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民族国家と多国籍文化

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Academic year: 2021

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民族国家と多国籍文化

講演者:TessaMorris Suzuki(Professor of Japanese Studies, Australian University)  日時:October20, 1994 (I 0:30 12:0)日

場 所 :H‑252

テッサ・モーリス・スズキ教授は,イギリス国籍をもっオーストラリア在 住の著名な新進気鋭の日本思想史家であり,現在,オーストラリ 7 ・ナショ ナ

J

レ・ユニヴァーシティー(キャンベラ)で教えておられる。教授は,学問 およびジャーナリズムの世界においてふたたび関心が高まりつつある文明論 の問題を取り上げている。スズキ教授は,論争を巻き起こした,サミュエ

J

レ ・

P ・ハンティントンの近年の論文「文明の衝突」(

1992

年)をとりあげ,ポ スト冷戦の世界を特徴づけるものとして提起された八大文明の衝突であると の彼のテーゼを批判的に吟味した。

このようなハンティントン・テーゼに対してスズキ教授は,経済の国際 化,国民間の国際移動の激化,消費文明の地球化といった現代世界の種々の 現象や趨勢を吟味しながら,むしろ問題は「文明概念」の終震ではないか,

と反論する。つまり,世界の諸文明がそれぞれの独自性や歴史的個性を保持 できなくなる状況であり,画一的な消費文明の地球的な拡がりの危機の前に それぞれの独自性やアイデンテイティーが喪失される状況である。

こうしてスズキ教授は,現代世界の対立の構図が「文明の衝突」ではなく,

「ファンダメンタリズム(原理主義) J と「プルーラリズム(多元主義) J と の対立ではないか,と主張する。この対立の構図は,イスラム文明圏諸国,

アメリカ合衆国,オーストラリ

7

を含むすべての文明社会のなかでそれぞれ の仕方で深刻化している。

スズキ教授の理解によれば,現代世界の課題は,こうした複雑で予測がつ

きにくい状況のなかで言葉の真なる意味での「多文化主義」を,社会と個人

(2)

公開講筑会 87

の内面生活の両方のレゥ・エJレで具現化することである。教授の講演は,御専 門の日本の思想およひ 文明状況に立ち入った議論があまり見られなかったの が残念であったが,そこには明確な論旨の展開があり,啓発的な示唆が多く みられた。

(講演は日本語で行われました。)

(文責目社会科学科準教授千葉漠)

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