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人事訴訟・会社訴訟における再審原告適格

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(1)

人事訴訟・会社訴訟における再審原告適格

一一被告適格との関係とその理論的基礎

く目 次〉

1 はじめに

2 人事訴訟および会社訴訟における被告適 格

(1)人事訴訟における被告適格 (2)会社訴訟における被告適格

3 人事訴訟における再審原告適格

一一

被告 適格との関係とその理論的基礎

(1)問題の所在

一一

再審の手続構造と再審 原告適格

(2)平成元年判決と学説・立法 (3)理論的基礎と私見

4 会社訴訟における再審当事者適格

一一

当 事者適格との関係とその理論的基礎 (1)問題の所在

一一

人事訴訟との対比 (2)平成25年決定・平成26年決定と学説の

評価

(3)理論的基礎と私見 5 結び

1 はじめに

民事訴訟法における確定判決の効力は訴訟 当事者に及ぶのが原則である(民訴法115条 l項1号, 判決効の相対性原則)が, その例 外として人事訴訟および会社訴訟では

般第 三者に判決の効力たる対世効が及ぶなかで

対世効の正当化根拠としての手続保障の原則 から第三者の救済が必要である

I

。 そこで,

松 原 弘 信

第三者の事前および事後の手続保障と関わる 形で当事者適格および再審当事者適格が問題 となる。

このうち会社訴訟とりわけ本稿における考 察の対象とする会社組織関係訴訟においては,

被告適格について会社法(834条)により原 則会社のみとする旨法定されるとともに,再 審原告適格につき最近2つの注目すべき最高 裁判例

2

が相次いで登場した。 そこでは,

方で,会社法上被告適格を有しない第三者に つき独立当事者参加の形をとってのみ再審原 告適格を認める考え方を示すとともに, 他方 で,「再審原告適格について再審開始決定後 に再開される原訴訟の当事者適格を基準とす る考え方Jが示されている九後者の考え方 は, 同じく対世効を有する人事訴訟とりわけ 本稿の考察の対象とする検察官を被告とする 死後認知訴訟における第三者の再審原告適格 に関する旧法下の注目すべき最高裁判例

4

に ついても見受けられる。 本稿は,これら判例 が認める「再審原告適格について再審開始決 定後に再開される原訴訟の当事者適格を基準 とする考え方J, すなわち, 原訴訟において 当事者適格を有しうる者のみが再審において も再審原告適格を有するという考え方が,判 例上死後認知訴訟および会社組織関係訴訟に おける原訴訟の被告適格と再審の再審原告適 格との関連で問題になっているので, その当 否を考察の対象とする。 その点について,結 論を先取りして述べると,「再審が確定判決 1 安達栄治「判決効拡張と第三者救済

一一

詐害再審と独立当事者参加について」法律時報88巻8号(2016年) 13

頁。 対世効ある場合の第三者保護の手法について

高橋宏志・重点講義民事訴訟法〔上〕〔第2版補訂版〕(有斐 閣・2013年) 308頁以下。

2 最決平成25・11・21民集67巻8号1686頁,最決平成26・7・10判時2237号42頁(以下

それぞれ「平成25年決 定」「平成26年決定Jと略する)。

3 この考え方が前掲平成25年決定(注2)において明示されている点について,さしあたり三木浩

「118 第 三者による再審J高橋宏志ほか編・民事訴訟法判例百選〔第5版〕(有斐閣・2015年) 246頁。

4 最判平成元・11・10民集43巻10号1085頁(以下

平成元年判決と略する)。

熊本ロ

ジャ

ナル第14号(2018. 3) 3

(2)

【論説】

を取り消して原訴訟手続を再開・続行する手 続である」という再審の手続構造を理由とし て,死後認知訴訟および会社組織関係訴訟に おいて「再審原告適格について再審開始決定 後に再開される原訴訟の当事者適格を基準と する考え方」を貫くことに対して,筆者は次 の点で、疑問を持つ。すなわち,人事訴訟およ び会社訴訟における被告適格の法定の立法趣 旨およびそれに基づく原訴訟の被告適格と再 審原告適格をめぐる問題状況の違いに鑑み,

事前手続保障としての原訴訟における被告適 格を有する者しか事後的手続保障としての再 審における再審原告適格になれないとする見 解に疑問を持つ。

そこで,本稿は,判例上問題となった対世 効が及ぶ人事訴訟のなかの死後認知訴訟およ び会社訴訟のなかの新株発行無効の訴えおよ び株式会社の解散の訴えという会社組織関係 訴訟における再審原告適格についてのみ,被 告適格(とりわけその法定の趣旨)との関係 に焦点をあてて考察の対象とし,再審事由の 問題は取り上げない。そして,これらの訴訟 につき再審原告適格は原訴訟についての当事 者適格を基準とすべきとする見解に対して上 記判例およびそれに関する学説を踏まえ批判 的な考察を試みたい。その際には,当事者適 格論の理論的基礎の研究

5

の一翼を担う意義 を有するものとして当事者総論(当事者概念,

当事者権,二当事者対立構造等)との有機的 連闘を明らかにすることも本稿の目的とする。

2  人事訴訟および会社訴訟にお ける被告適格

2 では,人事訴訟および会社訴訟における 被告適格を有しない第三者の再審原告適格を 論じる前提問題として,人事訴訟および会社 訴訟における被告適格についてその法定の趣

旨および被告適格を有しない実質的紛争主体 たる第三者との関係に留意して考察する。

( 1 )人事訴訟における被告適格

通常の民事訴訟においては,誰が当事者適 格を有する正当な当事者であるかは,訴訟物 たる権利関係により理論的に自ずと定まり,

法定しないのが通例である。これに対し,人 事訴訟における当事者適格

6

については,身 分関係の高度の公益性に基づき画一的処理が 要請されるため,あらかじめ当事者適格を画 一的に法定しておく必要がある。ここで問題 とする人事訴訟において誰を被告とすべきか という被告適格に関して,現行人事訴訟法は

(旧人事訴訟手続法と同様に)次のような規 定を設けている。人事に関する訴えで当該身 分関係の当事者の一方が提起するのは,法律 に特別の定めがある場合を除き,他の一方を 被告とし(人訴 12 条 l 項),身分関係に関す る訴えであって当該身分関係の主体以外の者

(第三者)が訴えを提起するときは当該身分 関係の当事者の双方を相手方とし,一方が死 亡した後は他の一方を被告とし(同条 2 項 ) , 以上により被告とすべき者が全員死亡し,被 告とすべきでないときは検察官を被告とする

(同条 3 項)。本稿が考察の対象とする人事訴 訟たる認知の訴えについても,認知が求めら れる者(例えば父)が被告となる( 42 条 l 項 前段)が,その認知が求められる被告となる べき者(父)が既に死亡していた場合,検察 官が被告となる(訴訟係属中に死亡した場合 も同様である,同条後段)。要するに,認知 の訴えにおいては,その相手方になるべき者

