対人的誘引におよぼす応答および受け手の態度の効 果
著者 上田 敏見, 増田 悦代
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 29
号 1
ページ 159‑173
発行年 1980‑11‑25
その他のタイトル Effect of Reply and Recipient's Attitude on Interpersonal Attraction
URL http://hdl.handle.net/10105/2430
対人的誘引におよぼす応答および受け手の態度の効果
上 田 敏 見 ・ 増 田 悦 代 (心理学教室) (王寺町立王寺小学校)
(昭和55年4月28日受理)
Lombardo, Weiss & Stich (1973)は、意見の異なる人に対して応答する場面を設定し、こ の相互作用場面での対人的誘引について研究した。その結果、自らの言葉で十分意見を記述し相 手に伝えた群は、全然意見を伝えることができなかった群や、相手の陳述に対し、 「あなたと同 じです」 「ちがいます」という評定尺度で反応した群よりも、高い好意性を示した。つまり、意 見の異なる人に対しても、応答の機会が増すにつれて高い好意性を示すことが示唆されたのであ
る。
Brink (1977)は、上記の研究の応答のタイプを改良し、意見の異なる人について、 I ∫ S (Interpersonal Judgment Scale)による好意性測定を実施したO応答のタイプは、 ④自分の意 見を記述して相手に伝える群、 ㊥第3者(実験者)に自分の意見を記述して伝える群、 ㊦自分の
意見を記述するが誰にも伝えられない群、 ㊤自分の意見を全然表明できない群、の4群である。
その結果、 ①群の好意性得点は㊥㊦貧群よりも有意に高い値を示したO なお、 ㊥㊦㊤の3群間に は有意差はみられなかった。つまり、たとえ意見の異なる相手であっても、その人に直接応答す ることが好意性の修正に有効となり、第3者‑の応答(㊥群)や、独自(0群)、又は全然意見 を表明しない(旬群)という手段では、好意性の修正は生じないのである。又、 ①群について、
被験者が相手に応答したことによって、相手にどれ位影響を与えたと思うか、という質問がなさ れた。その結果によると、被験者が相手に影響を与えたと感じる程度と好意性の間に有意の相関 が得られた。このようにして、相手に影響を与え易いか否かという点も好意性にかかわってくる
ものと考えられる。
一方、 Newcomb (1947)は、コミュニケ‑ション場面において、応答の受け手についての情報 がコミュニケーションに影響すると述べている。つまり、コミュニケーションは選択的なもので あり、それ以上会話を進めるか否かは、当事者の自由である。したがって、相手の態度によって、
被験者の側にある種の構えができるという説である。叉、 Kelley (1950)は、印象形成の研究に おいて、刺激人物についての<暖かい‑冷たい>という情報が、この人物との相互作用にどのよ
うな影響をもたらすかを検討した。刺激人物が冷たい人であるとの情報を得た被験者は、暖かい 人であるという情報を得た被験者よりも、話し合い場面であまり相互作用しないことが示唆され
た。これは、 Newcomb (1947)の仮説を支持するものといえよう。
このようにして、応答をする際の受け手刷の態度も、コミュニケーション場面に影響し好意性 に効果をおよばすと考えられる。
そこで本実験では、被験者がサクラに対し応答する際、サクラが被験者の応答をききたいと思 っているか、否かを情報の手がかりとして与えることとした.なお、 Brink (1977)は、応答後 の好意性を測定しただけにとどまったが、これでは実験的処理の以前から群間に差がなかったと はいいきれない。それ故本実験では、応答の前・後で好意性の測定を実施した。すなわち、 1回
159
日の好意性測定は、意見尺度用紙を交換した時点で実施し、 2回目は被験者とサクラの意見交換 又はサクラからの意見伝達が終了した時点で実施することとした。それ以外の手続きは、 Brink
(1977)のものにはば準じた。
このようにして、本実験の目的は、応答の効果と受け手の態度の効果に関し、次の予測を検討 することである。
(1)好意性が最も増加するのは、受け手から応答を「聞きたいと思う」といわれて、応答を実 施する群であろう。
(2)好意性が最も減少するのは、受け手から応答を「聞きたいとは思わない」といわれて、応 答を実施しない群であろう。
(3〉 受け手から応答を「聞きたいとは思わない」といわれるが応答する群と、 「聞きたいと思 う」といわれるが応答しない群については、応答の有無と受け手の態度が相互に作用しあう と考えられ、 2回日の好意性得点は、上記2群の間に位置するであろう。
