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減価償却の本質乃至目的と計算基礎価格  

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(1)

減価償却の問題は︑古くから多くの学者︑実務家によつてとりあげられ︑既に今から五十六年前︑ArmstrOngを  

して︑﹁減価償却の問題は︑それについて︑あまりにも多くの論文が番かれ︑あまりにも多くの見解が表明せられて ︵1︶ いるので︑これ以上多く︑この間題について︑有用なことが論ぜられようとは考えられない︒﹂と言わしめている︒  

︵2︶  然しながら︑De旨2も指摘するように︑近代会計は︑財政状態表示から成果計算に︑更に経営的観点へとその重  

点を移行した︒    このような重点移行ほ︑支配的利害関係者としての短期債権者の地位の後退と︑投資家及び経営者グループの重要   性の相対的向上と町ある程度関連があり︑また︑複雑な産業界の要請に応えるためにほ︑伝統的な会計手統及び報   告書は︑重要な修正を必要とするいう事実の認識に︑負うところが極めて大である︒このような重点移行と︑所謂貨   幣価竺定の公準に対する不信は︑相まつて︑固定資産の取得と費消に関する会計に︑重大な影響を与え︑その結果   今尚︑減価償却問題について︑相当の意見不一致と混乱が存在する︒    本論文は︑先づ︑減価償却の本質乃至目的を明らかにし︑それとの関連において︑減価償却計算の基礎価格につい   ての私見凌展開せんとするものである︒  

l 減価償却め本質乃至目的   

第三十二巻㌧鷺二号   

減価償却の本質乃至目的と計算基礎価格  

木   高  

八  ︵八︶  

康  

(2)

評価概念としての減価償却   

古来減価償却という語ほ︑資産価値の低下という意味に︑最も多ノ︑用いられた︒たとえばMatbe筈ロほ次のように  

述べている︒﹁減価償却という語は︑厳密紅正確では.ないが︑損粍による価値の減少という語句に代る︑便利な表現  

︵さ︶ の形として用いられた︒﹂叉︑芳b告r︑sDictiOnary完四三年版では︑次のように説明されている︒﹁損耗︑自然力の  

作用︑陳腐化︑不適応の如き原因による︑資産価値の低下︒﹂この価値低下の程度を知るためには︑評価が必要であ  

︵4︶ り︑Gi−manも言うように︑最初︑減価償却ほ︑評価に基いて計算されたものであることを︑疑う理由は殆んどない︒   

正味財産及び財政状態の表示に︑会計の重点がおかれていた時代にほ︑価値を基礎とする減価償却概念が︑時代の  

要求に合致するものであつたであろうことほ︑想像に難くない︒Grant及びN邑Onによれば︑この概念は資産価値  

を︑ニつの異った日に何等かの方法で計算し︑後の日紅おける価値を︑前の日の価値から︑差し引くものであつて︑  

︵∂︶ この間の価値の変化の原因が︑何であるかを問ほないのである︒会計の重点が︑財政状態の表示から︑成果計算へと  

移行するに従つて︑このような償却概念をとるものは減少したが︑今なお全く影をひそめたわけではない︒たとえば  

謬stOnは次のよう軋述べている︒﹁総べての資産は︑その減損額を見出すために︑毎期末に調査され︑評価される  

︵8︶ ぺく︑画定資産の価値低下を減価償却と呼ぶ︒﹂   

然るに︑﹁価値﹂には︑多くの異った意味があつて︑この用語が的確に定義されないために︑会計報告書に対する  

へ7︶ 一般人︵会計の専門家でない人︶の信頼を失ったり︑専門家たらの間に混乱をひき起したりした︒﹁価値﹂のもつ種  

︵8︶ 々の意味のうちで︑最も重要︑かつ︑有用なものほ︑B︒nbr嘗tの指摘するように︑市場価値と使用価隠である︒価  

値の減少という意味における減価償却は︑−﹂の二つの価値概念の︑何れ紅も結びつくのであるが︑最初︑山般にひろ  

く用いられた価値概念は︑市場価値である︒これほ財務諸表における資産合計額を︑会計専問家外の人々や蒜実業   減価償却の本質乃至目的と釘算基礎価格  

︵九︶  九   

(3)

︵特軋貨幣価値変動期において︶   

4・固定資産の市価の変動による期間損益は︑継続事業の前提にたつかぎり︑実現困難である︒このような禾実現  

の︑紙上の損益によつて︑経営者︑投資家︑その他の利害関係者を︑混乱に導く︒   

5.各種の中古固定資産を︑個別に︑かつ綿密に︑評価するとすれば︑そのコストほ莫大なものとなる︒  

費用概念としての減価償却   

MOyer及び MautNほ︑減価償却をつぎのように説明している︒﹁減価償却は固定資産の原価を︑その耐用期間  

︵10︶  にわたつて配分することを意味する会計用語である︒﹂この思想は古くは′ロatfie責によつても述べられているとこ  

︵11︶  ろであるが︑大体において︑現代会計学者の通説とみることができる︒この概念を最も明快に表明したものほ︑米国  

会計士協会会計手続委員会であつてその仙九四四年における説明はつぎの通りであを︒﹁減価償却会計は︑有形固定  

資産の原価又漉その他の基礎価格から︑もしあれば︑残存価格を差し引いた額を︑組織的且つ合理的な方法で︑当該  

資産又は資産群の見酷耐用期間に配分することを︑目的とする会計制度である︒それは配分の過程であつて︑評相の  

過程ではない︒一年庶の減価償却費とは︑か1る制度の下における全賦課額のうち︑当該年度に配分される部分であ  

る︒この配分には︑当該年度中の発生事象が︑適当に考慮に入れられるけれども︑それは︑このような劇切の発生事    ︵一〇︶  仙○  第三十二巻 第一号  

家た.ちの思考する意味におけるものに近いものとするという利点がある︒然しながら︑何れの価値概念をとるにせよ  

評価を基礎とする減価償却ほ︑次のような難点を有する︒  

3.2.1.  