(父)が生存中はその者(父)を被告とする が,その者(父)の死亡後は検察官を被告と することになる。

そこで,人事訴訟法上の死後認知の訴えに おいて検察官を職務上の当事者として被告適

5  本稿は,科学研究費・基盤研究( C )の研究テーマ「当事者適格の理論的基礎の研究J(課題番号15K03214) の成果の一部である。

6  この点につき,岡垣学「人事訴訟における当事者一一とくに離婚の訴えと認知の訴えについて J 新実務民事訴

訟講座 8 ( 1 9 8 1 年 ) 2 9 7 頁以下,高橋・前掲(注 1) 3 1 9 頁以下,高橋宏志=高回裕成編「新しい人事訴訟法と

家庭裁判所実務」ジュリ 1 2 5 9 号(2 0 0 3 ) 4 5 頁以下,松本博之『人事訴訟法〔第 3 版〕(弘文堂・ 2 0 1 2 年 ) 1 2 3 頁以

下 。

(3)

格を認める立法趣旨?について述べると,日 本法が検察官を被告適格者とするかかる訴え を認めたのは,認知を申し立てる原告にとっ て被告捕捉(相手方特定)の手聞を省いて原 告の便宜に配慮したうえで,人事訴訟という こ当事者対立(対審)構造をとる手続を貫徹 するために合理的な方法だからといわれる。

すなわち,認知請求が認められることにより 相続権を侵害される実質的紛争主体ともいう べきすべての相続人を被告適格者として要求 することは原告にとって多大な負担となり酷 であり,原告が誰を被告とすればよいかで迷 うことがないようにすることが,その考慮の 基礎にある。特に提訴期間に制限のある場合 には,被告とすべき者の明確さや捕捉の容易 さという原告の提訴上の便宜への配慮は不可 欠であるといえよう。もとより,職務上の当 事者たる検察官自身は実質的な利害関係人で はない。その意味で死後認知訴訟において検 察官に被告適格を認める趣旨は原告の提訴上 の便宜という訴訟政策的考慮に基づくものと いうことができ,その点について概ね異論が ないといえよう。

さて,旧法下で,そのような検察官に正当 な被告たる地位が与えられても,原告の主張 に対し,原告の出生した事実のみ認め,その 他の事実はすべて不知と答えるにとどまり,

父子関係の不存在について積極的な活動をし ないのが実情であるとの指摘がなされた

8

。 そうしたなかで,検察官を職務上の当事者と して当事者適格を認めるだけでは対世効の正 当化根拠としての事前的手続保障の観点から は不十分である。具体的には,死後認知が認 められた場合に自らの知らないところで兄弟 が法的に生じ,相続分割合を減少させられる 重大な利害関係人の訴訟参加およびそのため の訴訟係属の通知といった事前の手続保障の 面での規律を欠く点で立法上の不備があるこ

人事訴訟・会社訴訟における再審原告適格

とが次第に認識されるようになった。そうし たなか,前述した死後認知について重大な利 害関係を有する第三者が原告を相手に認知を 争うためには,補助参加により,検察官の被 告適格者としての訴訟活動に協力するほかは ない反面,これらの第三者が認知の訴えにお いて防御の機会も与えられないままに認知の 判決が確定すると,判決確定後に事後的な手 続保障として再審の訴えを提起するほかない。

それが顕在化したのが,死後認知訴訟におけ る認知判決確定後の重大な利害関係人たる亡 父の相続人の再審原告適格が問題になった前 掲平成元年判決である。

そして, 3 において詳細に取り上げる上記 平成元年判決に対する判例評釈等における重 大な利害関係人への手続保障上の批判の高ま り

9

を受けて,平成 8 年の新民事訴訟法の制 定に際して旧人事訴訟手続法に 3 3 条が新設さ れた。すなわち,死後認知訴訟で父親だと主 張された者の相続人等に裁判所が訴訟係属を 通知する規定を設け,当該通知を裁判所の義 務だと規定した。それでも,学説が論じてい たところと比較すると上記利害関係人の手続 保障の面でなお落差がある

10

なかで,現行人 事訴訟法が制定された。すなわち,人事訴訟 法において,利害関係人の事前参加(判決確 定の未然、防止)の規律として,一定の範囲の 者に訴訟係属の通知の保障(人訴 28 )だけで なく利害関係人の強制参加(同 15 )の規定が 設けられた。この 15 条の利害関係人の補助参 加は,確定判決の対世効(同 24 I) を前提と すれば,その地位は共同訴訟的補助参加人に なる。この場合には,検察官が職務上の当事 者として被告となる(同 12 I I I)が,充実した 訴訟追行が行われるためには実質的に重大な 利害関係をもっ第三者が訴訟参加することが 望ましい。そこで,第三者が進んで補助参加 を申し出ない場合にも,裁判所の決定により

7  この点につき,岡垣・前掲(注 6) 3 0 7 頁以下,高田裕成「死後認知の相手方(最判平成元・ 1 1 ・ 1 0 )」民法判 例百選皿親族相続(2 0 1 5 年 ) 6 5 頁,高橋=高田編・前掲(注 6) 4 5 頁以下,本間靖規「判批」民商法雑誌1 0 2

6 号(1 9 9 0 年 ) 1 1 8 貰(8 0 8 頁)以下。

8  この点につき,岡垣・前掲(注 6) 3 2 0 頁,鈴木忠一「非訟事件における検察官の地位」非訟・家事事件の研

究(

1 9 7 1 年 ) 1 1 5 頁 。

9  この点につき,高橋宏志「人事訴訟における手続保障 J 講座民事訴訟法I l l (弘文堂・ 1 9 9 8 年 ) 3 5 1 頁 。 1 0   高橋・前掲(注 9) 3 5 1 頁以下は,その点を明らかにした論文である。

熊本ロージャーナル第 1 4 号(2 0 1 8 .3 )   5 

(4)

[論説]

第三者を補助参加入の地位に就けることにし た。この参加決定がなされれば,第三者は当 然に補助参加入の地位を取得するが,自ら補 助参加の申出をした第三者と同様に,補助参 加人の訴訟行為は,たとえ被参加人の訴訟行 為と抵触するときでも,その効力を有し,ま た,合一確定のための必要的共同訴訟の規律 が準用されるし,合一確定のための必要的共 同訴訟の規律が準用される。第三者にこのよ うな強力な地位を認められるのは,共同訴訟 的補助参加入の特質によるものであるが,実 際には,公益の代表者として当事者となる検 察官よりも,実質的利害関係をもつ補助参加 人の訴訟行為によつて適正な審理が期待で、き るからである u

