粗度とゼロ面修正量について*
松 岡 保 正* *
1. ま え が き
粗面水路における流れの抵抗別については,従来多 くの研究がなされている.それ らは主 に粗度要素の形状 と摩擦抵抗係数あるいは粗度 との関係を調べたものである.要約すると, 粗面の形態に応 じて適正な基準面を用いれば対教則が良 く成立するとい うことになろ う. こ のように,粗度要素の高さが増せば対数則の適用にあたって基準面 ( 以下ゼ ロ面 と呼ぶ)捕 正が必要になることは既に良 く知 られている.従 って,粗度要素が大きな流れに対数刷を適 用 して流量を知るにはゼ ロ面修正畳自体を評価 してお く必要がある.
たとえば,堤内外の植生や山地急流河川における河道内の大粒径の石等について,高水時 を予想 してのゼロ面修正量を知 ってお くことは治水上有用であろ う.また,最近では矢板を 水路の側壁 として利用する様な機会 も多 くなってきた. この場合,水深の割に幅の狭い水路 においてほゼ ロ面修正量が重要な意味を持って くる.一 口にゼ ロ面修正量と言っても,粗度 要素が植生の場合には水面の位置や流速の大小等で異なった値を示す ことが予想され る.普 た大粒径の石の場合には粒径,相互間の距離等が ランダムであるため一層複雑になる.
粗面を幾何学的に表示す るには,粗度要素の高さ,幅,配列間隔など多 くの長さが必要で ある. ここでは研究の第一歩 として,最 も単純な形状,配列の一つである幅を無視できる様 な桟粗度を使用 し,粗度 とゼロ面修正量を評価す ることを試みた..
2.平均流速分布式
非圧縮性の粘性流体に関する運動方程式は,流体運動に関する一般式に応力とひずみ との 関係式を適用 して得 られる. ことがいわゆる
Navier‑Stokesの式であ り,次のように表わ される.
筈 ・
u, ・ 告
‑x・ ・ 寸 貰
+億 ・ ( 1 ) 水工学が対象 とする流れは殆 どが乱流であるため,( 1 ) 式をそのまま適用す ることはできな い. しか し乱流場における統計的な特性量を知 ることはできる.そ こで,( 1 ) 式の両辺に Pを 乗 じ
Reynoldsの方法により平均操作を施す と,
警 ・怠
(pu76.pW )‑px‑E一豊
・p麓
(2)*
昭和
51年
1月 土木学会中部支部研究発表会において発表
* *土木工学科 助手
原稿受付 昭和5
2年
9月3
0日
70
長野工業高等専門学校紀要 ・第
8号
が得 られ る
・(2)式は一般に
Reynoldsの方程式 と呼ばれてI、 る・
今,簡単のために二次元等流状態に(
2)式を適用する. と xl
‑X,X3 ‑ I ,ul ‑ u ,u3
‑W とし て次式を得る.
意p u 好一 p リ 笠 ‑ o ・
これ より,壁面か らZの点におけるせん断応力
T(I
)は次のように表わされ る.
d
u‑ ‑で く Z )
‑Pリ頂㌻‑Pu'W'=TO(const)Iここに
TOは Z‑ 0上におけ るせん断応力で,摩擦速度 u*とは次の ような関係にある.
t
u*‑序 ・
(5'(4)
式に注 目す ると,壁面か ら十分に離れた疏域では動粘性は渦粘性に較べて無視できる程皮 であるか ら
T
0
‑ ‑ Pu'W ',
(6)と表 わせ る.従 って,滑 らかな壁面か らの高度 Zにおける平均流速の変化率は
To , P
, Zのみ の関数になる.一方,平均流速の値 石( I) そのものは
TO, P ,Z には依存せず,動粘性係数
γが影響す る領域での流速の変化法則に依存す る. このことか ら
,Monin,Obkhovは次の関 係を導いた
1).響 ‑
A‑
牡Zt
Z ‑
U(Z)
一 一 ■ 一 ‑ Z o
//// h
図
1大型粗度上の平均流速分布
a( h/a) を導入 した次式が成 り立つ.
蓬髪
‑念
・g(
!)・
(7)
ここに
Aは普遍定数で, カルマン定数 6に より
A‑1/Kとして表わされ る. これ と同 じ形の式は
Karman(1930)と
Plandtl(1932 )により, まった く別の仮定か ら導かれ ている.
さて, ̲壁面が平均高さ
hの突起を持つ場 合について考える.
Nikuradseによれば,
hu♯/
L ・が6
0以上の時には粘性底層は事実上 消滅 して しまう.従 って,平均流速の変化 率は
TO,P
,I
,hのみの関数になる. こ の場合には(
7)式の代 りに,新たに補正関数
ここでゼ ロ面修正量 zl を導入 して , h/
Z<1を考慮 し補正関数を べキ級数に展開す る. この
とき Z1 ‑g' ( 0) となる様に zl を選べば, 2 次の頂 までの正確 さで次式が得 られ る.
粗度とゼロ面惨正量について
(
研 Z )
u* 1 dz K (I‑ Zl).6( I) = 一
旦LKlnヱ 二 空Zoこれ より
が得 られる. ここに
zoは対教則を適用 した時, 平均流速が
Oになるようなゼ ロ面か らの高 さで,粗度のパ ラメータあるいは単に粗度 と呼ばれ る.平均流速分布 と,ゼ ロ面修正量 z
l, 粗度z
o,粗度要素の高さんな どを模式的に示す と図
1の ようになる.
