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会社増資と株式価値の大いさ(一)

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(1)

会社増資と株式価値の大いさ(一)

その他のタイトル Change of Stock Value with Capital Increase (I)

著者 今西 庄次郎

雑誌名 關西大學商學論集

2

2

ページ 107‑132

発行年 1957‑06‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/00021837

(2)

会社増資と株式価値の大いさ︵一︶

西

のものとして用いてよいわけである︒ 会社増資に伴い株式価値の大いさが如何になるかを論ずる時には、増資と関係のない普通の場合ー~業績順調な場合と業績宜しからず赤字経営の場合とに分たれる—ーの株式価値の大いさの決定論は既に取上げられている筈である︒従って会社増資の場合の株式価値の大いさ論で必要とされる︑普通の場合の価値大いさ決定の知識は︑既知

会社増資は其の目的から叉態様から種々に分たれる︒先ず目的から大別すれば︑一は事業の拡張を目的としそれ

に必要な資本を調達するものであり︑他は別段事業の拡張を行わず配当政策其他純粋な資本政策を遂行するもので

ある︒この何れかにより株式価値の大いさのきまり方は異る︒従って之等の場合に分ち価値大いさの決定を論ずる

拡張増資にも二つの型がある︒増資々金を以て新に拡張を始めるやり方︑会社が借入金︵社債を含む︶を以て先

会社増資と株式価値の大いさ

西

(3)

ず拡張を行いそれが完成した後その借入金返済のため増資を行うやり方︑これである︒勿論︑株式価値の大いさは

之等のやり方により可成り異った決まり方をするので︑分ち論究することとする︒

増資々金を以て新に拡張を始める場合

一般に会社が増資を行うか否か︑如何なる方法で行うかは︑勿論︑株式総会で定めるところである︒併し戦後我

一々改めて総会を開かず取締役会に一定の数量を限って随時増資を決行してよい権限を与える所謂授権資

一般に採られるに至った︒而してこの授権資本制の下では︑殆ど︑

本制

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Ca

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St

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k  S

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m が ︑

従来の株式即ち株主が新株引受権を有するものとせられた︒しかし増資株式は必ず株主割当てとせられるようにな

一般に公募するやり方も行われないではない︒従って︑増資新株式を従来の株主に割当てず一

般に公募する場合の株式価値の大いさを一応考察し︑次いで株主割当増資に及ぶようにしなければ︑充分な研究と

自己資本︑額面額で一

0 0 0 0

万円︑現在半期二

000

万円の利益を挙げている会社が事業規模を大体倍

にするため半額増資の計画を立て︑増資新株五

0

円額面株式一

00

万株を発行しこれを一株一

00

円で一般に売

出しその入手資金を以て拡張を実行することとした︒規模の拡張は一カ年半後に完成するとする︒

この場合︑増資新株式の売出価格は大体増資後のその会社株式の価値を示すものと見て大過がない︒価格の決定

には種々の事情が加味され必ずしも価値通りになるとは限らないが︑価値が基準となって定与されることは確かで

あり︑特に一般売出しの場合︑価値より余りに高いときほ売行不振となり増資決行に支障を来し︑又価値より余り

低いときは従来の株主に不利を与えることとなり︑双方に牽制されて自ら価値に近い大いさに定められざるを得な

は云えないわけである︒

( A

)  

会社増資と株式価値の大いさ︵一︶

西

(4)

会社増賢と株式価値の大いさ(‑)

西

1 4 9 . 6 P 3 1 7 7 .

  7 P

3  

べ 閂

0

0 9 }

いところである︒この意味では増資株式の価値の大いさが売出価格よりも先に与えられねばならぬとも云われる︒併し増資後の株式価値は︑最後的には︑売出価格︑延いて会社の入手資金額の如何によって規定されるところであり︑従って正確な価値計算としては︑矢張りこの入手資金額を基として行われねばならないのである︒

一般に会社経営は増設中は勿論︑拡張が完成しても直ちにそれに伴う充分な利益は挙がらず︑完全操業による利

益は更に半力年ぐらい遅れるのが普通であり︑その間は利益は現在通りとするの外ない︒上例の会社の場合︑資本

0000

万円に対し現在半期利益二

000

万円なるがゆえ︑会社の企業実力優秀一流で利益の適正分配率六〇

バーセントとすれば配当力は年二四パーセントであり︑株式の一般対価歩合年九パーセントとすれば︑五

0

円額面

株式の収益価値は

1 1 1 3 3 . 3 P 3  

5 0 P 3 X 0 . 2 4  

0 . 0 9  

一三三・三円である︒これが上の如く増資をなせば︑半期利益は従来通りであるのに額面資本金は五

000

万円増

加するがゆえ︑会社の企業実カコンスクントとすれば配当力は一六パーセソトとなり︑収益価値は

1 1 8 8

. 8 F 9

 

x 0 . 1 6

0 . 0 9  

一応八八・八円の計算となる︒併しこの会社はニカ年後は半期利益四

000

万円となることが期待され︑硯在別に

収益期待価値をも持つところである︒

1 1 0 . 3 2   4 8 0

X0.6x2 N

1 5 0 0 0 7 J f g   1 1 1 7 7 .