この人訴法1 5 条の規定の趣旨に関して,高 田裕成教授は, 1 5 条の強制訴訟参加制度とフ ランス法に倣って被認知者(父)の相続人を 被告とすべきという当事者適格の規律の密接 な関連性と法制審議会での議論に言及して次 のように言うへ「日本法のように,対世効で あって他の相続人は事後的に覆せないという ことを前提にしますと,相続人全員を被告と するという規律を考えざるを得ない・・・そうし ますと,訴え提起の段階で相続人全員を被告 としなければいけない負担を原告に負わせる ことが制度としていかがか,という先ほどの 疑問が生じ,この疑問が解決されなかったこ とが,当事者適格の規律で問題を解決するこ とが断念された理由ではなかったかと思いま す。その結果,訴え提起の段階での原告の負 担,被告を捕捉する負担を緩和軽減するため に,さしあたり検察官を被告として訴えを提 起することを許し,その上で,実質的当事者 とすべき者があれば,必要に応じて訴訟参加 制度によって捕捉する。これによって適正な 審理,充実した審理を可能にするという構想 からこの条文(人訴法1 5 条)ができたものと 理解しています。」(下線:筆者)ここでは,

対世効と当事者適格と強制訴訟参加の密接な 関係,すなわち,相続人に被告適格を認める 当事者適格の規律が断念され検察官の被告適 格と利害関係の強制訴訟参加の規律を認めた 実質的な理由が,日本法の対世効のもとで相 続人に被告適格を認めると,すべての相続人 を被告適格者にせざるをえず,そうすると訴 え段階での原告による相続人全員を被告とし なければならないという原告の被告捕捉の多 大な負担を伴うため,その回避にあったとい う原告の負担回避のための訴訟政策的配慮に 基づくことを読み取ることが可能である。ま た,上記引用文のなかで相続人のような当事 者と同視すべき利害関係人につき「実質的当 事者」という用語を用いている点でも注目さ れる。これらは人事訴訟における再審原告適 格を被告適格との関連で考察するに際し特に 留意すべきではないかと考える。

( 2 )会社訴訟における被告適格

会社法は,その「第 7 編 雑 則 」 「 第 2 章 訴訟」において会社訴訟に関する被告適格 について会社法制定前(以下,旧法下と略す る)の判例に従う形で規律すなわち法定化し ている。とりわけ会社法 834 条は,同法 828 条 に掲げられた行為の無効の訴え (1 号〜 1 2 号 ) , 株式発行・自己株式の処分・新株予約権発行 の不存在確認の訴え( 1 3 号〜 1 5 号),株主総 会等の決議の不存在確認・無効確認の訴えお よび取消しの訴え( 1 6 号・ 1 7 号),持分会社 の設立の取消しの訴え ( 1 8 号・ 1 9 号),会社 の解散の訴え( 2 0 号・ 21 号)について(以下,

これらの訴えを総称して「会社組織関係訴訟」

という)について,主に当該(株式)会社の みを被告とすると規律した九こうした会社 法による被告適格の法定の趣旨について,会 社法の立法担当者によれば,訴え提起にあた り被告の選定という作業が必要不可欠である

1 1   伊藤真『民事訴訟法〔第 5 版〕』(有斐閣・ 2 0 1 6 年 ) 6 6 8 頁 − 6 6 9 頁 。 1 2   高橋=高田編・前掲(注 6 ) 5 2 頁(高田裕成発言)。

1 3   これらにつき,畑宏樹「 1 0 会社関係訴訟における被告適格の法定」小林秀之編『新会社法と会社訴訟の実務」

(新日本法規・ 2 0 0 6 年 ) 8 0 頁以下,本間靖規「新会社法の施行とこれからの会社関係訴訟」ジュリ 1 3 1 7 号( 2 0 0 6 )

1 9 8 頁,同「会社訴訟における被告適格」神作裕之ほか編『会社裁判にかかる理論の到達点』(商事法務・ 2 0 1 4 年 )

2 0 4 頁以下。

(5)
(6)

【論説】

配慮すべく信義則上の責務を認めたうえで,

対世効を受ける第三者へのかかる代替的手続 保障上の配慮という一種の訴訟政策的配慮を もって会社を唯一の被告適格者にする会社被 告説の根拠に求めたものと捉えることができ,

注目される。

さらに,人事訴訟だけでなく会社訴訟にも 認められる被告適格の法定に関して,次の高 田裕成教授の記述は大変示唆に富むものとし て極めて注目されるヘすなわち,死後認知 の訴えの被告適格につき,「現行法上検察官 のみが当事者とされているのは,他の適切な 当事者を選ぶ的確な基準を見いだすことが困 難であり(すべての相続人を被告として要求 することは原告にとって,場合によっては被 告となる者にとっても負担となる一方,一部 でよいとするためにはその者が対世効を認め ることを正当化するに足りる適切な利害関係 人であることが必要といえようが,その選択 を的確に行うことは容易ではない),また,

原告がだれを被告とすればよし

1

か迷うことが ないようにという考慮がその基礎にあると考 えられる(とくに,提訴期間の制限がある

(民法7 8 7条ただし書参照)においては,被告 とすべき者の明確さ,捕捉の容易さは,訴訟 法的に重要な基準である。この観点から,対 世効を生じる訴訟類型につき被告とすべき者 を法定する立法慣行が確立しつつある。たと えば,会社法8 3 4条など)。」高田教授のこの 指摘は,人事訴訟のみならず会社訴訟におい ても被告とすべき者の明確さ,捕捉の容易さ という訴訟政策的な考慮に基づき被告適格が 法定されているということを明らかにしてい

る 。

以上の考察に基づき,会社訴訟において会 社に被告適格を認める根拠として,死後認知 訴訟における検察官の被告適格のように原告 にとっての被告捕捉の容易さ・明確さだけに 収散させることはできないにしても,それを 中心に訴訟経済や判決効の及ぶ第三者の代替 的手続保障上の配慮を含む主に訴訟政策的考

2 1   高田・前掲(注

7)

6 5 頁 。

慮に基づくと捉えるべきであり,その点を会 社組織関係訴訟における再審原告適格の考察

に際して留意すべきであると考える。

3  人事訴訟における再審原告適 格一一一被告適格との関係とそ の理論的基礎

( 1 )問題の所在一一再審の手続構造と 再審原告適格

3 では,対世効による全面的な判決効拡張 を受ける人事訴訟上の訴えの典型例たる検察 を被告とする死後認知訴訟の不利な判決効に より相続権を害される第三者(亡き父の子た る相続人)の再審原告適格を念頭において,

かかる判決確定前の原訴訟において被告適格 を有しない第三者は再審において再審原告と しての適格を有しないのかという原訴訟にお ける被告適格と再審における再審原告適格の 関係に力点において考察する。ただ,それに 先立ち ( 1 ) では,再審の手続構造と再審原告 適格の関係について問題の所在を明らかにす

る 。

再審の訴えは確定判決の取消し要求と原事 件(本案)の再審理要求の 2っから成り立っ ており,それに対応する形で,再審も再審事 由の存否の審理と再審開始決定後の原事件