︵9︶ 明確で︑而も実務上実行可能な︑価値測定法則がない︒  

従って︑これを行う人︑方法︑その時の事業の状況如何によつでほ︑誤った結果をもたらす︒  

期間中に︑損粍が生じたにも拘らず︑ある期末の価値が︑前期末の価値よりも︑大なることがあり得る︒  

(4)

︵ほ.︶ 象の結果の測定たることを︑意図するものではない︒﹂Grant及び∴写実tOn の説明によれば︑﹁この定義は︑会計  

の見地からすれば︑資産の原価ほ︑大体組織的な方法で︑その耐用期間に配分せらるべき︑前払費用であることを︑  

︵13︶ 強調するものである︒﹂かくして︑この定義ほ︑明白に評価説を否定し︑年々の減価償却費は︑その年皮中の物質的  

へ‖︶  損粍その他の発生事象の︑負幣額による測定であるとの説を非難する︒なお︑〟九五三年に改訂せられたBu−−etin  

字ロ.畠ではつぎのように︑改められている︒﹁生産設備の原価とほ︑その有効耐用命数を通じてそれが与える用役  

︵tbe seHまcesit render00du旨gitsusefuニc呂︒象c−i訂︶ の原価である︒仙般に認められている会計原則は︑  

この原価を︑その設備の使用によつて用役が得られる期間に対し︑できる限り公正に配分し得るような方法で︑設備  

の見積耐用期間に配分することを要求する︒上の手続ほ︑減価償却会計︑即ち︑有形固定資産の原価又はその他の基  

礎価格から︑もしあれば︑残存価格を差し引いた額を︑.組織的且つ合理的な方法で︑当該資産又は資産群の見積耐用  

期間に配分することを︑自的とす 

︒  ︵柑︶ い︒﹂これに比し︑梢々明快さを欠ぐけれども英国勅許会計士協会も略々同様の見解をとり︑次のように述べている︒  ﹁減価償却費とほ︑固定資産の原価のうら︑当該資産が最終的に廃却せられるとき回収されない部分である︒この資  本損失に対する準備は︑当該資産の有効耐用命数を通じ︑必要欠ぐべからざる事業経営上の費用であり︑発生した利  益の儲如何によって左右されるものでほない︒:・⁝⁝⁝減価償却費を︑当該資産の予想耐用期間を構成する数会計期  

︵摘︶  ﹂  問に配分する方法には色々ある⁝∵:⁝  

減価償却概念に関する私見   

現代の企業経営は社会性を有し︑広く社会の各階層に奉仕するものでなければならぬ︒その従業員に対してほ︑適  

切な労物象件と賃金を保証する義務があり︑不健全な経営によつて破綻を招き︑彼等をして路頭に迷わしめるが如き  

︵二︶ 一一   減価償却の本質乃至目的と計算基礎価格  

(5)

︵山二︶ 一二  第三十二巻 第一号  

ことがあつてほならない︒株主に対しては︑適正な配当を行い︑これに関連して︑現在の株主と将来の株主との間の  

公平を期すべき義務がある︒例えば︑ある年度の費用を過少に計算するととによつて︑当時の株主に過大の配当を与  

え︑将来の株主の利益を害してはならない︒消費者に対してほ︑適正な価格で︑財貨及び用役を供給する義務があ  

る︒公益事業乃至独占事業においては特に然りである︒国家乃至仙般国民に対しては︑公正な税を負担すべき義務を  

負う︒各種債権者に対しては︑元本及び利子を完済すべきである︒   

以上のような企業経営の社会性にかんがろ︑近代企業合計笹最も強く要請せられるものほ︑合理的な期間損益計算  

である︒従つて︑減価償却概念を規定するにあたつても︑その根砥をなすものは︑期間損益計算の合理性でなけれほ  

ならない︒この点についてPatOnも︑↓減価償却を認識することほ︺他のコストの認識と同じく︑資産の現在価借  

︵17︶ の表示よりは︑寧ろ︑合理的な損益計算を主要目的とする︒﹂と述べている︒   

そこで︑筆者は︑減価償却の本質をつぎの如きものと考える︒﹁減価償却とほ︑期間損益計算を公正ならしめるた  

めに︑固定資産の取得原価から︑もしあれば︑残存価格を控除した額を︑当該資産の有効耐用命数を通じ︑組織的且  

つ合理的な方法で︑各会計年度に︑費用とし七配分することである︒これは︑各年度の損益状況や︑配当政策︑財務  

政策等によつて左右せらるべきものでほない︒﹂以下これについて説明を加える︒   

棚 減価償却の基本的目的は期間損益計算を公正ならしめることにある︒このことについてほ既に述べた通りであ  

る︒   

㈲ 阻定資産の原価及びその費用化について  

資産は︑それぞれ︑経済的有用性をもつが故に価値があり︑資産取得時における︑その経済的有用性の貨幣等価額  

が︑資産の取得原価である︒資産は︑交換等によつて他の資産と代置せられることがあり︑或は使用消粍によつてそ   

(6)

の経済的有用性を失うことがある︒後者の場合︑材料︑消粍品のよう庵流動資産については︑使用消粍が部分的に行  

われるので︑経済的有用性の費消部分と残存部分とを︑数量的にも金額的にも確認することが容易である︒然るに︑  

固定資産については︑その使用消粍は当該資産全体として行われ︑且︑消耗ほ長期にわたつて除々に発生するので︑  

その経済的有用性の費消部分と残存部分を︑直接に確認することは︑殆んど不可能に近い︒而も︑有効耐用命数を通  

じ︑取得原価と残存価格との差額が費用化することほ︑厳然たる事実であるから︑これ宅各資産の有効耐用命数を  

構成する年度に︑計画的に︑組織的且合理的紅配分して︑各年度の収益と正しく対応せしめなければならない︒この  

ような説明にほ︑動態論的ぜ場をとることが便利であり︑多くの費用配分論者は︑資産をすべて前払費用とみる︒或  

︵18︶  いほ掩軌1−雄蕊とし︑土地も亦費用である︒たゞし永久的な繰延費用である︑と説明する︒しかし︑筆者はこのよ  

うな見解には同調しない︒   

又︑費用配分論者の多くは︑費用として配分せらるべき原価は︑取得時紅おける貨幣数値そのもの ー 彼等は︑こ  

れを単に原価と称するが︑筆者は︑これを名目的原価と呼ぶ − であると主張するが︑筆者は︑これと見解を異にす  

る︒その詳細については後に論ずる︒  

㈲ 商業用固定資産の減価償却費は本来の減価償却費でほないとの説について   

火災︑風水害等の偶発的事故によつて生ずる固定資産の減価は減価償却の対象とはななない︒しかしながら︑固定  

資産を︑それぞれの本来の用途に使用することによつて生ずる経済的有用性の費消は︑すべて減価償却の対象である︒  

生産企業にあつては︑費消せられる経済的有用性は︑生産品の原価を構成し︑所謂価値移転が行われる︒生産企業以  

外の場合には︑生産品がないから価値移転は行われな小︒一部の論者︵例えば木村和三郎教授︶ほ︑価値移転を伴う  

場合のみが本来の減価償却であり︑その他の場合は︑減価償却と同じような計算はしても︑全くの空費であり︑利益  

減価償却の本質乃至目的と計算基礎価格  ︵一三︶ 一三   

(7)