方 法
実験計画 2×2×2の実験計画を用いた。第1の要因は、.被験者の応答(有、無)であり、
第2の要因は、応答の受け手の態度(応答をききたいと思う・ききたいとは思わない)であり、
第3の要因は、好意性の測定の時点(応答の前・後)である。これにもとづいて各群を次のよう に呼称することとした。
A群‑応答・有、受け手の態度:ききたいと思う。
B群‑応答・有、受け手の態度:ききたいとは思わない。
C群‑応答・無、受け手の態度:ききたいと思う。
D群‑応答・無、受け手の態度:ききたいとは思わない。
被験者 奈良教育大学1 ・ 2回生の女子111名にセッションIで集団実験を実施した。意見 尺度の項目について、 5項目以上極端な反応(1・2・6・7点)を示した63割こついて、セッ
ションⅡで個別実験を行なった。この中3名は、反応不備のため処理から除外された。このよう にして、最終的には60名のデータが分析にかけられた。
材料 (1)意見尺度 被験者の意見を測定するため、 11項目(アルバイト、友情、男女交際、
職業、結婚、共通一次試験、教師、デートの費用、運動クラブ、家庭生活、大学生活)から成る 意見尺度を作成した。それぞれの項目についてある意見(たとえば、あなたは学生はアルバイト をするよりも勉強に力を入れるべきだと思いますか)が記述されていて、非常にそう思う(7点)
〜非常にそう思わない(1点)の7段階評定が求められた。なお、セッションⅡでとりあげる話 題をできるだけ被験者の興味・関心にあったものとするため、 11項目の中から興味のあるもの5 項目を選んでもらった。
(2刺激人物 それぞれの被験者の意見尺度への反応にもとづき作成されたもので、被験者の反 応とは全く逆の得点を示している。これを個別実験の意見尺度用紙交換の際に使用した。なお5 項目についてサクラから伝達される意見も実験者によって用意された0
(3)好意性尺度 Byrne & Wong (1962)のI ∫ Sを修正して用いた。この尺度は6規準から 成り、いずれも7段階で評定するものであるが、内容は次の通りであった。 ①あなたは、相手の 人が道徳的だと思いますか、 ⑧あなたは、相手の人が最近の社会の出来事についてどの程度知っ
ていると思いますか、 ⑧あなたは、相手の人をどの程度好きだと思いますか、 ④あなたは、実験 後、相手の人ともう少し話をしてみたいと恩いますか、 ⑤あなたは、相手の人と共同研究を一緒 にしたいと思いますか。 ⑥あなたは、相手の人と将来永く友達づきあいをしてみたいと思います か。以上の中で、 ①⑧の両規準は実験意図をかくすための偽装項目である。したがって、実際の 好意性は③〜⑥の4規準を用いて測定された。
(4)受け手の態度の呈示用紙
bさんの意見をききたいと思う、ききたいとは思わない、のいずれかに○をつけさせる。
(5)意見変化の知覚尺度 この尺度は、被験者の意見が変化した程度、および、相手の意見が変 化したと知覚した程度を測定するもので、 「この実験で相手の意見をきいたことによって、あな た自身の意見がどの程度影響されたと思いますか」、 「この実験であなたの意見を相手に伝えたこ とが、相手の意見にどの程度影響を与えたと思いますか」の2項目から成り立っている。評定は 7段階とした。
(6)受け手の態度の知覚尺度 この尺度は、受け手(サクラ)の態度の操作の有効性をチェック するためのもので、 「相手は、あなたの意見をきくことについてどのように思っていたと思いま すか」という質問がなされた。
(7)意見記述用紙
手続き 実験は2セッションに分けて行なわれた。
(1)セッションI 集団実験。実験者は女子。
意見尺度用紙を配布し、記名させたのち、 1枚目を見るように指示し、次のように教示した。
「ここに11個の項目についてある意見が書いてあります。これから順に読んでいきますので、皆 さんは自分の意見に当てはまると思うところに、それぞれ○印をつけて下さい。」ひきつづいて 2枚目を見るように指示し、次のように教示した。 「前頁の11個の項目の中から、あなたの関心 のあるもの、興味あるもの5個を選んで、その番号を書いて下さい。」その後、セッションⅡの 参加希望日時を書いてくれるよう指示した。
(2)セッションⅡ 個別実験。実験者は女子。
カーテンで仕切られた部屋に、被験者とサクラを別個に通し、カーテン越しに向かい合って座 らせたのち、録音テープで次のように教示した。 「本日は実験に参加して下さって、どうもあり がとうございます。この実験は、意見の変化を研究するものです。ここにおられるのは、どちら も1 ・ 2回生の女子の方ですが、お互いが誰であるかは全く秘密にしてありますので、安心して、
