1 はじめに
学習指導要領が改訂され,従来「保健学習」と呼ばれていた教科での学習と,それ以外 の場で行われる「保健指導」を一括して「保健教育」と呼ぶようになった。これまでも「保 健教育」という用語は使われてきたが,そこでは「健康処方」や「健康習慣の形成」といっ た健康行動を促すためのしつけ的な指導に陥りがちな傾向があった1)。特に,小学校段階 での保健教育では,伝統的な保健教育観(生活習慣形成意識)が根強い。
このような状況に対し,からだの科学を踏まえ,なぜ生活習慣が身体にとって大事なの かを学ばせ,気づかせ,「なるほど」と納得の伴った意識に導かない限り,主体的で生涯 に生きる知恵にはならないと考え,
1970
年代より「からだの学習」として実践が積み重 ねられ,養護教諭らを中心に一定の広がりが見られた2)。しかし,近年の学力重視とそれ に呼応する形で広がりを見せている学習と生活規律の標準化の動向により,子どもたちの 健康に関わる生活行動の指導に再びしつけ的で習慣形成に主眼を置いた指導が広がってい る。命の問題も徳育的な指導の傾向が強く,実体のある生命観・からだ観を深める学習過 程づくりは十分ではない。他方,指導要領改訂で提起されているアクティブラーニングは「主体的,対話的で深い 学び」と解釈されているように,子どもたちが「能動的に学びに向かう」指導過程づくり に向いている。これを保健教育において授業像を描くと,子どもたち自身が,自分たちの 生活や健康の課題を見出し,自分たちの生活経験や知識と照らし合わせながら納得の世界 を追求し,からだ観,健康観等を深めていく学びの充実へとつながっていく。
このような動向を踏まえ,子どもたちが抱える「いのちと健康の課題」を出発点にしな がら,アクティブラーニングをいかに内実の伴った学びへと深めていくかという視点を もって,ここ数年前より「からだの学習」の見直しと新たな実践の創造に向けた取り組み を続けてきた。そこで大切にしていることは第一に,何を教材にすることで子どもたちが 主体的な問いをもち,深い学びをしていくのかということである。より具体的には,図1 のように「からだ」を軸にして「性・生命」に結ぶ教材,「成長・発達」に結ぶ教材,「こ ころ(心)」に結ぶ教材,「生活(食・動・眠等)・生きる」に結ぶ教材を,学年毎に数教 材ずつ編成しつつ,その具体化を図っている3)。第二に,「対話的」ということであるが,
子ども同士に対話を促す前に,個々の子どもに「過去の生活経験」や「自身からだの事実」
アクティブラーニングを深める 保健の授業構造の実践的検討
-小学校での保健の授業分析から
Practical examination of health class structure to deepen active learning
―From an Analysis of Health Education in Elementary school
キーワード:アクティブラーニング,生活経験,からだの科学,対話鎌 田 克 信
と対話させ,疑問や気づきを誘発しながら,仲 間同士で考えや知見を交流させることを重視し て授業を展開することである。第三に
,
そうし た対話をしっかり踏まえた上で科学知と出会わ せ,納得の世界に引き入れることで「深い学び」を生み出していくことである。
本研究では,前述の試案を基に小学校で授業 を行い,アクティブラーニングを深める保健の 授業構造について検討し,子どもたちが自分の からだと健康の主体として育つ授業の在り方を 探っていく。その過程で,試案の再検討も並行 して行っていく。本稿では,「からだ」を軸に
して「生活・生きる」に結ぶ学びとして「からだと生活(排便)」「からだとかぜ(発熱)」 について教材化した二つの授業を基に,保健の授業におけるアクティブラーニングを深め る授業構造について考察する。
2 実践の概要
(1) 「うんちはからだからのおたより(からだと生活-排便)」
【授業の概要】
小学校3年生 11名
授業者 T1:鎌田(以後「GT:ゲストチィーチャー」と表記)
T2:養護教諭(以後「YT」と表記)
*以後「C:児童」「CC:複数の児童」と表記
私たち人間(生き物)は,食べることと排泄することを繰り返していて,それなしでは 生きていくことができない。排便は,「どうして日によってうんちが違うのだろう」「食べ たものはからだの中でどのようにしてうんちになっていくのだろう」など,からだとの生 活のあり方を問い直す魅力ある教材でもある。日によってにおいや色,形,硬さや量がち がうということは,食や生活の仕方,その日の体調などが関わっている証拠でもある。そ の意味で,「うんち」は「からだからのおたより(メッセージ)」と捉えることができる。
しかし他方で大便は,つい先ほどまで自分のからだの内部にあった物であるのに(正確 には消化管内は体外だが),からだから出てしまうと「臭くて汚い排泄物」と見られがち である。子どもたちに「うんち」のでき方について自身の体験と重ね合わせながら学ばせ ることで,関心をもって「うんち」やからだを見つめる目(からだ観)を育てたいと考え た。
【子どもの実態】
保健室を訪れる子どもたちの主訴で多いものの一つに腹痛がある。「YT:うんちはし たかな」「C:そういう痛さじゃないよ。」「YT:もう一度トイレで試してごらん。」な どのやり取りの後にトイレに行かせると排便があり「C:なおりました」と戻ってくるこ とも少なくないと聞く。生活リズムの乱れで,便秘がちな子どもも多いが,それ以上に排 便に無関心だったり,面倒がったりする子が多いのではないだろうか。自分のからだであ るのに,最後の排便はいつで,どのような便だったか分からない子どもも少なくない。
