ベンネツト教授の増慣論と簿記
田中藤一郎
一
會計學に於ける評憤原則としての原慣主義劉時償主義の是非に付ては學説として︑英米會計學派
並に狽乙會計學派に於て盗に論孚せられ來うしも︑其の何れか學説上要當なりやに付ては未だ論決
を見ざる竜︑雨主義各々其観黙を異にするを以て永遠に解決し得ざる問題である︒惟ふに原債主義
の論撮は︑凡そ財産評慣の基礎は過去の客観的事實に求めざる可らざるものにして會計の堅實性を
奪重するの思想より來う︑時慣主義の主張する庭は其標準を過去の事實に認めず︑其評橿封象物が
現在の企業に幾許の慣値あるかを測定するを要するものにて︑過去の偵値夫自身は意味なき竜のと
なし時領主義は企業の経螢政策よb其論擦を進めんとなし︑物慣漫動の著しき冷日に於て漫然とし
て原償主義を謳歌するは會計の目的に副はざる思想なうとし︑米國に於ける℃98コ及びQ∩9く2ω︒ロ
ベyネット教授の墳加論と簿記五一七
商學討究第三巻(下)五H八
敷授は代表的なる時償論讃美者である︒
果して其何れが妻當なうやは俄に判断する能はざる竜︑鼓には時領主義の一表現たる所謂︑壇慣
論に付て若干の研究を試みんとするものである︒
厳に壇儂論とは︾℃嘆︒9註oコを指すものにして減儂即ちU︒})8︒舜凶8に封する語である︒減償
論に付ては會計學上重要なる問題の一として︑從來各種の方面よb研究せられ種々興味ある文献も
勘なしとせざるも︑其の反樹πる壇領論に付ては比較的研究少なく︑殊に其簿記的庭理方法として
の硯究は殆んど断片的に過ぎざるの械がある︒
惟ふに之は會計の保守思想に依るものにて︑減慣なる事實も一の推定に基づく要素多きも固定資
産の損失なる現象なるを以て︑損失の考慮は會計學上絶封必要條件なりと思惟せらるるも︑塘慣に
付ては實現せざる利盆の豫想として︑取ら諏狸の皮は算用す可らずとなし會計上一定説とせられ來
πのである︒從來貸借封照表上︑減償償却が記載され來りし事は何等疑ふ鱗地なきに不拘︑其反封
現象たる増償を記載せざるは︑果して正當なる見解によるものなうや否やを観察せんためには︑必
然的に貸借劃照表の目的を考へざる可らざるものにて︑貸借劉照表が一定時に於ける螢業の財政情
態を示し企業に幾許の利盆を得たるやを示す竜のと槻察するに於ては︑凡そ一定時に於て企業財産
■
の減慣償却を認めざる可らぎると同一理由によりて壇慣の事實も認むるを要し︑塘償論の實際が梢
竜すれば過大評憤となう會計の堅實性を破らんとするの傾あるを以て之を反劉するならば︑塘債の
事實が客観的に正當なる場合之を・認めざるは企業内部に所謂︑秘密積立金の存在する事となう會計
の正確性を破るものと云ふべきである︒謙て考ふるに實に從來の會計主義は堅實性を高調するの甚
だしきπめに︑正確性叉は眞實性は却て陰を潜めんとするの傾向あるは會計の本則に副はざるもの
と信ずるものである︒
・從來︑塘慣論に關し會計上如何に取扱はれ來うしかの代表的二三を紹介すればω︒kヨ︒=﹃≦巴8昌
(甘ξ轟一〇h︾80きけ書6k一繊︒︒.=泣薄)は會計學に於て固定資産の實現せざる壇償を考察す可らざ
る程︑定説はなきものとなし︑市場便格の礎動により該資産の領格を高からしむるは該製造工業に
於て資産の償値を塘加せしものにあらず︑何となれば固定資産たるの性質よう來うしものにて流動
資産にあらぎるを以て里ある︒實に製造工業に於ける資産償値は其生産力に存し其市領に存するも
のにあらず︑若し其設備が買却せらる\に於ては初めて利盆は實現するものにして︑未だ設備が企
業に保たれπる間は利盆は實現せざるものとなし恥債を認むるの不可を説く如しとなす竜他面に於
て壇慣々値を認めπる場合に未實現利盆積立金を利盆金よb設け︑壇償による減償償却準備金の壇
ぺyネット⁝教授の増加論と簿記玉一九
商學討究第三巻(下)五二〇
加金額が之と相等しくなうて︑固定資産魔棄の場合に︑資本的損失なからしむるを要すとなせしよ
