︿判例研究﹀
政府によるアメリカインディアンの聖地開発が﹁宗教の
自由な活動条項﹂を侵害するものではないとされた事例
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藤田尚則
判 例 研 究
︹事実の概要︺
合衆国森林局は︑カルフォルニァ州の町ガスケットとオルレアンズを結ぶ七五マイルの舗装道路建設計画の一部と
して既に舗装された道路四九マイルを完備してきたが︑当該計画(G‑0道路)を完成させるためにシックス・リ
バーズ国有林のチムニ・ロック地区を通過する⊥ハマイルの舗装部分を建設しなければならなかった︒
一九七七年森林局は︑チムニ・ロック地区を通過する既存の未舗装道路を完備する提案について論じた環境影響評
価草案を提起した︒草案の解説にこたえて森林局は︑当該地区内のアメリカインディアンの文化的及び宗教的場所に
関する研究を委託した︒というのは︑シックス・リバーズ国有林に隣接してフーパ・バレーインディアンの保留地が
存在しており︑またチムニ・ロック地区は︑古くからユロク︑カロク及びトロワの各部族によって宗教上の儀式目的
に使用されていたからである︒一九七九年に完成した委託研究は︑当該地区全域がインディアンの宗教の概念化及び
その活動にとって絶対必要な場所として重要であると認定し︑どの有効ルートに沿って道路を建設したとしても︑北
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西部カリフォルニアインディアンの人々の信仰体系及び生活様式にとって必要である神聖な場所に著しく且つ回復不
可能な損害を与えるものであると結論を下したのである︒
一九八二年に森林局は︑当該勧告の不採用を決定し︑道路建設に関して最終環境影響評価を準備した︒地方森林監
督官は︑考古学上の遺跡を避け且つインディアンによって宗教活動目的に使用されている場所から可能な限り移行し
たガスケットからオルレアンズに至る六・〇ニマイルのGiO道路ルートを選択した︒チムニ・ロック地区を回避す
る代替諸ルートは︑私有地の取得︑土地の安定度等の問題を含んでいたために拒否された︒同時に森林局は︑今後八
〇年間に七三三〇万ボードフィートの木材の伐採を全ての宗教的場所の回りに一・五マイルの保護ゾーンを設けるこ
とを条件に許可する管理計画を採択した︒
行政救済が尽された後︑インディアン協会︑自然保護団体等が森林局の決定は合衆国憲法修正第一条の宗教の自由
な活動条項︑連邦水質汚濁統制法(FWPCA)︑国家環境政策法(NEPA)︑アメリカインディアン信教自由法
( 1 ) ( A I R F A ) 等 を 侵 害 す る と 主 張 し ︑ 訴 訟 を 提 起 し た ︒
( 2 )
連邦地方裁判所は︑G10道路の建設と管理計画の執行の両者を禁ずる永久差止命令を命じた︒当該裁判所は︑原告の宗教の自由な活動への負担(げ⊆巳窪)を以下のように認定し︑自由な活動条項を侵害すると判示している︒即ち
チムニ・ロック地区の建設及び管理計画の実施は︑原告インディアンの宗教活動のための高地の利用を著しく侵害す
る︒何世代にも亘って三つの部族の個々の構成員︑宗教上の指導者及び呪医は︑﹁偉大な造物主﹂と連絡をとり︑礼
拝を行い︑特別の宗教的儀式や病気平癒の儀式の準備のために高地を旅してきた︒かかる高地の使用は︑原告インデ
ィアンの宗教にとって﹁中心的且つ不可欠の﹂役割を演じているのであり︑各部族の人々にとってこの高地は︑その
精神世界の主要な場所であり︑他のいかなる地理学上の地域或いは場所も各部族にとっては何等同価値の宗教的重要
性を持つものではない︒更に高地の利用は︑北西部インディアンの宗教的信念体系の核心をなすところのホワイトデ
判 例 研 究
イアスキンやジャンプダンスといった﹁万物の再生﹂の儀式を行うにあたって不可欠なものである︒また伝統的な宗
教的信念や儀式をもって部族内の青少年を訓練する目的で高地を使用することは︑かかる活動を存続させ︑次の世代
に残すために必要である︒高地の価値の低下やかかる訓練を損うことは︑部族共同体及び宗教的信念を侵害しゆく正
に真の脅威となる︒偉大なる造物主との伝達は︑俗塵に汚されていない環境及びそこに見出される幽寂の機会の故に
高地でのみ可能である︒森林局の二つの行為は︑高地の顕著な視覚上︑聴覚上及び環境上の特質を著しく損うもので
( 3 )
ある︒合衆国第九巡回区控訴裁判所は︑森林局の計画はインディアンの宗教活動に不利に影響するという理由に基づいて
( 4 )
原審の修正第一条分析についてこれを支持し︑政府は計画実施に﹁やむにやまれぬ利益(8ヨ冨=ぎ讐三賃①ωけ)﹂を有( 5 ) す る こ と を 立 証 し て い な い と 判 示 し て い る ︒
( 6 ) 合 衆 国 最 高 裁 判 所 は ︑ 破 棄 ︑ 差 戻 し の 判 決 を 下 し た ︒ オ コ ナ ー 判 事 が 法 廷 意 見 を 述 べ ︑ レ ー ン キ ス ト ︑ ホ ワ イ ト ︑
ス テ ィ ー ブ ン ズ 及 び ス カ リ ア の 各 判 事 が 同 調 し た ︒ ブ レ ナ ン 判 事 が 反 対 意 見 を 述 べ ︑ マ ー シ ャ ル ︑ ブ ラ ッ ク マ ン の 各
判 事 が こ れ に 同 調 し て い る ︒ ケ ネ デ ィ ー 判 事 は ︑ 本 判 決 に 関 与 し て い な い ︒
︹判旨︺
︿オコナー判事の法廷意見﹀
( 7 )