図
1
からだの学習試案(数見)このような子どもたちに接すると,自分のからだの中で起こっていることについて関心 をもたせ,人任せな健康管理ではなく,自分の生活とからだの調子を結びつけながら日常 を過ごせるような力を育てたいという願いが湧き上がってくる。
そこで,そのような課題をもつ中学年の子どもたちに対して,養護教諭と連携し,次の ようなねらいと願いをもって授業実践に取り組んだ。
【授業のねらい】
① 体調や生活の仕方と関わって大便の状態が変わることを,生活経験と結びつけて理 解する。
② 食べたものは消化管で養分や水分を吸収され,大便になることを理解し,その働き を助けるために自分たちにできることを考える。
<導入段階>
「生きるためにはどんなことが必要か」問い,空気や食物を取り入れるだけでなく,吐 きだしたり排泄したりすることが大切であることに気づかせる。その上で「うんち」に目 を向けさせ,そのでき方や役目について考える糸口にする。
<展開1>
どのようなときにどのような「うんち」が出たか,どんな感じだったかという体験を掘 り起こし,「うんち」が生活の仕方や体調と関連があることに気づかせる。その際,「兎糞 状便」,「げり」,「バナナ状便」の順で体験を掘り起こしていく。「兎糞状便」は,便意を 我慢したときや食生活が偏っていたときに出ることが多いこと,「げり」は,体調が悪い ときや水分や冷たいものを摂り過ぎたときに出ることが多いこと,からだの調子がよいと
「バナナ状便」が出ることが多いことを体験と結びつけながら整理していく。
<展開2>
食べ物が消化管を通る中で「うんち」がつくられていくことを,からだの仕組みと共に 学ばせる。はじめに,子どもたちに「食べ物の旅の通り道」を予想させ,関心を高めた上 で,掲示教具を使いながら消化管をたどっていく。小腸は,養分を吸収するために長いこ と,続く大腸は水分を吸収していることをつかませ,「兎糞状便」や「げり」になる理由 を理解できるようにする。
<まとめの段階>
3種類の大便のでき方について整理する。①「兎糞状便」は便意を我慢したり,野菜の 不足した食生活だったりすると,水分や大便の材料が不足してできること,②「げり」は,
ウィルスや細菌などをできるだけ早く排出しようとする防衛反応であること。また,冷た いものが急に入ってきても,胃腸の負担になり,すぐに排出されること,③からだの調子 がよく,生活リズムの整った生活していると消化管が本来の働きをし「バナナ状便」にな ることに気づかせる。
このように,生活とからだの関りと結びながら,「うんちはからだの様子を知らせてく れる大切なおたより(メッセージ)」として捉えられる目を育てたいと考えた。
【学習過程の記録】
① 導入(「生きていく」ために必要な こと)
GT:みんな,今とても元気だよね。生 きていくために最低しなければならな いこと,必要なことってなに?
CC:栄養!食べる!野菜!運動する!
水分!
C:息をすること!
GT:息を吸ったり,吐いたりしないと 生きていけないね。息を吸ってみよう か・・・吐いてみようか・・・今度は 息を止めてみるよ・・・苦しいよね,
もういいよ。(C
:
ぷは~)「食べる」ことも大切だね。「呼吸」することと「食 べる」ことだけでいいかな?
C:トイレ。
GT:そうだね,出さなければいけない ね。いっぱい食べたままだったらどう なるかな?
C:おなかにいっぱいたまって,病気に なる。
C:うんちがたまる・・・
GT:うんちを出すよね。今日は 「 うん ち 」 のことを考えていきますよ。
② 授業の展開過程-1
(どんなときに,どんなうんちが出 たか)
GT:うんちって,何かな?どういうも のなの?
CC:茶色くて,臭い。食べたカス。
C:からだの調子によってにおいが違う。
C:ときどき粒々が入っているときがあ る。
GT:みんな,うんちが出なくて困った ことある?
C:出そうと思っても,あんまり出な かった。
C:う~んってする(きばった表情で)。 C:出そうとするとピリピリする。
C:出たとき,血が少しついてた。
C:ズボン上げた後,おしりがかゆく なった。
GT:どんな形だったかな?
CC:丸い!小さい!コロコロしてた。
GT:名前を付けるとしたら何うんちか な?
C:うんごろう!
CC:うんごろう!アハハ
GT:固くて小さいうんごろう,どんな とき出たかな?
C:おなかが痛くて,具合が悪いとき。
C:我慢していたとき。
GT:どんなときに我慢していたの?
C:授業中にうんちしたいとき!
G T: 我 慢 し て い る と,「 う ん ち し た い」って気持ちはどうなるかな?
C:なくなる
CC:そうそう,あるある!
C:でも,後からまたしたくなる。
GT:そんなことをしているうちに・・・。
CC:固くなる。固まる。便秘。
GT:固くなっちゃうんだ。なぜなんだ ろうね。
C:すぐにうんちをしたら柔らかいけ ど,そのまま出さなかったら,紙粘土 と同じで固くなっちゃう。うんちもそ んなふうになっちゃう。
GT:最初「したいな」って思ったとき にうんちすれば,するするって出るけ れど,そのままにしておくと紙粘土み たいに固くなっちゃうんだ。おもしろ いね。その辺りは,後でまた考えるか ら覚えておいてね。うんごろうは,出 なくて困るうんちだね。反対に,出て きて困るうんちは・・・?