正直に自分の意見を述べて下さい。」 「実験に入る前に、あなた方二人の役割をきめます。ここに b2本のくじがありますから、 aを引いた人は、aさん、、 bを引いた人は、bさん、と呼 ぶことにします。」と言ったあと、くじ引きを実施した。なお、このくじは、被験者が常にbを 引くように操作されていた。
次に、 「以前にあなた方に意見を記入してもらいましたが、今からそれを返しますのでよく確 かめて下さい。」と教示し、被験者にはセッションIの意見尺度用紙を、サクラには被験者の反 応とは逆の反応をしるした意見尺度用紙を返却した。
次に、 「ではここで、二人は少しちがった課題をしてもらいます。 aさん(サクラ)は、今返 した用紙の自分の名前の欄を切りとり、その用紙をbさん(被験者)に渡して下さい。 bさんは、
aさんの意見を記入した用紙をうけとり、 aさんがどんな人なのか考えてみて下さい。その後、
これから渡す用紙に書かれた作業を行なって下さい。」と教示し、 1回目の好意性測定を行なっ
た。
被験者にサクラの用紙を返すように指示したあと、 「では、次の課題に移ります。ここでは11 項目のうち、 5項目だけをとり上げます。これから実験者がその番号を言いますから、手許の鉛 筆で用紙に印をつけて下さい。」と教示し、実験者が肉声で、 「これから行なうのは、 〇、 〇、 〇、
〇、 〇番です。」と指示した。
以上の教示は、各群共通になされたものである。その後、以下に示すように、各群ごとに別々 の教示が与えられた。
A群およびD群。 「では役割を説明します。 aさん(サクラ)の役割は、今、印をつけた5項 目の話題について、自分の意見をbさん(被験者)に伝えることです。その後、 bさんの意見を きくかどうかは、全くあなたの自由です。今、紙を渡しますから、 bさんの意見をききたいか、
ききたいとは思わないか、のどちらかに○印をつけて下さい。」 「aさん、書けたら、それをbさ んに渡して下さい。」と指示し、被験者の応答をうけとることについてのサクラの態度を、被験 者に伝えた。次に、「bさん(被験者)の役割は、 aさん(サクラ)の意見をきくことです。そ のあと、あなたの意見をaさんに伝えるかどうかは、 aさんの指示に従って下さい。つまり、
aさんが「ききたい」のところに○印をつけていたら、 aさんの意見をきいたあとで、あなたの 意見をaさんに伝えて下さい。 aさんが「ききたいとは思わない」のところに○印をつけていた
ら、あなたはaさんの意見をきくだけで、自分の意見を述べることはできません。」 「分りました か。では、 aさん(サクラ)の方から、 1項目ずつ意見を書いて、 bさん(被験者)に渡して下 さい。」と教示した。そのあと、 A群では、 5項目について、サクラと被験者が意見交換を実施
し、 D群ではサクラから被験者に意見が伝えられた。
B群。 「ここでは、お互いに意見を交換してもらいます。 aさん(サクラ)の役割は、それぞ れの話題について、先に意見を述べることです。そしてあなたがbさん(被験者)の意見をきく
ことについてどう思っているのかを、 bさんに伝えることができます。」と教示し、サクラの態 度を示す用紙を渡した。 「bさん(被験者)の役割は、 aさん(サクラ)の意見をきいたあとで、
自分の意見をaさんに伝えることです。たとえaさんが、あなたの意見をききたいとは思わない 場合でも、自分の意見をaさんに伝えて下さい。」と教示し、 A群と同様、意見交換を実施した。
C群。 「aさん(サクラ)の役割は、今、印をつけた5項目の話題について意見を述べること です。あなたはbさん(被験者)の意見をきくことはできませんが、 bさんの意見をきくことに ついてどう思っているかを、 bさんに伝えることはできます。」と教示し、サクラの態度を示す 用紙を渡した。 「bさん(被験者)の役割は、 aさん(サクラ)の意見をきくことです。たとえ aさんが、あなたの意見をききたいと思っていても、あなたの意見をaさんに伝えることはでき ません。」と教示し、 D群と同様、サクラから被験者に意見を伝えた。
各群において、サクラと被験者の意見交換、又は、サクラから被験者への意見伝達が終了した 時点で、 「では、ここで再び用紙を渡しますから、そこに書いてある作業を行なって下さい。」と 教示し、 2回目の好意性測定および意見変化の知覚尺度、受け手の態度の知覚尺度について、そ れぞれ、測定を実施した。
結 果
受け手の態度の知覚 受け手(サクラ)の態度の知覚についての質問は、受け手の態度の操作
