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田中富士夫

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Academic year: 2021

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ロールシャッハ・テストの解釈仮説には︑実験的資料に基いてその妥当性が検証されているものは少く︑臨床的経

験に基いてロールシャッハ使用者が暗黙のうちに認めているものが多いといわれている︒ここでとり上げた﹁父親カ

ード﹂と﹁母親カード﹂の問題も最初は臨床家が経験的に導き出した仮説であるが︑その後十数年間に亘って幾人か

の研究者が実証的資料に基いて検証的研究を行ない現在なお諸家の一致した見解を見るに至っていない課題である︒

この問題の研究史については︑一九六○年頃までの文献を中心にさきに筆者が若干の考察を加えたことがあるので本

稿では詳述をさけたい︒︵胴︶ この小論はロールシャッハ・テストにおける可父親カードL仮説及び﹃母親カードL仮説の妥当性をセマンティック・デイファレンシャル法によって検証しようと試みた小実験の報告であり︑可ロールシャッハ・テストの象徴的解釈の妥当性に関する研究しの予備実験として行なわれたものである︒

意味構造について ロールシャッハの可父親カード﹂と可母親カード﹂ のセマンティックoデイファレンシャル法による

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田中富士夫

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ルシャッハのⅥカードとⅦカード及び﹁父﹂と﹁母﹂の計四個の概念を七尺度のSD法で評定させたところ︑Ⅳカー

ドと﹁父﹂のD値はⅦカードと﹁父﹂のそれより小︑またⅦカードと﹁母﹂のD値はⅣカードを﹁母﹂より小なるこ

とがわかり︑共に﹁父親カー・ド﹂︑﹁母親カード﹂仮説に支持を与える結果と解された︒以上のように︑﹁父﹂や﹁

母﹂の如き言語概念と︑ロールシャッハ・プロットとの意味上の類似度を求めた三人の研究は︑結論だけをみれば︑

尻四目goは﹁父親カード﹂︑﹁母親カード﹂仮説共に肯定︑匡三①は﹁母親カード﹂仮説のみ肯定︑﹁父親カード﹂仮説

否定︑の日一言は両仮説共に否定という全く混乱した状況を呈している︒しかし︑三者の実験計画︑手続︑結果の整理

法等には幾多の相違が認められるから︑あるいはそのような方法上の差異が異なった結論を導いたのかもしれない︒

の旦讐の研究は原著が未発表故︑手続きの詳細は不明であるが︑ロールシャッハ・プロットはスライドで呈示さ

れており︵匡三①・はスライド︑観四日goはカードで個人法︶︑言語概念では︑三国司鈩目国固閃︾冨冒冨○弓国因宛で

あって単なる蜀少自記崗宛︾冨○目閏因詞ではないこと︵匡三のゞ屍四日目○は共に蜀炉目国両宛及び︑冨鈩自国画宛︶などが

指摘されよう︒以前の論文︵胸︶で筆者が指摘したように︑従来の諸研究では︑研究方法︑手続に関係なく︑﹁父﹂︑

﹁母﹂の概念に﹁私の﹂と限定した場合には︑否定的な結論が出される傾向があり︑︵例えば︑Q︼胃①目︾い︵1︶︑

国侭座.︒.︵2︶︶m昌昏の場合にもまたこのことがあてはまるといえよう︒

プロット及び﹁父﹂︑﹁母﹂等の概念の8国gg画房な意味を測定する尺度︵形容詞対︶についていえば︑の日一s

の一○尺度には三種の主要因子が含まれているとしか記されていないが︑匡三のでは三主要因子三個ずつ︑尻四日四日︲

goは砲ggQを強調する形容詞対七個という工合に夫々異なっており︑匡三①と屍四日目oの共通した尺度は︑

F胃癌1m目農︑と聾g長I重田宍の二対に過ぎない︒SD法によって︑カードと言語概念間の意味上の類似度を求め

る際に最も重要なのは形容詞対の選択である︒ところで︑形容詞対の選択基準はどの場合もそれほど明らかではない

が︑の目算F匡三のでは○猪○sの三要因を含めることに注意が払われているようであり︑いわば一般的な尺度が用

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カードと言語概念間の意味上の類似度を示すのに︑の言言は画彊の①白の言l曽巴湧一のの8扇のを用︲いたのに対し︑

