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日本国憲法における改憲の基準

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(1)

はじめに

 二一世紀の日本国の国家(天皇・国会・内閣・

裁判所・中央省庁で構成される機関体)の経済・

政治・法・軍事・教育・文化政策の基本方針を 規定しているものは、二一世紀の「日米安全保 障条約」体制である。

 二一世紀の「日米安全保障条約」体制とは、

一九六〇年六月二三 日発効の「日本国とア メリカ合衆国との間 の相互協力及び安全 保障条約」(「一九六〇 年 日 米 安 全 保 障 条 約」)と、二〇〇六年 六月二九日に発表さ れた日米共同文書「新 世紀の日米同盟」を 合体させて作られた

「日米安全保障条約」

体制のことである。

 「一九六〇年日米安 全 保 障 条 約 」 は、 次 のような主要な要素 で構成されている。

 ⑴日本国のアメリ カ へ の 経 済 協 力( 第 二条)。⑵日本国の軍 事 力 増 強(「 軍 拡 」)

の義務付け(第三条)。

⑶日本国と在日米軍 基地が武力攻撃を受 けたら、日本国とアメ リ カ は、 そ れ が、 自 国の平和及び安全を 危うくするものであ る こ と を 認 め て、 自 国の憲法上の規定及

び手続きに従って、共同で武力行動を行う。そ の場合、国際連合・安全保障理事会に、その武 力行動を報告しなければならない。安全保障理 事会が、当該武力攻撃に対する対処措置を執っ たときは、その武力行動措置は終止しなければ ならない(第五条)。⑷日本国の米軍基地設置 義務(第六条)。⑸「一九六〇年日米安全保障 条約」の対象範囲は、「極東」[「第一図」参照]

金子 勝

日本国憲法における改憲の基準

第一図「1960年日米安全保障条約」の世界(「極東」)と「アジア太平洋地域」

(2)

(第六条)。⑹在日米軍の取り扱いは、国会が関 与しない別個の行政協定及び取極で定める(第 六条)。⑺「一九六〇年日米安全保障条約」の 終了は、一九七〇年六月二三日以降は、日米両 国の一方的通告で、その通告後一年で成立する

(第一〇条)。

 「日米安全保障条約」の本質は、⑴日本国の 国力をアメリカ資本主義の発展のために総動員 するというところに、また、⑵日本国の国力を アメリカの侵略戦争に総動員するというところ にある。

 次に、「新世紀の日米同盟」は、次のような 主要な要素で構成されている。

 ⑴「一九六〇年日米安全保障条約」の対象範 囲を、「地球的規模」に拡大する。したがって、

「一九六〇年日米安全保障条約」は、「地球的規

模での協力のため」の「日米同盟」(対米従属 の米国至上主義型米日核軍事・経済同盟)とな る。⑵「地球的規模での協力のための軍事同盟」

の内容は、二〇一五年四月二七日に決定された

「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」

で示されている。⑶「地球的規模での協力のた めの経済同盟」の内容は、「新世紀の日米同盟」

によれば、「互恵的な二国間経済関係を更に深 化させ、地域や世界の経済問題に関する協力を 強化するための方策を探っていく」となってい る。

 「二〇一五年日米防衛協力のための指針(ガ イドライン)」の内容は、次の通りである。

 ⑴平時から緊急事態までのいかなる状況にも 対処しうる防衛協力体制を構築する。また、ア ジア太平洋地域及びこれを超えた地域が安定し、

閣僚レベルを含む二国間の上位レベル

日米合同委員会(JC)

Joint Committee 外務省北米局長日本側

(代表)

在日米軍副司令官米側

(代表)

同盟調整グループ(ACG)

Alliance Coordination Group 局長級

課長級 担当級

日本側 内閣官房(国家安全保障局を 含む。)、外務省、防衛省・

自衛隊、関係省庁(注)の代表

(注)必要に応じて参加

○自衛隊及び米軍の活動に関して調整を必要とする全ての事項に関する  政策面の調整

○切れ目のない対応を確保するため、ACGは、JCと緊密に調整 日米地位協定の実施に関して相互間

の協議を必要とする全ての事項に関 する政策面の調整

米側

国家安全保障会議(注)、国務省(注) 在日米大使館、国防省国防長官府(注) 統合参謀本部(注)、太平洋軍司令部(注) 在日米軍司令部、関係省庁(注)の代表

(注):必要に応じて参加

共同運用調整所(BOCC)

Bilateral Operations Coordination Center 統合幕僚監部、陸上・海上・航空幕僚監部の代表日本側 米側

太平洋軍司令部、在日米軍司令部の代表 自衛隊及び米軍の活動に関する運用面の調整を実施する第一義的な組織

必要に応じて

相互調整情報交換など

相互調整・情報交換など

各自衛隊及び米軍各軍間の調整所(CCCs)

Component Coordination Centers

陸上・海上・航空各自衛隊の代表日本側 米側

各軍の構成組織の代表

○各自衛隊及び米軍各軍レベルの二国間調整を促進

○適切な場合、日米各々又は双方が統合任務部隊を設置し、さらにCCCsを設置する場合がある。

相互調整・情報交換など

ACM:Alliance Coordination Mechanism 第二図 2015年11月設置の同盟調整メカニズム(ACM)の構成

(出所)防衛省編『平成28年版 日本の防衛─防衛白書─』・日経印刷株式会社・2016年・246-247頁。

(3)

平和で繁栄したものとなるための防衛協力体制 を構築する(Ⅰ 防衛協力と指針の目的)。

 ⑵平時から緊急事態までのあらゆる段階にお ける軍事協力体制を統制するアメリカ主導の

「同盟調整メカニズム」(「第二図」参照)を設 置する(Ⅲ 強化された同盟内の調整)。

 ⑶日本に対する武力攻撃が発生した場合、自 衛隊は、日本及びその周辺海空域並びに海空域 の接近経路における防勢作戦を主体的に実施す る。米国は、日本と緊密に調整し、適切な支援 を行う。米軍は、日本を防衛するため、自衛隊 を支援し及び補完する(Ⅳ 日本の平和及び安 全の切れ目のない確保、C 日本に対する武力 攻撃への対処行動)。

