Japan Steel Bridge Competition 2015
の参加で培うデザイン力社会環境工学科学科 4年 牛塚悠太 担当教員:葛西昭
1.はじめに
鋼橋は,長いスパンの橋梁から,一般的な都市高速 な どで見られる高架橋の類まで幅広く利用されており,
橋梁工学を学ぶ者にとっては,実際の現場での教育が 最重要である.しかし,現状の大学教育では,そのよ う な現場を体験することは難しい.そのような中,数 年
前より,JSBC と称して橋梁模型のデザイン・架設を
競う全国大会が開催されている.本稿では,この全国 大 会への参加を通じて得た,構造力学および橋梁工学 に ついての実践的なエンジニアリングデザイン力に ついて記す.
昨年度の JSBC は熊本大学で行われたため,熊本大
学の参加チームは大会準備,運営を行いながらの参加 となった.そのため,例年と比べると製作や架設練習 の時間が少ない現状にあった.しかし,参加学生から は今年は熊大開催だからこそ入賞を目指したいといっ た意欲的な声が聞かれ,全員が一丸となってプロジェ クトに取り組んだ.結果として,総合 3 位に入賞し 熊本大学の底力を外部にアピールする良い機会となっ た
2.1模型のデザイン
JSBCへの参加にさしあたり,以下に示す競技ルール に沿った模型のデザインを検討した.
・模型サイズ:橋長4m,幅50cm以内
・チーム構成:4-6人
・審査項目:架設時間(40分以内),美観,プレゼンテ ーション,たわみ(10mm),総重量等
2016年度の橋梁に載荷する荷重は100kgおよび
200kg で,おもりを載せ,それぞれの重量に達した台
車を模型路面の端部から他端部まで走らせ,スパン中 央のたわみの最大値を測定するというルールの下で載 荷競技が行われる.デザインや製作の時点で予測解析 や重量計算を行うことは,大会で好成績を収めるため にとても重要である.2014年の大会では入賞を逃して いるが,熊本大学で開催される昨年度は,運営を行い つつ模型製作にも力を入れて総合で上位入賞を目指し たいとの声が参加学生から挙がり,熊本大学の模型コ ンセプトは“チャレンジ”とし,時には教員のアドバ イスを受けながら模型のデザイン案を図-1のように 決定した.このような形状のものは製作が難しいため,
例年このような形状の模型を持ち寄る大学は見られな い.このように,橋の構造に三弦トラス構造を用いる ことで,軽量化や架設時間の削減を図ったデザインに 仕上がっている.
図-1 模型デザイン
2.2模型の製作
前項で述べたように,製作する模型は,軽量でありか
つ最大 200kgf の荷重を移動載荷した時の支間中央
点のたわみが 10mm 以下になることが要求される.
数値計算を正確に行ったとはいえども,製作を設計図 通りに行わなければ,予測結果同様の成果は期待でき ない. 製作においては,技術職員の助言を受けつつ,
部材の切断,ボール盤を用いた穴あけ,部材同士の溶 接,グラインダーによる仕上げ等はすべて学生の手作 業で行った.今回特に試行錯誤したのは図-2 に示すよ うな部材である.下記(a),(b)は図-2 の記号に対応する.
(a)上弦材と下弦材をつなぐ部材
二つの部材をかみ合わせ,スポット溶接とアーク溶 接の二種類の溶接により接合した.
(b)謝罪と下弦材,上弦材をつなぐ部材
図-2(a)の端部を固定し,てこの原理を利用して,あ
る一定の角度になるように加工した.
(a)斜材 (b)接合材 図-2 特に工夫を必要とした部材 2.2架設作業
審査項目の 1 つである架設作業では,解体した模型
の組み立ての速さや正確さを競う.模型製作完了後,
最も効率の良い架設手順を検討した.図-3 はその作業 風景である架設時間短縮のために何度も繰り返し架設 練習を行った.
図-3 架設風景
3.ブリッジコンペティションへの参加
ブリッジコンペティションは,学生自身が橋梁の設計,
製作と架設を行い,ものづくりの真の楽しさを経験す るものである.以下にブリッジコンペティションの詳 細な目的を記す.
・大学の学生や参加者の国際レベルの協調性を養う.
・学生や参加者の基本的な工学知識の応用力を養う.
・学生や参加者の問題解決能力を培う.
・同分野で学ぶ学生や参加者の交流を図り,設計・製 作技術や多くの知識を習得する.
競技大会は 8 月 30 日から 31 日にかけて熊本大学 工学部百周年記念館で行われた.この大会には 19 大
学から 20 チームが参加し,それぞれ独自の橋梁模型
の性能を競った.作成した模型は図-4 に示す.
図-4 完成した模型
熊本大学の競技成績は,架設時間 19 分 21 秒,重量
31.4kg,載荷時のたわみが 10.12mm であった.熊本
大学の競技成績は架設部門で位,構造部門で 3 位,
審査員への模型のプレゼンテーションと展示後の投票 による美観部門では3位,総合評価(架設+構造+プレ ゼンテーション)でも 3 位入賞を決め,前回大会の総 合 6 位という結果を塗り替えることができた.昨年 度製作した橋梁模型は,軽量化に特化しつつ,構造的 に強度も有する設計なっており,予測解析結果と比べ るとその強度は,やや落ちるが,ほぼ設計通りに製作 が行えたといえる.昨年は細いボルトを採用したため に,荷重を支えきれず,強度が落ちてしまうことがあ ったが,ボルトを太くし接合をより頑丈なものになる
よう改善した.また,他大学の橋梁模型,チームワー クやプレゼンテーション等を見ることができ,自分た ちが考えることのなかっ た橋のデザインや架設方法 を知ることができ,次の大会へつなげるための恰好の 学びの場になったと考える.他大学の参加学生は大学 が学部4年生や大学院生によってチームを構成してい たのに対し,熊本大学は学部3,4 年生によってチー ムを構成していた.その中で,大会準備や当日の運営 を行いつつ,総合 3 位に入賞できたことは,参加学 生だけでなく熊本大学の学生の自信につながると考え る.
4.まとめ
昨年度で 6 回目のブリッジコンペティションへの参 加となったが,過去の利点も残しつつ,毎年新しい技 術を取り入れ,バージョンアップしていかなければな らないと感じた大会であった.載荷ではスパン中央の
たわみが 10.12mm と参加大学の中で基準値 10mm
に最も近く,我々の設計技術と製作技術の正確さを結 果をもってアピールすることができた.次年度の技術 的な課題として,設計の段階で昨年度以上に模型に荷 重がかかった際の力の流れを考慮し,断面寸法を部材 ごとに変え,最適な断面寸法で製作することが挙げら れた.今回の鋼橋の製作と設計の実施,ブリッジコン ペティションに参加し,学生からは以下の(a)~(d)のよ うな学びがあったとの声が聞かれた.
・授業では取り扱わないより実践的な知識を習得した.
・様々な制約下で力を発揮することの難しさを知った.
・社交性に磨きがかかった.
・役割分担による作業効率化の重要性が身についた. このように,座学では学べないような設計・製作技 術や多くの知識を習得することができた.今後は,こ の学んだ経験を卒業研究や修士での研究あるいは就職 等に生かすと共に後輩へと伝えたい.また,他大学の チームを見て学んだことや今回の反省を活かしてより よい模型を作りたい.