二四︶  二闇  第三十二巻 第一号  

︵拍︶  のあつたとき︑利益に比例して行ってもよいものと論ずる︒しかしながら︑生産企業以外の場合にも︑そこに発生す  

る減価償却費は︑それぞれの企業が提供する用役の原価を構成するものであり︑それに対して与えられる対価と正し  

く対応せしめるため︑合理的な期間配分を行わねばならぬ︒﹁空費﹂ほ費用の項目分類とは別個の概念であつて︑生  

産企業における各種費用についても︑﹁空費﹂は存在し得るのである︒生産者と消費者と々結ぶ配給業務は︑社会的  

に必要欠ぐべからぜるものであり︑ソ聯の如き国家と離も︑これを削除することはで違い︒か⊥る業務に必要な固  

定資産の減価償却費ほ︑決して︑﹁全くの空費﹂ではない筈である︒   

㈲ 陳腐化は減価償却費の対象でほないのと説について − 有効両用命数の決定と関連して1   

経常的減価発生の原因には︑物質的原因と経済的原因とがあることほ周知わ事実である︒有効耐用命数の決定に当  

っては︑この二つの原因を考慮に入れなけれほならない︒   

而して︑技術的進歩発展が盛んに行われている現代払おいては︑陳腐化を考慮した両用命数は︑常に物質的減価を  

基礎とする耐用命数よりも短いということができる︒生産設備の場合には特に然りである︒陳腐化は必ずしも突如と  

して発生するものではない︒通常︑技術的進歩の予測は物質的命数の予測よりも却って容易である︒減価償却計算は  

かくして定められた耐用命数を基礎として行われる︒換言すれは︑陳腐化による償却も当然減価償却の対象となるべ  

きものである︒これに対し若干の異説があるので︑以下それ軋ついて検討したい︒   

ソ連ほ︑仙九三〇年以来︑減価償却率の決定に当つて︑陳腐化の可能性を全く考慮しなかった︒﹁ソヴエト経済に  

は陳腐化は存在しない︒これこそ社会主義経済が資本主義経済に優越する一つの点である﹂と宣伝せられた︒   

馬場克三教授も陳腐化を減価償却の対象とはみない︒同教授の所論の要旨は次の通りである︒﹁固定資産の生産的使  

用と︑自然の作用による消粍︵共に物理的摩滅と称せられる︶ のみが価値移転的減価であつて︑減価償却の対象とな   

(8)

る︒経済的減価及び災厄的減価ほ︑かりにその程度が精密に予測されうるとしても︑それほ価値形成的に作用するも  

のではない︒すなわち本来の意味の生産費を構成するものではない︒それほ利潤からの控除たるぺきものである︒そ  

︵20︶ れは投下資本の消粍でほあるが価値移転とほならず︑単なる資本回収計算となるにすぎない︒﹂   

こゝに所謂災厄的減価が︑減価償却の対象外であることは︑既に述べた通りである︒しかしながら︑経済的減価を  

災厄的減価と同山祝しょうとする見解には︑全面的に反対せざるを得ない︒価値移転の問題を生じない商業用固定資  

産についても︑減価償却が行わるぺきであることは︑既に前項で明らかにした通りである︒しかし︑こゝでは馬場説  

を批判するため︑問題を生産企業に局限する︒先づ考うぺきこ.とは︑価値移転の事実ほ何に止って確認せられるか︑  

何故に固定資産は︑その物質的耐用期間の限界まで使用せられるべきものとの前提の下に︑価値移転が考えられねほ  

ならないか︑ということである︒材料︑消粍品等の価値が︑その消費によつて生産せられる製品に移転することは︑  

融つの客観的事実であつて︑人為的にその額を左右し得るものではない︒然るに固定資産ほ︑それが物質的に使用可  

能の限界に達するまで当然使用しなけれほならないというものではない︒旧式機械の使用を強いて続けるならば︑他  

方において材料及び労力の移しい浪費を伴うことになるからである︒従って︑固定資産の価値の製品への移転は︑客  

観的事実としてその額が自動的に決定せられるものでほなく︑人為的に︑計算的に行われるものである︒価値が移転  

するというよりも寧ろ価値を移転せしめるのである︒   

ある製品の生産用として︑十年毎に新機械が発明せられ︑A機械からより高能率のB挽枕へ︑更に︑より高能率の  

C機械へと設備の更新が行われるものとする︒A︑B︑Cともにその耐用命数の物質的限界は三十年で透ると仮定す  

る︒B扱械を十年問に償却する場合の仙ケ年当り償却費ほ︑A機械を三十年問に償却する場合の劇ケ年当り償却費よ  

り逓.かに大であるとしても︑その性能の優属性のために︑材料署︑労務琴経費が大いに節約せられ︑A鶴城の使用  

︵仙五︶  劇五   減価償却の本質乃至目的と封算基礎価格  

(9)

