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教育実習の事前指導・事後指導に関する考察

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Academic year: 2021

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教育実習の事前指導・事後指導に関する考察

藤 中 隆 久 *

B e f o r e .  and P o s t 甘 a i n i n gf o r  s t u d e n t  ‑ t e a c h e r s  d i s c u s s e d   T a k a h i s a   FUJINAKA 

I  問題と目的

教員養成教育において,教育実習が占めるウエイ トは大きいことは言うまでもない.熊本大学教育学 部においても,実習の効果を挙げるため,様々な取 り組みが行われてきた.その取り組みの一つは,実 習が 1 年次から 4 年次まで順々に実施されてゆく積 み上げ方式となっていることである.積み上げ方式 は実習生の立場からはおおむね好評のようである.

しかし教育する側からみれば,課題がないわけでは ない.その一つが実習と実習の聞を,もっと有機的 に使えないかということである.現行の制度では 3 年次は,多くの学生が 6 月に 1 週間, 1 0 月に 2 週 間,それぞれ附属学校で主免実習を行うということ になっている. 4 年次実習においては,多くの学生 が 4 月から 5 月にかけて副免実習として 2 週間附属 学校へ行き, 6 月に 2 週間主免実習として協力校へ 行くということになっている.当然,これらの実習 に対する事前指導も事後指導もなされている. 3年 次実習に対しては 4 月に事前指導 4 年次実習に 対しては 4 月に事前指導, 6 月に事後指導を行うこ とになっている.これらの事前,事後指導が,一定 の効果を挙げてきたことは間違いない. (例えば吉 田・吉山: 2 0 0 2 ,吉田"; 2 0 0 4 など)しかし教育実習 と事前指導,事後指導を有機的に関連させれば,さ らなる可能性が期待できるのではないだろうか.

3 年次の 6月の実習は,実習生にとってはとりあ えず 1 週間,現場を経験するという意味を持つ.次 の 1 0 月実習では 1 週間の現場を経験した人が,今 度は初めて本格的に教える経験をするというわけで ある.この 6 月実習の経験を 1 0 月実習に生かす様な ことは考えられないだろうか.また 3 年次は 2回 の実習を経験する.この 2 回の実習経験が, 4 年次 実習に生かされるためには何がなされるべきか,を 考える必要がある.実習を何回も経験することが積 み上げ方式の特徴である.それならば,前の経験が 次の実習に生かされることではじめて,何回も実習 を経験することがメリットとなるはずである.

ところで,教育実習における達成目標とは,多く

の実習生にとって,達成可能なものでないと適切に 設定されているとは言えない.また,しかし,何の 支援をうけなくとも,簡単に達成が可能なものであ るのなら,それはそもそも目標とは言えない.従っ て,教育者側が支援をすることにより多くの実習生 が達成することが可能な目標が,教育実習の達成目 標としてふさわしいと言えよう.以上のような問題 意識から,藤中・中山 ( 2 0 0 4 ) は , 2 0 0 3 年度,熊本 大学教育学部において,すべての教育実習を終えた 実習生に対して実習の達成度に関する調査を実施し ている.すべての実習を終えた学生が,教育実習に おける「姿勢・態度 J r 学習指導 J r 生徒指導 J r 学 級経営 j の 4 項目の達成度を 5 段階で自己評価した のである.(f姿勢ー態度 J に関する質問は, r 挨拶,

服装,時間厳守,責任感など,教師として自覚や心 構えを持つことができたJなどである. r 学習指導J

に関しては「授業参観や実地指導を通して,学習指 導の基本的な知識や技術を学び取ることができたJ などである. r 生徒指導Jに関しては, r 日々子ども と接し,生徒指導の基本的な知識や技術を学び取る ことができたJなどである. r 学級経営」に関して

は , r 朝の会や終わりの会を担当し,学級経営の基 本的な知識や技術を学び取ることができた j などで ある)

また,実習に対しての不安も同時に調査した.

「授業実践不安J と「児童・生徒関係不安Jの 2 項 目の不安度を 5 段階で自己評価したのである.