(本案)の再審理の 2 つの審理段階に通常分 けられる。そのうえで,再審の構造について は,確定判決の取消手続という面と前訴本案 の再審理という面の両審理手続に着目し,訴 訟物論と関連して前者の面を独立の訴訟物と 捉えるかどうかにより,それを肯定する伝統 的通説によれば再審事由の有無を独自の訴訟 物と解する訴訟上の形成訴訟説(訴訟物二元 説)となるのに対し,否定する少数有力説に よれば上訴の一種として上訴と同じく訴訟物 は本案請求のみと解する上訴類似説(訴訟物 一元説)となるへしかし,それらのうちい

2 2   再審の構造に関して,高橋宏志・重点講義民事訴訟法〔下〕(有斐閣・ 2 0 1 2 年 ) 7 6 7 頁以下,内山衛次「 §338

(再審の事由) J高田裕成ほか編『注釈民事訴訟法第 5 巻』(有斐閣・ 2 0 1 5 年 ) 4 6 1 頁以下などがある。

(7)
(8)

【論説]

定立を要しない非当事者参加である点で両者 の聞に厳然とした手続保障上の差異を設ける 峻別説を前提としていたと考えられる。これ に対し,( A )少数有力説は原訴訟手続にお いて当事者適格を有しない者は補助参加の申 出とともにする再審の訴えの提起しか認めら れないとするものであったが,その者の手続 保障の地位は必ずしも弱いものではなかった と考えられる。

以上の主な見解の対立を分かつ問題の所在 として,「再審が原訴訟手続の再開・続行で ある」という再審の手続構造から「再審原告 適格を有するには,原訴訟手続の訴訟物につ いて当事者適格を有する者であることが必要 である」というテーゼを人事訴訟たる死後認 知訴訟や会社組織関係訴訟においても貫徹す べきであるか,言い換えると,原訴訟手続の 訴訟物について被告適格を有しえない者は再 審原告適格を有しないと一概に言えるかが問 題となる。 3 では,( 2 )( 3 )において死後認知 訴訟につきこの問題を考察する。

( 2 ) 平 成 元 年 判 決 と 学 説 ・ 立 法

前述した通り,旧法(人事訴訟手続法)下 の再審原告適格の判例として平成元年判決が 登場し,それをめぐって様々な学説上の評価 がなされて論議を呼ぶとともに,その蓄積の うえに立法(人事訴訟法)へと結実すること になったので,それについてみていくことに する。

平成元年判決の事実の概要は次の通りであ る。戸籍上 CD の子(亡 A の姪)とされてい る Y1 は,昭和 5 5 年 1 0 月 1 5 日,検察官 Y ,を被 告として① CD間との親子関係不存在確認の 訴えと② Y1 が亡 A の子であることの死後認 知の訴えを提起した。昭和 5 6 年 2 月 2 6 日,裁 判所は Y

l

の請求を全部認容し,本判決は同 年 3 月1 7 日確定した(本件確定判決)。この 訴訟では, AB 夫婦の子らである X1 〜 X,

(以下 X らとする)は,訴訟係属中に訴訟告 知されることも,証人として呼び出されるこ ともなく,検察官 Y , は Y1 と CD 聞の親子関 係の存否, Y1 と亡 A との聞の父子関係の存 否について不知と答弁書を提出しただけで,

証拠の申出はせず,口頭弁論期日にも出頭し なかったことが認定されている。そこで, X らは,本件確定判決にはその判決の効力を直 接受ける亡 A の子である X らの訴訟関与の機 会を奪ったままなされた違法があるとして,

本件確定判決の当事者である Y1 と検察官 Y, とを共同被告として旧民訴法 4 2 0 条 1 項 3 号

(代理権の欠触)の類推適用を主張して再審 の訴えを提起した。要するに,検察官を被告 とする死後認知訴訟において認知判決により 相続権を害される第三者が,事前手続保障た る訴訟参加の機会を保障されることなく認知 判決が確定したことから,再審原告適格者と して再審の訴えを提起したものである。この 本件再審訴訟につき,第一審判決は,原判決 の取消しについて固有の利益を有していると いうことからのみ再審原告適格を認めたもの の , 3 号再審事由には該当しないとして請求 棄却した。その控訴審判決たる原判決は,原 告らの再審原告適格は当然には認められない が,本件の事案に即して,再審原告 X らを保 護する必要があることから,行政事件訴訟法 3 4 条に規定する第三者再審の規定を類推適用 すべきであるとして再審原告適格を認めたう えで,再審事由についても Xらの主張をいれ,

一審判決を取り消した。だが,その上告審判 決である本平成元年判決は,原判決の認知請 求についての再審の訴えに関する部分を破棄 し,第一審判決を取り消し,検察官を相手方 とする認知の訴えにおいて認知を求められた 父の子は再審原告適格を有しないとして Xら の請求を棄却した。その理由として,第一に,

再審の訴えは,確定判決の取消し及び右確定 判決にかかる請求の再審理を目的とする一連 の手続であって(旧民訴法 4 2 7 条 , 4 2 8 条 ) ,

「再審の訴えの原告は確定判決の本案につい ても訴訟行為をなしうることが前提となると ころ,認知を求められた父の子は認知の訴え の原告適格を有せず(…),右訴えに補助参 加をすることができるにすぎず,独立して訴 訟行為をすることができないから」とする,

第二に,判決の効力を受ける者が訴訟に参加

する機会を与えられなかったとしても,判決

が違法となり,再審原告適格を有することに

なると解すべき理由はないし,第三に,人事

(9)

訴訟は行政事件訴訟とは対象とする法律関係 を異にし,行訴法 22 条のような特別な規定が ないから,行訴法 34 条を類推適用することは できないことを挙げて,検察官を相手方とす る死後認知の訴えにおいて認知を求められた 父の子の再審原告適格を否定している。

平成元年判決において問題になる論点は下 記の 3つであり,①判決効を受ける第三者で あっても当事者適格たりえない者に,再審原 告適格が認められるか,②認められるとして どのような参加形態によるべきか,あるいは,

③再審原告適格が認められないとすれば判決 効が及ぶ第三者はどのような方法で確定判決 の効力を争うことができるかである。以下で は,主に①を考察の対象として力点を置いた うえで,それに必要な限りで、②③についても 取り上げることにする。

上記平成元年判決は,①につき,再審の訴 えにおいて再審の事由が認められ本案事件の 再審判がなされることになれば,次の段階で は本案事件について審判が開始されるから,

本案事件において当事者たり得る者のみが再 審原告適格を有すると解して,復活した本案 事件において当事者たりえない者には再審原 告適格は認められないと消極に解している。

そのうえで,③につき,認知を求められた父 の子は,死後認知の訴えに補助参加すること ができるにすぎないとしており,共同訴訟的 補助参加入としての地位において確定判決の 効力を争うことができるにすぎないと解して いる。ここでは,原訴訟において当事者適格 を有する者か当事者適格を有しない共同訴訟 的補助参加人かでもって再審当事者適格を有 するか否かの決定的な違いを認めている。そ の重要な根拠として,再審では復活した本案 事件について審判が開始されるという再審の 手続構造論を根拠としているに注意を要する。