 ⑷米国又は第三国に対する武力攻撃に対処す るため、日米両国は、当該武力攻撃への対処行 動をとっている他国と適切に協力する(Ⅳ 日 本の平和及び安全の切れ目のない確保、D 日 本以外の国に対する武力攻撃への対処行動)。

 ⑸自衛隊は、日本と密接な関係にある他国に 対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存 立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求 の権利が根底から覆される明白な危険がある事 態に対処し、日本の存立を全うし、日本国民を 守るため、武力の行使を伴う適切な作戦を実施 する。自衛隊及び米軍は、各々の能力及び利用 可能性に基づき、柔軟かつ適時に後方支援を相 互に行う(Ⅳ 日本の平和及び安全の切れ目の ない確保、D 日本以外の国に対する武力攻撃 への対処行動)。

 ⑹日米両政府の各々が、アジア太平洋地域及 びこれを越えた地域の平和及び安全のための国 際的な活動に参加する。その場合、相互に及び パートナーと緊密に協力する(Ⅴ 地域の及び グローバルな平和と安全のための協力)。

 ⑺日米両政府は、宇宙空間及びサイバー空間 における安全及び安定のために協力する(Ⅵ  宇宙及びサイバー空間に関する協力)

 ⑻日米両政府は、安全保障及び防衛協力の基 盤の強化に取り組む。装備品の共同研究・開 発・生産を行う。情報協力・情報共有を強化す る。研究・教育機関間の交流を強化する(Ⅶ  日米共同の取組)。

 二一世紀の「日米安全保障条約」体制は、⑴ 日本国の対米従属の全面化を徹底させ、⑵全世 界で侵略戦争を展開する米国至上主義型米日 核軍事・経済同盟体制を成立させることにより、

世界一凶暴な「軍事・経済同盟条約」体制となっ た。

Ⅰ.「『安保』憲法」作り

 二一世紀の「日米安全保障条約」体制の全開 を実現するために、二〇一五年九月一九日に、

安倍晋三内閣総理大臣が率いる「安倍連立内閣」

と自由民主党(自民党)及び公明党は、“憲法クー デター” を起して、その全開のために必要とな る、ⓐ侵略する権利(侵略権)である集団的自 衛権の行使権を国家に付与し、ⓑ自衛隊を侵害 を排撃する自衛戦争も・侵害を実行する侵略戦 争も・侵害を懲しめる制裁戦争も実行する「軍 隊」(対内外で、人間を殺害し、土地や建物を 破壊する武力組織)に昇華させる『侵略戦争法』

(「平和安全法制整備法」と「国際平和支援法」)

を制定した。

 そのことを証明すれば、例えば、「平和安全 法制整備法」(「我が国及び国際社会の平和及 び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部 を改正する法律」、一〇本の法律を改定した一 括法)の一環である「武力攻撃事態等及び存立 危機事態における我が国の平和と独立並びに国 及び国民の安全の確保に関する法律」によれ ば、自衛隊は、⑴我が国に対する外部からの武 力攻撃が発生した事態又は我が国に対する外部 からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫し ていると認められるに至った事態(武力攻撃事 態、第二条第一号・第二号)が生じた場合にお いて、⑵我が国の存立を全うし、国民を守るた めに他に適当な手段がなく、事態に対処するた め武力の行使が必要であると認められる(第九 条第二項第一号・ロ)時、⑶事態に応じ合理的 に必要とされる限度において、武力を行使する

(第三条第三項)、となっている。

 「武力攻撃事態」における場合の武力を行使 できる根拠は、「個別的自衛権」である。

 「個別的自衛権」とは、「外国からの違法な侵

(4)

害に対し、自国を防衛するため、緊急の必要が ある場合、それを反撃するために武力を行使し うる権利であって、それが緊急やむを得ないも のであり、また、侵害の程度と均衝を失しない ものである場合には、違法性を阻却され、国際 法上合法的なものとされている」もの、である。

 自衛隊は、個別的自衛権を行使して自衛戦争 を行うことのできる武力組織である。

 また、「武力攻撃事態等及び存立危機事態に おける我が国の平和と独立並びに国及び国民の 安全の確保に関する法律」によれば、自衛隊は、

⑴我が国と密接な関係にある他国に対する武力 攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅か され、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が 根底から覆される明白な危険がある事態(存立 危機事態、第二条第四号)が生じた場合におい て、⑵我が国の存立を全うし、国民を守るため に他に適当な手段がなく、事態に対処するため の武力の行使が必要であると認められる(第九 条第二項第一号・ロ)時、⑶事態に応じ合理的 に必要とされる限度において、武力を行使する

(第三条第四項)、となっている。

 「存立危機事態」における場合の武力の行使 ができる根拠は、「集団的自衛権」である。

 集団的自衛権とは、国際連合憲章「第五一条」

の「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟 国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全 保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要 な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛 の固有の権利を害するものではない。この自衛 権の行使に当つて加盟国がとつた措置は、直ち に安全保障理事会に報告しなければならない。

また、この措置は、安全保障理事会が国際の平 和及び安全の維持又は回復のために必要と認め る行動をいつでもとるこの憲章に基づく権能及 び責任対しては、いかなる影響も及ぼすもので ない」との規定を根拠とするもので、これま での学説や国際司法裁判所の一九八六年六月 二七日の所謂「ニカラグア事件」判決を踏ま えて定義すれば、次のような権利となる。

 それは、⑴自国が武力攻撃を受けていなくて も、⑵武力攻撃を受けた国によるその旨の表明 とその国からの援助の要請があれば、⑶自国に

危機がなくても、自国が武力攻撃を受けたとみ なして、⑷他国に武力攻撃を加えている国に武 力攻撃を加えることができる、という権利であ る。

 自国が武力攻撃を受けていないのにもかかわ らず、他国を武力攻撃するのは侵略であるから、

集団的自衛権の本質は、まぎれもなく、侵略す る権利(侵略権)である。

 自衛隊は、集団的自衛権を行使して侵略戦争 を行うことのできる武力組織である。

 更に、「平和安全法制整備法」の一環である「国 際連合平和維持活動等に対する協力に関する法 律」によれば、⑴我が国は、国際連合を中心と した国際平和のための努力に積極的に寄与する ため、国際連合平和維持活動、国際連携平和安 全活動、人道的な国際救援活動、国際的な選挙 監視活動に対し適切かつ迅速な協力を行う(第 一条)、⑵国際平和協力業務(⑴の活動のため の業務のこと、第三条第五号)の実施等は、武 力による威嚇又は武力の行使に当たるもので あってはならない(第二条第二項)、⑶派遣先 国において国際平和協力業務に従事する隊員は、

