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児童のメンタル空間の検出とその構造(第2報)

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(1)

児童のメンタル空間の検出とその構造(第2報)

著者 淡野 明彦

雑誌名 奈良教育大学教育工学センター研究報告

4

ページ 7‑13

発行年 1981‑03‑10

その他のタイトル A Study on Extent of Mental Space Cognized by Children (2nd Report)

URL http://hdl.handle.net/10105/4641

(2)

児童のメンタル空間の検出とその構造

(第2報)

淡 野 明 彦(地理学教室)

A Study on Extent of Mental Space Cognized by Children (2nd Report)

Akihiko Tanno {Department of Geography)

Abstract

Previously the author and cooperative researcher detected an mental space cognized by children in an elementary school (4, 5, 6 grades), and was able to get some results which we had expected.

So, this report is written for inspecting some results in the former report through the latest exam‑

ination in another elementary school. The results of this study can be found in the following passages.

(1) The extent of mental space is very hard susceptible to the influences of the content of experience and learning.

(2) Girls are superior to boys in the extent ofcognizing.

The latter result are different from the former report.

Keywords:

Development of cognition Mental map

1.研究の目的

さきに、筆者と共同研究者の浦前正己は、小学校社会科における空間認識育成のためのカリ キュラムは、児童の各発達段階に応じて主観的に認識されるメンタルな空間を止揚する方向で、

科学的、客観的に構成されねばならないとする立場から、構成の素材である児童のメンタルな空 間の検出と、その構造の検討によって地理的空間との差異をとらえることを目的とする研究を 行い、その結果を報告した。1)1小学校4ォ5‑6年生総計207名のケーススタディであったが、

メンタル空間の構造について幾つかの傾向を把握することができた。すなわち、児童のメンタ ル空間のパターンは、地理的空間の絶対距離とは無関係に形成されるとは考えられないが、児 童の日常の生活経験・学習内容が地理的空間の絶対距離をしのぐ強い形成因子として作用し「飛 び地」的パターンを生じさせている、性別によるパターンの差異をみると男子が女子に先行し ている、学年差によるパタ‑ンの差異をみると、学年進行とメンタルな空間の拡大とが対応する 傾向を示しながらも、どのような内容の学習をしたかによって大きく影響を受けるなどの諸点

7

(3)

である。しかし、このような傾向が普遍約・一般的なものであるかどうかについての判断は、

多くのケーススタディの累積にまたねばならない。

本研究は、第1報と同様に、児童のメンタルな空間の検出とその構造の検討をケーススタデ ィにより行うことを目的とし、第1報で把握できた幾つかのメンタル空間のパターンの傾向の 普遍化・一般化に向けてのアプローチとしたい。加えて、第1報では不十分だった地域学習の

内容との関連についても若干の考察を行いたい。

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第1図 研究対象地域のメッシュ区分 印刷の都合上、みやすくするために この地図は5万分の1地形図をメッ シュ区分したものであり、実際に使用

(4)

2.研究の方法

児童のメンタル空間の検出には確立された手法はないが、筆者と共同研究者は従来の手法の 吟味により、学校を中心とする東西・南北方向それぞれ10knの地理的空間を1kmこいとの正方形 のメッシュに区分し、各メッシュに存在する地名について知っているかどうかを答えさせる方 法を考案し、第1報において使用した。本研究においても同じ手法を用いるが、若干の修正を 加えた。修正した点としては、国土地理院発行の2.5万分の1地形図を用いて1km2のメッシュ を作成する際に、ゴチック体で記されている広域的な地名2)は必ずしも記されたメッシュにの み固有のものではないため地形図上から塗り消した、鉄道の駅名についてもその駅名が必ずし も記されたメッシュに固有のものではないため同じく塗り消した、集落がメッシュを区分する線 上にかかった場合は、集落の含まれる面積の多いメッシュに当該集落をまとめ、分割されること のないように地形図の断片を作成する際に配慮した、児童にメッシュ区分された地形図の断片 をみせそこに記されている地名を一ツ以上知っているかを問う際に、漢字で書かれた地名の読み を実験者が読みあげ、漢字が読めないことによる障害を除去した。

検出の対象者は桜井市立安倍小学校の4・5・6年生総計2.33名(4年生71名、5年生78名、

6年生84名)で、1980年7月上旬にほぼ実施日をそろえて行った。安倍小学校を対象とした理 由は、第1報での対象となった桜井市立三輪小学校と児童数が類似していること、新興住宅地 の建設による転入児童が僅少であること、三輪小学校が桜井市の北部地域を校区としていたの に対し、安倍小学校は南部地域を校区とするため、同市域の学校でも校区の位置による差異が 比較可能である、当該校の教員の協力が得られたことである。

得られたデークーの処理・分析は第1報に準じた。今次の当初の計画においては、数校につ いて実施し、そのデーターの処理・分析にあたっては高度な機器とプログラムの適用を予定し ていたが、物理的な制約上一校について実施できたのみであったため、機器利用等は行わなか

った。

3.結果と考察

233名について実施した結果、226名の有効な回答を得た。20,504(88メッシュ×233名)デー タのうち「知っている」と答えた単純比率は百分率で44.0%であった。各メッシュごとの「知 っている」と答えた単純比率を示したのが第1表で、これを5段階に区分して作成したのが第 2図である。

第2図によると、全体として校区から絶対距離が遠ざかるにつれて児童の「知っている」比 率は低くなっていることがわかるが、東・北東・北・北西・西・南西方向にはそれぞれ比率が おおむね漸次的に低下しているのに対し、南東・南方向には急激な低下をみることができる。