り観察すれば︑尚ほ同氏は増償論を全然否定せんとするものにあらざる如く見ゆるものである︒
寓︒鼻σq︒日・受其著︑監査理論及實際に於て論するが如く︑多くの商人は建物及機械を評便するに
付き其取替慣格よう減債償却をなしπるものを基礎となし︑帳簿並に計算書に記載せんとするも特
別なる場合は固定資産の偵格の騰貴の事實を貸借封照表の脚註に記載するを以て足れbとなし︑帳
簿内の當該勘定の補正を計う借方に資産を壇慣せしめ︑貸方に利盆となすは會計實務の堅實性より
認む可らさるものとなし叉囚・︒・斤韓敷授は斯の如き利盆は資産を頁却するにあらぎれば實現せざる
を以て︑資産を正確に評慣をなすは適當なる策なるも配當として用ふ可きは普通の螢業利盆に限血
増便によるものは配當す可らずとなし︑=9島色自,敷授は塘領論の反劉せらる\は︑主として此によ
る利盆を計上するにあるものにして︑果して何時利盆は襲生するものなりや︑何時利盆は實現する
ものなうや︑何時利盆は配當して利用せらる可きかの問題は相複當難なるも︑固定資産の壇債を計
上するも其れに封し普通の會計に於ける損盆勘定にて庭理せざれば︑敢て反封の理由を見ずとなす
もの\如きである︒
併らば問題は固定資産に於て一面原偵主義を保持し︑貸借封照表上之を表示すると共に壇慣を特
殊なる形式によう之を表示し︑其差額は特殊なる利盆となし貸借劉照表之を掲載するを得ぱ最も理
想的なるを得べく寓︒導9敷授︑最近の登表による壇慣論は實に簿記的庭理方法として詳細を極め
且つ論理整然πる學説と信ずるを以て次に同敷授の説にもとづき若干の補論を試み︑同氏の與へ控
る籔字關係に基づき其記帳の獲化を見んとするものである︒
=
同氏の問題の内容を見るにシラキゥス會肚は千九百二十七年一月一日現在として買はれ其盈査の
内容は次の如しとする︒
ペンネット教授の増加論と簿記五一=
借 方
現 金20,000.00
諸 流 動 資 産180,000・oo 固 定 資 産3so,ooo.oo
流 動 負1債
固 定 負 債
減 債 償 却 準 備 金
株 金
繰 越 金
550,000・oo
固 定 資 産 の 評 債 (12/3「,Ig26) 再 生 産 原 償(新) 今 日迄 の 減 慣 償 却 堅 實 な る 便 絡
貸 方
i7S;・ 。・.・・
25,000・00
100,000・00 200,000・CO50,00000 550,000・oo
675,000・oo I30,000・oo
545,00()。oo
商學討究第三巻(下)b
五
千九百二+七年中に於ける取引次の如しとなし︑減債償却は考慮外に置き千九百二十七年十二月
三+一日現在に於ける補正せられカる試算表は次の如しとなす︒
動 資 産 定 資 産 品 原 慣 其他螢業費 融 費 動 負 債 定 負 債 償 却準備金
・ 金 越 金 勘 定 牧 入
借 方
50,000・oo II5,000・oo
350,000.oo I25,000。oo
20,000・00
4,000・oo
664,000.oo
固 定 資 産 の 評 債 (Ig27,12/3r) 再 生 産原 憤(新) 今 日迄 の減 債 償 却 堅 實 な る 慣 格
貸 方
30,000・oo 25,000.()O IOO,OOO・OO 200,000.OO
SO,OOO・()0 257,000・00
2,000.00
664,000.oo
7ク5,000・oo 248,000.oo 526,500・Oo
金債
流費寅慣上融
現諸固販販金流固減株繰責金
べyネット教授の糟加論と簿記五二三
Ig26,12/31帳 簿 修 正 仕 謬
固定 資産 塘債勘 定 未 實 現 噌 債 評 債 減 憤修 正 (註)
① 再 生産 慣 格(新) 個 定 資 産 原 償 穫i高 『修 正
325,000・oo
295,000。oo
30,000・oo
675,000・oo
350,000.oo 32S,ooo・oo
(2.堅 實 債 格545,00αoo