自己又は自己とともに現場に所在する他の隊員 若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下 に入つた者の生命又は身体を防護するためやむ を得ない必要があると認める相当の理由がある 場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断 される限度で、小型武器を使用することができ る(第二五条第一項)、となっている。

 同法によれば、国際連合平和維持活動とは、

国際連合の総会又は安全保障理事会が行う決議 に基づき、武力紛争の当事者(以下「紛争当事者」

という。)間の武力紛争の再発の防止に関する 合意の遵守の確保、紛争による混乱に伴う切迫 した暴力の脅威からの住民の保護、武力紛争の 終了後に行われる民主的な手段による統治組織 の設立及び再建の援助その他紛争に対処して国 際の平和及び安全を維持することを目的とし て、国際連合の統括の下に行われる活動であっ て、国際連合事務総長(以下「事務総長」とい う。)の要請に基づき参加する二以上の国及び 国際連合によって実施されるもののうち、次に 掲げるものをいう。次に掲げるものとは、イ 

(5)

武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当 事者間の合意があり、かつ、当該活動が行われ る地域の属する国(当該国において国際連合の 総会又は安全保障理事会が行う決議に従つて施 政を行う機関がある場合にあつては、当該機関。

以下同じ。)及び紛争当事者の当該活動が行わ れることについての同意がある場合に、いずれ の紛争当事者にも偏ることなく実施される活動。

ロ 武力紛争が終了して紛争当事者が当該活動 が行われる地域に存在しなくなった場合におい て、当該活動が行われる地域の属する国の当該 活動が行われることについての同意がある場合 に実施される活動。ハ 武力紛争がいまだ発生 していない場合において、当該活動が行われる 地域の属する国の当該活動が行われることにつ いての同意がある場合に、武力紛争の発生を未 然に防止することを主要な目的として、特定の 立場を偏ることなく実施される活動(第三条第 一号)、である。

 国際連携平和安全活動とは、国際連合の総会、

安全保障理事会若しくは経済社会理事会が行う 決議、別表第一に掲げる国際機関(国際連合・

国際連合の総会によって設立された機関又は国 際連合の専門機関で、国際連合難民高等弁務官 事務所その他政令で定めるもの・国際連携平和 安全活動に係る実績若しくは専門的能力を有す る国際連合憲章第五十二条に規定する地域的機 関〔例えば、アフリカ連合、東南アジア諸国連 合―引用者〕又は多国間の条約により設立さ れた機関で、欧州連合その他政令で定めるもの

―引用者)が行う要請又は当該活動が行われ る地域の属する国の要請(国際連合憲章第七条 1に規定する国際連合の主要機関〔総会、安全 保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、

国際司法裁判所、事務局―引用者〕のいずれ かの支持を受けたものに限る。)に基づき、紛 争当事者間の武力紛争の再発の防止に関する合 意の遵守の確保、紛争による混乱に伴う切迫し た暴力の脅威からの住民の保護、武力紛争の終 了後に行われる民主的な手段による統治組織 の設立及び再建の援助その他紛争に対処して国 際の平和及び安全を維持することを目的として 行われる活動であって、二以上の国の連携によ

り実施されるもののうち、次に掲げるもの(国 際連合平和維持活動として実施される活動を除 く。)をいう。次に掲げるものは、国際連合平 和維持活動における次に掲げるもののイ・ロ・

ハと、同じもの(第三条第二号)、である。

 人道的な国際救援活動とは、国際連合の総会、

安全保障理事会若しくは経済社会理事会が行う 決議又は別表第二に掲げる国際機関が行う要請 に基づき、国際の平和及び安全の維持を危うく するおそれのある紛争(以下単に「紛争」とい う。)によって被害を受け若しくは受けるおそ れがある住民その他の者(以下「被災民」とい う。)の救援のために又は紛争によって生じた 被害の復旧のために人道的精神に基づいて行わ れる活動であって、当該活動が行われる地域の 属する国の当該活動が行われることについての 同意があり、かつ、当該活動が行われる地域の 属する国が紛争当事者である場合においては武 力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事 者間の合意がある場合に、国際連合その他の国 際機関又は国際連合加盟国その他の国(次号及 び第六号において「国際連合等」という。)に よつて実施されるもの(国際連合平和維持活動 として実施される活動及び国際連携平和安全活 動として実施される活動を除く。)をいう(第 三条第三号)、である。

 別表第二に掲げる国際機関とは、一 国際連 合、二 国際連合の総会によって設立された機 関又は国際連合の専門機関で、次に掲げるもの

(イ 国際連合難民高等弁務官事務所。ロ 国 際連合パレスチナ難民救済事業機関。ハ 国際 連合児童基金。ニ 国際連合ボランティア計画。

ホ 国際連合開発計画。ヘ 国際連合人口基金。

ト 国際連合環境計画。チ 国際連合人間居住 計画。リ 世界食糧計画。ヌ 国際連合食糧農 業機関。ル 世界保健機関)その他政令で定め るもの。三 国際移住機関、である。

 国際的な選挙監視活動とは、国際連合の総会 若しくは安全保障理事会が行う決議又は別表第 三に掲げる国際機関(国際連合・国際連合の総 会によって設立された機関又は国際連合の専門 機関で、国際連合開発計画その他政令で定める もの・国際的な選挙監視の活動に係る実績又は

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専門的能力を有する国際連合憲章第五十二条に 規定する地域的機関で政令で定めるもの――引 用者)が行う要請に基づき、紛争によって混乱 を生じた地域において民主的な手段により統治 組織を設立しその他その混乱を解消する過程で 行われる選挙又は投票の公正な執行を確保する ために行われる活動であって、当該活動が行わ れる地域の属する国の当該活動が行われること についての同意があり、かつ、当該活動が行わ