この平成元年判決の立場に対して,様々な 学説上の評価に基づく諸見解がある。( A) 平成元年判決と同様,対世効を受ける当事者

人事訴訟・会社訴訟における再審原告適格

適格を有しない者の再審原告適格を否定し,

この者は再審の訴えの提起とともに前訴の被 告に(共同訴訟的)補助参加すべきだとする 見解があり,有力であるヘこの説によれば,

平成元年判決の事例では,亡父の相続人は死 後認知の原訴訟における当事者(被告)適格 を有さないという理由で再審の訴えを提起し ても原告適格は否定されることになる目。こ の見解は,その理由として,再審原告適格が 認められるためには,原判決に係る訴訟物に ついて当事者適格が認められるなど原判決に 係る訴訟手続の本案について訴訟行為をする ことを通じて原確定判決の判断を左右できる 者であることも要求され,そうでなければ,

再審の訴えを提起しても目的を達することが できないことになるからであるとする。すな わち,再審の訴えにおいて再審の事由が認め られ本案事件の再審判がなされることになれ ば次の段階では本案事件について審判が開始 されるから,本案事件において当事者たり得 る者のみが再審原告適格を有するからと解し ている。これに対して,( B )前述した伝統 的通説却は,①につき,判決効の拡張される 第三者に当事者適格は認められないとしても 判決の取消しについて不服の利益を有する第 三者は再審原告適格を認められるとしたうえ で,②につき,参加形態として独立当事者参 加の形式により本訴の当事者を共同被告とす べきとし,そうすることにより再審原告適格 が認められるとする。伝統的通説は,再審原 告適格者は前訴確定判決の効力を受け,それ に対して不服の利益を有している者をいうと 解しており,もともと原訴訟(裁判)手続の 当事者適格を有する者に限定していなし可から である。もっとも,この伝統的通説は,判決 効を受ける第三者に再審原告適格を認める参 加形態として独立当事者参加によるべきだと する。ところが,旧法下の通説によれば,独 立当事者参加の訴訟構造につき三面訴訟説に 立っており,検察官を被告とする死後認知訴

2 7   富越和厚「時の判例 J ジュリ 9 5 1 号(1 9 9 0 年 ) 1 0 0 頁。伊藤・前掲(注

11)

7 5 2 頁 。 2 8   三木浩ーほか・民事訴訟法〔第 2

版〕

6 4 7 頁(菱田有郷)。

2 9   兼子・前掲(注2 6 ) 4 8 5 頁。新堂・前掲(注2 6 ) 9 4 4 頁以下,上回・前掲(注2 6 ) 6 3 0 頁,川|嶋・前掲(注2 6 ) 9 5 1   頁以下。

熊 本 ロ ー ジ ャ ー ナ ル 第1 4 号(2 0 1 8 .3 )   1 1  

(10)

【論説】

訟において判決効を受ける第三者たる亡父の 相続人が前訴両当事者(とりわけ本訴被告の 検察官)に対して請求を立てえないことを考 えると独立当事者参加の参加形態を採ること は十分でないという問題点があった。そこで,

(C )対世効を受ける第三者に再審原告適格 を認める立場を前提としつつ,その参加形態 としては共同訴訟的補助参加によるべきであ る,またはそれで、も構わないとする見解もあ る却。さらに,( D )検察官が認知訴訟において 当事者とされているのは,主に訴訟政策的配 慮(認知訴訟の被告を利害関係人とした場合 に生じる被告となる者の探索・範囲決定の判 断についての原告の負担や提訴の困難の除去,

多数当事者による訴訟手続の煩雑化の回避)

によるのであるから,検察官より充実した訴 訟追行が期待できる実質的紛争主体ともいう べき直接の利害関係人については認知請求の 当事者適格者に準じた地位を認め再審原告適 格を肯定すべきであるとする見解もあるヘ

ところで,上記平成元年判決を受けて,再 審による事後的保障のための法改正がなされ た。まず現行民訴法制定の際の改正としては,

①補助参加の要件の「訴訟ノ係属中」という文 言を削除(民訴

42

)し,②補助参加人のなし うる訴訟行為として「再審の訴えの提起」を 挿入(同 4 5I )したことであり,(共同訴訟 的)補助参加人としての再審の訴えを明記し ている。他方,現行民訴法は独立当事者参加 につき従前の当事者双方に請求を定立しなく てもよいとするいわゆる片面的独立当事者参 加を明文(同4 7 I) 上認めていることが注目

される。またその後制定された人事訴訟法に おいて,訴訟係属の通知の規定に加えて事前 手続保障たる共同訴訟的補助参加の規定が設 けられたものの,事後的手続保障たる第三者

再審については規定されていない。とはいえ,

訴訟係属の通知の規定は訓示規定であると解 されているなかで,平成元年判決のようなケー スは現行法の下でも稀であるとはいえ起こり 得ることに注意しなければならない。

( 3 )理論的基礎と私見

死後認知訴訟において被告適格を有する検 察官は,公益的見地に基づく職務上の当事者 であり,実質的な利害関係人ではない。した がって,死後認知訴訟における検察官のよう に身分関係の紛争主体でも利害関係人でもな い者を正当な当事者として包摂ならしめる当 事者概念として形式的当事者概念が最も妥当 であり,むしろ,かかる検察官をも当事者適 格者(正当な当事者)として包摂する当事者 概念としては,形式的当事者概念しか考えに くいなかで,形式的当事者概念が日独ともに 通説として盤石な地位を築いてきたとさえ言 うことができるへ問題は,平成元年判決事 例のように,検察官が死後認知訴訟において 争わず被告としての実質的な役割を果たすこ となく敗訴し,実質的紛争主体たる第三者

(亡父の相続人)が再審原告として再審の訴 えを提起したにもかかわらず,前述した再審 の手続構造のゆえに亡父の相続人は再審の本 案上の原告にはなりえず,変わって再審を提 起しない検察官が再審の本案手続上の原告に なるしかないとすれば,形式的当事者概念と 抵触の問題をはらむことにならないだろうか。

次に,死後認知訴訟において被告適格を有す るのは検察官とはいえ,それは形式的なもの にすぎず,実質的な紛争解決のために訴訟へ の関与が求められる実質的紛争主体ないし実 質的当事者は平成元年判決事例では亡父の相

30

三谷・前掲(注

24) 57

頁,本間・前掲(注

7) 820

頁以下は,第一次的には,再開後の原訴訟手続での当事者適 格を本来は認められない者で あっても,場合によっては当事者適格を認めるべきであると主張しつつ,それが無 理でも,再開後の原訴訟手続において共同訴訟的補助参加人として訴訟追行することを前提として,再審の訴え は原告として提起することは認めるべきである,と主張する。

31 

原強「死後認知判決に対する再審の訴えにおける認知を求められた亡父の子の再審原告適格」平成元年度重要 判例解説(ジュリ

957

号 )

(1990

年 )