(固 定資 産原 便 一 減憤)ノ 翌 脇09900
(350,000・oo‑‑Ioo,ooo・oo)w ̲295・oqgコoo
獲 高
(3)再 生 産 慣 格 滅 債 、130,000・oo
取 得 原 憤 に よる減 贋
残 高
IOO,OOO.00
30,000・oo
前記の問題によう各種の記入をなすに付き減慣償却は毎年直線法によわ十%となし配當金は四分
となす︒ 商學討究第三巻(下)五二四
ぺyネツト激授の増加論と簿記五二五
A圖
シ ラ キ ウ ス 會1吐 貸 借 謝 照 表
千九百二十七年 一月一 日
資 産 ノ 部
金産計慣却
購 現 繁 謙
流固
350,000・Oo IOO,000・00
固定資産壇債
負 債及 資本
計金金債債合爵
負負債財越
動定負味株繰
流固正
200,000・00
50,000・oo
未 實 現 檜 債 評 償減慣修正
20,000.00 180,000.oo 200,000.OO
250,000・OO
450・ooo・oo
325,000・oo 325,000・()o
望 三・000・99
騨
175,000・oo 25,000.oo
200,000・00
250,000・00 450,000・00
295,000.00 30,000.oo
325,000・oo 77S,ooo・oo
9
覧
減 領 償 却 修 正 仕 繹 (Ig2ク,12/31) (1)
減 慣 償 却 費35,000.oo 減 債 償 却 準 備 金
(2)
未 實 現 増領 調 査 評 債 減 債 修 正
再 生 産 慣格Io%
取 得 原 慣lo%
残 高
(3)
未 實 現 壇 償 未 實 現増領 積 立金
32,500・oo
67,500・oo
35,00⊂)・oo
32,500・00
32,500・oo
35,000・oq
32,500・oo
32,500。oo
商學討究第三巻(下)五二六
ぺyネツト教授の増加論と簿記五二七
締̀切 仕 繹
(Ig27,12/31) (1)
費 上2S7,Qoo.oo
損 盆(総 損 盆)
(2)
損 盆(総 損 盆)・25,00。.oo
販 費 原 慣
(3)
損 盆(総 損 盆i)132,coo・oo 損 盆(純 螢 業 損 盆)
(4)
損 盆(純 螢 業 損 盆)55,000・oo 販 費 及 螢 業 費 (5)
損 盆(純 螢 業 損 盆)77,000・oo 損 盆(純 利 盆i) (6)
金 融 牧 入2,000・00 損 盆(純 利 盆)2,0・0・00
金 融 費
(7)
損 盆(純 利 盆)75,000.oo
損 盆(塘 領)
(8)
損 盆(J曾 債)32,500.oo 未 實 現 壇 慣 調 査 (9)
257,000・oo
125,000.00
132,000・oo
55,000.oo
ク7,Qoo・oo
4,000・oo
75,000・oo
32,500.oo
損 盆(壇 償) 未 分 割 利 盆i (10)
未 分 割 利 盆 未 彿 配 當 金 (11)
未 分 割 利 盆
繰 、越 金
42,500・oo
8,000。oo
34,soo・oo
42,500.oo
8,000.oo
34,500・oo
商學討究第三巻(下)五二入
べyネツト教授の樒加論と簿記五二九
販 費 原 慣(2) 残 高螢業 損 盆(3)
敗 賓 及 螢 業費(4) 減 債 償 却 純 利 盆(5)
金 融 費
塘 慣
未 實 現 壇 領(8) 未 分 割 利 盆(9)
未 彿 配當 金(10) 繰 越 金(11)
損 盆
総 125,000。00 132,000・oo 257,000・oo
螢 業 損 盆i
20,000・OO
35,000・oo 77,000・oo I32,000・QO
純 利'盆
4,000・oo
75,000・oo 79,000・oo
壇 慣
32,500・oo 42,500・oo 75,000・oo 未 分 割 利 盆i