れる地域の属する国が紛争当事者である場合に おいては武力紛争の停止及びこれを維持すると の紛争当事者間の合意がある場合に、国際連合 等によって実施されるもの(国際連合平和維持 活動として実施される活動及び国際連携平和安 全活動として実施される活動を除く。)をいう

(第三条第四号)、である。

 自衛隊員(自衛官)の武器の使用の例につい ては、⑴派遣先国において国際平和協力業務に

捜索救助活動を行う自衛隊が協力支援活動として行う自衛隊に 属する物品の提供及び自衛隊による役務の提供の一覧表

備考  物品の提供には、武器の提供を含まないものとする。 消毒 宿泊 通信 医療 修理及び整備 輸送 補給 種類

毒、物品及び役務の提供 宿用、類する物品及び役務の提供 用、らに類する物品及び役務の提供 療、これらに類する物品及び役務の提供 備、品及び役務の提供 送、にこれらに類する物品及び役務の提供 水、油、する物品及び役務の提供       

第二表

協力支援活動として行う自衛隊に属する物品の提供及び 自衛隊による役務の提供の一覧表

  は、とする。 建設 訓練業務 施設の利用 保管 宿泊 基地業務 空港及び港湾業務 通信 医療 修理及び整備 輸送 補給 種類

設、の提供 遣、務の提供 らに類する物品及び役務の提供 管、びにこれらに類する物品及び役務の提供 宿用、らに類する物品及び役務の提供 理、らに類する物品及び役務の提供 援、物品及び役務の提供 用、これらに類する物品及び役務の提供 療、びにこれらに類する物品及び役務の提供 備、類する物品及び役務の提供 送、びにこれらに類する物品及び役務の提供 水、油、に類する物品及び役務の提供       

第一表

(7)

従事する自衛官は、その宿営する宿営地(宿営 のために使用する区域であって、囲障が設置さ れることにより他と区別されるものをいう。以 下この項において同じ。)であつて当該国際平 和協力業務に係る国際連合平和維持活動、国際 連携平和安全活動又は人道的な国際救援活動に 従事する外国の軍隊の部隊の要員が共に宿営す るものに対する攻撃があったときは、当該宿営 地に所在する者の生命又は身体を防護するため の措置をとる当該要員と共同して、武器を使用 することができる(第二五条第七項、宿営地協 同防護業務における武器の使用)、⑵派遣先国 において国際協力業務に従事する自衛官は、そ の業務を行うに際し、自己若しくは他人の生命、

身体若しくは財産を防護し、又はその業務を妨 害する行為を排除するためやむなを得ない必要 があると認める相当の理由がある場合には、そ の事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、

武器を使用することができる(第二六条第一項、

安全確保業務における武器の使用)、⑶派遣先 国において国際平和協力業務に従事する自衛官 は、その業務を行うに際し、自己又はその保護 しようとする活動関係者の生命又は身体を防護 するためやむを得ない必要があると認める相当 の理由がある場合には、その事態に応じ合理的 に必要と判断される限度で、武器を使用するこ とができる(第二六条第二項、駆け付け警護業 務における武器の使用)、となっている。

 次いで、「国際平和支援法」(「国際平和協同 対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍 隊等に対する協力支援活動等に関する法律」)

によれば、国際平和協同対処事態――国際社会 の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅 威を除去するために国際社会が国際連合憲章の 目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、

我が国が国際社会の一員としてこれに主体的か つ積極的に寄与する必要があるもの――が生じ たら、政府は、⑴当該活動を行う諸外国の軍 隊等に対する協力支援活動等を行う(第一条)、

⑵協力支援活動及び捜索援助活動は、現に戦闘 行為(国際的な武力紛争の一環として行われる 人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下 同じ。)が行われている現場では、実施しない

ものとする。ただし、第八条第六項の規定によ り行われる捜索救助活動(既に遭難者が発見さ れ、自衛隊の部隊等がその救助を開始している ときは、当該部隊等の安全が確保される限り、

当該遭難者に係る捜索救助活動を継続すること ができる――引用者)については、この限りで はない(第二条第三項)、となっている。

 協力支援活動(諸外国の軍隊等に対する物品 及び役務の提供であって、我が国が実施するも のをいう、同法第三条第一項第二号)として行 う自衛隊に属する物品の提供及び自衛隊による 役務の提供(同法第三条第二項)は、「第一表」

に掲げるものとなる。また、捜索救助活動(諸 外国の軍隊等の活動に際して行われた戦闘行為 によって遭難した戦闘参加者について、その捜 索又は救助を行う活動[救助した者の輸送を含 む。]であって、我が国が実施するものをいう、

同法第三条第一項第三号)は、自衛隊の部隊等 が行うが、捜索救助活動を行う自衛隊の部隊等 において、その実施に伴い、当該活動に相当す る活動を行う諸外国の軍隊等の部隊に対して協 力支援活動として行う自衛隊に属する物品の提 供及び自衛隊による役務の提供(同法第三条第 三項)は、「第二表」に掲げるものとなる。

 自衛隊に属する物品の提供及び自衛隊による 役務の提供について、「武器」の提供はできない が、提供できる弾薬は、拳銃、小銃、機関銃など、

他国部隊の要員の生命、身体の保護のために使 用される武器に適合する弾薬、ロケット弾、戦 車砲弾、りゅう弾砲弾、クラスター弾、劣化ウ ラン弾も、法律上は提供できる。輸送できる 武器・弾薬は、核兵器、毒ガスなどの化学兵器 を含む、この世にある全ての兵器・弾薬である。 戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対 する給油及び整備支援も可能となる

 「国際平和協力業務」とその場合における武 力の行使ができる根拠は、国際連合憲章に基づ く集団的安全保障措置権である。

 「集団的安全保障措置権」とは、国際連合・

安全保障理事会の決議に基づいて、各加盟国が、

集団で、国際の平和と安全を維持又は回復する ための軍事的活動を行うことができるとするも のである(国際連合憲章第四二条)。

(8)

 自衛隊は、集団的安全保障措置権を行使して 制裁戦争を行うことのできる武力組織である。

 『侵略戦争法』の制定は、歴代の内閣の日本 国憲法「第九条」の解釈に照らしてみても、「第 九条」の「第一項」の「戦争の放棄」を、また、

同条「第二項」の「戦力の不保持」と「交戦権 の否認」を蹂躙している。

 「第九条」は、「第一項」の「日本国民は、正 義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、

国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武 力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、