第三十二巻 第一号  ︵二ハ︶ 一六  

を続ける場合に比し︑製品仙単位当り原価が切り下げられるとすれば︑A機械を廃却してB機械を使用する方が︑私  

経済的にも︑国民経済的にも有利である︒十年後にB機械も亦二十年の物質的余命を残して廃却せられ︑C機械にと  

って代られることが明らかであるとしても︑B機械ほ製作せられ︑使用せられる僧侶がある︒かくして製作せられ︑  

使用せられるに至ったB機械の価値は︑残存価格を除き︑すべて︑当然︑それによつて十年間に生産せられる製品に  

移転せしめらるべきである︒換言すればB機械ほ︑その価値を十年問の製品に移転せしめるべき前提の下に製作せら  

れ或いは取得せられたものということができる︒この場合︑馬場説の如く︑その価値の三分の劇のみを製品軋移転せ  

しめ︑残余の三分の二は災厄による価値寒失と同山祝しようとすることほ︑甚しく合理性を欠ぐものと考える︒技術  

革新の盛んに行われる分野の生産設備の如きは︑物質的耐用命数と経済的耐用命数との開きが甚大であるから︑馬場  

説に従うならば︑減価償却費として製品原価を構成するのはその価値空小部分に過ぎず︑大部分は計算外におかれ  

減価償却計算及び原価計算を無意味に近いものとすることになろう︒   

惟うに︑陳腐化を減価償却の対象外とt︑損益計算からすら除外して︑利潤からの控除たるぺきものとする見解の  

背後には︑なお使用可能な機械を眉却して新機械を以て更新することほ︑企業家が自己の利潤追求のみを意図し︑国  

民経済的利益を考慮しないために生ずる浪数である︑との思想が存在するものであろう︒又︑﹁ソヴュー経済には陳腐  

化は存在しない︒これこそ社会主義経済が資本主義経済に優越する仙つの点である﹂と述べた人たらほ︑資本主義経  

済においては︑利潤追求意慾にもとづく企巣家たちの競争によつて︑使用可能の機械の廃却という大浪費が行われる  

が社会主義経済にはこのような浪費はない︑と考えたものであろう︒しかしながらこの見解ほ甚だ非科学的である︒   

社会主義経済虹おいて︑国家的独占の基礎の上に安住する企業ほ︑旧式低能率の機械を長く使用することが可能で  

あり︑叉それを大企業から小企業に移して使用骨続けさせることも可能であろう︒しかし︑そのために︑材料︑労仇   

(10)

力︑経費に︑移しい浪費が続けられることを忘れてはなら・ない︒そこに結果するもの.は︑労伐生産性の低下と﹁社会  

的必要望巴の浪費である︒資本主義経済においてほ︑企業家たちの競争が新機械の発明︑採用を促し︑こ秒種の浪  

費を回避せしめているにはか.ならない︒†九三〇年以来長く陳腐化を否定してきたソ連においても.近時その誤が指  

摘されるようになつた︒プルガーエソ首相ほ︑ソ連工業の技術的進歩が各方向で資本主義諸国に著しく立ち遅れてい  

る事実を指摘し︑技術的進歩を阻害してきた重要な理由の山つとして︑機械の陳腐化の現象ほ資本主義だけに固有の  

ものであつて︑社会主義のもとでは減価償却に当つてか1る陳腐化ほ考慮されないという誤った非科学的な理論が普  

及したことを厳しく批判した︒ぺー・バグロフ︑アートゴロフツオフ等も陳腐化否定論を反駁する論文を発表してい  

る︒   

バグロフ望己う︒﹁現行の減価償却率ほ︑労仇手段の経済磨滅要因を計上しない︒ところが︑減価償却率は経済的  

︵21︶  磨粍と最も直接に結びついているものである︒﹂   

﹁技術的進歩の発展につれて︑設備取替期限の到来はますます矩縮されねばならない︒以前はある蒸汽機関は︑構  

造上さほどの変更もなく一〇〇年生きのびたとすれほ︑現在では山○年︑多くの場合五年も稼動した機関ほ小層能力  

の高いかつ経済的な機関と取替える必要がある︑ということができる︒かゝる取替が十分引合うのである︒技術的進  

歩の要請を考慮した減価償却率の決定に当つてほ︑楓械の物理的適応条件のみから出発す曽﹂とはできない︒技術変  

革を考慮した機械の最適耐用命数の経済的限界ほ︑物理的限界よりも遥かに狭い︒こうして各種機械の除却時限の問  

題解決に際しては︑技術計算とともに経済的藷拾票をも指南としなければならない︒要する紅︑機械の耐用命数はそ  

の今後の稼動が有効であるか否かを考量し︑旧型機械の新しい仙層改善された型との急速な取替を考慮して︑設定さ  

︵叩こ  れなければならない︒﹂  

減価償却の本質乃至目的と計静基礎価格  ︵山七︶  劇七   

(11)

二八︶ 小人  第三十二巻 第一号  

又︑ゴロフツオフはいう︒﹁最近まで一部のソグエト経済学者ほ︑社会主義経済条件における固定資産の経済的磨  

滅不可能論という間違った考えをもつていた︒そのある者は︑社会主義下では物理的に役立つ機械は経済的に役立た  

なくても︑すなわちその使用が労幼生産性の向上を阻み原価引下のブレーキとなつても︑これを使用すべきものとし  

ていた︒彼等によれは︑大企業にとつては磨滅した機械でも︑地方工業と生産協同組合でほよくこれを利用すること  

ができる︒経済的に磨滅した設備の小企業における利用は︑H社会主義工巣ノの資本主義工業に対する俊地点だと︑若  

干の経済学者はみていた︒この明らかに守旧的な見解は二十回党大会で論難されたところである︒社会主義払おける  

陳腐化を否定する論者は︑技術利用の分野における社会主義経済体制の資本主義経済体制に対する優越と経済的磨滅  

という問題を︑本質に混同している︒⁝⁝⁝⁝社会主義下でも経済的磨滅は不可避であり︑そして技術が急速に発展  ︿讐   すれはする程︑それだけ余計固豪産更新の必要が告よう︒﹂   

かくてソグエト政府ほ一九五九年七月臼までに新減価償却率を作成すべきことを︑関係各機関に指令す藩に至っ  

ておる︒   

㈲ 減価償却の目的ほ固定資産再調達資金の準備にありとする説について  

一部の論者は︑減価償却の目的ほ固定資産再調達資金の準備にあり︑と考える︒ソグエトにおける減価償却も︑国 +  

有の産業固定資産の物的維持および拡大に要する資金額を︑企業の年度費用賦課を通じて準備することを意味してい  

る︒   

この見解についてPatOnは次のように述べる︒﹁減価の認識は取巻の問題とは何等本質的な関係はない︒減佃償  

却会計の目的ほ設備原価を整然かつ合理的な方法で作業に︑従つて収益に対し配分することである︒⁝⁝⁝⁝叉︑減  

価償却を行うことは︑それ自身︑取替その他の如何なる目的のためにも資金を供給するものでほない︒純損益を正確   

(12)