の有効性をチェックするために行なわれた。各条件ごとの結果は表1に示す通りである。この結 果にもとづき分散分析(表2に示す)を行なったところ、態度の主効果[F(ケit)‑253.34、 Pく .001]と、応答×態度の交互作用[F(Me)‑4.31、 Pく・05] (図1)が有意であった.態度の 主効果が有意であったことから、受け手から「聞きたいと思う」と伝えられたA群およびC群の
表1 受け手の態度の知覚の平均及びSD
\‑‑\受け手の態度) 聞きたいと思う ・聞きたいとは思わない
答 \\:
M SD M SD
5.40 0.71 2.07 0.93 5.80 1.11 1.47 0.81
表2 表1による分散分析表
変 動 因
A (受け手の態度) B (応答) AX B
error
、
55 df MS
220.41 220.41 0.15 0.15 3.75 3.75 48.67 56 0.87
全 体CT) 272.98 59
∫ ゲ J 受 け 手 の 態 度 の 知 儲
F
253. 34***
0.17 4.31*
* P<.O5, *** P<.OOl
開きたいと思う 開きたいとは 思*'tい
図1受け手の態度の知覚
被験者の方が、 「聞きたいとは思わない」と伝えられたB群およびD群の被験者よりも、よりい っそう受け手が「聞きたい」と思っていたと知覚したことを示している。又、応答×態度の交互 作用が有意であったことから、受け手の態度の知覚は、応答の有無によって異なることを示して いる。単純効果の検定の結果、 A〜C両群間の差は有意でなかったが、 B〜D群間の差は有意に 近かった(f‑1.76、dj‑56、.05くPく.10)。以上のようにして、受け手(サクラ)の態度の 操作は一応成功したと考えてよいであろう。
好意牲 好意性規準⑧と⑤を合計したI ∫ S得点ならびに各規準での好意性得点の平均および sDは表3、図2‑図6に示される。実験操作導入の以前に群差があったかどうかを検討するた めに、 1回日の好意性得点について2 (応答) ×2 (受け手の態度)の分散分析を試みたが、表
4に示す通り、有意差のないことが明らかとなった。
次に、 IJ S得点について、 2 (応答) ×2 (受け手の態度) ×2 (好意性の測定時点)の分 散分析(表5)を行なった。その結果、受け手の態度の主効果[F(ヶie)‑4.02、 pく.05]と受 け手の態度×好意性の測定時点の交互作用C^CKe)‑18.24、 Pく.01]が有意となったo受け手 の態度の主効果が有意であったことは、 「聞きたいと思う」といわれたA群およびC群の被験者 の方が、 「聞きたいとは思わない」といわれたB群およびD群の被験者より、好意性得点が高か ったことを示している。これは、受け手の態度が好意性に影響するという本実験の考えを支持す るものと思われる。又、受け手の態度×好意性の測定時点の交互作用に関して、単純効果の検定 を試みた。その結果、 「聞きたいとは思わない」といわれたB群おびD群の2回目の好意性得点 が1回目のそれよりも有意に減少した(t‑4.44、 dj‑56、 Pく.001),なお、好意性の4規準、
③④⑤⑥を合計した総合得点についても分析を試みたが、 I ∫ S得点と類似の結果を示したので 表3 好意性得点の平均およびSD
・L、l当
\ \‑、
・、\、\ IJ S得点(③+⑤)
・'.1:,i・
.・I博子言∴L:・.∫.
\ 応答
聞きたいとは 思わない
ー‑ 一 一 ー.‑・‑' ‑▼・▼
崇̀:. l'蝣"I! i";i│ ['MII JIM!
・IU蝣・‑
1\‑・ ‑‑
蝣v t† t.‑>軋q 好意性J)
聞きたいとは 思わない
II'Oll 1汗XIrl Li'OI lは1Hi;。冒霊,(;:芸76.93 1Xl.73)5.133.67 (2.33)(0.94)3 (1霊:3 )!ci霊2.80 )(1.28)
語7.93 (2.49)(1
7.676.27 .40)(2.24)
聞きたいと思う
応答 'J '!聞きたいと思う 聞きたいとは
思わない
I回目Ⅱ回目lI回目Ⅱ回目 4.13(1.45)4.53 CO.88)(0
4.532 .96)(1:80 22) 3.673.933
C。.70)(1.39X。霊3.274.80 )C1.125C1‑05)Cl:53;4.533.80 31)!(1.15)(1.90)
聞きたいとは
思わない
聞きたいと思う
I回目 Ⅱ回目は回目 Il回目II回目 Ⅱ回目
3.20 3.60 3.40 2.33 3.33
3.73 】
聞きたいとは 思わない 工回目 Ⅱ回目
3.60 2.73
(1.22) (1.08)XO.88) (1.40)(1.01) (0.77当(1.31) C1.3チ)
l H P
3.67 1.19)
。:霊3霊3.67 )(1.45X1
3.402.
