― ―
秋田大学の資源学分野の国際展開
国際交流センター副センター長 今 井 亮 (工学資源学研究科 地球資源学専攻 教授)
2012年4月より国際交流センター副センター長になりました。2010年7月に秋田大学に着 任してから,まだ2年に満たない時期に,思いがけず,大役を仰せつかってしまいました。
本籍の業務は工学資源学研究科の地球資源学専攻(地球資源学科)において,金属鉱床学・
資源地質学に関係する分野の教育と研究を行なっています。また,学内の国際資源学研究 教育センター(ICREMER)の協力教員もつとめており,ICREMERの教員とともに,本 学と連携しているモンゴル科学技術大学および東カザフスタン工科大学と,それぞれの国 におけるレアアース(希土類元素)資源に関する共同研究を進めています。学会活動では,
Wiley-Blackwell社から出版されている,Science Citation Indexに採録されている国際学術 誌Resource Geology誌のManaging Editorもしています。
研究テーマは,地球のどのような場所で,どのようなプロセス,メカニズムで金属元素 の濃集が起こっているかを解明して鉱床の成因モデルを構築することにより,探査,開発 へ貢献することを目指しています。実際の研究は,金属元素の濃集が起こった場所(鉱床 といいます)の現地調査(フィールドワーク)を行い,岩石や鉱石の試料を採取し,化学 分析を行なうことから始まります。現在,研究室の卒論の学生や大学院生は,モンゴル(大 学院2名,卒論2名),フィリピン(大学院2名,卒論1名),タイ(大学院1名),チリ(大学 院生2名),パプアニューギニア(大学院生1名),アフガニスタン(大学院生1名)と,沖 縄トラフの海底熱水鉱床(大学院生1名)を研究フィールドとしています。モンゴル,フィ リピン,タイでの研究は,それぞれ,モンゴル科学技術大学,フィリピン大学,チュラロ ンコルン大学との共同研究として実施されています。また,現在,モンゴル,パプアニュー ギニア,アフガニスタンから各1名の留学生がいますが,2013年4月からは,インドネシア,
アフガニスタン,ボツワナから各1名の留学生が,新たに研究室のメンバーに加わります。
日本国内では,現在は,鹿児島県の菱刈鉱山など,ごく少数の鉱山のみが稼行しています。
秋田県内ではかつて,大館および小坂周辺を中心に黒鉱鉱床と呼ばれるタイプの鉱床を対 象とした鉱山が多数稼行していましたが,1990年代にすべて閉山してしまいました。しか し,現在は新興国などの産業の発展に伴う需給バランスの逼迫に伴い資源価格が高騰する とともに,各国の外交戦略あるいは国家戦略が複雑に絡み合い,日本の先端産業に必要な 稀少金属(レアメタル)をはじめとする金属資源については,単に資源国から輸入すれば よいということではなく,我々(日本企業)が自身の手で確保しなければならない時代に なってきており,資源会社(金属鉱山会社,商社など)各社とも,海外の各国において鉱 床探査,鉱山開発のプロジェクトを進めています。しかしながら,資源各社において,実 際に海外のプロジェクトを進めるための人材が不足しており,人材の供給が喫緊の課題と なっています。同様に海外の資源会社大手を中心に世界中で人材の獲得合戦となっていま す。日本政府や国内の鉱山会社で作る鉱業振興会なども国際資源人材育成事業として,海 外の資源開発の現場などで学生が行なうインターンシップへの補助を行なうなど,日本の 大学を卒業して,海外で活躍できる人材の育成へ支援を行なっています。
Akita University
― ―
秋田大学の工学資源学部は1910年に設立された官立秋田鉱山専門学校を前身としてお り,2011年に創立100周年を迎えました。鉱床探査から鉱山開発,採掘された鉱石の処理,
選鉱製錬にいたる資源学関連分野全体を学ぶことのできる教育プログラムを持つ本学から は,これまで,資源産業を支える多くの人材を輩出し,現在も多くのOBが海外における 資源探査,資源開発の第一線で活躍しています。
このような歴史と実績のある秋田大学に対し,資源探査,資源開発に関わる分野の人材 の輩出が,政府(経済産業省,文部科学省),政府系機関や,各鉱山会社などから期待さ れています。国際資源学研究教育センターの設立と,大学院工学資源学研究科における5 年一貫博士課程「レアメタル等資源ニューフロンティアリーダー養成プログラム」のオン リーワン型リーディングプログラムへの採択,今後予定されている国際資源学部の設置に 対しても,大きな支援と期待が寄せられ,オールジャパン体制での資源分野の人材育成の 中核としての役割が求められています。
リーディングプログラム,国際資源学部ともに,学生の実習および研究フィールドの場 を世界の資源国に広げるとともに,国内のみならず世界の最先端の研究者と連携して教育 を行ないます。また,資源国を中心として海外からの留学生も積極的に受け入れ,卒業生 のネットワークを世界の資源国に広げて,将来,彼らが母国の資源産業や資源政策の中枢 を担うことにより,未来の日本の資源外交に寄与できる人材のネットワークを構築するこ とも期待されています。
私が国際交流センターの副センター長に着任してから,榎本国際交流センター長,高橋 嘉行国際交流推進役,高橋康弘国際課長,水田ICREMERセンター長ほか,たくさんの教 職員のご協力をいただき,アジアの資源国において,それぞれの国で,地球科学分野およ び資源工学分野において中核的な役割をもっており,これまで共同研究等で連携の実績の あるインドネシアのバンドン工科大学,フィリピンのフィリピン大学,タイのチュラロン コルン大学との大学間交流協定(学術交流協定および学生交換に関する覚書)を締結する ことができました。国際資源学部設置後の海外フィールドワークや,リーディングプログ ラムでの海外インターンシップを,これらの大学からの協力によって実施していくととも に,これらの大学からの本学の大学院へ学生を受け入れ,学位取得,共同研究などで協力 し,修了後,帰国後も継続して共同研究等を通じて支援していきます。
また,秋田大学工学資源学部の前身の官立秋田鉱山専門学校のモデルとなったドイツの フライベルグ工科大学との大学間交流協定(学術交流協定および学生交換に関する覚書)
を締結したほか,スウェーデンのルレオ工科大学はじめ,カナダやオーストラリアの資源 分野,地球科学分野の先導的な大学との協定締結へむけた協議を進めています。ドイツの フライベルグ工科大学,スウェーデンのルレオ工科大学ともに,近年の情勢をうけて,資 源分野での中核的な研究教育拠点として,それぞれの政府の支援をうけて先端的なプロ ジェクトに取り組んでおり,秋田大学の資源学分野の今後の取り組みにも学ぶべきことが 多いと考えられます。
留学生の受け入れ,海外の大学などとの連携は,秋田大学における資源学関連分野の将 来の発展のために必須であると同時に,日本の産業,国民の生活にとっても重要な役割を 持っています。これからも関係各位の変わらぬご支援をよろしくお願い申し上げます。
Akita University