幼児における物語理解に及ぼす音楽の効果
学校教育専攻 幼児教育コース
山 本 あ ゆ み
1 .研究目的
「音楽Jは普段の生活や遊びの中で、あるし、
は保育場面において、幼児とかかわりをもって いる。 T Vや映画などでは必ず音楽が使われて おり、音楽は何らかの感情を誘発し、それと同 時に内容の認知に大きな影響力を持っと考えら れている。
特に音楽は、言語束i撒キ穂覚刺激との関連に おいて、「イメージjの形成にもおおきな役割を 担っている。
そこで本研究では、幼児にとって比側句身近 な、「絵本の読み聞かむをもとにそれに似合っ た「音楽J(W音の絵本,~ CD)を加えることに よって、幼児の物語理解に「音楽Jがどのよう な効果を発揮するのかを明らかにすることを目 的とする。
そのために、「音楽jと物語の理解度・ Joi育 度・イメージとの関連性を検討し、さらに年齢 差による比較検討も行ったo
仮説としては、「語り」に「音楽Jを加えた 方が「語りjだけの場合よりも理解度が高まり、
心情も豊かにイメージも広がるのではなし、かと 考えられる。また加齢にともない、理解度も高 まり、 JL/情も豊かにイメージも広がるのではな いかと考えられる。
II.方法 A:被験児
被験児は、徳島県内の獅掴・保育所・児童
指 導 教 吉 田 村 隆 宏
館・チャイルドハウスの4歳児・ 5歳児を対象 とした。内訳は次の通りである。
4歳児:37名、 5歳児 :40名、総計 77名。 4歳児の「読み聞かせ」に音楽を加えた群が 2 1名、音楽を加えなかった群が16名。
5歳児の「読み聞かせ」に音楽を加えた群が 2 1名、音楽を加えなかった群が19名であっ た。
以下、「絵本の読み聞かせ」に音楽を加えた群 を「音楽ありj、「絵本の読み聞かせjに音楽を 加えなかった群を「音楽なし」と表記する。
B :方法
各年齢において、次の手順で個別調査を行っ た。絵本 (Wモチモチの木~)を提示しながら「音 楽ありJ(音楽と語り)、「音楽なしJ(語りのみ) のカセットテープをそれぞれ流した。物語を前 半と後半にわけ、その都度、調査者が作成した 質問項目に答えてもらった口
そのデータ記録をもとに「理解度」・「心情度」
については得点化し、 t検定、 χ2検定を行い、
「イメージ拡大項目j・「感想Jについては、子 どもたちの解答を表にまとめ分析し、考察を行 ったD
ill.結果
「理解度」・ fJL"¥'情度jについては、 4,5歳 児ともに、平均点から見ると「音楽なし」より
「音楽あり」の方の得点が高かったo さらに、 t検定の結果、 5歳児の「理解度」
において「音楽なしjよりも「音楽ありjの方 が 高 い と い う 有 意 傾 向 が み ら れ た (t
(38)=1.482, pく .01)0
また、質問項目ごとのχ2検定では次のよう な結果が得られた。
<
f音楽あり」と「音楽なしjに つ い て >5歳児の質問②(1豆太の小屋のすぐ前に立 っている、デッカイデッカイ木は何としづ名前 の木ですでウミ?J)で「音楽なしJより「音楽ありJ の方が高いとしづ有意傾向が見られた。 (χ2 (1)=3.536, pく.10)
同じく 5歳児の質問⑥(1豆太は昼の明るい 時、モチモチの木を見るとどんな気持ちになり ますか?J)で「音楽なしJより「音楽あり」の 方が高いという有意差が見られた。 (χ2
(1)=8.386, pく .01)
<年齢差について>
「音楽ありj、「音楽なし」に共通して4歳児 よりも5歳児の方が高いという有意差、有意傾 向が出た項目は、質問①(f豆太は誰と一緒に暮 らしていましたか?J)、質問②
r c
豆太の小屋のすく官制こ立っている、デ、ッカイデ、ッカイ木は何 とし1う名前の木で寸か?J)、質問⑦(fじさまの お腹が痛くなった時、豆太はどうしました か ?J)と質問⑨
u
豆太は医者さまにおんぶさ れている時、どんな気持ちで医者さまの腰をドンドンけとばしましたか?J)で、あったo
「音楽あり」のみ4歳児よりも 5歳児の方が 高いとしづ有意差、有意傾向が出た項目は、質 問⑥
u
豆太は昼の明るい時、モチモチの木を見 るとどんな気持ちになりますか?J) と質問⑩c
r
豆太は医者さまと小屋へ帰る時、何を見まし た か ?J)で、あった。「音楽なし」のみ 4歳児よりも 5歳児の方が 高いとしづ有意差、有意傾向が出た項目は、質
問④
r c
豆太はどうして1人でトイレに行けなかったのでしょうか?J)で、あったo
「イメージとの関連性jからは相対的に比較 すると「音楽なし」よりも「音楽あり」の方が 解答項目数が多かったのは4歳児では質問ア (r夜のモチモチの木はどんなものに見えます か ?J)のみ、 5歳児では質問エ (fクマのうな
り声ってどんな声かな?J)のみで、あった。
「感想の分類jからは、相対的に比較すると 4歳児では「音楽あり」よりも「音楽なしjの 解答項目数が多かった。 5歳児ではわずかなが ら「音楽なし」よりも「音楽ありjの解答項目 数が多かったo
N.
本研究のまとめと考察以上の結果をもとに、それぞれの観点から
「音楽」の効果を検討してきた。検定による数 値だけで判断すると 4歳児には音楽の効果は見 られず、 5歳児の「理解度Jのみに音楽の効果 が認められたということになる。しかし、子ど もたちの解答を細かく見ていくと、そこから考 えられる音楽の作用が見られ、音楽の効果があ ることが示された。ただし、すべてが仮説通り ではなく、なかには仮説をくつがえす結果や予 想外のデータが得られた。
本研究を通して子どもたちの「お話を き くりとしづ行為、自分の思いや感じたことを こ と ~t" で表現する行為、さらには「音楽j への 反応を目のあたりにし、新たな驚きや発見が得 られた。というよりも、これらの反応が子ども の自然な反応であり、調査者の認識不足で、あっ たと感じられる。
この経験を糧に、より一層の努力を続け、「子 ども理解J、「音楽Jを通しての子どもの発達、
さらには、保育現場での「音楽」と子どもにつ いて考えていきたいと思うD