8,000・oo
34,500・oo 42,500・oo
勘 定 損 盆
販
絡 損
損牧
業融
螢金 利
純 利
純
① 費
⑧.盆
⑥ ⑥ 盆 入 の 盆 ⑧
257,000・oo
257,000・oo
I32,000。oo
I32,000・oo
77,000・oo 2,000・00
クg,000.00
75,000・oo
75,000・oo
42,500・oo
42,500・oo
咽
)鰍表圖熱
値欝 部之産
oo oo 謬 ooα∞あ16
資 ‑ 金 講 ‑
産︑資
動現諸流
流 ∞αoo㌧2
∞oo鑑鵬躬
便 却
産産原償資資資産慣動定財減固 oo㎝ρ803 ooooαα
5000鍋鯨4 ∞α50弥
一4
㈱囎
響叢
oo}αユ﹁
肪83﹁
一 oooo㎜鋤
鵠8
oo oo α α
oo oo 謁 賜 oo α oo
臨oo α
50428
本㎝鯉
資・︒蘇及ゆ謬
債鴉茜
負 館 鰍 難 購 金 漏
動諸罐定鰭味嚢霧流流固正 商學討究第三雀(下)五三〇
1
ベンネット教授の増加論と簿記
347,500・oo 残 高 ・未 實 現 」曾償32,500・oo
380,000・oo
末 實 現 壇 憤 ※311・500・oo
評 慣 減 慣 修 正OII3,500・oo 末 實 現 壇 便 積 立 金32,500・oo
457,soo・oo 837,500.oo
(備 考)
※(775,00000‑248,500100)一(350,000.oo‑loo.㎝.oo‑
35,000ρo)=311,500.oo・
○(248,500.oo‑T◎o,ooo.oo‑‑35,000.oo)=1】 【3,500.oo
五
● 脚一 轟
販 費
販 責 原
総 利 盆
螢 業 費 用
販 責 及 螢 業 費20,000・00 固 定 資 産 減 債35,000・oo 替 業 純 利 盆
金 融 費4,000.oo
金 融 牧 入 一2,000.00
純 利 猛i
固 定 資 産 末 實 現 塘 債
B圏
シ ラ キ ウ ス 會 万辻(12/31,1927)
257,000・oo 便125・ooo・oo
132,000.oo
55,000・oo 77,000。oo
2,000.00
75,000・oo 32,500・oo
商學討究第三巻(下)
42,500・00
一
五三
o
一
斯の如くじ弓︒暮典漱授は塘償説を承認する竜通説に見るが如く︑貸借封照表の脚註として掲載す
るを主張せず︑此に關連せる取引を計算記帳し勘定の愛化を表示し︑之を貸借劉照表に掲げ財産塘
慣となすを認め乍ら常に原債主義に即し取得慣格を以て明瞭に表示するものにして︑過去の事實を
奪重すると共に現在の領格を滲酌するものなる故︑其精紳に於て純然たる時償主義に賛するものに
あらざるを以て︑敢て會計學上の革命を企つるものにあらずして︑最も穏當にして且つ合理的なる
簿記的庭理怯に厨し檜慣に關する諸勘定は別に一團となし︑之を示し其理解に易からしめんとする
ものである︒
斯くて從來の所謂︑櫓債説簿記的庭理法の上に疑ひ竜なく學説上の一新機軸を開きしものと云ふ
べきである︒(昭和三年八月二+H了)
参 考 書 及 論 交
頃 8 ロ o 陣 開 日 器 讐 巨 〇 三 〇 州 ﹀ ℃ ℃ 器 9 聾 二 8 q 8 ヨ 巴 o ( > 8 0 ぎ 冨 5 ⇔ ざ 一 き ρ ︻ O 臆 鉾
国 & 傷 鮪 乏 ユ ひq ゴ 帥 " ぎ 8 モ δ 帥節 ユ o 昌 o h ︾ 0 8 ≡ 誹 幹
ベ ン ネ ツ ト 教 授 の 増 加 論 と 簿 記
五三三■
亀■
'
商 .學 討 究 第 三 巻 ( 下 ) ﹁ ︑
囚 o ψ 冨 繋 b o 8 目 氏 轟 ・ '
寓 〇 三 σq 9 器 還 輔 ︾ 包 三 轟
︑■ 五三廻,
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