137

頁。本稿は,本文で後述するようにこの原説を支持するとともに,それ を敷街したともいえよう。

32 

人事訴訟における当事者概念につき,松原弘信「民事手続における『手続主体』概念についての

1

考察ー一一形

式的当事者概念の相対化および『第三者』概念の再検討の視点から 」『熊本大学法学部創立十周年記念・法

学と政治学の諸相』

(1989

年 )

332

頁以下。

(11)
(12)

【論説】

(最判昭和4 6・ 6・ 3 判時6 3 4 号 3 7 頁 ) ・通説 は理論構成につき見解が分かれるものの原訴 訟手続について当事者適格を有しない口頭弁 論終結後の特定承継人に再審原告適格を肯定 する立場を採用している。その理由は,口頭 弁論終結後の特定承継人の有する重大な利害 からして再審に主体的に関与させるべきだか らであろうへそうだとすれば,対世効を有 する検察官を被告とする死後認知訴訟におけ る亡父の相続人は,請求認容判決により相続 権を害されるおそれのある重大な利害関係人 なのであり,原訴訟における実質的紛争主体 とも実質的当事者とも呼びうる点に鑑み,再 審原告適格を有する判決名宛人として再審に 主体的に関与させる地位を保障すべきではな かろうか。しかも,前述したように,原訴訟 における被告適格とは異なり,再審では一種 の起訴責任の転換により原告適格が問題にな るのであるから,前者における原訴訟原告に 対するように訴訟政策的配慮の必要はない。

むしろ,再審では亡父の相続人に原訴訟で参 加の機会が保障されなかったゆえに事後的救 済手続たる再審の訴えを再審原告として提起 した場合には,再審が原訴訟手続の再開・続 行であるとする再審の手続構造を前提として も,また再審構造をめぐっていかなる見解に 立っと解してもペ原訴訟の被告適格と再審 原告適格の問題状況の違いに鑑み,平成元年 判決事例における亡父の相続人の再審原告適 格の肯定は十分正当化されると解すべきであ

る 。

3 6   森勇「1 1 7 再審の原告適格」前掲(注 3 )2 4 5 頁 。

4  会社訴訟における再審当事者 適格一一当事者適格との関係

とその理論的基礎

( 1 )問題の所在 人事訴訟との対比

会社法において, 8 5 3 条 1 項が責任追及等 の訴えの判決に対して第三者による再審の訴 えを明文で認めているが,ここで考察の対象 とする判例上問題となる会社組織関係訴訟に ついては,その認容判決には対世効があるに もかかわらず,人事訴訟と同様,第三者によ る再審を認める規定は置かれていない問。し かも,会社法において,対世効の正当化根拠 としての事前手続保障の l ったる利害関係人 への訴訟係属の通知について,人事訴訟法で はかつてなかったのに明記されたのとは逆に,

旧商法ではあったものの会社法では削除され た。そうしたなかで,人事訴訟とは対照的に,

会社組織関係訴訟において重大な利害関係の ある実質的紛争主体が原訴訟の存在を知らず 参加の機会を逸したまま判決が確定し,その 後に第三者(詐害)再審を求める事案が増え る結果となったへ

ここでの論点は,会社組織関係訴訟におい て詐害判決であることを再審事由とする第三 者再審の可否と再審原告適格の有無であり,

3 の人事訴訟たる平成元年判決の検察官を被 告とする死後認知訴訟に引き続き, 4 でも平 成2 5 年決定の新株発行無効の訴えと平成2 6 年 決定の株式会社解散の訴えを念頭に再審原告 適格の有無と原訴訟手続における当事者(被 告)適格の関係に注目して論じていきたい。

すなわち,ここでも再審とは確定判決を取り 消して原訴訟手続を再開・続行する手続であ ると考えると,原訴訟の当事者適格を有しえ ない第三者は再審原告適格者になれないのか,

またそれと関連する問題として,仮に第三者

3 7 再審の構造について,形式的形成訴訟説(訴訟物二元説)に立つにせよ,上訴類似説(訴訟物一元説)に立つ にせよ,現行法の下で再審の審理は再審事由存否の審理と原事件の再審理の

2

段階が区別されるなかで,後者の 段階のレベルでは同一訴訟物を前提に例外的に亡父の相続人が原訴訟における実質的当事者としての再審の訴え

により再審本案手続において形式当事者となりかっ再審原告適格を有すると解することはできないだろうか。

3 8   三木・前掲(注 3) 2 4 7 頁 。

3 9   本間・前掲(注 1 3 )2 0 1 頁以下。

(13)
(14)

【論説]

審訴訟における原告適格について職権で検討 し,たとえ再審開始決定を得たとしても原訴 訟の当事者になれない者は,確定判決の取消 しという本来の目的を達することができない として,再審訴訟の原告適格を認めることは できないとした。しかし,新株発行無効の訴 えの確定判決の効力の拡張を受ける第三者の 救済のために,上記再審の訴えを提起すると ともに独立当事者参加の申出をした場合には,

上記第三者は,再審開始の決定が確定した後,

当該独立当事者参加に係る訴訟行為をするこ とによって,合一確定の要請を解し,上記確 定判決の判断を左右することができるように なる。そうであれば,新株発行の無効の訴え に係る請求を認容する確定判決の効力を受け る第三者は,上記確定判決に係る訴訟につい て独立当事者参加の申出をすることによって,

上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格 を有することになるというべきであるとする。

本平成2 5年決定は,その意義としては,新 株発行無効の訴えに係る請求を認容する確定 判決が詐害判決である場合に,原訴訟の第三 者は独立当事者参加の方式を用いることによ り再審原告適格として再審の訴えを提起する ことができると認めたものである。すなわち,

第三者再審の再審原告適格について,独立当 事者参加の申出をすることによって磯定判決 に対する再審の訴えの原告適格を有するとす ることにより,実質的な第三者再審を現行法 の枠内での解釈運用により認めたものといえ よう。そうしたなか,多くの評釈者等におい てその結論は 3 号再審を認めた点と合わせ高

く評価されている。

それにもかかわらず,この平成2 5年決定を 受け継いだ、平成 2 6 年決定が翌年に出るなかで,

平成2 5年決定の問題点として,次のような学 説による指摘を受けるようになったことを看 過してはならない。第一に,本平成2 5 年決定 は,判旨のなかでたとえ再審開始決定を得た としても原訴訟の当事者になれない者は,確 4 3   菱田・前掲(注 2 5 ) 5 3 1 頁以下。

定判決の取消しという本来の目的を達するこ とができないとして,再審訴訟の原告適格を 認めることができないと明言して共同訴訟的 補助参加の地位に基づき再審原告適格を認め た原審の判断を斥けた。つまり,本決定は,

再審訴訟の当事者適格を再審開始決定後に再 閲される原訴訟の当事者適格を基準に考える 立場を鮮明にし,その点で田法下の人事訴訟 に関する前掲平成元年判決の立場をそのまま 引き継いだ、ものということができょう。しか し,検察官を被告とする死後認知訴訟と同様,