に報告するためにほ︑総べての費用の認識が必要である︒しかしなが︑ら︑企業に流入する資金の量は︑・一般的に決し  

︵24︶ て費用に対する会計手続紅よつて影響せられるものではない︒﹂   

正に右の通りである︒私見によれば︑再調達資金の準備ほ減価償却の目的ではなくて︑その効果である︒資金調達  

が減価償却の基本的目的であるとすれば︑減価償却額ほ利昼の大小に比例せしめてもよいことになり︑欠損の年度に  

は償却の必要なしというてとになる︒減価償却の本質がそのようなものでないことは︑既忙明らか忙した通りであ  

る︒合理的な減価償却が行われ︑かつ欠損を生ずることがなければ︑その結果として︑概ね再調達に必要な資金/︵た  

だし必ずしも貨幣形態匿おいてではなく︶ が準備せられることになる︒﹁概ね﹂という所以は︑当該資産の再調達価  

格は︑貨幣価値の変動による影響を調整しても︑取得原価と等価でほないからである︒この問題は︑次の減価償却計  

算基礎価格の問題と関連があるので︑後に詳論する︒   

︵ェ︶ lOFn H.ArmstrO扁.DepreciatiOn Reser諾S.T訂AccOuntant﹀P8u︸勺.卜○忘   

︵2︶ CaユT・Deまne−A訟etC邑a已E眉irat抑On︶HandbOO打OfMOdernAccO亡nti扁丁訂Ory.edited by MOrt呂汐c・  

ker一︸∽∽∽一P.Uぃぃ   

︵っこ EwingMathes昌−Depreciat㌻nOf句act︒r仲es﹀Mine¢anbHndustriai UndertakingsandT露r吉l岳tiOnこ8瓜︸p.︸   

︵4︶ S−Gi−ma戸AccOu象ngC呂Cept OfPrOfit.−∽∽の︸p基毘   

︵5︶ E.L∵Granta已P山T‖誉rtOヂDepreciatiOn︸﹁誤∽.pヒ   

︵6︶ A−BastOnV E︼ement∽Of AccOuntS︸巨拐N︸p.B   

︵フ︶ C・T=Deまne︐AssetC邑andE首ratiOn.誉已bOOkO︻MOdernAccO昌tingT訂Or︸∵p.uUP   

︵8︶ l・C・BOnbrjgFt︸くaFa什iOn Of PrOperty︶巨¢ぃり.CF−○   

︵9︶ EL=只bEeごADictiOnaryfOr AccO告tSこ∽∽Nも.念N  

減価償却の本質乃至目的と計算基礎価格  九︶ 一九   

(13)

︵n︶ 戸R.Hatfie−d︼AccOunting︸↑¢当︶p・﹁U卜  

︵崇 AccO邑ingResercFB已letin雷.NNI∽S莞dbyCOmmitt針OnAccO邑i点Pr︒Cedure︶Ame旨an Institute︒fCe7  

tified Pub−ic AccOuntant00.↑曾芯  

︵⊥3︶ Granta已宅OrtOn︼Op●Cit:p・−N  

︵M︶ L.GO−きerg.COnCeptS︒f宮pr2C−ati︒nu AccO亡nting謬まewこuぎー拐㌘p・ふ8  

︵望 AccOuntingResercぎBu−−etinNO.おlssuedbyCOmmittee︒nAcc︒u已i品P3Ced焉e︼AmericanHnstitまのOf C︒rt・  

ified Pub−仙c AccO亡ntantS︶−∽∽u  

︵迅︶ 労cOmme已ati呂NO.−×OftFelnstitまeOfCFarte蒜dAccOuntantSiゴEng−andand宅a訂s︸ト盟∽  

︵⊥7︶ Wl.A.PatOn﹀Ad志nCedAccOunting︐卜拐−一p・N∽の  

︵娼︶ 高松和男﹁価格変動と資産会計﹂昭二七︑六八百  

︵通︶ 木村和三郎﹁減価償却の本質﹂会計七四巻二号  

︵円卓討論︶ ﹁減価償却理論の動向﹂ 同右 

︵20︶ 馬場克三﹁減価償却論﹂昭土六︑一七︑一八頁  

︵聖 ぺー・パブロフ﹁今後の技術的進歩と固定資産の陳腐化を考慮した減価償却率の作成﹂ ︵杉太金属訳﹁ソ連工業における減   

価償却﹂八一貰︶  

︵同番 八六︑八七頁︶  ︵22︶ 同 右  

︵讐 ブー・ゴロフツオフ﹁工業企業における減価償却の若干問題﹂︵杉本金馬訳﹁ソ連工業における減価償却﹂九四︑九五貢︶  

︵24︶ W巾A●冒tOn︐Op・C芦−p・NりN    第三十二巻 第一号  

︵∽︶ C.A.MOyerandR.戸MaまヂF已nCtiO邑AccO誓tingこ拐Pu p・トg   ︵二〇︶  二〇  

(14)

 減価償却計算の基礎価格   

減価償却計算の基礎価格︑即ち何が各年度に費用として配分さるべきかほ近時における減価償却論争の中心問題で  

ある︒一方においでほ歴史的原価︑即ち固定資産取得のための当初支出額こそ配分さるべき金額であると論ずるもの  

があり︑他方においては︑計算基礎価格ほ再調達価格であるぺきであり︑再猟達時に現実に資産を取得するに足る準  

備がなされねばならないと論ずるものがある︒前者は原価償却論者︑後者は時価償却論者と呼ばれる︒山九三四年︑  

︵l︶ FOW−erが再調達価格論についての基本的問題を論じて以来︑多くの会計学者によつて論争が続けられているが︑今  

なおこの問題ほ解決されていない︒   

右の通り一般には計算基礎価格として原価と時価とを対立せしめる︒しかしながら︑これは極めて非科学的であ  

る︒通常原価と称するときは︑当初に原価として記録された数値そのものを指す︒而して所謂貨幣価値一定の公準に  

基いて︑どこまでもこの数値を計算基準として固執しようとする︒しかし筆者はかくの如きものを真実の原価とは認  

めないので︑混乱な避けるために特に名目的原価と呼ぷ︒価値測定尺度としての貨幣価値は事実上は変動常なきもの  

である︒この測定尺度の伸縮に従って︑古い尺度による数値は︑新しい尺度による数値に改められてこそ原価は正し  

● く表示せられる︒このように正しく調整せられた数値によつて示される原価む︑筆者は実質的原価と呼ぶ︒筆者の所  

謂実質的原価を時価と混同してはならない︒前者ほ調整せられてほいるが︑あくまでも取得原価であり︑後者はこれ  

とはかゝぁりのない現在の個別価格である︒そこで計算基礎価格について︑次の一一ちの見解があることが明らかにな  

った︒  

L 名目的原価主義  

2.時価主義  

減価償却の本質乃至目的と計算基礎価格  ︵二こ  二一   

(15)

