組合年を迎えるにあたって充分価値のあることであろうし,今 後もこの理念をベースに,組合員・地域住民のため,共助として協同組合・

JA共済事業を展開していくものである。さらには,生保・損保・他共済の 各団体とのつながりも強めていきつつ,協同組合の役割を高めていきたい。

(筆者は全国共済農業協同組合連合会勤務)

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