  7 P

J  

5 0 P J X 0 . 3 2  

0 . 0 9  

この収益期待価値は二年後の収益価値の現在価値でなければならず

(5)

の大いさとなる筈である︒ 既に株式収益価値本質論︵本誌第一巻第四号︑昭和三十一年十月刊︶で明かにしたように︑株式価値は現実的な

収益価値を取上げるべきで︑仮令収益期待価値が並存しても之は前者に蔽われてしまうのである︒けれども今増資

会社の収益期待価値は現在の現実の利益を基としておりその期待性極めて強く︑従ってこの会社の増資による株式

価値としてほ上記収益価値が勝り収益期待価値は参考に止まるというべきものでないのである︒斯くて双方とも生

きる価値が並存するとすれば︑結局双方を平均したものとならざるを得ないわけである︒

1 1 1 1 9 . 2 p  

. 8 f g + 1 4 9 . 6 f g

増資決定によりこの会社の株式収益価値は一︱九・ニ円となり︑勿論価格も純粋に価値通りに与えられるならばこ

萩で一寸やって置いてよいと思われる吟味は︑上例では事業規模を倍にする拡張を行うため増資せんとしたので

あるが︑事業規模を現在の三倍にするため増資を行うとき増資により株式価値は如何になるかである︒問題点とな

るのは︑この場合は三倍拡張なるがゆえ︑単に収益価値と収益期待価値の平均となるよりも︑収益価値一︑収益期

待価値二の割合の平均となるか︑或は収益価値二︑収益期待価値一の割合の平均となるのでないかである︒今上例

の会社がそのため二倍増資をなし増資株式を一

00

円で売出すとして計算すれば︑増資による収益価値は

1 1 0 . 1 2   2 0 0 0 7 5 P 3 X 0 . 6 x 2   2 0 0 0 0 7 5 P 3   1 1 6 6 . 6 P 3  

X 0 . 1 2

.

0 9

即ち一四九・六円である︒ 会社増沢と株式価値の大いさ

( 1 )

西

(6)

会社増資と株式価値の大いさ(‑)

六六・六円となり︑収益期待価値は

2 0 0 0 7 5 P 3 x 2 x 3 x 0 . 6  

2 0 0 0 0 7 5 P 3   1 1 2 0 0 P 3  

5 0 P 3 X 0 . 3 6  

0 . 0 9  

1 1 0 . 3 6

 

西

1 1 1 6 9 F 9   2 0 0 F 9   ( 1 + 0 . 0 9 ) 2  

而して増資決定による株式価値は︑収益価値一︑

をとれば

1 1 1 3 1 .   5 f = g   6 6 . 6 f = g + 1 6

9

x 2

一三一・五円となり︑収益価値二︑収益期待価値一の割合の平均であるという見解をとれば

1 1 1 0 0 .

  7 P

3  

66.6P3x2+169p 

1 0

0 ・

七円となり︑叉収益価値と収益期待価値の単純平均であるという見解をとれば

1 1 1 1 7 . 8 P 3   6 6 . 6 P 3

1 9 6 P

3  

︱︱七・八円となる︒

収益期待価値二の割合の平均であるという見解 収益価値一︑収益期待価値二の平均を主張する根拠は︑斯かる会社は現在配当力は一時的に落ちるも拡張操業後

の利益期待は多く︑将来明るい会社として将来を多く取入れるべきであるのみならず︑

又それによって妥当な現在 価値となるというところにある︒これに対し収益価値二︑収益期待価値一の平均を主張する根拠は︑前者のように 収益期待価値を多く取入れるときは多く増資せる会社ほど価値大なるものとなり不自然であるのみならず︑株式価 値は成るべく現実に即するほど妥当であるという趣旨から現実的な収益価値を多く取入れるべきだというところに

(7)

ある︒思うに︑この二つの見方は何れも一理を持っている︒既に夫々取上げるぺき理を持つとせば︑結局収益価値

と収益期待価値を各々一の割合︑即ち単純に平均すべしとなるところだ︒斯くて︑二倍以上に拡張の増資の場合も︑

増資による株式価値は︑大休︑二倍拡張の増資の揚合と同様となしてよいわけである︒

会社が一般公募の拡張増資をする場合︑その株式の収益価値は変化する︵上例では一三三・三円のものが一︱九

・ニ円となる計算であった︶ことを知ったが︑その変化は何時起るのであろうか︒.増資による株式価値の問題とし

てはこの点が残っている︒而して結論を先に云えば︑この場合の価値変化は増資株式の売出が行われそれが売切れ

たときである︒多くの人々は︑価値の変化は増資決定のときに既に起るとの見方をとらんとする︒併しこれは正し

一体︑市価は価値を基準として定まらんとするも︑また価格としての特性ある動きをなさんとし︑特に将

来の価値材料を早く織込む性格を発揮するところである︒従って今︑増資に当っても既に増資決定の時は勿論︑そ

れ以前増資計画の濃厚化につれそれによる価値変化を織込まんとする︒併し証券価値は飽く迄確実なものであり︑

増資が決定しても尚公募株式が果して全部売れるかどうか︑延いて増資が成就するか不明なる限り︑それを織込む

が如きは彼の性質として許されないのである︒尤も価値は現実的で確実なものだと一云っても︑それは経済物であり

法律物でないがゆえ︑法律によって規定されるものでない︒会社の増資は︑法律的には︑売却株式の少量でも払込

が遅れては不可とされ︑その全部完了と登記という手続を経て有効とされるのが多くの国の実状となっているが︑

一部に払込み困難者があっても誰か代ってそれを履行する者が期待され増資成就確実となった

ときは︑増資の影響を取入れてよいのである︒斯くて︑初めに述べて臨いた如く︑増資株式の価値変化は売出株式

が売切れたときを境として起るとなすのが正しいのである︒ 株式価値としてほ︑

会社増資と株式価値の大いさ(‑)