3.実質的原価主義   

︼般に三者の区別についての認識を欠ぎ︑単に原価主義と時価主義とを対立せしめて論ずるために︑多くの混乱を  

生じている︒   

以下それぞれにつき考察を進めることとする︒   

名目的原価主義   

名目的原価主義は通常単に原価主義︑歴史的原価主義︑取得原価主義などと称せられるゐのであり︑最も古くから  

存在し︑今もなお通説とみられるもので︑米国公認会計士協会︑英国勅許会計士協会もこの見解を支持する︒この見  

解を支持する積極的な論拠としては︑   

L 検証できる客観的証拠に基いていること   

飢固定資産ほ︑企業内部において使用消粍される使用財であるから時価とは無関係であるべきこと  

の二点である︒なお別に時価主義の難点を指摘することをもつて︑消極的論拠とする︒   

右のうち②の理由ほとるに足らない︒固定資産が売却を目的としないものであるから︑最初の数値を持続すべし︑  

との主張の英には︑評価して評価益を出す粧ほおよはない′との意味が含まれているようである︒貨幣価値に変動があ  

っても評価損益を計上すべきではないことは当然であるが︑かといつて当初の数値を基礎として価値費消額を計算す  

べしとの理由にはならない︒   

減価償却の基本的目的は︑既に述べたように︑期間損益計算を公正ならしめることにある︒期間扱益計算が公正で  

あるためにほ︑Trumb邑も主張するように︑﹁一つの損益計算書において︑収益と収益からの控除ほ︑ともに同質  

︵2︶ の貨幣︵hOm品eneOuSd邑ar¢︶で表示せらるぺきである︒﹂価値測定尺度としての貨幣価値に変動があるとき︑名    第三十二巻 第一号  ︵二二︶  二二  

(16)

目的原価主義によれば︑右の極めて当然な数学的原理に反することになる︒例えば︑取得原価山○万円︑残存価格○  

耐用年数仙○年の資産を定額法によつて償却する場合︑現在の貨幣価値が︑資産取得時の三分の〟であるにもかゝわ  

らず︑山年間の減価償却費を二力円として︑当期の収益から控除することは︑取得時の円という全く尺度の異ったも  

のを現在の円と同一に取扱うことであつで︑  

良知ーーゝ− サ ﹂て=∽カ  

と計算するに等しい誤りをおかし.ている︒Sweeneyも﹁通常の会計手続ほ︑同感の測定単位︵thesamekindOf  

︵8︶  mea芭ri品仁niれ︶で奉不されてぃない数字を結合する︒﹂と非難している︒   

かくして︑名目的原価主義は   

L 損益計算書に関しては︑固定資産の価値費消額の正しい期間配分が行われず︑従つて期間損益計算ほ事実と相  

違する姶果を示し︑架空利益を計上し︑資本の食激しを招く︒   

‰ 貸借対照表に関しては︑固定資産の未費消価値について読者を誤解に導く︒   

3.財務諸表を経営目的に利用しようとする人たちの判断を誤らせる︒   

右のうち︑仙の欠点ほ特に致命的である︒故に筆者は理論的に名目的原価主義を支持すべき理由はないと考える.︒  

ただ︑会計は実践利学であるから︑貨幣価値変動の程度が軽微であるかぎりは︑名目的原価を用いても誤差が僅少で  

あるから︑重要性の原則に従って︑これを容認すべきものと考える︒   

米国公認会計士協会も︑名目的原価主義が理論的紅正しいものであるが故に︑如何なる条件の下紅おいても固守さ  

るべきものとするものでほなく︑米国の現状におぃてはこれが容認さるぺきものとするのである︒即ち︑﹁普通の形  

式の財務諸表は︑会社が︑配当︑より高い賃金︑より低い生産価格の形で︑分配可能な金額につき誤解を与えること  

︵二三︶  二三   減価償却の本質乃至目的と計算基礎価格  

(17)

︵二四︶  二四  第三十二巻 第一号  

へ一︶ を認める︒﹂そして︑﹁インフレーレヨンが大変ひどくなつて︑原始原価がその実際的な意味を失うようになれば︑  

︵6︶  ある国々でなされたように山切の資産を減価した貨幣で再表示することが必要となるかも知れぬ︒﹂ことも認める︒  

しかしながら﹁一般用の会計および財務報告は︑少くとも貨幣価値がある水準で安定するまでは︑二駁に認められて  

︵8︶  いる原価に基づく減価償却という概念を固執することが︑最も有用であると信ずる︒﹂と主張するのである︒   

時価主義︵取替価格主義︶   

時価主義と取替価格主義を区別する人ほ︑前者は︑当該固定資産の償却時における時価を計算基礎価格とするもの  

であり︑後者ほ当該固定資産の取替費に相当する額な計算基礎価格とするものである︑と説明する︒しかしながら︑  

固定資産ほ通常取替までの期間が長く︑取替価格の正確な見積のごときは不可能である︒従って資産.の取替に要する  

額の準備を目的とする場合にも︑各計算期における時価を償却基礎価格とせざるを得ないから︑実質上この両者は区  

別する必要がないと思う︒名目資本の維持紅とどまり︑実質資本を維持し得ない欠占萎もつ名目的原価主義に代るも  

のとして提唱せられた時価主義は貨幣価値の変動が甚しい場合には名目的原価主義に優るものであるが︑これにも次  

のような欠点がある︒   

山 城価償却は当該年度の収益を得るために使用された固定資産の価値費消額を︑当該年度の費用として配分し︑  

収益と費用とを正しく対応せしめ︑もつて︑期間損益計算を公正ならしめんとするものである︒然るに︑今後取得し  

ようとする固定資産は当該年度の収益とは何等の関係もないのであるから︑その価格を基礎として計算せられた減価  

像却費を当該年度の収益に対応せしめることほ甚だ不合理である︒この点が最大の理論的欠点である︒   

必 各固定資産の時価を一々調査することほ甚だ困難であつて︑客観性を欠ぐ不正確な数字となり易く︑従って損  

益計算を山層不正確ならしめる︒又調査された時価に従って〟々償却計算を修正する労費は莫大である︒この点が最   

(18)