一方、第1報でとらえることのできた「飛び地」的傾向がここでもみられ、地域的には橿原市 中心部とその周辺、桜井市の山間と山麓とにおいてである。95%以上の児童によって知られて いるメッシュは12あり、メッシュ番号(以下Mと略す)32・41・42・59・60は安倍小学校の校 区であり、校区外ではM14・19・44・58・78は著名な地名を有する地域(M14−三輪、M19−

耳成山、M44−倉橋溜池、M58一飛鳥、M78一多武峰)で、M21・22は校区に北接する地域であ る。M19・78において著名な地名を有する地域は「飛び地」的に知られる傾向をとらえることがで

9

(5)

きる。75−94%のメッシュについてみると、概して校区および校区に隣接する地域にみられる が、M8・27・28・47の「飛び地」もみられる。M8は三輪山、M27・28は八木、M47は畝傍山・

橿原神宮の地名を含む地域で、著名な地名を有する地域は絶対距離の遠隔さにもかかわらずよ く知られ、メンタル空間の不連続を示していることが明確にとらえられる。49%以下のメッシ ュは、概して学校から遠隔部にみられるが、注目すべきことは校区に隣接する地域が含まれて いることである(M24・30・43・50・53・61・68・69)。この傾向は第1報においてもみられ、

第1表 各メッシュごとの「知っている」と答えた単純比率(%)

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山地等の自然的障害は存在しないにもかかわらず、著名な地名を有しない校区外・白市(町村)

外に及ぶと著しく知られる度合が遅れるか、阻止されることを示していた。M24・30・43・50 は特に自然的障害は存在しないが、M53・61・68・69は山地で、校区と短距離で結ぶ道路が存在

しないため、自然的障害が阻止する要因であるといえよう。安倍小学校の周囲の地形は、第1図 にみられるように東から南方向には山地がせまっているため、山地がブロックとなって近距離 な地域でありながら、著名な地名を有しない場合には知られる度合いを遅らせ阻止しているも のとみなすことができる。知られている比率の高い地域は、学校を中心にほぼ南北方向に軸を 形成しているが、この傾向は第1報でもとらえられた。両校区とも校区の形態が東西方向より も南北方向に延びており、しかも南北方向の道路の整備が進んでいることから、これらが知ら れる度合いの促進要因とみなすことができる。

つぎに性別によるメンタル空間のパターンの差異をみるため、第1報と同様に男女間で「知

4

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4年生が他の2学年をしのいでいるメッシュ

第4図 学年差によるメンタル空間の差異

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っている」比率が10%以上の差のあるメッシュを図示した(第3図)。第1報では男子が女子に 比しメンタル空間の拡大が先行していたのに対し、第3図は逆の結果を示している。安倍小学 校の教員の説明によると被験者である4・5・6年生の学力は平均的に女子が男子にまさって いるという。そこで地域学習の成果が反映されているのかをみるため、地域学習の副読本であ る「わたしたちの桜井市」3)に記されている地名をすべてピックアップし、メッシュごとにその 頻度を数え、学習内容との関連性をみたところ、M13は「大泉」が2回、M17は「出雲1」が2 回それぞれ副読本に記されているが、M2・5・20・37・47については皆無であるため、両者 の関連は強いものとはいえない。今後、検討されるべき課題である。

学年の進行とともに児童のメンタル空間の形成が進んでいるかをみるため、ある学年が他の 二学年のそれぞれの比率を10%以上しのいでいるメッシュを図示した(第4凶)。これも第1報 と同様に、学年の進行とメンタル空間の形成の進行とが必ずしも対応していないことを示して いる。6年生が4・5年生をしのいでいるメッシュは10メッシュあり、他の学年に比し最も多 いが南西部に集中している。また、5年生がしのいでいる6メッシュのうち3メッシュは三輪 周辺である。第1報では遠足との関係を考察したが、今回も同様にみると、安倍小学校では、

4年生で春の遠足に多武峰、5年生では秋の遠足に飛鳥へ出かけることから、6年生のしのい でいるメッシュのうち、M65−68・73は5年生のときに行った飛鳥への遠足の結果のあらわれ ではないだろうか、しかし、4・5年生については遠足との関連はみいだせない。そこで3・4年 生の地域学習との関連を検討するため、性別による差異の考察に用いた方法と同じく、副読本 に記されている地名の頻度をみると、4年生がしのいでいる4メッシュはすべて頻度が0で、

5年生では6メッシュのうち2メッシュ(M24−「金屋」1回、M43−「復古」1回)のみで、

地域学習との関連との結びっきは低い。第1報での関連の考察に比し、今回は因子をとらえに

くい。

4.まとめ

本研究では、第1報でとらえられた幾っかの傾向と比して、性別による差異においては全く 逆の現象がみられたが、それ以外はほぼ同じ傾向がとらえられ、普遍化と一般化に向けて一歩 前進をみた。ことに、地形環境が児童のメンタル空間の形成に強い阻正要因となっていること が把握でき、一応の成果をおさめることができた。しかし、性別および学年別の差異について は今後さらに検討を要する課題である。

このような児童のメンタル空間の検出と構造の考察が、社会科学習の空間認識の育成へ向け て、そのカリキュラム開発にいかに効を奏するかについては、筆者自身にいまだ練りあげられ た見識が確立されないため、今回も結果の報告にとどめておく。

(本研究にあたりお世話になった安倍小学校の浦前知佐子先生をはじめ、諸先生方にお礼を申 し上げます。)

注 1)淡野明彦・浦前正巳(1980):児童のメンタル空間の検出とその構造;奈良教育大学教育工 学センター研究報告No.3,PP.9〜15.

2)たとえば、「畝傍」「鴨公」等の地名ではぼ旧行政村の名称である。

3)島間一郎他(1976) 「わたしたちの桜井市」四訂版、桜井市教育委員会。

(現在は使用されていない。)

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参照

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