永久にこれを放棄する」という規定と、「第二 項」の「前項の目的を達するため、陸海空軍そ の他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権 は、これを認めない」という規定で構成されて いる。

 歴代の内閣に継承されている歴代の内閣の

「第九条」についての解釈は、次の通りである。

 ⑴日本は、自衛権を有しているので、放棄し た「国際紛争を解決する手段」としての戦争と は、侵略戦争のことであるから、第九条第一項 は、侵略戦争のみを放棄している。自衛のため の任務を有する自衛隊は、憲法に違反しない

⑵自衛権がある以上、自分の国の生存を守るだ けの武力の行使は、国際紛争を解決する手段と しての武力行使ではないので、当然自衛権の発 動として許される、⑶「戦力」とは、自衛の ため必要な最小限度を越えるものであり、それ 以下の実力の保持は、第九条第二項によって禁 じられていない、⑷陸海空の自衛隊というも のは、あくまでも自衛のために必要な最小限度 のものを持っているから、その範囲においては 憲法に違反しない、⑸保持しない戦力は、日 本国の戦力を示し、在日米軍は米国の保持する 軍隊であるから、「第九条」の関するところで はない、⑹「交戦権」とは、交戦国(戦争し ている国)が国際法上戦時において認めらてい る権利を総合していうもの(攻撃権、占領地 行政権、船舶の臨権・拿捕権等)である、自衛 権に基づく武力の行使は、交戦権とは別のもの で、憲法上認められる、⑺日本は、自国と密 接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自 国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実

力をもって阻止する権利である集団的自衛権を、

主権国家である以上、有しているが、憲法第九 条の下において許容されている自衛権の行使は、

我が国を防衛するため必要最小限の範囲にとど まるべきものと解しており、集団的自衛権を行 使することは、その範囲を越えるものであって、

憲法上許されない、などである。

 ところが、「安倍連立内閣」は、『侵略戦争法』

を制定するために、自由民主党と公明党と謀っ て、歴代の内閣が継承してきた「集団的自衛権」

についての解釈を破壊する “憲法クーデター”

を起こして、日本国憲法のもとで「集団的自衛 権」の行使は許容されるという新たな解釈を捏 造した。

 「安倍連立内閣」は、二〇一四年七月一日に「閣 議決定」した「国の存立を全うし、国民を守る ための切れ目のない安全保障法制の整備につい て」において、「我が国に対する武力攻撃が 発生した場合のみならず、我が国と密接な関係 にある他国に対する武力攻撃が発生し、これに より我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自 由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白 な危険がある場合において、これを排除し、我 が国の存立を全うし、国民を守るために他に適 当な手段がないときに、必要最小限度の実力を 行使することは、従来の政府見解の基本的な論 理に基づく自衛のための措置として、憲法上許 容されると考えるべきであると判断するに至っ た」。「我が国による『武力の行使』が国際法を 遵守して行われることは当然であるが、国際法 上の根拠と憲法解釈は区別して理解する必要が ある。憲法上許容される上記の『武力の行使』

は、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場 合がある。この『武力の行使』には、他国に対 する武力攻撃が発生した場合を契機とするもの が含まれるが、憲法上は、あくまでも我が国の 存立を全うし、国民を守るため、すなわち、我 が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置 として初めて許容されるものである」と主張し て、「集団的自衛権」の行使を日本国憲法から 解禁する新しい解釈を打ち出した。

 「第九条」を歴代の内閣のように歪めて解釈 しなければ、日本国憲法のもとでの「集団的自

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衛権」の行使の違憲性は、より鮮明となる。

 戦争という国家間・民族間等の対立当事者間 における紛争解決のため相互戦闘行為は、「話 し合い」(対話)で解決できない紛争を、武力 を用いて解決しようと始められる闘争であるか ら、従って、「第一項」における「国際紛争を 解決する手段として」の戦争には、侵害を排撃 するための自衛戦争も、侵害を実行するための 侵略戦争も、侵害を懲らしめるための制裁戦争 も、含まれる。また、「国際紛争を解決する手 段として」の武力(兵士と武器)による威嚇(自 国・自民族等の目的を達成しようとして他国・

他民族等を武力で脅すこと)及び武力(兵士と 武器)の行使(自国・自民族等の目的を達成し ようとして他国・他民族等に武力を向かわせる こと)には、自衛目的での武力による威嚇及び 武力の行使も、侵略目的での武力による威嚇及 び武力の行使も、制裁目的での武力による威嚇 及び武力の行使も、含まれる。それ故、「第一項」

のもとでは、いかなる形態の戦争も、いかなる 形態の武力による威嚇及び武力の行使も、国権

(国家の統治権=主権)の発動行為として、永 久に放棄されている。つまり、「非戦永久主義」

が貫かれている。

 次に、「第二項」のもとでは、「前項の目的を 達するため」、即ち、すべての戦争とすべての 武力による威嚇及び武力の行使の放棄を実現す るため、⑴陸海空軍及びその他の戦力(戦争に 用いることを第一義的目的として作られている 一切の武装人間集団と一切の物理的イデオロ ギー[Ideologie 観念形態]的実力のこと)は、

保持しない、また、⑵国の交戦権は、認めない としている。

 「その他の戦力」には、軍隊(外国でも・国 内でも、人間を殺害し、土地や建物を破壊する 武力組織)以外の、ⓐ軍需産業とその製品(武 器とその他の兵具)、ⓑ軍事企業とその保有す る兵士及び武器、ⓒ軍事研究・軍事教育、ⓓ軍 の名前や形は持たないが陸海空軍に相応する実 力を有し、いつでも陸海空軍に転化できる武力 組織(例えば、創設[一九五四年七月一日]当 初の自衛隊がこれに相当する)、ⓔ人間以外の 軍隊(動物やロボットの軍隊)、ⓕ外国の軍隊

(例えば、在日米軍)、ⓖ自他国の武器、ⓗ傭兵 などが含まれる。

 「交戦権」とは、国家の保有する戦争権のこ とであるが、具体的には、それは、ⓐ開戦権(「宣 戦布告権」)、ⓑ講和権、ⓒ交戦国(戦争してい る国)の保有する戦闘権(攻撃権、占領地行政 権、捕虜に対する権利、船舶の臨検・拿捕権な ど)で構成されている。

