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大学生による両親の夫婦関係の認知と過剰適応との関連

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Academic year: 2021

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全文

(1)

大学生による両親の夫婦関係の認知と過剰適応との関連

―過剰適応の背景要因としての夫婦関係・親子関係―

16014PCM

村瀬 清香

問題

1. 過剰適応とは

一見良好な対人関係を築いて社会に適応して いるように見える人の中には,円滑な対人関係 を築こうとするあまり,心理的には適応してい るとはいいがたい人が存在する

(

星野・岡本

,

2013)

。その典型に「過剰適応」がある。過剰

適応には,自己抑制的な性格特性の「内的側面」

と,他者志向的な行動から捉えられる「外的側 面」という

2

つの側面がある

(

石津・安保

,

2007)

。過剰適応の状態にある子どもはしばし

ば「よい子」と評されるが

(

大河原

, 2012)

,よ い子は「絶えず相手から良い評価を与えられる ことでしか,対人関係に安心することができず

にいる

(

佐々木

, 2012)

」と指摘されるように,

その背後には苦悩が潜んでいるといわれている。

2. 過剰適応の背景要因―過剰適応と家族―

過剰適応をある環境へ順応するための適応方 略のひとつと捉えると,そうした対人関係様式 の形成の端緒は,家族との関係性にあると考え られる

(

石津・安保

, 2009;

浅井

, 2014)

ところで,氏家他

(2010)

は,夫婦間葛藤が あるときに親は子どもに対してネガティブな養 育行動を取りやすくなり,子どもが抑うつ的に なるというプロセスを見出した。このように,

夫婦関係は家庭環境の一部として直接的に,さ らに親の養育を促進したり阻害したりすること によって間接的に子どもの精神的不健康や問題 行動の出現に関わる

(

菅原他

, 2002)

。これらの ことから,夫婦関係と親子関係が過剰適応の生 起に影響を及ぼすことが推測される。

両親の夫婦関係については,両親の結婚生活 の継続がどのような要因によって規定されてい るのかということについての子どもの認知であ る「両親の結婚生活に対するコミットメント

(

宇都宮

, 2005)

」を取り上げる。親子関係につ

いては,親が子どもの自律性をどの程度援助し ているかということについての子どもの認知で ある「親からの自律性援助

(

桜井

, 2003)

」を取 り上げる。

3. 目的と仮説

本研究では,両親の夫婦関係と親子関係が子 どもの過剰適応に及ぼす影響のプロセスについ て検討することを目的とした。

仮説

1

石津・安保

(2009)

より,過剰適応の 内的側面は外的側面の生起に正の影響を及ぼす。

仮説

2

結婚生活に対する両親のコミットメン ト

(

以下,コミットメント

)

が情緒的なもので ある場合,過剰適応は低減する。一方,コミッ トメントが社会的な制度,物質的利益,価値観 などによるものである場合,過剰適応は高まる。

仮説

3

コミットメントが情緒的なものである 場合,子どもは親から自律性を尊重する関わり を受けていると感じ,過剰適応は低減する。一 方,コミットメントが社会的な制度,物質的利 益,価値観などによるものである場合,子ども は親から自律性を損なう関わりを受けていると 感じ,過剰適応は高まる。

方法

1. 調査対象者と手続き

2017

7

月,愛知県内の私立

A

大学に在籍 する学生

289

名を対象に質問紙調査を行った。

そのうち,生計を一にしている家族の中で両親 が健在であった男性

43

(

平均年齢

19.91

SD

= 1.63)

,女性

207

(

平均年齢

19.73

歳,

SD

= 1.34)

を分析の対象とした。

2. 質問紙の構成

表紙, 「両親の結婚生活コミットメント認知尺 度

(

宇都宮

, 2005)

」, 「親からの自律性援助測定

尺度

(

桜井

, 2003)

」,「大学生用過剰適応尺度

(

石津・齊藤

, 2011)