(f授業実践不安Jに関する質問としては, r 教え方 が未熟で,授業を聞いてもらえないのではないかと 不安だったJなどである. r 児童・生徒関係不安」

では, r 教育実習生なので,子ども達が言うことを 聞いでくれるか不安だったJなどである)

この調査の結果わかったことは,

( 1 )   教育実習を通した目標達成度は,全体的な傾向 としてはおおむね高いと言える. (平均値 = 4 . 0 ) 特に「姿勢・態度Jと「学習指導Jに関しては高 い達成を果たしていると自己評価している.一方

「生徒指導J と「学級経営Jに関しては,さほど

高いとは言えない. (共に平均値 = 3 . 8 )

(2)

( 2 )   教育実習後の教職に対する意識は比較的高い.

(平均値 =4.1) 項目別に見ると「教師はやりが いのある仕事だ」と思える人が多い(平均値=

4 . 7 ) が 自 分 は 教 師 に 向 い て い る J と思える人 が比較的少ない. (平均値 =3.5)

( 3 )   実習に対する不安は"全体的な傾向としてはさ ほど高くない. (平均値 =3.3) し か し 授 業 実 践不安 J の平均値は 3 . 6 であり,この数値は「児 童・生徒関係不安 J の平均値 3 . 0 に比べるとやや 高い.

ここで明らかにされたことから r 姿勢・態度 J と「学習指導 J に関しては,多くの実習生がおおむ ね達成できているので,目標として適切であると言 えよう.しかし「生徒指導」と「学級経営J に関し てはその自己評価を見る限り,目標としては悪くは ないが,これを達成するためには,教育者側からの 何らかの支援が必要であると恩われるのである.特 に「自分は教師に向いている J と考える人が比較的 少ないことから,彼らに自信を取り戻させるための 支援が必要であると推測される.また, r 授業実践 不安」の極端に高い人が少人数ながら存在するので,

そのような人に対しての何らかの支援も必要であろ う.

そのためにはどのような支援が有効と考えられる であろうか.そこで一つ考えられることが, 4 年次 実習に行く前に, 3 年次までの実習体験を振り返り,

自らの中に位置づけ 4 年次実習に取り組む動機付 けを高めるような事前指導を行うことである.実習 が積み上げ方式となっている現行の制度だからこそ,

実習と実習の聞が出現し,また実習体験も多く出現 する.その聞と体験を効果的に活用するのである.

今までの実習を振り返り,それを次回の実習に生 かすための考察をするような機会が 3 年次実習と 4 年次実習の聞に提供されれば,それは効果的な 3 年 次実習のこと後指導かつ 4 年次実習のこと前指導と なるのではないだろうか.そして,そのためには少 人数で語りあうようなこと前・こと後指導が有効で はないかということが中山・藤中 ( 2 0 0 5 ) により提 言されている.

今まで体験してきた実習について一授業実践に関 すること,実習する態度に関すること,教師とは何 か言うよう司なテーマなど一少人数で話しあうことで,

実習の体験を深めそれを位置づけること. 2 年次,

3 年次で経験した実習における生徒指導や学級経営 の場面と,大学の教職に関する講義・演習の関連性 について話し合い気づかせることで,生徒指導や学 級経営も実習で学ぶべき重要項目であるという意識 を高めること.教職に対して今の自分はどう捉えて

いるか,今までの実習経験によりその意識がどう形 成されてきたか,を自己確認することなどが,少人 数の話し合いでは可能であろう.さらに,その話し 合いに現場の教師が入れば,実習で経験するであろ う様々な事態をシミレーションすることも多少はで きて,不安軽減にもつながるであろう.そのような 少人数の話し合いの経験を通じて 3 年次の実習体 験を自己に内面化・構造化することができないだろ うか.体験を自己に内面化・構造化することができ れば,それは今後に使える知識として取り出すこと が可能になるし,それを持っていることが自信にも つながる.それが, 4 年次実習に向けての事前指導 ともなるのである.そのための方略として少人数に よる話し合いが提言されているのである.

少人数で話しあうことのメリットは何であろうか.