C:げりうんち!
GT:げりをしたことがある人?(全員 挙手)
C:病気のときに出てくる。
C:すごくおなかが痛かった。
C:胃腸炎,おなかが痛いやつ。
C:ぐにゅぐにゅ鳴る。
CC:たまに鳴る。鳴る,鳴る!
C:食べ物を食べないで水いっぱい飲ん だとき。
C:アイス食べたとき。冷たいの・・・。
C:ん~,なんていうのかな。吐いたと き。
CC:あ~,ある,ある!上からも下か らも。
C:あと,食べた後にすぐに運動すると なる!
GT:なるほどね。書ききれないね。げ りをしたとき,どんな気持ちだった?
C:げりをして,1回止まって出なく なってもまだお腹が痛い。何回も続い た。
C:ちょっと出て,あ~もういいかなっ て思っても,また出そうになる。
GT:何回も行きたい,またうんちした いって気持ちになるね。げりは,どん なうんちだったの?
C:ぐにゃぐにゃ,べちょべちょ,水み たい!
GT:じゃあ,みんな,この間うんち日 記を付けたよね。そのとき出したうん ちは?
C:バナナみたいなうんち。
C:健康なうんち。
C:バナナうんちは,いっぱい食べた後 に出る。
GT:しっかり食べると出るんだね。こ ういううんちしたときって,どんな気 持ちかな?
C:すっきりする!
C:はぁ~(幸せな表情)って感じ!
C:体の調子がいいとき!運動している とき!
C:あと,うんちを我慢しないでしたと き。
GT:うんごろうもげりもバナナうんち も,どうやらからだの調子と関係があ るみたいだね。
③ 授業の展開過程-2
(食べ物はどんな旅をしてうんちに なるのか)
GT:食べ物は口から食べてどこから出 てくるかな?
C:おしりのあな
GT:口から,おしりの穴まで,どんな ところを通ってくるのかな?予想して 描いてみよう。
*子どもたちは,迷路のような消化管を 描いていった。共通点は,胃があるこ と,1本道であること,腹部でうねっ ていることであった。
GT:食べたリンゴは,まず,どこに行 くの?
(黒板に消化器図を貼って問いながら 展開する)
C:口の中。
CC:食べて,かんで,細かくなる。
GT:いっぱいかむと,細かくなります ね。細かくなった食べ物はどこに行く のかな?
C:のどを通って,胃袋に行く。
GT:ここからはYT先生にバトンタッ チして詳しく学びましょう。
YT:胃ってどこにあるの?押さえて ごらん。胃は,胸の真ん中を下に触っ ていくとペコっと引っ込むところが あるでしょ。
C:あった,あった!
YT:食べたものはすぐに胃に行くのか な?
C:口から胃に通るようにつながってい る。
YT:口から胃までまっすぐな道があり ます。食べ物が通る道なので・・・
C:「しょくどう」!
YT:そう,食道と言います。冷たいも のを飲んだとき,すぅ~としたことは ないかな?
CC:あ~!ある!ある!
C:飲んだら,喉こからここまでが冷た
くなる!
C:温かいものでもなる。
YT:食道を通って,食べ物をためてお く胃に行きます。その間に,胃液がか み砕いたものをドロドロにします。だ れかが「消化」と話していたね。
GT:まだ,おしりの穴まで遠いね。そ の次はどこに行くのかな?
C:曲がっている通り道がある。
C:それ,腸っていうんだよ。小腸と大 腸・・。
YT:長い管をかいている友達がたくさ んいたね。みんなすごいね。その,通 り道が,右に行ったり左に行ったり,
上に行ったり下に行ったり・・・。
C:もう迷路じゃん!絶対に迷って帰れ ない。
YT:これを小腸と言います。この長い 道でみんなのからだを元気にするため に栄養を吸収します。
C:ジェットコースターみたい。
GT:小腸は,どれくらいの長さだと思 う?
CC:30㎝,50㎝,2m50㎝!
GT:では,YT先生のおなかから小腸 をぴ~っと出したいと思います。
C:こわい,こわい!
YT:(内臓のエプロンシアターを身に 付けて)怖くないよ。手伝ってくれ る? ゆ っ く り ゆ っ く り 小 腸 を 引 っ 張ってよ。
CC:やばい,やばい!う~わ!5m?
6m!
C:すごい,教室の後ろまで行った!
YT:子どもでだいたい5m,先生た ちのような大人になるともっと長い 7mなんだって。
GT:ちょうど黒板から後ろの壁くらい までだよ。
CC:え~!すごく長い。
GT:こういう長い道を通りながら,栄 養を吸い取っているんだね。どうして 長いのかな?
C:長い方が,栄養を吸い取れる。
YT:でも,まだドロドロなの。
C:固くするためには・・・?
YT:そう,固くするためにはこの続き があります。この続きの道の名前は…?
C:大腸!