大の実務上の欠点である︒   

この問題に関連して若干諸学者の意見を紹介すれば次の通りである︒   

﹃atOn↓期間利益が正しく報告ざるべきであるとすれほ︑取引に︑費消せられる原価要素をチャー︵ソすることの必  

\   

︵7︶  要性ほ︑現在使用せられている設備が費消し尽されるとき何がなさるぺきかという問題紅よつて影響されない︒﹂  

︵さ︶   MasOn﹁資産が再調達されるか香かは︑その減価償却額或は会計処理とは何の関係もない︒﹂   

G巨man﹁最初獲得した資産ほ繰延費用であり︑その原価は償却計画に従って回収される︒再調達は∵それが同一の  

項目であると否とを問わず︑新しい繰延費用を創造する新規の取引︵freshtransactiOn︶であり︑会計学的見地から  

︵9︶  は︑その原価は当該資産取得後の会計年度において回収さるべきものである︒﹂   

実質的原価主義   

実質的原価主義とは︑歴史的原価数値を固執することなく︑貨幣価値の変動の程度に応じ︑一般卸売物価指数によ  

ってその数値を修正し︑即ち新しい尺度による数値に改め︑同質の貨幣額によつて数値の集計或は比較対応を行わん  

とするものである︒名目的原価主義者はこれを原価主義からの離脱と称するが︑これこそ最も正しく︑忠実に︑現在  

の尺度を以て原価を表示するものであるから︑真実の意味匿おける原価主義と考え︑実質的原価主義と呼ぶ︒数値の  

︵10︶ 修正軋当り何故に劇般卸売物価指数によるか紅ついてほ︑既に別の機会に論じたから︑ここでほ繰り返さない︒   

名目的原価主義は︑貨幣価値変動によつて価値測定尺度と⊥ての円が年度毎に異ったものとなる場合にも︑この事  

実に目を蔽い︑これを無視して会計処理を行い︑而も財務諸表の読者をして︑すべての記録計算が同質の円を単位と  

してなされたかの如く︑錯誤せしめる︒実質的原価主義はこの矛盾を排除せんとするものであつて︑理論的忙ほ最も  

優れたものと信ずる︒何となれば︑時価主義の如く︑収益に対しそれと無関係な資産原価を対応せしめんとするもの  

減価償却の本質乃至目的と計算基礎価格  ︵二五︶ 二五  

(19)

︵三ハ︶ ニ六  第三十二巻 第一号  ではなく︑収益発生に寄与した資産の価値費消額を対応せしめるものあり︑而も︑名目的原価主義の如ぐ︑異質の貨  

幣単位のまゝでこれを行うのではなく︑同質の貨幣単位を以て行うからである︒故に実質的原価紅基く減価償却こそ  

期間損益計算を最も公正ならしめるものである︒実務的にも︑時価主義の如く言資産の時価を調査するLとなく︑  

実際の取得原価を基礎とし︑単打二般卸売物価指数を以て調整するのみであるかち︑慈恵性の介入の余地もなく︑計  

算に要する労費も遥かに僅少である︒Gradyは︑減価償却の物価水準による調整に反対する人々が︑個人的判断によ  

る資産価格引上反対を理由としていることに対し︑次のよう私論じている︒﹁しかしながら︑旧式な評価と︑固定資  

産への投資額を単に現在の貨幣単位で示された同等の購買力に換算することとの間には︑大きな差虞のあること認識  

しなければならぬ︒後の手続は︑資産評価に関する主観的な意見の反映でほなくて︑多くの客観附かつ決定的証拠に  

︵11︶  よつて支持せられる︑貨幣購買力の実質的低減の認識である︒﹂   

最後に減価償却と実質資本維持の問題について考察する︒どのような基礎価格によるとしても︑企業が欠損を被る  

ときは勿論実質資本の維持は不可能である︒そこで欠損はないものとの前提の下に考察することとする︒時価主義乃  

至取替価格主義は︑実質資本維持を目標とするものであるが︑特定固定資膚の価格は必ずしも一般物価水準の動向と  

同一歩調をとらず︑かつ︑技術の進歩は︑年を追つてより安価な同一能率の固定資産を産み出す傾向があるから︑こ  

れらを基礎価格とする減価償却を以てし疋は︑必ずしも実質資本維持の目的を十分には果し得ないであろう︒  

︵12︶  次にTrumb已−の設例を基礎に︑これに大巾の修正補足を行つて︑実質的原価主義紅基く減価償却計算例を示し︑  

貨幣価値変動期におけるその実質資本維持能力を検討することとする︒   

物価指数一〇〇のとき︑五︑000円が出資せられ︑全額が残存価格○︑耐用年数五年の資優に投下された︒問題  

を簡単にするため︑収益は毎年度末に発生するものとする︒第二年度以降各期首に︑前期末に認識された減価償却費   

(20)

ー一↓山○  

この副︑七五〇円を以て第三年度期首に耐用年数三年の資産を取得し︑  

以下これ紅準ずる︒このように減価償却費に相当する額を年々新しい資産  

減価償却の本質乃至目的と計算基礎価格   に投下し︑実質的原価に基く償却を行うならば︑純損失を生じない限り︑  実質資本が維持されることがわ加る︒   に等しい額を︑設備資産に再投資する︒この再投資は︑五年後にすべての  資産が癖却せられるように︑逐次耐用年数の短い資産に投資せられる︒減  価償却は定額法︑そして減価償却費が唯山の費用である︒純利益は各期末  に処分されて社外に流出し︑企業の全資本ほ設備資産として保たれている︒  

/   物価水準動向は各設例に示されている︒   第一例   

第一年度の償却暫ほ五︑000円の五分の山監物価水準変動のファクタ  

ー一〇〇分の劇二〇を乗じたもの︒この−償却費相当額を第二年度期首に耐   

用年数四年の資産に投下する︒第二年度の減価償却費ほ次のよう軋計算さ  

れる︒  

鴻−品晶警率r唐×  

一ニ= ︑︑ ・︑  ニ・こ モ   −00  −鼠○  

一灯C   =−∨会○  ‖ 父岩  

欝ユ.例  

各 年 度 償 却 高    第1年度  第2年度  

(年度末物価拇数)(ユ20)    (140)  

設備投資額 耐用年数)  

第1年度期首¥5,000(5ト1,2∞   ユ・・4∞   

2  ノケ  1,200(4)11,2CO   350  

第3年度  第4年塵  界5年度  

(160)●(18b)  (20?)  