例えば, r 実習生として規律ある行動をとることの 重要性Jなどは,いわゆる 人から言われなくても 十分わかっている"ことである.しかしこのような ことを,事前指導において講義形式で教師から言わ れたところで,何の実感もなく聞き流す人が多いで あろう.つまり事前指導で、言って聞かせると言う方 法には,あまり意味がない.ところが頭では十分わ かっていることでも,深く心に理解したときには,

その事柄の重要性も感じられ,実行も可能となる.

少人数での話し合いには,そのような理解を促進さ せるカがあるのではないだろうか.

以上の目的を持ち,熊本大学教育学部において,

2 0 0 4 年 3 月 7 日,参加希望者を募り「教育実習を語 ろう j というイベントを開催した.教育実習につい て少人数で自由に語りあう会である.そのイベント 終了後,参加者に対して自由記述によるアンケート 調査を実施した.そこで本稿の目的としては,その 自由記述を分析することで,このような形態の事前 指導,事後指導によりいかなる効果が考えられるか,

体験を構造化する効果が期待できるのか, r 教職に 対する意識Jや「生徒指導・学級経営 j に対する意 識は高まるのか,などの検討をし,このような事 前・事後指導の可能性を探ることとする.

E  実施方法 時期: 2 0 0 4 年 3 月 1 3 日

場所:教育学部 5 7 0 教室(大教室)

時間: 1 3  :  0 0 " ‑ ' 1 5  :  1 0   ( 1 セクション 9 0 分 , 2 セッ ション)

事前に会の開催をポスターなどで通知し,希望者

を募った.その結果,熊本大学教育学部全課程の 3

年生 4 6 名の参加があった.主催者側で 1 グノレープ

を 5 人 "'6 人とする集団を全部で 8 グループを作つ

(3)

た.大教室の机をくっつけて,グループでお互いに 親密に話し合える体制も作った.グループは,学科,

課程などができるだけバラバラになるように配慮し た.各グループに,ファシリテーターとして,教育 実習委員の教官が一人又は二人参加した.また,附 属小学校,附属中学校,附属養護学校の現職の教諭 にも参加してもらい,ファシリテーターとして各グ ループに入ってもらった.さらに, 4 年生文は教育 実習を経験したことのある大学院生にも,各グルー プに 1 名程度参加してもらった.そのグループのメ ンバーで,第 1 セッションは「教育実習における授 業実践についてJについて 9 0 分間自由に話し合って もらった.第 1 セッションが終わると 1 0 分の休憩を はさみ,第 2 セッションでは, r 教職に関すること J について 9 0 分自由に話し合ってもらった.お互いが 自由に話し合えるように,お茶とお菓子を用意した.

そしてファシリテーターは,自分が話すことよりも,

話し合いをファシリテートすることの方が大切であ るという意識を持ってグループに参加した.

良かったこと,②足らなかったこと,③その他に思 いついたこと,の 3 項目に関して自由記述しても

らった.

E  結果

全参加者 4 6 名中, 3 3 名が自由記述を提出した.そ の自由記述の結果を一文ずつに区切り,カード化し た上で KJ 法により分類した.作成したカードは全 部で 1 2 3 枚になった.それらのカードは以下の 9 グ ノレープに分類された.それら 9 つのグ、ノレープを示す

タイトル名と,そのタイトノレ名を示す代表的記述を 表 1 に示す.タイトノレ名の後の数字は,そのタイト ルに分類されたカード数であり,すなわちそのよう な記述をした延べ人数である.

このようにカテゴライズされた感想が,今回の話 し合いにおいて,どのようなプロセスで形成された かを想定したパス図を図 1 に示す.