YT:すごい!さっき,まだドロドロな ものが,まず上に上がって横に行って 下に下がります。
C:上に行くの,大変そう
YT:大変そうだね。このときに,さっ き紙粘土がカチカチになるって言って くれた友達がいたけど,おなかの中で 水分を少しずつ吸い取って,うんちに なります。うんちができたら,いつで もうんちをするわけじゃないよ。でき たうんちをためる直腸というところに 行きます。うんちがたまると,「そろそ ろうんちがたまったよ~」って脳に連 絡がいきます。これで終わりでいい?
C:出さなきゃいけないんだよね~
YT:脳が「うんちがしたい!」って 感じ取ってうんちをします。これが うんちの旅です。
CC:すげ~!
GT:では,さっき気にしていた友達が いたけれど,どうやって下から上げて いるのかな?
C:勢い!ジェットコースター!
GT:なるほど,おもしろい!では,確 かめてみるよ。これ(伸縮包帯)は白 いけれど,大腸だと思ってください。
この中に,丸いものを入れてあります。
これを3人で,反対側の端まで送って ください。3個ずつ入っているからね。
*3人1組のグループでの活動 GT:どうやって送り出したかな?
C:デコピンをしたり,絞り出したりし た。
C:もみもみしたり,のばしたりしまし た。
GT:みんながやってくれたように,大 腸は自分の力で押し出しているの。そ れを,「蠕動運動」と言います。腸が 自分で動いてどんどんどんどん送り出 しているんです。
④ まとめ(うんちが伝えていること)
GT:どうして「うんごろう」になるの かな?
C:大腸が水分を吸い取り過ぎたから!
C:うんちタンクでうんちが重なって固 くなる。
C:うんちを我慢し過ぎて,水分がとら れ過ぎて固くなる。
YT:大腸にうんちが長くいすぎると,
水分が取られて固くなります。うんち を我慢していると,「うんちがたまっ たよ」というサインの強さが変わって きます。はじめは,大きなサインが出 たね。我慢していると,サインが少し 小さくなります。それでも我慢をして いると,また小さくなります。これを 繰り返し,いつの間にか「うんちした いよ」ってサインがなかなか来なく なって,うんちがたまったままになっ て「うんごろう」になっちゃうね。
GT:なかなかうんちが出ないとき,お 家の人はどんなことをしてくれたかな?
C:おなかをさすったり,もみもみした りしてくれた。
GT:どの辺をさすってくれたかな?
CC:胃。小腸。大腸!
GT:どんな食べ物を食べさせてくれた かな?
C:ヨーグルト。野菜。果物。
YT:うんごろうは,「うんちが出にく いよ」ってサインです。うんちを我慢 していると,大腸の中にうんちが留 まって水分がなくなって固くなってい きます。野菜が少なくて蠕動運動しな いと固くなってしまいます。だから,
水やお茶を飲むのも効果があります。
寝不足でからだが疲れていたり,心配 事があったり,運動不足だったりする と大腸がうまく動かなくて,カチカチ になって便秘になってしまいます。
GT:次は,げりについて考えよう。ど うしてげりになるのかな?
C:おなかが冷えるとげりになる。
C:飲み過ぎたり食べ過ぎたりするとげ りになる。
C:水を吸う力がなくなって,そのまま いっちゃう。
YT:飲み過ぎると,大腸で水分を吸収 するのが間に合わなくなるね。
YT:ところで下痢ウンチだけど,小腸 や大腸では,「からだの中に悪いもの が入ってきた」ってわかると,「早く 出してしまおう」という反応が起きる んです。からだを守ろうとしてくれる んです。下痢うんちは嫌だけど,大腸 が働いて水分を吸収しないで体を守っ てくれているうんちなんです。
GT:食べ過ぎたときも,栄養分を吸収 しきれなくて困って出しているんだね。
下痢を防ぐにはどうしたらいいのかな。
C:食べ過ぎないようにする。
C:冷たいものを食べたり飲んだりしな い。
C:保健室で湯たんぽで温めてもらっ た!
GT:そうだね。お腹を冷やしてなった ときは,体を温めると小腸や大腸は喜 ぶよね。
YT:もう一つ知ってもらいたいうんち があります。「ひょろひょろうんち」
です。
CC:ある~!