.36)(1.芸:)
( )内はSD
= = ^軒 y. h b群
#‑ ‑● C群
x x D群It'll日
図2 好意性のIJ S得点(⑨+⑤)
u回目
I回目
図6 規準⑥における好意性
変 動 因
・H
・か
「
言('芸芸貫の態度)日
AXB
error
I回目の好意性得点の分散分析表(要約)
IJ S得点[ @
0.02 0.05
0.10 0.16
4 1 1
6 9 0
t
宴 o o
A
ここでは割愛した。
さらに詳しく検討するために、好意性の各規準ごとに2 (応答) ×2 (受け手の態度) ×2 (好意性の測定時点)の分散分析(表6)を行なった。その結果、すべての規準で、受け手の態 度×好意性の測定時点の交互作用が有意となった。単純効果の検定(表7)の結果、すべての規 準において、 「聞きたいとは思わない」という態度を示されたB群およびD群の2回目の好意性 得点が1回日のそれより有意に減少することが明らかになった。さらに、規準④および⑥では、
好意性の測定時点の主効果が有意となった。両者とも1回目の好意性得点よりも2回目のそれの 方が低い値を示したのである。さらに規準④では、応答×受け手の態度×好意性の測定時点の交 互作用が有意となった。単純効果の検定の結果、 B群およびD群の好意性得点が1回目に比べ有 意に減少した〔B群:*‑5.34、 4/‑56、 pく.001;D群:^‑2.25、ォ//‑56、 Pく.05〕。又、 2 回目の好意性得点については衰8のような結果を得た。
表5 好意性のI J S得点における分散分析表
変 動 因 ss df MS
Between SsA (受け手の態度) B (応答) AXB
error (b)
Within‑Ss
C (好意性の測定時点) AXC
B xC AXB XC
error (w)
379.70 24.30 14.70 1.63 339.07
156.00 7.50 36.30 0.30 0.30
59
24.30 4.02*
14.70 2.43 1.63 0.27 56 6.05
60
7.50 3.77 36. 30 18. 24**
0.30 0.15 0.30 0.15 111.60 56 1.99
全 体CT) 535.70
変 動 因
Between‑Ss A (受け手の態度) B (応答) AXB
error (b)
Within‑Ss
C (好意性の測定時点) AXC
B xC AXB XC
error (w)
*Pく.05,** Pく.01
表6 各規準ごとの分散分析表(要約)
[
⑨ ! ④
59
1
3.32 3.77
5
O i ‑ I i ‑ I i ‑ 1 i ‑ I t D
1.38 〜 7.14**
0.27 i 0.ll
7 6 4
0 0 N H 1 3 0
:Zo::2**i3.83 4**20.11**
50.13 6.61*0.33
表7 単純効果の検定(㍗
‑‑、 ‥‑日毎 軒 受け手の態度 ̲蝣
⑥ 一 n
。
<
m
4.43*
15.00**
0.29 0.13
* Pく.05, ** Pく.ol
③ 】 ④ l ⑤
芸芸芸霊孟霊こ、cm (B,D群1.05
2.68**
0.26 1.85 5.35***; 4.70***
df‑56, ** P <.Ol, *** P <.OOl 表8 規準④の2回目の好意性測定をこおける単純効果の検定(i)
A‑C A‑D B‑C B‑D
1.52 3.58** 2.07* 1.52
df‑112, * P<.O5, ** P<.01
影響を与えられた程度 これは、被験者がサクラの意見(被験者とは全く異なる意見)を聞 いたことによって、どの程度影響を与えられたかをチェックするため測定された。平均およびS Dは表9に示される。この結果にもとづき分散分析を行なったが、表10に示されるように、いず
こにも有意差をみとめなかった。これは、各群の影響を与えられた程度に有意差はないこと、 4 群の平均値が2.64であることから、いずれの群もあまり影響を与えられたとは思っていないこと、
などを示すものといえよう。
表9 影響を与えられた程度の平均及びSD r受け手の感度l
変 動 因 A (受け手の態度) B (応答) AXB
error
聞きたいと思う M SD
聞きたいとは思わない M SD 冒.53
.131.45
1.82霊1.64 表10 表9による分散分析表1.62
ss df MS
4.26 4.26 1.48 2.40 2.40 0.83 0.60 0.60 0.21 161.47 56 2.1
全 体(T) 168.73 59
影響を与えた程度 これは、応答を行なったA群およびB群の被験者が、自分の意見を相手 に伝えたことによって、相手にどの程度影響を与えたと思っているかをチェックするために測定 された。平均およびSDは表11に示される通りで、両群差をも検定にかけたところ、有意となっ た(f‑2.48、 4/‑28、 Pく.05)。このことは、 「聞きたいとは思わない」といわれたB群に比し て、 「聞きたいと思う」といわれたA群の方が、より強く相手に影響を与えたと感じていること を示すものである。しかし、 A群の平均値も3.33と低い値であり、いずれにせよ、さほど影響を 与えたとは思っていないようである。
表11影響を与えたと知覚した程度の平均及びSD
\ \̲、群[
ABI
13.332.07 1.401.29
考 察
本実験で得られた主な結果は、次の通りである (1) I J S得点(好意性)において、受け 手の態度の主効果と、受け手の態度×好意性の測定時点の交互作用が有意になった。 (2)好意 性のすべての規準において、受け手の態度×好意性の測定時点の交互作用が有意になった。単純