匡三の当尻四日目︒はロIの○吋①を用いていること︑また匡三のば集団の平均註ROHの8門①についてのDを計算してい

るのに対し︑尻四目goは個人別に七対の尺度についてのD値を求めているといった相違が認められる︒

実験計画の点ではへの昌一岳.匡三のは共に﹁父﹂﹁母﹂概念と一○枚のプロット間の意味の類似度を比較している

のに対哩尻四目皇︒では︑ⅣカードⅦカード二枚だけが比較されている︒尻四目goの計画では︑︹父lⅣ︺は︹父l

Ⅶ︺より類似度が高いと言えたとしても︑残りの八枚のカードの中にⅣ以上に﹁父﹂概念と類似した意味をもつカー

ドがあるかも知れぬという可能性が残されているという点で積極的に仮説を支持する結果とみなすには難点がある︒

以上のように︑三人の研究ほ夫々の特徴・差異が認められるから結論だけを直接比較して相容れない対立的結果で

あるということはできないかもしれない︒ いられていると思われる︒これに反し︑悶画旨四国oが容蔓﹈亀要因を重視したの唾﹁父﹂︑﹁母﹂概念がこの要因で重要な意味をもつと仮定したからに違いない・高柳・飽戸n︶によれば︑ロールシャッハ・プロットの意味を求めるための尺度︵形容詞対︶︑と日本語の冨三og輿巴な意味測定用の尺度とは共通するものが少く︑プロットを概念とした時の因子構造は︑日本語一般の因子構造とかなり異なることが知られた︒従って︑一般的な純粋尺度を用いてこの種の研究を進めていくことにはかなり疑問があるといわねばならない︒ところで︑われわれの問題は﹁父﹂︑﹁母﹂の如き概念とインクブロッ卜の如き概念を同一︷の意味空間内に位置づけようとするものであり︑このためには両種の概念記述に適切な形容詞対を選択しなければならない︒しかし︑ブロットの有するあらゆる8go冨雪①な意味を抽出することに意義があるのではなく︑﹁父﹂︑﹁母﹂の意味との関係においてプロットの意味を位置づけていくべきであると考えるならば︑むしろ尺度は﹁父﹂と﹁母﹂を表明している形容詞対から構成すべきではなかろうか︒

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次に︑若し﹁父親カード﹂︑﹁母親カード﹂仮説が認められるとするならば︑例えばⅣカードを﹁父親カード﹂た

らしめているのはⅣカードの如何なる物理的特性であるかについての吟味を行なうのが第二の目的である︒このた

め︑プロットの陰影︑黒さ等を除いたカードについてSD法を実施し︑その結果﹁父﹂概念との類似度がどのように

変化するかについて検討する︒というのは︑﹁父親カード﹂︑﹁母親カード﹂仮説の背後には︑Ⅳカードの暗い陰影︑

Ⅶカードの明るい陰影がカードに夫々父親イメージ︑母親イメージを付与しているとの前提があること︑そして少く

と老カードの﹁男性的l女性的﹂の側面については︑カードを暗くすると﹁より男性的﹂に評定され︑明るくすると

﹁より女性的﹂に評定されるという結果︵4︶も報告されているので︑この点を明らかにするのが第二の目的であ

る︒これは言い換えれば︑プロットに或る象徴価を与えている刺激側の性質を確かめることである︒ ことである︒おいている︒

SD尺度の構成 本研究の第一の目的は︑SD法を用いて﹁父﹂概念及び﹁母﹂概念と最も類似したロールシャッハ・カードを選ぶこと︑即ちⅣカード︑Ⅶカードが夫々﹁父親カード﹂︑﹁母親カード﹂と呼ばれるに相応しいかという点を吟味することである︒特に前記のように﹁父﹂及び﹁母﹂概念を表現するに適切な尺度を用いてSD法を行なうことに重点を

高柳・飽戸︵必︶の方法に倣い︑二○名の大学生を被験者として︑﹁次に一一○個の言葉が書いてあります︒それを

見て︑思いつく形容詞を何でも結構ですから︑いくつでもどんどん書いて下さととの教示で︑太陽︑鬼︑科学︑法

方 目

法 的

1

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7.■b二凸11︲4旧■咽J咀唖一■q・︲︲I.︒︲脚︲︲IIII4JqlIIj I

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①重々しい②きたない③むつかしい④かたぐるしい⑤つめたい⑥偉い⑦気持がよい⑧円満な⑨面

白い⑩軽やかな⑪きびしい⑫おとなしい⑬自由な⑭おだやかな⑮威圧的⑯あたたかい⑰平和的⑱

いかめしい⑲静かな⑳いかつい⑳なつかしい⑳落ちついた⑳厳格な⑳ゆるい⑳楽しい⑳デリケート

な⑳やさしい⑳力強い⑳くだけた⑳たのもしい

このうち反意語が明確に一致して現われるもの︑またその反意語の反意語を求めると再び元の語に戻るような対極

的な形容詞対を求めるとへ﹁きたないIきれい﹂︑﹁気持が良いl気持が悪い﹂︑﹁自由なl窮屈な﹂︑﹁平和的l

闘争的﹂︑﹁おだゃかlはげしい﹂︑﹁やさしいIこわい﹂︑﹁楽しいI苦しい﹂︑﹁たのもしいlたよりない﹂の

八対だけしか残らないので︑﹁つめたいlあたたかい﹂を加え︑更に﹁重々しい﹂を﹁重いl軽い﹂と言い変え︑ま

た﹁力強い﹂を﹁強いI弱い﹂とおきかえて採用することに決めた︒また︑この実験を利用して︑インクブィットの

刺激特性を変化させた場合の意味構造の変化を測定する別の目的があったため︑高柳・飽戸︵M︶及び岡部︵9︶ら

の純粋尺度を参照し︑﹁明るいI暗い﹂︑﹁憎らしいIかわいい﹂︑﹁薄いl厚い﹂︑﹁太いI細い﹂︑﹁やわらか

いIかたい﹂︑﹁おそいIはやい﹂︑﹁好きなlきらいな﹂︑﹁良いl悪い﹂︑﹁男性的l女性的﹂を加え最終的に

は二○個の形容詞対でSD尺度を構成した︒実験に使用した尺度用紙は第1表に示すように︑配列の順序︑左右をラ

ンダムにし︑評定段階は七個設けた︒ 律︑母︑教会︑権威︑役人︑怒り︑社長︑雲︑家庭→看護婦へ神へ公園︑父︑テレビ︑憲法︑愛︑医者の計二○個の概念を呈示した︒このうち︑法律︑母へ権威︑家庭︑父︑愛の各概念で表われた形容詞︵形容詞的な表現を含む︶のうち出現頻度の高いもの三○個を選び︑ランダムに配列し︑大学生十八名に反意語を記入させたP三○個は次のリストである︒

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