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生物資源科学専攻 植物育種科学講座 遺伝子制御学 大久保 めぐみ

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Academic year: 2021

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2020年27

テンサイ初期生育におけるヘテロシス(雑種強勢)発現機構に関する研究

生物資源科学専攻 植物育種科学講座 遺伝子制御学 大久保 めぐみ

1. はじめに

ヘテロシス(雑種強勢)は種内あるいは種間の交雑により得られた雑種(F1)が,生物体量,成長速 度および繁殖力などにおいて両親を上回る現象である。最も一般的なヘテロシスはバイオマスの増 加で,様々な生物種で確認されている。これまでに,優性説や超優性説,エピスタシス説などの古 典モデルが提唱され,数多くの研究が行われてきたが,分子機構の詳細は未だ明らかになっていな い。テンサイは根(直根)を収穫する砂糖の原料で,ハイブリッド種子が広く利用されている。そこ で本研究は,テンサイ初期生育におけるヘテロシスの発現について,分子機構の解明に取り組んだ。

まず,バイオマス増加の全体像を把握するため,詳細な表現型解析を行った。次に,ヘテロシスが 顕著に発現することが確認された時期や器官について,トランスクリプトーム解析を行った。さら に,遺伝子発現解析から見出された分子モデルを,後代分離集団を用いて検証した。

2.方法

供試材料として

,圃場試験においてF1

の肥大根重の増加が確認されている

1

組の組み合わせと,

F1

に花粉親を戻し交配した

BC1F1

集団を用いた。試験栽培は,環境を一定に制御した屋内水耕栽培 装置で行い,経時的かつ網羅的な表現型解析を行った。遺伝子発現解析は,葉と直根の

RNA

シーケ ンスデータを用いて行った。後代分離集団の解析は,DNA シーケンスデータを用いて行った。

3.結果と考察

両親系統と

F1

を栽培し,全身の

31

形質を経時的に調査した。その結果,ほぼ全ての形質で

F1

が両親系統を上回っており,相対成長速度は播種後日数(DAS)が

24-27

の期間で最大であった。ま た,直根の肥大には,細胞数よりも細胞サイズの増加が寄与していることが示された。そこで,26

DAS

の葉と直根の一部を

RNA-seq

に供試し,遺伝子発現量を比較した。その結果,F1 が両親系統よ りも有意に発現量が多いもしくは少ない遺伝子群は1%に満たず,バイオマス増加に直接的に作用 するような遺伝子は見つからなかった。一方,発現量が少ない親(劣性親)に対し

F1

で有意に発現 量が多い遺伝子が

1000

個以上存在した。したがって,このような遺伝子が

F1

でヘテロ接合になる ことで,発現量が少ないという劣性親の弱毒性が補完される分子モデルが考えられた。次に,

BC1F1

集団について,DNA シーケンスデータから各個体のゲノム全体の塩基多型を検出し,DNA マーカー のヘテロ接合性を算出した。これらの値とバイオマスの関連を調べたところ,地上部乾物重との間 に有意な相関が見られた。以上の結果から,ゲノム中に散在する多数の遺伝子が,上記の分子機構 によってヘテロシスの発現に寄与している可能性が示された。

4. まとめ

ヘテロシスの発現には,様々な分子機構が異なる寄与率で関与していると考えられている。本研

究で示された遺伝子の補完モデルがバイオマス増加にどの程度寄与しているかについて,今後明ら

かにする必要がある。

参照

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