YT:食べた量が少なかったり,心に元 気が出ないときに出るうんちです。心 配ごとがあるとからだが縮こまるで しょ。小腸や大腸も一緒だよ。そんな ときは,よくかんでたっぷり食べましょ う。野菜や海藻は,うんちをボリュー ムアップしてくれます。気持ちが弱っ ているときは,温かいお風呂に入って よく眠るのがいいね。また頑張ってい るときは,しっかりからだを休めましょ う。バナナうんちは?・・・食事,運動,
睡眠のバランスがばっちりで元気な証 拠ですね。胃や小腸,大腸もしっかり 働いている証拠だね。今日のうんちの 勉強はこれでおわりです。
⑤ 児童の感想
うんちを出すことは生きるためにひつ よう。どこを通ってくるかやどうすれば バナナうんちになるかが分かりました。
それに,がまんしないことが大切だとよ く分かりました。わたしは,これからが まんしないように,べんきょうしたこと をいかしたいです。うんちは,わたした ちにとってだいじなんだなと思いまし た。
ぼくは,よそうとものすごくちがいま した。うんちはだいじなものだと思いま した。いつもうんちをがまんしていたの で,ものすごくわかりました。自分のう
んちの形に気をつけたいです。
前は,うんちはきたないと思ってたけ ど,うんちをしないとけんこうじゃなく なるから,ちゃんとがまんしないですぐ うんちをする。おなかがいたいときは,
どういううんちか見ることが大切だとわ かりました。直ちょうも食べ物が通って,
上,下,右,左へもとおってからだもが んばっていることが分かりました。げり は,悪いきんを出すのですごいと思いま した。・・・
⑥ 授業についての養護教諭の振り返り 「うんごろう」というネーミングは,
子どもたちの生活経験と実感からきたも のであると感じた。また,げりを「困っ たもの」とだけ捉えていた子どもたちに とって,不安や疑問を解消することがで きた。授業をすることで,新たな疑問を 抱いたようなので,それに応えながら自 分のからだへの関心を高めていきたい。
授業後も,「今日はバナナうんちだっ たよ。からだばっちり」などと話す子ど もの姿が見られた。事前に実施した「う んち記録(3日分)」は,これまで意識 して見たことがなかった子どもたちに とって有効だった。授業では,これまで の経験を丁寧に聞き,子ども同士で共有 することで,関心と納得が高まっていっ た。「からだの中に,何か長い管がある」
という漠然としたイメージが,臓器の働 きや仕組みを知り,自分のからだはこう であると納得ある理解になった。
(2) 「かぜをひくとどうして熱が出るの」 小学校4年生
【授業の概要】
小学校4年生 36名
授業者 T1:鎌田(GT) T2:養護教諭(YT)
誰もがかかるかぜやインフルエンザだが,「なぜ発熱するのか」,「発熱はからだにとっ て有害なのか,必要なことなのか」考えることはほとんどない。この意味で,医者任せ・
薬任せで,なりゆき任せであることが多いと言える。このような子どもたちの症状観,か らだ観に働きかけ,生活経験と結び付けながら,より豊かにからだを捉え返せるような授 業を展開することが大切であると考える。同時に,その学びはからだのしくみやすばらし さを実感的に学び,科学的な知識と結び付けながら納得しながら自分たちの知恵として獲 得していく過程でもある。
授業では,私たちのからだは,病原体の侵入に対して,大きく以下の3つの仕組みによっ て守られていることに生活経験を手掛かりに気づかせたいと考えた。また,症状はからだ からのサインであり,からだの自然治癒力を応援しうる知恵を獲得させたいと考えた。
① 病原体をからだに入れない(皮膚によるバリアー,鼻水やせき,たん等による排出 システムによるバリアー)
② 病原体を増やさない(発熱によりウィルスの増殖を抑え込む)
③ 病原体を倒す(白血球が産生した抗体により病原体を倒す)
【子どもの実態】
かぜをひいて体調を崩し,保健室に来室しても,自分でどのように対処したらよいか戸 惑う子どもたちが多い。家族や養護教諭に看病してもらうことを求めはしても,どのよう にすればからだの治癒力を生かすことができるかわからずにいる。また,咳や鼻水,発熱 は「かぜ」によって引き起こされる症状であることを知ってはいても,ウィルスをからだ から排出しようとする防衛反応であることに気づいている子どももほとんどいない。その ため,症状が出ても,それをからだからのサインとして受け止めて自分にできる行動をと ることにつながらないことが多い。
前年度,この学級では,「生きている証拠探し」の授業を実施した。2人1組になって 1人が生きている気配を消し,そのからだを見たり,触れたり,働きかけたりしながら「生 きている証拠(バイタルサイン)」を互いに探り合う授業である。その中で,多く子どもが,
相手のからだに触れたり,頬を当てたりしながら「からだが温かい」ことに実感的に気づ いていた。
このような実態と学習経験を踏まえ,養護教諭と連携し,次のようなねらいと願いをもっ て授業実践に取り組んだ。
【授業のねらい】
① 発熱の意味について,かぜやインフルエンザに罹ったときや看病をしてもらった経 験と結び付けて考え,その巧みな仕組みについて理解する。
② 病気の症状は病気と戦おうとしているからだのサインであり,自然治癒力を生かせ るように自分にできる行動をとることが大切であることに気づくことができる。
<導入段階>
「かぜの初期症状とその意味」を問い,それらが,病原体をからだに入れないようにす る働きがあることに気づかせる。
<展開1>
病原体が体内に入って増えるとからだが発熱する理由を,自身が発熱したときの感覚や 看病をしてもらった経験を手がかりに考えさせる。発熱はからだにとって有害なのか,必 要なことなのか子どもたちの考えをその根拠と共に引き出し,考え合うことを大切にする。
<展開2>
免疫の働きとその仕組みについて学び,発熱で病原体の増殖を抑えている間に抗体を産 生し,病原体を排除する仕組み(自然治癒力)が備わっていることを教具を用いながら伝 え,納得のある理解へつないでいく。
<まとめの段階>
かぜの諸症状は病原体と戦う仕組みであると同時にからだからのサインでもあることを 伝え,それに気づいたらからだを温めたり,休めたり,食事に気を配ったりすることで自 然治癒力を支援しうる生活を送ることが大切であることに気づかせる。
【学習過程の記録】
① 導入(かぜの諸症状とその意味)
GT:去年,みんなと「生きている証拠」
探しをしました。友達に触ったり,見 たり,聴診器を当てたりしたね。たく さんの友達が,生きている証拠として 体温があることを見つけました。どん なときに,体温を測るかな?