西

(8)

会社増資と株式価値の大いさ(‑)

r t h ̀

a

I

FT

h この場合︑会社の企業実力︑株式の一般対価歩合を先の例の場合と同じとすれば︑増資決定前の株式の収益価値

活脳甫蒔 は矢張り一三三・三円である︒而して増資後の株式価値は

ll

g.

6P

3 

50

P3

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x2

 

2 0 0 0

0 7 5 P

3  

八九•四円となる。

西

1

11

12

.2

F9

 

1 3 3 .

3 F 9  

( 1

+ 0

. 0

9 )

2  

66

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fg

+1

12

.2

PJ

 

勿論、八九•四円となれば、そのま

4

では株主は非常に不利となるが、増資新株が彼等に与えられ、

1 1 8 9

. 4 P 3

 

とした︒規模の拡張は一カ年半後に完成するとする︒

以上述べ来った所は︑増資株式を一般に公募する拡張増資の場合の︑増資による株式価値の変化であった︒が︑

前にも述べた如く︑今日我国などでは増資株式引受権を株主に認める所謂株主割当増資が一般化し︑拡張増資にも

この方式が多く行われるところである︒この方式の根拠は︑会社の資本に就いては現在の株主が利益権利を有すと

いう考に基づくものであるが︑直接には増資による株式価値の減少不利ー'│先の計算例からも窺知されるように︑

一般に拡張増資により従来の株式の収益価値は或る程度減少するものであるーをカバーするというところに出て

自己資本︑額面額で一

0 0 0 0

万円︑現在半期二

000

万円の利益を挙げている会社が事業規模を大体倍

にするため倍額増資を計画し︑増資新株五0円額面株式

i l O O

万株を従来の株式に一対一の割合で割当てること

つまり従来

(9)

増資決定︵株主総会或は取締役会︶︑割当株主の確定︑増資払込︵通常増資申込︶︑増資完了というように段階別さ れ︑夫々の間に一定の日時をあけるところである︒例えば五月一日に重役会で内定︑六月一日株主総会又は取締役 会で正式に決定︑

七月一日に株主確定︑十月一日から七日まで払込︵申込み期間︶︑十月十日増資完了︵払込期日︶

というが如くである︒而して前記の株式価値の変化は︑増資決定と共に一三三・三円から︱二八・八円の所謂権利 含みの価値となり、増資払込と共に増資権利は新株に移行し株式価値は八九•四円一本となるところである(経過 配当を附ける利付価値表現方式では旧株式と新株式との間に幾分開きのあること断わる迄もない︶︒従って増資に よるプレミヤムの附加された収益価値は増資決定の日から増資払込の日まで続くわけである︒念のため一言して置 くが︑増資決定と共にプレミヤムを附加された価値︱二八・八円となり増資払込最終日まで続くというも︑この大

いさそのものは増資決定の日現在に於て会社が現実に挙げている今期利益を基としたものであり︑或る日時︑例え 当の拡張増資の場合その価値変化は何時起るのであろうか︒

一般に割当増資は進行手続の上から︑重役会での内定︑

の株式一株は一株分五

0

円の払込みで増資新株式一株のついたものなるがゆえ、従来の株式の価値は八九•四円に 即ち増資決定により株式価値は一三三・三円から―二八•四円となるわけである(価格の方は、正しく価値に追随

すれば幾分下落するわけであるが、価格の性質から徴少の価値変化では変動しないか、人気のエ合ーー—例えば増資 勧迎の人気が盛なときー~では逆に或る程度騰貴するかも知れない)。

一般公募の増資拡張の場合株式の収益価値の変化は増資新株式が売切れたときに起ることを述べたが︑今株主割

89

.4

fg

+ ︵

8

9.

4f

g

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fg

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11

28

.8

F9

増資新株の額面以上の価値の加わったものとなる︒ 会社増資と株式価値.の大いさ(‑)

西

(10)

( B )  

註釈して慨く次第である︒

西

ば一カ月経過した日ではその時の利益状態を基とした大いさとなるわけで︑若し一カ月以前と利益状態が変ってお れば八九•四円も―二八・八円も当然違った大いさとならざるを得ない。この点は既知の知識と思うが、念のため 公募増資の場合株式価値の変化するのは増資決定の時でなく応募払込が行われ増資成就が確実となったときであ