 「第二項」においては、「戦力」の不保持によ る「非武装主義」と、「交戦権」の否認による「対 話主義」が貫かれている。

 「第九条」の根本原理とは、「非戦永久主義」(第 一項)と「非武装主義」及び「対話主義」(第二項)

に基づいて国際紛争を平和的に解決する道の実 践であり、具体的には、国民と国家と自治体は、

⑴いかなる戦争も・いかなる武力による威嚇及 び武力の行使も実行しない(第一項)、⑵いか なる戦争のためのいかなる実力(戦力)も・い かなる武力による威嚇及び武力の行使のための いかなる実力(戦力)も保持しない(第二項)、

⑶いかなる戦争をする権能(交戦権)も・いか なる武力による威嚇及び武力の行使をする権能

(交戦権)も保有しない(第二項)、従って、個 別的自衛権も、集団的自衛権も、集団的安全保 障措置権も、保有も行使もしない、が根本原理 となる。

 「第九条」の道は、「非戦・非武装・対話・永 久平和主義」に基づく「対話」による国際紛争 解決の道のみである。

 「第九条」の条文を、或いは、「第九条」の内 容を、日本国憲法「第九六条」が定める『改憲 手続』を用いないで改める行為は、物理的精神 的暴力で「第九条」を破壊する行為であるから、

“憲法クーデター” と呼ぶことができる。クー デター(coup d'État)とは、同一勢力内で生 じる武力で政権を打倒したり略奪したりする行 為を意味する言葉であるが、これを応用して、

“憲法クーデター” とは、物理的精神的暴力を 用いて(暴挙や暴論を用いて)、憲法の全体や 各条項や各条項内の言葉を、停止したり・改悪 したり・廃止したりする行為(反立憲主義的暴 政)と定義する。

 『侵略戦争法』の制定を画期として、「安倍連

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立内閣」と自由民主党と公明党は、日本国を、「第 九条」(非戦・非武装・対話・永久平和主義体制)

を基軸とする「『第九条』の国」から、二一世 紀の「日米安全保障条約(安保)」体制を基軸 とする「『安保』の国」に転換させた。

 「『安保』の国」とは、A 対外的には、アメ リカの国家に従属して、アメリカの国家と共 に、アメリカの国益(アメリカの国家と資本主 義と多国籍企業の利益のこと)のために、集団 的自衛権を行使して、世界中で、侵略戦争や侵 略目的の武力による威嚇及び武力の行使を実行 する「侵略戦争国家」を持つ日本国のことであ る。B 対内的には、「『安保』の国」の行う侵 略戦争に、また、アメリカの国益のために、国 力と国民を総動員できるように、そして、その ことに反対する国民と団体と政党を弾圧できる ように、国民主権とそれに基づく民主主義や基 本的人権や地方自治や司法権の独立や政党や団 体や議会政治(議会があっても)などを抹殺す る「ファシズム」を実行する「ファシズム国 家」を持つ日本国のことである。自由民主党が 二〇一二年四月二七日に決定した「日本国憲法 改正草案」が、そのことを明示している。  今日、「安倍連立内閣」と自由民主党と公明 党は、「『安保』の国」を確立するために、対米 従属を徹底化する国家作り、対外的な侵略主 義と対内的なファシズムを実行する国家作 りを強行している。

 しかし、「『安保』の国」は、“憲法クーデター”

によって成立したため、国家の暴力に依拠して いるのみで、依拠する憲法がなく、その成立と 存立を正当化する根拠は、何もない。それ故、

「『安保』の国」を物理的精神的暴力で非立憲的 に建ち上げた「安倍連立内閣」と自由民主党と 公明党は、今のところは、「『安保』の国」を正 当化するために、「第九条」の抹殺を最大の課 題にして、二一世紀の「日米安全保障条約」体 制を憲法規範化する「『安保』憲法」を、日本 国憲法の「第九六条」の改憲手続を用いて、制 定しようとしている。“憲法クーデター” によ る改憲は、国際的にも、国内的にも、厳しい批 判を受けることになるからである。

 その「『安保』憲法」の原案が、「日本国憲法

改正草案」である。

 「安倍連立内閣」と自由民主党と公明党は、

安倍内閣総理大臣が、二〇一七年五月三日に提 起した、⑴二〇二〇年を新しい憲法が実施され る年にしたい、⑵自衛隊の存在を合憲とする ために、第九条の一項と二項をそのまま残し、

自衛隊を明文で書き加えるという「改憲策

―「安倍改憲」―を、「『安保』憲法」作り の第一陣として、実現しようとしている。

 では、日本国憲法の改憲手続を用いて、「第 九条」を改める改憲は可能なのであろうか。そ の答えを見つけるためには、日本国憲法の改憲 の基準を明らかにしなければならない。

Ⅱ 日本国憲法における改憲の基準  日本国憲法における改憲の基準を確定する礎 となる日本国憲法の改憲手続は、「第九六条」

において、「この憲法の改正は、各議院の総議 員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発 議し、国民に提案してその承認を経なければな らない。この承認には、特別の国民投票又は国 会の定める選挙の際行はれる投票において、そ の過半数の賛成を必要とする」(第一項)。「憲 法改正について前項の承認を経たときは、天皇 は、国民の名で、この憲法と一体を成すものと して、直ちにこれを公布する」(第二項)と定 められている。私は、この「第九六条」に「第 九九条」の「天皇又は摂政及び国務大臣、国会 議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊 重し擁護する義務を負ふ」とする「公務員の憲 法尊重擁護義務」を合せて、日本国憲法の改憲 手続を構成すべきであると考える。その理由は、

日本国憲法の理想とする改憲を破壊する改憲暴 走を阻止するためである。

 かくして、「第九六条」と「第九九条」を合 せて形成される日本国憲法の改憲手続から導き 出される日本国憲法における改憲の基準は、次 のようになる。

 第一に、日本国憲法における憲法改正権は、

国会(国会議員――衆議院議員と参議院議員)

と国民のみが保有している。内閣には、憲法改 正権はない。それ故、内閣を構成する内閣総理

(11)