C:プールに入る前とか具合が悪いと き。
C:くらくらして,頭が痛いとき。
CC:かぜをひいたとき。
GT:特に,かぜをひいたときに熱を 測ったという人が多かったね。かぜの ひきはじめって,どんな感じかな?
C:咳やくしゃみ,鼻水が出る。たんも 出る。
C:鼻声のとき。
GT:どうして鼻声になるの?
C:鼻水がつまるから。
GT:いつもと違っていろんなことがか らだに起きると,かぜたをひいたなと 感じるようだね。今日は,この中で,
はじめに鼻水について考えよう。かぜ をひくと,どうして鼻水が出るのかな?
C:悪い菌を,鼻水と一緒に出してくれ る。
C:かぜの菌を出すために必要。
GT:鼻水が出ると,大変でしょ?本当 に出してくれているのかな。
YT:この絵を見てください。かぜの菌 が,からだに入ろうとするね。おでこ から?入れ・・・
C:ない。
YT:では,肩から,入れ・・・
C:ない。
GT:どうして入れないの?
C:穴がないし,皮膚がある。
YT:ということは,皮膚が守ってくれ ている?
CC:そうか!
YT:皮膚は,みなさんが言ってくれた ように,敵を入れないように,守って くれているね。では,どこから入れば いいのかな。
C
:
口と鼻!CC:穴がある!
GT:口と鼻はどんな働きをしているか な?
C:息を吸ったり,吐いたりしている GT:私たちは呼吸をしなければ生きて
いけません。だから,空気と一緒に入っ てしまえば,ウィルスも入りやすいよ ね。では,鼻から入ろうとしよう。鼻 の入口に,何かない?
CC:鼻毛!鼻毛!
GT:鼻毛は,なぜあるの?
C:菌が鼻毛に触れると,鼻水が出てく る。
GT:奥に行こうとすると,鼻水が出て きて,一緒に菌が出されるということ かな。ウィルスはとても小さいので,
鼻毛をすり抜けて鼻の奥に入ってくる ウィルスもあります。鼻の奥は,どう なっているのかな?
C:粘膜がある。
GT:難しいことを知っているね。ここ でも,やっぱり,鼻水と同じようなも のが出て,ここでつかまえて鼻水と一 緒に出してしまう。ということは,鼻 水は,かぜのウィルスを出しているん だね。せきやくしゃみはどうかな
?
C:せきは,口から入ったときに飛ばす!
C:くしゃみも,飛ばす!YT:そうだね,ウィルスが入ろうとし てもせきやくしゃみで吹き飛ばしてい るんだね。それでも口の中に入ってく ると,どうする
?
C:よだれ
!
よだれでつかまえる!
C:でも,唾をのみ込んだら入ってきてしまう。
YT:そうだね,肺まで行ってしまった ら大変だね。ということは,肺に行く
までのこの通り道,どうなっていると 思う
?
奥の方までウィルスが入ってき たとしても,鼻水とは違うけれども,ねばねばしたものが出ます。そして小 さな毛のようなものが付いていて,奥 まで入ってきたものを喉の方まで戻し てきます。それが,みんなの何になっ て出てくるの
?
CC:たん。
YT:このようにして体の奥まで入り込 んできたウィルスは,せきやくしゃみ,
鼻水,たんで出されるんだね。
GT:鼻水やせきやくしゃみは,かぜの ウィルスにとって,都合がいいのかな,
悪いのかな
?
CC:悪い!
GT:ウィルスの大きさは,どれくらい だと思う
?
C:すごく小さい!
0.0001
mm!C:肉眼で見えないくらい小さい!
GT:では,どれくらい小さいのかとい うことも含めてYTに聞いてみましょ う。
② 授業の展開過程-1(発熱する理由)
YT:インフルエンザウィルスは,小さ いと話していたね。実は,その正体は,
ジャーン(ウィルスの写真を提示する)
CC:わぁ~!
YT:写真は大きくしていますが,その 大きさは
1mm
のどれくらいかな?CC:これくらい
!
すごく小さい!
Y T:1mm
の,1/10000
の 大 き さ な んだって。
CC:え~!
YT:とても小さいのです。ウィルスは 自分だけで増えることはできないの で,・・・
CC:え,増えないの?増えるんじゃな いの?
YT:私たちのからだの材料を使って自 分のコピーを次々に作ります。
1
個のウィルスは
8
時間で,なんと100
個に,24
時間では,100
万個に増えるそうで す。GT:1個でも,からだの中でどんどん 増えてしまうね。はじめは鼻水やせき やくしゃみだったのがどんな症状にな るかな
?
C:熱が出る。
GT:それを発熱というね。みんなは,
何度くらいまで熱が上がったことがあ るかな
?
C:
38
度。40
度・・・ざわざわGT:平熱は
36
℃くらいだけれども,インフルエンザやかぜになると熱が
38
℃以上に上がってしまうね。でも,ふだんから熱があるよね。
CC:え・・・
GT:さっきみんなは平熱が
36
度とか37
度とか言っていたよね。なぜふだ んからだが温かいのかな?
CC:生きているから,体が温かい!
GT:ではYTにお話しをしてもらいま しょう。
YT:体温には,個人差があります。み んないろいろ違うでしょ。でも,体温 は大体いつも一定です。犬や猫を抱っ こすると,温かいよね。小さいころ,
お家の人に抱っこしてもらったこと,
覚えているかな。
C:覚えている
!