ったのに対し︑株主割当増資の場合増資決定と共に権利含み価値となるのは︑増資株式を引受けない株主は本来な い筈で︑増資決定と共に増資成就確実であるからである︒而してこの場合も増資決定以前には権利含み価値とはな らないのであり︑このことは増資内定となってもそうである︒何故なら︑割当増資の条件は︑大抵は内定通りにな るとは云え︑正式な決定で動かされる可能性がないでもなく︑厳格な存在たる価値としては飽く迄その確定を要件 とするからである︒素より︑価格としては会社の業界におかれている地位︑会社の伝統的な経営方針等の増資情勢 を取入れ︑増資の決定︑内定よりも早く増資効果を織込んだ大いさとならんとするが︑価値としては大いさが明確 に計算され得る基礎を持たねばならないのである︒尚.増資プレミアムが旧株式から新株式に移行するときが増資 株式の現実の払込日︵申込期日の最終日︶で︑法律的な増資完了日でない点は︑既に公募増資の価値変化日に就い て述べたところから明かであろうと思う︒現実の株式市場に於て上場株式の会社増資の揚合︑株主確定日︵名儀書 換最終日︶に先立つ一定日に所謂新株落ちと称して増資プレミヤム分を市価から控除することを行うが︑これは市 揚取引上必要な処置に過ぎず︵また新株落ちとして控除される大いさはプレミヤム価格で︑プレミヤム価値となっ ているか疑問である︶︑正確な価値変化は上に述べたが如くに起るのである︒

会社が借入金を以て拡張を行いそれが完成した後その借入金を返済する増資を行う揚合

(11)

借入金によって拡張を始めると︑配当力は

1 1 8 3 . 3 P 3   5 0 P 3 X 0 . 1 5   0 . 0 9  

配当カ一五︒^ーセントで五

0

円額面株式の収益価値は

︵ 例

(

A )

の場合に於て知った如く︑会社が増資して新規拡張を行えば所謂資本負担を増し︑途中減配しなければなら

なくなる︒実際には少々の減配で済まし︑時には従来の配当を無理に持続する例もあるが︑政策的には兎も角︑純

理的には減配すべきである︒尤も株式価値の方は︑増資決行後も収益期待価値の関係でそれほど少くならず︑殊に

株主割当増資とすれば増資決行前の価値は従来と殆ど変わらなくなるのが普通で︑株式価格が価値通りになるとす

れば価格も殆ど下落しない︒これによって増資ほ案外支障なく遂行されることとなる︒併し乍ら注意しなければな

らないのは︑株式価値がそれほど少くならないのは収益期待価値が相当なるがゆえであり︑収益期待価値が相当な

るのはその会社の現在の利益状態が良好なるがゆえであるという点である︒何れにしても︑増資々金を以て拡張を

行うてよい又行い得るのは︑現に利益の多い会社に限るのである︒こ4に於てか︑利益状態のそれほどでない会社

としては︑事業の拡張を行うに︑先ず借入金を以て行い︑その完成を待ち増資によって借入金を返済するというや

り方をとらんとする︒今︑此種の拡張︑増資を行う会社の株式価値の推移を例を挙げて眺めてみよう︒

0 0 0 0

万円︑現在の利益半期一五

00

万円の会社が二年後完全操業の計画で事業規模を倍に

0 0 0 0

万円を借入れた︒借入金利子年八パーセントとする︒

拡張を始める前の会社の企業実力二流で︑適正分配率五0

会社増資と株式価値の大いさ︵一︶

西

10

 

(12)

西

1 1 0 . 1 1   ( 1 5 0 0 7 : J P J

‑ 4 0 0 7 : J P J )

  x0.5x2 

1 0 0 0

0

述玉

︱‑︒^ーセントとなり︑株式の価値は

六五•五円となる。即ち増資々金で拡張をやる場合に比べ、配当力の減少、価値の低下の度合は少くて済むわけで

ある︵上例の場合一

0000

万円の拡張資金を倍額増資を以て調達したとすれば株式価値は五五・七円となる︶︒

次に拡張が終り借入金返済の増資の場合の価値変化は︑現在の現実の利益半期二六

00

万円として

1 1 0 . 2 6 ⁝

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増資は一対一株主割当とすれば

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5 0 F 9 X 0 . 1 1   0 . 0 9  

1 1

6 1

P 3

 

(13)

八︒ハーセント︑増資決定による現在の収益価値一五

0

円 ︶

即ち増資前一四四•四円に達していたものが一―六・六円となり、これでは増資をやらない方が株主にとりて有利

であるが如くにも思われるが︑借入金を一掃し自己資本が充実すれば︑経営規模の拡大と相侯って︑企業実力が高

まる例が少からず︑右の例で会社の適正利益分配率五〇︒^ーセントより六

0

株主にとりても有利となり︑増資を敢行すべしとなる

上来述べた︑株式価値の推移から︑借入金による拡張︑拡張後の増資は︑増資による拡張に比べ株主にとり好都

合であり︑利益状態の抜群でない会社の事業拡張がこれによって行われんとすることは充分理解されたと思う︒実

際︑利益率の高い会社も︑強いて増資による拡張をやる要はなく︑このやり方を採ってよいわけであり︑否︑現実

にも既に多く行われているところである︒けれどもこのやり方には一面大きい弱点を包蔵していることを忘れては

ならないのだ︒上例に於ては拡張中並びに拡張後の利益は拡張を始める前の如く順調であるとして計算したのであ

った︒併し実際に於てこの利益は業界の景況推移によって動くところであり︑当初予想した如く好収益とならない

事例が少くない︒斯かる場合︑自己資本によるときは利子支払の負担がなく拡張を遂行し得るも︑借入金のときは

途中困難に遭遇し︑辛じて完成するも増資は六カしくなり借入金返済に追われ窮境に陥ることなしとしない︒勿論︑

借入金による拡張にこのような危険の伴うことを指摘するのは企業財務論の任務に属し︑証券価値論としては触れ

るに及ばぬことであるが︑老婆心として一言して置く次第である︒

次の拡張増資論に入るに先立ち︑絃で少し触れて置き度いのほ︑会社が手許資金で事業拡張を行う場合の事であ

る︒会社の事業拡張は増資々金が借入金によるとは限らず︑自己の手許資金で行われることがある︒この場合自己 会社増資と株式価値の大いさ︵一︶

西

(14)