ω我々は︑じ口︒蓄コ〜勾畠(以下単にロイ事件とする)で扶養家族援助(AFDC)計画及び食糧キップ(FS)計画への参与者は︑受給条件として家族構成員の社会保障番号(ω8一巴GQ①6霞一身2目げ①﹃)を州福祉事務所に提出す
ることを義務づけ︑事務所が計画執行に際して番号を使用する旨規定した連邦法を審理した︒被上告人は︑二歳の娘
に社会保障番号を取得することはアメリカインディアンの宗教的信念を侵害するものであるとし︑科学技術は人間の
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霊を奪い去るものであり︑番号使用は彼の娘からその霊を奪い︑彼女が大いなる霊力を獲得する妨げとなると主張し
た︒同様に本件においてG10道路建設による自然環境の破壊は︑本件地区の神聖を減少させ︑宗教体験の訓練と継
続を侵害し気を散らす結果になると主張されている︒当法廷は︑かかる種類の異議申し立てをロイ事件で拒否した︒
即ち﹁自由な活動条項は︑政府に特定の国民の宗教的信念に適合する方法でその内部の職務を運営するよう要請して
いるとは理解され得ない︒政府が被上告人に何等かの形式の宗教儀式に関与するよう要請することができないように︑
被上告人も政府に彼の娘を確認するために番号を使用することを差し控えることによって彼の宗教上の活動に参加す
るよう要請することはできない︒⁝⁝自由な活動条項は︑=疋の形式の政府の強制から個人を保護しているのであっ
て︑政府の内部手続の行為を指図する権利までをも付与するものではない﹂と判示したのである︒
公有地での道路建設及び木材の伐採は︑有意味にロイ事件における社会保障番号と区別されない︒両事件において
異議を申し立てられた政府行為は︑自らの宗教的信念に従って精神的充足を追求しようとする私人の能力に著しく介
ヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘへ入するであろうが︑いずれの事件でも政府行為は影響を受けた個人を強制してその宗教的信念を犯させてはいないし︑
ヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘへまた他の国民が享有する権利︑利益及び特権の平等の分配を否定することによって宗教活動を罰っしているのでもな
い︒(傍点筆者)
当法廷は︑本件又はロイ事件において宗教的異議へと導いたその基礎となっている信仰の真偽を決定し得ないので
あり︑従ってロイ事件の被上告人への不利な効果を考量し︑本件被上告人への不利な効果とを比較することはできな
い︒かかる比較衡量をすることができない当法廷は︑個人の精神活動への付随的(一口6凶処O口け9一)介入の一つの形式は
他の介入の形式とは異った憲法上の分析に服さなければならないと言うことはできないのである︒
被上告人は︑下級審はG‑0道路が建設された場合インディアンの精神活動が効果のないものになる程度について
( 8 ) の 事 実 審 理 に 正 し く 依 存 し て い る と 主 張 し ︑ ま た 当 法 廷 が 下 し た さ 冨 8 8 ヨ < ◎ く & 自 ( 以 下 単 に ヨ ー ダ ー 事 件 と す
( 9 )
る)︑OD冨尋①含タ<①≡霞(以下単にシャーバート事件とする)及び目ぎヨ霧く.閑①≦①≦しu︒霞ユ︒{子①ぎ象9起国ヨ覧︒ギ( 10 )
日︒三ω①︒母剛昌∪一く●(以下単にトーマス事件とする)の諸判決に依拠している︒宗教の自由な活動への正に明白な禁止ではなくして間接的な強制又は罰則も︑修正第一条の下で精査に服すと当法廷が再三再四判決を下してきたことは
確かである︒従って例えばシャーバート事件で安息日たる土曜日の就労を拒否したことに基づいて失業補償給付を不
適格とすることは︑安息日の礼拝に課される罰金に類似するものであるとされたのである︒しかしこのことは︑一定
の宗教実践をより困難にはするが︑個人をしてその宗教的信念に反して行動するよう強制する傾向性を持たない政府
計画の付随的効果が︑政府に対してその他の点では合法的な行為についてやむにやまれぬ正当化事由(臼8目冨一一ぎαq
㎞話藻一8け一8)を提示するよう要請することを意味するものではないし︑また意味し得ないと言わざるを得ない︒憲
法典に規定されている決定的用語は︑﹁禁止する(嘆︒霞耳)﹂である︒即ち︑﹁自由な活動条項は︑政府が個人に対
して行い得ないことに関して規定されたのであって︑個人が政府に対して強制し得ることに関して規定されたのでは
( 11 )
ない﹂(シャーバート事件)のである︒②宗教の自由な活動への憲法に反する禁止と政府自体の職務による正当な行為との間の厳密な境界線がなんであ
ヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘへろうと︑その境界線の選定は︑宗教的反対者の精神的発展への政府行為の効果の考量に依存し得るものではない︒本
件の伐採と道路建設計画が伝統的なインディアンの宗教活動に破壊的効果を与えることについては︑政府は論駁して
いないし︑また我々もそれを疑う理由を持ちあわせない︒インディアンの宗教活動は︑チムニ・ロック地区の独特の
地形と緊密な関係があり︑個々の実践者は当該地区を自己の宗教的発展に利用し︑インディアン達は長い間そうして
来たように彼らの宗教的目的の達成を目指す広範囲に亘る特別の儀式に利用しているのであって︑少なくともいくつ
かの宗教活動の効験への脅威はきわめて重大であると推測し得る︒
G10道路が︑事実上インディアンの宗教実践の能力を破壊するであろうと認定した控訴審の予言を採用したとし