C:今でも,抱っこしてもらっている!
YT:温かくて,安心したよね。それは,
体温があるからだよ。そして,体中を 血がめぐっている証拠でもあります。
車のエンジンがかかっていないと冷た いけれど,エンジンをかけて走り出す と,暖かくなるね。私たちも同じだね。
だって,食べていると,からだが温か くなるよね。お昼休みにたくさん運動 した人,たくさん汗をかいていたね。
平熱があるって,生きている証拠なん です。
GT:ということは,これ(38~41 度の発熱),暖かくなって元気な証拠 ではないですか?
C:上がり過ぎ!
GT:熱が上がったとき,からだがどん な調子だったか教えてくれるかな
?
C:くらくらして立っていられない。C:壁がないと立てない。
C:目が,もやっとするし,息苦しい。
GT:発熱すると,とても大変だね。か ぜをひくと,どうして発熱するのかな
?
C:菌が,鼻水などをくぐり抜けて,ぎりぎりのがれて体の中に入ってしま う。そして,菌がどんどん増えていっ て,熱が出る。
C:ウィルスが増えて,からだの中で ぎゅうぎゅうになって熱くなる。
C:体の中でウィルスが増えて,固まっ て熱くなって,ウィルスが熱を出す。
GT:ウィルスが熱を出すんだね。では,
違う考えの人はいるかな?
C:ウィルスが熱を出しているのではな く,追い出すためにからだが熱を出し ていると思う。
C:ふだん体温を自分で出しているの で,熱を出しているのは自分だと思う。
C:自分のせいだってこと
?
くらくらす るとか,自分で自分を苦しめていると いうこと?GT:苦しいのに自分で熱を出すことっ てあるのかという考えだよ。どうかな?
C:苦しいから,やっぱりウィルスが出 している。
GT:高い熱が出た時にお家の人にどん なことをしてもらったかな
?
C:からだを冷たくしてもらった。
GT:どこを冷たくしてもらったのかな
?
C:おでこや,首を冷やしてもらった。C:食べやすいものを食べさせてもらっ た。
GT:「消化のいいもの」ということで いいかな。
C:布団や毛布をかぶせてもらった。
C:寝るとき水枕をしてもらった。
GT:部屋はどのようにしてもらったか な
?
C:温かくしてもらった。
GT:熱が悪いものだったら冷やしたら いいのに,どうして温かくするの
?
C:寒くしたらもっとひどくなる。GT:外に出て,もっとからだを冷やし たらいいのではないかな
?
C:でも,寒すぎる。
C:熱が出ていると汗をかくから,汗が 冷えてしまう。
GT:冷たいものを食べさせてもらった り,頭を冷やしてもらったりするで しょう。部屋は温かくしたり,布団や 毛布をかぶせてもらったりしたんだよ ね。いったい,どういうことなのかな
?
C:熱は悪いことをしている!
C
:
絶対に悪い!
ウィルスが集まって,熱くしている。
GT:おでこだけを冷やすのではなく て,外に出て全身を冷やしたらいいの ではないかな
?
CC:それはだめ。凍え死んでしまう。
C:外なんかにいたら,逆に悪くなって しまう。
GT:いったい,どっちなんだろうね。
C:ウィルスを,熱でなくそうとしてい る。
GT:ということは,毛布を掛けたり温 かくしたりするのはいいことかな
?
C:いいこと,ん~・・・(迷った表情)。 GT:いったい,どっちなんだろうね。では,YTに聞いてみようね。
YT:これは,ウィルスが仲間を増やす のに最適な温度を現した表です。イン フルエンザウィルスが一番増えやすい のは,
35
度から36
度の温度です。CC:え!平熱
!
YT:そうです。人間の体温です。
38
度以上になるとウィルスは仲間を増やすことができなくなります。
GT:ということは,熱は上がると・・・
CC:いい!
GT:だれにとっていいの
?
CC:自分。人間!C:熱は悪くないということなの
?
GT:そう,熱が上がるとウィルスたちは元気がでなくなるそうです。
C:そうか!
③ 授業の展開過程-2(免疫の働きと 仕組み)
GT:熱だけではウィルスが死なないそ うです。
C:え~
GT:増えたウィルスは体の中にいたま まだね。いったいどうやってやっつけ ているのかな
?
C:熱をどんどん上げて,ウィルスをど んどん小さくさせて,減らす。
C:やっつける細胞がいる。
GT:熱でウィルスが増えるのを抑える ことはできても,やっつけることはで きない。からだの中でウィルスをやっ つける防衛軍がいるそうです。
CC:お~!
GT:からだ中にいるけれど,からだ中 にあるものは何かな
?
CC:血?
GT:どこを切っても,擦りむいても血 が出てしまうよね。からだ中に血が 巡っているからね。その血を試験管に 入れてくるブルブルと振り回すと,三 つに分かれます。この中の薄い層の白 い部分が白血球という細胞です。この 白血球の中で,今日は三つのタイプを 紹介します。マクロファージとT細胞,
B
細胞です。CC:格好いい!
YT:どんなふうに活躍しているのかも 今からお話しします。ウィルスが体の 中に入ってきました。そうすると,一
番最初に活躍するのがマクロファージ です。血液の中にいて,からだ中をパ トロールしています。マクロファージ は,ウィルスをどのようにしてやっつ けているかというと,
C:手でつかむ
?