︵ 例 (

C)

会社増資と株式価値の大いさ(‑)  

西

St oc k 

D i v i d e n d

資金を現在の利益活動に活用出来ずそれだけ利益は一時低下する︒若しその拡張が相当なもの︑例えば現在の規模

の四分の一ぐらいにも達する稲度であれば︑会社株式の価値は増資に準じて推移せんとする︒つまり拡張開始の時︑

就中拡張建設最盛期には現実の収益価値と収益期待価値とをコンバインしたものたらんとする︒但し自己手許資金

で遂行し得るが如き事業拡張は大したものでないのが普通であり︑株式価値も拡張に伴う収益期待価値を考慮する

迄もなくその時々の現実の収益を基とした収益価値一本で評量してよいとなるのである︒

利益配当を増資々金とする︵現金配当の代わりに株式を交附する︶会社株式の場合

アメリカでは以前から行われているが我国では最近に行われ出した利益配当に︑配当を全部現金を以て支払わず

一部或は大部分を自已会社株式を以てするやり方がある︒所謂ストック・ディヴィデンド

る︒このストック・ディヴィデソドは︑現在寓業拡張中でその拡張は普通の増資や借入金をするほどに大規模でな

いが手許資金はそれを優に賄い得るほどには充分でない会社が︑配当資金として現金が社外に流出するのを防ぎ可

及的に資金を確保せんとする場合に︑行われるのが多い︒否︑これが最も普通である︒我国では此種の増資を一般

に小刻み増資と呼んでいる︒蓋し増資額が現在の資本額に比べて少額であると共に︑そのような増資は一回限りに

止まらず或る年間継続して行われるところを眺めたものであろう︒小刻み増資の意味が斯ぅだとすれば︑

少額で繰返して行われる増資は凡てその範疇に入るわけで︑現金配当の代わりに株式を交附する増資だけが小刻み

増資とは限らないわけである︒それは兎も角︑上の場合に於ける株式価値の推移は如何になるであろうか︒

0 0 0 0

万円︑六月末と十二月末決算の会社が七月二十五日株主総会を開き︑前期利益の処分と

して現金配当一株一円︵或は年四︒ハーセント︶︑株式配当

0

・一株︵従って資本金一

000

万円増加︶を決議し︑

(15)

株式発行による増資を八月一日と定めた︒七月末現在に於ける利益状態から算定される今期利益は二

000

万円

A

︶の増資拡張の場合と等しく︑建設中の設備は或る期間稼動せず利益は従来の設備の生むところ

である︒従って︑増資決定の時︑今七月末現在に於ける今期利益は六月七月の利益状態の半力年分利益と算定する

の外なく︑勿論資本の方は増加しているがゆえ︑それだけ適正配当力は低下することとなる︒上例に就いて計算せ

会社の企業実力が良好という階級で利益の適正分配率五

0

パーセントとすれば︑

2 0 0 0 7 5 P 3 X 0 . 5 x 2   1 0 0 0 0 7 5 P 3  

増資後は

1 1 0 . 1 8 5   2 0 0 0 7 J F 9 X 0 . 5 x 2   1 0 8 3 3 7 J F 9  

資本を一〇八︳︱‑三万円としたのは︑増資は八月一日からとされ︑六カ月のうち︱

1 0 0 0

1 0 0 0

0

万円であるので︑平均資本額としてはそのようになるからである︒勿論この適正配当力の低下から株式

の収益価値も変化する︒今株式の一般対価歩合を年九︒ハーセントとすれば︑増資前は

1 1 1 1 1 . l P J   5 0 P J X 0 . 2   0 . 0 9  

増資後は

1 1 0 . 2  

増資前は

1 1 1 0 2 . 8 P 3   5 0 P 3

O . 1 8 5     X

0 . 0 9  

併し増資後の株式価値としては拡張完成後の利益増加を考慮する収益期待価値を加味しなければならないところ

西

(16)

会社増資と株式価値の大いさ︵一︶

1 0 5 F + ( 1 0 . 5 │ 5 )   P : 1  

= 1 1 0 . 5 P : I  

決定により株式価値は である︒この収益期待価値は増資決定時としては増資前の利益率にかえるものとする外ないが︑その回復は早いとしてよい︒仮りに半力年後とすれば

1 1 0 . 2   ( 2 8 0 + 2 S N F ) X 0 . 5 x 2   1 1 0 0 0 7 5 P 3   1 1 l l l . 1 P 3   5 0 P 3 X 0 . 2   0 . 0 9   1 1 1 0 6 . 3 P 3   1 1 1 . 1 P 3   ( 1 + 0 . 0 4 5 )  