考察

2 つのセッションが終わった直後に,①参加して 藤中・中山 ( 2 0 0 4 ) が指摘する実習生のパフォー

表 1 カテゴリー化されたテーマとその代表的記述

カテゴリー 代表的記述

1 . 会への要求 時間をもう少し短くした方がよかった o 緊張したので、アルコールを 出じて欲しい。テ}マをもっと絞った方がよい。時聞が早く過ぎた のでもっと長く設定して欲しい。

2. 会の感想 とても楽しい時間でしたロまたこんな機会があれば参加したい。こ のような会を毎年続けて欲しい。

3. 話す・聞く,不安 自分が不安に,思っていることを話せてよかった。いろんな学科の人 や悩みを話す・聞く の話しを聞けてよかった。現場の先生の話を聞けてよかった。本音

を話せて気持ちが良かった o

4. 不安の共有 みんな同じような不安を持っている事がわかった。不安なのは自分 だけではないと知って良かった白

5. 考えの掘り下げ 内的な部分まで掘る会話ができた。

6. イメージの明確化 実習の目標が明確になった。自分自身の考え方が再確認できた。教 師の仕事に対してイメージが明確になった。

7 . 多面性への気づき 教師の仕事はいろいろあることを知ってび、っくりした。様々な視点 がある事に気づけてよかった o 考え方の幅が広がった o

8. かえって不安 みんなの話を聞いて,いろいろ考え始めてかえって不安になった。│

9.意欲,悩みの解消 教員採用試験に向けて意欲が出てきた。今まで悩んでいた進路の問

題がすーっと消えていった o

(4)

話す・聞く,不安岡悩み を話す・聞く 24

不安・悩みの解消 2

考えの掘り下げ 4

不安の共有 1 1

教師の仕事の多様性 への気づき 9

視野の広がり 5 考え方の広がり 5

図 教 育 実 習 を 語 ろ う J の自由記述から分析されたパス図

(5)

マンスが低い項目「生徒指導・学級経営 J r 教職に 対する意識J を高めることは,教育学部としての課 題といって良い.その課題を達成するためには,何 らかの取り組みを必要としている.そこで,実習で は「生徒指導・学級経営Jを学びなさいと講義形式 で指導するという方略によって,そのパフォーマン スを上げることを目指すよりも,実習前に「生徒指 導・学級経営Jも実習で学ぶべき重要項目であると いう意識を持たせることと r 教職に対する意識J を高めることという方針が有効であり,そのための 方略として,実習をある程度経験した人が集まり,

少人数で話し合いをすることが有効なのではないか というのが中山・藤中 ( 2 0 0 5 ) の提言である.その 提言を受け,今回の「教育実習を語ろう J の会が催 されたわけである.従って,今,検討すべきことは,

この様な形態の会によって r 生徒指導・学級経営 J を実習で学ぶべき重要項目であるという意識づけに つながったか,ということであり,それにより,

「生徒指導・学級経営」や「教職に対する意識 J が 高まることにつながりそうか,という考察をするこ

とである.そのための一つの方法として, KJ 法に よって分類されたグループの項目内容を検討するこ ととする.

また,図 1 は一つのモデルとして提示してあるが,

このモデ、ノレを検討することによってもこの形態の指 導法の有効性を検討することができる.図 1 は統計 的な処理の結果提出されたモデ、ノレではない.しかし このモデルが示す妥当性を論理的に検討することは 可能であろう.もう一つの方法として,このモデル を論理的に検討することで,このような形態の会の 有効性を検討することにする.

【グループの項目内容と図 1 の検討】

この会によって,教職に対する意識が高まったで あろうと予測される記述はいくつか見られる.直接 的には, r 意欲が高まったJ と述べている人が 2 人 ,

「不安や悩みが解消されたJ と述べている人が 2 人 いたことである(以上はすべて延べ人数).また,

「イメージの明確化Jや「多様性への気づき Jが多 くの人に見られたことからも この会が「教職に対 する意識を高める Jための有効性を持っていると推 測して良いのではないかと思われる.図 1 のパス図 では「イメージの明確化 J と「多様性への気づき」

は「意欲,不安・悩みの解消Jに関連すると想定さ れている.なぜそう想定されるのだろうか.

意欲が低い状態や不安が高い状態は,なぜ起こる のか.それは対象となるものの実態を正確に捉えら れていないことに,一つの原因があるといえよう.

とすれば,実態のイメージを明確にしたり,多様な 側面に気づくことができれば不安は解消されるし,

意欲もわいてくることになる.そのような推定が,

このパスの論拠である.心理療法の一分野では,体 験過程を促進させることでセラピーの効果が上がる と考えられている.このことからも明確化や多様性 の気づきにより,不安が軽減されたり意欲がわいて くると考えることに妥当性はある.従ってイメージ の明確化を記述した人が 1 9 人,教師の仕事の多様性 への気づきを記述した人が 9 人いたことから,この 会が「教職に対する意欲Jを高めることにつながる

と推測して良いのではないだろうか.