YT:手のようなもので,次々とつかま えて,パクパク食べていきます。写真 を見てみましょう。この写真はマクロ ファージが手のようにからだをのばし て敵をつかまえている写真です。そし て,次々と食べていくのです。
YT:でも,ウィルスはものすごいス ピードで増えると話していたよね。さ すがにマクロファージも食べるのが追 い付かなくなります。これ以上増えた ら大変。たからどうしたらいいかな
?
C:熱を上げる!YT:そう,熱をあげろ
!
とマクロファー ジば信号を脳に送るんだって。脳の深 いところに体温を調節している部分が あるので,そこに信号を送って熱が上 がるようにします。38
度や39
度になっ て 私 た ち は 倒 れ て し ま う け れ ど も,ウィルスは増え・・・。
CC:ない。
YT:マクロファージは今度はT細胞に
「こんなやつがいましたよ」と教えま す。T細胞は司令官なので「武器を作 れ」という命令を
B
細胞に出します。すると,
B
細胞は武器を作ります。た くさんいるからどんなのでやっつけたらいいかな
?
C:ショットガン。C:抗体。
YT:すごいねぇ。抗体というウィルス をやっつける武器を作って,それを バーン!
CC:わあ~!!
C:撃ってる!
YT:やっつける。熱が上がるとさらに いいことがあって,白血球たちがさら に元気になるんだって。
C:わー,すごい!
YT:マクロファージたちが,次々に食 べていって,ウィルスたちがいなくな るのです。
GT:熱が上がるとウィルスは元気が出 なくなるけれども,私たちのからだを 守っている白血球たちはやる気満々で 頑張るようになるんだね。ということ で,これまでのことを振り返るよ。最 初は鼻水やせきやくしゃみでウィルス をからだに入れない仕組みが備わって いたよね。それでもウィルスがからだ の中に入ってきて増えてしまうと熱を あげてウィルスを増やさない仕組みが あります。そして最後はウィルスを食 べてやっつけるという3段階で私たち のからだは病気と戦っているのです ね。
④まとめ(症状はからだからのサイン)
GT:からだの中では白血球たちが頑 張っているね。この働きを応援するに は何ができる?
C:温かくした方がいい。
GT:だから布団は・・・
CC:かぶる。
GT:ではお部屋は・・・
C:暑くする?
C:ちょうどいいくらいにする
YT:過ごしやすいくらいに温かくする といいね。それから,運動はする?
C:寝る。
GT:寝ていると,治るね。体を休める と白血球たちが元気に頑張ってくれま す。それと,頭を冷やすのはどうして かな
?
C:視床下部。
GT:頭の中には脳があるね。この脳は 熱に弱いんだって。
C:そっか,だから頭を冷やすんだ
!
だ から冷やすんだ。GT:そうそう,脳だけは守っているん だね。そのために脳や首のあたりを冷 やしているということです。というこ とはかぜの症状はからだからの何にな るのかな
?
C:サイン。サイン!
C:からだが,お~い!って言っている。
GT:鼻水やせきやくしゃみが出たとい うことはウイルスが?
C:「いた」というサイン。
GT:「入ってこようとしているよ」と いうサインだね。それから,熱が上がっ てきたというのは?
C:「入った。増えている。」というサイ ン。
GT:今日は,そういうサインを受け 取ったらどうしたらいいのかなという ことを考えました。病気の症状は,か らだからのサインなんだね。
⑤児童の感想
私は,熱が悪いことではないと気づき ました。体の中のマクロファージやヘル パーT細胞,
B
細胞がウィルスを退治し ているので,熱を出しても良いというこ とがわかりました。熱が出たら部屋を ちょうどいい位にあたためて,布団をか ぶせて水枕をして,おでこに冷えピタを 貼って寝れば白血球たちがもっと元気に なって,もっともっとウィルスを退治す ると思うので,熱が出たらそうしたいで す。私は,いとこやお母さんとかいろいろ な人に発熱は良いことをしているという ことを広めて,みんなが,健康に元気に 暮らせるように話を広げていきたいで す。今日の授業で発熱はいいことをして くれることがわかりました。・・・
⑥ 授業についての養護教諭の振り返り 子どもたちは,自分の経験と結び付け ながら授業を受けていた。これまであま り意識していなかった鼻水やせき,たん などは,病原体を外に出そうとする働き であること,熱は病原体の増殖を抑える 働きをしていることなどについて,かぜ にかかった際のからだの状態をイメージ しながら考えていたのが分かった。「免 疫の働きとしくみ」では,自作の教具を 用いたことで,興味関心をもって学んで いたことが,子どもたちの表情や感想文 からも伝わってきた。
度々発熱し,毎日のように保健室に来 室していた児童が,今回の授業の後,「熱 は悪いことではないと気づいた。」と話 していた。それまで毎日のように発熱を 気にしていたのが嘘のように自分のから だの症状(サイン)として受け止め,安 心して過ごす姿を見ると,からだの学習 による学びの成果は大きいと考える。
保健室では,からだのサイン(症状)
を否定的にとらえる児童が多いが,から だの学習を通して科学的根拠に基づいた
「症状の意味」を知り,自分自身に備わっ た力を肯定的に捉えようとする姿が見ら れるようになったのが大きな収穫だっ た。今後も,このような学びの機会をつ くっていきたい。