効果の検定の結果、応答の有無にかかわらず、 「聞きたいとは思わない」といわれたB群および D群の2回目の好意性得点が有意に減少した。換言するとこの結果は、全く意見の異なる人と相 互作用をする際、相手の「聞きたいとは思わない」という態度は、好意性を減少させる効果をも つことを示している。
これらの結果は、ある人物に関して初期に敵意のある態度を示された被験者は、それ以後の接 触を通じて相手からさらに敵意のある態度を受けたくない、という機制が作用するため、それ以 後彼とのコミュニケーションや接触を制限する、というNewcomb (1947)の説を支持するもの
と考えられる。
Kelley (1950)の場合には、相手との相互作用の量によって被験者に作用する機制の程度を測 定したが、本実験では、相互作用、すなわち、応答の有無は実験的に操作されている。それ故、
被験者に作用する相手への機制が好意性得点上に反映されたと考えてよいであろう。このように して、得られた結果は、受け手の態度が好意性に影響するという本実験の文脈の方向にあるとい える。しかし、受け手の態度の効果のみが強く作用してしまい、当初設定した予想はそのままの 形では検証されなかった。
この結果に対してはおよそ次のような解釈が可能であろう。
先ず、応答の効果よりも受け手の態度の効果が強くあらわれた理由については、次の4点が考 えられる。第1に、受け手の態度の呈示内容が、 「聞きたいと思う」、 「聞きたいとは思わない」
というふうに、非常に直接的・端的であった。さらに呈示方法も、用紙に印刷されたものを視覚 的に呈示するというものであった。受け手の態度というものは、日常場面では、それとなく雰囲 気として感じとられるのが一般であって、このようなむきだしで直接視宜的に呈示されることは、
きわめて異例である。それ故、本実験の受け手の態度の効果がいっそう大きくあらわれたのであ ろう。
第2に、受け手の態度を呈示するタイミングの問題が指摘される。本実験では、 1回日の好意 性測定をした直後、すなわち、応答を開始する以前に、受け手の態度を呈示した。このため、応 答によって柏手に影響を与えるなどの応答の積極的効果が出る以前に、被験者側に相手に対する 構えができてしまい、応答の効果があらわれなかったのではないか、と考えられる。
第3に、受け手の態度が、相手を知る有力な手がかりであった点があげられる。本実験では被 験者の応答に対して、受け手の側からの反応は全く示されず、自己の応答の効果を知る手がかり は皆無であった。それ故、受け手の態度についての情報が、より強力に作用したのであろう。
第4に、本実験でサクラから被験者に伝達された意見内容についての問題がある。それは非常 に極端な意見で、しかもすべての項目について被験者の意見とは異なっていたため、 Byrne &
Nelson (1965)のいわゆる類似‑非類似の要因が強く作用したものと考えられる。すなわち、
全く意見の異なる相手から、 「聞きたいとは思わない」といわれた被験者は好意性を下げ、 「聞き たいと思う」といわれた被験者は、相手の意見が全然異なるため、それ程好意性を上げるには至
らなかったと思われる。
次に、本実験とBrink (1977)の実験を比較した場合、本実験における2回の好意性測定を除 き、他はほとんど両者同じ手続きが用いられた。つまり、被験者の応答に対して相手からの反応 は全くなく、この点では両者共通であった。それにもかかわらず、本実験では応答の効果がみら れなかったのは何故であろうか。
この点については、およそ次のような説明が可能であろう。先ず、 Brink (1977)では、好意
性測定を1回しか実施しなかったため、当初から群問に差があったのではないか、という点が考 えられる。さらに、本実験の被験者は、自分とは全く意見の異なる人に対して自己の意見を述べ、
相異点をはっきりさせるとか、相手を変えたりする、などといったことに余り慣れていなかった のではないかと思われる。応答によって影響を与えたと思う程度や、影響を与えられたと恩う程 度がいずれも低い値を示した本実験の結果は、このことの裏づけといえそうである。
次に、応答を実施しなかったC群およびD群が、それぞれA群およびB群と同程度の好意性得 点を示した点について考察を加えておきたい。
Zajonc (I960)、 Cohen (1961)は認知的調整の研究を行なったが、それによれば、刺激人物 からのメッセージ伝達後、 「話し手」の役割を与えられた被験者と、 「聞き手」の役割を与えられ
た被験者とでは、そのメッセージに関する認知構造に差異の生じることが明らかになった。すな わち、 「話し手」という積極的な姿勢をとる時、被験者のメッセージに関する認知構造は細分化 され体制化されるが、 「聞き手」の役割を与えられた被験者は、自分とは意見の異なる内容に関 しても、ある程度柔軟に受け入れるのである。つまり、この文脈にそって考えるならば、本実験 では、応答の有無、いいかえると、 「話し手」 「聞き手」の導入によって、被験者に異なる認知構 造が生じたと考えることができる。応答を行なったA群およびB群では、自己の意見を明らかに して相手に伝えることを要請されるため、よりいっそう相手との意見の差異が鮮明になったので はなかろうか。一方、応答を行なわなかったC群およびD群では、聞きっ放しでいることを許さ れているため、意見の異なる相手に対してもより柔軟であり、したがって、受け手の態度の効果 のみに左右されたのではないか、と考えられるのである。
次に、好意性の規準④に関して、応答×受け手の態度×好意性の測定時点の交互作用が有意と なった点について考えてみたい。 B群およびD群においては2回目の好意性得点の減少が示され たが、ここで特に注目をひくのは、 2回日の好意性得点においてB群とD群が有意に異なるとい