また,この会により, r 生徒指導・学級経営Jも 実習で学ぶべき重要項目であるという意識を高める

ことができたのかということに関しては,この会の 話し合いにより, r 教師の仕事の多様性への気づき J

を述べている人が 9 人 , r 視野が広がった J と述べ ている人が 5 人 , r 考え方が広がった j と述べてい る人が 5 人いることから,ある程度高めることはで きたと推測して良いだろう.つまり,今までは「授 業実践Jのみに目が向いて比較的視野が狭かった人 が , r 教師の仕事はいろいろある」と気づいた結果 がこのような記述になったのではないかと恩われる.

「イメージの明確化 j を答えた人が 1 9 人いたことも 同様であろう.今まで教師とは授業をする人という 何となくのイメージだったが,それがもっと多様だ

と気づけば,それは明確化でもある.つまり「多様 性への気づき・視野の広がり・考え方の広がり J や

「イメージの明確化J という効果が見られたことか ら,今回のこの会が, r 生徒指導・学級経営の場面 J も実習で学ぶべき重要項目であるという意識を高め る役割を果たしていると推測できょう.

また, r 話す・聞く,不安を話す・聞く J ことが 良かったとする感想を 2 4 人が述べていた.そのよう な行為が良かったと言うことは,この会で「話す・

聞く Jことによって,不安を共有したり,不安を低 下させたり,意欲を高めたりすることができたから 良かったという感想となったと想定してよいであろ う.図 1 によると,実習生達がいろんな悩みや不安 を話したり聞いたりすることにより,不安を共有す る体験や自分の考えを掘り下げる経験をし,それら の体験がさらに話す・聞く体験にも拍車をかけてい るのではないかと想定されている. r 話す・聞く J

「不安の共有 J r 考えの掘り下げ J は,それぞれが

互いに影響を与えながら促進されているのではない

だろうか.そのような体験を中核として,そこから

様々な感想が導き出されるのではないかと思われる.

(6)

これらの体験が中核的存在であると想定されうる理 由としては,そうなった理由として「話す・聞く J が関わっていることを述べた記述がそれぞれにいく つか見られるからである.

つまり r 会への感想 Jや「意欲の高まり Jや

「イメージの明確化」や「視野の広がり Jと分類さ れる記述にしても r 他学科の人と話をする経験が とてもよかったJ r みんなの話を聞いているうちに,

自分もがんばろうという気になったん「現場の先生 と話しあうことで,教育の現場のイメージが少し変 わった J , r いろんな人の話を聞いたり,話したりす ることで視野が広がった. Jなどと述べられている のである.

この話す・聞く経験が中核となって様々な効果を 生み出していると想定すれば,すなわち,これは少 人数での話し合いに特有の効果であるとも言える.

少人数のグループで,話すこと,聞くことは,どち らも主体的行為である.主体的な行為とならざるを 得ないと言ってもよい.自分の意見を話すためには,

今までの自分の体験を抽象化する必要が生じる.抽 象化するという行為はi体験を構造化して捉えるこ とであり主体的でしかあり得ない.人の話を聞くと きも少人数グループだと,受動的・一方向的に聞く という態度にはなりにくい.自分の考え方と照合し ながら人の話を聞いている状態なので,主体的に聞 いているわけである.そのような聞き方をしている からこそ,その意見に対して発言するととも可能と なるのである.また,少人数だと参加者一人一人が 互いのことを気に掛け合い,双方向のコミュニケー ションが志向される.そのため話し合いに参加して 他人の意見を聞いているだけでも,主体的に思考す る程度は,大人数で一方向の指導を受動的に受ける よりもずっと高いといって良い.このように,話す こと,聞くことは,過去の経験を主体的に考える行 為となる.それが,体験を自己の内面化に位置づけ,

構造化することに役に立つと思われるのである.