」,年齢と性別に関する質問

項目から構成された。

(2)

結果

1. 因子分析と信頼性分析

因子分析の結果,両親の結婚生活コミットメ ント認知尺度は

4

因子,大学生用過剰適応尺度 は

5

因子が抽出された。各下位尺度についてα 係数を算出し,内的整合性が確認された。

2. t

検定

男女別に各下位尺度得点の平均値を算出し,

t

検定を行った。その結果, 「母親からの自律性援 助」において,女性の方が男性よりも有意に得 点が高かった

(t (248) = 2.013, p < .05)

3. 共分散構造分析

11

個の下位尺度得点を観測変数とし,過剰適 応の「内的側面」と「外的側面」を潜在変数と した共分散構造分析を行った

(

1)

過剰適応の「内的側面」から「外的側面」に 対して有意な正の影響が見られたことから,仮 説

1

は支持された。また,配偶者との情緒的な 関係性を基盤とした性質のコミットメントであ る「存在の全体受容・非代替性」から「外的側 面」に対して有意な正の影響が見られ,その他 のコミットメントから過剰適応に対する有意な 影響は見られなかったことから,仮説

2

は支持 されなかった。さらに, 「父親/母親からの自律 性援助」に対して「存在の全体受容・非代替性」

から有意な正の影響が,また,婚姻関係の継続 を重視する性質のコミットメントである「永続 性の観念」から有意な負の影響が見られた。さ らに, 「外的側面」に対して「父親/母親からの

自律性援助」から有意な負の影響が見られたこ とから,仮説

3

は部分的に支持された。

考察

石津・安保

(2009)

と同様に,過剰適応の外 的側面は内的側面から影響を受けて生起する二 次的反応である可能性が示された。しかし,内 的側面がコミットメントや親からの自律性援助 から影響を受けるという過程は見られなかった。

このことは,過剰適応の内的側面に対してコミ ットメントや親からの自律性援助以外の要因が 関わっていることを示唆するものと考えられる。

また,両親が情緒的な結びつきによって結婚 生活を維持していることは,自律性を尊重する 親の養育態度を介することによって子どもに肯 定的な影響力を持つ一方で,両親が夫婦関係の 継続を重視する価値観によって結びついている 場合,そのことが自律性を損なう親の養育態度 を促進し,子どもは他者志向的な適応方略をと るようになる可能性が示唆された。

藤田

(2009)

は,家庭の中で両親間の葛藤に

苦しみ,献身的な気遣いを通じて家族の「かす がい」になっている子どもたちの存在を指摘し,

その予防や援助の必要性について言及した。本 研究の結果から,情緒的な結びつきが希薄な夫 婦の子どもは,親の意向や期待に敏感に応じて 他者志向的に振る舞うという適応方略を用いる ことで,両親に代わって家庭内の雰囲気を調整 したり,家族というまとまりを維持したりする 役割を担っているのではないかと考えられた。

1

両親の結婚生活コミットメント認知が親からの自律性援助と過剰適応に及ぼす影響。

注)***

p < .001, ** p < .01, * p < .05

期待に沿う努力 永続性の観念

他者配慮 母親からの自律性援助

 χ² = 38.809 (df = 34, ns )  GFI = .972

 AGFI = .946  RMSEA = .024  CFI = .991

父親からの自律性援助

自己抑制 存在の全体受容・非代替性

自己不全感 安定志向

人からよく思われたい欲求 社会的圧力・無力感

誤差1

過剰適応 外的側面

誤差2

誤差3

誤差4

誤差5 誤差6 誤差7

誤差8

.248***

.179**

.477***

-.373***

.437***

.335***

R² = .220

R² = .074

R² = .497 R² = .289 R² = .246 R² = .791 R² = .407 R² = .298

.435***

-.271***

.186*

.219***

-.206***

.705***

.537***

.496***

.890***

.673***

.294***

.153*

.483**

過剰適応 内的側面 -.164*

-.155*

参照

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