う点である。すなわち、両群とも受け手から「聞きたいとは恩わない」という態度を示されたに もかかわらず、すでに応答を実施したB群は、応答を実施せず相手の意見を聞いただけのD群よ り、 「実験後、もう少し相手と話してみたい」とは思っていなかったのである。この好意性の規 準④は、相手に応答をするか否かを問題にした実験場面とあまりに類似していたため、ここで示 された値は、相手に対する好意だけでなく、他の要因も参与したのではないか、と思われる。
以上において、応答の効果がなくて受け手の態度の効果が強くあらわれた原因について種々考 察を加えた。本実験の主たる目的である好意性尺度に関する限りでは、応答×受け手の態度の効 果はみられなかった。しかし、受け手の態度に対する知覚尺度においては、若干、興味ある結果 を得た。この尺度は、サクラと被験者の意見交換ないし、サクラからの意見伝達が終了した時点 で1回だけ測定されたものである。ここでは、応答×受け手の態度の交互作用(図1参照)が有 意となった。 B群とD群の問の差はわずかに有意水準を逸したが、その傾向は示唆された。つま り、両群とも「聞きたいとは思わない」といわれたが、応答を実施したB群の方が、若干、相手 の態度を好意的に受けとめる傾向のあることが示唆されたのである。ここに見られるように、柏 手から伝えられた「聞きたいと思う」 「聞きたいとは思わない」という態度を、どのように知覚 するかということも、いわばある種の好意のあらわれと考えてよいであろう。なぜなら、同じ表 現を用いて受け手の態度を呈示したにもかかわらず、ある被験者は「非常に」と知覚し、他の被 験者は「やや」と知覚することがあるからである。したがって、この尺度が最も鋭敏に応答×受 け手の態度の効果をとらえていたのではないか、と考えられる。
今後に残された課題は多いが、被験者の応答が相手の意見に効果的に作用した程度を被験者に フィードバックすることの効果を検討すること、意見の一致皮、受け手の態度の呈示方法、タイ
ミングなどをより精密に統制して研究すること、などが稔り多いであろう。
要約 と 結論
本研究は、意見の全く異なる人に対する応答の有無と、応答に対する受け手の態度が、好意性 におよぼす効果について検討することを目的として行なわれた。具体的には次のような予測が設 定された(1)好意性が最も増加するのは、受け手から応答を「聞きたいと思う」といわれて、応 答を実施する群であろう(2)好意性が最も減少するのは、受け手から応答を「聞きたいとは思わ ない」といわれて、応答を実施しない群であろう(3)受け手から応答を「聞きたいとは思わな い」といわれるが応答する群と、 「聞きたいと思う」といわれるが応答しない群については、応 答の有無と受け手の態度が相互に作用しあうと考えられ、 2回目の好意性得点は、上記2群の間
に位置するであろう。
先ず大学生女子111名に集団実験を実施し、意見尺度で5項目以上極端な反応を示した者をえ らんだ。このようにしてえらばれた60名を、 2 (応答) ×2 (受け手の態度)の4群に分け、被 験者とは全く意見の異なるサクラとカーテン越しに相互作用させた。お互いの意見尺度用紙を交 換した後、 1回目の好意性測定が行なわれた。次に応答に対するサクラの態度(聞きたいと思う
;聞きたいとは恩わない)を被験者に伝え、サクラと被験者の意見交換ないし、サクラからの意 見伝達を実施した。その後、 2回日の好意性測定が行なわれた。好意性測定は、どの程度好きだ と思うか、実験後もう少し話をしてみたいと思うか、共同研究を一緒にしてみたいと思うか、将 来永く友達づきあいをしてみたいと恩うか、の4規準についてなされた。その他に、受け手の態 度の操作の有効性をチェックする質問と、相手から受けた影響の程度、および相手に与えたと思
う影響の程度が測定された。
結果として、すべての規準で、受け手の態度×好意性の測定時点の交互作用が有意となった。
すなわち、応答の有無にかかわらず、 「聞きたいとは思わない」といわれた群の好意性得点の減 少が示された。これは、受け手の態度が好意性に影響をおよぼすであろうという本実験の文脈に 合致する結果である。しかしながら、本実験の主たる目的である、応答×受け手の態度の交互作 用については、予測通りの検証を得ることができなかった。又、好意性測定の尺度ではないが、
受け手の態度の知覚尺度において、応答×受け手の態度の交互作用が有意となった。これは、わ ずかながらも応答の効果を示唆するものとして興味深い。
なお、得られた諸結果に関して若干の考察と今後の研究への示唆が提出された。
引用文献
Brink, J. H. 1977 Effect of interpersonal communication on attraction. Journal of Personality and Social Psychology, 35, 783‑790.
Byrne, D., & Nelson, D. 1965 Attraction as a linear function of proportion of positive reinforcements.
Journal of Personality and Social Psychology, 1, 659‑663.
Byrne, D., & Wong, T. J. 1962 Racial prejudice, interpersonal attraction and assumed dissimilarity
of attitudes. Journal of Personality and Social Psychology, 65, 246‑253.
Cohen, A. R. 1961 Cognitive tuning as a factor affecting impression formation. Journal of Perso一