このような主体的行為により,今までぼんやりと していたものが明確になってくることもある.それ が イ メ ー ジ の 明 確 化Jであったり「多様性の気 づき J であったり「視野の広がり J であったりもす る.そのことが「かえって不安 J になる可能性もあ るが「意欲を高める J可能性も考えられる.

「イメージの明確化 Jや.r視野の広がり J は ,

「様々な人と話し合った j ことで,多様な意見を 知ったが故に促された可能性も高い.その場合でも,

多様な人と受動的に関わっているだけでは,そのよ うな効果が見られるかは疑問である.やはり,様々 な人と主体的に話しあう,という態度の要因は関係

しているのではないだろうか.

結論すれば,とのような少人数の話し合いにより,

過去の体験を主体的に捉え,話したり聞いたりする ことで,不安が共有されたり,考えが掘り下げらた りした.その結果,イメージが明確になったり,多 様性に気づいたり,意欲が出てきたり,不安や悩み が解消されたりしたのである.そう考えれば,この ような形態の会により,実習における「生徒指導・

学級経営Jの重要性も意識づけることができ教 職に対する意欲」を高めることが可能になると言え

よう.

【実習の事前指導・事後指導に関する考察】

学生は今までにも幾度かの実習を体験はしてはき た.しかし,それを話しあうこともなく,従って深

く考えることもなかったため,体験がそのままの状 態ではなかったのだろうか.体験をしただけではそ れを個人の内部に位置づけることは困難である.必 ずその体験を主体的に捉え直す過程が必要である.

つまり,実習体験をすれば,必ずそれを内部に位置 づける過程が必要ということである.各実習生は個 人でその作業をできる,というのであればそれでよ い.しかし個人でそれをするよりも,他人と話しあ う方が多くに人にとっては容易であろう.つまり実 習体験を主体的に捉え直す作業を容易にするために は,このような形態の会が有効と言うことになる.

また,実習体験が十分ではない時期にその作業をす すめることは困難である.なぜならi構造化するた めには材料が必要であるが,その材料となる体験が 十分ではないからである.従って,このような形態 の会を実施するならば,今回のように 3 年次実習が 2 固とも終わって構造化のための材料は豊富にある 時期が適当であると思われる.

また,この時期が適当である理由はもう一つある.

それは,この 3 年次実習の事後指導により,体験を 位置づけて構造化することが, 4 年次にするであろ う体験をより効果的に取り入れるための準備となっ ているからである.つまり 3 年次実習の事後指導が すなわち 4 年次実習の事前指導にもなるのである.

このような準備ができていれば, 4 年次実習でする 体験は無駄にはならないであろう.このように積み 重ねられた体験こそが,実践の現場での生きた知識 として取り出すことができ,使用可能となるのであ ろう.

もちろん,今回の会だけで過去の体験を構造化す

るのに十分であるとは言い難い.しかし構造化する

という行為の一端を体験したとは言える.その一端

を体験するだけでも,大いに意義はある.一端を体

(7)

験することにより,今後「体験を捉え直す」の作業 をやりやすくする効果は期待できる.そのような作 業を積み重ねることで,より確かな構造が形成され るのであろう.その行為を起こす初動としては,今 回の会は有効に機能したのではないだろうか.

文 献

中山玄三・藤中隆久 ( 2 0 0 5 ) 教育実習の目標達成に関連

する要因聞の因果関係. 教科教育学研究 2 3 (印刷中) 藤中隆久・中山玄三 ( 2 0 0 4 ) 教育実習の目標達成度に関す

る実習生の自己評価.熊本大学教育実践研究 2 1 , 2 7 ‑ 4 2 .  

吉田道雄・吉山尚裕 ( 2 ∞ 2 ) グループワークによる教育実 習事後指導プログラムの開発一実習生は子どもの声をど う受け止めたのか一.熊本大学教育実践研究 1 9 , 1 3 3 ‑ 1 4 4 .  

吉田道雄 ( 2 0 0 4 ) 教育実習事後指導に対する参加者の評

価一自由記述によるグループワークの効果分析一.熊本

大学教育実践研究 2 , 1 1 0 3 ‑ 1 1 2 .  

参照

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