会社組織訴訟における会社の詐害的訴訟追行 が問題となる訴訟における再審の本案訴訟は 原訴訟手続と同じく,請求の認容を求める側 と棄却を求める側の二当事者対立訴訟である 以上,平成2 5 年決定の提示した二当事者に対 する固有の請求の定立を前提とした独立当事 者参加の申出のルートがそう容易に利用でき るものでない可能性が生じうるのであり,そ のことは,この判例に続く平成 2 6 年決定が容 易に示しているへ第二に,本平成 2 5年決定 は,確定判決の効力を受ける第三者は,独立 当事者参加の申出をすれば合一確定の要請を 介して原訴訟への介入権を得るので,再審訴 訟の原告適格が認められる,即ち,本決定は,

「原訴訟の当事者適格」を基準とする立場を 前提とし,その充足のために独立当事者参加 を要求するのであるが,原訴訟への介入権と いう要素は,共同訴訟的補助参加でも充足す るので,再審原告適格を独立当事者参加に限 定する理由が明らかでない。第三に,独立当 事者参加が再審訴訟の当事者適格の基準であ るというのであれば,独立当事者参加の要件 の検討が必要なはずであるが,本件では両当 事者への請求の定立が行われていたこともあ り,その点の検討が行われていない。そして,

まさにその点が問題となったのが次に取り上 げる平成 2 6 年決定であるといえよう。

平成 2 6 年決定

44

の事実の概要は,次の通り である。 Z 株式会社の株主 Y

l

〜 y 

(以下,

4 4   平成 2 6 年決定に関する判例評釈等として,石橋英典「確定判決の効力を受ける第三者による再審の際の独立当

事者参加」同志社法学 6 6 巻 6 号( 2 0 1 5 年 ) 2 1 9 頁,笠井正俊「平成 2 6 年最決・判例解説」判例セレクト 2 0 1 4 〔 E

法教 3 0 頁,菱田雄郷「平成 2 6 年最決・判例評論」私法判例リマークス 5 1 ( 2 0 1 5 く 下 ) )  1 2 8 頁以下,吉垣実「判

例解説」平成 2 6 年度判例解説・ジュリ 1 4 7 9 号 1 3 5 頁以下,我妻学・法教 4 2 2 号 2 5 頁以下など多数存在する。

(15)

Y1 らという)は, Z を被告として株式会社 解散の訴え(会社法833 条)を提起したとこ ろ , Zは請求原因事実の大部分を認め,解散 事由(同条 1 項 l 号)の存在も争わなかった ので,受訴裁判所は,第一回口頭弁論期日に おいて弁論を終結し,証拠および弁論の全趣 旨により Zを解散する旨の判決を言い渡し,

当該判決は確定した。判決確定後にそのこと を知った Z の株主である X は , Y

l

らおよび

Zを被告として Y

i

らと Zの取締役がいずれ も解散を望んでいる馴れ合い訴訟であること を理由に 3 号再審事由に当たるなどと主張し て再審の訴えを提起した(本人訴訟)。第一 審は, Xが当該判決の取消しにつき固有の利 益を有する第三者に当たるとして再審原告適 格を認めたうえで,再審事由は認められない として再審請求を棄却した。抗告審も,同じ く再審原告適格を認めたうえで 3 号再審及び これに準じた再審事由に当たると認めること はできないとした。これに対して,平成2 6 年 決定は,新株発行の無効の訴えと同様にその 請求を認容する確定判決の効力を受ける第三 者は,上記確定判決に係る訴訟について独立 当事者参加の申出をすることによって,上記 確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有 することになるとして,平成25 年決定を引用 のうえ,この理は株式会社の解散の訴えの場 合においても異ならないというべきであると した。そのうえで,株式会社の解散の訴えに 係る請求を認容する確定判決に対する再審の 訴えにつき,同判決の効力を受ける第三者が 原告適格を有するためには,再審の訴えと合 わせて独立当事者参加の申出が必要であり,

その申出に当たり,請求の定立が必要である とした。そのうえで,本件についてみると,

抗告人は,相手方 Y1 らと相手方会社との間

4 5   吉垣・前掲(注4 4 ) 1 3 5 頁以下。

4 6 伊藤・前掲(注

11)

6 7 4 頁 。

人事訴訟・会社訴訟における再審原告適格

の訴訟について独立当事者参加の申出をする とともに本件再審の訴えを提起したが,相手 方 Y

i

らの相手方会社に対する請求に対して 請求棄却の判決を求めただけであって,相手 方 Y1 らまたは相手方会社 Z に対して何らの 請求も提出していないことは明らかであると して再審の訴えを不適法とした。もっとも,

本決定の法廷意見には金築判事の意見および 山浦判事の反対意見があって重要な意義を持 つ 。

この平成2 6 年決定は,平成25 年決定の上記 意義と関連して,株式会社の解散を求める訴 えに係る請求を認容する確定判決に対する再 審の訴えにつき,同判決の効力を受ける第三 者がこの再審の訴えの原告適格を有するため には,再審の訴えと併せて独立当事者参加の 申出を要するとともに,その申出に際して,

参加人は請求の提出(定立)を必要とし,単 に前訴原告の請求に対して訴え却下又は請求 棄却の判決を求めるのみの参加の申出は許さ れないこと(第三者の固有請求の必要)を判 示したものであるへしかし,平成26 年決定 は,伝統的通説

出の際に第三者が独自の請求を立てなければ ならないという,旧法下の判例を維持するべ きことを述べて第三者の再審原告適格を否定 したものの,この点につき,詐害防止参加で は,参加申出をする第三者は原告の被告に対 する請求を棄却する判決を得れば十分であり,

それ以上に自分の請求について判決を求める ものではないという有力説

47

が旧法下からあ り,本決定にはこの有力説を支持する山浦善 樹裁判官の反対意見が出されたこともあり,

平成2 5 年決定以上に平成26 年決定はかなり批 判されている

48

。ただ他方で,平成26 年決定 につき,前掲平成25 年決定を前提とせざるを

4 7   井上治典「独立当事者参加論の位相 J 『多数当事者訴訟の法理』 2 9 8 頁,高橋・前掲(注3 5 ) 5 2 0 頁。この点に っき徳田和幸「独立当事者参加における請求の定立についてー詐害防止参加の沿革を中心としてー」前掲(注1 5 ) 7 2 9 頁以下は詐害防止参加の立法上の沿革を踏まえて,参加人に対する独自の請求は必ずしも必然的なものでは なく,場合によっては原告の請求の棄却の判決を求めれば足りると解することも十分に成り立ちうるとする。

4 8   内山・前掲(注2 4 ) 4 8 4 頁,吉垣・前掲(注4 4 )。高橋宏志・民事訴訟法槻論(有斐閣・ 2 0 1 5 年 ) 3 3 2 頁も,詐 害妨止参加では請求を立てずに参加してよい,その意味で参加人は請求なき当事者となるとする方が明確である としたうえで,注で「しかし,最決平成2 6 ・ 7 ・ 1 0 判時2 2 3 7