然も注意すべきは︑増資後の価値として収益価値と収益期待価値とを混合するその混合は︑両者の平均よりも収益

期待価値を多く取入れてよいことである︒蓋し増資による価値低下は寧ろ一時的とみられるからである︒右の場合

どれ位となるか一寸決め難いが︑収益価値一

0

ニ・八円︑収益期待価値一〇六・三円から一

0

五円位となしてよい

西

結局、増資前一――•一円であったものが―10•五円となるわけである。

ストック・ディヴィデンドにより︑この価値の株式の

0

・一株が五円にかえて与えられるのであるがゆえ︑増資

以上述べたところから結論されることは︑完成一年以内の小規模な拡張を行いつ4ある会社がその資金に充当せ

んとして利益配当を直接株式を以て交附する増資︵ストック0ディヴィデンド︶を行う場合︑そのストック・ディ

ヴィデンドが一株につきO•一株というが如き小なるときはその株式価値は増資決定により殆ど増減しないという

(17)

ければならないのである︒

ことである︒泄間にはストック・ディヴィデンドを充分理解しない人が少からず︑右のような租度の場合にも過大に評価し勝ちであるがーために市価は人気的に高まらんとするが││実質的な価値としては上来の如く殆ど動かないのである︒

C (

)

の利益配当を増資々金とする会社株式の場合として吾々の取上げて来たのは︑利益順調な会社が自ら拡張に

要する資金を確保すると共に一方株主に対しその資金を有効に活用してやるという場合であった︒それは現金配当

をなし改めて小幅増資をなす面倒さを省略するという性格のものであった︒併し利益配当を増資々金とする場合は︑

それだけに限らないのであり︑前者と違った亭情︑目的を以て行われる亭例もある︒即ち会計上︑帳簿上一応利益

勘定となっているが︑手許現金の少い会社が︑配当資金の銀行借入れが困難なため現金配当に代え株式を以て配当

一体︑会社が配当資金を手持ちしていないということは往々生ずるところで︑それを一時

銀行借入金等を以て賄うこととなっている︒今或る会社がそれを借入金で調達出来ないというのは︑金融が逼迫状

態にあることもあれ︑矢張り会社の方に何等かの事情が存するからに外ならぬ︒このような事情として多いのは︑

拡張建設をやって来たがそれが最初計画した以上に資金を食い︑ために経営が順調に進展していないということで

ある︒何れにしても斯かる会社がストック・ディヴィデンドをなすのは︑現金配当が出来ないので株式で我慢して

貰うという性格のもので︑先に挙げたストック・ディヴィデンドとは性格を異にする︒グラハム︑ドッドは先の通

常な定期的ストック・ディヴィデンド

Pe

ri

od

ic

St

oc

k  D

iv

id

en

ds

に対しこれを代用的ストック・ディヴィデン

Su

bs

ti

tu

ti

on

al

 S

to

ck

  Di

vi

de

nd

s

と呼んでいるが︑確

L

かに両者は外形は等しくても経営政策上別扱いとしな するという場合である︒

西

(18)

会社増資と株式価値の大いさ(‑)

延いて収益価値は

5 0 P 3 x 0 . 1 1 2 5  

1 1 6 2 . 5 F 9  

げてその定まり方を眺めよう︒

西

( 1 )  

B . 

G r a h a m   a n

d   D.L•Dodd,

S e c u r i t y   A n a l y s i s ,  

1 9 5 1 .  

p . 4 5 0

4 5 3 .

素より吾々としては此種の増資を行うた会社株式の価値の大いさを明かにするのが眼目であるので︑以下例を挙

0 0 0 0

万円︑六月末と十二月決算の会社が六月末締切利益一五

00

万円となったが︑手許現金

皆無に近いため七月二十五日株主総会で一株につき

0

・一株の株式配当を決定し︑株式発行による増資を九月一

日と定めた︒七月末現在に於ける利益状態から算定される今期利益は一五

00

この会社が増資を決定せぬ前の配当力は︑会社の企業実力普通の階級で利益の適正分配率四

0

パーセントとすれ

1 1 0 . 1 2   1 5 0 0 7 5 P 3

  x0.4x2 

1 0 0 0 0 7 5 P 3  

株式価値は︑株式一般対価歩合を年九︒ハーセントとして

1 1 6 6 . 6 P 3   5 0 P 3 X 0 . 1 2   0 . 0 9  

総会で決めた一株につき

0

・一株の株式配当は年二

0

バーセントに該当するので実力相応以上の配当となる︒そ

1 1 0 . 1 1 2 5  

れは兎も角︑増資後は資本金が増加するがゆえ配当力は減ずることとならざるを得ない︒

1 5

0 0

7 5

P 3

x 0

. 4

x 2

 

1 0

6 6

6 7

5 P

3  

(19)

注意すべきは︑通常のストック・ディヴィデソドでは近く拡張が完成しその稼働による利益回復が見込まれ︑増

資後の株式価値は之に対する期待価値が収益価値に混合したものであったのに対し︑代用的ストック・ディヴィデ

ソドでは斯かる収益期待価値が一般に織込めないことである︒加之︑代用的ストック・ディヴィデンドをなせば︑

会社の資本構成が悪化し企業実力は幾分低下せざるを得ないのである︒右の計算に於て増資後も企業実力普遥で利

益の適正分配率四

0

バーセントとしたが︑実は企業実力普通以下で適正分配率三

OI

ろである︒仮りに三五︒ハーセントとすれば

1 1 0 .