3.実 験 概 要
、粗度 とゼ ロ面修正量は粗度要素の高さ,幅,配列間隔な どに支配 され るものと考え られ る が,配列間隔に大 きく依存す ることについて
,Johonson2),足立3 )らは興味深い実験を して いる. ここでは研究の第一歩 として幅の効果を無視できる様に,高 さ
40mm,幅
2.3mmの 銅板を流れ方向に並べて桟粗度 とした.
実験は長 さ
11m,幅
40cmの底面鋼,側面ガラス製可変勾配水路で行 った.粗度要素の高 さは,山地急流河川や水草の茂 った流れ等を想定 した為大 きくした.
流速 の測定には直径
1.3cmのプロペ ラ式流速計を用いた.平均流速を測定す る場合,観測 時問は最大乱子が
10個程度通過す る時間を目安にす る. しか し,今回は粗度要素が大 きか っ た為,短時間では安定 した値が得難 く , 3 分間 とした.
粗度要素が大 きくなると,桟間隔が増す につれ,個 々の粗度要素の効果が一様にな
20るまでにある高 さが必要になる. ここでは 流速の測定位置を流れ方向に移動 させ , 3 個所についての平均流速の鉛直分布か らそ の様な高さを決定 した.例 として,相対桟 間隔
S/hが
7のものを図
2に示す. 粗度 z
o,ゼ 1 ,面修正量 z
l,摩擦速度 u*ほ,図
2中の平均流速が一致する高さよりも上 の 領域に,8 0式を適用す ることで 求 め られ
3N10
30 40
ロ( Z)(
cm/see)図
2平均流速分布
50
る.
今回は,桟間隔のみに着 目し,相対桟間隔
0.5か ら
10までの
9種類について実験を行 った.
なお,実験中流量は
33.1〝sec ,水路勾配は
1,000分の
1,水深は
24.5cmに統一 した.
4.実 、験 結 果
観測 された平均流速分布にゼロ而修正を した後,( l O式を適用 して粗度 z
o. ゼ ロ面修正量 z
l, 摩擦速度
u*を求めた. 例 として,相対桟間隔
1.5のものを図
3に示す. この場合
Z1‑3cmのものが( 1 0式を良 く満 してお り,直線か ら
Z0‑0.35cm,u*‑4.8cm/secが得 られ る. この
様に して求められた 9 種の桟間隔に対す るゼ ロ面修正量
zlを縦軸に,相対桟間隔
S/hを横
長野工業高等専門学校紀要 ・第
8号
⁝・肘ル5‑〜t2(8)N ●○○、
●.
〇30 40
8の (
cm/see)図
3平均流速分布のゼロ面修正
・ ● ・
・o80● ・
H o0 . 1
1 10 100 S/h図
5 粗度
● ●
● ●
● ● ●
0.5 1 5 10 S/h
図
6摩 擦 速 度
軸に してプロッ トしたものを図
4に示す.本文
で用いた様な方法で評価 した例が無いため比較
はできない. この結果か ら,相対横間隔
0.5か
ら1 0の間では,ゼ ロ面修正量は相対桟間隔の対
数関数で近似され よう.参考 までに,図中の直
線 は
zl/hニ ー0.4910g(S/h)+0.88である. 吹
に,働 度
zoを縦軸た し相対桟間隔を横軸 に し
てプ1 ,ッ トした ものを図
5に示す.相対機間隔
S/k と砂粒相当粗度 ks との関係については,
従来多 くの研究がなされ てお り,それ らの うち
Johnsonと足立の求めたものを今回の結果に
併記 した. なお, 粗度
zoと砂粒相当粗度 ksの問には
ks‑3020が成 り立つ ことが知 られ
てい る1 .図
5では, 相対機間隔が
10位 までは粗度
zoが増加する傾向が良 く出ている.
筆者粗度とゼp面修正量について
73の倍が
Johnsonと足立のものより多少大きいのは,粗度要素が彼らのものよりも大 きか っ たことが原因であろ う.次に,摩擦速度
L:u*を縦軸に,相対桟間隔 S / h を横軸に してプロッ トしたものを図
6に示す.これ より相対桟間隔が1 0程度 までは,粗度同様摩擦速度 も又相対 桟間隔の増大につれて大 きくなることがわかる.参考 までに, n‑u*Ri
g一昔u‑1としてマエソグの粗度係数を求めた ところ
,0.028‑0.047になった.マエソグの粗度係数 も又,相対桟 間隔が増大するにつれ大 きくなる慣向があった. また,摩擦抵抗係数は
0.034‑0.090となっ
た .5.あ と が き
本文では,
Monin・Obkhov式をもとにして粗度 とゼロ面修正量を評価 し,相対問桟隔 と の関係を調べたが結果を要約すると次のようになる.
i)
ゼ ロ面修正量は桟間隔が増すにつれ,ほぼ相対桟間隔の対数関数的に減少する.
ii)
粗度は,相対桟間隔が1 0程度 までほ,桟間隔が増すにつれて増大す る.
iii) Manning
の粗度係数,摩擦抵抗係数共に桟間隔が増すにつれて増大する.
流れの実用的な抵抗別 としては,本文の様な方法は現在の所
Manningの式な どに及ばな い. しか し,式の理論的な正当性,簡潔明瞭な表現は十分評価されて然るべ きである.それ につけても,今後更に多 くの粗度要素,水深,水路勾配等に対 して粗度 とゼ ロ面修正量を評 価する必要がある.
参 考 文 献
1 )
Monin,A.S.andYaglom,A.M.:StatisticalFluidMechanics.MechanicsofTurbulence,
vo1.I(MIT press),P.275,(1965).2) Johnson,∫.W.:Rectangulararti丘cialroughness in open channels,Trams.,A.G.
U ‥
(1944).3)