1.600  1,800   2,000   400   450   500   667   フ50   833   2,667  1,500  1,667  

4,500   5,OCO   3  ・ 1,750(3)   1,750   

4  ヶ   2,66フ(2)   

5  〝  4,500(1) 

第6年度減価償却高(当初出資額と実質的に同額)   10,∝0  

(21)

第三十二巻 欝仙骨   

前例において︑もし︑減価償却費相当額をすべて現金で保有したとすれ  

ほ︑欝五年度末における現金保有高は八︑000円となり︑実質資本は維  

持されないことになる︒   

第二 例   

物価水準が二度上昇し︑その後下降する場合も︑実質資本が維持せられ  

るととを示す︒   

第三例   

各年度の減価償却費相当額で︑耐用年数五年の資産を取得する場合も︑  

各年度の償却額に未償却残高︵ただしそのときの物価水準で調整する︶を  

加えれは︑調整基準による当初出資額軋等しくなり︑実質資本が維持せら  

れていることを示す︒   

右の方法は減価償却額のみを修正し︑固定資産勘定や既往の減価償却引  

当金の数億を修正しないものである︒しかしながら筆者は︑関係諸勘定の  

数値をすべて同質の貨幣単位に統一することが望ましいと考える︒そのた  

めの会計処理方法として︑筆者の考えるところを述べれば︑次の通りであ  

る〇   

Ⅲ 固定資産勘定の数値を貨幣価値の変動に応じて修正する︒ただし歴  

史的数値の意義を認め︑固定資産勘定はそのまゝとし︑調整額ほ別に固定  

第2例  

各 年 度 償 却 高  

欝1年塵  界2年皮  質3年度   第︶   4 ⊥   年80   度︶   第 ︵   年20 5  1⊥   度︶  

(年度末物価指数)1(120) (140)  

設備投資額(耐用年数)  

第1年度期首¥5,000(5ト1,2甲  ユ,400  

(160)  

1,600    400   667  

1,800    450   750   1,500   4,500  

1,200    300   500  

ユ,000  

3,000   6,000   4  〝  2,667(2)  

5  か  4,500け)  

欝5年皮減価償却高(当初出資額と出質的に同額)…   

(22)

資産調整勘定を設けて︑これに借記する︒こ  

れに対する相手勘定は資本調整勘定とする︒   

闇 調整された固定資産数値に基き各年度  

の偵却費を計算する︒計算された償却費額を  

以で︑減価償却費の借方︑減価償却引当金の  

貸方に記入する︒   

㈲ 減価償却引当金勘定の数値もその後の  

貨幣価値変動に応じて調整する︒調整額は減  

価償却引当金調整勘定に貸記する︒相手勘定  

は資本調整勘定である︒   

相 国定資産調整勘定ほ︑本来固定資産勘  

定に直接記入すべきものを︑歴史的数倍と調  

整額を区別するため︑別勘定としたものであ  

るから︑最近の貨幣単位による固定資産の取  

得原価を知るため軋ほ︑両勘定を合算するナ⊥  

と︒減価償却引当金と減価償却引当金調整勘  

定についても︑同様のことがいえる︒   

この方法によつて設例第一を各勘定に記入  

償減価却の本場乃至目的と計静基礎価格  

第3例  

各 年 度 償 却 高  

第4年皮 質5年度  

(180) (200)  

1,800   2,OC)0    360   400    432   480    519   576    第1年皮 質2年定 常3年度  

(140)   (160)  

(年度末物価指数)(ユ・20)  

設備投資額(耐用年数)  

欝1年度期首¥5,000(5し主上些    2  〝  1,200(5)1,200    3  〝  1,6〔主0(5)  

1,400  1600    280   320  

4  〝  2,304(5)  

5  〝   3,111(5)  

′ ̄■ヽ 

二 欝5年度減価償却高  

塾第5年度末未償却残高(調整額)  

第2年塵取得資産¥240×一   ¥ 400  

960   1,フ28   2,フ65   

3  ノケ   672×  

4 〝   1,382×1  

5 ,,  2,489×  

5,853  

¥10,000  

合   討  

第5年末減価償却高+純設備投資高   

(23)

第三十二巻 欝ご号  

した結果は下の通りである︒内の数字は︑年度を示  

す︒簡潔を期するため︑締切︑繰越撮替等は行つてい  

ない︒   

こゝに示してないが現金勘定第五期末残甘同は一〇︑  

C00円である︒   

資本調整勘定は剰余金勘定である︒この勘定の残高  

と資本金勘定を合算すれば︑当初出資額を最近の貨幣  

本が維持せられたことを示している︒各数値の計算過  

程紅ついてほ紙巾の関係上割愛する︒   

︵⊥︶R.FFOWler.The DepreciatiOn OfCapitalP¢uふ   

︵2︶WいP=ゴロmぎl−.Pユce・Le扁−p昔reciatぎnand  

Rep︼acement CO∽t.AccOunting ReまewJaヲL$∞  

P.Nり   

︵3︶lr W=Swee記y−Stabi︼ized AccOunnti軋▼Pめじの﹀  

P.NA  

︵4︶AccOunti〇g Resercb厨ulletin NOゝU C訂p.P−の   

︵5︶ibid.CFap.岨Lb   

︵6︶ib岩. モ り   単位で表示する額と一致し︑本例払おいては︑実質資  産  

減価償却引当金   国 走 資   減価償却費  

(1)1,200(1) 5,000  

(2)1,750(2)1,200  

(3) 2,66フ(3)1,フ50  

(4) 4,500(4) 2,66フ  

(5)些廷些(5)一生堅9  

計 20,11フ 計 ⊥5,117   ︵三〇︶  三〇  

減価償却引当金修正  固定資産調整  

(2) 200(1)1,000  

(3) 450(2)1,200  

(4) フ83(3)1,450  

(5)_主上三堅(4)ユフ83  

計 2,フ17(5)」逗堅   討 フ,71フ   

資 本   調 整  

(1)1,000  

(2)1,2CO  

(3)、1,450  

(4)1,プ83  

(5) 2,284  

㈲ 凧刷 刷冊 ㈲ 計  

計 フ,フ1フ  

(24)

︵7︶ 声A・pat︒nu︒で︒Fこ憎・Nりル  

︵8︶ Pn MasOnu Princip訂sOfP各−ic占tility冒prec旨iOでけ∽uりP・∽  

︵9︶ S.Gi︼man.〇p.Cit:PPりあuふ  

︵∽︶ 拙稿 固定資産再評価及び再評価剰余協の本質  

−実質的原価主義の提唱−  

香川大学経済論叢 第三〇巻 第六号  

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減価償却の本質乃至目的と計静基礎価格  ︵三こ  三二   

参照

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