4 2 頁は,請求なき当事者を否定する」と批判的に取

り上げる。

熊本ロージャーナル第 1 4 号 (2 0 1 8 .3 )   1 7  

(16)

【論説】

得ないという縛りの中で考える限りは,同決 定法廷意見にも相当な理由があったものと評 価することができるという評価もある

490

( 3 )理論的基礎と私見

まず理論的基礎に関して,当事者概念との 関係では,検察官を被告とする死後認知訴訟 事例と同様に,会社を被告とする会社組織関 係訴訟事例において会社が被告としての実質 的な役割を果たすことなく馴合い訴訟で敗訴 し原訴訟における実質的紛争主体たる第三 者が自己の名において再審原告として再審の 訴えを提起したにもかかわらず,前述した再 審の手続構造のゆえに,再審の本案手続上原 告適格を有する判決の名宛人はなお会社でし かありえないと解するならば,形式的当事者 概念との抵触が問題となろう。また,二当事 者対立構造との関係では,原訴訟に全く関与 の機会が保障されなかった実質的紛争主体た る第三者が被告適格を有する会社の詐害的訴 訟迫行ないし原告との馴合い的訴訟追行を理 由に再審の訴えを提起した場合,二当事者対 立構造の例外たる原告,被告会社,実質的紛 争主体の三面的訴訟関係が成立しているとみ るべきであるかが問題となりえよう。しかし,

請求認容を求める原告側と請求棄却を求める 被告側の二当事者対立訴訟である点では原訴 訟においても再審の訴訟においても実質的に は変わりないし,その点では人事訴訟たる死 後認知訴訟と変わりないと考える。さらに 当事者権との関係では,会社組織関係訴訟に おいて会社には(代表者を通して)当事者権 が保障されている。だが,平成2 5年決定も平

成 2 6 年決定も,被告適格を有する会社は原告 に対して事実上争っておらず被告としての当 事者権を事実上放棄しているなかで,実質的 紛争主体たる第三者は訴訟係属の存在すら知 らされておらず,事前的手続保障は全く付与 されないままで,その利益は訴訟において全 く反映されていない。

以上の理論的基礎を踏まえ,以下では私見 について述べることにする。平成2 5年決定・

平成 2 6 年決定の論理を推し進めると,検察官 を被告とする死後認知訴訟と同様に,会社組 織関係訴訟においても独立当事者参加の申出 の際に当事者の少なくとも一方に対する請求 の申出を必須と解することになろう。しかし,

本来請求認容を求める側と請求棄却を求める 側の二当事者対立紛争であるなかで二当事者 に対する第三者の請求の定立は少なからず困 難を来し,それゆえに再審の訴えを不適法と することは平成2 5 年決定が実質的紛争主体た る第三者の再審原告適格を認めた画期的意義 を損なうことになるように思われる。山浦反 対意見

50

が主張するように,詐害防止参加の 目的が原告と被告の馴れ合い訴訟により第三 者の権利を害されるのを防ぐことにあり,か つ,独立当事者参加の制定の経緯が詐害防止 参加において参加入に独立した訴訟上の地位 を充てることに重点を置かれて必要的共同訴 訟の準用等の規律がなされた点に鑑みれば,

独自の請求定立が必ず必要と解するまでもな く,訴害防止参加の要件を緩和して請求棄却 の申立てで足りると解してよいのではなかろ

かへ要するに,原訴訟において訴訟に全く 関与しない実質的紛争主体たる第三者が再審

4 9   菱田・前掲(注4 4 ) 1 2 8 頁以下。笠井・前掲(注4 4 ) 3 0 頁も,平成2 6 年決定は,昭和4 5 年判決と平成2 5 年決定 との組合せからは自然と導かれるものとしつつ,平成2 5 年決定の限界を示すと述べ,独立当事者参加の申出の必 要性を疑い,共同訴訟的補助参加の申出による再審事由主張の余地を認める必要があるとする。それに対し筆者 は,共同訴訟的補助参加の申出あるいは請求棄却の申立てという緩和された形での詐害防止参加とともに再審原 告適格を認めてよいと考える。

5 0 判時2 2 3 7

4 6 頁 。

5 1   これに対して,金築意見は,抗告人の独立当事者参加の申出が不適法であるという結論は,請求を定立しない

詐害防止参加を認める余地がないかどうかの議論にかかわりなく,会社法が解散の訴えの被告適格を会社に限定

したという立法政策の結果として,やむを得ないとする(判時2 2 3 7

4 5 頁)。しかしながら私見は,本訴訟で会

社に被告適格者を限定したのであるからこそ,会社(の代表者)が他の利害関係人に代わり請求棄却を求める被

告適格者としての役割を果たさなかった以上,再審では会社に代わる実質的紛争主体の再審原告適格を認めるべ

きであると考える。

(17)
(18)

[論説】

て訴訟主体としての地位たる再審原告適格を 認めるべきであり,それが両紛争主体の武器 対等ないし公平の原則からも妥当ではなかろ うか。この私見は,新堂説日に示唆を得て,

ある者を被告とする(原)訴訟をこれからや らせるかどうかという観点から問題とする被 告(当事者)適格理論と,ある者を被告とし て訴訟をすでに終え判決確定後の再審での本 案審理との関係で問題にする再審原告(当事 者)適格理論とを分離し,両者における問題 状況の差異(前者における被告適格の法定の 趣旨と本訴訟における詐害的訴訟追行の実態 を踏まえた後者における再審原告適格の趣旨)

を自覚的に識別したうえで理論化しようと試 みたものである。

要するに本稿は,人事訴訟たる検察官を被 告とする死後認知訴訟および会社組織関係訴 訟における判例を念頭において,被告適格の 法定の趣旨および被告適格を有する検察官や 会社の原訴訟における詐害的な訴訟追行を踏 まえた原訴訟における被告適格と再審におけ る再審原告適格の問題状況の違いを明らかに して,判例の考え方の前提にある再審の手続 構造に鑑み再審原告適格につき原訴訟の当事 者適格(被告適格)を基準とするテーゼをこ れらの訴訟にそのまま妥当させる立場につい て批判的な考察を試みたものである。

5 5 新堂・前掲(注2 6 ) 3 0 5 頁は,「ある者を当事者とする訴訟をこれからやらせるかどうかという観点から問題と

する当事者適格の理論と,ある者が当事者として訴訟をすでにやってしまったあとで判決効との関係で問う当事

者適格の理論とを一応分離し,両者における問題状況の差異を自覚的に識別したうえで,さらに上告審段階,控

訴審段階の解釈論を考案することが適切である。前者の理論をいわば訴訟追行資格の理論,後者を判決効発生資

格の理論ということができょう」とする。本稿は,上記新堂説の想定するものとは異なるにせよ,かかる見解に

示唆を得て,対世効の生じる人事訴訟および会社訴訟において原訴訟手続段階の当事者(被告)適格理論と再審

手続段階の再審当事者(原告)適格理論の乗離を認める解釈論の提唱を試みたものと位置づけることができょう。

参照

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