0 9 8 4

 

1 5 0 0 7 5 F 9 X 0 . 3 5 x 2   1 0 6 6 6 7 5 F 9  

株式価値は

1 1 5

. 呂

50

PJ

x0

.0

98

4 

0.

U)

 

斯くてこのストック・ディヴィデンド決定により株式価値は

7

p+

5 .

4 7

5 P 3 )

1 1 5 5

. 1 7 P

3

結局︑配当決定前六六・六円であった株式価値は五五・ニ円と可成減少するに至るのである︒

会社の中には︑先に行った拡張増資の際代表重役が将来の配当について確約的な言を述べたがため︑建設が順調

に運ばず資金澗渇したからとて配当をやめるわけにはゆかずと迷う場合もある︒而して一部の識者は︑斯かる場合︑

株主の経営者に対する信頼をつなぐ上からストック・ディヴィデンドを行うべきだと主張する︒併し吾人に云わし

むれば︑そのような場合にも無理なストック・ディヴィデンドはやらぬ方が寧ろ株主にとりても得策なのである︒

ストック・ディヴィデンドの決定により却って株式価値︑延いて価格は下落するからである︒勿論︑代 会社増資と株式価値の大いさ︵一︶

西

(20)

会社増賢と株式価値の大いさ(‑)

︵ 例

西

し︑証券価値論の範囲から出るので︑これ以上深入りしないこととする︒

用的ストック・ディヴィデソドをやるが得策かやらぬが有利かの最終的な結論は経営政策論︑企業財務政策論に属

利益が順調でない会社株式の配当力︑延いて其の収益価値の計算に就いては︑萩では既知とする︒今︑それら利

益の順調でない会社のうち利益が極めて僅少か赤字の会社の場合を取上げてみれば︑之等の会社の配当力は鞘々最低配当ー~我国の今日では年八パーセントーーであり、収益価値は額面価額以下である。斯くの如き会社の増資は

一般に困難であるのみならず︑国民経済からも資本を不有効に使うものとして手控えるべきだと云われる︒たゞそ

こに一寸考えてよいと思われるのは︑当該会社の赤字或は極少の利益が本来の営業そのものの不振に基づくという

よりも多額の借入金の利子による場合である︒

資本金一0000万円、現在半期一00万円の赤字の会社、但し借入金八000万円でこの利払年八•五

この会社株式には本来の収益価値はなく︑若し多額の配当準備金があれば年八︒^ーセソト︵我国現在の最低配当︶

の配当力とそれに基づく収益価値︑又配当準備金を余り持たないが大きい収益期待を持つならば最低配当の収益期

待価値があるのみである︒今︑会社が倍額増資をなし︑借入金を返済して利払半期三四

0

万円をなくせば︑赤字は

解消し逆に半期二四

0

万円の利益となる︒即ち会社の利益状態のよくなることは確かである︒けれどもこのように

改善されたとしても︑その配当力は会社の企業実力普通で適正分配率四

0

バーセントとして其のま4

o

調

(21)

難いとなるところである︒ 七バーセントに過ぎず︑巨額の稼立金があったとき漸く年八︒ハーセントの最低配当力となり︑株式は収益価値を持つとするもそれは株式対価歩合年九パーセントとして四四•四円で、依然額面以下を脱しない。結局、本来の営業による利益が赤字か僅少な会社はどうしても増資の可能性は薄いと云わねばならないこととなる︒併し時として会社は借入金返済その他資金の必要に迫まられ︑然も他に資金獲得の途がなく万難を排し増資を決行しなければならない状態に追いやられることがある︒素より斯かる場合尋常では困難であるので色々な策が採られる︒架空の利益を計上して無理に相当な配当を行うたり︑株式市場に於て所謂株価工作を行い株式価格を吊上げるが如きは其の著しいものである︒この増資強行の国民経済上の是非は株式価値論以外色々論じなければならないが︑価値論としてほ価値が正当に認識せられることが望まれ︑延いて正当な価値の認識が妨げられて成功するが如き増資には贅成し 右の如き利益順調でない会社の行う増資策として策為的なもののほか比較的穏当なものもないではない︒従来我

国に行われたのは増資株を優先株とする方法であり︑これを以て新に募集し︑或は借入金をこれに振替えるのであ る︒たゞ︑吾人は︑優先株の価値に就いては別に論ずることにしており︑増資が優先株を以て行われた場合も従来 の株式は普通の株式であるので増資によって其の価値が如何になるかを明かにしなければならないわけであるが︑

この価値はその優先株の如何によって規定されるところ大であるので︑これも薮には割愛することにし度いのであ る︒処で︑利益順調でない会社の行う増資の穏当なやり方としては︑今︱つ無額面株No

Pa

r  (

V a l u

e )   S

to

ck

採用がある︒無額面株制はアメリカなどでは早くから認められ色々応用せられているが︑我国ではその利用は皆無 に近い︒勿論︑この株式制度は今日我国でも認められているのであり︑それは応用して差支えないものであるのだ︒

会社増汽と株式価値の大いさ(‑)

西

1

0 

(22)

会社増資と株式価値の大いさ(‑)