大臣とその他の国務大臣にも、憲法改正権はな い。そのことは、内閣の「職権」を明記してい る日本国憲法「第七三条」に改憲の発議権が 明記されていないことからも、明らかとなる。

 関連して、日本国憲法「第七二条」に、「内 閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提 出(する)」という規定がある。この「議案」とは、

前述の「第七三条」の内閣の職権に関するもの についての「議案」のことである。「第七三条」

の内閣の職権に関しないものについての「議案」

は、国会に提出できない。もし、内閣が、「第 七三条」の職権に関しないものを「議案」とし て国会に提出したら、憲法に基づく言動を現す 立憲主義を破ることであり、「第九九条」の「憲 法尊重擁護義務」に違反することになる。それ 故、当核「議案」の中には、「改憲案」も含ま れるから、「改憲案」の提出に伴う内閣の改 憲活動も許されるとする考え方は、認められな いことになる。

 内閣法も、「内閣総理大臣は、内閣を代表し て内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会 に提出し、一般国務及び外交関係について国会 に報告する」(第五条)と定めて、「改憲案」の 国会提出を許していない。

 日本国憲法下の法体系において、内閣の「改 憲案」の国会提出を認める規定は存在しない。

このことは、日本国憲法は、内閣(内閣総理大 臣とその他の国務大臣)に、一切の改憲活動を 許していない、と言うことができる。

 なお、「第九六条」は、内閣の「発議」(国民 投票に付す改憲案の決定)は認めていないが、

内閣の「発案」(改憲案の国会提出)は容認し ているとする説がある

 憲法改正権は、発案権・発議権・改憲運動権 で構成されるものであり、憲法改正権を持たな い内閣に、憲法改正権の一部である発案権を与 えることは、立憲主義に背き、許されないと考 えられる。

 更に、国会議員でもある内閣総理大臣や国務 大臣には、国会議員としての資格を用いて改憲 案を国会に提出できるという説がある。

 国会議員である内閣総理大臣や国務大臣は、

その存在中は、国会議員でない国務大臣と同様

に、国会議員の権能を行使してはならない。権 力分立制度を採用している日本国憲法のもとで は、当然のことである。従って、国会議員でも ある内閣総理大臣や国務大臣が、国会議員の資 格を用いて発案権を行使して改憲案を国会に提 出することは、権力分立制度に背くことになる ので、許されない。

 国会議員は、「改憲案」を国会に提出するこ と(発案)も、発議も、改憲活動もできるが、「第 九九条」の「憲法尊重擁護義務」を負っている ので、日本国憲法の内容を悪くする改悪改憲(例 えば、国民主権や基本的人権を廃棄しようとす る改憲)は、「憲法尊重擁護義務」に違反する から、発案も・発議も・改憲運動も、できな い。国会議員ができるのは、日本国憲法の内容 を良くする(例えば、封建的な天皇制を廃止す る、基本的人権の種類を増加する)改良改憲の 発案・発議・改憲運動のみである。

 第二に、日本国憲法が採用している改憲の方 法は、「第九六条」が定める方法のみである。

 「第九六条」の定める改憲の方法とは、⑴改 めようとする条文や条文内の言葉を明記した改 憲案を、⑵衆議院と参議院でそれぞれの総議員

(法定数の総議員数)の三分の二以上(三分の 二を含む)の賛成で、決定し(発議し)、⑶そ の改憲案を国民投票に付して、国民の承認を得 る、という「明文改憲」の方法のみである。衆 議院の決議のみで発議が可能となるという「衆 議院の優越」は、認められていない。

 「総議員」を、法定数の総議員のことでなけ ればならないとするのは、二つの理由からであ る。一つ目は、議員に欠員が生じたら、原則と して直ちに補欠選挙を行い、常に法定数の議員 を確保しておくのが(いつでも、どの主権者国 民の代表者もいるようにしておくのが)、国民 主権の出発点であるからである。二つ目は、改 憲派の謀略を防止して、公平な改憲を実現する ためである。

 「総議員」を現存議員の総議員のこととする と、改憲派は、発議を実現しようとして、仮病 を用いて辞任をさせたり、襲わせて死亡させ たりして、現存議員を減少させようとするか も知れない、或いは、反改憲派をデマゴキー

(12)

(Demagogie 事実に反する謀略的・煽動的宣 伝)を用いて「除名」(憲法第五五条・第五八条)

して、現存議員を減少させようとするかも知れ ない、からである。

 公職選挙法によれば、衆議院議員の法定数 は、四六五人であり、参議院議員の法定数は、

二四八人である(第四条)。従って、その三分 の二は、衆議院の場合、三一〇人となる、半数 改選の参議院の場合、二〇二二年までは、法定 数二四五人なので、一時的に、一六四人となる。

 「明文改憲」に対して、「解釈改憲」と呼ばれ る改憲の方法がある。それは、「第九六条」の 定める改憲手続を踏まえないで、改めようと する条文や条文内の言葉の内容を解釈で改め て、改めようとする条文や条文内の言葉をその ままにしておく改憲の方法である。日本国憲法 のどこにも「解釈改憲」の方法を認める規定は ないので、それを行うことは、“憲法クーデター”

となる。

 第三に、日本国憲法は、「第九六条」の改憲 手続を用いても、改憲を許さない「聖域」を定 めている。

 憲法の「改正」(「改憲」)は、憲法の「制定」

後に可能となる行為であるから、「改憲」と憲 法の「制定」とは、同一の行為ではない。

 憲法の「制定」には、限界はないが、「改憲」

には、限界が存在する。

 「改憲」の限界とは、第一は、制定された憲 法典を似て非なる憲法典に変えてしまうことや 別の憲法典にしてしまうことは、憲法の「制定」

となるから、できないということである。第二 は、憲法を制定した権力(憲法制定権力、主 権)を消滅させることは、憲法の制定となるか ら、できないということである。第三は、憲法 に設置された改憲手続は、時代の変化を受ける 憲法典を存立させるための「命綱」であるので、

それを改めることは憲法の制定と同じことにな るから、できないということである。

 日本国憲法は、自らの「改憲」の限界につい て、次のように示している。

 ⑴「日本国民は」、「われらとわれらの子孫の ために、諸国民との協和による成果と、わが国 全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、