蝣nality, 29, 235‑245.
Kelley, H. H. 1950 The warm‑cold variable in first impression of persons. Journal of Personality, 1β, 431‑439.
Lombardo, J. P., Weiss, R. F., & Stich, M. H. 1973 Effectance reduction through speaking in reply and its relstion to attraction. Journal of Personality and Social Psychology, 28, 325‑332.
水原泰介(梶) 1977 個人の社会行動(講座 社会心理学第1巻)東京大学出版会
Newcomb, T. M. 1947 Autistic hostility and social reality. Human Relations, 1, 69‑86.
Zajonc, R. B. 1960 The process of cognitive tuning in communication. Journal of Abnormal and
Social Psychology, 61, 159‑167.
Effect of Reply and Recipient's Attitude on Interpersonal Attraction Toshimi Ueda
Department of Psychology, Nara University of Education, Nara, Japan
and
Etsuyo Masuda
Ohji Elementary School, Nara, Japan (Received April 28, 1980)
The purpose of this experiment was to examine the effect of reply and recipient's attitude toward the reply on interpersonal attraction, when the opinion of the two was quite different. The predictions to be tested were as follows:
(1) Liking would most increase in the reply‑to‑"want to know" group.
(2) Liking would most decrease in the no‑reply‑to一日do not want to know" group.
(3) Liking scores of the two remaining groups would fall in‑between those of the above two groups.
A 2×2 factorial design was used, which incorporated the reply conditions (reply and no reply) and recipient's attitudes ("want to know" and "do not want to know").
Women students from Freshman Educational Psychology classes in Nara University of Education served as subjects. They were assigned to either one of the four conditions.
The experiment was conducted individually. Subjects interacted first with the confederate of quite different opinion over a curtain. Almost all procedure was the same as that of Brink (1977) except one point. Different from Brink (1977), liking was measured twice, first directly after the interaction with the confederate, and secondly, after the confede‑
rate's attitude was communicated to the subjects.
Main results were as follows:
(1) The recipient's attitudexliking interaction was significant over all criteria, which showed that liking decreased in Hdo not want to know" group, regardless of reply or no reply condition.
(2) The replyxrecipient's attitude interaction was significant only in attitude perceptive
scale.
These results were interpreted to confirm our predictions partly. Discussions were made with reference to previous related studies.