西

凡そ株式会社に於ける擬制資本はその発足時の価額を定めるや否やによって額面制と無額面制とに分たれる︒こ

の種類は株式の大きい分類として証券の分類論で取上げるべきであったとも云われるが︑証券価値論の前提として

はそれほどの必要もないのである︒蓋し額面株︑無額面株の別は他の点︑就中企業財務上では大いなる意味を持つ

も︑株式価値のきまり方に於ては根本的な相違がないからである︒

それは兎も角︑額面株制と無額面株制の性質の相違であるが︑当初一般に採られていたのは何れの国に於ても額

面制であった︒株式の額面制は︑会社の出発時の出資々本が実体資本として活動し従って次の瞬間からその価額は

変化してゆくに拘らず︑擬制資本の方に出発時の出資々本額を残して置き︑実体資本の挙げた利益の割合︵利益率︶

の計算︑並びに其の利益の株式への分配の割合︵配当率︶の計算の基準となすやり方である︒が︑この額面株制の

何よりの狙いは会社資本の充実にある︒即ち会社株式の募集︑売出に額面価額以上たることが励行されるのであり︑

このことは今会社増資の際の増資新株の募集︑売出にも依然適用されるところとなる︒このため︑既に述べた如く︑

増資株式の価値が額面価額以下となるような会社にありてはそのま4では増資は出来ないとなるのである︒これに

対し無額面株は擬制資本に出発時の出資々本額を残さず︑たゞ数量的に総株式数のうち何株の出資たるかを定める

ものである︒元来︑無額面株制の根拠は︑会社の出資々本は実休資本として刻々にその大いさを変化しつ4

にその出発時の価額を何故持続しなければならないのか︑そのような謂わば過去の遺物に拘泥するのはナンセンス

であるという見解に基づく︒既に額面価額というものがない以上︑額面株制の場合にみた︑実体資本の挙げた利益

やその株式への分配を額面資本価額を基準として表わすようなことはあり得ず︑それらは一株当りで示されること

となるが︑更にその株式の募集︑売出は額面価額によって制約せられるが如きことなく︑自由な価格にてなし得る

(23)

5 0 P 3 X 0 . 0 9 1 1 4 . 5 P 3  

価歩合九︒ハーセントであるとすると︑配当力は ︵ 例

こととなるのである︒従って会社増資に当り増資新株を無額面株となすときは︑会社の実力に応じた価格で発行す

るもよく︑延いて業績の順調でない赤字の会社にても増資を遂行し得ることとなるのである︒

以上︑増資新株を無額面制とするときは業績順調でない会社も増資を遂行し得ることは納得されたと思うが︑尚︑

この無額面株による増資が授権資本制と密接な関係を持つことを一寸附言して置こう︒授権資本制とは︑会社総会

に於て取締役会に一定数量の枠内に於て増資株式発行の権限を予め与えて置く制度であることは︑既に前に要言し

た︒この制度の最も大きい眼目は取締役に株式市場の情勢をうまく捉えさし株式発行を有利に行わしめるところに

あり︑従って自由な価格にて売却することが認められつ4も成る可く有利に売却することが大切とされる無額面増

資株としては︑どうしても授権資本制に赴かざるを得ないのである︒

扱︑吾々の研究対象とするところは︑勿論増資により株式の収益価値の大いさは如何になるかであり︑今無額面

株を以て増資をなせば如何になるかでなければならない︒無額面増資株の発行に︑発行株式数をきめると共にその

売却価格をきめるやり方のほか︑売却価格をきめず随時市価で或る期間内に売却するやり方があり︑更に発行株式

数を予定せず一定の資金額の入手が出来るまで株式を発行してゆく︵勿論授権株式数の範囲内︶やり方がある︒今

第一のやり方をとるとして検討してみよう︒

00

万株︑収益価値一株五0円の会社があったとする︵額面株でも無額面株でもよい︶︒株式対

株式全体として

会社増資と株式価値の大いさ(‑)

西

(24)

会社増資と株式価値の大いさ︵一︶

1 4 6 5 7 5 P J x 0 . 4 1 1 5 8 6 7 5 P J  

1 1 2 5 7 5 F 9 + 3 4 0 7 5 F 9 1 1 1 4 6 5 7 5 F 9  

西

0万円だけ会社利益は増加となるがゆえ

4 0 0 0 7 J F 9 X 0 . 0 8 5 1 1 3 4 0 Z f E I  

八•五。^ーセントとして 会社の企業実力普通で︑利益の適正分配率四

o

ハーセントとすれば︑会社の純利益額は

1 1 1 1 2 5 7 J P 3   4 5 0 7 J P 3   0 . 4  

今︑この会社が窮屈な運転資金を増し或は返済の追まられている借入金返済に当てんとして︑無額面株で増資を

00

万株を発行するとする︒

この場合株式価値計算上キイとなるのはその増資株の売却価格である︒而してこの売却価格の決定には会社とし

て非常に苦心するところである︒今仮りに一株四

0

円とすれば︑会社手取資金は四

000

増資新株四

0

円での売却ということは六カしいとなる︒で︑今売却価格を三

0

円とすれば

た 田 X 1 0 0 0 0 0 0 1 1 4

X ) O O O P J

1 1 2 .

9 3 F 9  

Z f

士 踪 戸 1 1 3 2 . 5 5 F 9

即ち増資後一株の収益価値三ニ・五五円となる︒これでは増資株たる無額面株の価値も売却価格以下となるわけで

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