政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ること のないやうにすることを決意し、ここに主権が 国民に存することを宣言し、この憲法を確定 する」。「われらは、これ(人類普遍の原理とし ての国民主権――引用者)に反する一切の憲法、

法令及び詔勅を排除する」(前文)。

 ⑵「日本国民は、正義と秩序を基調とする国 際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、

武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を 解決する手段としては、永久にこれを放棄す る。」(第九条第一項)。「前項の目的を達するた め、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しな い。国の交戦権は、これを認めない」(第九条 第二項)。

 ⑶「国民は、すべての基本的人権の享有を妨 げられない。この憲法が国民に保障する基本的 人権は、侵すことのできない永久の権利として、

現在及び将来の国民に与へられる」(第一一条)。

 日本国憲法が掲げた改憲禁止規定を手掛りに して、日本国憲法における改憲の限界をまとめ れば、日本国憲法のもとでは、「第九六条」の 改憲手続を用いても、⑴古典的な人類普遍の原 理である「国民主義」(日本国憲法の憲法制定 権力)原理を改めて、天皇主権や国家主権にす ることはできない。また、⑵古典的な人類普遍 の原理である「基本的人権享有」原理を改めて、

基本的人権を保障しないとすること、国家の必 要によって制限・剝奪される基本的人権にする ことはできない。更に、⑶二〇世紀に人類普遍 の原理となった「非戦・平和主義」原理を改め て、「第九条」に反する武装・平和主義や武装・

戦争主義にすることはできない。

 上の三つの原理は、日本国憲法の固有性を確 保する基本原理を構成するものであるので、日 本国憲法は、自己の基本原理を改めて、自己が 自己と似て非なるものになること、或いは、別 のものになることを拒否していると考えられる。

 そうであるならば、日本国憲法の基本原理は、

上の三つの原理の外、地方自治と日本国憲法の

「命綱」となる改憲手続が含まれるから、次の ことを加えることができる。

 日本国憲法のもとでは、「第九六条」の改憲 手続を用いても、なおかつ、⑷「地方自治」原

(13)

理を改めて、地方自治を設置しないとすること、

国家の必要によって制限・剝奪される地方自治 にすることはできない。続いて、⑸日本国憲法 の改憲手続は、前述したように、「硬性主義」

を採用している。法律制定手続よりも厳しい改 憲手続のことを「硬性主義」と呼ぶが、この「改 憲硬性主義」原理を改めて、国民投票を設置し ないとすること、国会の発議を各議院の総議員 や出席議員の過半数にすること、国会の発議に 衆議院の優越を認めるようにするなどは、法律 制定手続と同水準の改憲手続にすること(「改 憲軟性主義」にすること)になり、日本国憲法 と似て非なる憲法を作ること、或いは、日本国 憲法と別の憲法を作ることを許すことになるの で、できない。

 参考として、外国では、例えば、「イタリア 共和国憲法」(一九四七年十二月二七日制定)は、

「共和政体は、憲法改正の対象とすることがで きない」(第一三九条)と定めている。フラン スの「第五共和国憲法」(「一九五八年一〇月四 日の憲法」)も、「共和政体は、憲法改正の対象 とはなり得ない」(第八九条第五項)と定めて いる。君主の存在しない政治体制(共和政体)

を改める改憲はできないとして、改憲の限界を 明記している。

 第四に、改憲を承認するための国民投票によ る「過半数の賛成」について、日本国憲法は、「何 の過半数(1 / 2 + 1)か」を、示していない。

 国民投票を実施するための法律を制定する際 に、当然、問題となるが、理論的には、有権者 総数の過半数、投票者総数の過半数、有効投票 総数の過半数が候補となる。

 改憲の重要性から、多くの国民の賛成による 改憲が望ましいこと、日本国憲法が、改憲硬性 主義を採用する硬性憲法として、安易な改憲を 戒めていることなどを踏まえれば、日本国憲法 のもとでは、投票者総数の過半数が最低基準と なる。

 「 日 本 国 憲 法 の 改 正 手 続 に 関 す る 法 律 」

(二〇〇七年五月一四日制定)は、有効投票総 数の過半数を採用しているが(第一二六条)、

棄権率が高く(投票率が低く)、無効票が多い 場合、極少の賛成で改憲が実現する。改憲陣

営が、そのような状況を作ることができるので、

有効投票総数の過半数は、改憲陣営の為の不平 等な手続である。改憲陣営にも、反改憲陣営に も平等な改憲手続は、投票者総数の過半数とな るので、もし、有効投票総数の過半数を採用す る場合は、必ず、一定の投票率がないと国民投 票の不成立を宣言できる「最低投票率」制度を 設置しなければならないとするのが、日本国憲 法の意思である。前掲「日本国憲法の改正手続 に関する法律」は、「最低投票率」制度を設置 していない。国民投票に関する手続を定めるに 当っては、改憲陣営にとっても反改憲陣営に とっても、平等となるものでなければならない。

 第五に、日本国憲法は、改憲が承認された時 は、天皇が、「この憲法と一体を成すものとし て、直ちにこれを公布する」としている。この 規定を無視するという横暴な振舞をしない限り

、日本国憲法のもとでの改憲は、常に、「部 分改憲」しか行うことができず、「全面改憲」は、

不可能となる。もし、「全面改憲」が行われたら、

「この憲法と一体を成す」は、不成立となるか らである。

① 二〇〇六年六月三〇日付「朝日新聞(朝刊)」

に全文が掲載されている。

② その全文を掲載した二〇一五年四月二八日 付「朝日新聞(朝刊)」、防衛省編「平成 28 年 版 日本の防衛――防衛白書――」・日経印刷 株式会社・二〇一六年・四二〇―四二六頁を 利用。

③ 「平和安全法制整備法」を構成する一〇本の 改定法は、次の通りである。

  ⑴自衛隊法の一部改正。⑵国際連合平和維 持活動等に対する協力に関する法律の一部改 正。⑶周辺事態に際して我が国の平和及び安 全を確保するための措置に関する法律の一部 改正(重要影響事態に際して我が国の平和及 び安全を確保するための措置に関する法律と なる)。⑷周辺事態に際して実施する船舶検査 活動に関する法律の一部改正(重要影響事態

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